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2017年7月19日水曜日

加計問題を追及し続けるマスコミの「本当の狙い」を邪推してみた―【私の論評】安倍政権支持率低下の原因はネガティブキャンペーンだけではない(゚д゚)!

加計問題を追及し続けるマスコミの「本当の狙い」を邪推してみた

加戸守行前愛媛県知事(左)と前川喜平前文科省時間(右)  写真はブログ管理人挿入 以下同じ
   苦しい答弁

先週10日、加計学園問題について国会閉会中審査が行われ、前川喜平前文科事務次官らの参考人招致があった。読者のなかにも、注目してみていた人が多くいるだろう。

加計学園問題の本質は、先週のコラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52245)に書いたように、2003年3月の文科省告示である。

前川氏に対する質疑では、自民党参議院議員の青山繁晴議員のものがもっとも良かった。青山議員は、「石破4条件」における文科省の挙証責任、既存大学の獣医学部の定員水増し問題、そして文科官僚の天下り問題との関係について質問していた。

まず挙証責任については、前川氏は当初行った記者会見では「文科省にはない」と言っていたが、さすがにそれではまずいと思ったのか、どこにあるとも言わずにはぐらかしていた。

また、既存大学の獣医学部では、全国で総数930名の定員に対して1200名までの「水増し入学」を黙認している現状がある。これで「需要と供給が均衡している」と文科省が判断しているとすればおかしいのではないか、と青山氏は質問している。これに対しても、前川氏は「既存の体制のままでいい」と苦しい答弁だった。

文部官僚の天下りが大学新設規制に関係しているのではないか、という点についても、前川氏は「関係ない」と述べたが、これらが関係しているのは霞が関の「常識」であり、規制がなければ天下りもあり得ないということは、前川氏だって知っているだろう。

青山議員とのやりとりで、筆者には、前川氏は平然とウソをついているように見えた。

閉会中審査で質問する青山繁晴議員
特筆すべきは青山議員が、前川氏と一緒に参考人招致を受けた加戸守行前愛媛県知事(文科省OB)に対しても質問をして、両者の発言の対比ができるようにしたことだ。

青山議員はマスコミ出身だが、この対比手法こそ、一部のマスコミへの強烈な批判になっていた。というのは、一部のマスコミはこうした手法をまったくとらず一方的な意見だけを垂れ流しているのだ。それは、12日の産経新聞に詳しい(http://www.sankei.com/politics/news/170712/plt1707120010-n1.html)。

加戸前知事は「ゆがめられた行政が正された」などと文科省の過去の対応を批判したが、この発言について、朝日新聞と毎日新聞の紙面では取り上げていない。産経新聞と読売新聞が取り上げたのとは大きな差である。

テレビでも同様の傾向があった。前川氏の発言はどの局でも取り上げられたが、加戸氏のものはほとんどなかった。

もっとも今は、インターネットがある。青山議員の質疑は、参議院のサイト(http://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/detail.php?ssp=31131&type=recorded)にアップロードされているので、是非ご覧いただきたい。加戸氏は「マスコミが自分の意見を取り上げないので、ネットの動画を見て欲しい」という趣旨の発言もしているため、ますますマスコミは加戸氏の発言を使えないだろう。

さらには7月14日(金)、京都産業大が国家戦略特区を利用した獣医学部の新設を断念した経緯について、記者会見を行った(http://www.yomiuri.co.jp/politics/20170715-OYT1T50005.html)。その理由は、「教員確保が困難だったため」としたうえで、今回の戦略特区の選定作業が不透明だったか否かについては、「不透明ではなかった」と明言している。

加計学園問題についてマスコミや野党が流布してきたストーリーは「学園の理事長が安倍首相の友人であるから、特別に優遇された」というものだった。しかし、加戸氏の国会証言と京産大の記者会見によって、このストーリーは崩れたのだ。

   謝るべきは民進党では?

これまでの本コラムでも書いてきたように、文科省と内閣府の両者が合意済みの、過去の戦略特区関係の議事録を見れば、「文科省内のメモ」にすぎない件の文書は信憑性がなく、手続きはすべて公正に行われたことが読み取れる。それが当事者間の証言によって改めて裏付けられたと言っていいだろう。

繰り返すが、文科省行政の「歪み」を示す証拠として筆者が取り上げてきた文科省告示は、大学新設申請をさせない「門前払い」のためのルールである。

結局、今年1月にやっと文科省告示の「特例」を出して、ドリルの穴をあけたが、それは、学部新設の認可ではなく、あくまで申請していいという「特例」なのだ。実際に、学部新設が認められるかどうかは、文科省において適切に審査される。「特例」では申請するだけなので、常識的にいっても「順番」が重要だ。

この点、7月14日に記者会見した山田啓二・京都府知事は「愛媛県は10年間訴え続けたのに対して、こちらは1年。努力が足りなかった」と述べた(http://www.sankei.com/west/news/170715/wst1707150016-n1.html)。これが妥当な意見だろう。

この「順番」を役所の言葉で言い換えると「申請の熟度」という。申請が前であるほど、準備がよくできているという意味の表現だ。今回のケースはまさに「申請の熟度」の問題そのものだった。この順番をひっくり返したら、それこそ権力の濫用と言われかねない。

いずれにしても、こうした当事者の意見が出てくると、これまで加計学園問題を「行政が歪められたもの」として追及していた者はつらいだろう。それは、前川氏に乗っかった一部マスコミと野党である。

民進党の蓮舫代表は「京都産業大は被害者だったのではないか」と語った(http://www.yomiuri.co.jp/politics/20170715-OYT1T50099.html)。民進党の的外れな追及があったので、京産大はやらなくてもよかった記者会見をやらざるを得なくなったわけで、むしろ謝るべきは民進党ではないか。

ついでに国民にも、無駄な時間をかけてこの問題を国会で追及したことを謝るべきだ。獣医学部新設の抵抗勢力である獣医師会から政治献金をもらった議員が、この問題を追及するというのは、国民に申し開きができないだろう。

この種の疑惑では、まずカネの流れをチェックするのがセオリーであるが、追及する側の民進党議員に疑惑があるようでは話にならない(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51813)。

    あまりに不毛

筆者がこの問題に興味をもったのは、本件については、マスコミの報道のしかたがあまりに通常のものとかけ離れていたからだ。筆者がテレビに出演した際にも、「キャスターに意見を遮られる」といった珍しい体験をした。

そして本件に過剰反応しているのは、たいてい安倍政権が嫌いな人々だ。多くの場合、憲法改正を嫌っている人々でもある。

安倍政権が憲法改正に取り組むと明言した5月3日以降、こうした反発が強くなっているような気がする。もっとも、その俎上に上がっている(1)憲法9条、(2)憲法29条の改正は、彼らにとっても批判の筋道が立てづらいものになっている。

具体的にはこういうことだ。

(1)憲法9条では、現行の1、2項はそのまま、3項で自衛隊を規定するだけだ。これは公明党が言うところの「加憲」であり、現行の自衛隊を憲法に明記するだけなので、反対しにくい。

一部の野党などは「どのような理屈を並べようと、憲法の平和主義を踏みにじることに変わりない」と勇ましいが、この「加憲」は彼らの中にも主張していた人がいるくらいで(保守系からは評判が悪いものの)、リアリストである安倍首相の真骨頂だ。

(2)憲法29条の改正の目的は、教育無償化である。これに対して「憲法改正など必要ない。個別法を改正すればいい」という反論が多いが、これでは積極的な反論になっていない。教育無償化を法改正で実現することは確かに可能だが、その場合、財務省の思う壺だ。というのも、法律での規定は必ず財政法の枠内になる。

そうすると、原則的に国債発行ができないため、無償化の財源確保のために増税か歳出カットが必要になる。必要財源は数兆円にのぼるので、日本経済を壊してしまう可能性が高い。

現在の状況は、一部のマスコミと野党が、憲法改正を阻もうとするために加計学園問題を利用しているのではないか、と邪推してしまいそうになるほどだ。もしそうなら、あまりに不毛である。

【私の論評】安倍政権支持率低下の原因は、ネガティブキャンペーンだけではない(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事で、高橋洋一氏がマスコミの報道の仕方について、問題点を指摘しています。確かに、これにはかなり問題があります。しかし、最近安倍政権の支持率が落ちたのは、マスコミのネガティブキャンペーンによるものだけであると断定する前に、過去をふりかえってみる必要があります。

2015年の集団的自衛権を含む安保法案の改正のときにも、マスコミは日々大ネガティブキャンペーンを展開しましたし、シールズのような団体が連日「アベ辞めろ」「戦争法案反対」と繰り返しました。それをテレビは毎日報道し続けました。それでも安倍政権の支持率はほとんど落ちませんでした。にもかかわらず、今回は支持率がかなり落ちています。

2015年の戦争法案反対デモ。法案成立して2年近くたちますが戦争は起こっていませんが、何か?
これには、野党による追求や、マスコミによるネガティブキャンペーン以外にも、何か理由があるものと考えられます。それは何かといえば、やはり経済だと考えられます。安倍政権が登場したばかりの頃は、機動的財政政策や異次元の金融緩和への期待度は嫌がおうでも高まりました。

これに対して、いわゆる岩石理論により、金融緩和をすればハイパーインフレになるとか、金融緩和をしても景気は良くはならないという識者もいましたが、結局はそのようなことも起こらず経済指標は軒並み改善していきました。

しかし、平成14年に消費税増税が行われてからは、状況は一変しました。個人消費が落ち込み、GDPは伸びず、デフレにまた戻りかねないような状況が続きました。その中にあつてハロウィーン緩和もあって、雇用だけは改善していきました。

2014年10月31日の「ハロウィーン緩和」を発表する日銀黒田総裁
実際に、消費増税が行われた14年以降においては、政府が実施してきた中で、消費増税の先送りや毎年の最低賃金引き上げ、そして昨年度末の補正予算ぐらいが「意欲的」な政策姿勢だったという厳しい評価もできます。2%のインフレ目標の早期実現を強く日銀に要請することはいつでもできたはずです。ある意味で、雇用の改善が安倍首相の経済政策スタンスの慢心をもたらした、ともいえます。

さらに、自民党内には、安倍首相と同じリフレ政策の支持者は、菅義偉官房長官はじめ、自民党内にはわずかしかいません。ただし、二階派は、プライマリーバランスは先送り、景気が先としています。しかし、石破氏はもとより他の派閥は全部増税派です。

そうして、次の日銀の正副総裁人事が来年の3月に行われるはずですが、そのときに最低1人のリフレ政策支持者、できれば2人を任命しないと、リフレ政策すなわちアベノミクスの維持可能性に赤信号が点灯することになります。

このリフレ政策を支持する人事を行えるのは、安倍首相しかいないのです。それが安倍政権の終わりがリフレ政策のほぼ終わりを意味するということです。

もちろん日銀人事だけの問題ではありません。仮に日銀人事をリフレ政策寄りにできたとしても、政府が日銀と協調した財政政策のスタンスをとらないと意味はありません。デフレを完全に脱却するまでは、緊縮政策(14年の消費増税と同様のインパクト)は絶対に避ける必要があります。デフレ脱却には、金融政策と財政政策の協調、両輪が必要なのです。

ここにきて、直近では財務省人事や産業経済省の人事などで、増税派が順調に出世したことなどから、市場関係者には安倍政権は経済を立て直しができないかもしれないという、ある種の失望感が生まれるようなっていたのだと思います。

ただし、、自民党の支持率も低下していますが、野党側も支持率を上昇させるどころか低下させています。

特に市場関係者による失望は、自民党の支持率の低下をまねいているようですが、かといって他党を支持するには至っていないようです。なぜなら、自民党政権は経済を立て直しができないかもしれないという失望感があっても、ではそれかわって経済を立て直しすることができる野党がいるかといえば、そうではないからです。

実際、自民党以外の政党は、ほとんどが増税派です。政権交代したとしても、増税を阻止することとはできません。それどころか、さらに加速することになるだけです。

こうした市場関係者の失望感と、最近のマスコミなどのネガティブキャンペーンなどにより、支持率が下がったのだと考えられます。そうでないと、最近の著しい支持率の低下は説明がつきません。マスコミによるネガティブキャンペーンにだけが原因であるとは、到底思えません。そうして、この隙に乗じて、増税派(政治家、官僚、マスコミ等)がまた暗躍をはじめています。この増税派の暗躍も各方面で影響与え、支持率を落としている可能性もあります。


さて、安倍首相はこのまま党内闘争に巻き込まれ、守勢に立たされるのでしょうか。それとも攻勢に出るのでしょうか。そのきっかけは大胆な内閣改造や、より強化された経済政策を行うことにあるでしょう。後者は18年夏頃までのインフレ目標の達成や、教育・社会保障の充実などが挙げられますが、端的には減税が考えられます。何より国民にとって目に見える成果をもたらす政策パッケージが必要です。それこそ消費減税がもっともわかりやすいです。

消費税の減税は、国民が目に見えてわかる経済対策です。これを実行することにより、安倍政権は、また2013年の振り出しに戻ることができます。そうして、雇用は当事よりも格段に良い状況からスタートできます。

2012年に政権交代の選挙が始まる前から、市場は敏感に反応し株価がすこしずつ上がり始めていました。

そこから、順調に経済を発展させることができれば、2020年あたりには、少なくともこれから経済がかなり回復することになると、有権者が信じられる状況になるかそれ以上になります。これがうまくいけば、安倍政権は長期政権となり、憲法改正も成就することでしょう。

ただし、これは序盤にすぎず、新たな憲法をつく出すことこそ、安倍総理の理想だと思います。ただし、これは安倍総理では成し遂げることはできないでしょう。次の政権への宿題になることでしょう。

また、これを有権者に訴えるためには、人事も重要です。コントロールには様々な方法がありますが、人事こそ最大のものであり、真のコントロールです。政策・法律が良くても、人事が駄目なそれを実行に移すことはできないのです。市場は、一部の財務省におもねる人たちや、マスコミに媚びへつらう人たちは除いて、そのほとんどが厳しい現実の中で鍛え上げられた実務家たちの集まりであり、それらの人々は人事を重視します。

さらなるアベノミクスの拡大には実現の余地はあります。ただ、それを行うだけの政治力が安倍首相にまだ残っているかどうか、そこが最大の注目点です。それを占うには、まず8月の組閣において明らかになることでしょう。それに続き、次の各省庁の人事で、安倍首相の本気度がうかがわれることになると思います。

ブログ冒頭の記事で、高橋洋一氏は、憲法改正について「リアリストである安倍首相の真骨頂だ」と高い評価をしています。経済面でも、安倍総理にリアリストの本領を発揮していただきたいものです。

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