2015年11月10日火曜日

民主党議員よ、頼むから少しは経済を勉強してくれ!~『朝ナマ』に出演して改めて感じた、日本の野党のお粗末さ―【私の論評】第二社会党の道を歩む民主に期待は無駄!本当は増税政党の自民も無理!期待できるのは今は次世代の党のみ!


民主党議員には視力検査が必要だ

6日深夜放送の『朝まで生テレビ』(テレビ朝日系)に出演した。これまで安全保障問題についての野党のダメぶりは、本コラムで何回も書いてきた。

安保法について、その本質をいえば、①同盟関係の強化により戦争リスクを最大40%減らし、②自前防衛より防衛費が75%減り、③個別的自衛権の行使より抑制的(戦後の西ドイツの例)になるという点だ(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/44375)。

それにもかかわらず、民主党はまったくトンチンカンで、「戦争法」との誤ったレッテル貼りをしてしまった。これでは極左政党と何ら変わりはない。民主党内でも意見は対立、良心的な松本剛明氏が離党し、比較的まともな党内右派はだんまりを決めてしまった。

2012年の総選挙で、安倍自民党が勝利し政権を奪取したのは、「金融政策とは雇用政策である」ということを理解していたからだ。それを、本コラムでは「安倍自民の勝因は争点を金融政策にしたこと」(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/34351)と書いた。

『朝ナマ』のテーマは、アベノミクスの総括と社会保障の議論だったが、出演した民主党の山井和則氏は、いまだに雇用政策における金融政策の重要性を理解できていないようだった。山井氏は社会保障分野の専門家であり、そこでは随所に鋭いところも見せるが、肝心の雇用政策では残念ながら知識不足だ。

筆者は、「金融政策の効果を見るには就業者数をみればいい」と、次の図を出した。



このデータほど、安倍政権と民主党政権の金融政策の差を如実に示すものはない。はっきりいって、民主党の完敗である。

ここまで明らかなのに、何を見ているのか、山井氏は民主党時代、「就業者数は増えている」と言い張った。図をもう一回出して、「よく見てくれ」と言おうと思ったが、大人げないのでやめた。

テレビの視聴者からは、「民主党議員は経済政策の勉強ではなく、視力検査が必要」という声もあった。

ピケティにもそっぽを向かれた民主党

ちなみに、マクロ経済の知識があれば、株価から将来の就業者数、将来の大卒内定率も予想することができる。それらは以下の図のとおりだ。株価は、金持ちだけのものだと公言する民主党には辛いデータだろう。何しろ株価が上がるとかなりの確率で、就業者数が伸び、大卒内定率が高まるのだから。






もっとも、金融政策の無理解は山井氏だけの問題ではなく、民主党全体の問題である。

(あえていえば、自民党も、2012年の総裁選では、安倍氏以外は金融政策をわかっていなかったが。2012年9月17日付け本コラム「金融政策のイロハも知らない自称「金融財政のスペシャリスト」も登場!「経済政策」から見た自民党総裁選5氏の「通信簿」http://gendai.ismedia.jp/articles/-/33559 )。

民主党は、ピケティ・ブームにあやかり、ピケティ氏に金融政策を否定させようとしたが、見事に振られた。テレビでも言ったが、ヨーロッパの左派政党は、金融政策を理解して雇用確保のためにそれを使っている。

民主党内にも、金子洋一氏や馬淵澄夫氏ら金融政策をきちんと理解している者もいるので、そうした人に頼んで党内で早く勉強会でもやるべきだ。

左派経済学者の中にも、「左派政党がもっと金融政策を勉強すべき」という人もいるので、そうした人を講師にでも呼び、きちんと勉強すればいい。そうでないと、「雇用の党」の看板が泣くだろうし、政権交代なんて夢のまた夢だ。
そもそも「新アベノミクスの基礎」を分かっていない

『朝ナマ』で言ったのは、アベノミクスの3本の矢は、政策手段としてはオーソドックスで、金融政策と財政政策というマクロ政策、それに規制緩和(成長戦略)というミクロ政策からなるものだということ。これは世界どこでも標準的なもので、代えようがない。

新3本の矢は、以上のマクロ政策とミクロ政策によって「達成すべき目標」である。達成すべき目標のうち、わかりやすいものを3つあげているだけだから、あえて言えば「3本の的」だろう。

これについて、マスコミは新味がないと馬鹿げたことういうが、政策とは手段は世界共通であり、目標もおおざっぱに言えば、GDP増大と雇用の拡大と、これもだいたい世界で同じである。

それをいかにうまくやるかが重要であり、新聞ネタになるような新味なんてあるはずない。マスコミは、こうした基本的な素養がないので、「新味がない」などというトンチンカンな指摘をするのだ。

「一億総活躍社会」というネーミングはどうか、というのはわかる。あえていえば、就業者数が増加して完全雇用状態になることを目指しているのだろう。要するに、すべての人が適材適所で働けるような社会、という意味だ。

これを達成するのは、金融政策や財政政策などのマクロ経済政策を理解していれば、それほど難しくない。失業率を3%程度までに持っていけば、完全雇用状態になって、ほとんどの業者で人手不足になって、賃金が上昇するようになる。

そのためには、金融緩和と財政政策によって、GDPギャップをゼロになるようにすればいい。以下の図も、朝ナマで示した図であり、今のところのGDPギャップ10兆円について、金融緩和を行うとともに、補正予算10兆円で埋めれば、半年程度で完全雇用状態になるだろう。





まず、財政政策であるが、10兆円補正というと、すぐ財源論が出てくる。早くも、「補正は3兆円程度」などととくだらない声(これは財務省のリーク)が聞こえてくる。

本コラムの読者であれば、外為特会で20兆円の含み益があることを知っているだろう。『朝ナマ』でもこれを紹介した。民主党時代は円高だったので、含み損20兆円となっていたが、今や円安になって含み益は20兆円。これは全部国民に還元するべきなのだ。

さらに、労働特会での差益も紹介した。アベノミクスで失業率が下がったので5兆円以上余裕がある(2013年度の労働保険特会雇用勘定資産負債差額は7兆円)。放っておくと厚労省役人がムダものに使う可能性ありがあるので、まず雇用保険料を取り過ぎたといって労働者に半分還元するのが筋だろう。

残り半分を企業に返すかどうかは政策判断であり、これを社会保障財源に充当するのは検討に値する案である。もちろん、こうしたことを官僚任せにするのではなく、政治が必要と判断すれば、法改正を主導すべきである。

『朝ナマ』に出演していた社会保障関係の民間人はいい人ばかりなので、財務省やその走狗に「社会保障財源の確保のため」といわれると、すぐ増税賛成となってしまう。はっきり言えば、消費税が社会保障財源になるといっても、強固なヒモツケではなく、ゴムのようなものだから、消費増税が社会保障増には直にリンクしない。

それを説明してもわかりにくいので、政治的に手が届きやすい「財源」の例を言ったまでだ。これに対して、財務省は筆者の指摘する財源は恒久財源でないと反論するが、恒久財源ではなく当面3年の財源でもいい。当面3年がないとその先もないのだから。

金融政策もぜひ理解してほしい

以上を考えれば、補正10兆円なんて、簡単にできる。その中で、番組内で問題になっていた介護や保育の問題も当面3年は解決できる。

この点は、山井氏も納得できたようだ。もっとも、労働特会も外為特会も、単にアベノミクス効果が出たので、それを素直に国民に還元するというだけの話である。役人の営業努力などまったくないのだから当然だろう。金融政策を理解していないと、これらの財源を役人から取り上げるのも大変だろう。

次に金融政策であるが、ここでは、ちょっと日銀に苦言を呈しておこう。

日本銀行は10月31日、2015年10月の「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)を公表するとともに、金融緩和を見送った。

その展望レポートの中で、「構造失業率はこのところ3%台前半である」と書かれているが、これは間違いだろう。つまり、今現在でほぼ完全雇用というわけだからだ。

また、日銀が今を完全雇用というのは、同レポート中の図でも現時点でGDPギャップはないとしていることからもわかる。


これは筆者の示したものとまったく違っている。もし、GDPギャップがゼロならば、物価はもっと上がっているはずだし、実質賃金も上がっていなければおかしい。この点は、かつて完全雇用失業率を2%台と主張していた日銀審議委員の原田泰氏から、日銀はよく意見を聞くべきだ。

それにしても、日銀の経済見通しはまったく外れている。2年で2%のインフレ目標もどんどん先延ばしされている。

基本的な経済状況も外している。2014年度の経済成長率について、2013年4月の展望レポートでは1.4%と予想していたが、2014年度が終わった2015年4月には▲0.9%だった。2014年度のインフレ率は、2013年4月の1.6%が2015年4月に0.8%だった。


2015年度も外している。成長率は2014年4月に1.5%だったが、今回の2015年10月には1.2%。インフレ率も2014年4月に1.9%を今回の2015年10月は0.1%まで下方修正している。インフレ率はもう下方修正はないかもしれない。


しかし、成長率では、4-6月期はマイナスとなって、7-9月期もマイナスが予想され、まさに二四半期連続のマイナス成長で景気後退にならんとしている。次の来年1月の中間評価では成長率はさらに下方修正に追い込まれるだろう。
弱い野党が日本をダメにする

逆にいえば、これほどまで足元の経済が悪化しているにもかかわらず、10-12月期以降、急反発すると日銀は考えているのだろうか。かなり甘い経済見通しであるといわざるを得ない。

また、黒田日銀総裁は、「長期的にみれば予想物価上昇率は上昇するという傾向は維持されている」という。予想物価上昇率は金融政策のカギだが、展望レポートのデータをどう読んだら、基調として予想物価上昇率が上がっているのか、少なくとも筆者にはわからない。素直に読めば、予想物価上昇率は下がり気味である。

本来であれば、今回の展望レポートにあわせて追加緩和すべきであった。これほど見通しを外して、政策を打たないというのは、筆者には理解できにくい。

こうした批判は、金融政策を理解できない民主党にはできないだろう。きちんと勉強しないと、健全な野党にもなれないというわけだ。

ここまで民主党ダメだと、安倍政権は民主党が今の体制のうちに、解散総選挙を仕掛けたくなってしまうのではないか。与党がそんな手を打てなくなるような野党が必要である。

高橋洋一

【私の論評】第二社会党の道を歩む民主に期待は無駄!本当は増税政党の自民も無理!期待できるのは今は次世代の党のみ!

民主党のお粗末さは、このブログでも何度も掲載してきました。高橋洋一氏が上で述べていることは、全く正しく的を射たものばかりだと思います。そのため、高橋氏の主張に対して反論するとか、批判するなどということは全くありません。

ただし、自民党の議員も多かれ少なかれ、民主党の議員と同じく「頼むから少しは経済を勉強してくれ」といいたいです。自民党の議員の多くも、民主党ほど酷くはないというだけで、酷いものです。

そもそも、8%増税の事の発端を思い返してみれば、それは良く理解できます。8%増税を言い出したのは元々は、自民党です。

その8%増税に乗っかった形で、自民、民主の連立政権を目論んで、民主党を増税推進派に変えたのがあの菅元総理です。そもそも、自民党は増税推進派が多数派であり、是が非でも、増税したいとする議員が大勢を占めています。これに関しては、このブログにも過去に掲載したことがありますので、その記事のURLを以下に掲載します。
消費増税の理由 ありとあらゆる理屈つけ8回も政府は変えた―【私の論評】結局、決め手に欠ける来年4月時点での消費税増税の理屈?これで国民は納得するのか、本当に増税してしまえば、増税派議員、財務省に非難が集中することを覚悟しておけ!
8%増税が決まったときの財務事務次官は木下康司だった
 増税論議は、【1】「財政危機論」からスタートした。2006年の段階で、谷垣禎一・財務相(現法相)は、「長期債務(国の借金)のツケを子や孫の世代に先送りしない」と消費増税を主張した。借金穴埋めのための増税は財務省の悲願であり、同省出身の野田毅・自民党税調会長も「消費税を上げないと財政破綻する。国債大暴落になる」(2010年2月)と財政危機を煽った。 
民主党政権は増税反対だったが、菅直人氏が首相になると180度姿勢を転換した。折からの欧州経済危機で「このままいったらギリシャのようになってしまう」(2010年7月)と消費税10%を参院選公約に掲げた。「子孫にツケを回さない」も、「ギリシャにならない」も、財政再建のために増税が必要という論理である。 
しかし、参院選で国民が増税ノーを突きつけ、菅政権が敗北すると増税の理由はコロコロと変わっていく。 
次の口実は東日本大震災だ。菅首相は震災後、参院選敗北でお蔵入りさせた増税論議を【2】「復興財源のため」という口実で再開した。 
面白いことに震災復興のための消費増税に反対したのは自民党と公明党だった。復興財源のための臨時増税にすれば、復興が終われば税率を戻さなければならない。そこで消費増税を恒久増税にするため、当時の石原伸晃・自民党幹事長らは「消費税は社会保障に充当すべきだ」と言い出した。
菅首相の後を継いだ野田佳彦首相はそれを丸呑みし、【3】「消費税増税分は全額、社会保障に使う」(岡田克也・副総理)と国民に説明して民自公3党合意を結んだ。 
それがなぜか【4】「公共事業のため」にすり替わる。国土強靱化を掲げる自民党は増税法案の修正協議で財源を「成長戦略並びに事前防災」に使う条項を盛り込み、「財政破綻する」といっていた野田税調会長まで「税収のうち5兆円は公共事業に使える」ことを認めた。 
そうなると、法案を成立させるためなら何でもありだ。【5】「3党合意だから増税すべし」という理屈が出てくる。公明党の山口那津男・代表は「3党協議で結論を出す政治を確立しないと期待が地に落ちる」と本末転倒な論理を展開し、民自公3党で法案は成立した。 
この時点で、政治家は公共事業拡大に欲の皮が突っ張り、「子孫のため」も「社会保障」もどうでもよくなっていたのである。
そして今度は麻生氏が7月23日のG20会議後に【6】「国際公約になっている。上げなかった方がよほど大きな影響を受ける」と発言。
「経済指標を見極めて判断する」といっていた安倍首相も、東京五輪の招致が決まった途端、増税実施へと大きく舵を切った。【7】「五輪が来たから増税できる」という思惑が透けて見える。
だめ押しは、国債暴落のリテールリスク論で、非常に可能性は低いが、起きたら対応できないリスクのことを意味する。つまり最後の増税理由は【8】「隕石落下ほどわずかな可能性のリスクを避けるため」だったというのである。 
次々と繰り出した増税の理屈の自己矛盾に苦しんだ挙げ句、強引に増税を決め、“七転八倒”の苦しみだけを国民に押しつけたことがよくわかる。
この記事の過去の政府の増税の理屈のうち、【7】の安倍総理が、「五輪が来たから増税できる」と考え、増税に踏み切ったという見方は、私は間違いであると思います。ブログ冒頭の記事で、高橋氏が指摘しているように、安倍総理はマクロ経済政策について、理解しているので、増税には消極的だったと思います。

しかしながら、あの時点では、財務省は無論のこと、野党はもとより、自民党内のほとんどが増税一色で、マスコミも増税一色、識者も増税一色であり、この状況ではさしもの安倍総理も、増税に踏み切らざるを得なかったのだと思います。

「五輪が来たから増税できる」という思惑も、安倍総理がそう考えたというのではなく、自民党議員の多くがそう考えて、総理にその理屈も含めて、増税すべき根拠を示して、増税を迫ったのだと思います。

このような状況で、増税しなければ、それこそ、発足したばかりの安倍政権が崩壊する恐れもあったので、渋々承諾したというのが事実だと思いす。

実際、昨年の暮れには10%増税の見送りを選挙公約に掲げて、実際に大勝利して、延期しています。

そもそも、自民党議員も少しも経済の勉強をしておらず、経済に関しては全く知見を欠いた議員が多いというのが実情です。だから、ほとんどの議員は腹の中では増税すべきと思っています。

ただし、現状では、自民党総裁の安倍総理が、増税をしないという方針を掲げて選挙で勝利しているため、党の方針として、増税はしないということで、一致しているだけであり、「頼むから少しは経済の勉強をしてくれ」というお粗末な議員の集まりであることには今でも変わりありません。

その詐称として、安倍総理自身も今後の活躍に期待した、女性閣僚ですら、増税すべきことを主張しています。それに関しては、以前のこのブログにも掲載したことがありますので、その記事のリンクを以下に掲載します。
増税派に堕ちた自民党大物議員がアベノミクスを潰す!?―【私の論評】財政再建も安保法制も何でも、周りの空気に流されるな!地頭で考え抜け(゚д゚)!
増税派に堕ちた自民党大物議員 稲田朋美議員 
写真は、ブログ管理人挿入 以下同じ

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、稲田政調会長がそのような発言をしたタイミングについては、この記事には掲載していないので、以下のそのタイミングに関する記事のリンクを掲載します。
甘利氏「論理矛盾」×稲田氏「雨乞い」 財政再建で対立
2015年6月13日06時48分 朝日新聞デジタル
 政府の財政再建をめぐり、甘利明経済再生相と自民党稲田朋美政調会長の対立が12日、表面化した。経済成長による税収増を期待する甘利氏が、歳出額の数値目標を掲げない方向で議論を進めているなか、稲田氏が「2018年度に歳出額の目標設定を行う」との党方針を決定。甘利氏が「論理矛盾」と反発すれば、稲田氏は成長重視路線を「雨乞い」と批判し返した。 
 稲田氏が委員長を務める党財政再建に関する特命委員会はこの日、財政健全化策の最終報告案を決定。党は昨年12月の衆院選で「国・地方の基礎的財政収支(PB)を2020年度に黒字化」と公約しており、中間段階の18年度に歳出額の目標を設定することを明記した。社会保障費の伸びを「年5千億円程度」に抑える目標も掲げた。 
 政府が示す今後の経済成長率(名目3%、実質2%)については「楽観的」と指摘して、「経済成長だけではPB黒字化のめどが立たない」とした。 
 一方、甘利氏が担当相を務める政府の経済財政諮問会議が10日に示した2015年度「骨太の方針」の骨子案では、「18年度のPBの赤字を国内総生産(GDP)比で1%に抑える」としただけで、歳出の上限額は盛り込まれていない。安倍晋三首相が「経済再生なくして財政健全化はなし」という方針を示しており、歳出抑制よりも経済成長による税収増で財政健全化を目指しているためだ。 
 このため、甘利氏は12日の記者会見で党の方針について「(首相の考え方を)共有していながら、経済成長と無関係に歳出を縛るのは論理矛盾だ」と述べ、いら立ちを隠さなかった。 
 これを聞いた稲田氏は反発。「当てにならない(経済)成長を当てにして、雨乞いをしてPB黒字を達成させるとか、そういう話ではない」と語った。稲田氏は16日に首相あてに最終報告を提出するが、党方針が「骨太の方針」に反映されるかは不透明だ。(相原亮、鯨岡仁
ブログ冒頭の記事を書いた、高橋洋一氏は過去に「経済成長なくして、財政再建なし」と述べています。私も、そう思います。日本のGDPの60%以上は、他の先進国と同じように、個人消費によるもので、デフレから完璧に脱却していない状態で、さらに10%増税など実行してしまえば、個人消費が減り、結局のところ税収も減ることになります。

税収が減れば、財政債権もままならなくなります。そんなことよりも、今は金融緩和と、増税などの緊縮財政などはやめて、積極財政を実行して、デフレからいち早く完全脱却することが、最優先課題のはずです。

そんなときに、増税するなどと語るのは、全くの経済オンチとしか、いわざるをえません。

こういう流れをみていると、自民党も本当は、民主党と変わらないくらい経済オンチの集団であるということがいえると思います。

ただし、民主党と比べて自民党にはまだ希望があります。実は甘利氏自身が、従来は経済オンチであり、無論増税推進派であったのですが、それがあの粘り強いTPP交渉をしているうちに、いつの間にか経済に関しても上記のようにまともな発言をするようになりました。

甘利明経済再生相

まともに、国民や日本という国をまともに真剣に考えた場合、やはり甘利氏のようになるのが当たり前だと思います。そうして、特に安倍総理の意を組めば、甘利氏のようになるのが当たり前のことだと思います。これからすると、稲田朋美に関しては本当に疑問符がつきます。

残念ながら、民主党にはそのような事例は見受けられませんし、そもそも党代表が純然たる経済オンチですし、安全保証に関しても、頓珍漢を通り越して、摩訶不思議な領域に達していますから、確かにごく一部金子議員や馬渕氏のようにまともな議員もいますが、私としては、もう民主党は、次の選挙でボロ負けして、過去の社会党のような道をたどるものと思います。期待するほうが、無理というものです。ただし、まともな議員が数少なくとも存在するということでは、かつての社会党よりはましかもしれません。

さて、こんなことを考えると、自民党も野党も特に経済、特にマクロ経済に関しては、まともに理解している議員が少ないです。大阪維新の党に関しても、まずは橋下氏があまり経済に明るくないです。それに、大阪維新の党は、そもそも大阪を地盤とする党ですから、経済というとまずは、緊縮財政というほうに傾くのは当然のことで、国政、その中でも、マクロ政策ということになると、現状ではかなり無理があるものと思います。

こうした中で、最近随分とまともなことを言う政党が出てきました。それは、あの次世代の党です。次世代の党の政策については、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【次世代の党ニュース】経済の現状を踏まえた緊急提言を提出―【私の論評】野田聖子も、稲田朋美もまとな政治家の器ではない!まともなのは輝きを増す中山恭子氏だ(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、次世代の党の政策は、以下のようなものです。

"デフレ脱却まで徹底した金融緩和・消費増税10%の延期外為特会の含み益20兆円を活用した補正予算を組み景気対策・金融緩和で名目成長率5%をめざす" 

非常にまともです。これでは、高橋洋一氏も両手を上げて大賛成でしょう。高橋氏は、当然のことながら、次世代の党に関してはお粗末とは思っていないでしょう。

ただし、次世代の党は成立してからまだ間もないし、それに議員数も少ないです。参議院議員5人、衆議院議員0人、地方議員は8人です。

この状況では、まだまだ国政に大きな影響を及ぼすことはかないません。高橋洋一氏の言うように、日本の野党は、民主党をはじめとして、非常にお粗末です。

その中で、特にマクロ経済政策に関して、はじめてまともなことをいう政党がでてきたわけですが、残念ながらまだまだ小さな存在です。

しかし、まだ昨年結党されたばかりの政党ですから、今後の頑張り次第です。何とか、党勢を拡大して、国政に大きな影響を与える存在になっていただきたいものです。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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2015年11月9日月曜日

“世界で最も他人に冷たい先進国”日本が知るべき言葉「大きい者が小さい者を助けるのは当たり前」―【私の論評】過去20年近くもデフレだった日本とそうではない国々とを同列に論じるのは間違い(゚д゚)!

“世界で最も他人に冷たい先進国”日本が知るべき言葉「大きい者が小さい者を助けるのは当たり前」

松田扶美


ピアニスト内田光子さん

内田光子氏が日本の「世界文化賞」を受賞した。イギリス在住で若い頃から世界各地で活躍する彼女はあまりにも有名なピアニストだ。

受賞の言葉に「受賞金の一部でシリアから防寒着もなく逃亡してくる子供たちに1万枚の毛布を寄付したい」と語った。

私にはそれはまったくごく当たり前のことに聞こえる。彼女ほどの大物でなくても、例えば中学生でもプレゼントされた一部を自分より弱い立場の者に何か貢献したいと寄付することはよくある。

「大きい者が小さい者を助けるのは当たり前」という言葉があることを知ったのは、30年も前、貧乏で無名の創作家だったとき、知人の紹介で有名な女優が朗読してくれ、作品を救ってくれた。そのお礼を月割で支払いしたいと申し出たが、彼女は笑って「大きい者が小さい者を助けるのは当たり前」と言って、「将来いつか、あなたが大きい者になって、私を雇ってくれることになるかもしれないわよ」と言ってくれた。

こちらでは、資産家であっても、スポーツ選手であっても、芸術家であっても、大きくなって成功した者は、社会に還元するのが当たり前と考える人が多い。知る限りの有名人は自分の趣味や専門分野で財団法人を持っている。

つまり、社会的に名のある者は社会を救い、貢献できる選ばれた者だから、社会もそれを期待している。彼らは寄付しても損することはない。税金面で考慮されるし、社会的にもっと尊敬を得られる。

先日「世界で最も他人に冷たい先進国は日本」という統計がイギリスの「Charities Aid Foundation」から発表され、それに対する日本人のコメントが沢山寄せられていたのを読んだ。

その記事はこちら。

世界で最も他人に冷たい先進国、日本

私が思うに、「他人に迷惑をかけないで生きている」のだから「お前も迷惑かけるな」とか、「弱い者は自分の責任だから知ったことではない」とか、「国か誰かが面倒みてやるべきだ。自分の責任の範囲ではない」とかではないだろうか。

「日本人は『おもてなし』はできても『思いやり』はない」とスウェーデン出身の日本在住のタレントが言っているのを読んだ。私も当たっているところがあると思う。

【私の論評】過去20年近くもデフレだった日本とそうではない国々とを同列に論じるのは間違い(゚д゚)!

この記事を読んで残念に思った人は多いことでしょう。私も非常に残念に思いました。しかし、日本人が世界で最も他人に冷たいというのは、私自身は受け入れがたい事実です。

私は、決してそうではないと思います。日本人が、世界で最も他人に冷たくなったようにみえるのは、それはそれなりに原因があると思います。

なぜ、そうなってしまったのか・・・・。それには、それなりの背景があると思います。世界の他の国々には見られない、日本の特異な状況を見極めないと物事の本質を見失います。

では、他国と日本の違いは何かといえば、他国はそうではないのに、日本だけが、過去20年近くも酷いデフレに見舞われてきたという事実です。

このデフレ、せいぜい5年くらいであれば、そうでもないですが、日本では過去16年間完璧なデフレでした。デフレ気味ということでいえば、20年にもなりました。このようなことは、他国ではありませんでした。本当に日本固有の現象です。

そうして、デフレは、インフレとは異なり、年率でもせいぜい2%くらいにしかならないので、数年くらいではその悪影響はあまり目立ちませんが、さすがに10年以上も継続すると、経済的な事以外にも、人々の心にかなり暗い影を及ぼします。

それについては、昨日もこのブログに掲載したばかりです。その記事のリンクを以下に掲載します。
借金883万円……カラダを売って大学進学?“女子大生風俗嬢”大量参入の背景とは―【私の論評】10%増税して、追加金融緩和もしないなら、さらに“女子大生風俗嬢”大量参入を促すことになる(゚д゚)!
 

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事からデフレがいかに若者にとって、経済的虐待になっているかを示した部分のみを以下に引用します。

だから、私自身は、大学生活とはそんなもの(ブログ管理人注:デフレでない時の呑気な私の学生生活を示しめした)と、長い間思って過ごしていましたが、今が十年くらい前から、新卒の人と話をすると、そうではないことがわかりました。一番驚いたのは、札幌の大学で4年間過ごしながら、薄野に一度も飲みに行ったことがないという新人でした。

毎年開催される「ススキノ祭り 花魁道中」出発地所 豊川稲荷
その人にどこに飲むときはどこで飲んだのかと聴くと、家飲みがほとんどで、たまに自宅近所の居酒屋に行く程度だと語っていました。そうして、この新人は、家庭は比較的裕福だとみえて、学費は親に全部支払ってもらったそうで、それでもバイトをしていたというので、遊び用の車でも買ったのかと思い、稼いだ金はどうしたのかと聴くと「ほとんどを生活費と貯蓄にあてていた」というので、本当に驚いてしまいました。 
そうして、その貯蓄額が数百万ということで、またまた驚いてしまいました。とにかく、私達の頃とは、大学生も様変わりしたということです。とにかく、私達の時代は、大学生というと、遊ぶのが当たり前でしたが、今の学生はそんなことはないのです。 
この新人も、親が比較的裕福で、学費を支払ってもらい、その上バイトまでしていたのというのですが、なにしろ、自分の周りの人のほとんどが、かなり倹しい生活をしていたので、自然とそれに合わせて、倹しい生活をして、余ったお金は貯蓄したというのが実体なのだと思います。 
全く信じがたいことです。しかし、なぜこのようなことになってしまったのかといえば、無論学費が従来よりも上がったということもありますが、それ以上に悪影響を与えたのがデフレです。 
確かに、私が学生時代のときは、不景気なこともありましたが、最低限デフレであったことはありませんでした。だから、若者が今のように、将来に不安を抱えているということはありませんでした。 
ある程度有名な大学であれば、いずれどこかの一部上場企業などには、さほど無理しなくても入れるだろうと、多くの人が思っていました。有名大学でなくても、まあ何とかなり、それなりの企業に入れるし、一人前になれるだろうと、漠然とそう思っていました。 
そうして、今から考えると信じがたいことですが、普通の若者がとんでもない高級車を購入していました。1000万以上の車を購入している若者もいました。なぜそんなことができたかというと、良い車なら、比較的メンテを良くしておけば、比較的良い価格で中古車として転売できたからです。今なら信じがたいことです。 
しかし、本当にデフレになってからは、激変しました。若者は、酒をあまり飲まなくなり、車を買うこともなくなり、あまり遊ばなくなりました。 
そうして、有名大学や大学院に行っている学生ですら、卒業と同時に数百万の借金を抱えるということも珍しいことではなくなりました。 
何よりも激変したのは、学生の親の賃金が増えるどころか、減ってしまったことです。さらには、その親もいつリストラにあうかもわからず、常に将来に不安を感じるようになりました。その親をみて、育った子どもも、親を見習い、常に節約し、無駄遣いはしなくなり、遊ばなくなりました。そうして子どもも、大学を卒業しても、まともに就職できるかどうかもわからず、将来に不安を抱えるようになりました。
紫色:デフレ状態 紺色:0 - 2% 水色:2 - 5% 緑色:5 -10% 黄緑色:10-15% 橙色:15%-25%
赤色:25%以上 (
CIA調べ、調査年度は国ごとに異なる)クリックすると拡大します

これは、20年近くも日本が経済の癌ともいわれる、デフレを放置してきたからにほかなりません。デフレは、年長者にとっても、大変なことですが、これから旅立とうとする若者にとっては、経済的虐待にほかならないものでした。 
しかし、2013年からは、日銀が金融緩和に転じ、雇用などの数値もはっきりと上向いていたにもかかわらず、昨年の4月からは、8%増税を実施し、経済は低迷しました。 
今の日本は、言葉の厳密な意味においては、もはやデフレではありません。 
しかし、過去20年近く続いた、デフレの悪影響はまだ色濃く残っています。だからこそ、実際にこのブログ冒頭の記事のようなことが未だに継続されているのです。 
こんな状況をはやく脱却するためには、財政均衡主義ではなく、やはりさらなる追加金融緩和を実行し、増税などの緊縮財政をするのではなく、公共工事の供給成約はあるものの、公共工事も増やせるだけは増やして、その他に、減税や、給付金政策を強力に実行して、経済を成長させいち早くデフレから完璧に脱却すべきです。 
そうすれば、税収もあがり、財政赤字もなくなります。まさに、経済成長なくして、財政均衡などありえません。10%増税などすれば、また深刻なデフレに見舞われ、税収が減り、財政赤字が増えることになります。 
とにかく、今の財務省や政治家や、マスコミ、識者など、あまりに現在の若者の実体を知らなさすぎます。だから、平気で10%増税などと言い出すのです。
この記事の私の論評では、デフレではなかった頃の私の学生生活と、最近の若者の世知辛い学生生活を対比しましたが、これはあくまで、私の周りの人ということで、この人たちはそれなりにまだ恵まれているのだと思います。現実には、デフレの影響は甚大です。

それを示す記事を以下に掲載します。
若年者死因トップは自殺 先進7か国で日本のみ―【私の論評】若者の死因の第一位が自殺になったのは、デフレ退治をしなかったことによる大きな罪ということを理解しない人が多いためますます、悲劇が続く?
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、日本の若年者死因のトップが自殺ということは、他国には見られないことであり、そのような国は他国にはあまりありません。

 

そうして、この背景にはデフレの悪影響があります。

さらに、デフレの悪影響に関しては、さらに辛辣なことを言う、経済学者もいます。それに関しては、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。

【田中秀臣氏TW】財務省は「人殺し」の機関の別称だといって差し支えない―【私の論評】政治主導を実現するため、財務省殺人マシーンは分割して破壊せよ!日銀殺人マシーンの亡霊を蘇らせないために、日銀法を改正せよ(゚д゚)!
この記事も、詳細は、元記事をご覧いただくものとして、この記事では、以下の田中秀臣氏の以下ツイートを掲載し、それに対する私の論評を掲載しました。

財務省は「人殺し」の機関の別称だといって差し支えない。もし私の前に財務省の官僚で(現状の日本経済での)増税派がいれば、遠慮なく「この人殺しめ」といわせていただく。それぐらい言わないではこの世は浮かばれない。批判したいバカはどうぞご自由に。こちとら実名でやってる覚悟があるんだよ。

さて、このツイートを皆さんは過激だと思うでしょうか。私は、そうは思いません。それは、統計数値にしっかりと示されています。そのグラフをこの記事から以下にコピペさせていただきます。


当時の日本は、日銀は金融引き締め政策を頑なに維持し、97年には5%増税がなされました。そうして98年には、日本は完璧にデフレに陥りました。前の年までは、自殺者数は2万人台だったのですが、98年には3万人台になりました。そうして、内訳をみてみると、経済苦を理由に自殺する人がかなり増えた時期でもあります。

デフレが以下に悲惨なものか、このブログでは過去にいくどもそれに関して掲載してきましたので、その記事のリンクを以下にさらに掲載します。

「子どもが生まれたら10人に1人、離婚したら半分以上が貧困になる時代を生きる」―【私の論評】ちょっと待ってくれ、貧困の大きな原因の一つとして、個々人の努力や社会制度の問題の前にデフレがあるのでは(゚д゚)!
40歳未満の非正規社員57%が「自活できない」 9割が年収「300万円未満」-【私の論評】ちょっとまってくれ、非正規社員の多くが自活できないのは、デフレのせいではないのかい!朝日新聞をはじめとするメデイアの虚偽報道によって創作されたもう一つの歴史問題に注目せよ(゚д゚)!

これらの記事は、ほんの一部に過ぎません。このブログでは、デフレの悪影響をかなり掲載してきました。

そうしてた経緯から、このブログ冒頭の記事のように、デフレではなかった他国と単純に比較しいて、日本人には「思いやり」がないなどと断じるのは、間違いだと思います。

ことわざに、「衣食足りて礼節を知る」というものがありますが、まさに過去の日本人はデフレで、衣食も足りていないような状況でした、将来にそこはかとない、不安を感じている人が、心に余裕を持てるはずはありません。

このような環境にあったからこそ、日本人は心に余裕を失い、一見「思いやり」がないように見えるようになってしまったのです。

日銀は、2013年より、金融緩和に転じ、デフレが解消される兆しが随所に観られるようになりました。ところが、平成14年4月から、8%増税が導入され、せっかく金融緩和によって、良くなった経済が振り出しに戻ってしまいました。

こんなことは、はっきりしているにもかかわらず、財務省は、財政均衡のために、10%増税を声高に叫び、それに賛同する人々も大勢います。しかし、財政均衡を目指して、増税しても税収は減り、財政赤字は期待できません。

まさしく、経済成長なくして、財政均衡はありえないのです。にもかかわらず、財務省は増税を声高に叫びます。

そうして、ブログ冒頭の記事には、寄付の話がでてきました。そうして、日本人は寄付をしないから、「思いやり」がないなどと日本を批判しています。

しかし、それは真実ではありません。欧米では、とにかくNOPなどに寄付すると、かなりの減税措置があります。だから、お金を儲け過ぎで、税金で取られるくらいなら、自分の金の使いみちのわかるNPOや社会事業に寄付したほうが良いと考える人も大勢います。

しかし、日本では、財務省による財政民主主義という壁があります。財務省の立場としては、多くの金が寄付にまわるということは、財政民主主義の考え方からすると、好ましくないというのです。

ですから、日本では、NPOや社会事業に多額に寄付したとしても、減税措置がないか、あったにしても、微々たるものです。だから、日本では寄付金文化が根付いていません。

だかからこそ、これをもって、日本人には「思いやりがない」などと断定することは間違いだと思います。

それにしても、財務省は、増税もそうですし、似非財政民主主義といい、本当に罪深い組織だと思います。

日本がデフレから完璧脱却し、数年すれば、日本人にも余裕ができ、本来日本人が持っている「思いやりの心」も、「おもてなしの心」と同じように日本人の美徳として、認識される時代がくると思います。

私は、そう思います。みなさんは、どう思われますか?

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【関連図書】

2015年11月8日日曜日

借金883万円……カラダを売って大学進学?“女子大生風俗嬢”大量参入の背景とは―【私の論評】10%増税して、追加金融緩和もしないなら、さらに“女子大生風俗嬢”大量参入を促すことになる(゚д゚)!


屈託のない女子大生 写真は本文とは直接関係ありません 以下同じ
 ノンフィクションライター・中村淳彦さんは、新著『女子大生風俗嬢』(朝日新書)で、ここ10年、女子大生が風俗に続々と参入し続けているという驚愕の現実を伝えている。

これまでにも『日本の風俗嬢』(新潮社刊)、『ルポ 中年童貞』(幻冬舎刊)など、風俗業やアダルトビデオ業界についての著作に定評がある中村さんによると、どの風俗店にも一定数の女子大生風俗嬢が存在するという。

彼女たちがセックスワークを選ぶ理由は決して“遊ぶ金欲しさ”などではなく、ほとんどが「学費を払うため」だ。

いわゆるバブル世代と呼ばれる世代は、世帯収入が高く、大学の学費は親が支払うことが当然だった。しかし、慢性的な雇用不安や格差拡大を背景に、現代では大学進学までの学費を負担できない家庭も多い。多くの若者が、自力で学費を捻出しなければならなくなっているのだ。

さらに学費の高騰が学生たちを苦しめている。日本の大学の授業料は、近年上昇し続けており、1960年代の国立大学の授業料は、年間1万2000円だが、それが今では年間授業料は53万円にも上る。貨幣価値の上昇を勘案しても、格段に高騰しているのは間違いない。

学費を払うために、長時間のアルバイトで疲弊し、学業が疎かになってしまっては本末転倒。同書に登場する女子大生風俗嬢は、過労死レベルの“ブラックバイト”で消耗するよりも単価が高い風俗で働けて良かった、そのお金で海外留学したい、就職活動に集中したいと述べる。向上心が高い学生ほどカラダを売っているという、皮肉な現象が起こっているのだ。

何も風俗までしなくても、学費が払えないならば“奨学金を利用すれば学費は賄えるのでは?”と考える人も多いだろう。実際に、経済的に進学が困難でも、奨学金の恩恵を受けて高等教育を受けるチャンスを与えられた人は多い。

高円寺の風俗街
 だが、中村氏によれば奨学金制度は、使い方によってはかえって自分の首を絞めかねない面もあると述べる。

奨学金といえば日本学生支援機構(旧:育英会)の制度が代表的だが、同機構の奨学金には、無利子の第一種奨学金と、有利子の第ニ種奨学金があり、いずれも返済義務がある“貸与”だ。大学卒業後も返せない人が続出し、訴訟にまで発展していることも知られている。

たとえば同書で取り上げた、沖縄県内の私立大学に通う20歳の女子大生は、第一種奨学金を毎月6万4000円、第ニ種奨学金を毎月12万円も借り、返済額は4年間で883万円にも上る。沖縄県内では、新卒の給与は手取りで14万円が平均。そのなかから毎月3~5万円を、15~20年にわたり返済していくことになる。

中村氏は、社会人へのスタートを切る時点で1000万円近くの借金を背負うことのリスクに警鐘を鳴らす。もっとも、自己破産相当の高額な借金を負っているのは彼女だけではない。沖縄県では、ほとんどの学生が奨学金で大学に進学している。最低賃金680円のアルバイトで年間100万円近くの学費を賄うのは難しく、勉強の時間と学費を確保するための割のいいバイトといえば、「風俗嬢とキャバ嬢くらい」(同書より)なのだという。

あくまでも自身の個人的見解であるが、と断った上で中村氏は、その大学を卒業することでバリバリ稼げて、速やかに奨学金を返済できる見込みがないのならば、安易に大学に進学すべきではない。学費が安い通信制の大学を選択することも視野に入れて、現実的に自分の進路を熟考すべきだと訴えている。

大学進学のためにセックスワークに従事する彼女たちのリアルに迫った中村氏は、「これから女子大生風俗嬢は、ますます一般化することは間違いない」(同書より)と断言している。

【私の論評】10%増税して、追加金融緩和もしないなら、さらに“女子大生風俗嬢”大量参入を促すことになる(゚д゚)!

上の記事どの程度実体を表しているかは、疑問符がつきます。とにかく、この手の報道や、書籍など昔からあるように、「犬が人を噛んでもニュースにはならないが、人が犬を噛むと大ニュースになる」という具合に、センセーショナルなことを取り上げがちです。

そうしてなぜ、女子大生が風俗でバイトをするのか、その背景についてはミクロ的な説明はありますが、マクロ的なものは一切ありません。これでは、このような不幸な事態がなぜおこるのか十分に理解することはできません。

ただし、それを割り引いても上の話は、統計的にどうのこうのとか、マクロ的にどうのこうのと言う前にありそうな話しではあります。

というのも、最近の新卒の人たちと話をすると、特に10年前くらいから、奨学金といはいいながら、実体は就学ローンとでも言ってよいくらいの、借金を抱えている人が結構増えていたからです。

今や大学や大学院を卒業したとたん、数百万円の借金を抱えている人など珍しくもありません。



それも、私立大学ではなく、有名国立大学や大学院卒の人でもそういう人は珍しくはありません。実際、そういう人たちと話をしたことなど、何度もあます。一人、二人の話ではありません。毎年新卒の中にそのような人は必ずいます。

女性の新卒の人でも、そのような人は珍しくはありません。だから、女性の場合、数多くの中には、上記のように風俗でバイトをして、借金を背負わないにすることを考える人も、実数はどうなのかは別にして、出てくるのが自然の流れだと思います。

それにしても、私が大学生だった頃は、相当昔ですが、少なくとも私の身の回りには、このように借金を抱えている人はかなり少なかったと思います。

私自身は、当時は今から比較すれば、学費も破格の安さだったので、学費は全部親に払ってもらっていました。にもかかわらず、バイトをしていました。なぜバイトをしたかというと、遊ぶ金欲しさというのが一番で、その次の同期が社会経験を積みたいとというものでした。

どんなバイトをしたかというと、今でいうところのブログラマーもどきというやつです。大学での専門は、コンピュータ関係ではなかったですが、それでも大学ではコンピュータ・サイエンスも習っており、実習もありました。

その時に一生懸命勉強して、あるシンクタンクで、プログラミングのバイトをしました。ただし、ブログラミングとはいっても、そんなに高度なものでもなく、今からすると、良くあんなことでお金がもらえたものだと思ってしまいます。しかし、これが予想以上に良いバイトで、かなり稼いだことを覚えています。特に夏休みなどは、毎日のようにシンクタンクに行ってプログラミングをしました。

そうして、半年後には、ブログラミングだけではなく、他の企画の仕事もこなすようになり、後輩のバイトを指導するようになり、給料はさらにあがりました。

わからないところは、シンクタンクの上司にも聴きましたが、さらに大学の先生にも聴いたりして、かなり勉強にもなり、実利もありました。夏休みなどは、月30万以上も稼いだことがあります。

このようなこともあり、卒業して、普通の会社に入るのが怖くもありました。なぜなら、会社に入れば、最初は給料が少なく、バイト時代よりも現金収入が少なくなるのを恐れたからです。

こういうと、私ばかりがかなり稼いでいたと思われるかもしれませんが、そんなことはありません。私の知り合いで塾講師をしていた女子学生もいましたが、その人もかなり高給で、夏休みなどは私と同じくらい稼いでいたようです。

女性の塾講師

それどころか、その塾は会社組織で、かなり大きい会社だったので、毎年研修旅行と称してハワイ旅行などをしていましたが、いくつかの条件をクリアしていると、バイト講師でも、その旅行に参加できるということで、その人も参加していました。今もその会社はありますが、さすがにハワイへの研修旅行はしていません。

同じ大学の知人の中には、要領が悪くて、マクドナルドでバイトをしていた人もいましたが、それでも、今の水準からすれば、結構賃金は高かったと思います。それに、大学4年間ずっと、バイトをしていたので、後のほうでは、バイトのリーダーをしていました。

夜遅くまでバイトしていたので、学校ではいつも眠そうで、実際寝てしまうこともしばしばありましたが、それでも、留年することもなく、まともに卒業して、結構良い会社に就職していました。

マックのバイト募集のHP


こんな状況だと、多少無理すれば、親が学費を払えなくても、バイトすれば奨学金を貰わなくても何とか卒業できるし、たとえ奨学金をもらっても、少額ですみますし、それになんといっても、卒業すれば、よほどのことがない限り必ずどこか、それなりのところに就職できるのは間違いないような状況なので、少なくとも私の周りには、卒業したとたん数百万の借金などという話はあまり聴いたことがありませんでした。

だから、私自身は、大学生活とはそんなものと、長い間思って過ごしていましたが、今が十年くらい前から、新卒の人と話をすると、そうではないことがわかりました。一番驚いたのは、札幌の大学で4年間過ごしながら、薄野に一度も飲みに行ったことがないという新人でした。

毎年開催される「ススキノ祭り 花魁道中」出発地所 豊川稲荷
その人にどこに飲むときはどこで飲んだのかと聴くと、家飲みがほとんどで、たまに自宅近所の居酒屋に行く程度だと語っていました。そうして、この新人は、家庭は比較的裕福だとみえて、学費は親に全部支払ってもらったそうで、それでもバイトをしていたというので、遊び用の車でも買ったのかと思い、稼いだ金はどうしたのかと聴くと「ほとんどを生活費と貯蓄にあてていた」というので、本当に驚いてしまいました。

そうして、その貯蓄額が数百万ということで、またまた驚いてしまいました。とにかく、私達の頃とは、大学生も様変わりしたということです。とにかく、私達の時代は、大学生というと、遊ぶのが当たり前でしたが、今の学生はそんなことはないのです。

この新人も、親が比較的裕福で、学費を支払ってもらい、その上バイトまでしていたのというのですが、なにしろ、自分の周りの人のほとんどが、かなり倹しい生活をしていたので、自然とそれに合わせて、倹しい生活をして、余ったお金は貯蓄したというのが実体なのだと思います。

全く信じがたいことです。しかし、なぜこのようなことになってしまったのかといえば、無論学費が従来よりも上がったということもありますが、それ以上に悪影響を与えたのがデフレです。

確かに、私が学生時代のときは、不景気なこともありましたが、最低限デフレであったことはありませんでした。だから、若者が今のように、将来に不安を抱えているということはありませんでした。

ある程度有名な大学であれば、いずれどこかの一部上場企業などには、さほど無理しなくても入れるだろうと、多くの人が思っていました。有名大学でなくても、まあ何とかなり、それなりの企業に入れるし、一人前になれるだろうと、漠然とそう思っていました。

そうして、今から考えると信じがたいことですが、普通の若者がとんでもない高級車を購入していました。1000万以上の車を購入している若者もいました。なぜそんなことができたかというと、良い車なら、比較的メンテを良くしておけば、比較的良い価格で中古車として転売できたからです。今なら信じがたいことです。

しかし、本当にデフレになってからは、激変しました。若者は、酒をあまり飲まなくなり、車を買うこともなくなり、あまり遊ばなくなりました。

そうして、有名大学や大学院に行っている学生ですら、卒業と同時に数百万の借金を抱えるということも珍しいことではなくなりました。

何よりも激変したのは、学生の親の賃金が増えるどころか、減ってしまったことです。さらには、その親もいつリストラにあうかもわからず、常に将来に不安を感じるようになりました。その親をみて、育った子どもも、親を見習い、常に節約し、無駄遣いはしなくなり、遊ばなくなりました。そうして子どもも、大学を卒業しても、まともに就職できるかどうかもわからず、将来に不安を抱えるようになりました。

紫色:デフレ状態 紺色:0 - 2% 水色:2 - 5% 緑色:5 -10% 黄緑色:10-15% 橙色:15%-25%
赤色:25%以上 (
CIA調べ、調査年度は国ごとに異なる)クリックすると拡大します

これは、20年近くも日本が経済の癌ともいわれる、デフレを放置してきたからにほかなりません。デフレは、年長者にとっても、大変なことですが、これから旅立とうとする若者にとっては、経済的虐待にほかならないものでした。

しかし、2013年からは、日銀が金融緩和に転じ、雇用などの数値もはっきりと上向いていたにもかかわらず、昨年の4月からは、8%増税を実施し、経済は低迷しました。今の日本は、言葉の厳密な意味においては、もはやデフレではありません。

しかし、過去20年近く続いた、デフレの悪影響はまだ色濃く残っています。だからこそ、実際にこのブログ冒頭の記事のようなことが未だに継続されているのです。

こんな状況をはやく脱却するためには、財政均衡主義ではなく、やはりさらなる追加金融緩和を実行し、増税などの緊縮財政をするのではなく、公共工事の供給成約はあるものの、公共工事も増やせるだけは増やして、その他に、減税や、給付金政策を強力に実行して、経済を成長させいち早くデフレから完璧に脱却すべきです。

そうすれば、税収もあがり、財政赤字もなくなります。まさに、経済成長なくして、財政均衡などありえません。10%増税などすれば、また深刻なデフレに見舞われ、税収が減り、財政赤字が増えることになります。

とにかく、今の財務省や政治家や、マスコミ、識者など、あまりに現在の若者の実体を知らなさすぎます。だから、平気で10%増税などと言い出すのです。

確かに、パブルの時代にも女子大生の風俗嬢がいたという話は聴いたことがあります。しかし、この時代であれば、多くの女子大生が、風俗嬢をして学費を楽に稼ぐことも、他のバイトでも何とかできたはずです。そうです。選択の自由度がかなり高かったのです。

しかし、デフレの時代には、選択の幅はかなり狭くなります。選択の幅が極端に狭いということは、虐待と同じことです。

10%増税をするということは、さらに若者の経済的虐待を強化することに他なりません。これを実行すれば、このブログ冒頭の女子大生風俗嬢”大量参入"をさらに促すことになります。

そんなことは、これからの日本を将来を背負っていく若者のため、断じて許すわけにはいきません。また、若者も自分たちの将来を脅かす10%増税には、反対の声をあげるべきです。少なくとも、私たちが若かった時くらいの、選択肢を今の若者にも提供すぺきです。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

【関連記事】




【関連図書】

日本の若者に関する書籍三冊を以下に掲載させていただきました。以下の書籍は、いずれもミクロ的分析ばかりで、マクロの視点を書いています。ただし、マクロ的視点を持ちながら読むと、日本のマクロ政策の間違いの証拠の宝庫でもあるといえます。非常に参考になります。

女子大生風俗嬢 若者貧困大国・日本のリアル (朝日新書)
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2015年11月7日土曜日

日中韓首脳会談、終わってみれば日本の圧勝だった~中韓は焦っている。安倍首相は、どっしり構えていればいい―【私の論評】大国妄想にふけった中国は、まともな社会を築けずアジアのありふれた一党独裁国家にもどり、やがて崩壊する(゚д゚)!


具体的な成果よりも、なぜ開かれたのかが重要だ?

習近平は焦っている

日本と中国、韓国の首脳会談が10月31日から11月2日にかけてソウルで開かれた。日中韓の首脳がそろって会談するのは3年半ぶりだ。時間の空白はなぜ生まれたのか。そして、なぜいま首脳会談だったのか。

会談を避けてきたのも再開に動いたのも、鍵を握っていたのは中国の習近平政権である。

マスコミは首脳会談について連日、大報道を繰り広げた。しかし、それぞれの合意内容や首脳たちの表情はそれなりに詳しく報じられた。だが、そもそも今回、会談がなぜ開かれたのか、逆にこれまでなぜ長い間、開かれなかったのかについての分析はまったく不十分だったと言わざるをえない。

私に言わせれば、3国が交渉加速で合意した日中韓FTAや韓国の朴槿恵大統領がこだわった慰安婦問題などはサイドストーリーにすぎない。そんなことより、ずっと3国首脳会談を避けてきた習政権が一転して再開・定例化に動いた意味のほうがはるかに重要である。

なぜ習政権が鍵を握っていたと言えるのか。中国に開く気がなければ、日中韓首脳会談は開けなかったからだ。よく知られているように、安倍政権は中国にも韓国に対しても、一貫して「日本はいつでも会談の門戸を開いている」という姿勢だった。日本が会談を避けた事実はない。

韓国はどうかといえば、朴大統領はここ数年、異常なほど中国にすり寄ってきた。これまで朴大統領は習主席と実に6回も首脳会談を開いている。直近は2015年9月に北京で開かれた対日戦争勝利70周年記念の軍事パレードを参観した際の会談である。

韓国が日本と緊張関係にあったのは事実だ。だからといって、中国が3国会談を開こうといえば、韓国は断れない。

つまり、3年半にわたって3ヵ国会談を開けなかった最大の理由は、中国が拒否してきたから、というシンプルなものなのだ。

中国はあまりに日本をナメすぎた

なぜ中国が拒否し続けたか。習政権は2012年11月の発足以来、米国との関係を最重視する一方、安倍政権については敵視あるいは軽視していたからである。

習政権は発足すると直ちに「軍事闘争の準備を進めよう」と陸海軍に大号令を発した。実際、12月には初めて尖閣諸島付近で中国のプロペラ機が領空侵犯した。翌13年1月には中国海軍の艦艇が海上自衛隊のヘリコプターと護衛艦に射撃管制用のレーダーを照射する事件が相次いで発生した。

これはほとんど交戦一歩手前の事態だった。交戦に至らなかったのは、日本の自衛隊側がぎりぎりの極限まで自制したからだ。

同6月になると習主席は訪米してオバマ大統領と会談した。このときの大テーマは米国との縄張り分割論である。


2013年 習、オバマ会談
「ハワイを分岐点に東は米国、西は中国の縄張りにして互いに尊重しよう」ともちかけたのだ(http://gendai.ismedia.jp/articles/premium01/36121)。

付け加えれば、2012年11月の政権発足前後は、中国国内で反日運動が最高潮に達していた時期だった。9月11日に当時の野田佳彦政権が尖閣諸島の国有化を決めたからだ。

日本が尖閣諸島を国有化したのは間違っていないし、そもそも日本の領土の話だから、中国がいかに憤激しようと筋違いである。そうであったとしても、中国は「尖閣は中国のもの」と言い続けてきたから、国内で反日運動が予想以上に盛り上がってしまった。それもあって日本と首脳会談を開くわけにはいかなかったのだ。

本筋に話を戻すと、習主席が提案した縄張り分割論はオバマ大統領に拒絶されてしまった。防空識別圏の設定をきっかけに米中関係は冷ややかになっていく。そこで習政権としては対日戦略も練り直さざるをえなくなった。

その結果、どうなったか。それが14年11月の安倍首相との例の「仏頂面会談」である。

世界中に失笑された中国

アジア太平洋経済協力会議(APEC)に合わせて開かれた初の安倍・習首脳会談は習主席にとってみじめな会談になった。ホスト国でありながら、ろくに言葉も交わさず礼を失した態度で安倍首相を出迎え、世界で失笑を買った。

なぜ、そんな無礼な態度で接したかといえば、中国が根本的な戦略練り直しを迫られたからだ。

自分が「日本などモノの数ではない」という態度をとり続け、とりわけ軍部に対しては政権発足直後から戦争準備をあおりたててきた手前、いまさらみっともなくて笑顔で首相を出迎えるわけにはいかなかったのである。

仏頂面で安倍総理と握手する習近平
それが証拠に、それから5カ月経った15年4月の日中首脳会談では、習主席はうってかわって愛想笑いをふりまいた。肝心の米国が思うようにならない以上、なんとか日中関係を打開しないことには東アジア外交の主導権を握れないと悟ったのだろう。

それから何が起きたか。

まず日米両国は日本の安保関連法成立を先取りした形で防衛協力の指針(ガイドライン)を見直した。これは日米による南シナ海の警戒監視を視野に入れている(http://gendai.ismedia.jp/articles/premium01/43504)。そのうえで15年4月の日米首脳会談では、日米が中国の脅威に共同で対処する方針を確認した。

南シナ海における中国の人工島埋め立て・軍事基地化を念頭にオバマ大統領は「中国は間違っている」と国を名指しして批判し、安倍首相も「力による現状変更を許さない」と呼応した。その後、日本では安保関連法が成立した。これは中国の脅威に対抗するために日米同盟を強化するのが最大の目的である。

続く10月には懸案だった環太平洋連携協定(TPP)も大筋合意にこぎつけた。TPPは単なる貿易自由化協定ではない。中国によるアジア太平洋の主導権構築を許さないという、すぐれて安全保障上の戦略に基づく枠組みである。日米ガイドラインと日本の安全保障法制見直し、それにTPP合意が続き、アジア太平洋の国際秩序は大きく変わった。

日米を軸にした中国包囲網の完成である。今回の日中韓首脳会談は、こうした文脈の中で開かれたイベントなのだ。ところが、オバマ大統領は「日本が米国の同盟国であることを忘れるな」と釘を刺した。つまり縄張り分割案を拒否した。これは習主席にとって大きな挫折である。この後に起きたのが、同年11月の中国による防空識別圏の設定だった。

これは主として日本を標的にした仕掛けだったが、米国を強く刺激した。米国は直ちに大型爆撃機2機を「識別圏内」に飛ばして、中国の一方的な設定を無視する行動に出た。

中国にとって肝心なのは、あくまで米国との関係だったのだ。縄張り分割論で米国を抱き込むことさえできれば、日本も、ましてや韓国など取るに足らない。米国が「ハワイから西は中国の縄張り」と認めてしまえば、自動的に日本も韓国も中国の縄張り内に入る。あとは煮て食おうと焼いて食おうと中国の勝手になる。そういう思惑である。

だからこそ、日中韓首脳会談など眼中になかった。「いずれ子分になる国との話し合いなど、する必要はまったくない」という話である。

実に単純な韓国の思考法

もうあきらかだろう。反日運動とともにスタートした習政権は「日本など取るに足らない、オレたちは米国と縄張りを仕切るんだ」と大風呂敷を広げてみたものの、米国の反撃に遭って自らつまづいてしまった。その挙げ句、面子を取り繕うために応じざるを得なくなったのが、今回の日中韓首脳会談なのだ。

南シナ海をめぐる米中間の緊張も、この延長線上にある。

かつてはアジア太平洋全域の縄張り分割という妄想にとりつかれていたが、いまは「南シナ海の支配」という少し縮小した妄想にとりつかれているのだ。だが、実態は先週のコラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/premium01/46130)で指摘したように、中国は米国の駆逐艦派遣に事実上、手も足も出ない状況に追い込まれている。

この核心部分を見過ごしてしまえば、首脳会談の意義は分からない。

以上を踏まえたうえで、韓国に触れよう。韓国は情けない国だが、現実的な計算もできる国だ。解決済みの慰安婦問題をいつまでもぐだぐだと持ち出すのは情けない。だが自分を取り巻く大国である日米中の風向きを読んで、さっと軌道修正するあたりは現実的なのだ。

貿易で中国に依存する韓国は、中国が沈めば韓国経済も沈む関係にある。中国がバブル崩壊で沈んだ以上、自分たちが生き残るには日米重視に舵を切り替えざるを得ない。だからこそ環太平洋連携協定(TPP)にも入りたい。

もちろん、北朝鮮に対峙する韓国は安全保障面で日米に依存しているという根本的な事情もある。そんな実利的背景の下で慰安婦問題とは対日交渉で値段をつりあげる材料にすぎない。だから、安倍政権はじっと様子をみていればいい。黙っていて、焦るのは韓国である。

安倍政権は「TPPに入りたいなら慰安婦問題と水産品の対日輸入規制問題にケリをつけなさいよ」と言えばいいのだ。さらに言えば、韓国が「慰安婦問題を未来志向で最終的に解決したい」というなら、安倍政権は「世界中に作った慰安婦像を韓国政府の責任で撤去せよ」と要求すればいい。

韓国が慰安婦像撤去に応じないなら、韓国は口ではともかく、本音は慰安婦問題を終わりにする意図がないという話になる。慰安婦像撤去に応じるかどうか、少なくともその努力を約束するかどうかが、韓国政府の本気度を測るリトマス試験紙になるだろう。

この隙に日本は足場を固めればいい

中国も焦っている。足元の経済が崩壊寸前であるのに加えて、権力闘争は激化する一方だ。加えて南シナ海の人工島周辺に米国のイージス駆逐艦が進入してきた。それでも護衛艦を追尾するくらいしかできず、一歩間違えれば、国内のタカ派から政権批判が飛び出しかねない状況だ。

日中韓FTAの交渉促進を言い出してはみたものの、TPPが大筋合意した以上、FTA交渉が大きく前進する見通しは暗い。なぜかといえば、日本は当然、TPPを貿易自由化の基盤に据える一方、FTA交渉でもTPP合意の内容が事実上の基準になるからだ。

中国とFTAを結ぶとなれば当然、知的所有権保護や投資保護が重要テーマになる。パクリが横行している中国はTPP水準で知的所有権を保護できないし、投資保護はもっと難しい。

日本企業は対中投資促進どころか、バブル崩壊を目の当たりにして静かに中国からの撤退が始まっている。中国側は「逃げるなら事務所や工場はぜんぶ捨てていけ。撤退に伴う損害賠償も払え」と要求するケースまであるようだ。まさに「泥棒に追い銭」である。

そんな国とまともな投資保護交渉をするのは、どだい無理な話ではないか。そうであるとすれば、中国についても日本はじっと様子を見ていればいい。

いま喫緊の課題は南シナ海情勢である。日本は自分の足元を固めつつ、米国や東アジア諸国、オーストラリアなどと連携を強めていくべき局面だ。中韓と無理に歩調をそろえていく必要はさらさらない。

この記事は一部要約してあります。詳細はこちらから。

【私の論評】大国妄想にふけった中国は、まともな社会を築けずアジアのありふれた一党独裁国家にもどり、やがて崩壊する(゚д゚)!

上の記事では、中国はあまりに日本をナメすぎたという項目がありましたが、今回の日中韓首脳会談でも習近平はかなり日本をナメていました。それは、どういうことかといえば、日本は安倍総理、韓国は朴槿恵大統領が参加にしているにも関わりらず、中国は習近平ではなく、李克強が参加しているという事実です。

これは、日本や韓国に対する最大級の侮辱です。まともに会談をするというのなら、やはり習近平が参加するべきだったでしょう。しかし、習近平の腹の中は、「いずれ子分になる国との話し合いなど、する必要はまったくない」というものだったのでしょう。

日中韓首脳会議に習近平は参加せず李克強(写真右)が参加した

しかし、それは韓国については、あてはまりまるかもしれませんが、日本にはあてはまりません。日本は、中国の子分になど永遠になりません。そもそも、日本は、経済・社会において、中国のそれとは比較の対象にもならないくらい、先を行っています。

それを理解できない、習近平は、まさに自ら中国幻想に酔っていたのです。まさに、ものの道理を知らない、無知とはこういうことです。

現在の中国は、経済が停滞しつつある、ありふれた一党独裁国家に過ぎません。一党独裁国家は、シンガポールのような小さな国では一見成功を収めたかのようにみえますが、これとて未来永劫にわたって繁栄し続けることなど考えられず、過去においてはすべての一党独裁国家が経済的に発展しないか、いっとき繁栄したかにみえても、その後没落するか、消滅しています。中国もその例外ではありません。

一党独裁国家は、今でも発展途上国などには普通に見られます。そうして、現在だけではなく、過去にも存在し、それらはことごとく、消滅したか、消滅しなくてもとるに足らない国に没落してしまうのが通例です。

中国だけが、その範疇に含まれないというのは、単なる妄想にすぎません。このような妄想がはびこったのは、中国が過去にみられたいかなる一党独裁国家よりも、巨大であり、それも群を抜いて、最大級の国家だったからです。

それに、米国や、日本を含む世界中の親中派、媚中派の連中が、中国幻想に酔い、現中国を過大に評価し、中国が経済で、いずれ近いうちに米国に肩を並べ、さらに追い越すであろうなどという超過大評価をして、それを世界中に流布したからです。

そもそも、経済に限ってみれば、ヨーロッパは黄昏です、米国は今でも世界一の経済ですが、とはいいながら、今後大きく経済成長をするとは思えません。現在の経済の成長のセンターは、完璧にアジアに移っています。

そうして、現在、人口が1億2千万人の日本は、戦後破格の経済発展をして、世界第二の経済大国となりました。そうして、その世界の経済発展のセンターでもあるアジアの中で、人口が最大の国家が中国であり、その中国も経済発展を遂げつつあるとなれば、世界中の人々の中国に対する期待感が高まるのは、当然といえば、当然です。

中国の大気汚染 まるで雲海のよう。これこそが、中国幻想?

しかしながら、世界の人々が忘れていること、そうして歪んで受け止めている事実があります。それは、日本の経済発展はどうしてなされたかということです。

日本の経済発展は、高度成長によるものですが、この脅威の経済発展は、内需拡大によるものであり、この経済発展をするには、その前にまともな社会が築かれていたという下地がありました。

日本は明治維新の頃から、まともな社会を築くことに着手し、大正時代にはいわゆる民主主義の基本が築かれていました。そもそも、大日本国憲法自体が、その当時の世界水準と比較すると、日本独自でありかつ民主的なものであり、まともな社会を目指したものでした。

2.26事件の朝の東京の大渋滞 軍の専横があればこのようなことはあり得ない

しかし、戦後のGHQの洗脳などで、当時の日本があたかも、軍隊の専横などで、暗黒社会であったかのように喧伝され、多くの日本人や、世界の人々がそれを信じ込んでいますが、実際は、戦争直前や戦争中も本当に末期になるまではそのようなことはありませんでした。

そうではなく、日本は明治以来継続して、戦争中も継続して、まともな社会を長い間かけて、維持発展させてきたからこそ、社会が安定して、内需拡大による脅威の高度成長も可能となりました。

しかし、現代の大陸中国はどうかといえば、建国以来毎年平均二万件の暴動があったとされ、2010年あたりからは、毎年平均十万件以上ともいわれるように、建国以来、暗黒社会であり、それは今も変わりありません。

日々数十件も起こるといわれる中国の暴動 これこそが中国の常態
そんな国が経済発展を続けるなどという事はありえません。現在中国は、今でも、民主化、政治と経済の分離、法治国家化などが全くなされていません。

日本においては、これは明治時代からはじめられ、戦中まで継続され、終戦直前には、戦争遂行のため一旦は、短期間にわたり中断せざるをえなくなりましたが、それでも、終戦直後からもとにもどり、それから憲法や法律体系が変わりはしましたが、継続され現在に至っています。

そうして、こういったまともな社会が形成されていたからこそ、多くの中間層が生まれて、それらが、活発な社会・経済活動を行い、それが内需を拡大して、奇跡の高度成長に結びつきました。そうして、内需拡大の大きな部分を支えたのは、個人消費の伸びでした。

しかし、中国の場合は、先にも述べたように、民主化、政治と経済の分離、法治国家化がないがしろにされたため、日本のようなまともな社会は形成されず、よって、中間層が生まれることもありませんでした。

その中国がどうして経済発展したかといえば、個人消費の伸びではなく、政府主導による、大規模なインフラ投資でした。政府が国内外から大規模な資金を集め、それをインフラに整備に大量に投資して、成長を遂げました。

インフラ投資をすると、そのインフラを用いて、人々が社会・経済活動を増やし、ある程度経済は発展します。しかし、これでは、大規模なインフラ投資が一巡すると、もう、インフラ投資だけでは経済発展はできなくなります。

なぜなら、まともな社会にしなければ、中間層は生まれず、貧富の差が広まり、中国に国内には、一握の富裕層と、多数の貧困層があるばかりか、ますます貧富の差が広まり、中間層など形成される余地もなく、したがって、中間層が社会・経済活動をさらに拡大するということもなく、一人握りの富裕層が、蓄財して、ますます貧富の差が広まるという具合で、せっかくインフラを整備しても、無意味になります。

まさに、今の中国は、その状況に陥っています。それは、あの不動産バブルの象徴である、鬼城が雄弁に物語っていると思います。

中国各地に点在する鬼城
そうして、不動産バブル崩壊は誰の目にも明らかになり、株式も暴落した中国では、富裕層の蓄財が大量に国外流出して、中国の金融は空洞化しています。

中国の個人消費は、現在でもGDPの35%を占めるに過ぎません。これは、日本などの先進国では、60%前後が普通であり、アメリカは70%台であることと、比較すると、極端に低く、いかに中国が、経済発展のためのインフラ投資や、貿易を振興させることばかりに傾注し、社会を無視してきたか良く理解できます。

このような状況では、もうこの先の中国の経済発展はありません。あるとすれば、現在の中国の体制が完璧に崩れて、ある程度以上民主化、政治と経済の分離、法治国家化がなされるようになってからでしょう。

このような構造を理解できない、習近平体制は近いうちに崩れます。習近平体制が崩れても、現在の体制では、まともな社会を築けないので、今の体制もやがて崩壊して、まずは本来外国であった、自治区は離れ、中国内部でもある程度経済発展をしてきた地域とそうでない地域は分裂して、いくつかの国に別れ、その中のいくつかの国が、まともな社会を築き、脅威の経済発展をするようになるかもしれません。

このような構造的に崩壊に向かっている中国であり、それに追随する韓国です。

やはり、安倍総理は、ブログ冒頭の記事で、長谷川氏が主張しているように、中韓と無理に歩調をそろえていく必要はさらさらありません。

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