2015年11月17日火曜日

税収上ぶれで国庫収支改善 「国の借金」1054兆円だが資産も653兆円―【私の論評】日本国借金まみれ説は、財務省と追従者が築く馬鹿の壁(゚д゚)!


マスコミが報道する国民一人あたり
1000万の借金は、全くの出鱈目である。

財務省が10日発表した「国債及び借入金並びに政府保証債務現在高」によると、9月末時点の「国の借金」が1054兆円と、過去最高だった6月末の1057兆円から2兆7992億円減少したという。

借金の内訳は、普通国債791兆円、財政投融資特別会計国債96兆円、出資・拠出国債等その他国債7兆円、借入金54兆円、政府短期証券106兆円である。

それぞれ6月末と比較すると、普通国債7兆1583億円増、財投特会国債1625億円減、出資・拠出国債等その他国債5164億円減、借入金1798億円減、政府短期証券9兆999億円減となっており、政府短期証券の減少が大きく、全体でも減少した。

ちなみに、昨年9月末の「国の借金」も、6月末と比較して4982億円減っており、3カ月のスパンで見れば、減少することはそれほど珍しくない。なぜかというと、政府短期証券が減少するからだ。

政府短期証券は、財政法や特別会計に関する法律等に基づいて、国庫や特別会計などの一時的な資金不足を補うために発行される。原則として公募入札により市中発行され、償還期間の多くは3カ月だ。

政府の財政活動においては、日々の国庫金の受払のタイミングのズレにより、一時的に資金が不足したり、余裕が生じたりする。その際のズレの調整方法として、政府短期証券の発行は重要だ。

ただ、今年度は、一般会計の税収が上ぶれしている。財務省が発表した「9月末租税及び印紙収入、収入額調」によれば、9月末までの累計一般会計租税収入等は、前年度同月比で12・7%上回っている。国庫金の資金繰りはかなり楽なはずで、このため政府短期証券の償還を行っているのだろう。

そのほかにも政府短期証券を償還することが重なって、結果として残高が減少している。今年度の前半に、国庫収支をよく見通すことができずに、政府短期証券を発行しすぎただけかもしれない。

もっとも、「国債及び借入金並びに政府保証債務現在高」を「国の借金」というのは、会計的には不正確だ。国の貸借対照表(バランスシート)をみると、その負債合計は国の借金を包括的に表しており、それが正しい数字だ。

今年1月30日に公表された「2013年度国の財務書類」では、14年3月末現在の負債総額は1143兆円となっている。これはあまり報道されずに、国の負債の一部にすぎない「国債及び借入金並びに政府保証債務現在高」が大々的に報じられるのは、マスコミの不勉強もあるが、財務省もあまり「国の財務書類」を強調していない。

というのは、「国の財務書類」のバランスシートには、財務省にとって不都合な事実が書かれているからだ。そこには負債金額も大きいが、資産総額も653兆円と大きな数字がある。負債を減らすべきだというなら、資産にも着目しなければいけない。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】日本国借金まみれ説は、財務省と追従者が築く馬鹿の壁(゚д゚)!

日本国には借金がないどころか、世界一金を貸している

上記の高橋洋一氏の記事、まともなことばかり書かれているのですが、一部誤解を受けやすいこともありますし、以前は何度か掲載していたものの、ここしばらく日本国のBSを掲載していなかったので、本日はブログ冒頭の記事を紹介させていただくことにしました。

まずは、高橋洋一氏も遣われている「国の借金」という表現は、間違いではないのですが、非常に誤解されやすいです。ここで高橋洋一氏がいう、国とは、日本国政府のことをいうのであって、経済主体としての、日本国全体を指しているわけではありません。

国も政府も同じことではないかと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、厳密にはそうではありません。日本国の経済主体は、政府だけではありません、個々の国民も存在し、その他の民間企業や、病院、学校などの経済主体があります。

ここは、厳密に分けて考えなければ、とんでもない誤解を生む原因となってしまいます。
そのため、この記事では、日本国と政府を厳密に分けて解説することにします。

まずは、日本国にはの借金などありません。借金どころか、お金を大量に他国に貸し付けています。それについては、今年5月の日経新聞の記事を以下に掲載しておきます。

対外純資産366兆円、3年連続で最高 14年末 海外企業のM&Aで 
2015/5/22 9:29  日本経済新聞WEB版
 財務省は22日、日本の企業や政府、個人が海外に持つ資産から負債を引いた対外純資産残高が2014年末時点で366兆8560億円だったと発表した。13年末と比べ12.6%増え、3年連続で過去最高となった。円安により外貨建て資産の円換算額が膨らんだ。国内企業による海外企業のM&A(合併・買収)など直接投資も増えた。 
 麻生太郎財務相が同日の閣議で報告した。14年末の対外純資産残高は4年続けて増え、24年連続で世界1位となった。前年末と比べた増加額は41兆1250億円で5年ぶりの大幅増だった。 
 14年末の対外資産残高は945兆2730億円で13年末と比べ18.5%増え、初めて900兆円を超えた。増加額は147兆5860億円とこれまでで最も大きかった。 
 増加額のうち4割強、64兆3790億円は円安の影響だ。14年末の為替レートは1ドル=119.80円と前年から13.7%円安になり、外貨で保有していた資産の円の換算額が膨らんだ。 
 国内企業による海外企業へのM&Aなどの直接投資も増えた。円安で海外資産の円換算額が膨らんだ影響を除いても、12兆7680億円増えた。 
 企業や投資家が運用目的で海外の株式や債券を買う証券投資も膨らんだ。円安要因を除いて12兆1220億円増えた。 
 対外負債残高は578兆4160億円で13年末と比べ22.6%増えた。増加額106兆4620億円のうち2割弱、17兆720億円は海外から国内への証券投資の増加分だった。円安を受けて外貨建て負債も円換算額が膨らんだほか、株価の上昇も影響した。負債の増加は5年連続。 
 14年末時点の主要国の純資産残高は中国が214兆3063億円で日本の次に多かった。3位はドイツで154兆7055億円だった。
この日経新聞の記事では、「対外純資産」としていますが、単に資産といえば、固定資産なども含んでしまいます。正しくは「対外金融純資産」です。要するに、現金・預金、その他証券など現金に変えることができる資産です。

要するに、対外金融純資産とは、日本国が他国に貸し付けている正味(=貸し−借り)のお金の金額と考えて良いです。

この「対外金融純資産」マイナスであれば、日本国自体が外国から借金をしているということになりますが、日本国自体は、それどころか、2014年末時点で366兆8560億円も外国にお金を貸し付けているということです。

日本のマスコミなどは、これをまったく報道せず、政府の借金を国の借金として誤解を招く報道をしています。

そのような報道の事例を以下に掲載します。

「国の借金」3月末は1053兆円 国民1人当たり830万円
2015/5/8 14:43 日経新聞WEB版
 財務省は8日、国債や借入金、政府短期証券を合わせた「国の借金」の残高が2015年3月末時点で1053兆3572億円になったと発表した。4月1日時点の人口推計をもとに単純計算すると、国民1人当たり約830万円の借金を抱えていることになる。 
 昨年12月末からの3カ月間でみると23兆4366億円増加した。政府短期証券の残高増が響いた。前年度末と比べると28兆4003億円増だった。 
 「国の借金」のうち、国債は昨年末に比べ7兆2494億円増の881兆4847億円。政府短期証券は16兆4801億円増の116兆8883億円。一方、借入金は2928億円減の54兆9841億円だった。15年度末の「国の借金」の総額は1167兆円になる見込み。 
 併せて発表した3月末の政府保証債務残高の現在高は1兆2590億円減の43兆3984億円だった。
この記事、そもそも国の借金という言い方が間違いです。先に述べたように、日本国にはもともと借金はないどころか、外国に巨額の金を貸しています。これは、日本国の一部の政府の借金です。しかし、それにしても政府の借金が1053兆円にものぼり、それが国民ひとりあたり、830万円というのは、酷く誤解を招く表現であり、これは誤解を通り越して奇妙奇天烈、摩訶不思議の次元の表現だと思います。

これは、ブログ冒頭の記事で、高橋洋一氏が指摘するように、資産を無視して、とにかく借りているお金だけみて、借金だとしているからです。

正常な神経の人であれば、政府の借金が1054兆円だとしても、金融資産資産が653兆円だとすれば、1054兆円-653兆円=401兆円を政府の借金とするのが普通です。

こんなことは、別に経済学に詳しくなくても、小学生にでもわかる理屈です。ここにサラリーマンがいたとして、このサラリーマンの右ポケットには、1000円の借用書が入っており、左ポケットに500円の現金が入っていたとします。

このサラリーマンの借金はいくらでしょうか。この問題であれば、頭の悪い新聞記者でも、即座に500円と答えるでしょうが、なぜかこのサラリーマンが日本政府だと、1000円の借金だと考えてしまうようです。

しかし、新聞などの報道では、借金だけを見て、これが大きいから大変だとしているわけです。しかし、政府が持っている金融資産を無視しては、まるで意味がなくなってしまうことになります。これが、外国の政府であれば、日本政府のように特別会計などで、とんでもない巨額の金融資産を蓄えているわけではないので、さほど誤解を招くことはないですが、日本の場合はそれでは、政府の資産状況を正確には把握できません。

日本では国民一人あたり1000万円以上もの金を政府に貸し付けている

ブログ冒頭の記事では、高橋洋一氏が、国の貸借対照表(バランスシート)について語っています。残念ながら、上の記事では、バランスシートを掲載していませんでした。それだとイメージが浮かびにくいと思います。

そこで、平成25年度末の「国の財務書類」より、国の貸借対照表を以下に掲載します。


さて、いわゆる日経新聞などが報道する、「国の借金」、本当は「政府の借金」は、平成25年度末のBSでは、負債総額1,143.1兆円です、これを国の借金として、人口で割って、一人あたり1000万などしているわけです。しかし、本当は、資産・負債差額の▲490.4兆円が、正味の借金であるはずです。

これを政府の借金としてみると、他の先進国のそれと比較しても、GDP比で比較してみると、実は政府の借金はさほどでもありません。この程度のGDP比で国内や、国外から借金をしている政府は珍しくはありません。

それから、政府の借金はどこからのものかといえば、日本の場合はそのほとんどが、日本国債などによる、国民からの借金です。このくらい外国からの借金が少ない政府は、日本政府を除くと、世界でもカナダくらいのものです。

ですから、そもそも、負債総額1,143.1兆円を人口で割って算出される、1000万円の借金は、政府が国民から借りている金ということです。国民一人あたりが、借金を背負っているというわけではなく、国民が政府に貸している金であり、国民一人あたり赤ん坊も入れて、一人あたり1000万円以上もの金を政府に貸しているということです。

なぜこのような歪なことになっているかといえば、それは日本では過去15年以上にもわたって、デフレだったからです。デフレだと政府の税収入も減りますから、それを補うため、国債などで国民から借金をしたということです。

このようなことを書くと、多くの人は、自分は政府に1000万円も貸すほど、裕福ではないと思われるかもしれませんが、国民からの借金などといっても、政府が国民から直接借金をしているわけではなく、国民が預貯金をしたり、保険金として支払ったお金を銀行や保険会社が国債を買うことによって運用しているということです。

しかし、それにしても、政府は間接的でありながらも、国民から借金をしているということです。

統合政府という考え方をしただけでさらに政府の債務超過は200兆円減る

さて、ブログ冒頭の記事では、ここまでしか掲載していませんが、政府の借金を考える上で、見逃してはならない、重要なことがまだあります。

それは、統合政府という考え方です。それについては、このブログにも掲載したことがあるので、その記事のリンクを以下に掲載します。
国の債務超過490兆円を意外と簡単に減らす方法―【私の論評】正体見たり枯れ尾花!財務省が省益と考える、自らの配賦権を強化するために国民や政府などないがしろにし日本は借金漬けのようにみせかけているだけ(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、統合政府に関する部分のみ以下にコピペします。
経済学では政府と政府の子会社である特殊法人などを含めたものを「統合政府」と呼びます。これだけでは、何を意味するのか、理解することができないと思われますので、以下では、日銀の買いオペによる、民間銀行の保有する国債を買い入れを例として、統合政府と政府、小会社の関連について述べていきます。 
政府の借金は1000兆円を超えており、さらなる借金の増大を危惧する人は多いです。ところが、実は近年「国の借金」は減少傾向にあります。ただしここでは、政府の借金=国の借金という馬鹿な考えで話をしているのではありません。

以下では、話を単純にするため、政府と中央銀行を合わせて「統合政府」と呼ぶことにします(下図)。

政府と中央銀行はともに公的部門であり国の機関であるはずなので、「国の借金」とは「政府の借金」ではなく「統合政府の借金」を意味していなくてはならないはずです。

さて、統合政府の借金という考え方を導入するとどうなるか、これもこの記事から以下にコピペします。
さらに、国のバランスシートだけで判断するのもミスリーディングだ。企業のバランスシートを見るとき、単体ベースと連結ベースの両方を見るように、国の場合も単体だけではなく、連結ベースも見なければいけない。 
今でも、政府の子会社である特殊法人などを含めた連結ベースでのバランスシートは作成されている。国の単体ベースより2ヵ月くらい遅れて公表されているので、今年も3月末くらいに公表されるだろう(2012年度末の連結バランスシートは、財務省HP 平成24年度連結財務書類pdf にある)。 
【ブログ管理人注:この連結財務書類現在では、見ることができません。財務省に何か思惑があるのでしょうか・・・・】 
日銀のBSを連結すると国の負債超過は200兆円減? 
ただし、ここでは日本銀行が連結対象になっていない。日本銀行は認可法人であるが、連結ベースに含めて考えた方がいいこともある。荒っぽい方法だが、日本銀行のバランスシートを合算してみよう。他の政府子会社をすべて連結として含めて、債務超過額は若干低くなるはずだが、簡潔にするために、日本銀行だけを連結に含めてみよう。 
日本銀行のバランスシートは単純にいえば、資産に国債、負債は日銀当座預金と日銀券である。日銀当座預金は日銀券と代替可能なので、日本銀行の負債は日銀券のみとみても、間違いではない。 
となると、アバウトには、日本銀行のバランスシート(2014年3月末)は、資産の国債200兆円、負債の日銀券200兆円とみてもいい。これを国のバランスシートに合算すれば、負債の中の公債・政府短期証券が200兆円減少し、その代わりに日銀券200兆円が入るわけだ。 
ここで、日銀券200兆円は、形式的には負債だが、利息負担もないし、返済義務もない。いってみれば、この分は負債とみなさない考え方もありうる。その考え方にたてば、債務超過額は490兆円から290兆円にあるわけだ。このあたりについて、公会計で定説はないと思うが、日銀保有国債分については、国にとって償還も利払いも必要ないので、債務超過額が減ったといってもいいだろう。
さて、政府と日銀の連結、すなわち統合政府の連結決算をすると200兆円もの債務超過額が減ることになります。

何かこのようなことを掲載するとまやかしのようにも思われるかもしれませんが、日銀は日本国の信用があるので、負債の日銀券200兆円を発行できるのです。実際、発行したとしても、現実問題としてインフレなどにはなっていませんし、現実には過去の日本はインフレどころか、デフレでした。

200兆円の債務が減るということは、上で掲載したように、正味の政府の債務超過は490兆ですから、 290兆円になるということです。

これは、まやかしのように思う人もいますが、日銀の200兆円も、他国と比較すれば、突出しています。他国の中央銀行は、米国などを除いてはこのようなことはできません。

おそらく、統合政府の連結決算をしても、日本は他国の統合政府と比較しても、借金が突出して多いということにはなりません。

以上のような考え方をすれば、日本政府は決して他国に比較して、借金まみれではないことが良く理解できると思います。

日本国借金まみれ説は、奇妙奇天烈、摩訶不思議な論理であり、とても受け入れることはできない戯れ言に過ぎないことがわかります。そうして、これを理解すれば、8%増税は必要なかったし、10%増税などとんでもないという結論になります。

それにししても、財務省はこのような戯れ言で、本当に日本借金まみれ説をすべての人に信じこませることができると思ったのでしょうか。私のように経済に疎い人間でも、上記のようにこのような戯れ言は受け入れらないのですから、まともな経済学者などはこのようなことは、すぐに見破るどころか、最初からわかりきったことだと思います。

日本国借金まみれ説は、財務省およびこれに追従する識者が築く馬鹿の壁に過ぎないのだと思います。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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