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2020年6月2日火曜日

米国の研究機関に堂々と巣食う中国のスパイたち―【私の論評】コロナが変えた世界では、5年〜10年で起こる変化が1年〜2年になる(゚д゚)!

米国の研究機関に堂々と巣食う中国のスパイたち

   2018年11月1日、米国司法省は、米半導体大手「マイクロン・テクノロジー」のDRAM技術を狙った
   スパイ活動を行ったとして、中国の国有企業を連邦大陪審が起訴したと発表。この日、ジェフ・
   セッションズ司法長官は、中国による情報窃取や経済スパイ活動に対処していく「チャイナ・イニシア
   チブ」を発表した。

  最近、米国の大学や研究機関で「中国絡み」のトラブルが頻発している。

 2020年1月28日、米マサチューセッツ州の名門大学であるハーバード大学で、化学・化学生物学部長のチャールズ・リーバー教授(60)がFBI(連邦捜査局)によって逮捕された。ナノサイエンスの分野における世界的権威であるリーバーの逮捕容疑は、中国の武漢理工大学で研究所を設立するとして中国政府から約150万ドルを受け取っていた上に、毎月5万ドルの支払いを中国から受け取っていたこと。これらは当局へ報告の義務があるが、リーバーは捜査員に虚偽の説明をしたことで逮捕された。

チャールズ・リーバー容疑者

  さらに5月には、オハイオ州のクリーブランド・クリニックで研究者をしていた中国系アメリカ人チン・ワンが、中国政府から研究助成金を受けて中国の研究施設で役職をもっていることを米国で虚偽申告したとして逮捕されている。

 ■ 中国政府が推し進める「千人計画」 

 実はこの2人、中国政府が国策として海外の優秀な人材を支援する「千人計画」に参加していた。のちに詳しく見るが、この「千人計画」に関与している米国内の科学者たちはかなりの人数に上り、彼らを米国当局は「中国政府のスパイ行為に協力している」と睨んでいる。上述の摘発もその流れの中で実施されているのである。

  その動きが最近の米中関係の悪化にともない、より強化されている。いま米国政府は、新型コロナウィルスの責任問題や貿易不均衡問題、また中国の通信機器大手ファーウェイなどとの取引をめぐる争いに加えて、こうした米国内で中国政府につながりのある学者や中国人留学生などに対する締め付けを厳しくしているのだ。

 2018年11月から、米国司法省は、冒頭のリーバーやワンの事件で取り沙汰された千人計画など中国側と関与している者たちによるスパイ活動の取り締まりや重要インフラのサイバー攻撃からの保護などを含む「チャイナ・イニシアチブ」を始動した。この時、当時のジェフ・セッションズ司法長官は中国政府のスパイ活動に「もううんざりだ」と吐き捨てた。ちなみにFBIでは、その2年前から千人計画を捜査し、関係各所には注意を促していたが、“スパイ活動”が鳴りを潜めることはなかった。

 ■ 「千人計画」にすでに1万人以上が参加

  中国で2008年にはじまった「千人計画」は、中国興隆のために国外にいる中国人科学者などを中心に人材を確保することを目的としている。米情報当局者がメディアに語ったところによると「すでに1万人以上が参加しており、参加者は本職でもらっている給料の3~4倍の給料が提供される」という。

  特に米国が警戒しているのは、生物科学医学の分野などでの研究開発の情報や知的財産に関するスパイ活動で、米当局は昨年から180件に及ぶ調査を行なっている。その過程で、世界的にも知られるような主要な研究所などほとんどすべてでこうした疑いのあるケースが浮上しているという。「共同研究」などの名目で知的財産を盗まれ、中国で勝手に特許が取られている場合もあり、米当局は中国政府とつながりのある研究者や学生などが研究所などから情報を盗む「スパイ工作」に関与していると見ている。

  2019年にも、米カンザス大学で中国系の准教授が中国の大学との関係を隠していたとして起訴されている。これまでも中国は同様の手口で情報を盗んできているし、サイバー攻撃でハッキングを行なって米重要機関から知的財産や機密情報を盗んでいる。だからこそ米当局は厳しい取り締まりに乗り出している。

  中国政府に繋がっている「協力者」は、大学や研究機関のみならず、民間企業にも潜んでおり、その数は600人ほど確認されているという。うちの4分の1はバイオテクノロジー系の企業にいるらしい。 

 こうした中国政府の関与が疑われる「スパイ工作」は米中貿易交渉の中でも議題に挙がるほど深刻になっている。

 米国による締め付け強化は、科学者だけでなく、中国からの留学生に対しても行われている。トランプ政権はつい最近、中国から留学している人民解放軍とつながりのある大学院生などの入国拒否や制限を実施すると発表した。これにより3000人ほどの留学生や研究員に影響が及ぶことになる。

■ 軍人が学生を装い米国留学 

 米政府関係者がメディアに語ったところによれば、「中国政府は、軍とつながりのある大学から海外に留学する学生の選別に関与しており、学生の中には留学先の学費を免除する代わりに情報収集をするという条件で留学の許可を得ている者もいる」という。

  実際に1月には、人民解放軍の傘下にある国防科学技術大学と関係がある29歳の女性軍人が、学生を装ってボストン大学に留学し、2年近くにわたって物理学や医用生体工学の学部に出入りして情報を中国に送っていたとしてFBIに指名手配されている。 


 また2019年12月には、ハーバード大学に留学していた中国人のがん研究者ジェン・ザオソンががん細胞の入った生物試料の瓶を21本も隠し持って中国に帰国しようとしたところ、ボストン空港で逮捕された。

  こうした事態を踏まえて米国務省は、2018年から中国人研究者らに対し、センシティブな情報や研究を行う大学や研究機関への留学ビザの期間を1年に短縮(1年ごとに更新可能)した。一方で、留学生がもたらす学費などのビジネスは莫大で、2019年は450億ドル(全留学生)のカネが米国もたらされていることから、学部生については引き続き留学を許可している。

 締め付けがどんどん厳しくなる中国人留学生に対する態度は、大学によっても差があるようだ。

  筆者は米マサチューセッツ工科大学(MIT)に留学していたが、その際に、大学側と知的財産の所在を明確にして大学から無断で持ち出さないと合意する文書にサインをさせられた。米国の名門大学や大学の研究機関などでも大学院生や研究者などに対するそうしたルールは徹底している。特にマサチューセッツ州のボストン近郊には名門大学が近くにいくつもあり、どこも大学の研究の扱いは厳しいはずで、実際にMITなどでは中国人留学生や教員が摘発さえるケースは聞かない。それどころか、研究協力をしていた中国のAI関連企業が中国国内でウイグル族などへの監視に関与しているとして、研究関係を直ちに解消している。それだけにハーバードの教授の逮捕は衝撃的だった。

  もっともハーバードは中国政府と関係は悪くない。そのため逮捕された教授以外でも、中国共産党の息のかかった教授などが暴露されている。有能な人材を多数輩出しているだけに、そうした外国からの影響にも人々は注目している。

 ■ 日本だって当然中国スパイの標的 

 筆者は少し前に、イスラエルの元情報機関関係者と話をしていて、中国の対外工作について見解を聞いたことがある。

  「中国人の裏の活動は私たちも注視しています。サイバー攻撃で知的財産を盗もうとしてくることも把握しています。イスラエルでも米国でも、中国からの留学生は警戒が必要です。なぜなら、彼らの家族は中国国内にいて、言わば人質のようなものです。家族が人質なら、指示されたことはやらざるを得ない。それが情報を盗むというスパイ工作に繋がるのは当然でしょう」

  誤解ないようにはっきりしておくが、すべての中国人留学生や研究者がスパイだと言っているのではない。ただよからぬ目的を持っていたり、中国共産党から指示を受けたりして動いている人たちが中にいることは米国の例からも明らかである。 

 もちろん、これは米国だけの話ではない。「中国人スパイ」は、世界各地で様々な手を尽くして組織的に情報を盗もうとしている。日本でも最近、三菱電機が中国政府系ハッカーらによって8000人以上の人事情報や機密情報が盗まれたと話題になっていた。

  日本の政府機関や研究機関、民間企業が、中国だけでなく世界中の情報機関やハッカー集団から「おいしい標的」として目をつけられているのは事実だ。米国並み、とは言わないが、外国からの公然・非公然のスパイ活動に対し、もっと警戒レベルを挙げておく必要があるのではないだろうか。

山田 敏弘

【私の論評】コロナが変えた世界では、5年〜10年で起こる変化が1年〜2年になる(゚д゚)!

中国の千人計画については、このブログでも過去に掲載して、警鐘を鳴らしたことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【瓦解!習近平の夢】「千人計画」は知的財産泥棒? “超ハイレベル人材”で科学的発展目論むも… 米は違反者摘発へ本腰―【私の論評】トランプ政権の“泥棒狩り”は、日本にとっても他人事どころか今そこにある危機(゚д゚)!

千人計画」のロゴ 写真はブログ管理人挿入 以下同じ

この記事は、2018年11月14日のものです。この頃から、中国の「千人計画」や、それ以前から稼働していた「外専千人計画」等が知られていました。

無論、その頃から米国は、この「千人計画」等にかかわる、米国内のスパイを摘発していました。日本でも報道されたので、ご存知の方々も多いと思います。

ただし、その規模や奥行きは、米国内でも考えもおばなかった規模のようです。

実際2019年11月にもそれについて米国内で報告がなされてました。

中国の国外で研究を行っている研究者らを中国政府が募集する人材募集プログラムにより、米国政府の研究資金と民間部門の技術が中国の軍事力と経済力を強化するために使われており、その対策は遅れている、と米国議会上院の小委員会が2019年11月に公表した報告書が指摘しました。

報告書は、上院国土安全保障政府問題委員会調査小委員会(委員長Rob Portman;共和党所属、オハイオ州選出)が超党派報告としてまとめ、公表しました。

Rob Portman

報告書の調査は、米国の連邦捜査局(FBI)、全米科学財団(NSF)、国立衛生研究所(NIH)、エネルギー省、国務省、商務省、ホワイトハウス科学技術政策室の7つの組織を対象に8カ月間かけて行われました。同小委員会は2019年11月19日、この報告に関する公聴会を開き、議論しました。

報告書などによると、中国は2050年までに科学技術における世界のリーダーになることを目指しているそうです。中国政府は1990年代後半から、海外の研究者を募集して国内の研究を促進しており、そうした人材募集プログラムは現在、約200あります。その中で最も有名なものが、「海外高層次人才引進計画」(千人計画、Thousand Talents Program)です。報告は千人計画を詳しく分析しています。

千人計画は2008年に始まり、2017年までに7000人の研究者を集めたとされる。ボーナスや諸手当や研究資金が用意され、対象は中国系の研究者とそれ以外の場合の両方がある。Portmanは、千人計画の契約の実例のいくつかの規定を取り上げた。契約は、参加する科学者たちに、中国のために働くこと、契約を秘密にし、ポスドクを募集し、スポンサーになる中国の研究機関に全ての知的財産権を譲り渡すことを求めている。

さらに契約は、科学者たちが米国で行っている研究を忠実にまねた「影の研究室」を中国に設立することを奨励している。NIHの副所長Michael Lauerは、「中国は、影の研究室のおかげで米国で何が進んでいるかを世界に先駆けて知ることができます」と議員たちに説明した。「NIHが、影の研究室の存在を米国の研究機関に知らせると驚かれることがしばしばで、多くの研究機関は職員が中国に研究室を持っていることを知りませんでした」とLauerは話した。

報告書によると、エネルギー省の調査では、米国立研究所に所属していたあるポスドク研究員は、千人計画に選ばれて中国で教授職を得、中国に戻る前にこの研究所から機密扱いではない3万件の電子ファイルを持ち去ったといいます。この研究員は中国の研究機関に対し、米国での自分の研究分野は高度な防衛力を持つために重要なものだと話し、中国の防衛力の近代化を支援する研究を計画していたといいます。

こうした中国のプログラムに対し、FBIや米国の研究機関の対応は非常に遅く、研究機関は米国の研究を守るための取り組みを組織しなければならない、とPortmanは指摘しました。「私たちは、もっと素早く行動しなければなりません」と彼は話しました。

報告書は、外国の人材募集プログラムに参加している研究者には、その契約条件などの完全な開示なしに米国の研究資金を得られないようにすべき、などと提言しています。また、基礎研究で得られる成果には可能な限り制約をかけないという、米国政府が1985年から採用してきた基本方針の再検討を求めています。Portmanらは対策の立法化にも言及しています。

この問題の調査で、中国系の研究者たちが不公平に標的にされているという懸念も生じています。報告書は、米国政府出資の研究を守ることと国際協力を両立させることは今後も必要だとしています。

米国大学協会(ワシントンDC)の政策担当副会長のTobin Smithは、「報告は、人材募集プログラムの契約内容を徹底的に調べることにより、この問題を生々しく伝えています。大学教員たちに、こうした人材募集プログラムに加わる場合は注意しなければならないことを気付かせるには、この報告が役立つはずです」と話したとされています。

2018年時点でも、「千人計画」などについては、その脅威が認識されていたにも関わらず、2019年時点でも、塀国内ではまだ取り組みが遅れていたようです。

それが、今年の1月には米マサチューセッツ州の名門大学であるハーバード大学で、化学・化学生物学部長が逮捕されたというのですから、米国でもようやっと取り組みが本格化してきたようです。

そうして、この動きは加速するでしょう。なぜなら、現在はコロナウイルスの蔓延による影響が世界を覆っており、コロナが変えてしまった世界は過去とは異なるものになるからです。

特に、米中対立は世界経済をどう変えるのでしょうか。リスク分析を専門とするアメリカの国際政治学者、イアン・ブレマー氏は本日の「Newsモーニングサテライト」テレビ東京に出演して以下のようなことを語っていました。

コロナ危機は少なくとも3年は続き、世界経済は10%以上縮小するだろう。 
最大の懸念はどれほど多くの職が失われるかだ。最も心配しているのは米中の対立だ。今は米中の相互依存が薄れ、技術をめぐる冷戦が起きている。 
米中は互いの技術に投資せず、互いに介入を許さない状況だ。米中の溝は深まり、その影響は経済の他の分野にも広がるだろう。 
米中間の不信が強まる中で、両国で人件費は上昇している。米中にまたがっていたサプライチェーンを国内に戻す動きが強まるだろう。
グローバル化からの急激な逆行は世界の姿を変えるとブレマー氏は指摘しています。ブレマー氏は「10年かけて起こるような変化が1~2年の間に起きるだろう。破壊的なことで、世界の地政学を変えてしまう。民主主義や自由市場の有効性や正当性も変えてしまうだろう。世界を緊張が覆うことになる。」などと述べました。

私もイアン・ブレマー氏の指摘は正しいと思います。米中対立が先鋭化しつつある現在、米国の研究機関に堂々と巣食う中国のスパイたちも、コロナ以前であれば、5年〜10年かけて摘発が行われだのでしょうか、今後は1年〜2年にスビードアップされることになるでしょう。

先に掲載したリンク先の記事の結論部分を掲載します。
日本と米国は同盟関係にあります。だから、日本には米国の情報もかなり蓄積しています。これが、中国に盗まれるということもあります。これは、明らかに米国にとって大きな不利益です。 
さらに、米国の技術ではなくても、日本の技術が中国に盗まれ、「中国製造2025」に大きく寄与することになれば、これも米国は自国にとって不利益とみなすことでしょう。 
このように、日本経由で中国に米国の不利益になる形で、情報が漏れれば、米国は黙っていないでしょう。それこそ、日本に対して制裁を課すということにもなりかねません。 
トランプ政権の“知的財産泥棒狩り”は、日本にとっても他人事どころか今そこにある危機なのです。
この記事を書いた、2018年11月14日時点では、日本の本格的な危機に対処するには、なんとなく5年から10年と思っていました。しかし、コロナによって変わった世界においては、1〜2年で、そのような脅威に日本が見舞われるかもしれません。

今のところ、政府はコロナ対策で目いっぱいのところがあると思いますが、こうしたコロナによって変わった世界にを目を配り対策を立てておくべきと思います。特に中国への対応は、旗幟を鮮明にすべきです。

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