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2018年5月3日木曜日

米専門家の緊急警告「東京、大阪に北朝鮮のミサイル攻撃」―【私の論評】北は国家崩壊の淵で「あらゆる手段」を使う、これに日本が対処しなければ世界から爪弾きされる(゚д゚)!

米専門家の緊急警告「東京、大阪に北朝鮮のミサイル攻撃」

融和ムードに騙されたのか、日本メディアは朝鮮半島有事について真剣に論じようとしない。平和ボケ日本とは逆に、アメリカの専門家は緻密な情報分析に基づいて危機的状況に警告を発している。ジャーナリストの古森義久氏が報告する。

 * * *

 北朝鮮をめぐる軍事衝突が起きたとき、日本への軍事攻撃が考えられる。この想定は決して過剰反応ではない。日本の安全のため、戦争を防ぐためにはその戦争をも想定せねばならない。安全保障での抑止の鉄則だ。

 北朝鮮の日本への軍事攻撃シナリオはこれまでも各方面で研究されてきた。当事国の日本でよりもアメリカでの研究が多かった。いま私が取材活動を続ける首都ワシントンでは北朝鮮の核兵器と弾道ミサイルの脅威に対する懸念がかつてなく高まり、朝鮮半島での戦争という事態についても論議は盛んである。

 そんな中、北朝鮮のミサイルによる日本攻撃の危険について警告を発する書が3月に刊行された。『迫りくる北朝鮮の核の悪夢(The Coming North Korea Nuclear Nightmare)』と題した本の著者は、中央情報局(CIA)や国務、国防両省、さらには連邦議会で25年以上、北朝鮮の核兵器や弾道ミサイルの動きを追ってきたフレッド・フライツ氏である。

フレッド・ライツ氏 写真・チャートはブログ管理人挿入 以下同じ

 同氏はいま民間研究機関「安全保障政策センター」の副所長を務めるが、トランプ政権の国家安全保障担当の大統領補佐官に新たに就任したジョン・ボルトン氏の国務次官時代に首席補佐官を務めたフライツ氏も政権入りが予想される。だからこの書もトランプ政権の政策を予測するうえで注目されるわけだ。

同書は北朝鮮のミサイルによる日本攻撃についてどう触れているのだろうか。

The Coming North Korea Nuclear Nightmareの表紙

 まず日本を射程内におさめ、しかもすでに照準を合わせているとみられるミサイルは次の通りだという。呼称はアメリカなど西側の国際基準を優先する。

 ▽短距離弾道ミサイル(SRBM)スカッド=射程300~800km。保有約100基(*)。

 ▽準中距離弾道ミサイル(MRBM)ノドン=射程1300km。保有約50基。

 ▽中距離弾道ミサイル(IRBM)ムスダン=射程3500km。保有約50基。

 ▽潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)ハンチャ=射程900km。開発中。

 【*各ミサイルの基数についてはフライツ氏は具体的にあげることを避けており、他の出所による。】

 このほかにアメリカにまで届くとされる長距離弾道ミサイルのテポドンなどがあるが、日本への脅威はこの4種類だという。

チャート上のBCのミサイルは日本に到達、DEは米国に到達する


 ◆「あらゆる手段をとるだろう」

 フライツ氏は北朝鮮が日本を激しく敵視する実態を北当局の「日本列島を核爆弾で海に沈める」という昨年9月の言明を強調し、攻撃がありうるとしている。最悪の場合、核攻撃の可能性も排除できないという。

 北朝鮮と日本は首都間の距離でも1200kmほど、九州となると平壌からわずか700kmである。日本海に自衛隊の艦艇が出動すれば、北の短距離ミサイルの射程にまで入ってしまう。

北朝鮮はミサイルを日本のどこに、どう撃ち込んでくるのか。日本国内の具体的な攻撃目標についてアジア安全保障の専門家である国防大学国家戦略研究所のジム・プリシュタップ上級研究員は、在日米軍基地がまず狙われるだろうと指摘する。

 「最も現実的なシナリオはアメリカと北朝鮮の間で戦闘が起き、北側が米軍の戦闘、兵站両面での後方基地となる日本国内の基地をミサイル攻撃で破壊しようとする可能性だろう」

 であれば米朝開戦へ介入度合いの高い米空軍や海兵隊の基地がある三沢、横田、岩国、沖縄が標的となる。

 歴代政権の国防総省高官だったブルース・ワインロッド氏は北朝鮮の行動は合理性に欠けることも多く、東京や大阪といった大都市をミサイル攻撃するという悪夢のようなシナリオも想像はできると述べた。

 この点、プリシュタップ氏も「北朝鮮が日本を攻撃するときは、米軍の全面反撃により北の国家が滅びるときだから、あらゆる手段をとるだろう」と論評した。

 北朝鮮が米軍と戦闘状態になく、日本だけを攻撃する可能性は極めて低い。そんな事態になれば日米安保条約により米軍が参戦する。いずれにせよ米軍の激しい攻撃が北に加えられるのだ。

 北朝鮮が国家崩壊の淵で「あらゆる手段」を使うとなると、ミサイルに化学兵器や細菌兵器の弾頭をつけて攻撃してくる危険さえ否定できない。米軍当局は北の核以外のこの2種の大量殺戮兵器の存在にも再三、警告を発している。

 ●こもり・よしひさ/慶應義塾大学経済学部卒業。毎日新聞を経て、産経新聞に入社。ロンドン支局長、ワシントン支局長、中国総局長などを経て、2013年から現職。2015年より麗澤大学特別教授を兼務。著書に『戦争がイヤなら憲法を変えなさい』(飛鳥新社)、『トランプは中国の膨張を許さない!』(PHP研究所)などがある。

 ※SAPIO2018年5・6月号

【私の論評】北は国家崩壊の淵で「あらゆる手段」を使う、これに日本が対処しなければ世界から爪弾きされる(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事に掲載されている、フライツ氏は"The Coming North Korea Nuclear Nightmare"の中で、いまの日本が北朝鮮のこれほどのミサイルの脅威に対しても有効な自衛手段をまったく持たないことへの懸念を表明しています。以下に一部を引用します。
日本の現憲法は日本に向けての発射が切迫した北朝鮮のミサイル基地を予防攻撃することを許さない。アメリカに向けて発射されたミサイルを日本上空で撃墜することも認めない。憲法9条の規定により、日本領土外の敵は攻撃できず、同盟国を守るための軍事行動もとれないというのだ。日本は自国の防衛を正常化する必要がある。
憲法9条に根拠をおく専守防衛、そして集団的自衛権禁止という年来の日本の防衛態勢の自縄自縛が北朝鮮のミサイルの脅威によって明らかな欠陥をさらしているということです。

いまの日本では政府・自民党は北朝鮮のミサイルに対して敵基地攻撃能力の保持は憲法に違反しないという主張を表明し始めました。だが憲法9条の戦力の禁止や交戦権の禁止という明記を一読するとき、日本がいかに自衛のためとはいえ、外国への攻撃能力を持つことは禁止という意味にしか解釈できない。なにしろ憲法9条の不戦の精神をそのまま体現したような「専守防衛」という基本政策はなお健在なのです。

ただし、憲法学の京都学派の佐々木惣一氏は「憲法9条は自衛戦争まではは禁じていない」という見方をしていましたが、残念ながらこの見解は日本国内ではそもそも存在しなかったかのように、かき消されていしまっています。保守系の人でも知らない人も多いようです。そもそも、日本国内で現在ほとんど顧みられていません。

佐々木惣一

集団的自衛権の行使についても同様です。平和安保法制の発効で集団的自衛権はその一部が特定の条件下では行使できるというようになりました。しかしまだまだ二重三重の縛りがかかり、全世界の他の諸国が主権国家の自衛では自明の理とする自由な集団的自衛権の行使とは異なるのです。日本は憲法によって自国を守るという国運をかけた活動にさえ、厳しい制約を課しているのです。

日本の現憲法はいまから72年前の1946(昭和21)年、占領米軍によって書かれたものです。この当時、憲法9条が課題とした日本の防衛といえば、敵の地上軍が日本領土に上陸してきて初めて活動開始というのが前提の概念でした。現在のように遠方から飛んでくるミサイルが日本の防衛を一気に崩壊させうるという常識は夢想だにされていませんでした。

だから72年前の戦争や防衛という概念から生まれた規制をいまの国際安全保障情勢に当てはめることは、アナクロニズム(時代錯誤)の極致です。日本の憲法と防衛のそんな時代錯誤はいまワシントンで刊行された書によっても裏づけられたといえます。

今日は憲法記念日です。全国で、護憲派と改憲派が集会など開いていて、それぞれの主張をしています。

しかし、北朝鮮という国や、金正恩という独裁者の正体を知れば知るほど、いつ現行の日本国憲法の想定を超えた事態が始まってもおかしくないということは容易に想定できます。叔父を処刑したり、実の兄を殺害したり、

高射砲による処刑は金正恩委員長が最も気に入っているという

ブログ冒頭の記事にもあるように、北朝鮮が国家崩壊の淵で「あらゆる手段」を使うとなると、ミサイルに化学兵器や細菌兵器の弾頭をつけて攻撃してくる危険さえ否定できないです。

そのような時に、政府が緊急に国民の命と財産を守ろうとして何かの行動を起こした場合、それに対して合憲だ、違憲だと言っても、事態を変えることはできません。事態をかるには行動するしかありません。

政府としては、国民の命や財産が重大な危機にさらされるようなとき、憲法解釈を変えてでも、行動すべきと思います。それで、国民の命や財産を何もしなかったよりは、まもられればそれで良いと思います。

その後に憲法解釈をこのように政府が変えて行動したと表明して、危機が去った後に憲法解釈を巡って解散総選挙を行えば良いと思います。そのときに国民が妥当だと思えば、与党が勝つでしょうし、そうではないと判断すれば、与党側が負けることになります。

それよりも、何よりも、日本に向けての発射が切迫した北朝鮮のミサイル基地を予防攻撃することをしないで攻撃を許してしまうとか、同盟国アメリカに向けて発射されたミサイルを日本上空で撃墜することも認めないとか、憲法9条の規定により、日本領土外の敵は攻撃できず、同盟国を守るための軍事行動もとらないなどというような馬鹿な真似はするべきではありません。

そんなことをすれば、日本は世界から爪弾きにあいます。特に米国から爪弾きにあいます。

北朝鮮の特殊部隊

しかしそうなれば、米国の軍事力に頼れなくなった日本は、中国、ロシアが日本を格好の餌食とします。いずれ日本は米国・中国・ロシア等によって分割統治されることになります。まかり間違って北朝鮮が残っていたとしたら、北朝鮮も分割統治に加わるかもしれません。そうして、各国は日本の富を簒奪できるだけ簒奪します。

そうなってしまってから、護憲派が憲法を守れとか、憲法解釈を変えるななどと主張しようにも、その時には日本という国家は実質的になくなっています。国があってこその憲法なのです。

リベラル・左翼が「安倍辞めろ」ではなく、「金正恩辞めろ」、「習近平辞めろ」、「プーチン辞めろ」などと叫び声をあげれば、すぐに拘束されて、その後は命の保証など、当然のことながらありません。十中八九斬首されることになるでしょう。

そうならないためには、私たちは政府が憲法解釈を変えざるを得ない局面もあり得ることを認識しておくべきです。

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2016年6月28日火曜日

【メデイアで報道されなかった事件】東シナ海で一触即発の危機、ついに中国が軍事行動―【私の論評】日本は、南シナ海の轍を踏むな(゚д゚)!

東シナ海で一触即発の危機、ついに中国が軍事行動

中国機のミサイル攻撃を避けようと、自衛隊機が自己防御装置作動

フィリピン海に展開した米空母ジョン・C・ステニス(2016年6月18日)
6月9日、中国海軍ジャンカイ級フリゲート艦1隻が尖閣諸島周辺の接続水域に侵入した。これまで公船(海警)が接続水域や領海に侵入してくることは、しばしばあったが、中国海軍が尖閣諸島周辺の接続水域に入ったのは初めてである。

その6日後の15日、今度は中国海軍ドンディアオ級情報収集艦が口永良部周辺の領海を侵犯した。2004年、中国海軍漢級原子力潜水艦が先島諸島周辺の領海を侵犯して以来、2回目の事案である。

中国国防省は「トカラ海峡は『国際航行に使われている海峡』で、自由に航行できる」と正当性を主張している。だが日本政府「屋久島や奄美群島付近のトカラ海峡は国際的な船舶航行がほとんどなく、国連海洋法条約で定める『国際海峡』には該当しない」と反論し懸念を示した。

国際法上、領海内の無害通航は認められている。ただ中国は自国の領海においては、「無害通航」についても事前承認を求めている。今回はダブルスタンダードの非難を避けるために、あえて「国際海峡」を主張したものと思われる。

  一触即発の東シナ海上空

この時、日米印3カ国の共同訓練に参加するインド軍艦が航行しており、中国軍は共同訓練を監視する目的があったことは確かである。その翌日の16日、今度は沖縄・北大東島の接続水域に同じ中国海軍情報収集艦が侵入している。

これら海上の動きと合わせるように、東シナ海上空では、驚くべきことが起こりつつある。中国空海軍の戦闘機が航空自衛隊のスクランブル機に対し、極めて危険な挑発行動を取るようになったのだ。

東シナ海での中国軍戦闘機による米軍や自衛隊の偵察機への危険飛行は、これまでにもしばしば生起している。他方、中国軍戦闘機は空自のスクランブル機に対しては、一定の抑制された行動を取ってきたのも事実である。

武装した戦闘機同士がミサイル射程圏内でまみえると、一触即発の事態になりかねない。そういうことに配慮してだろう、中国軍戦闘機は空自戦闘機とは一定の距離を保ち、比較的抑制された行動を取ってきた。

これまで中国軍戦闘機は東シナ海の一定ラインから南下しようとはせず、空自のスクランブル機に対しても、敵対行動を取ったことは一度もなかった。

だが今回、状況は一変した。中国海軍艦艇の挑戦的な行動に呼応するかのように、これまでのラインをやすやすと越えて南下し、空自スクランブル機に対し攻撃動作を仕かけてきたという。

攻撃動作を仕かけられた空自戦闘機は、いったんは防御機動でこれを回避したが、このままではドッグファイト(格闘戦)に巻き込まれ、不測の状態が生起しかねないと判断し、自己防御装置を使用しながら中国軍機によるミサイル攻撃を回避しつつ戦域から離脱したという。

筆者は戦闘機操縦者だったので、その深刻さはよく分かる。まさに間一髪だったと言えよう。冷戦期にもなかった対象国戦闘機による攻撃行動であり、空自創設以来初めての、実戦によるドッグファイトであった。

日中共に戦闘機はミサイルを搭載し、機関砲を装備している。武装した戦闘機同士がミサイル射程圏内で遭遇するわけである。戦闘機同士がいったん格闘戦に陥ると、空中衝突やミサイル発射に至る可能性は十分にある。

規律の厳格な空自戦闘機操縦者が先にミサイル発射することはまずあり得ない。だが中国空軍の戦闘機パイロットは経験も浅く、何をするか分からない。

2001年、海南島沖の公海上空を飛行中の米海軍EP-3電子偵察機に対し、中国空軍J-8戦闘機がスクランブルをかけ、挑発行動を取った挙句衝突したことは記憶に新しい。

  外交手段を取らない日本政府

今回の事例は極めて深刻な状況である。当然、政府にも報告されている。

だが、地上ではその深刻さが理解しづらいせいか、特段の外交的対応もなされていないようだ。だからニュースにもなっていない。問題は、こういった危険な挑発行動が単発的、偶発的に起こったわけでなく、現在も続いていることだ。

これら上空での状況は、海上での中国海軍艦艇の動きとは比較にならないくらい大変危険な状況である。政府は深刻に受け止め、政治、外交、軍事を含めあらゆる観点からの中国サイドに行動の自制を求めるべきである。

しかしながら、参議院選挙も影響してか、その動きは極めて鈍い。

なぜ今、中国は海上、航空の2つの領域でこういう挑発的な行動に出てきたのだろう。現段階で確たることは言えないが、偶発的事案とは言えないことだけは確かだ。

危機管理の要諦として「最悪」のシナリオを考えておく必要があるが、最悪のシナリオは、一言でいうと「中国が一歩踏み込んだ」ということだろう。

これまで中国は決して軍艦を尖閣諸島周辺の接続水域に侵入させたことはなかった。尖閣諸島の国有化以降、公船(海警)を侵入させて既成事実を積み上げてきた。

毎月3回、1回3隻の公船が尖閣諸島の領海を侵犯し、2時間居座った後、退去するという定型パターンを繰り返してきた。「3-3-2フォーミュラ」と言われるゆえんである。

「サラミ・スライス戦略」「クリーピング・エキスパンション」と言われるように、中国はこれまで、国際社会の批判を回避すべく、軍艦を出さずに、公船でもって既成事実を積み重ね、少しずつ少しずつ実効支配を我が物にしようとしてきた。

   狙いは空自戦闘機の駆逐

上空でも中国軍戦闘機によって抑制されてはいるが接近行動を繰り返してきた。だが、戦闘機による尖閣諸島の領空侵犯は一度もなかった。

ただこれを繰り返しても、国家の象徴たる軍艦や戦闘機を出さない限り、実効支配を完結することはできない。

いずれは、軍艦を尖閣諸島の領海に居座らせ、空自戦闘機を駆逐して中国戦闘機を自由に領空に留まらせることによって実効支配を完結させたいと機会を伺っていた。今回、その第1歩を踏み出す絶好のチャンスが到来したと判断したのではないだろうか。

G7が終わり、シャングリラ対話、そして米中経済戦略対話も終了した。いずれも南シナ海の埋め立てや領有権問題で中国は非難の矢面に立たされ、国際的に孤立した。この後、9月に北京で実施されるG20にはしばらく時間がある。この間を絶好のチャンスと捉えた可能性がある。

9月までに評判を回復すればいいのであって、今しばらくの間は、さらに国際的に非難されるような行動を取っても、大勢に影響はない。

また、フィリピンが提訴した国際常設仲裁裁判所の判断がまもなく示される予定である。中国はこの判断には従わない旨を既に公言している。だが、裁定が下されればさらに国際社会から糾弾を受けるだろう。

だが、100度の湯に100度の熱湯を加えても200度にはならないように、地に落ちた評判はそれ以上落ちることはない。失うものはないのであり、これは逆に絶好のチャンスでもある。

まさにピンチはチャンスとばかりに軍による領海侵犯、領空侵犯を常態化させる「最初の一歩」として、行動を開始したと考えたとしても不思議ではない。

もしこの最悪のシナリオが事実なら、今後、9月までの間、東シナ海の海上および上空で日中の小規模紛争が起きる可能性は極めて高い。事実、上空では毎日のように危険極まりない挑発的行動が続いているという。

自衛隊は引き続き毅然と対応しなければならない。だが、中国軍の挑発に乗ってはならない。また中国軍へ武力行使の口実を与えてはならない。

  中国の思う壺にならないために

さりとて、余計な刺激を避けようと、こちらが引くだけでは日本の弱腰を見透かされ、中国軍の行動はさらにエスカレートし、軍による実効支配が進んでしまう。まさに中国の思うつぼである。

2010年、中国漁船が海保巡視艇に衝突した際、時の民主党政権は漁船の船長を法律で裁くことなく国外退去させた。この結果、さらに中国の傍若無人な行動はエスカレートしたことを見れば分かる。

中国は今回、間違いなく一歩踏み出した。今、中国はこれらの動きに対する日本政府の反応を見ている。

上空での熾烈な戦いは今もなお続いている。もはや空自による戦術レベルの対応だけでは限界かもしれない。上空での中国軍の危険な挑発行動は、いち早くこれを公表し、国際社会に訴え「世論戦」に持ち込むことが必要である。

ことは急を要する。政治家はまず、ことの深刻さ、重要さを認識すべきである。今のまま放置すれば、軍による実効支配が進むだけでなく、悲劇が起きる可能性がある。

政府は、政治、外交、軍事を含む総合的で戦略的な対応を早急に取るべきである。英国のEU離脱への対応や参議院選挙も重要であろう。だが、この問題はそれと同等またはそれ以上に深刻なのだ。

【私の論評】日本は、南シナ海の轍を踏むな(゚д゚)!

上記の記事を読んでいるだけでは、日本は無防備のように感じられるかたもいらっしゃるかもしれません。しかし、日本は日本なりにかなりの準備をしています。本日はそれについて掲載します。東シナ海および日本の南西諸島の防衛はどうなっているのかを以下に掲載します。

  南西諸島への備え

まずは、日本の南西諸島一体の地図を以下に掲載します。



南シナ海に滑走路を備えた人工島を造成する中国に対し、米海軍は艦船を派遣し、中国の海ではないとメッセージを送りました。しかし人工島はほぼ完成しており、関係者の間では、中国が軍事的な支配を確立しつつあるとの認識が広まっています。

1996年の台湾海峡危機の際、中国軍は急派された米空母の前に矛を収めざるを得ませんでした。その経験をもとに中国は、有事に米軍が戦力を投入できないよう、南シナ海、東シナ海、さらに西太平洋まで「内海化」することを狙っています。

中国の目標は南シナ海、さらに東シナ海で覇権を取ることだです。ここで、譲歩すれば中国の挑発的な行動を助長するだけになります。

このうち南シナ海が中国の勢力圏に入りつつある今、鹿児島県・大隅諸島から沖縄県・先島諸島を通り(日本の南西諸島)、マレーシアのボルネオ島まで連なる島々が、これまで以上に戦略的な重要性を帯びてきます。中国が「第一列島線」と呼び、米国に対する防御線と位置づけているラインです。
この地域にどのように自衛隊が配備されつつあるのか、以下に掲載します。
南西諸島への自衛隊配備計画 出展:米国議会調査局(2015年12月17日作成)
 上の表のように、南西諸島に監視部隊やミサイルを置いて抑止力を高め、有事には戦闘機や潜水艦などと連携しながら相手の動きを封じ込める戦略を、日本政府は「海上優勢」、「航空優勢」と表現している。しかし、安全保障政策に携わる関係者は、米軍の活動を制限しようとする中国の軍事戦略「接近阻止・領域拒否(Anti─Access/Area Denial、A2AD)」の日本版だと説明しています。

A2ADについては、詳細はここでは説明しません。詳細を知りたい方はwikipedia等をご覧になってください。

今後5、6年で第一列島線が日米同盟と中国の間の軍事バランスを左右することになるでしょう。


それまでに態勢を整備しようと、日本は第一列島線のうち、自国領内の南西諸島の軍事拠点化を進めています。 鹿児島県の奄美大島に550人、沖縄県の与那国島に150人、宮古島に700─800人、石垣島に500─600人の部隊を置く予定です。

これまで沖縄本島以南には、宮古島と久米島に航空自衛隊のレーダー基地がある程度でした。防衛省は、この空白地帯に警備部隊や監視部隊を編成することで、離島に侵攻された場合の初動態勢を整えると説明しています。

しかし、配備するのは警備や監視部隊だけではありません。奄美大島、宮古島、石垣島には対空・対艦ミサイル部隊も展開します。

旧ソ連の侵攻に備えて開発された射程180キロの地対艦ミサイルなら、沖縄本島と宮古島の間に横たわる350キロの宮古海峡もカバーできます。
中国が構築しているとされる軍事戦略・A2ADは、対空・対艦、弾道ミサイルを沿岸部や内陸に大量に配備。潜水艦や戦闘機などと連携し、有事に米軍の艦船や航空機を中国本土に近づけさせない、近づいても自由に活動させないことを狙っています。

人民解放軍は昨年9月の「抗日戦争勝利70周年」軍事パレードで、艦載機と合わせて50億ドルの米空母を破壊可能とされる対艦ミサイル「東風21D」を披露しました。

米議会は、中国が第一列島線を射程に収める短・中距離ミサイル1200発を保有していると分析しています。さらに中国は潜水艦を増強、レーダーを回避できる地上発射型の弾道ミサイルの開発にも取り組んでいます。

  航空優勢、海上優勢

南西方面の防衛力を強化する方針は、2012年末に発足した第2次安倍晋三政権にも引き継がれましたが、新たに策定された防衛大綱の中に「海上優勢」、「航空優勢」という単語が盛り込まれました。

この防衛大綱については以下リンクを御覧ください。

http://www.mod.go.jp/j/publication/kohoshiryo/pamphlet/taikou/taikou.pdf

敵の艦船や航空機の活動を制限した状態を指す軍事用語で、中国が構築を目指しているA2ADと同じ概念です。

日本は新型哨戒機や無人偵察機の調達のほか、潜水艦部隊を増強することを決定しました。ステルス性の高いF35戦闘機や新型輸送機オスプレイの取得、水陸機動団の新設も進めています。

平時の警戒監視を手厚くして軍事的空白を埋める一方、いざとなれば短時間で戦力を集中し、島に配備されたミサイル部隊と連携しながら、中国軍を東シナ海で自由に動けなくするのが狙いです。

中国海軍の動向を研究する米海軍大学のトシ・ヨシハラ教授は、東シナ海から西太平洋にわたる海域で自衛隊が果たす役割の重要性を指摘しています。有事の際に中国軍の作戦を制限できれば、米軍の活動の自由度が増すだけでなく、米軍が来援する時間を稼げるとみています。

国防費を大幅に削減する一方、中東問題から抜け出せない米国が、一国で中国の膨張を止めることは難しくなりつつあります。アジア太平洋地域の友好国との関係強化が不可欠になっており、米海軍第7艦隊のアーコイン司令官は日本の動きについて、米軍の戦略を補完するものと指摘しています。

  運べなかったミサイル 

陸自の88式地対艦ミサイル
この構想は、今はまだ机上の構想にすぎません。1つ1つの島が小さな南西諸島には大規模な戦力を常駐させることはできないため、緊急時には本土から素早く部隊を移動させる必要があります。

輸送手段を持たない陸上自衛隊の部隊や装備を、航空自衛隊と海上自衛隊が効率的に運ぶ統合運用がカギを握ることになります。

昨年10月末から11月中旬に陸・海・空の統合訓練を行った自衛隊は、本土のミサイルを南西諸島に初めて空輸しようとしました。しかし、福岡県の築城基地から沖縄県の那覇基地まで、空自の輸送機が陸自の中距離ミサイルを運ぼうとしたところ問題が発生しました。

危険物の輸送方法を定める国連勧告に従い、陸自が空自に事前申請したのは燃料の入っていないミサイルだったのですが、実際に運ぼうとしていたのは燃料を搭載したミサイルでした。燃料入りのものを運ぶ準備をしていなかったため、カラのまま運ばざるをえなかったのです。

自衛隊は各地に部隊がいますが、輸送、ロジスティクス(兵たん)に問題があるようです。陸・海・空、それぞれ整備や給油の仕方が違います。陸だけで使っていれば不便ではなかったことが、共同使うと問題が出てくるようです。

一方、中国軍が第一列島線を抜けて西太平洋に出ていく動きは常態化しつつあります。昨年11月下旬には爆撃機と情報収集機、早期警戒機が宮古海峡の上空を、12月上旬には駆逐艦、フリーゲート艦、補給艦が大隅海峡を通過しました。

そうして、今年に入ってからの、中国海軍の艦船の初の接続水域等への侵入です。

日本は常に国会対応ばかりに終始して、安全保障の本質的な議論をすることすらタブーな国でした。そのツケが今日まで回ってきているようです。

中国としては、日本が完璧に以上で掲載した自衛隊の配備計画を実現してしまっては、後から自由に動きまわるのはほぽ困難になるとみているでしょう。

(南西諸島の島々に配備された、対艦・対空ミサイル)+(航空自衛隊の戦闘機)+(海上自衛隊の艦船+潜水艦)により、南西諸島に堅固な防衛網ができてしまっては、海軍力ではいまのところ数段下の中国にはなすすべがありません。

空軍力も、実力的にはまだまだ下です。対潜哨戒能力と潜水艦の能力は、日本は世界一であり、中国は世界の中では低い水準にあります。

このような状況で、日本の南西諸島に堅固な防衛網ができてしまっては、中国はなすすべもありません。さらに、南シナ海では米軍が中国の動きを封じ込めようとしています。

しかし、先ほども掲載したように、南シナ海では中国は人工島はほぼ完成しており、関係者の間では、中国が軍事的な支配を確立したものとみなしています。

中国は日本の南西諸島でも同じことを目論でいるかもしれません。南シナ海のように、東シナ海の尖閣諸島を奪取し、軍事基地化する。あるいは、東シナ海の日本との国境沿いに構築したリグなどを軍事基地化するなどして、それを既成事実化して、西太平洋の出口を確保しようとするかもしれません

これを防ぐための手段は、政府は、政治、外交、軍事を含む総合的で戦略的な対応を早急に取るべきであるとともに、実際に中国軍がどのような行動をとれば、日本が武力を用いて中国軍を排除するに至るかをはっきりさせ、それを中国および世界の各国に向かって予め周知しておき、中国軍がそのような動きを見せれば実行することです。

さらに、これを実行に移すには、ルトワック氏の著書『中国4.0』にある提言が参考になると思います。

どうなるか分からない不安定さを持つ中国に対応するために、無理に大局をみるより現実的な個々の事象に個々の組織が対応するべく準備せよというものです。

日本側が、独自かつ迅速な対応を予め用意しおくように進言しています。しかも、各機関相互間の調整を重視するよりも、各機関が独自のマニュアル通りに自律的に行えるようにしておくべきとしています。

たとえば、海上保安庁は即座に中国側の上陸者を退去させ警戒活動にあたり、外務省は諸外国に働き掛けて、中国の原油タンカーやコンテナ船などの税関手続きを遅らせるという具合です。とにかく、「対応の迅速さを優先させる」ことを強調しています。

陸海自衛隊による島嶼防衛訓練
各機関が、このようなマニュアルを用意しておき、即座に動くことが肝要であることをルトワックは主張しているのだと思います。各機関が綿密に共同して行動していては、迅速さに欠けて、あれよあれよという間に、南シナ海で中国が実施したように、いずれ軍事基地化され、既成事実をつくられてしまってからは、これを取り消すことは至難の業になるからでしょう。

各機関が独自に動けば、初期の対応はかなり迅速にできるはずです。無論、海上自衛隊も、マニュアルに従い、独自に動き、尖閣有事の際には、別行動をしている海上保安庁の巡視船の行動を見守り、それではとても歯がたたないまでに、事態が悪化した場合、迅速対応するという形になるでしょう。

そうして、中国側は、日本の迅速な対応に拒まれ、結局何もできないうちに、なし崩しになって終わってしまうということになると思います。

こうした、迅速な初期対応が終わった後に、その後の対応に関して、各機関が綿密に共同して行動すれば、良いということです。とにかく迅速さが一番ということだと思います。多少拙速であったにしても、中国側に既成事実を作られるよりは、遥かに良いということです。

ルトワック氏の提言があるなしにかかわらず、日本としては、尖閣有事の際のシナリオと、そのシナリオに対応したマニュアルは作成しておき、迅速に行動して、中国に全く付け入る隙を与えないという姿勢を貫くべきです。

日本は、南シナ海の轍を踏むべきではありません。確かに南シナ海では、周辺諸国は中国の環礁の軍事基地化を阻止する力はありませんでした。軍事基地化されてしまった後にアメリカが「航行の自由作戦」などで、中国を牽制しています。

しかし、日本は米国の助けがなくても、日本だけで東シナ海での中国横暴を阻止する力があります。

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