ダボス会議で公演する習近平 |
中国において、またもや不動産を中心としたバブルが再燃している。理由が、中国共産党が人民元の為替レートの急落を防ぐべく、海外送金などの資本移動の規制を強化したためであるわけだから、何ともコメントのしようがない。
とりあえず、明らかに資本移動を制限している国の通貨が、IMF(国際通貨基金)のSDR(特別引き出し権)のバスケット通貨に入っている時点で、根本から間違っている。中国共産党が通貨暴落を恐れ、外貨への両替規制を強化している以上、IMFは人民元をSDRの通貨バスケットから外すべきだ。
現在、中国共産党は人民元の外貨への両替を、年間5万ドル(約566万円)に制限している。さらに、両替を求める中国人民は、銀行において資金を海外の不動産や証券、生命保険、投資型保険の購入に使わないことを求められ、誓約書にサインさせられるなど、さまざまな規制をかけられている。加えて、年間500万ドル(約5億6685万円)以上の海外送金を許可制とし、事実上禁止した。
結果的に、中国で「人民元」を稼いだ日系企業が、日本への送金ができなくなり、現地から悲鳴が上がっている。人民元を日本円に両替できないのでは、中国でビジネスをしても意味がない。何しろ人民元のままでは、日本国内で給料を支払うことすらできない。
もっとも、共産党のなりふり構わぬ資本制限の効果で、中国の外貨準備減少は小康状態となった。中国人民銀行が5月7日に発表した4月末の外貨準備高は、3兆295億3000万米ドル(約343兆4578億円)で、前月比で0・68%の増加である。
とにかく、共産党は外貨準備が3兆ドル(約340兆1100億円)未満となるのが相当に嫌なようで、一度、3兆ドルを割り込んだ2017年1月以降、人民元の外貨への両替を食い止めるべく、なりふり構わぬ規制強化に走った。
人民元の両替が困難になり、結果的に投機マネーが国内不動産市場に流入。またもや、不動産バブル再燃になってしまったわけだ。
ところで、習近平国家主席は今年1月のダボスにおける世界経済フォーラムにおいて、「世界を取り巻く多くの問題は、決して経済のグローバル化がもたらしたものではない」と演説し、反グローバリズムの動きを牽制した。
グローバリズムとは、モノ、ヒト、カネの国境を越えた移動を自由化することだ。現在の共産党の資本移動の制限は、カネの国境を越えた移動を妨げ、明確にグローバリズムに反している。
習近平政権がグローバリズムを擁護するならば、まずは自ら範を示し、資本移動の規制を廃止すべきだ。とはいえ、通貨暴落を恐れる中国共産党には、資本移動の規制を撤廃できない。相も変わらず、中国とは本当に欺瞞(ぎまん)にあふれた国なのだ。 (経済評論家・三橋貴明)
【私の論評】日本は中国関連の事業にかかわるな(゚д゚)!
中国の資本移動の規制は、以前から十分予測できていました。このブログでもそれについて掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【日本の解き方】中国経済もはや重篤なのか 食い止められない資本流失―【私の論評】日銀に振り回され続けるか、資本規制かを選択せざるをえなくなった中国(゚д゚)!
日銀の黒田東彦総裁 |
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事は昨年2月のものです。今から振り返ってみると、これは日銀総裁による警告だったとも考えられます。以下に一部を引用します。
日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁が個人的見解としたうえで、中国の人民元について「国内金融政策に関して一貫性があり適切な方法として、資本規制が為替相場の管理に役立つ可能性がある」と述べたと報じられた。
物やサービスの移転を伴わない対外的な金融取引のことを資本取引という。日本の外為法では、居住者と非居住者との間の預金契約、信託契約、金銭の貸借契約、債務の保証契約、対外支払手段・債権の売買契約、金融指標等先物契約に基づく債権の発生等に係る取引、および証券の取得または譲渡-などが定められている。
このほかにも、居住者による外国にある不動産もしくはこれに関する賃借権、地上権、抵当権等の権利の取得、または非居住者による本邦にある不動産もしくはこれに関する権利の取得も、資本取引とされている。
こうした取引は、金融機関を通じて行われるので、資本取引を規制しようとすれば、金融機関を規制することとなる。規制の方法としては、全面禁止、取引許可、取引届出、取引報告などがあり、前者から後者にいくにつれて規制が弱くなる。
黒田総裁が指摘した、為替管理と資本取引の関係を理解するには、「国際金融のトリレンマ(三すくみ)」を知る必要がある。それは、「独立した金融政策」「固定為替相場制」「自由な資本移動」のうち、2つまでしか同時に達成することはできないというものだ。
この法則に従うと、資本取引規制によって自由な資本移動をあきらめれば、独立した金融政策と固定為替相場制を達成できる。つまり、国内物価の安定のために金融政策を使うことが可能となり、為替相場も安定させられるというわけだ。
中国の資本規制は原則として許可制で、先進国が原則として報告だけなのに比べて格段に規制が強い。それでも香港などを経由した資本流出の動きを食い止められないようだ。
もっとも、中国が本気になれば規制強化は容易だろう。なにしろ、中国では、問題を起こしたとして摘発された場合、政治的失脚までありえるからだ。以下に、この記事から国際金融のトリレンマについて詳細を解説している部分を掲載します。
日本をはじめとするいわゆる先進国は、「固定為替相場制」を放棄して、変動為替相場制に移行しています。これによって、「独立した金融政策」「自由な資本移動」を同時に達成することができました。
しかし、中国の場合は「固定為替相場制」を維持していますから、これをこれからも維持し続けるというのなら、国際金融のトリレンマを克服するためには、「独立した金融政策」もしくは、「自由な資本移動」のうちのいずれかを捨てなけれはならないということになります。
以下に国際金融のトリレンマの図と若干の説明を掲載します。
- ある国はこの3つの「自由な資本移動」「固定相場制」「独立した金融政策」のうち2つだけを受容することができます。もしある国が a の位置を選択し、「自由な資本移動」と「固定相場制」を導入するのであれば、金融政策の独立性は失われます。
「独立した金融政策」とは、特に現在の中国にとっては具体的に何を意味するのでしょうか。中国が、固定相場制を堅持し、自由な資本移動も堅持したとしたら、何がおこるかといえば、それは日本などをはじめとする、外国の金融政策に左右され「独立した金融政策」を実行できなくなるということです。
実際にそれはもうすでに発生していました。日本が2013年の4月から、金融緩和に転じてから、円安状況になり、それまで円高の状況とは異なり、中国経済にとっては、独立した金融政策が脅かされる事態となりました。
それまでの、中国の経済発展を支えていたのは為替操作によるキャッチアップ型の経済成長であり、円高とデフレを放置する日本銀行によるものでした。
慢性的な円高に苦しんでいた日本企業は、過度な「元安」政策をとる中国に生産拠点を移し、出来上がった製品の一部を逆輸入していました。日本国内で一貫生産するより、わざわざ中国を経由した方がもうかる構造になっていたのです。
日銀は、「デフレ政策で日本の産業空洞化を促進し、雇用と技術を中国に貢ぎ続けていた」のです。まさに、日本経済はこれによって、中国に振り回されていたのです。
しかし、2013年の4月から、日銀が金融緩和に転じたため、この構造は崩れ、今度は中国が日本の金融政策に振り回されるようになり、「独立した金融政策」を維持することが困難になってきたのです。
中国が、「独立した金融政策」と「固定相場制」を維持したいというのなら、「自由な資本移動」を規制するしかないのです。
本来は、「固定相場制」を捨てれば良いのでしょうが、そのような動きは全くみられません。今後も、中国は「自由な資本移動」を規制するしかないでしょう。
なぜ中国が「固定相場制」にこだわるかといえば、それには中国特有の事情があります。
中国経済は既に世界経済にどっぷりと組み込まれていますが、幸か不幸か、中国政府が世界経済を計画することまではできません。中国の方が世界に合わせねばならないのです。
例えば、IMFのバスケット通貨であるSDRの構成通貨は、現在、米ドル、ユーロ、英ポンド、日本円の4通貨だけで、中国は日英ほどにも認められていません。世界第2の経済でありながら、株式指数などでも、未だに新興国市場扱いです。
中国元はSDRの通貨とはなっています。SDRの構成通貨前一度元の切り下げを行ってはいましたが、その後未だに「変動相場制」に向かう動きはありません。
世界経済の真の一員として認められるためには、中国は世界の共通ルールである変動相場制を導入する必要があります。しかし導入すると、為替レートが市場主導で上下するようになるため、これまでのような自己完結型の計画経済が機能しなくなる懸念があります。中国政府は大きなジレンマを抱えているのです。
とはいえ、中国は1992年から社会主義市場経済を導入しており、私有財産を禁じる共産主義を事実上放棄しています。しかし、中国はこれ以上、独自の経済体制を維持することは困難で、事実上の選択肢はないと言ってもいいでしょう。
また、ドル連動相場を維持するには、金融政策も米ドルに連動するか、少なくとも逆行しない必要があります。米国が引き締めに転じると、中国が緩和する余地がなくなるのです。その意味でも、中国は管理変動相場制の見直しを迫られていました。
その中国が事実上の資本移動の規制を始めたのですから、これはやはり中国としてはこれからも「独立した金融政策」と「固定相場制」を維持したいという意思の現れだと考えられます。
「資本移動の規制」をするというのなら、グローバリズムなどという看板は外してもらわなければなりません。そうして、このような国が主導する「一帯一路」など最初から成り立たないということです。
それにしても、黒田日銀総裁は、いずれ中国が「資本移動の規制」をせざるを得なくなることを予期したのでしょうが、それにしても、まさか中国がとんでもないことになるから、日本企業は何とかしないといけないと警告するわけにもいかず、個人的見解としたうえで、中国の人民元について「国内金融政策に関して一貫性があり適切な方法として、資本規制が為替相場の管理に役立つ可能性がある」と述べたのだと思います。
中国で「人民元」を稼いだ日系企業が、日本への送金ができなくなり、現地から悲鳴が上がっているそうですが、これについて、中国に進出していた企業はどのように受け止めていたのでしょうか。
やはり、撤退などのことを考えるべきだったでしょう。今後、中国の経済は悪くなることはあっても良くなることはありません。そうして、これに対象するため中国は「資本移動の規制」のようになりふり構わずこれからも他の先進国であれば、禁じ手あるようなことも平気で講じてくる可能性が大です。
中国・北京で15日に閉幕した現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」国際協力サミットフォーラムで、英国、フランスやドイツ、ギリシャなど欧州連合(EU)加盟国の一部が貿易推進に関する文書への署名を拒否していたことが分かっています。仏メディアが報じました。公共調達の透明性や環境基準などをめぐる欧州側の懸念が考慮されていなかったためといいます。
日本としても、「一対一路」はもとより、AIIBなど中国関連の事業にはいっさいかかわらないほうが安全でしょう。資本規制を平気でする国とまともにつきあえるはずもありません。日本人でAIIBに金を出せなどという連中は、はっきりいえば中国スパイか、馬鹿であるかのいずれかです。
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