中国軍の上陸訓練を伝える中国中央テレビの 映像。沖縄県・尖閣諸島を狙っているのか |
中国に関するニュースを報じるインターネットサイト「世界論壇網」(=原表記は簡体)に、中国人民解放軍海軍の071型揚陸艦「長白山」をはじめとする15枚の写真が掲載されたのは6月27日のこと。うち9枚には国営メディアのクレジットが入り、複数の水陸両用車などが陸(島?)に向かう様子が映し出されていた。
071型揚陸艦は、基準排水量が約1万2300トンとされ、海上自衛隊のヘリコプター搭載型護衛艦「ひゅうが」(同排水量約1万3950トン)に匹敵する。輸送ヘリコプター2機や、艦尾ドックから発進するエアクッション型揚陸艇4隻などを収容。兵員も500~800人程度は輸送可能とみられる。
071型揚陸艦「長白山」 |
気になるのは、すでに国営メディアで報じられた上陸作戦の写真が、なぜ、6月27日に「世界論壇網」に再掲載されたかだ。この時期、中国軍は東シナ海での行動をエスカレートさせていた。
中国海軍のジャンカイI級フリゲート艦が6月9日、尖閣周辺の接続水域に侵入した。中国の軍艦として初めてだった。さらに、中国海軍のドンディアオ級情報収集艦が同月15日、鹿児島県・口永良部島(くちのえらぶじま)の西方海域の日本領海を侵犯した。
海だけではない。
自衛隊トップの河野克俊統合幕僚長は同月30日の記者会見で、今年4~6月に日本領空に接近した中国軍機に対する航空自衛隊戦闘機の緊急発進(スクランブル)の回数が、昨年の同時期に比べて80回以上増え、過去最多の約200回となったことを明らかにした。
河野氏は「海上においても空においても中国軍の活動範囲が拡大し、活発化している。エスカレーションの傾向にある」と強い危機感を示した。
一方、元空自航空支援集団司令官の織田(おりた)邦男元空将が同月28日、「東シナ海上空で、中国機が空自機に対して攻撃動作を仕掛け、空自機が離脱した」とする記事をインターネット上で発表したことについて、河野氏は「(中国機が)攻撃動作をとった事実はない」と否定した。
赤外線誘導ミサイルから回避するためのフレアの発射訓練をする自衛隊戦闘機 |
織田氏の指摘が事実なら、中国機の行為は軍事衝突に発展しかねない危険極まる行為といえる。
日本が現在、参院選のまっただ中というタイミングも気になる。
前出の坂東氏は「これまでは、日本の選挙期間中に軍事行動を活発化させれば、保守政党が支持を伸ばし、親中派のリベラル政党のマイナスになるため、中国軍は目立った行動はしなかった。今回は違う。軍事行動のレベルを上げ、メディアでもアピールしている。『いまなら東シナ海の覇権を握れる』と踏んで行動しているのではないか」と分析し、続けた。
「参院選の最中に、尖閣諸島の魚釣島や、周囲の岩礁に上陸する可能性もあるのではないか。やるとすれば、日本政府が対応を取るのが難しい投開票当日が危ない。上陸後は危険を避けるため、すぐに立ち去るだろうが、石碑などを残していき『自分たちの主権がこの島まで及んだ』と国際的にアピールするかもしれない。中国は、韓国が不法占拠している島根県・竹島を念頭に置いているようだ」
中国軍の尖閣上陸は、軍事的に可能なのか。
軍事ジャーナリストの竹内修氏は「上陸自体は、物理的には十分可能だ。まずは小型艇で特殊部隊を送り込むことが考えられる。もし、この部隊と自衛隊が交戦状態になったなら、中国は『わが国の領土、軍隊を攻撃した』と主張し、揚陸艇など大規模な部隊を送り込み実効支配に移る。中国が考えるのはこうしたシナリオだろう」と指摘する。
自衛隊は現在でも、24時間、365日、日本の領土・領海・領空を守り、国民の生命と財産を守っている。常識が通用しない中国軍をこれ以上増長させないためにも、さらなる警戒が必要だ。
【私の論評】「マラバール」と「米上院議員尖閣上空飛行」で中国大パニック(゚д゚)!
上の記事でも指摘しているように、先月になってから、東シナ海での中国軍の活動が活発になっています。
これについては、以前このブログに述べたように、日本の南西諸島で日米印の共同訓練「マラバール」が実施されたことへの中国側の牽制であることは、このブログにも掲載しました。
しかし、これだけだと、上記のような中国の先月からの異常な戦闘機や艦船による示威行動は説明がつかないかもしれません。
やはり、中国側にとっては、アメリカのマケイン上院議員の尖閣上空の飛行はかなりの脅威なのだと考えられます。
「マラバール」プラス「米常喜院議員尖閣上空飛行」が中国をパニックに陥れているのだと思います。
マケイン上院議員による、尖閣上空の飛行については、ツイッターでは掲載したことがありますが、ブログには掲載したことがなかったので、以下にその内容を掲載します。
米大物議員が尖閣諸島上空を飛行、中国は領空侵犯と抗議―米紙
尖閣上空を飛行したとされるジョン・マケイン議員 |
2016年6月25日、環球網は記事「米議員、チャーター機で尖閣諸島上空を飛行、中国側は強く抗議」を掲載した。
24日付の米紙ワシントン・ポストによると、米国のジョン・マケイン議員は6月初頭に台湾を訪問し、その後、チャーター機で東京へ向かう途中、尖閣諸島上空を飛行したという。同紙によると、駐米中国大使館は領空侵犯だとして米上院に抗議の書簡を送ったという。
マケイン議員は23日に声明を発表し、中国公船の尖閣近海への侵入は東シナ海情勢を緊迫化させていると主張。また尖閣諸島は日米安保条約の適用範囲だと米国政府の立場を強調した。この内容は、日本ではほとんど報道されませんでした。わざわざ、上院議員の搭乗したチャーター機が、尖閣上空を飛行したわけですから、これは当然のことながら「政治的メッセージ」含んでいます。無論、中国側は、日米ともに「日中には領土問題は存在しない。尖閣は日本固有の領土である」という政治メッセージであると受け取ったことでしょう。
最近では、米国は「マラバール」を日本の南西諸島で実施したり、上院議員が尖閣上空を飛行してみたりで、日本の尖閣問題にも積極的に関与するようになりました。これに対して中国はかなり神経を尖らせるどころかパニックに陥っているようです。
だからこそ、ブログ冒頭の記事のように、東シナ海でも航空機や艦船の動きを活発化させ、さらにインターネットサイト「世界論壇網」中国人民解放軍海軍の071型揚陸艦「長白山」をはじめとする15枚の写真が掲載され、尖閣奪取を匂わせるような報道をしたのだと考えられます。
オバマ大統領は2014年4月23日に国賓として来日するのを前に、21日夕方(米国東部時間)に読売新聞の書面インタビューに以下のように回答しています。
米国のオバマ大統領は書面インタビューで、沖縄県の尖閣諸島について「日本の施政下にあり、それゆえに日米安全保障条約第5条の適用範囲内にある」(are administered by Japan and therefore fall within the scope of Article 5 of the U.S.-Japan Treaty of Mutual Cooperation and Security)と述べました。第5条は米国の対日防衛義務を定めており、歴代の米大統領が尖閣に対して安保条約の適用を明言したのは初めてでした。
ただし、日米安保の5条は、アメリカ議会が武力使用を了承すれば武力で守るというものです。従来は、アメリカ議会が了承するかどうかは何ともいえないところがありましたが、マケイン上院議員の尖閣諸島上空の飛行は、その後アメリカ議会でも何ら問題になった様子もないことから、アメリカ議会の意思を表明したものといえます。
米国議会はシリア、ウクライナの轍を踏むことはないという強烈な意思表示であると考えられます。確かに、日本が中国の傘下に入ってしまうようなことがあれば、米国にとっては一つも良いことはありません。日中合同の軍事力や、経済力は米国にとってかなりの脅威になるはです。
そうして、その流れで、先月の「米国上院議員の尖閣上空の飛行」+「マラバール」という状況になったわけです。
以上のように中国の立場にたってみれば、なぜ東シナ海でブログ冒頭の記事のように、挑発を頻発させるようになったのか理解できます。
しかし、日米をこのようにさせたのは、元々中国が南シナ海や、東シナ海で傍若無人な態度を撮り続けたからです。
私自身は、 「世界論壇網」への上陸作戦の写真の掲載も、中国による日米同盟への牽制であり、すぐにも尖閣諸島への上陸奪取ということはないとは思っています。
しかし、このブログにたびたび示しているように、中国は現在権力闘争の真っ最中にあります。その典型的なもののリンクを以下に掲載します。
米国議会では、2014年あたりから、対中国強硬論が日増しに強くなっていました。これについては、このブロクでも取り上げたことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
米国議会で日増しに強くなる対中強硬論―【私の論評】世界は複雑だ!米中一体化、G2など中国の妄想にすぎない!しかし、日本にとってはこの妄想につけこむ絶好のタイミングかもしれない(゚д゚)!
米国国会議事堂 |
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、当時米国では対中関係は以下のように総括されていました。
「中国に対して、米側には伝統的に『敵扱いすれば、本当に敵になってしまう』として踏みとどまる姿勢が強く、中国を『友好国』『戦略的パートナー』『責任ある利害保有者』『拡散防止の協力国』などと扱ってきました。だが、そうして40年も宥和を目指してきたのにもかかわらず、中国はやはり敵になってしまったのです」(元国防総省中国担当、ジョー・ボスコ氏)これは、明らかに外交は全く不得手な及び腰のオバマ大統領に対する批判です。安倍総理は、アメリカ議会などに先駆けて、対中国強硬論を提唱していましたが、これにアメリカも対強硬論を唱えはじめたのです。
そうして、その流れで、先月の「米国上院議員の尖閣上空の飛行」+「マラバール」という状況になったわけです。
以上のように中国の立場にたってみれば、なぜ東シナ海でブログ冒頭の記事のように、挑発を頻発させるようになったのか理解できます。
しかし、日米をこのようにさせたのは、元々中国が南シナ海や、東シナ海で傍若無人な態度を撮り続けたからです。
私自身は、 「世界論壇網」への上陸作戦の写真の掲載も、中国による日米同盟への牽制であり、すぐにも尖閣諸島への上陸奪取ということはないとは思っています。
しかし、このブログにたびたび示しているように、中国は現在権力闘争の真っ最中にあります。その典型的なもののリンクを以下に掲載します。
【石平のChina Watch】習主席、頓挫した「独裁者」への道 衆人環視の中で目撃された異様な光景 ―【私の論評】刎頚の友で、独裁者になりそこねた習!だが、中共の本質は変わらない(゚д゚)!
習近平国家主席を後ろから手をかけて呼び止め、話しかけた王岐山氏 |
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、一時は反腐敗運動で勝利を収めつつあるようにもみえた習近平の権力闘争ですが、そうではなかったことがこの記事をご覧いただければ、おわかりになると思います。
中国が未だ権力闘争のまっただ中ということであれば、中国という国は対外関係も自らの国内事情によって動く国ですから、中国軍による尖閣上陸も十分にありえます。
権力闘争のまっただ中ということは、習近平や半習近平派のいずれもが未だ中国内で十分に統治の正当性を獲得していないということです。
どちらかの派閥が統治の正当性を圧倒的に強めることができれば、権力闘争に勝つことができます。現在の中国では、経済的にも社会的にも統治の正当性を高められるような事案はほとんどありません。
そうすると、当然海外に目をつけることになります。尖閣など非常に良い材料です。尖閣に上陸して、実行支配することができれば、中国国内でも強力なデモンストレーションとなり、統治の正当性を高めることができます。
中国には互いに権力闘争を続けるいくつかの派閥があります。いずれかの派閥が、尖閣上陸実行支配という冒険に出ることは十分に考えられます。派閥配下の人民解放軍や、海上民兵やその他の組織もあります。
それらのうち、いずれかが冒険に出るというシナリオは、十分にあり得ます。
これに対処する方法もこのブログで以前掲載したことがあります。それを以下に再掲します。
これを防ぐための手段は、政府は、政治、外交、軍事を含む総合的で戦略的な対応を早急に取るべきであるとともに、実際に中国軍がどのような行動をとれば、日本が武力を用いて中国軍を排除するに至るかをはっきりさせ、それを中国および世界の各国に向かって予め周知しておき、中国軍がそのような動きを見せれば実行することです。
さらに、これを実行に移すには、ルトワック氏の著書『中国4.0』にある提言が参考になると思います。
どうなるか分からない不安定さを持つ中国に対応するために、無理に大局をみるより現実的な個々の事象に個々の組織が対応するべく準備せよというものです。
日本側が、独自かつ迅速な対応を予め用意しおくように進言しています。しかも、各機関相互間の調整を重視するよりも、各機関が独自のマニュアル通りに自律的に行えるようにしておくべきとしています。
たとえば、海上保安庁は即座に中国側の上陸者を退去させ警戒活動にあたり、外務省は諸外国に働き掛けて、中国の原油タンカーやコンテナ船などの税関手続きを遅らせるという具合です。とにかく、「対応の迅速さを優先させる」ことを強調しています。
各機関が、このようなマニュアルを用意しておき、即座に動くことが肝要であることをルトワックは主張しているのだと思います。各機関が綿密に共同して行動していては、迅速さに欠けて、あれよあれよという間に、南シナ海で中国が実施したように、いずれ軍事基地化され、既成事実をつくられてしまってからは、これを取り消すことは至難の業になるからでしょう。
陸海自衛隊による島嶼防衛訓練
各機関が独自に動けば、初期の対応はかなり迅速にできるはずです。無論、海上自衛隊も、マニュアルに従い、独自に動き、尖閣有事の際には、別行動をしている海上保安庁の巡視船の行動を見守り、それではとても歯がたたないまでに、事態が悪化した場合、迅速対応するという形になるでしょう。
そうして、中国側は、日本の迅速な対応に拒まれ、結局何もできないうちに、なし崩しになって終わってしまうということになると思います。
こうした、迅速な初期対応が終わった後に、その後の対応に関して、各機関が綿密に共同して行動すれば、良いということです。とにかく迅速さが一番ということだと思います。多少拙速であったにしても、中国側に既成事実を作られるよりは、遥かに良いということです。現在の中国は、激烈な権力闘争の最中にありながら、対外的にも南シナ海、東シナ海に手を出しているという、特異な状況にあります。国内で権力闘争を継続しながら、日米印、ASEAN諸国などと対峙し続けるという状況にあります。そうした中での「マラバール」+「米上院議員尖閣上空飛行」は、私達などが想定する以上に中国にとってかなりの脅威です。
権力闘争がなく、習近平なり他の誰であろうが、為政者が権力を完全に手中に収め、中国を完璧に統治していれば、中国は尖閣上陸奪取をすぐに実行するなどというような冒険はできなかったかもしれませんが、今はそのような状況ではなく、いつ上陸してもおかしくはないです。誰が、自分の属する派閥の統治の正当性を高めるため、尖閣上陸を企てるかわかったものではありません。
政府は、このようなことを予め想定して、それに対する備えを十分に備えていただきたいものです。私達国民としては、中国の尖閣奪取などのことは十分起こりえることであると、覚悟を決めておく必要があります。そうなってから考えるのではなく、今そこにある危機として、日本はどうするべきなのか、予め冷静に判断しておくべきです。
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