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2019年1月18日金曜日

習近平が大々的に発表した「包括的な台湾政策」―【私の論評】今年は日米が韓国から台湾に大きく軸足を移す年になる(゚д゚)!

習近平が大々的に発表した「包括的な台湾政策」

岡崎研究所 

 中国の習近平国家主席は1月2日、台湾政策に関する包括的な政策演説を行ない、台湾への「一国二制度」導入を含む5項目の方針を示した。演説の主要点は以下の通り。


 中国は統一されなければならないし、されることになるだろう。中国の統一は、70年の両岸関係の歴史の帰結であり、中華民族の偉大な復興にとり不可欠である。

 平和的な国家統一に向けた両岸の共同的な取り組みを求める。長年の懸案を世代から世代へと先送りにするわけにはいかない。

 「平和的統一」と「一国二制度」の原則は、再統一を実現するための最善のアプローチである。再統一が実現された後、中国の国家主権が確保されることを前提に、台湾の安全、発展、社会制度、生活様式は十分に尊重され、台湾同胞の私有財産、信仰、正当な権利、利益は十分に保護される。

 我々は同じ家族である。中国人は中国人と戦わない。しかし、軍事力の行使を放棄することは約束しない。必要なあらゆる選択肢を留保する。こうした措置の対象となるのは、外部勢力による干渉、ごく少数の台湾独立を掲げる分離主義者とその行動だけである。

 我々は、中台の経済協力を進める。社会的インフラを連結し、エネルギーの共同利用を行う。

 台湾の独立は歴史の趨勢に反しており行き詰まることになろう。両岸の平和的で安定的な発展、両岸関係の進展は時流に沿っており、誰にも、いかなる勢力にも止められない。

 台湾問題は中国の内政問題であり、いかなる外部の干渉も許さない。中国人の問題は中国人によって解決されるべきである。台湾問題は中国の核心的利益と中国人の国家的紐帯に関することである。

 中国の再統一はいかなる国の正当な利益をも害せず、他国にさらなる発展の機会を与えるものである。

 今回の演説は、1979年1月1日に全人代常任委員会が「台湾同胞に告げる書」を発表して40周年という節目の記念式典に行われたものである。「台湾同胞に告げる書」、1995年の江沢民による台湾政策演説、2008年の胡錦涛による台湾政策演説、に続く包括的演説である。習近平が提示した5つの原則は、(1)平和的統一、(2)一国二制度の導入、(3)一つの中国、(4)中台経済の融合、(5)同胞意識の促進、である。これら一つ一つは目新しいものではないが、包括的な台湾政策として大々的に発表したことに意味がある。各項目を細かく見ていくと、平和的統一と言っても、武力行使を辞さないと明言したり、一国二制度についても、統一後も台湾人の権利を十分に尊重するとしつつ、中国の国家主権が確保されることを前提条件とするなどしている。

 5つの原則のうち「一国二制度」は、香港での形骸化に鑑み、台湾人を警戒させる可能性はあるかもしれない。「中台経済の融合」、「統一意識の促進」は、経済的取り込み、人的交流、蔡英文政権の頭越しに行われる台湾の地方政府への接触などにより、ますます強化されることになろう。習近平の演説は、蔡英文政権を相手にしない姿勢を明確にし、同政権への圧力強化、国民党への後押しを狙っていると思われる。

 習近平演説は、台湾側、特に蔡英文政権としては、当然、強く反発するような内容である。蔡英文総統は、1月2日には、「我々は『1992コンセンサス』(注:中国側は「一つの中国」「一国二制度」と解釈)を決して認めない。台湾人の大多数は一国二制度に反対している」、「我々は両岸問題につき交渉する用意はあるが、台湾は民主主義であるから、台湾人の授権と監視を受けたものでなければならず、両岸の政府同士の交渉でなければならない」、「中国は台湾が人口2300万の民主国家であるという現実を直視し、台湾の自由と民主主義を否定すべきでない、両岸の相違を台湾人を服従させようというのではなく平等に扱い平和的に対処すべきである」などとする談話を発表している。

「一国二制度」は受け入れら内と表明する蔡英文総統

 蔡英文総統は、さらに1月5日に外国の記者とのレセプションで、台湾は民主主義を実施し国際的価値を共有してきたとして、台湾が中国の圧力に直面している状況に対して国際社会が何も言わず支援しなければ、「次はどの国が同じような目に遭うだろうか」と、台湾への支援を要請した。この呼びかけは、蔡英文の最近の決まり文句であるが、真理をついている。

 習近平が今回のような包括的演説をした以上、中国の台湾政策は圧力を一層増すことになろう。台湾人、そして国際社会の対応が試されている。米国の台湾支持の姿勢が続くか、さらには強化されるか、注目される。

【私の論評】今年は日米が韓国から台湾に大きく軸足を移す年になる(゚д゚)!

日本は安倍総理がリードして、対中国封じ込め政策を実行してきました。一方米国は対中国冷戦Ⅱを挑んでいます。それによって、中国経済がかなり悪影響を受けていることはこのブログにも掲載しました。

米国は昨年3月に台湾を中国の好きにさせない強い意思を示しています。それは、「台湾旅行法」の発効です。これについては、このブログにも掲載しことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【トランプ政権】米で「台湾旅行法」成立、政府高官らの相互訪問に道 中国の反発必至―【私の論評】アジアの脅威は北朝鮮だけではなく台湾を巡る米中の対立もあり(゚д゚)!
トランプ大統領

  米ホワイトハウスによるとトランプ大統領は16日(ブログ管理人注:昨年3月16日)、米国と台湾の閣僚や政府高官の相互訪問の活発化を目的とした超党派の「台湾旅行法案」に署名し、同法は成立した。 
 同法は、閣僚級の安全保障関連の高官や将官、行政機関職員など全ての地位の米政府当局者が台湾に渡航し、台湾側の同等の役職の者と会談することや、台湾高官が米国に入国し、国防総省や国務省を含む当局者と会談することを認めることを定めている。 
 また、台湾の実質的な在米大使館である台北経済文化代表処などの台湾の組織や団体に米国内での経済活動を奨励する条項も盛り込まれている。 
 米国は1979年の米台断交と台湾関係法の成立後、米台高官の相互訪問を自主的に制限してきた。台湾旅行法の成立で、トランプ大統領の訪台や蔡英文総統のワシントン訪問が理屈の上では可能になる。
 法案は1月9日に下院を通過し、2月28日に上院で全会一致で可決された。今月16日がトランプ氏が法案に署名するかどうかを決める期限となっていた。
 米国務省は、台湾旅行法が米台関係の変化を意味するものではないと説明しているが、台湾を不可分の領土とみなす中国が米台の接近に危機感を抱き、「一つの中国」原則に反するとの理由で猛反発してくるのは確実だ。
さて、この記事だけだとあまりピンと来ない方もいらしゃると思いますので、「台湾旅行法」について若干説明を加えます。

米中国交樹立以降も台湾の国防の後ろ盾であり続ける米国ですが、しかしその一方で、台湾を中国領土の一部だとする「一つの中国」原則を掲げる中国への配慮により、米台政府高官の相互訪問を自主規制してきました。

たとえば台湾の総統、副総統、行政院長(首相)、外交部長(外相)、国防部長(国防相)のワシントン訪問を許さず、米国の経済、文化部門以外の高官の台湾訪問も差し控えて来たのですが、トランプ大統領は3月16日、台湾旅行法案に署名し、これまでの台湾泣かせの規制を撤廃したのです。

同法は「あらゆるレベルの米政府当局者が台湾を訪問し、相応の台湾政府当局者と会談すること」や「台湾の高官が米国に入国し、尊重を受けながら国務省や国防総省及びその他の政府当局者と会談すること」を認めるとし、さらには「駐米台北代表処(大使館に相当)などが米国で公式に活動すること」も奨励するとも規定しています。

この法律の施行により、中国との国交樹立以降、自粛されてきた米台高官の相互訪問を解禁し、ドナルド・トランプ大統領の台湾訪問、蔡氏のワシントン訪問も可能にしたとの宣言に等しいです。

この法律の成立について台湾紙自由時報は当時、「中国の台湾への脅威が日増しに拡大するのに伴い、台米関係も深まり行く趨勢だ。トランプ大統領の署名は台米関係正常化への重要な一歩である」「台湾海峡両岸の軍事バランスは崩れつつある。台湾が第一列島線のアキレス腱なれば、周辺情勢も不穏になる。台米の協力関係の強化は待ったなしだ」」と論評していました。

実は2000年にも下院は、台湾安全強化法案なるものを可決したことがありました。1995年、1996年の台湾海峡におけるミサイル演習で、中国が従来になく台湾侵略の野心を剥き出しにしたのを受けてのものでしたが、しかし当時のクリントン政権は中国の反撥と更なる緊張の高まりを恐れ、上院に圧力を掛けて法案を審議保留へと追いやりました。ところが今回の法案は、下院では圧倒的多数(発声投票)で、上院では全会一致で可決され、大統領の署名も得られたのです。

もちろんこれを受け中国は、一中原則違反だなどと大騒ぎしました。同法案がまず下院で可決された翌1月十日、人民日報系の環球時報は「台湾旅行法は台湾破壊法だ」と題する社説を掲げ、次のような恫喝宣伝を行いました。
「中国はすでに強大なパワーとなっており、台湾海峡での対峙では、さまざまな手段と優勢を擁している。もし米国がホワイトハウスで台湾総統のためにレッドカーペットを敷くというなら、それはストレートに台湾を害するだけである。中国は必ず公館相互訪問を行う台米に代価を支払わせることとなろう」
「台湾旅行法の規定が台湾に適用されれば、必ず大陸は台湾問題解決のための決断を下すことになり、台湾海峡情勢は新たな段階に入ることになろう」
そして同法成立の翌3月17日には、外交部報道官が次のようなコメントを発し、米国に警告を発しました。
「一中原則と中米間の三つのコミュニケに違反し、台湾独立勢力に早まったシグナルを送るものだ。我々はこれに断固反対する。米国に対しては、米台当局間の交流と実質的関係のレベルアップを停止し、慎重、妥当に台湾関連の問題を処理し、中米関係と台湾海峡の平和と安定に厳重な損害を与えないよう求める」
同日、国防部報道官も「台湾は中国の一部で台湾問題は中国の内政に属する」として米側の「一中原則」違反だと批判。「米台当局間の交流停止や米台軍事連絡の停止、台湾への武器売却の停止を行い、中米両国両軍の関係発展の雰囲気に重大な損害を与えないよう求める」とコメントしました。

当初、中国の猛反発がありますが、それも「貿易戦争」でのトランプ氏の攻勢により押さえ込まれた格好です。
中国は「一中原則違反」だと中国は噛み付ついていますが、そもそもこれは事実捏造の印象操作です。

そもそも米国はこれまで一中原則への配慮は見せても、それを承認(台湾を中国の一部と承認)したことは一度もありません。「三つのコミュニケ(「上海コミュニケ (ニクソン米大統領の訪中に関する米中共同声明)」でも、そのような表明はありません。

米国はいよいよ、中国がアジア太平洋地域に及ぼす脅威の増大を前に、いつまでも一中なるフィクションに附き合いながら、台湾との関係強化を遠慮し続けることができなくなってきたのです。つまり、中国の軍事大国化は、もはや放置できないレベルにまで達してしまっているというわけです。

日本もまた一中原則を受け入れたことはないですが、それでも中国との国交樹立後は、あの国への配慮で台湾の総統、副総統、行政院長、外交部長、国防部長の訪日は遠慮してもらっているし、政府高官の公務での台湾訪問も自粛し続けています(一昨年副大臣が初めて訪台しましたが)。

一中原則に反対する台湾の人々

台湾と共に第一列島線上の国である日本のこうした弱腰姿勢もまた、今後は列島線のアキレス腱となりかねないです。

ここは勇気を出して米国に倣い、無用かつ不条理な自主規制は撤廃するなどで、台湾との関係強化を図るべきです。

日本も、米国と同じような「台湾旅行法」などを制定して、 台湾との交流を深め、いずれ日米英仏などの艦艇が頻繁に台湾の港に寄港する、航空機が台湾の空港に寄港するなどのことをすべきです。

また、日米ともに、韓国に対する支援などはそこそこにして、台湾に対する支援を強化すべきです。

台湾をいずれ、強力なシーパワー国に成長させるべきです。トランプ大統領は韓国にはほとんど興味がないようですし、日本としてはもう昨年で韓国を相手にしても時間と労力の無駄であることがはっきりました。日本としては、韓国の異常ぶりを国際社会に晒し続けるにしても、もう韓国には一切深入りすべきではありません。今年は、日米両国とも韓国から台湾に軸足を移す年になるでしょう。そのほうが日米としては、対中封じ込めに余程効果を期待できます。

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