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2018年9月5日水曜日

統一選前に台湾で政治不信増大 中国共産党もアプローチに困惑―【私の論評】台湾に限らず、日本も含めてアジアの政治家はマクロ経済政策を疎かにすべきではない(゚д゚)!

統一選前に台湾で政治不信増大 中国共産党もアプローチに困惑

民進党党首蔡英文氏 写真はブログ管理人挿入 以下同じ

 台湾の政治が迷走している。

 今年11月24日、台湾では統一地方選挙(「九合一」)が行われる。投票まで100日を切ったとあって、メディアの報道も熱を帯びているので、ここで一度触れておこうと思う。

 ただ、取り上げようと思う反面、気になるのが、肝心な台湾の有権者の政治への関心が一向に高まっていないことだ。

 その理由は、有権者の“政治離れ”に歯止めがかからないからである。

 中国との関係で政策が対立する台湾では、台湾独立の受け皿となる与党・民主進歩党(民進党)と大陸との統一を掲げる国民党という二大政党の対立の構造が定着している。

 互いに象徴するカラーを定め、民進党の緑に対して国民党が青。有権者の選択はずっと、緑か青かという単純なものであった。

民主進歩党(左)のシンボル・カラーは緑、国民党(右)のそれは青

 しかし、ここにきて顕著になりつつあるのが緑にも青にも「ノー」という空気である。いわゆる「無色」勢力の伸長と呼ばれる傾向だ。

 いったいなぜこんなことになったのか。

 日本では、台湾の選挙といえば、緑か青のどちらが勝ったかで、台湾の人々の対中国観をはかろうとするのだが、対外政策が選挙の中心に来るケースは極めて稀で、実際はそうではないことの方が多い。

 では、人々は何を気にしているのかといえば、当然のこと自分たちの生活の改善である。

 その意味で蔡英文総統が誕生した当初には、民進党政権に大きな期待が寄せられた。

 だが、結果的に民進党は人々の期待に応えられなかったといってもよいだろう。

 そのことは各種の世論調査に顕著だが、その一つ、台湾民意基金会の調査結果によれば、7月の政党支持率は、民進党が25・2%、国民党が20・7%だった。

 2016年に行われた同じ調査では、民進党への支持が51・6%であったことを考慮すれば、緑に対する失望の大きさは明らかと言わざるを得ない。

 ちなみに国民党の支持率は18・9%だったので、2ポイント程度伸びた計算になるが、民進党が失った支持を取り込めたとはとても言えないのが現実である。

 緑と青に代わって拡大したのは無党派で、49・6%となった。

 焦った民進党は選挙を前に慌てて基本月給や時給を引き上げる政策を打ち出したが、効果を期待する声は少ない。

 台湾住民の貯蓄率はずっと下降傾向にあるが、昨年は過去5年間で最低になるなど、家計の厳しさを示す数字は枚挙に暇がない。

台湾の個人消費の伸び率


 だが、繰り返しになるが国民党にも決め手がない。かねてから指摘される人材不足と内紛で満身創痍状態だからだ。

 興味深いのはこうした台湾の状況に中国共産党も戸惑っていることだ。

 かつて民進党の支持基盤の南部の農家から果物を“爆買い”して揺さぶりをかけたり、観光客を制限して蔡政権のプレッシャーをかけてきたが、いまは何処に向けて何を発して良いのか分からなくなっているという。

 なんとも皮肉な話だ。

 ■富坂聰(とみさか・さとし) 拓殖大学海外事情研究所教授。1964年生まれ。北京大学中文系に留学したのち、週刊誌記者などを経てジャーナリストとして活動。中国の政・官・財界に豊富な人脈を持つ。『中国人民解放軍の内幕』(文春新書)など著書多数。近著に『中国は腹の底で日本をどう思っているのか』(PHP新書)。

【私の論評】台湾に限らず、日本も含めてアジアの政治家はマクロ経済政策を疎かにすべきではない(゚д゚)!

上の記事を読んでいると、民進党も、国民党も結局のところマクロ経済音痴なのではないかと思います。上の記事を書いている富坂氏もマクロ経済音痴なのではないかと思ってしまいます。

なぜなら、富坂氏も台湾のマクロ経済には全く触れないからです。こういう人は、なぜかアジアに多いです。一国の経済が、マクロ経済政策すなわち、政府の財政政策と中央銀行の金融政策に全く関わりがないなどということはありません。

それどころか、大きく関与しているというか、国の経済対策といえば、財政政策と金融政策であり、それが大部分を占め、ミクロ政策などは国にとってはあまり関係のないことです。

この基本中の基本を、民進党党首蔡英文も国民党党首呉敦義氏も、理解していないのではないかと思われます。さらには、民進党や国民党の議員のもこれを理解していないのではないかと思われます。

なぜそのようなことを言うかといえば、台湾の経済対策などみていると、どうもマクロ的な政策はみあたらず、ミクロ的なものばかりが散見されるからです。

2016年に馬英九総統に代わり、蔡英文氏が台湾総統として就任しました。

蔡政権の経済政策として特徴的なのは、「新南向政策」です。これは、蔡総統就任後の2016年に打ち立てられた政策で、経済発展が著しいASEAN10ヵ国、南アジア6ヵ国、オーストラリアとニュージーランド、計18ヵ国との関係を強化し、台湾の経済発展を目指すといった政策です。この政策では、下記4つの軸を主軸として、経済成長を目指すとしています。

(1)経済貿易協力
(2)人材交流
(3)資源の共有
(4)地域の連携


経済貿易協力では、ターゲット国のインフラ建設協力や、スマート医療、IoTシステムの輸出、さらにはEコマースでの台湾製品の発信、教育やヘルスケア分野での輸出の推進を目指しています。

人材交流では、専門性の高い人材を育成・交流を図るとしています。具体的には、台湾の大学の海外分校の設立、台湾専門のクラスの設立をすることで、台湾の専門家の育成の強化を目指します。また、交流促進の為にビザ申請等の手続きを簡素化する計画があります。

台湾で働いている外国人専門家や技術者には、評価制度を設け、一定の基準を満たした場合にビザの延長許可措置が可能になる施策も盛り込まれています。

資源の共有では、文化や観光、医療等のターゲット国の生活の質向上を目指すとしています。

文化面では、メディアやゲームを利用した台湾のブランディングの向上、観光分野では、ターゲット国からの旅行者へのビザ規制緩和、医療分野では、医薬品の認証、新薬、医療機器の開発の協力を目指しています。

最後に地域の連携では、ASEANやインドとの経済連携協定締結を積極的に図るとしています。これにより、台湾からのターゲット国への投資を期待しています。また、南アジアへの進出も第三国との連携で目指すとしています。

結局、貿易を伸ばして経済成長しようということであり、国の経済の基本である、財政政策や金融政策について具体的には何の方針もありません。

金融緩和というと、蔡英文氏は貿易に何の関係もないと思っているのでしょうか、仮にいずれかの国への貿易を増やそうとして、いくら人材育成や資源の共有、地域の連携などミクロ的な努力を重ねたとしても、台湾の中央銀行が金融引締めばかりしていて、貿易相手国が徹底的に金融緩和をしていたとしたらどうなるでしょうか。

結局台湾元高になってしまい、いくら努力をしたとしても貿易では不利になってしまいます。しかし、だからといって、今度は台湾中央銀行が金融緩和に走ったとして、際限なく金融緩和を続けたとすれば、今度は台湾国内が過度のインフレになってしまいます。

そんなことにならないように、様々な方法を駆使して、金融緩和で貿易では不利にならないように、国内では、インフレが過渡に進行しないようにしなければなりません。

この仕事を行うのは、無論台湾中央銀行ですが、それにしても方針・目標は台湾政府が定めなければならないです。

また、いくら貿易に力をいれるからといって、国内をおろそかにするわけにはいきません。国内では、まともな財政政策を実施して、経済成長を実現する必要があります。

財政政策の目玉としては、2017年に台湾政府が定めた「前瞻(せん)基礎建設計画」では、次世代インフラの建設を行うことで、投資の強化を目指しています。具体的には、

(1)風力発電や太陽光発電等のグリーンエネルギー
(2)ネットやITインフラ
(3)治水、水供給等の環境インフラ
(4)高速鉄道や台湾鉄道の高度化、都市MRT等の鉄道インフラ
(5)駐車問題の改善、道路の改善等の都市・農村インフラ


を挙げています。その中でも特に金額的に大きいのは、鉄道インフラの整備となっており、訪台した観光客や現地の住民の生活の高めることを優先としていることが考えられます。

台湾の経済対策なるものは、貿易振興のための投資計画がほとんどのようです。これによって、確かに経済が良くなることは良くなりますが、あまりに投資にばかり頼ると、クラウディング・アウトに見舞われることもあります。

クラウディング・アウトとは、行政府が資金需要をまかなうために大量の国債を発行すると、それによって市中の金利が上昇するため、民間の資金需要が抑制されることをいいます。

公共投資と、同じ財政政策でも減税や、給付金などは大規模に行ってもクラウディング・アウトがおこることはありません。

減税、給付金といっても、盲滅法に行うのではなく、その時々で最も効果の上がりそうなものを選択して行う必要があります。これを行うのが、日本でいうところの財務省ですが、それにしても目標は政府が定めなければなりません。

さらに、財政政策、金融政策など、いずれの手法をとっても、効果が出てくるまでにラグがあり、このラグも考慮しながら、財政政策と金融政策をうまく組み合わせていく必要があります。

それに、金融政策は雇用政策でもあります。インフレ率を数%あげると、日本や米国では、それだけで他に何もせずとも、一夜にして数百万の雇用が生まれます。台湾では、人口のなどの規模が違うので、ここまではとはいわずとも、雇用が大量に生まれることには変わりないです。

などと、いろいろと述べましたが、台湾経済そのものは、さほど悪くはないものの、かなり良いとか、かなり伸びているともいえるような状況ではありません。それについては、みずほ銀行の資料にうまくまとめられているので、そちらをご覧になってください。以下にリンクを掲載します。
台湾経済の現状と展望2018年6月
 ただし、台湾の経済政策は上記にあげたように、貿易によって成長しようとしているようです。しかし、その前にマクロ経済政策によって内需拡大をすべきです。マクロ政策によって前途有望であると思われるような、政策を打ち出していないので、上滑り観はまぬがれず、台湾の国民は納得していないのでしょう。それは、国民党も同じことなので、国民の政治離れが進んでいるのでしょう。

それにしても、米国の経済対策など、政府は必ず財政政策や金融政策などをあげるのが常識ですが、日本をはじめとして、アジアの国々ではそうではありません。無論米国の場合は、世界経済に影響を与えるほど、米国の国内事情は重要です。だからかこそ、米国内のマクロ経済に関しては政府も公表する姿勢を貫いているのでしょう。

しかし、米国とアジアでは経済対策が異なるなどということはありません。アジアの国々も、本来政府の経済対策といえば、まずはマクロ経済政策というのが正しいありかたのはずです。

日本も、金融政策、財政政策などを政府の方針としてあげたのは、安倍政権による3本の矢においてが初めてではなかったかと思います。

お隣の韓国では、朴槿恵政権はまともなマクロ経済政策を実行せず、文在寅大統領にかわってからは、金融緩和はせずに、最低賃金をあげるという政策を実施し、これは見事に失敗して雇用が激減しています。そうして、これは金融緩和等のマクロ政策には全く関係なく、とにかく再分配を重視すべきと主張する立憲民主党の枝野氏が主張する経済政策と同じものです。

文在寅韓国大統領

このようなアジアの国々実体をみると、やはりアジアの諸国にはそのような共通点があると思ってしまいます。

ただし、中国だけは例外かもしれません。中国の場合、とにかく経済が悪くなれば、積極財政で巨額の投資をする、それでも足りなければ、金融緩和策として巨額の元を刷り増すという具合で、景気が加熱すると逆に、緊縮財政と金融引締めに転じるという具合に、単純にマクロ経済政策を実行しています。

ただし、中国の体制はそもそも、民主化、政治と経済、法治国家化がなされておらず、様々な矛盾が蓄積しているのも事実です。そのため、結局自ら他国に対して貿易戦争を仕掛けたにも等しいことをしてしまい、最近では米国から本格的に貿易戦争を挑まれるという手痛いしっぺ返しを食らっています。

日本も、ふりかえってみれば、総裁選に出る石破氏も、経済対策に関してはマクロ経済対策はあげていません。希望の党の小池氏もマクロ経済対策はあげていませんでした。

日本では、多くの政治家には、マクロ経済政策などはないものと同じようです。自民党の政治家の多くも、経済対策というと公共工事のことと思っているようです。

このようなマクロ経済政策を無視するような台湾を含めたアジアの政治は、結局うまくいかないのは確かです。

日本でも、マクロ経済的にみれば悪手中の悪手がある10%増税を来年10月からそのまま実施してしまえば、経済が停滞するのは必定です。

もし、そうなれば、台湾のような政治不信に日本も見舞われることでしょう。さらに、まかり間違って、日銀が金融引締めにでも転ずることでもあれば、韓国のように若者雇用が最悪となることでしょう。

安倍総裁の3選は間違いないようですが、予定通りに10%増税を実行してしまえば、次の任期のときに、自民党内で本格的な安倍おろしがはじまるかもしれません。ただし、安倍さんに変わって誰かが総理大臣になったとしても、まともなマクロ経済対策を実行しなければ、短命政権に終わることでしょう。

その後どの党の誰が、総理大臣になったとしても、経済政策を根本的にあらためなければ、どの政権も短命で終わることになるでしょう。

それだけ、マクロ経済政策は重大事なのです。アジアの政治家はこれをおろそかにすべきではありません。

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