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2020年5月18日月曜日

WHOが台湾をどこまでも排除し続ける根本理由 ―【私の論評】結果として、台湾に塩を贈り続ける中国(゚д゚)!

WHOが台湾をどこまでも排除し続ける根本理由
「コロナ対策の優等生」参加を阻む中台関係

劉 彦甫 : 東洋経済 記者 

台湾の蔡英文総統(左)とWHOのテドロス・アダノム事務局長

 「武漢肺炎」――。台湾では新型コロナウイルスをこう呼び続けている。

 世界保健機関(WHO)は差別につながる恐れから、地名や国名を病名に付けることを避けるよう指針を出している。世界各国の報道機関はWHOが定めた正式名称の「COVID-19」や「コロナウイルス」を呼称として用い、差別的言動を助長しないように配慮する方針も示している。

 ただ、台湾がWHOの方針に従っていないことを責められない面もある。台湾はWHOに加盟していない。WHO自身が台湾を排除しているからだ。

WHO総会に参加できない台湾

 5月18日からWHO年次総会の開催が予定されている。新型コロナウイルスが流行している影響で今年の総会はテレビ電話形式で開かれる。新型コロナ対策も重要な議題にのぼるが、開催が迫る5月16日現在でも台湾が総会へオブザーバー参加できる見通しは立っていない。

 台湾は早期に新型コロナウイルスの感染を封じ込めたことで知られる。5月16日時点で累計感染者数は440人、死者数も7人にとどまる。帰国者などを除く国内の感染例は1カ月以上確認されておらず、世界各国から注目が集まる。防疫において国際的な協力が必要とされるなか、台湾を排除することで「地理的な空白が生まれるのはいいことではない」と日本の茂木敏充外相は指摘したうえで、「国際社会やWHOが学ぶべきことは非常に大きい」と訴える。

 アメリカのポンペオ国務長官やニュージーランドの複数の閣僚も台湾の総会への参加を支持。15日にはドイツ外務省が「(総会)参加に国としての地位は必要ない」として、WHOに台湾を招待するよう求める書簡を他の賛同国と送ったと明らかにした。

 しかし、WHOは台湾の参加問題に消極的だ。5月11日の記者会見でWHOのテドロス・アダノム事務局長は台湾の総会参加について「判断する権限はない」と回答を避け、法務責任者のスティーブン・ソロモン氏が「総会に参加する国は参加国のみが決定できる」と述べた。

 台湾は対中関係が良好だった2009~16年にWHOの総会にオブザーバーとして参加していたが、中国が台湾独立派とみなす蔡英文(ツァイ・インウェン)総統が就任してからは参加が認められていない。WHOは新型コロナ発生後も今年1月に行われた緊急委員会に台湾を招待しなかったほか、4月にはテドロス氏が人種差別的な攻撃を台湾から受けていると名指しで批判するなどぎくしゃくした関係が続く。

台湾の参加を阻む最大の障壁は中国

 台湾の総会参加を阻んでいるのが、中国との関係だ。台湾の大手紙「自由時報」によれば台湾の呉釗燮外交部長(外相)は、5月11日に立法院(国会相当)で中国政府とWHO事務局との間に「秘密のメモ」が存在しており、それが台湾の参加可否に影響していると言及した。

 台湾外交部によれば備忘録には台湾がWHOの活動に参加する場合は5週間前に申請する必要があり、中国の同意も必要と定められているという。中国外務省はメモの存在自体は認めているが、その内容については説明していない。アメリカが「WHOは中国寄りだ」として、資金拠出を停止する意向を示したのに対し、中国が追加で資金拠出をするなどWHOへの中国の影響力は高まっているとみられる。

 5月15日には中国外務省が、「規則の中に主権国家の1地区(台湾のこと)がオブザーバーとして参加する根拠はない」として、台湾の総会への参加に反対すると改めて強調した。

 中国政府が台湾のWHO参加を認めないのは台湾が自国の一部とする「一つの中国」原則を堅持しており、台湾については中国が代表して責任を持つとの立場にあるからだ。だが、直近は新型コロナ対策で脚光を浴び、国際的な存在感を高める台湾との確執が深まってきている。

 台湾は新型コロナウイルス発生直後から検疫体制の強化や感染症対策の緊急指令センターを設置して対策をとったほか、マスクの生産増強や流通管理も徹底した。先手の対応で蔡英文政権は高い評価を獲得し、2年前には2割台に落ち込んでいだ政権支持率が6割以上に回復。対外的にも各国の保健当局に助言しているほか、日米欧にマスクの寄付や輸出を行っており、日本を含む台湾と外交関係がない国から感謝の意が表明された。

 中国は蔡英文政権の一連の動きを「以疫謀独」(防疫対策を利用して、独立を謀っている)と批判する。また民主社会の台湾が積極的な情報公開を行って感染症対策に成功していることも、ロックダウンなどで感染封じ込めを行った中国とは対照的だ。対外的に自国の制度の優越性をアピールするうえで、中国にとって台湾の存在が矛盾を抱える。
波乱含みの中台関係

 5月20日には1月に行われた総統選で再選した蔡英文総統が2期目の任期をスタートさせる。中国はWHOからの台湾排除だけでなく、4月以降は台湾周辺で海上軍事演習や偵察機を台湾の防空識別圏内に侵入させるなど威嚇を続ける。5月14日にはアメリカ太平洋艦隊のミサイル駆逐艦が台湾海峡を通過。米中台の緊張が高まるなか、蔡政権の2期目は中台関係が改善する見込みが少ない状態で始まることになる。
中国軍が東沙諸島の奪取演習計画 南シナ海で、台湾実効支配の要衝

 そもそも蔡英文総統再選の背景にも中台関係がある。2019年初に中国の習近平国家主席が台湾について一国二制度による統一を強調する演説を行ったほか、一国二制度のもとにある香港で2019年半ばから顕著になった抗議デモに対して、香港や中国当局が弾圧を加えた。中国による高圧的な態度は台湾社会での対中警戒心を高めた。

 新型コロナウイルスへの対策に台湾がいち早く動けた背景には高まっていた対中警戒感や情報を隠匿する中国への不信もあった。新型コロナウイルスを「武漢肺炎」と呼び続けているように、圧力を強める中国に対して台湾の対中観はますます悪化するとみられる。逆に中国も台湾に対して強硬的な態度を続けるだろう。台湾をめぐる国際的な緊張が高まり続けるのか、WHO総会後も見通しは明るくない。

【私の論評】結果として、台湾に塩を贈り続ける中国(゚д゚)!

中国は、台湾を叩きつつ逆に結果として敵に塩を送るようなことを繰り返してきました。その最たるものは、中国から台湾への個人旅行を禁止したことでした。それについては、このブログにも掲載したことがあります。その記事の、リンクを以下に掲載します。
大陸客の個人旅行禁止から2週間強、それでもあわてぬ台湾―【私の論評】反日の韓国より、台湾に行く日本人が増えている(゚д゚)!
台湾の有名ビーチ「墾丁・白沙灣 (White Sand Bay)」
 
この記事は、2019年8月25日のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものといて、以下に一部を引用します。
中国政府が8月1日に中国大陸から台湾への個人旅行を停止してから半月あまりが経過した。台湾メディアによれば、足元では、中国個人客が1日単位で貸し切ることの多い観光タクシーの利用に落ち込みが目立っているとのことだが、ホテルや飲食店などへの影響はなお未知数のようだ。 
今回の中国政府の動きには2020年1月に実施予定の台湾総統選が背景にあると考えられている。「一つの中国」原則を認めない蔡英文政権に圧力をかけることで、彼女の再選を阻止しようとする狙いがあると言われている。また7月に蔡総統がカリブ海諸国への外遊の途中、米ニューヨークに長期滞在したり、米国から武器を購入したりと、米トランプ政権と親密な関係をアピールする動きも、中国の強硬姿勢につながった。 
加えて、多くの台湾メディアが、香港の民主派市民のデモとの関係を報じている。中国大陸から台湾に渡航すると、本土では流れていない香港デモの情報に接する機会が多くなる。情報統制の観点から自由な渡航を制限しようとする意図があるとの見方だ。
昨年の8月時点で、中国は中国人の台湾への個人渡航を禁止していたわけですが、今年の1月24からの春節の時期にも、中国人は台湾を訪れていないでしょう。

もし、中国が中国人の台湾訪問を禁じていなかったとすれば、武漢などからも大勢が台湾を訪ね、台湾でも中国ウイルス禍はもつと深刻になっていた可能性があります。

台湾で中国ウイルスによる被害が少なかったのは、中国からの個人旅行客がいなかったことも大きく寄与していると思います。無論、これに加えて、台湾政府の中国ウイルス対策が優れていたからこそ、5月16日時点で累計感染者数は440人、死者数も7人にとどまっているものと考えられます。

これは、中国側からいえば、台湾に対して塩を送ったような結果になってしまいました。なぜかといえば、今回の中国ウイルス禍で、台湾がウイルスの封じ込めに成功したことは、台湾国内のみではなく、世界に対して大きな貢献になったからです。

もし、台湾が封じ込めに失敗し、中国に助けられるような事態になっていれば、そうして日本も大失敗していれば、何しろ、現状では米国が深刻な感染に悩まされている状況ですから、中国はアジアで大攻勢にでて、中国ウイルス後の新たな世界秩序は大きく中国側に有利なものに傾く可能性がありました。

中国としては、台湾が中国ウイルス封じ込めに失敗していれば、中国がイタリアなどのEU諸国に対して実施している、マスクや医療機器の提供や、医療チームの派遣などで微笑外交を台湾に対しても実行したことでしょう。

これにより、中国は今年1月の台湾総統選での蔡英文氏の再選により、失った台湾での失地回復を行うことができたかもしれません。

そうして、中国ウイルスが終息した後には、甚大な被害を受けた台湾に対して、莫大な経済的援助をすることになったと思います。

そうなると、台湾独立派が台頭した台湾を馬英九政権時代のように、親中派を増やすことができたかもしれません。

考えてみると、中国は昨年11月には、香港区議会議員選挙で親中派が敗北しています。今年1月には、台湾選挙で蔡英文総統が再選されています。いわば連敗続きでした。

中国ウイルスに関しては、韓国は当初は対策に失敗しましたが、最近では収束に向かっています。日本も、感染者が増えつつはありますが、それでも死者は相対的に少なく、米国、EU諸国に比較すれば、中国ウイルス封じ込めには成功しています。

香港の対応も素早いものでこれも封じ込めに成功しています。中国国内で武漢における感染発生がまだ隠され、警鐘を鳴らした医者が警察に処分されていた1月1日前後、一国二制度のおかげで報道の自由がある香港メディアは問題を大きく報道し、市民に注意を呼び掛けました。

もし、台湾、韓国、香港そうして日本が、中国ウイルス封じ込めに失敗していたとしたら、中国は東アジアでマスク外交や、その後の経済支援などで、東アジアで経済的にも軍事的にも、大攻勢に出て、中国ウイルス後のアジアの中国にとって都合の良い新たな秩序を打ち立てることができたかもしれません。

これは、完璧に頓挫しました。今後、上の記事にもあるように、圧力を強める中国に対して台湾の対中観はますます悪化するとみられます。逆に中国も台湾に対して強硬的な態度を続けるでしょう。

しかし、中国の台湾政策は、また今回の中国ウイルスのように、結果として台湾に塩を送ることになるかもしれません。


台湾をWHOに参加させないということで、逆に日米英印欧豪と台湾の絆は深まることになるでしょう。それでもさらに中国がゴリ押しを続けると、日米英欧印豪、台湾等を中心とした国々は、WHOに変わる新たな組織をつくることになるかもしれません。そのような動きはすでにあります。

WHOと中国の結びつきが強い現状では、多くの国が、再度中国ウイルス惨禍に見舞われる可能性は否定できません。そのため、新WHOは実際にあり得るシナリオだと思います。

中国が台湾に対して武力で圧力をかけ続ければ、日米英印欧豪などの国々は、台湾海峡等の台湾の周辺に艦艇を派遣することになるかもしれません。そうなると、中国はうかつに台湾に手をだすことはできなくなります。

このように、中国の台湾政策は結果として、台湾に塩を贈り続けることになるかもしれません。

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