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2019年9月11日水曜日

進行する中国の南シナ海での「嫌がらせ戦術」―【私の論評】米国の戦略に組み込まれるだけではなく、日本も独自の戦略を持て(゚д゚)!


岡崎研究所

 中国は、南シナ海で領有権を争っている国々の石油・ガス探査への嫌がらせを強めている。5月以降、中国の海警局の艦船が、ベトナム、マレーシアのEEZ内での掘削活動に威圧的な妨害を加えている。さらに、7月以降、中国の海洋調査船がベトナムのEEZ内で調査を続けている。調査船は、海警の艦船、準軍事組織「人民武装海上民兵」が乗り組む漁船に護衛されているという。ベトナム側は沿岸警備艇を派遣し、衝突のリスクが高まっている。



 この問題について米国は、8月22日に国務省が、8月26日には国防総省が強い懸念を表明する声明を相次いで発表している。このうち、国防総省の緊急声明の要旨は次の通り。

 国防総省は、中国によるインド太平洋におけるルールに基づく国際社会を破壊する努力が続いていることを強く懸念している。最近、中国はベトナムの石油・ガス探査活動への威圧的干渉を再開した。これは、シャングリラ会議での魏鳳和・中国国防部長の「平和的な発展の道を堅持する」との発言と全く矛盾する。中国の行動は、『受け入れられている国際的ルールと規範に沿ってすべての国が大小を問わず主権を保障され、威圧されず経済的成長を追求し得るとする自由で開かれたインド太平洋地域』という米国のビジョンとは対照的である。

 中国が「嫌がらせ戦術」を続けることで、近隣諸国の信頼も国際社会の尊敬も勝ち得ることはないだろう。ASEANの領有権主張国を威圧する行動、攻撃的武器の配備、海洋についての違法な主張の執行は、中国の信頼性への深刻な疑いを提起している。米国は、同盟国、パートナー国による、インド太平洋全体における航行の自由と経済的機会を確かなものとする努力を支援し続ける。

出典:‘China Escalates Coercion Against Vietnam’s Longstanding Oil and Gas Activity in the South China Sea’(U.S. Department of Defense, August 26, 2019)

 中国の「嫌がらせ戦術」に対して、関係諸国は連携を密にしようとしている。例えば、8月23日にはベトナムのハノイで豪越首脳会談が行われたが、その際の共同声明で、南シナ海の資源に関する「妨害的活動」に懸念が示された。豪州とベトナムは、5月にベトナムのカムラン湾に豪海軍の艦船2隻が寄港するなど、関係を緊密化させている。また、8月27日のベトナム・マレーシア首脳会談でも、中国の調査船による活動について話し合われたと見られる。

 ただ、関係諸国、ひいては国際社会の連携のカギとなるのは、やはり何と言っても米国の動向である。この点、米国が上述の通り相次いで2つの声明を発表したことは、南シナ海における中国の傍若無人な振る舞いを米国が深刻に受け止めているというメッセージを強く発するものであり、歓迎される。上記の国防総省の声明の内容は、米国の立場、国際秩序の原則を明確に示している。定期的に繰り返されている米国主導の「航行の自由作戦」(8月末にも実施)も、本件への直接の対応ではないとしても、米国の南シナ海におけるプレゼンス維持が本気であることを示すものである。

 今後の注目点は、まず第一には、国際社会の連携をどれだけ拡大できるかである。それには、中国に対し、ルールに基づいた国際秩序の原則を繰り返し言っていくということであろう。その次に、さらに実効的な措置が模索される必要があると思われる。しかし、準軍事組織を用いた中国の「嫌がらせ戦術」に対抗するのは、言うは易く行うは難し、である。潜在的には、米議会に提出されている「南シナ海・東シナ海制裁法案」などが対抗手段となり得るかもしれない。同法は、ASEAN加盟国が領有権を主張する海域において、平和、安全保障、安定を脅かす行為をした個人に対して制裁を科すとしている。実現性は全く不透明ではあるが、興味深い試みであると言えよう。

【私の論評】米国の戦略に組み込まれるだけではなく、日本も独自の戦略を持て(゚д゚)!

尖閣に迫りくる危機

冒頭の記事にあるように、南シナ海で領有権を争っている国々の石油・ガス探査への嫌がらせを強めています。

その一方で、中国の武装艦艇による尖閣諸島周辺の日本の領海や接続水域への侵入が一段と頻繁になってきています。

この状況に対して、米国の首都ワシントンの大手研究機関からこのままだと日本は尖閣諸島の施政権を失うことになる、という警告が発せられました。米国側では、中国が尖閣奪取を計画し、さらに東シナ海全体の覇権を制しようとするとみて、警戒を強めているといいます。

中国艦艇による尖閣諸島の日本領海への侵入はあまりに頻繁すぎるためか、日本側の警戒が減ってきました。主要新聞の報道も、外国の武装艦艇による重大な領海侵犯なのに雑報扱いとなっている状況です。

多くの国民も、あまりに頻繁なので、ニュースで報じられたのを見たり聞いたりしても、危機感を感じるどころは、「あー。またか」という程度で、ほとんど興味を失っているというのが現状ではないでしょうか。

中国に実効支配された尖閣諸島の想像図
滑走路、港、レーダーサイトが設置されている

しかし、日本の領海のすぐ外にあって日本の法律がその域内で適用される接続水域への中国艦艇の侵入はさらに増えています。しかも頻繁に侵入してくる船は 中国人民解放軍の直接の指揮下にある人民武装警察に所属する中国海警の艦艇です。それらの船はみな武装しています。なかには中国海軍の正式な武装艦がそのまま海警に所属変えとなった艦艇もあります。

尖閣の現状は、より厳しいものになっています。尖閣の現状に対して米国の大手研究機関から警告を発しました。このままだと中国は尖閣の施政権を日本と共有した形となり、尖閣の奪取から東シナ海全体の覇権確保へと進むことになる、というのです。

この警告は、ワシントンの安全保障研究機関「戦略予算評価センター(CSBA)」が2019年8月に作成した「インド太平洋における中国の多様な闘争」と題する調査報告書に明記されていました。

ヨシハラ氏は中国の対尖閣戦略を「威圧態勢」と呼んでいます。同報告書の、主に「尖閣諸島への中国の威圧態勢」というパートの中で、その特徴を次のように述べています。
・中国は軍事、非軍事の多様な手段で尖閣の主権を主張し、最近では日本の領海へ1年間に60回、接続水域に1カ月に22回という頻度で侵入し、ほぼ恒常的な侵入によって事実上の施政権保持を誇示するようになった。
・中国は海軍、海警、民兵、漁船の4組織で尖閣への攻勢を進め、その侵入のたびに自国の領海領土の正当な管理行動として政府機関のサイトや官営ディアの報道で記録を公表し、支配の実績の誇示を重ねている。
・中国は尖閣侵入の主体を准軍事組織の海警としながらも、海軍艦艇を付近に待機させ、ときには原子力潜水艦やフリゲート艦などを接続水域に送りこんでいる。また、日本の自衛隊の艦艇やヘリに、実弾発射の予備となるレーダー照射を2回実行した。
・中国は近年、尖閣から300~400キロの浙江省の温州、南麂島、福建省の霞浦に、それぞれ新たな軍事基地や兵站施設を建設した。いずれも尖閣への本格的な軍事攻撃の能力を画期的に高める効果がある。
ヨシハラ氏の報告は、以上のような情勢によって、日本が尖閣諸島を喪失するだけでなく、中国が東シナ海全域の覇権を獲得しかねない重大な恐れが生じていることを強調している。同時に、中国の尖閣への「威圧態勢」は、米国の日本防衛の実効性を探るとともに、日米離反をも意図しているという。

同報告は日本にとって今後の最悪シナリオといえる可能性を、次のように指摘していました。
・中国は当面、消耗戦を続け、日本の尖閣への施政権否定を試みる。日本の反撃が弱いと判断すれば、「短期の鋭利な戦争」という形で尖閣の軍事占領に出る可能性もある。
・中国がその戦闘に勝ち、米国が介入できなかった場合、東アジアの安全保障秩序は根柢から変わってしまう。日本もその可能性を認識し、本格的な対応を考慮すべきである。
このままだと中国は、尖閣周辺での自国艦艇の活動実績を基に、尖閣への施政権保持を公式に宣言する見通しが強いといいます。日本はまさに領土喪失という国難に迫られているのです。

ヨシハラ氏の報告は、こうした深刻な事態に対して日米両国が協力し合って中国の海洋脅威をはね返すことを訴えていた。

では、これに対する備えはないのかといえば、日本はどうなのかといえば、はっきりしないところがありますが、米国の有力シンクタンクがこれに対する答えともいえる、提言を出していました。それを以下に要約して引用します。


"
中国の台湾や尖閣攻撃に対処する米最新戦略
米国有名シンクタンクCSBAが新戦略「海洋プレッシャー戦略」発表

ワシントンDCに所在の有名なシンクタンク「戦略予算評価センター(CSBA)」が米国のアジア太平洋地域における戦略として「海洋プレッシャー(Maritime Pressure)」 (注:海洋圧力ではなく、海洋プレッシャーを採用する) 戦略とその戦略の骨幹をなす作戦構想「インサイド・アウト防衛(Inside-Out Defense)」を提言している*1。

(*1=CSBA, “TIGHTENING THE CHAIN IMPLEMENTING A STRATEGY OF MARITIME PRESSURE IN THE WESTERN PACIFIC”)

この戦略は、強大化する中国の脅威に対抗するために案出された画期的な戦略で、日本の南西諸島防衛をバックアップする戦略であり、「自由で開かれたインド太平洋構想(FOIP)」とも密接な関係がある。

海洋プレッシャー戦略の背景

海洋プレッシャー戦略が発表される以前に、これと関係の深い戦略や作戦構想が発表されてきた。例えば、CSBAが米海軍や空軍と共同して発表したエアシーバトル(ASB)は特に有名だ。

そのほかに、CSBAセンター長であったアンドリュー・クレピネヴッチの「列島防衛(Archipelagic Defense)」、米海軍大学教授トシ・ヨシハラとジェームス・ホームズの「米国式非対称戦*2」、海兵隊将校ジョセフ・ハナチェクの「島嶼要塞(Island Forts)」などだ。

(*2=Toshi Yoshihara and James R. Holmes “Asymmetric Warfare, American Style”)

ASBと密接な関係のある列島防衛戦略としての海洋プレッシャー戦略がトランプ時代に復活したことには大きな意義がある。米中覇権争いにおいて米国が真剣に中国の脅威に対処しようという決意の表れであるからだ。

既成事実化(fait accompli)をいかに克服するか?

この戦略のキーワードの一つは「既成事実化」だ。

これは、「相手が迅速に反応できる前に、状況を迅速・決定的に転換させること」を意味し、ロシアが2014年、ウクライナから大きな抵抗や反撃を受けることなくクリミアを併合した事例がこの「既成事実化」に相当する。

台湾紛争を例にとると、中国が台湾を攻撃し、米軍が効果的な対応をする前に台湾を占領してしまうシナリオを米国は危惧している。この場合、台湾占領が既成事実となり、これを覆すことは難しくなるからだ。

広大な太平洋を横断して軍事力を展開することは、米軍にとっても決して容易なことではない。

紛争地域外にいる米軍は、紛争現場に到着するために、中国の接近阻止/領域拒否(A2/AD)ネットワークを突破しなければならない。米海兵隊司令官ロバート・ネラー大将は「我々は戦場に到達するための戦いをしなければならない」と述べている*3。

(*3=ロバート・B・ネラー、下院歳出委員会・国防会議での証言、2018年3月7日)

海洋プレッシャー(Maritime Pressure)戦略

海洋プレッシャー戦略の目的は、西太平洋での軍事的侵略の試みは失敗することを中国指導者に分からせることだ。

海洋プレッシャー戦略は、防御的な拒否戦略で、従来提唱されていた封鎖作戦(blockade operations)や中国本土に対する懲罰的打撃を補完または代替する作戦構想である。

海洋プレッシャー戦略は、第1列島線沿いに高い残存能力のある精密打撃ネットワークを確立する。

米国および同盟国の地上発射の対艦ミサイルや対空ミサイルの大量配備とこれを支援する海・空・電子戦能力で構成されるネットワークは、作戦上は非集権的で、配置は西太平洋の列島線沿いに地理的に分散されている。

海洋プレッシャー戦略は、国防戦略委員会の要請に対する回答で、インド太平洋地域における中国の侵略を抑止するために前方展開し縦深防衛態勢を確立するなどの利点を追求すること、そして米国のINF条約からの離脱などの政策決定を勘案した案を案出することが求められた。

インサイド・アウト防衛(Inside-Out Defense)

海洋プレッシャー戦略ではまず、距離と時間の制約を克服し、米軍の介入に対する中国の試みを挫折させ、既成事実化を防ぐという作戦構想「インサイド・アウト防衛」を採用する。

インサイド・アウト防衛とは、インサイド部隊とアウトサイド部隊による防衛だ。

インサイド部隊は第1列島線の内側(インサイド)に配置された部隊(例えば陸上自衛隊)のことで陸軍や海兵隊が中心だ。

アウトサイド部隊は第1列島線の外側(アウトサイド)に存在する部隊で海軍や空軍の部隊が主体だ。

「インサイド・アウト防衛」

インサイド・アウト防衛は、中国が米国とその同盟国に対して行っているA2/ADを逆に中国に対して行うことなのだ。

すなわち、西太平洋の地形を利用して、中国の軍事力を弱体化させ、遅延させ、否定するA2/ADシステムを構築しようということだ。

インサイド部隊は、厳しい作戦環境で戦うことのできる攻撃力と敵の攻撃に対して生き残る強靭さを持った部隊だ。

アウトサイド部隊は、機敏で長距離からのスタンドオフ攻撃が可能で、中国のA2/ADネットワークに侵入して戦うことのできる部隊だ。

これらの内と外の部隊が協力して、人民解放軍の攻撃に生き残り、作戦する前方縦深防衛網を西太平洋に構築し、紛争初期において人民解放軍の攻撃を急速に鈍らせる。

米国が中国との紛争に勝利するためには、インサイド・アウト防衛だけでは十分ではないかもしれないが、既成事実化を回避することはできる。

また、懲罰的攻撃や遠距離からの封鎖といった他の作戦が効果を発揮するために必要な時間を提供することもできる。

インサイド・アウト防衛がより手ごわい防衛態勢を中国に提示することによって、危機において中国が大規模でコストのかかる紛争のエスカレーションを避け、緊張の緩和を選択するように導くことを目指している。

「インサイド・アウト防衛」の4つの作戦

「インサイド・アウト防衛」は、次の4つの主要な作戦で構成される。

・海上拒否作戦:中国の海上統制に対抗し、中国の海上戦力投射部隊を撃破するための第1列島線での作戦

・航空拒否作戦:中国の航空優勢に対抗し、中国の航空宇宙戦力投射部隊に勝利するための第1列島線における作戦

・情報拒否作戦:中国の情報支配に対抗し、米国の情報優位を可能にする作戦

・陸上攻撃作戦:中国の地上配備のA2/ADシステムを破壊し、中国の戦力投射部隊を味方またはパートナーの領土に引き寄せるための作戦

次の3つのサポート・ラインにより、上記4つの作戦が可能になる。

・競合が激しくパフォーマンスが低下する環境においてC4ISRシステムを確保し、米国の情報の優位性を可能にする

・中国のマルチドメイン攻撃から友軍と基地を防御する

・攻撃されている間、分散した戦力を維持する

海洋プレッシャー戦略に対する評価

・米中覇権争いの様相が濃くなり、米中のアジア太平洋における衝突の可能性が取り沙汰されている。

中国が目論む台湾占領などの既成事実化を許さない海洋プレッシャー戦略は、米中紛争を抑止する戦略、日本の防衛をバックアップする戦略として評価したい。

・海洋プレッシャー戦略を成立させるためには、第1列島線を形成する日本をはじめとする諸国(台湾、フィリピン、インドネシアなど)と米国との密接な関係が不可欠である。

国防省や国務省はその重要性を深く認識しているだろうが、唯一不安な存在は、アメリカ・ファーストを主張し世界中の米国同盟国や友好国に緊張をもたらしているドナルド・トランプ大統領だ。

アメリカ・ファーストを貫くと、関係諸国との関係がより親密になるとは思えない。

・自由で開かれたアジア太平洋戦略や海洋プレッシャー戦略のためには米軍のさらなる前方展開が必要だが、米国内にはこれに抵抗するグループがいる。

米中覇権争いにおいて、米国は本当に中国の脅威の増大に真剣に対処しようとしているのか否か、その本気度が試される。

・我が国は、この海洋プレッシャー戦略を前向きに評価しつつも、これに過度に頼ることなく、わが国独自に進めている南西防衛態勢の確立を粛々と推進すべきだ。

いずれにしても、中国の増大する脅威に日本単独で対処することは難しい。常に日米同盟の強化、第1列島線を構成する諸国との連携を今後さらに推進すべきであろう。

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日本としては、この他にも独自の戦略を持っておくべきと考えます。それに関しては、以前にもこのブログにも掲載した方法もあります。その記事のリンクを掲載します。
日本単独で「核武装国」中国を壊滅させる秘策は機雷―【私の論評】戦争になれぱ中国海軍は、日本の機雷戦に太刀打ち出来ず崩壊する(゚д゚)!
平成20年6月12日、海上自衛隊による機雷の爆破処理で
海面に噴き上がる水柱。後方は神戸市街=神戸市沖
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、まずは日本の掃海能力は世界一であること、それに比較すると中国の掃海能力はかなり劣るから、機雷を最大限に活用した封じ込め戦略をすべきことを掲載しました。

確かに、中国海軍は機雷をばらまかれると何もできなくなるでしょう。主要港湾を機雷封鎖すれば中国は海洋進出無理などころか石油が枯渇することになります。

そこまで行く前に、まずは、尖閣周辺にばらまくという方法もあると思います。一度ばらまくと、日本としてはそれに対する対処方法もありますが、中国はできません。これで、尖閣付近に中国の武装船、漁船、潜水艦その他の公船などか侵入することを防ぐことができます。

さらに、中国が報復としてし、自分たちも機雷を設置するようなことをすると、中国には撒いた機雷の位置を精密に記録するという訓練も装備もありません。しかも中国製機雷には時限無効化機構もついてない。

自分たちで撒いた機雷により、シナ沿岸は半永久に誰も航行ができない海域と化すことになるでしょう。中共に投資しようという外国投資家も半永久にいなくなる。なにしろ、商品を船で送り出せなくなるのです。

いずれ、南シナ海の中国が環礁埋め立てて作った島々などの付近を米国と共同で機雷を投下すれば、中国の船は近づけなくなり、補給を絶つことができます。

機雷のほかにも、F16(できれば最新型F16V)と99式空対空誘導弾 もしくは、 AMRAAMがあったら余裕で制空権をとることもできるでしょう。

「海洋プレッシャー戦略」に組み込まれるというだけではなく、日本でも可能な独自戦略を考え出し、尖閣への侵入があった場合には、すぐに対応できるように準備すべきです。

米国手動の大掛かりな戦略等は、それができるようになるまでは時間と、多大な経費が必要になるでしょう。また、それまでの間には、対応できない部分もあることでしょう。当然日本も応分の貢献が求められるようになるでしょう。

これが完璧になるのを待っていては、それこそ中国が既成事実をつくりあげ、尖閣等を実行支配するようになるかもしれません。それは、断固として阻止しなければなりません。

日本は、そろそろ、尖閣付近に海保だけではなく、海上自衛隊を派遣すべきでしょう。その覚悟がなければ、せっかくの機雷による封鎖能力などは宝の持ち腐れになるでしょう。

【関連記事】

2018年12月28日金曜日

ルトワック氏単独インタビュー詳報―【私の論評】今後日本は日米英の結束を強めつつ独自の戦略をたて、繁栄の道を歩むべき(゚д゚)!


米戦略家のエドワード・ルトワック氏。米東部メリーランド州の自宅にて

米歴史家のエドワード・ルトワック氏は産経新聞との単独インタビューに応じた。「米中冷戦」の下で日本は米国に最も近い「パートナー国」として米国を支えていくべきだと訴えた。詳報は以下の通り。(ワシントン 黒瀬悦成)

 ■トランプ米政権の対中政策

 オバマ前政権は外交政策に関し非常に消極的だった。一方、トランプ大統領は大統領選に立候補した当初から中国をあらゆる分野で押し戻すと唱えてきた。

 トランプ氏は本来、中国に集中するためにロシアのプーチン大統領と(関係改善に向けた)合意を結びたかった。結局、これは(ロシア疑惑などにより)実現はしなかったが、トランプ氏はその後、確実に中国に焦点を定めていった。

 現状の中国との衝突は、中国が以前の「平和的台頭」路線に回帰しない限り、現体制が崩壊するまで長期にわたり続くだろう。

 ただ、「中国封じ込め」の必要性を最初に公言し主導してきたのはオーストラリアで、米国ではない。豪州は2008年以降、このままでは中国の植民地になるという危機感から日本や米国、ベトナムなどに連携を働きかけてきた。当時のオバマ大統領は封じ込めに否定的だったが、トランプ氏は積極姿勢に転じた。

 そうした流れから、日本や米国、ベトナム、豪州、インドなどの国々の間で、多様な方式と水準の自然発生的かつ必然的な「同盟」が形成されるようになった。英仏も南シナ海での「航行の自由」確保のため艦艇を派遣している。インドや豪州、日本がベトナムを支援するのも中国を押し返すためだ。

 ■日本の役割

 こうした(対中)同盟は正式な条約を必要としないが、中国に対抗するために能力向上を図らなければならない国々もある。日本は軍備に穴がある比較的弱小な国々に向けた武器輸出国になるべきだ。米国が東西冷戦時代、欧州に多数の戦車を提供し、同盟諸国に安価で取り扱いが容易なF5「フリーダムファイター」戦闘機を提供したように、インドネシアやフィリピンに廉価版の飛行艇を輸出したり、モンゴルに戦闘装甲車を供与できたりするようにしなくてはならない。

F5「フリーダムファイター」 写真はブログ管理人挿入以下同じ

 この対中大連合の中心は米国で、日本はそのパートナー国、他の国々は同盟国だ。ちょうど東西冷戦で米国が中心国で英国がパートナー国だったのと同じ構図だ。パートナー国は中心国と同じことをするのではなく、中心国ができないことを補完するのが役目だ。例えば、日本は中国の周辺国であるラオスやバングラデシュ、ミャンマーなどで、経済的、歴史的つながりの深さから米国よりも容易に能力向上支援などの活動を展開できる。

 また、日本は外国の的確な現地情報を収集する情報組織を外務省の下につくるべきだ。日本の右翼勢力の中には外務省には「パンダ・ハガー(媚中派)が多すぎる」として外務省の傘下にすべきでないと主張する者もいるが、今の外務省ではもはや媚中派は一掃されている。中央情報局(CIA)のような肥大化した低水準の独立組織は必要ない。

 ■対中ハイテク冷戦

 中国との対決の本質とは「地政学(geopolitics)」「地経学(geo-economics)」「地テク学(geo-technology)」の分野での戦いだ。米中が核保有国である以上、軍事的解決はできない。南シナ海での角逐は単なる象徴にすぎない。

 経済と技術分野の競争では、対中連合に加わる国が続々と出ている。欧州諸国では数年前から許認可の厳格化で中国が先端技術企業を容易に買収できなくなった。ただ、中国による先端技術のスパイ行為に関しては、つい最近までは野放しだったのが実情だ。

 諜報という裏の世界で起きていることは必ずしも極めて重要というわけではないが、国同士の本当の関係を照らし出すものだ。

 現状では、米英など西洋対中国による開発研究競争と中国によるスパイ行為が展開されているわけだが、中国にも盗む価値のある技術があるにもかかわらず、私が知る限り、米国はそれらを盗もうとしない。これは重大な過ちだ。中国の先端技術企業をスパイすることで、連中が私たちから何を盗んだかを知ることができるからだ。

 また、中国のスパイ行為への対応が非常に鈍いのも問題だ。私たちは中国との冷戦の初期段階にある。東西冷戦に突入しつつあった1946年、(当時の)チャーチル前英首相が訪米し「鉄のカーテン演説」で旧ソ連を批判した際、誰もが「ソ連は同盟国だ。チャーチルは好戦主義者だ」と攻撃したのと同じ状況だ。

 ■中国は海洋勢力になれない

 地政学上の「ランドパワー(陸上勢力)」である中国は「シーパワー(海洋勢力)」にもなろうと海軍力を増強しているが、それだけで海洋勢力になることはできない。

 海洋勢力になる要件とは周辺国に(艦船が)寄港でき、これらの国々との協力関係が確立できているかだ。海洋勢力は各地の島国や半島国家などと友好・同盟関係を結ぶ必要があるが、中国は友人どころか敵ばかり作っている。


 陸上勢力が海洋に進出すれば各国は警戒する。中国が進める巨大経済圏構想「一帯一路」も、結局はうまくいかないだろう。

【私の論評】今後日本は日米英の結束を強めつつ独自の戦略をたて、繁栄の道を歩むべき(゚д゚)!

産経新聞は本日以下のような記事も掲載しています。
「米中冷戦は中国が負ける」 米歴史学者ルトワック氏
冒頭の記事と重複するところもあますが、こちらの記事から以下に引用します。
 ルトワック氏は現在の中国との「冷戦」の本質は、本来は「ランドパワー(陸上勢力)」である中国が「シーパワー(海洋勢力)」としても影響力の拡大を図ったことで米国や周辺諸国と衝突する「地政学上の争い」に加え、経済・貿易などをめぐる「地経学」、そして先端技術をめぐる争いだと指摘した。 
 特に先端技術分野では、中国はこれまで米欧などの先端技術をスパイ行為によって「好き勝手に盗んできた」とした上で、トランプ政権が今年10月に米航空産業へのスパイ行為に関与した疑いのある中国情報部員をベルギー当局の協力で逮捕し米国内で起訴するなど、この分野で「米中全面戦争の火ぶたを切った」と強調した。 
 一方、中国が南シナ海の軍事拠点化を進めている問題に関しては、トランプ政権が積極的に推進する「航行の自由」作戦で「中国による主権の主張は全面否定された。中国は面目をつぶされた」と強調。中国の軍事拠点については「無防備な前哨基地にすぎず、軍事衝突になれば5分で吹き飛ばせる。象徴的価値しかない」と指摘した。

 ルトワック氏はまた、中国の覇権的台頭を受けて2008年以降、米国と日本、オーストラリア、ベトナム、インドなどの国々が「自然発生的かつ必然的な『同盟』を形成するに至った」と指摘。これらの国々を総合すれば人口、経済力、技術力で中国を上回っており、「中国の封じ込めは難しくない」とした。 
 ルトワック氏はさらに、これらの国々が中国に対抗するための能力向上を図る必要があると指摘。日本としては例えばインドネシアの群島防衛のために飛行艇を提供したり、モンゴルに装甲戦闘車を供与するなど、「同盟」諸国の防衛力強化のために武器を積極的に輸出すべきだと提言した。
現在の中国との「冷戦」の本質は、本来は「ランドパワー(陸上勢力)」である中国が「シーパワー(海洋勢力)」としても影響力の拡大を図ったことで米国や周辺諸国と衝突する「地政学上の争い」に加え、経済・貿易などをめぐる「地経学」、そして先端技術をめぐる争いだと指摘した。 

四面海に囲まれた「海洋国家」である日本のこれからの国家戦略は、あくまでも、「海洋国家の雄」である米国と、「海洋国家の大先輩」である英国との間で政治的にも軍事的にも、また経済・文化的にも「シーパワー連合」を強固に組み、日本の進路を誤らないようにしていく必要があります。

8月3日晴海埠頭に入稿した英海軍揚陸艦「アルビオン」

これに対して、「大陸国家」である「中国」と「半島国家」である「韓国」「北朝鮮」との間での結びつきは、できるだけ「緩やかな関係」にしておくべきです。

日本は「政経分離」の原則に立ち、「大陸国家」「半島国家」とは政治的・軍事的な結びつきや関与は、極力避けるべきです。「海洋国家」が、「大陸国家」や「半島国家」にかかわると、命取りになります。これは、大東亜戦争に敗北した日本が、痛烈に感じさせられた歴史的事実です。

今後ともに、ゆめゆめ「大陸や半島」への「政治的・軍事的野心」を抱くべきではありません。

日本は戦後、「戦略なき国家」と揶揄され「外交防衛政策」の対米追従姿勢が内外から厳しく批判を浴びてきました。しかし、日本に「戦略」がなかったというのは、大きな誤りです。

日本が、本当に「戦略なき国家」だったのであれば、米国が「双子の赤字」を抱えて苦しむほど「経済的疲弊」し、「ソ連東欧」が経済破綻により崩壊して米ソ共倒れのような格好で冷戦が終結したのに、日本が、「経済的繁栄」を実現できた理由を説明できなくなります。

たとえ「日本国憲法」が米国による「押しつけ」であれ、また、「米国の核の傘」の下で「保護」されてきた国であろうとも、こうした「受け身」の状態とそのなかに含まれていた諸条件を上手に利用して、ひたすら「通商国家」の道を歩み、「経済大国」を実現してきたのは、立派な「国家戦略」が存在したからであり、偶然に「経済大国」になったわけではありません。米ソが駆使したような「地政学」を活用しなかっただけにすぎません。

「地政学」を活用した米ソが、疲弊ないし崩壊したというのは、何とも皮肉だと思います。現在「地政学」を駆使するととに、古代の叡智を過信する中国もルトワック氏が予言するように崩壊します。

米国は、海洋国家として「シーパワー」による世界制覇を、ソ連は大陸国家として「ランドパワー」による世界制覇をそれぞれ目指しました。いわゆる「地政学」をフルに活用して世界戦略を展開してきたのです。

日本も戦前、戦中は帝国海軍がアルフレッド・マハンの「海上権力論(シーパワー)」を、帝国陸軍がマッキンダーの「ハートランド論」をよく研究していました。

秋山真之

日本海会戦を勝利に導いた秋山真之が立てた「来攻する敵艦隊を迎え撃つ」という戦略戦術構想とその中心思想は、大東亜戦争に至るまで堅持されました。佐藤鉄太郎中将は、古今東西の戦史を深く研究して兵学各部門に貢献し、陸海軍備の関係については当時台頭した「大陸進出国防論」をいましめました。

「帝国国防方針」は1909年に策定されましたが、以来、仮想敵国(米・露・支)の関係から、「陸主海従」か「海主陸従」かの根本問題も解決をみず、「二重性格」の国防方針のまま大東亜(太平洋)戦争に突入し、大陸に深く入り込みすぎ、また戦線も拡大しすぎて、「空母中心」の新しい海戦の意義を理解した米国に敗北してしてしまいました。日本がいかに「海洋国家」であったかを思い知らされ、痛烈に反省も迫られたのでした。

戦後は、連合国軍最高司令部(GHQ)の意向で、これら「地政学」の研究がはばかれ、「地政学」に立脚した「国家戦略」を立てられなくなりました。

しかし、戦後の日本が、「国家戦略」を持たなかったかと言えば、そうではありません。日本の大戦略は、「日本国憲法」の持つ「機能」のなかに仕込まれていました。このことは、日本に憲法を押しつけた米国でさえ気づきませんでした。気づいていたのは、ただ一人、「吉田茂元首相」でした。米軍を「番犬」とし、軍備に巨費を投ずることなく、経済大国を築くという「戦略」でした。

吉田茂元首相

これは、「米ソ対決(東西冷戦)」と「南北朝鮮の分裂」という地政学的な状況と条件を日本の生き残りに活用するという巧妙なる戦略でした。

東西冷戦とその後のソ連崩壊、中国の台頭により、これらの「状況と条件」は、大きく様がわりしてしましたが、日本は再び、「東アジア情勢」を活用する「国家戦略の策定」が求められています。それには、

 ①日本は、武力による「覇道」ではなく、あくまで通商・経済により「王道」を歩む。
 ①米国、英国などとの「シーパワー連合」を強化する
 ②中国大陸に深入りせず、米中を覇権争いさせるとともに、朝鮮半島にはコミットしない。(危機が刻々と迫っているかに見える北朝鮮や米中の熱戦の火の粉をかぶらないようにする)

との原理原則を貫き、従来通り「通商国家」「超経済大国」を目指し続けるのです。「シーパワー連合」に最も関係の深い「シーレーン」の防衛に協力するのは、当然です。また、ルトワック氏が主張するように、日本は軍備に穴がある比較的弱小な国々に向けた武器輸出国になることも実行すべきです。

しかし、自民党憲法改正案にもあるような、「憲法第9条1項」はそのままに、「2項」を改正するとしても、「国連」への関与は最小限に止めるべきです。

日本は、「安保理常任理事国」となり、先々、「国連旗」を隠れ蓑に地球のどこにでも出兵させられるような立場には絶対に立たされてはならないです。「分担金」をいまの「19.468%」からさらに上乗せさせたり、米軍に成り代わって、「大陸」であろうと「海洋」であろうと、世界中の紛争地帯に出撃し、「日本の青年の血」が多く流されたりして、ロクなことはないです。日本の若者を「犬死に」させていならないのです。

それよりも日本の防衛に全力を上げた方が良いです。この限りの意味で、日本は戦前とはまったく違う新たな「富国強兵」の道を「国家戦略」とすべきです。そうして、自国の領土はまずは自国で守るのです。これについては、米国議会もトランプ政権以前からそれを望んでいます。

今後日本は、シーパワー、ランドパワーなる地政学的な考え方も援用しつつ、日米英の結束を強めつつ独自の戦略をたて、繁栄の道を歩むべきです。

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