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2015年11月6日金曜日

【異形の中国】死に物狂いで金集めに走る中国 日本株も静かに売却していた…―【私の論評】今の中国が最も恐れるのは南シナ海ではない! 日銀の追加金融緩和と、アメリカの金融制裁だ(゚д゚)!

【異形の中国】死に物狂いで金集めに走る中国 日本株も静かに売却していた… 

天津大爆発は、中国経済に打撃を与えた=8月

中国経済は「アリ地獄」に落ちた。「負の連鎖」が最悪の方向へ暴走し始めたことが、種々の経済データや現状分析から明瞭に観察できる。

今年6月以来の「上海株暴落」と、8月の「人民元切り下げ」。続いた「天津大爆発」により、世界第4位の港湾施設が麻痺(まひ)し、輸出入が激減したばかりか、北京への貨物輸送が途絶えた。

この前後の、経済動態を緻密に検証してみる。リーマンショック直後からの財政出動、強気のインフラ投資、新幹線建設はまだしも、各地にゴーストタウン(鬼城)が出現したあたりから、中国経済は崩落への道に突き進み、「負の連鎖」が始まっていたことが分かる。

中国の経済政策は制度上、国務院(=日本の内閣に相当)が所管する。このため、李克強首相が経済政策の中枢を担い、彼の推進する中国の経済を「リコノミクス」と呼ぶ。
李氏自らが認めたように、中国のGDP(国内総生産)統計は水増しが多く、信頼するに値しない。「電力消費量」と「銀行融資残高」「鉄道貨物輸送量」の3つのデータを重視するとした。

となると、計算上、電力消費量が40%、銀行融資残高が35%、鉄道貨物輸送量が35%として振り分けられる「李克強指標」で見ると、7%成長をうたう中国のGDPは、本当のところ2%前後しかない。 

電力消費量は横ばい、貨物輸送量は10%のマイナスだからだ。「実質はマイナス成長」に陥っていると推定できる。

中国の抱える債務はGDPの282%である。2015年末に400兆円、16年末に600兆円の償還時期がくるが、返済は無理。つまり借り換え、分かりやすくいえば、ギリシャのように「証文の書き換え」が目の前に来ているということだ。

5兆円にものぼった中国国富ファンドの日本株保有も、いつのまにか手元資金不足に陥って、静かに売却していた。

なぜなら、日本企業の株主リストは公開されており、豪のオムニバス・ファンド(=中国国富ファンドの別動隊)の名前が見つからなくなった。中国は日本株をほぼすべて売却していたのである。

あまつさえ中国は保有する米国債を取り崩し、備蓄した金も少しずつ売却している。次に地方政府の債券発行を認め、さらには住宅ローンの貸し出し分を担保の銀行融資枠を拡大し、10月には銀行金利の上限も撤廃した。 

加えて、人民元建ての中国国債をロンドンでも売り出して、死に物狂いの金集めを展開している。

これは末期的症状ではないのか。

■宮崎正弘(みやざき・まさひろ) 

【私の論評】今の中国が最も恐れるのは南シナ海ではない! 日銀の追加金融緩和と、アメリカの金融制裁だ(゚д゚)!

上の記事では、「中国国富ファンドの日本株保有も、いつのまにか手元資金不足に陥って、静かに売却していた」とありますが、その兆候はすでに、2013年当時から見られていました。それに関しては、このブログでも以前掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
市場から消えた中国マネー4兆円の怪 ~緊迫する尖閣との関連性~―【私の論評】消えた中国マネー4兆円は、中国国内の熱銭不足の解消に遣われただけ!日本が金融緩和という最強「対中カード」を握ったことをマスコミが報道しないのはなぜ(゚д゚)!
 
2012年まで中国政府系ファンドが所有していた日本株式

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、中国系政府ファンド『OD05オムニバス』が2013年当時、日本株を売却していた事実を示す記事を掲載します。
 消えた中国マネーが憶測を呼んでいる。中国政府系ファンド『OD05オムニバス』が9月中間決算を機に、日本の主要企業の大株主から次々と姿を消したのだ。その数、判明しているだけで実に127社。今年3月期には167社(3月決算以外の24社を含む)の大株主ベスト10に登場していたのだから、まさに“激減”の言葉がピッタリである。

 繰り返せば、その中国マネーが日本市場から一気に“蒸発”したのだ。大株主から消えた企業を列挙してみると、自動車ではトヨタ、日産、ホンダ、ダイハツ、スズキ、いすゞなど、ほぼ軒並み。電機ではパナソニック、東芝、ファナック、NEC、富士通などから消えた。ゼネコンでは鹿島、大成建設、大林組、清水建設。商社では三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、住友商事、丸紅。さらにJR東日本、JR西日本、JR東海、NTT、NTTドコモ、新日鉄住金、野村HD、大和証券グループ本社などからこつ然と姿を消した。 
 ベスト10に残っている企業でも日立、ソニー、武田薬品、ソフトバンク、三菱重工などが3月期比で半減している。一方、銘柄としては少数ながらも石油資源開発、富士重工、マツモトキヨシなどは保有株数が増えている。他にベスト10以下にとどまり、第三者にはうかがい知れないケースがあるにせよ、ざっと時価4兆円からの大枚が短期間に市場から消えた計算になるのだから“事件”といえるだろう。
さて、当時中国経済の実体を知らなかったと考えられる人の書いたこの元記事では、このー連の日本株売却を「有事に備えた叩き売り」などとし、「どうやら中国が強力な対日カードを握ったことだけは確かなようだ」と結んでいますが、これはとんでもない見立て違いでした。

なぜ中国がこの時点で、日本企業の株式を売却したかといえば、ブログ冒頭で宮崎氏が説明しているのと同じであり、平たくいうと当時の中国では金融が空洞化しつつあり、万が一に備えて売却せざるを得なかったというのが事実です。

なぜ、そのようなことになったかというと、2013年の4月より、日銀はそれまでの頑な、円高・デフレ政策である、金融引き締め政策一点張りの金融政策をやめ、大規模な金融緩和政策に踏み切っているからです。

そのあたりの事情をさらに、以下に引用します。
日本が包括的な異次元の緩和を行う前の中国を支えていたのは為替操作によるキャッチアップ型の経済成長であり、円高とデフレを放置する日本銀行によるものです。からくりはこうです。 
慢性的な円高に苦しむ日本企業は、過度な「元安」政策をとる中国に生産拠点を移し、出来上がった製品の一部を逆輸入しています。国内で一貫生産するより、わざわざ中国を経由した方がもうかる構造になっていたのです。つまり日銀は、「デフレ政策で日本の産業空洞化を促進し、雇用と技術を中国に貢ぎ続けた」ことになります。 
これ以上、日本経済が中国に振り回されないで済むにはどうしたら良かったのか。答えは簡単でした。日銀にデフレ政策をすぐやめさせることでした。そうして、実際に日銀の金融政策は、黒田日銀になってから180度転換しています。
さて、中国では、日本の金融引締めによる、超円高・元安という恵まれた経済・金融環境の中で、中国人が海外に蓄えた大量の資金を中国国内に再投資(熱銭)して、さら儲けるということが行なわれていました。まさに、大儲けです。
熱銭については、このブログでも以前紹介したことがありますので、その記事のURLを以下に掲載します。これは、 2013年4月の記事です。中国人民銀行総裁周小川の懸念がまさに現実化しました。

"
これも詳細は、この記事をご覧いただくものとして、熱銭に関連した部分のみ以下にコピペさせていただきます。

 
 中国が円安の衝撃を和らげるためには人民元を切り下げるしかない。中国は通貨の自由変動相場制をとっている日米欧と違って、外為市場介入によって人民元相場の変動幅を小さくする管理変動相場制をとっている。 
 従って、人民元を当局の意のままに切り下げることもできるが、米国は中国が意図的に人民元をドルに対して安い水準になるよう操作していると批判している。切り下げると、米国から「為替操作国」だと認定され、制裁関税を適用されかねない。 
 中国自身も国内事情の制約を受けている。というのは、中国の党幹部とその一族や大手国有企業はこれまで国外でため込んだ巨額の外貨を、中国国内に投資して不動産や株で運用してきた。これらが「熱銭」と呼ばれる投機資金であり、その流入によって不動産バブルの崩落は食い止められ、株価も崩壊を免れている。 
 通貨当局はこれまで熱銭を国内にとどめるためもあって、人民元レートを小刻みに切り上げてきたが、一転して人民元切り下げ政策に転換すれば、1000億ドル単位の熱銭が国外に逃げ出す恐れがある。アベノミクスによる円安に対し、中国はどうにも動けない。
このアベノミクスによる円安により、中国投資の魅力が失せて、実際に中国内の熱銭が底をつきはじめたというわけです。特に、 2013年7月頃ではかなり熱銭が減ったとみられます。
"

さて、中国はご存知の通り、実際に人民元切り下げを行いましたが、それでも経済は低迷し、株価は低迷し、中国から海外に天文学的な数字の金が流れ続けています。

そのため、外貨準備も底をつき、マイナスに転じていることはこのブログにも掲載しました。

この日本の金融緩和による中国の経済の弱体化は、まるで日本による中国に対する金融制裁のようではありませんか?実際、2012年にまだ白川体制だった、日銀が周りからせっつかれて、いやいやながら、若干の追加金融緩和を決めたときですら、吠えまくりました。

それについても、このブログで掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。この記事は、2012年9月のものです。
中国人民銀、日銀の追加緩和にいら立ち 過度の資本流入懸念−【私の論評】中国の経済破綻が始まる?!日銀を何とかしなければ、日本は草刈場になる!!
中国人民銀行
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、それにしても、この時の周小川の苛立ちの発言は、おかしなものでした。彼の発言は、「日本が金融緩和に転ずると、過度の資本流入の懸念がある」という、奇妙奇天烈、摩訶不思議な発言でした。

日本が金融緩和に転ずれば、当然のことながら、円安傾向になるわけですから、相対的に元高傾向になるわけです。とすれば、日本が円高で苦しんてきたようなことが、中国国内でも起こるわけです。要するに、中国の投資先としての魅力が失せるわけでてすから、当然のことながら、心配すべきは、過度の資本流入ではなく、過度の資本流出を懸念すべきです。

周小川としては、日本の金融緩和によって、本当は資本流出を恐れたのでしょうが、弱みを見せたくないということで、あのような珍妙な発言になったのでしょう。

とはいいながら、白川体制のときの追加金融緩和など微々たるもので、現実には周小川の懸念は、懸念で終わってしまいました。

しかし、日銀が黒田体制に変わり、異次元の金融緩和を実施しはじめたとたん、周小川の懸念は、現実のものとなりました。資本流出が本格的に始まったのです。

無論このときも、周小川はわめきまくりましたが、日本からいえば、円高・デフレを是正するために、金融緩和をしたのであり、これは単なる内政干渉に過ぎません。

だからこそ、2013年には、中国系ファンドが日本株の売却をはじめたということです。そうして、その状況は、今もかわらず、ブロク冒頭の宮崎氏の記事にもあるように、5兆円にものぼった中国国富ファンドの日本株保有も売却するような事態が続いているのだと思います。この流れは、まだ続きます。

瀬戸際に追い詰められた習近平



さて、このような中国が最も恐れるのは何でしょぅか。それは、もうお分かりでしょう。日銀による追加金融緩和です。これが、実施されると、ますます中国から金が逃げて、ほんとうにすっからかんになってしまいます。

それに、中国にはもっと恐ろしいことがあります。現在米国が、南シナ海にイージス艦を派遣していますが、このアメリカの示威行動に、中国が何らかの形で譲歩せずにつっぱり続けるとどうなるでしょうか。

それは、すでに米国が北朝鮮に対して行っている、制裁措置でもある、金融制裁です。実際米国は、今年一月に北朝鮮のサイバー攻撃に対する追加措置として、金融制裁を実行しています。

日本が、追加金融緩和を実施し、アメリカが大規模な対中国金融制裁を行ったとしたら、どうなるでしょうか。当然のことながら、日米もある程度火傷をするでしょうが、中国は、そんなことではすみません。中国経済は本格的に破綻します。

昨日もこのブログに掲載したように、次世代の党の和田幹事長が提唱する、金融緩和で名目成長5%を目指すなどの政策が実行されたら、中国は中国共産党幹部らは、恐慌状態に陥ることになります。

いつも強面を演出する傍若無人な中国ですが、 日米が本格的に金融制裁を発動したら、ひとたまりもありません。経済の崩壊だけではすまないです。習近平体制は完璧に崩れます。それだけで、すめば良いですが、それこそ現在の中国共産党一党独裁体制自体が崩壊する恐れも十分あります。中国が南シナ海で米国を納得させる、譲歩をしなければ最終的にはこうなります。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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2015年11月4日水曜日

【異形の中国】中国に離反し始めたアジアの国々 米国イラ立つ軍拡路線も経済失速で陰り ―【私の論評】南シナ海で本当に危ないのは、中国人民解放軍の身の程知らずの青年将校?


中国が埋め立てを強行する南シナ海・ミスチーフ(中国名・美済)

中国の軍事的脅威は日増しに強くなった。

ついに米国は10月27日から、南シナ海・スプラトリー(南沙)諸島のスービ(渚碧)礁や、ミスチーフ(美済)礁周辺に、イージス駆逐艦「ラッセン」を航行させ、示威行動に出た。中国が「領土」と強弁する人工島の12カイリ(約22キロ)以内を、120キロにわたって監視・哨戒し、韓国を除くアジア諸国は米国を支持した。

すでに半年前に、ペンタゴン(米国防総省)は「準備はできている」と、オバマ大統領に報告し、命令を待っていたのである。

「今後も何度も激しく哨戒は続くだろう。フィリピンや、ベトナム、オーストラリアが加わった共同作戦も考えられる」と消息筋はいう。

南シナ海には、300億トンの石油と、16兆立方メートルの天然ガスが埋蔵されていると推計される。資源奪取のために中国が7つのサンゴ礁を埋め立てて、ベトナムやフィリピン、ブルネイ、マレーシア、インドネシアと小競り合いを続けてきた。

他方で中国は「一帯一路」を掲げて、「海のシルクロード」構想を打ち上げているが、協力を約束してきた国々が離反し始めた。

まず、ミャンマーは「反中国」に転び、スリランカは中国が建設していた人工島プロジェクトを見直すことにした。中国の構想に大きな誤算が生じた。9月3日の「抗日戦争勝利70周年」記念の軍事パレードに、両国は代表を派遣しなかった。

だが、中国はそんなことではひるまない。

中国は南インド洋にあって、インドを南西から地政学的に脅かすモルディブ群島に濃密に接近した。これはインドを刺激する。ついで中国は国際的な海賊退治で協力行動の拠点であり、独裁国家であるジブチに目を付けた。

米軍はジブチの空港と港湾を借り受け、巨大な軍事基地(=レモニエ空軍基地とオボック海軍基地)を設営しているが、米国務省はゲレ大統領の独裁を強く批判している。このため、ジブチは中国にも軍事基地建設を持ちかけた。渡りに船の中国は「海のシルクロード」構想の一環として、ジブチを活用する方向にある。

さらに中国は、ケニアやタンザニア、マダガスカル、セーシェル、モザンビーク、ジンバブエから、アフリカ大陸の最南端・喜望峰をまたぎ、南西アフリカのナミビア、アンゴラへまで伸ばす壮大な戦略に傾いている。

米国のイラ立ちは尋常ではない。

しかし、上海株暴落を契機とした経済失速によって、中国のこれまでの軍拡路線は維持が難しくなったのも事実である。

■宮崎正弘(みやざき・まさひろ) 評論家、ジャーナリスト。1946年、金沢市生まれ。早大中退。「日本学生新聞」編集長、貿易会社社長を経て、論壇へ。中国ウォッチャーの第一人者として健筆を振るう。著書・共著に『私たちの予測した通り、いよいよ自壊する中国!』(ワック)、『「中国の終わり」にいよいよ備え始めた世界』(徳間書店)など多数。

【私の論評】南シナ海で本当に危ないのは、中国人民解放軍の身の程知らずの青年将校?

中国の人民解放軍は、現在までのところ、米軍には全く太刀打ちできません。中国の現在の軍事力では、尖閣付近の海洋や空域では、自衛隊にも勝てない水準です。無論、これにはある条件が必要です。その条件とは、日本の自衛隊がこれらの海洋や、空域で自由に行動できるという条件です。

いまの自衛隊は、軍隊のようであって、軍隊ではなく軍隊もどきです。だから、尖閣付近で、実際に戦闘が起こったときに、他国の軍隊のようにネガテイブ・リスト(やってはいけないことをリスト化し、それ以外は勝つためには何をやっても良いという方式)で自由に動くことができれば、日本の自衛隊は、この領域で人民解放軍に負けることはありません。

ただし、現在の自衛隊は、ポジティプ・リスト(やっていいことをリスト化し、たとえ勝つためであつても、それ以外のことはしてはいけないという方式)で手足を縛られた状態では、有事の際には自由に動けず、これが相手に隙を与えて、負けるということも考えられます。

とはいいながら、日本の自衛隊が自由に行動できるものとすれば、現在の中国の人民解放軍の実力では、軍事技術的にも、士気の面でもとても、自衛隊の敵ではありません。それは、ほかならぬ中国の人民解放軍の幹部は全員が承知していることです。

だからこそ、中国側も、軍艦ではなく、漁船や公船など、ほんんど武装していない船で、日本の領海の侵犯をしているのです。もし、武装艦を派遣すると、日本の海上自衛隊と衝突して、大規模な衝突になってしまえば、とても勝ち目がなく、後退することを余儀なくされることは最初からわかっているのです。

日本の自衛隊に対しても、このような有様ですから、南シナ海でたとえ米軍がイージス艦を派遣しても、彼らには全く歯がたちません。中国にもイージス艦もどきがありまずか、米国のイージス艦とは、武装、電子機器、巡航速度の点で全くかないません。それこそ、このブログにもたびたび過去に掲載してきたように、人民解放軍が米軍に挑めばほとんど自殺行為になります。

そのことは、人民解放軍の上層部や、中国共産党政府の幹部は十分に熟知していると思います。だから、米国のイージス艦を派遣して南シナ海をパトロールしても、滅多なことでは、人民解放軍はこれに手を出すということはしない、というより、できないでしょう。だから、日本に対しても、まずは本格的に戦闘を挑むということはないとは思います。

とは、言いながら、懸念事項があります。それは何かといえば、人民解放軍の青年将校たちです。彼らは、江沢民時代以降の苛烈な反日教育を受けて育った世代です。

現在の苛烈で体系的、組織的な反日教育は江沢民がはじめた

中国の若手将校の動向が話題になることは少ない。しかし、昨年アメリカ企業にハッカー攻撃を仕掛けたとして、米司法省が、中国人民解放軍の若手将校「5人」を産業スパイの罪で起訴したことが発表されました。

米司法省のホルダー長官は、「中国人民解放軍の将校5人が、5つのアメリカ企業と労働組合にサイバー攻撃を仕掛け、機密情報を盗んだ。司法省は彼らをサイバー攻撃の疑いで起訴した。このハッカー攻撃は、アメリカ企業を犠牲にして、中国の国営企業など、中国に利益をもたらすために行われたものだ」と発表しました。
アメリカの企業と労働組合にサイバー攻撃を仕掛けた5人の青年将校
しかし、中国の外交部は例によって「中国は、アメリカによるサイバー攻撃の被害者である。これは捏造だ。中国は、アメリカに関連事実を説明し、行動を停止するよう求める」と反発しました。何を指摘されようと、絶対に非は認めず、反対に「相手に罪をなすりつける」のが中国の常套手段です。

彼ら青年将校は、肥大化する人民解放軍の中でもエリート集団であり、同時に「怖いもの知らず」です。文革や極貧時代の中国を知らず、大国となって傍若無人の振る舞いをする中国しか知りません。

どの国でも青年将校は怖いものです。血気盛んな若手のエリート将校は、時として歯止めがきかなくなる場合があります。理想論を闘わせ、やがてそこに向かって突き進もうとする者が出てきます。

今、中国は「日本が世界の戦後秩序を破壊しようとしている」と、世界中でキャンペーンを張っています。日本による「戦後秩序への挑戦」が、彼らのキャッチフレーズです。彼らには、日本が本当に“悪”にしか見えず、それは“憎悪の対象”でしかありません。視野の狭い青年将校がどんな考えを持っているかは、容易に想像がつきます。

もともと中国国内のツイッターでは「敗戦国が何を言うか」「いっそ原爆を日本に落とせ」と、盛んにやり取りされています。日中国交回復以後、3兆円ものODAを中国につぎ込み、さらには民間レベルでの「技術協力」によって、ひたすら中国のインフラ整備に力を注いだ日本。しかし、そのことを全く知らない青年将校たちの「時代」が中国に訪れていることを忘れるべぎではありません。

青年将校らの受けた苛烈な反日教育には、史実にそぐわない一方的な“日本悪者論”に基づくものが数多いです。それを真に受けた世代が、現在中国の人民解放軍の現場で中核的存在になっているのです。

自分たちの論理で、より過激な道を歩もうとする青年将校たちほど怖いものはありません。「“小日本”に核ミサイルをぶち込め」という意見がネットで氾濫する中国で、徹底した反日教育を受けた人民解放軍の青年将校たちは、今後、軍をどう導いていくのでしょうか。

日本の防空識別圏に大きく踏み込む形で中国が昨年一昨年11月に一方的に設定した空域で、中国機は、日本の海上自衛隊機と航空自衛隊機に対して、それぞれ、およそ50メートル、30メートルまで「並走するように近づいてきた」という出来事がありました。

言うまでもないですが、30メートルから50メートルまで近づけば、パイロットはお互いの顔がはっきりと見えます。つまり、相手の表情を見た上で、「おい、やるか? やるならやってみろ」と、事実上、“喧嘩を売ってきた”ことになります。

中国初の女性戦闘機パイロット
幸いに自衛隊機はそんな挑発には乗りませんでした。日本の防空識別圏に重なる形で中国は一方的に新たな防空識別圏を設定したのですから、中国にとってそこはあくまで「自国の空域」なのです。要するに彼らには、「日本が中国の防空識別圏に侵入してきた」という論理になります。

中国は、勝手に「領空・領海設定」をして、勝手に自国の領空(領海)だと「主張」し、そして相手には「有無を言わせない」。現在の中国が建国されて以来、周辺国(周辺地域)と紛争を繰り返し、国内でも粛清と弾圧ですべてを支配し、さらにはここ10年で4倍に国防予算を膨張させた中国の面目躍如というところかもしれません。「政権は銃口から生まれる」という毛沢東の言葉通りの国家方針は、今でも変わりません。

これらの領空で、操縦桿を握っているのは、彼らエリート意識に溢れた青年将校たちであす。何百回、何千回とつづいていく「スクランブル(緊急発進)」の中で、「いつ」「いかなる」不測の事態が勃発する可能性は十分にあります。

そうして、これは今回の米軍の南シナ海での示威行動に対しても、あてはまります。彼ら青年将校の論理からすれば、米軍のイージス艦は、中国の領海を侵犯している憎むべき相手以外の何ものでもありません。

日本の自衛隊を訪問した中国人民解放軍青年将校ら(左)
さらに、始末に悪いことに、中国ではここ数年最新鋭の戦闘機や艦艇、潜水艦、兵器などを導入しています。情報統制されて、世界を知らない中国の青年将校らは、ほとんどが一人っ子であり、子どもの頃は小皇帝などとも呼ばれ、自己主張の激しい性格の持ち主です。そうして、彼らは人民解放軍の世界での位置づけを知りません。自衛隊はおろか、米軍と同水準かそれ以上と思い込んでいる者も多いです。

彼らが、現場でいつ戦闘に挑みだすか、保証の限りではありません。彼らにとっては、現代の先進国の軍事技術からすれば、数十年遅れた軍事技術でつくられた、空母や、戦闘機、艦艇、潜水艦でも最新鋭のものです。彼らから、すれば、それら最新鋭の軍事力を用いて、自分たちが挑めば、できないことはないと考えるに違いありません。

このような中国の青年将校の思い上がりを是正するには、南シナ海で最初に中規模程度の衝突があったほうが、良いのかもしれません。そうなると、人民解放軍はなすすべもなく、海の藻屑と消えるでしょう。それが、人民解放軍の内部で語り継がれるようになれば、彼らも妄想から覚めることでしょう。
このような、世界情勢が目の前にもあるにもかかわらず、平和ボケした日本人の多くは、憲法解釈の変更による、集団的自衛権の限定的行使を目途とする安保法案を「戦争法案」とレッテル貼りして、違憲などとして、反対する有様です。

しかし、平和ボケしたわれわれ日本人も、不測の事態への「覚悟」だけは持っておくべき時代が来たことだけは間違いありません。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか。

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