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2020年1月17日金曜日

日本の高度技術も危ない中国の情報盗取―【私の論評】中国が先進国の最新技術を剽窃したとしても、世界の製造業のリーダーにはなれない(゚д゚)!

日本の高度技術も危ない中国の情報盗取

岡崎研究所

 2019年12月18日、南フロリダ大学にある米国立モフィット癌研究センターで、所長、副所長及び4人の研究員が解雇されるという事件が起きた。報道によれば、彼らは「千人の人材」計画と呼ばれる中国共産党が外国の優秀な頭脳を大規模に採用する一環として、中国から報酬を得ていたと言われている。



 中国による軍事や商業上の機密情報の盗取は、以前から米国内で問題視されていた。そして、それは、米中関係の悪化の一つの要因にもなっていた。

 2019年4月には、米テキサス州立大学MDアンダーソンがんセンターでも、同様の事件が起きている。機密研究情報の窃盗の疑いから、アジア出身の教授3人が解雇された。

 中国共産党が米国の大学や研究機関に、「千人の人材」計画等で働きかけを行っていたことは以前から知られていたが、今回フロリダ州の癌研究センターで所長以下が中国政府の計画の下、報酬を得ていたことが判明し解雇されたことで、中国政府の米国の大学や研究機関に対する働きかけが、以前にもまして脚光を浴びることとなった。

 米国の施設、機関は従来開放的であるのが特色で、外国人もその恩恵にあずかってきた。しかし、時としてその開放性につけ込み、悪用し米国の利益を害する例が見られた。例えば、国際テロ組織アルカイダ一派が米国のパイロット教習所で教習を受け免許を得て、米国機をハイジャックして2001年の同時多発テロ「9.11」事件を起こしたのが、その最たるものである。

 中国政府の米国の大学や研究機関に対する働きかけはいかにも中国らしく、「千人の人材」計画と称して大規模で綿密に計画され、豊富な資金を動員して行われているようである。その目的は単なる学術的研究の推進ではなく、中国の経済的、軍事的技術の向上に資するという国家プロジェクトである。

 FBI(米連邦捜査局) は、かねてより、中国の働きかけは米国の安全保障上の懸念であるとして、米国中の研究機関に警告を発してきたが、ここにきて米国議会も問題の重要性を認識し、問題の全貌の究明に努めるとともに、大学、研究所に万全の対策をとるよう要求している。米国の大学や研究機関は、本来開かれた研究をするのが真髄であったが、中国政府の働きかけを前に警戒せざるを得なくなった。中国政府の意図を考えれば、これは大学、研究所だけの問題ではなく、米国の官民が一丸となって取り組むべき問題である。それはまた米中関係の緊張に新たな火種を提供するものであるが、米国は自国の安全保障上の利益が脅かされる現在、黙って見過ごすことはできない。

 日本も、中国が日本の大学や研究機関に同じような働きかけをしていないかどうか調査するとともに、要すれば適切な対策をとる必要がある。

 米国やカナダでは、既に、大学内に設置された「孔子学院」が、中国共産党のスパイ活動の温床になっているとされた。米FBIの捜査対象になるとともに、カナダでは、大学教員委員会が「独裁政権の中国が監督し、助成金を出す機関」として孔子学院を認定した。これらを受け、米国では、シカゴ大学、ペンシルヴァニア州立大学等、カナダでは、マクマスター大学等で孔子学院が閉鎖された。

 日本でも、早稲田大学や立命館大学等、著名な大学内に孔子学院があるが、今まで問題にされたことがない。また、海外から「高度人材」を積極的に受け入れる施策が取られ、中国からも大学や研究機関に、さらに移住を推進する形で、日本国内に受け入れ、増加する傾向にある。米国やカナダで行われていることが日本では行われていないと言えるのだろうか。日本の場合、米国FBIのような組織がない中、誰がどのように捜査、取り締まるのか。科学技術立国として経済発展してきた日本であるが、世界第2の経済大国の座を中国に譲ったように、知らず知らずに高度技術の情報も抜かれているかもしれない。日中友好関係の重要性も鑑みながら、いかに日本の国益を守っていくかは喫緊の課題である。

【私の論評】中国が先進国の最新技術を剽窃したとしても、世界の製造業のリーダーにはなれない(゚д゚)!

上の記事で「千人の人材」計画とは、中国では元々「千人計画」といわれていたものです。これについては、以前このブログにも掲載したことがあります。そのリンクを以下に掲載します。
【瓦解!習近平の夢】「千人計画」は知的財産泥棒? “超ハイレベル人材”で科学的発展目論むも… 米は違反者摘発へ本腰―【私の論評】トランプ政権の“泥棒狩り”は、日本にとっても他人事どころか今そこにある危機(゚д゚)!
千人計画」のロゴ 

この記事は2018年11月のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
 入獄計画-。反中国共産党の華人らがこう皮肉るのが、2008年12月から実施されてきた「千人計画」である。海外の企業と大学に勤務する研究者や技術者、知的財産と技術保護担当の中国人幹部を対象者に選び、中国の科学的発展に貢献させる“超ハイレベル人材”のことだ。 
 今年6月、米国防総省は米下院軍事委員会の公聴会で、「同プログラムの目的は、米国の知的財産を獲得することにある」と警告した。さらに、マイク・ペンス米副大統領は、ハドソン研究所で10月4日に行った長い演説の中で、「中国の安全保障機関が、最先端の軍事計画を含む米国の技術の大規模な窃盗の黒幕」と言及した。
 中国人研究者の逮捕、解雇が続出するなか、在米学者の間では「FBIは千人計画のリストに基づいて、違反者を摘発している」との話も広がっているという。 
 この事態に焦った習近平政権は、「千人計画」の4文字が含まれた情報や名簿をウェブサイトから次々と削除しはじめた。さらに、「千人計画の面接時など、メールを使わず電話とファクスを使用する」「千人計画の文字を伏せるよう」などと、関係者宛てに注意喚起した。 
 だが、「千人計画青年項目評審工作小組」の通達を、「国家自然科学基金委員会計画局」が代筆した9月29日付の文書の存在が、台湾の中央通信社(10月5日付)などに暴かれてしまった。 
 もはや、「地下計画」と化した千人計画だが、もう一つ、中国では2011年8月から「外専千人計画」も稼働している。米国や日本、ドイツなどから選ばれた超ハイレベル人材のことだ。
 習政権は今後、中国人の超人材の存在を隠蔽しながら、「外専千人計画」に、より力を入れていくのだろうか?
暴動の記事で、「千人の人材」計画と呼ばれているものは、 まさしく「外専千人計画」のことなのでしょう。この「千人の人材」計画は継続され、上の記事にあるように、米国でその関連で逮捕者が出たということです。

元々の「千人計画」については、中国も比較的オープンにしていました。概要については、今でもサイトで見ることができます。その記事のリンクを以下に掲載します。


結局「千人計画」と「千人の人材」計画とは本質的には同じなのでしょうが、オープンにしておくと中国の意図があからさまになるため、あえてその計画を表に出さないようにして、隠密裏に実行するのが「千人の人材」計画なのでしょう。

中国は、従来から現在に至るまで、やはり先進国の技術を剽窃(ひょうせつ:盗むこと)し続けているようです。そうして、今でも日本の情報も剽窃し続けているのは間違いないです。これについては、日本も米国なみに厳しく取り締まるべきです。

さて、それはそれとして、この中国による技術の剽窃は実を結び中国は、「中国製造2025」をやり遂げ大成功するのでしょうか。私にはとてもそうは思えません。

たとえば、現在のスマホ等の代名詞ともなったiPhone、iPadについても、このブログで以前に何度か掲載したことがあります。詳細については、下の【関連記事】に当該記事を掲載しますので、興味のある方はご覧になってください。

実は、iPhone、iPad のようなデバイスを最初に開発したのは、ノキアでした。しかし、ノキアはこれらを市場に投入するのは時期尚早と考え、しばらく市場に導入していませんでした。

そこに、アップルがiPhone、iPadを投入して大成功を収めました。どのような最新技術を持っていたとしても、市場へ導入の時期を間違えれば、大失敗するのです。

携帯事業に可能性を見いだせなくなったノキアは、マイクロソフトに同事業を約54億ユーロで売却することを決断しまし。その後は通信機器メーカーとして再出発を果たし、当時ささやかれた倒産危機を逃れました。現在は次世代通信「5G」の重要プレーヤーとして注目されています。

しかし、そのアップルでさえ、市場への投入の時期を間違えていたとしたら、大失敗した可能性もあるのです。

IPhoneが市場に投入されてから、今年で13年目ですが、このiPhoneも最初はあまり売れてはいませんでした。私が最初に購入したのは、iPhone3GSですが、この頃まわりでiPhoneを持っている人はほとんどいませんでした。

実際ほとんど売れていないようで、本格的に日本売れるようになったのは、iPhone4あたりからだったと後から知りました。

実際iPhone3GSを使ってみて、その革新性に驚愕したものです。その後初代iPadを購入して、そのシンプルなデザインと、革新性にまた驚愕しました。特にiPhoneとiPadの連携の良さには下を巻きました(ただし当時は主にサードパーティーのAPPによる連携)。

まわりの人にその斬新さ、革新性を披露したのですが、購入する人はいませんでした。やはり、単に技術的に優れているというだけでは購入には結びつかないようです。

実際アップルも、数々の失敗をしています。例えばLisa(パソコン)、アップル・クイックテイク(デジカメ),ピピン・アットマーク(ゲーム機)、アップルニュートン(PDS:携帯情報端末),Macintosh TV(テレビがみられるパソコン)、等などです。探せばまだまだあります。

   アップル最大の失敗作ともいわれるMacintosh TV。テレビを見ているときは
   パソコンが使えず、パソコンとして使っているときにはテレビが見られない
   というあからさまな欠点のためにほとんど売れなかった

これらは、アップルの失敗作であって、ほとんど売れませんでした。ただし、失敗したパソコンLisaは、後に現在のパソコンにつながり成功を収めています。Macintosh TVも現在ではAppleTVがあるので、この失敗も生かせたのかもしれません。

しかし、いずれにせよ、企画がまずかったのか、導入時期を間違えたのか、そうした累々とした大失敗の上に現在のアップルがあるわけです。

ビジネスの大前提として、技術開発は、顧客の「問題解決」である必要があります。一方で、「問題→解決法」という発想からビジネスが立案されておらず、「解決法→問題」という論理展開になっている場合が存在し、実際の問題とズレが生じるためビジネスが失敗する事例がいくつもあります。

また同様に、企業などの運営側と消費者側での認識の違いにより、需要がきちんと洗い出せてないケースもよく存在します。

「顧客が本当に喜ぶもの(顧客視点)」と「顧客が喜ぶと思って作るもの(提供者視点)」は見える景色が異なり、往々にしてズレが生じます。

ある技術を使いたいという点が出発点になっている場合、顧客のニーズを「逆算」するという意味不明な工程が発生し、その結果、押し付けのようなサービスが完成してしまいます。技術視点からビジネスを考えるのは明確に悪手です。

正しい問題解決法を設定できたにもかかわらず、顧客が買う理由を見つけられない場合もあります。

ビジネスをストーリーレベルで落とし込めておらず、一見良いものに見えるなにかが出来上がった場合はこの現象が発生します。問題は解決できるのかもしれませんが、この場合、顧客が、必要ない、使わなくても良いと考えることが往々にあります。

世に出るべきタイミングでない状態で市場に導入されてしまい、新しすぎて失敗したケースも多くあります。

非常に新しい技術を現実化した場合、この失敗パターンに当てはまる場合があり、注意が必要です。現在でいえば、GoogleのGoogle Glass、任天堂のバーチャルボーイなどが代表例でしょう。

1857年刊行で政治や芸術を扱うアメリカ最古の雑誌、The Atlanticの編集主任であるデレク・トンプソン氏は、人はある程度馴染みのある品物を相対的に好み、全く新しいものが瞬間的に興味を得ることは無いと述べています。

身の回りの品物やサービスを見ても、最初は少しずつ認知を広げていったケースが全てではないでしょうか?先程のIPhoneの事例もそうです。

今でこそ流通の王者であるAmazonも立ち上がりには10年レベルでの時間を必要としました。ある新しい技術やサービスが市民権を得るまでには年単位の時間がかかるのです。

これは、業界全体でその新技術を育てていく必要があるということを指していますiPhoneはガラケーからスマホへの転換期にうまく乗ることができた結果だと言えるでしょう。

同時期にスマホブーム(携帯会社がガラケーから通信量の増えるスマホへ乗り換えを促したかった)、天敵の不在(日本製端末の力不足)などの後押しがなければ、日本でのここまでのブームは生じていなかった可能性もあります。Amazonもインターネット通販の進歩とともに頭角を表してきました。

Google Glassやバーチャルボーイは明確に市民権を得るところまで成熟させることができず失敗しました。Googleや任天堂といった超大企業ですら、最新の分野を開拓していくことが難しいことがわかります。

なぜGoogleの力を持ってしてもGoogle Glassを流行らせる事ができなかったのでしょうか。単純ですが、業界を成熟させるコストを「自腹で」捻出しなければならないからです。

そして、成熟させたとしてもそれが流行るとは限りません。一定の顧客ウケが見込めなければ撤退するのは当然でしょう。これがベンチャー企業であったりした場合はなおさら悲惨です。

初期コストはかさみますが、その投資をペイできるようになるには年月が必要です。相当な企業体力が必要なことが見て取れるため、個人やベンチャーで新しい技術を念頭においた開発は有効な打ち手ではありません。

一方で、最新のビジネス発想を持ち、いち早く火付けを行うことは非常に重要です。一番手と二番手が同様の打ち手を実施した場合、二番手が相当画期的なターゲッティングをしない限り、基本的には一番手が有利です。二番手は市場から基本的にはパクリに見えてしまいます。

これは当たった市場に後から下心で参入しているのですから当たり前のことでもあります。二番手は後出しジャンケンである優位性を最大限に利用しなければ一番手の牙城を崩せません。

成功する一番手になるには顧客の需要に沿うことに加え、提供するサービスや製品に、適切なわかりやすさが同時に実現できている必要があります。これは、企業同士が日々切磋琢磨し、厳しい競争をした挙げ句の果に実現できるものです。

少し、技術の話が長くなってしまいましたが、結局何が言いたいかというと、このような難しい製品の開発が、中国にできるかということです。



中国は国家レベルで最新技術を他国から剽窃して、それで「中国製造2025」を達成しようとしていますが、名だたるノキアやアップルのような企業でさえ、大失敗しているというのに、中国だけがそれに成功するとはとても思えないのです。

そもそも、中国の体制は共産主義というか現状では国家資本主義とでもいうべき体制です。しかし、現状では建国以来選挙もなされておらず、そのため厳密な意味では、先進国でいうところの政治家は存在せず、存在するのは官僚ばかりです。

これは、共産主義から、国家資本主義に変わってからも同じです。官僚が産業の方針を定めるということ自体は変わっていないのです。中国の官僚が産業の方針を定められるのでしょうか。もしそれに成功するというのなら、共産主義も成功していたはずです。しかし、現実には共産主義は失敗して崩壊しています。

さらに、中国には厳密な意味での民間企業も存在しません。すべて中国共産党の傘下にある状況です。いわゆる民間企業は国営企業や国有企業よりは管理が若干ゆるいというくらいの違いがあるだけです。

そのような企業が、先進国の民間企業のように互いに競い合って「顧客が本当に喜ぶもの(顧客視点)」を開発できるでしょうか。しかも、その顧客とは、世界中の顧客です。

中には、中国と同じような独裁国家の国々もありますから、そういう国々の顧客(あるいは政府)が喜ぶものを中国は製造できるかもしれませんが、それ以外の国々の顧客視点を理解して、それに立脚して製品開発などできるわけがありません。

となると、世界の殆どの国々が独裁国家ではない現状では、独裁全体主義国家である中国にはとても、世界の製造業のリーダーになることはできるとは思えないのです。

たとえ5G技術だけを駆使しても、他国の「顧客が本当に喜ぶもの」である製品やサービスを生み出すことができずに、立ち往生し、結局何の利益も生み出せず、負債の山を築くことになるのではないでしょうか。

無論だからといって、中国による他国の技術の剽窃を許せと言っているわけではありません。それば、法治国家である民主主義の国々では到底許されることではありません。それは、新たな技術を開発した開発者の本来の権利を奪うものです。厳しい取り締まりをして、違反していれば、厳しい罰を与えるべきです。実際米国は対中冷戦により、それを実行しつつあります。

しかし、先進国の厳しい取り締まりの編みの目を潜って、たとえ中国が先進国の最新技術を得たとしても、それだけでは製造業のリーダーになることはできません。そのような能力は中国の官僚にはありません。

なぜアップルやノキアにそのような能力があるかといえば、彼らは、必死に他社と競争して、切磋琢磨して、努力して、イノベーションを実現しているからこそ、今日の地位があるのです。それだけが、イノベーションを生み出すのであって、中国のようなやり方ではイノベーションは生み出せません。

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2015年11月4日水曜日

【異形の中国】中国に離反し始めたアジアの国々 米国イラ立つ軍拡路線も経済失速で陰り ―【私の論評】南シナ海で本当に危ないのは、中国人民解放軍の身の程知らずの青年将校?


中国が埋め立てを強行する南シナ海・ミスチーフ(中国名・美済)

中国の軍事的脅威は日増しに強くなった。

ついに米国は10月27日から、南シナ海・スプラトリー(南沙)諸島のスービ(渚碧)礁や、ミスチーフ(美済)礁周辺に、イージス駆逐艦「ラッセン」を航行させ、示威行動に出た。中国が「領土」と強弁する人工島の12カイリ(約22キロ)以内を、120キロにわたって監視・哨戒し、韓国を除くアジア諸国は米国を支持した。

すでに半年前に、ペンタゴン(米国防総省)は「準備はできている」と、オバマ大統領に報告し、命令を待っていたのである。

「今後も何度も激しく哨戒は続くだろう。フィリピンや、ベトナム、オーストラリアが加わった共同作戦も考えられる」と消息筋はいう。

南シナ海には、300億トンの石油と、16兆立方メートルの天然ガスが埋蔵されていると推計される。資源奪取のために中国が7つのサンゴ礁を埋め立てて、ベトナムやフィリピン、ブルネイ、マレーシア、インドネシアと小競り合いを続けてきた。

他方で中国は「一帯一路」を掲げて、「海のシルクロード」構想を打ち上げているが、協力を約束してきた国々が離反し始めた。

まず、ミャンマーは「反中国」に転び、スリランカは中国が建設していた人工島プロジェクトを見直すことにした。中国の構想に大きな誤算が生じた。9月3日の「抗日戦争勝利70周年」記念の軍事パレードに、両国は代表を派遣しなかった。

だが、中国はそんなことではひるまない。

中国は南インド洋にあって、インドを南西から地政学的に脅かすモルディブ群島に濃密に接近した。これはインドを刺激する。ついで中国は国際的な海賊退治で協力行動の拠点であり、独裁国家であるジブチに目を付けた。

米軍はジブチの空港と港湾を借り受け、巨大な軍事基地(=レモニエ空軍基地とオボック海軍基地)を設営しているが、米国務省はゲレ大統領の独裁を強く批判している。このため、ジブチは中国にも軍事基地建設を持ちかけた。渡りに船の中国は「海のシルクロード」構想の一環として、ジブチを活用する方向にある。

さらに中国は、ケニアやタンザニア、マダガスカル、セーシェル、モザンビーク、ジンバブエから、アフリカ大陸の最南端・喜望峰をまたぎ、南西アフリカのナミビア、アンゴラへまで伸ばす壮大な戦略に傾いている。

米国のイラ立ちは尋常ではない。

しかし、上海株暴落を契機とした経済失速によって、中国のこれまでの軍拡路線は維持が難しくなったのも事実である。

■宮崎正弘(みやざき・まさひろ) 評論家、ジャーナリスト。1946年、金沢市生まれ。早大中退。「日本学生新聞」編集長、貿易会社社長を経て、論壇へ。中国ウォッチャーの第一人者として健筆を振るう。著書・共著に『私たちの予測した通り、いよいよ自壊する中国!』(ワック)、『「中国の終わり」にいよいよ備え始めた世界』(徳間書店)など多数。

【私の論評】南シナ海で本当に危ないのは、中国人民解放軍の身の程知らずの青年将校?

中国の人民解放軍は、現在までのところ、米軍には全く太刀打ちできません。中国の現在の軍事力では、尖閣付近の海洋や空域では、自衛隊にも勝てない水準です。無論、これにはある条件が必要です。その条件とは、日本の自衛隊がこれらの海洋や、空域で自由に行動できるという条件です。

いまの自衛隊は、軍隊のようであって、軍隊ではなく軍隊もどきです。だから、尖閣付近で、実際に戦闘が起こったときに、他国の軍隊のようにネガテイブ・リスト(やってはいけないことをリスト化し、それ以外は勝つためには何をやっても良いという方式)で自由に動くことができれば、日本の自衛隊は、この領域で人民解放軍に負けることはありません。

ただし、現在の自衛隊は、ポジティプ・リスト(やっていいことをリスト化し、たとえ勝つためであつても、それ以外のことはしてはいけないという方式)で手足を縛られた状態では、有事の際には自由に動けず、これが相手に隙を与えて、負けるということも考えられます。

とはいいながら、日本の自衛隊が自由に行動できるものとすれば、現在の中国の人民解放軍の実力では、軍事技術的にも、士気の面でもとても、自衛隊の敵ではありません。それは、ほかならぬ中国の人民解放軍の幹部は全員が承知していることです。

だからこそ、中国側も、軍艦ではなく、漁船や公船など、ほんんど武装していない船で、日本の領海の侵犯をしているのです。もし、武装艦を派遣すると、日本の海上自衛隊と衝突して、大規模な衝突になってしまえば、とても勝ち目がなく、後退することを余儀なくされることは最初からわかっているのです。

日本の自衛隊に対しても、このような有様ですから、南シナ海でたとえ米軍がイージス艦を派遣しても、彼らには全く歯がたちません。中国にもイージス艦もどきがありまずか、米国のイージス艦とは、武装、電子機器、巡航速度の点で全くかないません。それこそ、このブログにもたびたび過去に掲載してきたように、人民解放軍が米軍に挑めばほとんど自殺行為になります。

そのことは、人民解放軍の上層部や、中国共産党政府の幹部は十分に熟知していると思います。だから、米国のイージス艦を派遣して南シナ海をパトロールしても、滅多なことでは、人民解放軍はこれに手を出すということはしない、というより、できないでしょう。だから、日本に対しても、まずは本格的に戦闘を挑むということはないとは思います。

とは、言いながら、懸念事項があります。それは何かといえば、人民解放軍の青年将校たちです。彼らは、江沢民時代以降の苛烈な反日教育を受けて育った世代です。

現在の苛烈で体系的、組織的な反日教育は江沢民がはじめた

中国の若手将校の動向が話題になることは少ない。しかし、昨年アメリカ企業にハッカー攻撃を仕掛けたとして、米司法省が、中国人民解放軍の若手将校「5人」を産業スパイの罪で起訴したことが発表されました。

米司法省のホルダー長官は、「中国人民解放軍の将校5人が、5つのアメリカ企業と労働組合にサイバー攻撃を仕掛け、機密情報を盗んだ。司法省は彼らをサイバー攻撃の疑いで起訴した。このハッカー攻撃は、アメリカ企業を犠牲にして、中国の国営企業など、中国に利益をもたらすために行われたものだ」と発表しました。
アメリカの企業と労働組合にサイバー攻撃を仕掛けた5人の青年将校
しかし、中国の外交部は例によって「中国は、アメリカによるサイバー攻撃の被害者である。これは捏造だ。中国は、アメリカに関連事実を説明し、行動を停止するよう求める」と反発しました。何を指摘されようと、絶対に非は認めず、反対に「相手に罪をなすりつける」のが中国の常套手段です。

彼ら青年将校は、肥大化する人民解放軍の中でもエリート集団であり、同時に「怖いもの知らず」です。文革や極貧時代の中国を知らず、大国となって傍若無人の振る舞いをする中国しか知りません。

どの国でも青年将校は怖いものです。血気盛んな若手のエリート将校は、時として歯止めがきかなくなる場合があります。理想論を闘わせ、やがてそこに向かって突き進もうとする者が出てきます。

今、中国は「日本が世界の戦後秩序を破壊しようとしている」と、世界中でキャンペーンを張っています。日本による「戦後秩序への挑戦」が、彼らのキャッチフレーズです。彼らには、日本が本当に“悪”にしか見えず、それは“憎悪の対象”でしかありません。視野の狭い青年将校がどんな考えを持っているかは、容易に想像がつきます。

もともと中国国内のツイッターでは「敗戦国が何を言うか」「いっそ原爆を日本に落とせ」と、盛んにやり取りされています。日中国交回復以後、3兆円ものODAを中国につぎ込み、さらには民間レベルでの「技術協力」によって、ひたすら中国のインフラ整備に力を注いだ日本。しかし、そのことを全く知らない青年将校たちの「時代」が中国に訪れていることを忘れるべぎではありません。

青年将校らの受けた苛烈な反日教育には、史実にそぐわない一方的な“日本悪者論”に基づくものが数多いです。それを真に受けた世代が、現在中国の人民解放軍の現場で中核的存在になっているのです。

自分たちの論理で、より過激な道を歩もうとする青年将校たちほど怖いものはありません。「“小日本”に核ミサイルをぶち込め」という意見がネットで氾濫する中国で、徹底した反日教育を受けた人民解放軍の青年将校たちは、今後、軍をどう導いていくのでしょうか。

日本の防空識別圏に大きく踏み込む形で中国が昨年一昨年11月に一方的に設定した空域で、中国機は、日本の海上自衛隊機と航空自衛隊機に対して、それぞれ、およそ50メートル、30メートルまで「並走するように近づいてきた」という出来事がありました。

言うまでもないですが、30メートルから50メートルまで近づけば、パイロットはお互いの顔がはっきりと見えます。つまり、相手の表情を見た上で、「おい、やるか? やるならやってみろ」と、事実上、“喧嘩を売ってきた”ことになります。

中国初の女性戦闘機パイロット
幸いに自衛隊機はそんな挑発には乗りませんでした。日本の防空識別圏に重なる形で中国は一方的に新たな防空識別圏を設定したのですから、中国にとってそこはあくまで「自国の空域」なのです。要するに彼らには、「日本が中国の防空識別圏に侵入してきた」という論理になります。

中国は、勝手に「領空・領海設定」をして、勝手に自国の領空(領海)だと「主張」し、そして相手には「有無を言わせない」。現在の中国が建国されて以来、周辺国(周辺地域)と紛争を繰り返し、国内でも粛清と弾圧ですべてを支配し、さらにはここ10年で4倍に国防予算を膨張させた中国の面目躍如というところかもしれません。「政権は銃口から生まれる」という毛沢東の言葉通りの国家方針は、今でも変わりません。

これらの領空で、操縦桿を握っているのは、彼らエリート意識に溢れた青年将校たちであす。何百回、何千回とつづいていく「スクランブル(緊急発進)」の中で、「いつ」「いかなる」不測の事態が勃発する可能性は十分にあります。

そうして、これは今回の米軍の南シナ海での示威行動に対しても、あてはまります。彼ら青年将校の論理からすれば、米軍のイージス艦は、中国の領海を侵犯している憎むべき相手以外の何ものでもありません。

日本の自衛隊を訪問した中国人民解放軍青年将校ら(左)
さらに、始末に悪いことに、中国ではここ数年最新鋭の戦闘機や艦艇、潜水艦、兵器などを導入しています。情報統制されて、世界を知らない中国の青年将校らは、ほとんどが一人っ子であり、子どもの頃は小皇帝などとも呼ばれ、自己主張の激しい性格の持ち主です。そうして、彼らは人民解放軍の世界での位置づけを知りません。自衛隊はおろか、米軍と同水準かそれ以上と思い込んでいる者も多いです。

彼らが、現場でいつ戦闘に挑みだすか、保証の限りではありません。彼らにとっては、現代の先進国の軍事技術からすれば、数十年遅れた軍事技術でつくられた、空母や、戦闘機、艦艇、潜水艦でも最新鋭のものです。彼らから、すれば、それら最新鋭の軍事力を用いて、自分たちが挑めば、できないことはないと考えるに違いありません。

このような中国の青年将校の思い上がりを是正するには、南シナ海で最初に中規模程度の衝突があったほうが、良いのかもしれません。そうなると、人民解放軍はなすすべもなく、海の藻屑と消えるでしょう。それが、人民解放軍の内部で語り継がれるようになれば、彼らも妄想から覚めることでしょう。
このような、世界情勢が目の前にもあるにもかかわらず、平和ボケした日本人の多くは、憲法解釈の変更による、集団的自衛権の限定的行使を目途とする安保法案を「戦争法案」とレッテル貼りして、違憲などとして、反対する有様です。

しかし、平和ボケしたわれわれ日本人も、不測の事態への「覚悟」だけは持っておくべき時代が来たことだけは間違いありません。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか。

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