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2018年12月29日土曜日

レーダー映像公開…日米、韓国に金融制裁の可能性も? 米政府関係者「われわれが離れるとき韓国は焦土化する」 ―【私の論評】日米で韓国に対して金融制裁を発動し金融面で焦土化することも視野に(゚д゚)!

レーダー映像公開…日米、韓国に金融制裁の可能性も? 米政府関係者「われわれが離れるとき韓国は焦土化する」 


文在寅大統領

 韓国海軍の駆逐艦が、海上自衛隊のP1哨戒機に、攻撃寸前の火器管制用レーダーを照射した問題は、米トランプ政権が水面下で進める「米韓同盟消滅」の決定打となるのか。北朝鮮への制裁緩和を訴える文在寅(ムン・ジェイン)政権に対し、日米共同の金融制裁という報復措置がありうると専門家は指摘。米政府関係者は「われわれが離れるとき、韓国は焦土化する」と不気味な予告をしている。

 レーダー照射について「韓国では、日本とのもめ事を起こす文政権に対する批判がある一方、『日本の哨戒機を撃墜すべきだった』と、日本との対決を求める声もある」。長年の韓国ウォッチャーとして知られ、『米韓同盟消滅』(新潮新書)などの著書がある元日本経済新聞編集委員の鈴置高史(すずおき・たかぶみ)氏はこう解説する。

 「もともと韓国軍が『親日』だったことはない。『日本撃滅』のスローガンがかかっている海軍基地もあると聞く。北朝鮮との緊張が緩和する中、韓国海軍が日本海に目を向けるのは当然だろう」というのだ。

 ハリス駐韓米大使は11月、韓国誌『月刊朝鮮』で「米韓同盟は確固として維持されているが、当然視してはいけない」と異例の警告を発した。レーダー照射問題は、米政権側に募った韓国に対する不信感を一段と際立たせることになる。

 文大統領は、9月に米国、10月中旬に欧州を歴訪し、一貫して対北制裁の緩和を呼びかけるなど、「親北」姿勢を強めてきた。これを受けて米政府関係者のヒアリングを受けた鈴置氏は「米政府関係者は『なぜ韓国はわれわれをいらつかせるのか』と聞いてきた」と振り返る。

 「特に米国を怒らせたのは、欧州に制裁緩和を持ちかけ、米国を孤立させようとしたことだ。当然、欧州各国も応じるわけはなく、『韓国は何を考えているのか』と驚いた。世界中の専門家が韓国をけげんな目で見るようになっている」

 鈴置氏以外の日本人の専門家と情報交換した米政府関係者から、「われわれが韓国を離れるときは、このままでは離れない。焦土化する」といった発言があったという。

 「経済面でボロボロにするということだろう。韓国が北朝鮮の別動隊だということを世界中の人が見抜いており、韓国も北に連座する形で制裁対象になってもおかしくないという見方が強まっている」という鈴置氏。文大統領は南北統一という野心を隠しておらず、「南北共同の核保有は、米国以上に日本に脅威となる。日米共同の制裁もあり得る」というのだ。

 ここにきてレーダー照射問題が浮上。日本が韓国に「制裁」に出るとの見方もある。その場合、「韓国に報復するならまずは経済、なかでも金融に即効性がある。米国も韓国への『お仕置き』のタイミングを見計らっている」(鈴置氏)。

 米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを進めることで、韓国から資本が流出する懸念が一段と強まっている。景気や雇用が低迷するなかで、韓国銀行(中央銀行)は11月末、政策金利を引き上げたが、米国も今月、追加利上げした。米国に追随して利上げを進めると、韓国が抱える家計負債などの問題が再燃する恐れもある。

 韓国に対する金融制裁について鈴置氏は、「米国系の銀行が韓国から資金を引き揚げるという情報をマーケットに流す、日本が半導体製造装置を売らない、日米の銀行が一緒に、韓国がドル調達をできないようにするなど手口はいくらでもある。韓国国債の格付けが下がるようなことがあれば、市場は資本逃避(キャピタルフライト)に直面するとみるだろう」と話す。

 「ロックオン」されているのは韓国の方かもしれない。

【私の論評】日米で韓国に対して金融制裁を発動し金融面で焦土化することも視野に(゚д゚)!

防衛省は28日、火器管制レーダーの照射問題で映像を公開しました。韓国側が照射をかたくなに否定しているためです。日本の主張の正当性を訴えるとともに、真相の解明を迫る狙いがあります。以下がその映像です。



「海上自衛隊が適切な行動をとったことを国民に理解してほしい」

岩屋防衛相は28日の記者会見でこう述べ、映像公開の意義を強調しました。

火器管制レーダーの照射は20日、日本海の能登半島沖で発生。防衛省は21日に公表しましたが、韓国国防省は記者会見で火器管制レーダーの照射を否定しました。27日に日韓の防衛当局間で行ったテレビ会議でも、韓国側は事実だと認めませんでした。

約13分間の映像は冒頭、韓国海軍の駆逐艦や海洋警察の警備救難艦、北朝鮮漁船とみられる遭難船などに、海上自衛隊のP1哨戒機が近づく様子から始まっています。映像開始から6分すぎ、駆逐艦から約5キロ離れた地点で、哨戒機が火器管制レーダーの電波を初めて探知しました。

哨戒機の乗員の一人は「避けた方が良いですね」と緊迫した様子で声を上げ、機長が駆逐艦の大砲の向きを確認するように指示した。哨戒機が回避行動をとった後、探知音を聞いていた乗員が「めちゃくちゃすごい音だ」と強い電波に驚く場面も記録されています。

その後、乗員は韓国駆逐艦に対し、三つの周波数で「行動の目的は何ですか」などと英語で問い合わせましたが、韓国側からの応答はありませんでした。

現場は好漁場の「大和やまと堆たい」の周辺で、大量の北朝鮮漁船によるイカの密漁が問題となっています。日本政府関係者は「韓国軍は北朝鮮漁船の救助に普段から関わっている可能性があり、日本に知られたくなかったのではないか」と分析しています。

しかし仮にそうだったとしても、ではなぜこのような常識はずれの事案が起きたのでしょうか。事案発生当時、問題の韓国艦は日本海中央部の大和堆に近い日韓中間水域(11月15日に起きた日韓漁船衝突事故の現場付近)にいたとされます。韓国艦は当該海域で、北朝鮮の木造漁船(しばしば工作船としても使われる)の監視と、通常の訓練を行っていたと思われます。韓国側が主張する「北朝鮮漁船の救難活動」も、あったとすればその中で行われたのでしょう。



一方、海上自衛隊のP‐1は能登半島沖の、日本の排他的経済水域(EEZ)の上空にいたとされています。当該機は厚木の第4航空群の所属で、こちらも厚木航空基地から日本海側へ進出し、そこから日本の領海線に沿って回る通常の哨戒活動をしていたと思われます。

具体的には目視(光学式観測)と対水上レーダーによる、海上哨戒活動です。P‐1の水上レーダーは非常に高性能で、海上に浮かぶ多数の船舶の大きさや形、動きなどをすべて把握できます。

軍事秘密なので公表はされていませんが、一説には、水面から数センチほど顔をのぞかせた潜水艦の潜望鏡さえも探知できるらしいです。そうした性能を使って、北朝鮮船による沖合での安保理決議違反である瀬取り行為の監視も行っていたでしょう。

韓国艦も自衛隊機も、お互いに通常の任務中であったといえます。その中でなぜ、あのような事案が発生したのでしょうか。

おそらくは韓国艦が何らかの監視活動、あるいは救難活動を行っているときに、P‐1哨戒機の航路に過剰に反応したのではないでしょうか。軍艦は常に、周辺の航空機の動きを対空レーダーで監視しており、軍用の敵味方識別装置(IFF)や民間用のトランスポンダを用いて、レーダーでとらえた航空機がどこに所属するのか、友軍か否かも把握できます。ここまでは、どんな艦でも行う問題のない行為です。

ところが、火器管制レーダーの照射は違います。ビームが目標に照射された時点で、いわゆる「ロックオン」という、艦の射撃指揮システムが目標を正確に把握した状態が成立します。照射された航空機では、システムが画面表示と警告音によって、ロックオンされた事実を乗組員に伝えます。

2013年に中国海軍のフリゲート艦が海自の護衛艦に火器管制レーダーを照射したときもかなりの騒ぎになりましたが、このときは敵からのものであり、あり得ることであると多くの国民が考えたかもしれません。

しかし、今回は「友軍」から照射されたということで、現場では意味不明としか言いようがない状況だったと思います。そういう状況のもとでも、防衛省が公開した動画ではP‐1の乗組員は終始冷静で、レーダー波の周波数確認を含む必要な任務を高い確度で遂行していたのが印象的できした。

もっとも、実際にミサイルを発射できるシークウェンス(手順)にまで入っていた可能性は低いです。艦のシステムがIFF(敵味方識別装置)で友軍機と認識した航空機を、ミサイル攻撃の目標に設定することは基本的にできない仕組みになっているからです。

しきかしそもそも、友軍機に火器管制レーダーを照射する段階で、途中のシステムの警告(味方だが大丈夫か、といった確認を求められる)を手動でオーバーライド(上書き)する必要があり、そこに何らかの「人為」が働いたことは間違いないです。その人為を、一体誰が行ったのでしょうか。




火器管制レーダーを操作するのは、艦のCIC(戦闘指揮所)の射撃管制員ですが、通常は艦長あるいは副長の命令がなければ照射は行われないです。少なくとも、自衛隊で言えば砲雷長や砲術長など火器管制に関わる幹部の指示が必要です。

さらに火器管制レーダーを使用しているという事実は、CICの全員に伝わります。末端の人間がこっそりやれるような行為ではないですし、誤って照射した場合はすぐに制止が入るはずです。もしそのような事象であれば、「レーダー員のミスだった」と韓国側が公表して謝罪すれば済む話であったはずです。

おそらくは、もっと上の階級の人間が関わっているために、そうした簡単な処理ができなかったということでしょう。交戦規則などの武器使用に関する規定をここまで無視できるのは、やはり艦長か副長クラスなのではないかと思われます。

「のぞきやがってけしからん、ひと泡吹かせてやれ」と、そのクラスの人間が命令したというのが、一番ふに落ちるシナリオです。

国際的な慣習において、公海上の軍艦は旗国(帰属する国家:今回の事例では韓国)以外のいずれの国の管轄権も及びません。一つの独立国と同等の扱いを受けます。その艦長の権限と責任は、いわば一国の主に等しいのです。もし艦長あるいは副長クラスの上級幹部が今回のような暴走を行ったのだとすれば、韓国軍には指揮統制上の重大な問題があるということの証明になってしまいます。

実際、韓国側のこれまでの対応を見る限り、韓国国防部も大統領府も、何が起きているのかを把握する能力がないように見える。文民統制や軍の指揮統制という面から見れば、末期的症状をきたしているといって良いでしょう。

韓国海軍士官学校の若者たち 2009年12月13日


クァンゲト・デワン」級のような旧型艦は一般に、若手艦長の最初の任官先になることが多いです。そして今の韓国の若手の職業軍人は、反日教育の「毒」が回った世代です。

今回の事案の背景には、文在寅政権のもと韓国国内でますます高まっている「日本には何をしてもいい」という韓国国内の空気感の影響もあるでしょう。そして西太平洋の安全保障体制の中で日本と韓国のつなぎ役を果たしてきた米国は、韓国との同盟関係を加速度的に細らせつつあります。韓国が軍事政権から民政に移行して以来、長年にわたってありとあらゆる工作活動を韓国で展開してきた北朝鮮にとって、これら日韓/米韓の離間はまさに望み通りの結果のはずです。

そして当の韓国軍は、本来なら優先順位がはるかに高いと思われる北朝鮮軍の南侵やミサイル攻撃に備える装備より、強襲揚陸艦やイージス艦、弾道ミサイルや巡航ミサイルを発射可能なミサイル潜水艦、射程500キロ以上の新型弾道ミサイルといった、日本への対抗を主眼とするかのような装備の充実に力を入れています。日本にしてみれば、朝鮮半島への軍事侵攻などもはやありえない選択肢なのですが、韓国国民の認識は異なり、それが軍内部にも反映しているのでしょう。

韓国海軍は、12月13日に島根県の竹島の周辺海域で、島の防衛を想定した定例の合同訓練を14日までの日程で行っていました。島の防衛というからには仮想敵国は日本です。その延長線上に今回の「ロックオン」があるのでしょう。

韓国の女子中学校の生徒名で、日本の竹島教育を批判するハガキ41通が島根県内の中学校に届きましたが、まるでカルト教団のように反日教育を洗脳される生徒たちが哀れです。反日教育を受けて入隊すれば、自衛隊機に向け「ロックオン」くらい、彼らの愛国精神からやるのは当然なのかもしれません。

日米韓の協調関係が終わり、核武装した南北統一軍が成立する可能性への備えを、わが国はそろそろ真剣に考え始めるべきなのかもしれないです。

それ以前に、今回の事件に関して韓国側がいつまでも、謝罪や遺憾の意を評さないというのであれば、この記事の冒頭の記事にもあるように日米で韓国に対して金融制裁を発動して、それこそ韓国を金融面で焦土化するということも視野にいれるべきです。

南北統一が成立したときには、韓国は経済的には何の価値もない状況にしておくべきです。韓国など経済的に手助けして、経済を良くした状態で、南北が統一されてしまえば、意味もなく敵に塩を送ることになります。

金正恩や習近平を喜ばせる必要はありません。

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2018年9月25日火曜日

トランプ大統領の“切り札”か…中国、北朝鮮の「隠し資産」丸裸 米国、世界の“制金権”握る「無血戦争」のシナリオとは? ―【私の論評】米対中国貿易戦争は単なる警告であり、前哨戦に過ぎない!本命は本格的な金融制裁(゚д゚)!

トランプ大統領の“切り札”か…中国、北朝鮮の「隠し資産」丸裸 米国、世界の“制金権”握る「無血戦争」のシナリオとは? 

国際投資アナリスト大原浩氏

 貿易で中国の習近平国家主席と、非核化で北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長と対峙(たいじ)するトランプ米大統領は、独裁国家の権力者がひれ伏す切り札を握っている-。こう指摘するのは金融市場に詳しい国際投資アナリストの大原浩氏だ。連邦捜査局(FBI)や中央情報局(CIA)の監視網を背景にした米国の「金融支配」により、独裁者の隠し資産は丸裸にされるという。「無血戦争」のシナリオとは-。

 相変わらず米中貿易戦争が話題になっているが、その議論の中で抜け落ちているのが「貿易戦争」は本当の殺し合いをする戦争の一部であるということである。

 現在、米国の徴兵制は制度そのものは存続しているが、議員の息子が徴兵され、ベトナム反戦運動が激化したこともあって停止している。

 その米国が、自国の若者の血を大量に流す戦争を長期間続行するのは、世論対策も含めて簡単ではない問題である。北朝鮮や中国などの独裁国家は、そうした事情を見透かしているフシがある。

 しかし米国は、どのような国も太刀打ちできない最新兵器に裏打ちされた強大な軍事力だけではなく、血を流さない戦争=「無血戦争」においても圧倒的な強さを持っている。

 いわゆる購買力の高い「消費者」の立場から「売り手」である中国を締め上げる「貿易戦争」もその一つだし、本当の戦争で言えば「海上封鎖」に相当するような「経済制裁」も、ボディーブローのようにじわじわ効いてくる効果的な戦略だといえる。

中国への攻勢を強めるトランプ大統領

 しかし、「無血戦争」における米国最大の武器は「金融」だ。世界の資金の流れを支配しているのは米国であり、戦争用語の「制空権」ならぬ「制金権」を米国が握っているというわけだ。

 例えば、経済制裁の一環として、北朝鮮やイランの高官の口座を凍結したというようなニュースを聞くとき、「どうやって口座を調べたのだろう」という疑問を持たないだろうか?

 このような人物が本名で海外に口座を開くとは考えにくく、当然偽名やトンネル会社などを使用する。しかし、そのような偽装をしても、FBIやCIAは、口座間の資金の流れを解析して、本当の口座の持ち主をすぐに特定できる。

 この基本技術は、筆者が執行パートナーを務めるシンクタンク「人間経済科学研究所」の有地浩・代表パートナーが30年ほど前にFBIで研修を受けたときにはすでに実用化されていた。

 その後、テロ対策、マネー・ロンダリング対策で銀行口座開設や送金の際の本人確認が非常に厳しくなったのは読者もよくご存じだと思うが、これは米国の指示によるものだ。日本だけではなく世界的な現象なのである。

 少なくとも米国の同盟国・親密国においては、どのような偽装をしても米国の監視の目からは逃れられないということである。以前スイスのプライベートバンクの匿名性が攻撃され、口座情報が丸裸にされたのも、この戦略と関係がある。

 そして、北朝鮮や中国など、米国と敵対している国々のほとんどが、汚職で蓄財した個人資産を自国に保管しておくには適さない。いつ国家が転覆するかわからないためで、米国やその同盟国・親密国の口座に保管をするしかないというわけだ。

 米国と敵対する国々の指導者の目的は、国民の幸福ではなく、個人の蓄財と権力の拡大であるから、彼らの(海外口座の)個人資産を締め上げれば簡単に米国にひれ伏す。

習近平国家主席、金正恩氏(右から)は全面降伏するのか

 孫子は「戦わずして勝つ」ことを最良の戦略としているが、まさに金融を中心とした「無血戦争」で、連勝を続けているトランプ氏は、そういう意味では歴代まれに見る策士の才能を持つ、もしくは優秀な策士のブレーンを持つ大統領なのかもしれない。

 そして、中間選挙でのトランプ氏の行く末がどうなろうと、長年準備されてきた「対中無血戦争」は、中国が全面降伏するまで延々と続くだろう。

 ■大原浩(おおはら・ひろし) 人間経済科学研究所執行パートナーで国際投資アナリスト。仏クレディ・リヨネ銀行などで金融の現場に携わる。夕刊フジで「バフェットの次を行く投資術」(木曜掲載)を連載中。

【私の論評】米対中国貿易戦争は単なる警告であり、前哨戦に過ぎない!本命は本格的な金融制裁(゚д゚)!

米国では、ドラゴンスレイヤー(対中国強硬派)ですら、中国と軍事衝突するのは現実的ではないとしています。となると、米国はこれからも、さらに貿易戦争を拡大していくことになります。実際、後もう少しで拡大できなくなる程度に拡大しています。

ただし、貿易戦争は米国にとっては、景気減速を招くこともめったにないです。米国の1930年の悪名高いスムート・ホーリー法による高い関税でさえ、大恐慌にせいぜい少し影響した程度です。中国も打撃を受けますが、それで現在の中共(中国という国という意味ではなく中国共産党という意味)が崩壊するほどのものにはならないことでしょう。


一方、国際的な金融混乱が経済への下押し圧力を強めた例には事欠かないです。大恐慌をはじめ、約10年前のリーマン・ブラザーズ破綻に至るまでそうです。

こうした危機は通常、民間セクターの暴走(リスクの高い国家や住宅購入者への過剰な融資など)を発端としています。ところが、触媒の役目を果たすのはどこかの政府の政策であることが多いです。

フランス政府による金の備蓄が大恐慌につながったたほか、米連邦準備制度理事会(FRB)のポール・ボルカー議長(当時)の徹底したインフレ抑制策が1980年代の中南米債務危機をもたらした例などがあります。

米政府はかねて、外国の危機を抑えることは米国の長期的な国益になるとみなしてきました。1982年と1995年にはメキシコに支援の手を差し伸べ、1997年にはアジア通貨危機を封じ込めるために国際通貨基金(IMF)と協力しました。2008年には住宅ローンによる金融危機の打撃を受けた国々の銀行を下支えするため、FRBが各国の中央銀行を支援しました。

米国が故意に経済的苦痛を与えるとき、それは戦略地政学的な理由によるのが普通です。そして可能な限り、同盟各国と協調して行動します。

最近では、ドル中心の銀行システムから北朝鮮とイランを締め出すことにより、両国に大きな打撃を与えています。ロシアによるウクライナ侵攻や米選挙への介入、英国在住のロシア元スパイとその娘の毒殺未遂などを受け、米欧が課した経済制裁はロシア経済に大きな混乱をもたらしています。

ここまで大きな制裁でなくても、米国は民間銀行にさえ金融制裁を課することがあります。マカオのバンコ・デルタ・アジア(匯業銀行)という銀行は、2005年9月、北朝鮮の資金洗浄に関与していることが発覚し、米国との送金契約が消滅、破綻危機に陥り国有化されました。

バンコ・デルタ・アジアのアジア本社

また、フランス最大の銀行であるBNPパリバは、2014年6月米国の制裁対象国との取引を理由に、1兆円近い制裁金支払いと為替関連取引の1年間の禁止を命じられ、大打撃を受けました。

米国にとっては、以前から金融は他国に対して制裁をするときにかなり有力でしかも手慣れたツールなのです。

超大国といわれるアメリカの一番の強さは、金融支配にあります。現在の世界の金融体制は、ブレトン・ウッズ体制に端を発します。これは、第二次世界大戦末期の1944年にアメリカのブレトン・ウッズで連合国通貨金融会議が開かれ、国際通貨基金(IMF)や国際復興開発銀行(IBRD)の設立が決定されたものです。

当時、世界の金の80%近くがアメリカに集中しており、アメリカは膨大な金保有国でした。その金と交換できるドルを基軸通貨とし、他国の通貨価値をドルと連動させるという仕組みで、金・ドル本位制ともいわれます。

その後のベトナム戦争で、アメリカは戦費調達のために膨大な国債を発行し、戦争後は巨額の財政赤字に苦しみました。そして71年、当時のリチャード・ニクソン大統領によって金とドルの兌換停止が宣言され、ブレトン・ウッズ体制は終わりを告げました。いわゆるニクソン・ショックです。しかし、その後も世界の金融市場におけるアメリカの支配体制は続いています。

今も世界の債権の約60%はドル建てであり、当たり前ですが、ドルで借りたものはドルで返さなければならないです。つまり、各国の金融機関にとって、ドルが手に入らなくなるということは破綻を意味するわけです。

ドル支配体制においてドルが手に入らなければ、石油や天然ガスなど資源取引の決済もできなくなります。国によっては、国家破綻の危機に直面することにもなりかねないです。

世界各国、特に先進国の中で、食料や資源を100%自給できている国は少ないです。そうして、中国の食料自給率は85%以下といわれており、アメリカから穀物を買えない事態になれば、13億の人民は飢餓に苦しむことになります。

だからこそ、中国はドル支配体制からの脱却を目指し、人民元の国際化を進めていました。IMFの特別引出権(SDR)の構成通貨入りも、そういった流れの中で推し進められたものだ。今年10月以降、人民元はSDRの5番目の構成通貨として採用される見込みであることが報道されたが、仮にSDR入りしても、ドル決済を禁じられてしまえば中国経済は破綻に追い込まれることになる。

資源を買うことができなければ、軍艦を出動させたり、戦闘機を離陸させることもできなくなり、これまでの「中国は今後も発展していく」という幻想は根底から覆されることになります。そして、その段階においても対立が融和しない場合、アメリカは金融制裁をさらに強めることになるでしょう。

ソ連が崩壊した直後のロシアでは、経済が低迷し哨戒機を飛ばす燃料にも事欠いた時期があった
写真はロシアの対潜哨戒機ツポレフ142M3

いわゆるバブルマネーによって、中国経済は本来の実力以上に大きく見られていますが、バブルが崩壊し、同時にアメリカが前述のような金融制裁を強めたら、どうなるでしょうか。当然、一気にこれまでの体制が瓦解し、中国は奈落の底に落ちることになります。

そうした構造をよくわかっているため、中国はアメリカのドル支配から抜け出そうとしていたわけです。アジアインフラ投資銀行(AIIB)や新開発銀行(BRICS銀行)の創設を主導し、さまざまな二国間投資を推進することによって、アメリカに頼らない体制をつくりたがっていました。

その動きを必死に妨害しているのが日米であり、同時にインドやASEAN(東南アジア諸国連合)の各国も日米に連動するかたちで自国の権益を守ろうとしています。欧州の国々も中国に対する警戒心を強めています。

そういった世界の流れをみると、貿易戦争では米中対立には決着はつかないでしょうが、次の段階では金融戦争に入り、この段階では中国に軍配が上がる可能性はきわめて低いと言わざるを得ません。

その時に中国に残されている道は2つだけです。1つ目は、知的財産権を尊重する体制を整えることです。それは、口で言うのは容易ですが、実際はそんなに簡単なことではありません。

まずは、中国は民主化、政治と経済の分離、法治国家化を実現するために、徹底した構造改革を実行しなければなりません。これが実現できなければ、知的財産権など尊重できません。しかしこれを実行すれば、中共は統治の正当性を失い崩壊することになります。

もう1つの道は、厳しい金融制裁を課せられても、そのまま今の体制を保つことです。そうなると、経済はかなり弱体化し、現在のロシアなみ(韓国と同等の東京都のGDPより若干少ない程度)になってしまうことでしょう。

そうなると、中国は他国に対する影響力を失い、図体が大きいだけのアジアの凡庸な独裁国家になり果てることになります。

これは、トランプ政権のみならず、ポストトランプでも米国議会が主導して実行され続けるでしょう。

米国の対中国貿易戦争は単なる中国に対する警告であり、前哨戦に過ぎないです。本命は本格的な金融制裁なのです。

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2018年7月9日月曜日

中国の急所は人民元自由化 米制裁を無効化する通貨安、トランプ政権が追及するか―【私の論評】米国の対中貿易戦争は始まったばかり!今後金融制裁も含め長期間続くことに(゚д゚)!

中国の急所は人民元自由化 米制裁を無効化する通貨安、トランプ政権が追及するか


USDCNYのチャート

 米中貿易摩擦を背景に、人民元相場の下落が起きている。

 まず、基本的な数字を押さえておこう。2016年の米国の世界に対する輸出額は1兆4500億ドル(約160兆円)、世界からの輸入額は2兆2500億ドル(約250兆円)、貿易赤字8000億ドル(約90兆円)だ。中国向けは輸出のうち8%で、金額は1160億ドル(約13兆円)、輸入のうち21%で金額は4820億ドル(約53兆円)、貿易赤字は3660億ドル(約40兆円)だ。米国の貿易赤字のうち大半は中国である。ちなみに対日赤字は700億ドル(約8兆円)にすぎない。

 米国は、こうした状況に政治的な不満があり、中国の知的財産権侵害に対する制裁関税を発動する。具体的には、500億ドル(5・5兆円)のうち、まず340億ドル分の中国製品に25%の追加関税を課す。中国も同額の追加関税との報復関税で対抗する。

 両国は水面下では交渉しているとみられるが、どうやら中国は人民元の操作も行っているようだ。人民元レートは変動相場制ではなく、中国政府がコントロールしている管理相場だ。4月以降、徐々に下落して今では6%程度も安くなっている。

 米国では利上げをしており、変動相場であってもドル高に振れやすい。実際、中国以外の新興国でも為替はドル高に向かっているので、人民元安を中国当局が容認しているともいえる。

 米国が関税をかけて中国が人民元を安くすると、米国の購入者はどうなるか。米国では中国からの輸入分のうち1割程度に25%の関税がかかるが、全品目は6%安くなる。つまり、1割程度は20%程度価格が高くなるが、残り9割で6%安くなる。その結果、中国からの輸入がどうなるか。輸入品の価格弾力性、つまり価格に応じた輸入量の変動にもよるが、かえって増える可能性もある。短期的には米国の対中貿易赤字はさらに拡大する可能性もあるのだ。

 米国としては、中国が人民元を操作して元安になると、政治目的である対中貿易赤字の削減を達成できなくなる。となると、人民元操作をやめさせるような手段にでるかもしれない。それは、人民元の自由化である。

 国際金融のトリレンマ(三すくみ)として知られているが、「自由な資本移動」「固定相場制」「独立した金融政策」のうち2つだけを受容することができる。中国は、「自由な資本移動」は共産党一党独裁体制を揺るがすために選択できず、「固定相場制」と「独立した金融政策」の組み合わせだ。ここで、完全な人民元の自由化を求めることは、「自由な資本移動」と同じ意味になる。

 10年ほど前、人民元改革と称して、変動相場制に移行すると思われた時期もあったが、結局資本移動の自由に立ち入ることはできなかった。

 人民元の自由化は、中国にとっては触れられたくないところだ。しかも、それを誘発する人民元安は、中国にとっても資本流出の引き金になりかねない。トランプ政権が中国の弱点をついてくるのか、それとも、中国がその前に折れて、何らかの妥協策を打ち出すのか、なかなか興味深いところだ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】米国の対中貿易戦争は始まったばかり!今後金融制裁も含め長期間続くことに(゚д゚)!

米中貿易戦争悪化に伴い人民元相場が急落しました。その原因は上の記事には掲載されていませんが、キャピタルフライトであると予想できます。これに対応する形で中国当局は国有銀行に通貨防衛のための為替介入をさせました。

現状度は、貿易戦争悪化し、そのために中国の輸出の冷え込み企業業績悪化、そのため株価下落し、海外投資家が離脱、そうして人民元売りドル買いという負の連鎖が起きているわけです。

また、これに連動する形での国内勢の動きもあると考えられます。中国政府は2015年の中国株式バブル崩壊以降、外貨規制を強化し、国内からのドルの持ち出しを厳しく規制していました。

個人の両替規制を年間5万元(83万円程度)に制限し、破ったものに対して制裁を課すようにしました。企業に対しても、基本届け出制にして、500万ドル以上の取引に関しては、より厳しい審査を課すことにしました。

中国の両替所

これにより、一旦は収まったかに見えた人民元に対する不安が、再び市場を襲っているののです。中国の対外債務は1兆7,106億ドル(2017年末)、それに対して外貨準備高が3兆1106億ドル(2018年5月末)です。

外貨準備とは、自国通貨売りなどに備え、外貨が不足したときに使う保険のようなもので、これがなくなると、通貨危機が発生しやすくなります。

そうして、この外貨準備は対外債務に合わせた額が必要とされます。中国の場合、表面的な数字だけを見れば、対外債務の2倍近い外貨準備があるので、全く問題がないように見えます。

しかし、実は中国の場合、外貨準備の内容がわからず、実際に使える額が全く見えません。日本の場合、外貨準備のほぼすべてが米国債で構成され、保有者は政府と日銀であるため、全額を為替介入などに利用することができます。

それに対して、中国の場合、米国債は1,2兆ドル程度しかなく、国有銀行保有分が含まれているのです。基本的に、外貨準備というのは外貨をいくら持っているかであり、それが借金であろうとも外貨である限り、外貨準備にカウントされます。

中国では、国有銀行保有分の多くが海外からの借り入れが原資であると思われ、信用不安の際には一気に失われる可能性があります。

ちなみに、中国の対外債務1兆7106億ドルの内、1兆ドル程度が短期の債務とされており、一気に返さなくてはいけなくなる可能性もあります。

そして、中国の外貨準備の内、米国債は1兆2000億ドル程度(米国財務省)しかなく、ドルだけで見ればその差額は2000億ドル程度しかないのである。実際には他国資産をドルに換えることができるので、それ以上の規模になるが、その中身が全くわからないのです。

そして、今回の通貨防衛の介入も非常にイレギュラーな形で行われました。これは中央銀行ではなく、国有銀行がNDF市場(ドル建てデリバティブ)でドル先物を買い、ほぼ同額を現物市場に流す形で行われたのです。

これは中央銀行が自由に使える外貨準備を持っていないことの証左であるといえます。そして、これを続ける限り、外貨準備が失われ続け、通貨危機のリスクは上がってゆくことになります。

為替介入でも、自国通貨売り外貨買いの介入(通貨安)であれば、自国通貨は自由に手に入るため、何の問題もないのですが、通貨防衛のための介入は、他国の通貨を必要とするため限界があります。

そして、この状況から抜け出すには、基礎的条件の改善(対米貿易の拡大など)や通貨スワップによる他国の通貨保証が必要になるわけですが、現在の米中の状況からすれば非常に厳しいといえるでしょう。

そして、それ以外の方法としては、やはり人民元を完全に自由化し、為替介入をせず、人民元を温存するという方法がありますが、この場合、人民元は暴落し、外貨建て債務を持つ企業などの破綻と輸入品の高騰によるインフレと国内の混乱が待っているでしょう。

このように考えると、中国が経済に対するダメージをなるべく軽くし、体制維持を最優先させようとすれば、貿易戦争は避けなければならないです。つまり、中国は市場を開放し、米国産業の「よいお客さん」になるのが最善策です。

しかし、国が破たんするよりはその方が痛みは少ないと考えられます。なぜなら、米中貿易戦争に中国が屈しなければ、次のステージは金融戦争であり、これは米国が圧倒的に有利な戦いだからです。

現在でも、世界の金融市場におけるアメリカの支配体制は続いています。今も世界の債権の約60%はドル建てであり、当たり前ですが、ドルで借りたものはドルで返さなければならないです。つまり、各国の金融機関にとって、ドルが手に入らなくなるということは破綻を意味するわけです。

マカオのバンコ・デルタ・アジアという銀行は、北朝鮮の資金洗浄に関与していることが発覚し、アメリカとの送金契約が消滅、破綻危機に陥り国有化されました。また、フランス最大の銀行であるBNPパリバは、アメリカの制裁対象国との取引を理由に、1兆円近い制裁金支払いと為替関連取引の1年間の禁止を命じられ、大打撃を受けました。

マカオのバンコ・デルタ・アジア

ドル支配体制においてドルが手に入らなければ、石油や天然ガスなど資源取引の決済もできなくなります。国によっては、国家破綻の危機に直面することにもなりかねないです。

世界各国、特に先進国の中で、食料や資源を100%自給できている国は少ないです。中国の食料自給率は85%以下といわれていますが、米国から穀物を買えない事態になれば、13億の人民は飢餓に苦しむことになります。

だからこそ、中国はドル支配体制からの脱却を目指し、人民元の国際化を進めていました。IMFの特別引出権(SDR)の構成通貨入りも、そういった流れの中で推し進められたものです。

2016年、人民元はSDRの5番目の構成通貨として採用されましたが、ドルは米国の通過であるため、人民元がSDR入りしていても、米国かドル決済を禁じれば中国経済は破綻に追い込まれることになります。

ドルで資源を買うことができなければ、軍艦を出動させることもできなくなり、これまでの「中国は今後も発展していく」という幻想は根底から覆されることになります。そして、その段階においても対立が融和しない場合、アメリカは金融制裁をさらに強めるだけでしょう。

現在、世界の銀行ランキング(資産額ベース)で中国の銀行が1位、2位、4位、5位を占めており、チャイナマネーは一見強大に見えます。しかし、思い出してほしい。かつて、バブル期には日本のメガバンクが世界を席巻し、そのほとんどが世界トップ10に入っていました。今は、ゆうちょ銀行が20位内と三菱東京UFJ銀行が4位に食い込むのみです。

世界のトップ銀行ランキング

いわゆるバブルマネーによって、中国経済は本来の実力以上に大きく見られてきましたが、バブルが崩壊し、同時にアメリカが前述のような金融制裁を強めたら、どうなるでしょうか。当然、一気にこれまでの体制が瓦解し、中国は奈落の底に落ちることになります。

そうした構造をよくわかっているため、中国はアメリカのドル支配から抜け出そうとしているわけです。アジアインフラ投資銀行(AIIB)や新開発銀行(BRICS銀行)の創設を主導し、さまざまな二国間投資を推進することによって、アメリカに頼らない体制をつくりたがっています。

そうして、その動きを必死に否定しているのが日米であり、同時にASEAN(東南アジア諸国連合)の各国も日米に連動するかたちで自国の権益を守ろうとしています。

そういった世界の流れを鑑みると、米中の軍事衝突で、軍事力はもとより、金融力からいっても中国に軍配があがることはありません。

ただし、米国ではドラゴンスレイヤー(対中強硬派)でさえも、中国と武力衝突するのはあまり現実的ではないとみているようですから、彼らは貿易戦争、そうして金融戦争により、中国の夢を砕くことになるでしょう。

彼らの最終目標は、現在の中国の体制を崩壊させ、民主化、政治と経済の分離、法治国家化をすすめさせることです。それは、中国の現在の共産党一党独裁、最近では習近平の独裁体制が崩壊することを意味います。いずれ中国はそのような道を辿らざるを得なくなるでしょう。

米国のドラゴンスレイヤーたちは、共和党の中にも民主党の中にも存在します。習近平が独裁政治を目指して体制を整えた現状では、パンダハガー(対中国融和派)の分はかなり悪いです。

米中貿易戦争は未だ始まったばかりですが、息の長い長期のものになることは確かです。習近平は、米国がオバマ大統領だったときに主席になっています。オバマ大統領のときには、オバマの戦略的忍耐で米国は中国が挑発しても、黙って見過ごしてきました。

しかし、トランプ以降の米国はそんなことはないでしょう。中国が自ら、体制を変え、米国が納得するまで長期わたって制裁が続くことになります。いずれ中国は南シナ海、尖閣どころではなくなるでしょう。

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2018年1月17日水曜日

中国の米国債購入停止報道は外交カードにらむ観測気球か 日本は「利益」得るチャンスに―【私の論評】中国は米国の金融制裁を恐れている(゚д゚)!

中国の米国債購入停止報道は外交カードにらむ観測気球か 日本は「利益」得るチャンスに


 ブルームバーグが、中国の外貨準備の当局者の話として、米国債の購入を減らすか停止することを勧告したと報じた。これを受けて米国債が売られ、円高が進む場面もあった。

 筆者は旧大蔵官僚時代に国債の入札・買いオペなどの実務を経験したことがある。1日の大半を通称「ディーリングルーム」と呼ばれ、役所内で人の出入りを制限した隔離部屋で過ごしていた。

 その部屋では、さまざまな情報を見たり聞いたりするようになっていたが、多くの時間を、市場で自分のポジションに有利に働くような発言、いわゆる「ポジショントーク」の類いに費やさざるを得なかった。

 金融資本市場では、さまざまな発言が流布している。そのほとんどは、ポジショントークである。それらの発言がマスコミなどを通じて市場に流されている。

 金融商品取引法では「何人も(中略)相場の変動を図る目的をもつて、風説を流布」してはいけないとされている(第158条)。ここでいう「風説」とは、虚偽の情報である。事実に基づく市場予測は風説に当たらないので、ポジショントークでも事実に基づいていれば問題ない。しかし、事実に基づくかどうかの検証はかなり難しい。

 冒頭の「中国の外貨準備の当局者の話」というのを検証するのはかなり困難である。当局者がマスコミの取材に応じることは少なくない。その際、意図的にリークすることもある。これも広い意味で、ポジショントークである。今回の場合、中国当局者がポジショントークしたとみるのが自然だ。その目的は、影響力を測るため、つまり観測気球であろう。

 米国債を大量に保有している者が、その影響力に関心があるのは当然だ。日本政府も米国債を外国為替資金特別会計で保有している。保有有価証券の総額は120兆円程度あり、その内訳は公表されていないものの、多くが米国債といわれている。

 これは、文字通り米国への「貸し」なので、米国に対して優位に立てるのではないかと思うのが一般的な印象であろう。実際、そのことを対米交渉の際に口に出した政治家もいたようだ。しかし、それは外交としては最悪であった。

 したたかな中国外交では、表だって言わずに、裏からポジショントークとして流して影響力を見たのだろう。

 ただ、実際の影響力はしれている。いくら大量に米国債を保有しているからといって、世界での取引を考えると影響力は限定的だ。しかも、効果は持続しない。やるぞやるぞといううちが花である。そうした限界はあっても、中国の対米外交としてはカードになりうる。

 日本にとっては、中国に一定の影響力が出たとしても問題はない。むしろ日本の出番だといえる。外為特会で米国債購入と為券(政府短期証券)の日銀購入によって対応できる。これは金融緩和の口実となって日本の利益となりうるのだ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】中国は米国の金融制裁を恐れている(゚д゚)!

米国債については、昨年の大晦日にとりあげました。その記事のリンクを以下に掲載します。
【お金は知っている】国連の対北制裁強化で追い込まれる習主席 「抜け穴」封じなければ米から制裁の恐れ―【私の論評】中国が米国の要求を飲むのは時間の問題(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして以下に米国債に関係するところだけ、掲載します。
超大国といわれるアメリカの一番の強さは、軍事力でもなく、イノベーション力でもありません。それは、米国による世界の金融支配にあります。現在の世界の金融体制は、ブレトン・ウッズ体制に端を発しています。これは、第二次世界大戦末期の1944年にアメリカのブレトン・ウッズで連合国通貨金融会議が開かれ、国際通貨基金(IMF)や国際復興開発銀行(IBRD)の設立が決定されたものです。 

当時、世界の金の80%近くがアメリカに集中しており、アメリカは膨大な金保有国でした。その金と交換できるドルを基軸通貨とし、他国の通貨価値をドルと連動させるという仕組みで、金・ドル本位制ともいわれます。

米国の金融街 ウォール・ストリート

米国に金融制裁を実施されたら、最近は輸入も多くなっている中国の食料事情は逼迫するでしょうし、食料以外にも様々な物資の供給に支障をきたすことになります。
 
だからこそ、中国はドル支配体制からの脱却を目指し、人民元の国際化を進めていました。IMFの特別引出権(SDR)の構成通貨入りも、そういった流れの中で推し進められたものです。人民元はSDR入りしましたが、ドル決済を禁じられてしまえば中国経済は破綻に追い込まれることになります。 
米国に本格的に金融制裁をされると、中国は資源を購入することもできず、戦闘機や軍艦を出動させることもできなくなります。これでは、最初から勝ち目はありません。 
それに、中国の米国債保有は6月に5カ月連続で増加し、外国勢で首位の座を取り戻したようです。米財務省が15日発表した6月の対米証券投資動向によると、中国の米国債保有額は1兆1500億ドル(約127兆円)で、前月比で443億ドル増加。日本は1兆900億ドルで、5月に比べて205億ドル減少しました。日本は昨年10月に外国勢の米国債保有で中国を抜いて首位となっていました。
これは米国の脅威になるなどドヤ顔で吹聴する人もいますが、これも中国の大きな弱みとなります。米国がこれを凍結すれば、一気に中国は127兆円を失うことになります。 
そもそも、元に信用があれば、中国は米ドルを大量に保有したり、米国債を保有する必要などもありません。逆のほうからみれば、中国元は中国が米ドルや米国債を大量に保有しているからこそ、一定の信用が保たれているのです。 
その原則が崩れれば、元の信用は一気に崩れ、中国の金融は崩壊します。
そもそも、米国債(ドル建て)はどんなに売られても米国中央銀行がドル札増し刷りして米国債を買えば良いだけのことで、米国は全く困りません。

日本や中国が保有していた米国債が米国中央銀行の金庫に溜まり、代わりにドル札が日銀や中国銀の金庫に置き変わるだけで市場には何ら影響はしません。

ただ、それ大変だと思う馬鹿な輩がいるので米国債に多少の値下がりはあり得るでしょうが直ちに元に戻るだけです、それでドル札には金利がつかないですから米国は大喜びするたげです。

そもそも日本や中国が米国債を大量に購入したのは輸出で得たドル札を持っていても金利がつかないから利殖のために米国債を買っただけの話です。それに輸出で得たドル札は既に元や円に交換しているので利殖の投資だけにしか使えません。国の財政赤字の補填などには使えないのす。

いずれの国の中央銀行でも市場に出回っている国債価格安定化のために自国債の売買は日常業務です。
一旦市場に出た国債に限ってですが(これが重要)買うためには自国通貨の増し刷りは日常業務の一つです。

ただし、ギリシャ国債が売られたらギリシャは破綻します。なぜなら、ギリシャではユーロを増し刷りできません。これは、夕張が破綻したのと同じ理屈です。夕張は勝手に円を擦り増しできません。

だからユーロ圏では日本のように安易に国債発行はできません。統一通貨の問題点です。特に為替レートにも関係ないので各国間の格差は拡大します。だからユーロ圏では特に「輸出額=輸入額」ということが必要になります。

米国、日本、中国のような国では、自国で自国通貨を擦り増しできるので、そのようなことはありません。本来、貿易黒字がどうの赤字がどうのと騒ぐ必要性など全くないです。

ところで、米国には「国際非常時経済権限法」(IEEPA)という法律があります。米国の安全保障や経済に重大な脅威が発生した場合、外国が保有する米国の資産については、その権利の破棄や無効化などができるという法律です。つまり、非常時には日中が持つ米国債も凍結されてしまう可能性もあるのです。

日本やASEAN諸国と領土紛争を抱える中国は、そのために最後の一線を越えることができないのです。もし中国が他国をあからさまに侵略すれば、IEEPAが発動され、中国が持つ1兆2732億ドル(約130兆円)もの米国債は紙くずになりかねないのです。

米国は、沖縄・尖閣諸島について「日米安全保障条約の適用対象」とされていますが、これは尖閣有事がIEEPAの対象となることを示唆したものです。そういうことから、中国は沖縄・尖閣諸島をなかなか奪取することはできません。


ブログ冒頭の、中国の外貨準備の当局者の話として、米国債の購入を減らすか停止することを勧告したとありますが、これは無論高橋洋一氏が主張するようにポジショントークに過ぎないです。

もしも中国が米国債の購入を停止したとしても、利殖のための米国債がなくなるだけの話であり、損をするのは中国です。さらに、中国元そのももの信用は著しく低いので、中国はこれからも大量のドルや米国債を保有しなければ、中国の金融が大混乱に陥るのは必至です。

このポジショントークやはり、米国の市場関係者などの様子をうかがっているのでしょう。その背後には、やはり中国は米国の金融制裁を恐れているという面があるでしょう。もし、今回の中国の北朝鮮への制裁がうまくいかなければ、米国は中国に金融制裁を課すということは多いにあり得ます。もし、市場関係者が大騒ぎして、様々な対策などに打って出れば、そこに付け入るすきを見出すことができると考えているのでしょう。

1997年6月23日、コロンビア大学での講演において聴衆から「日本が米国債を蓄積し続けることが長期的な利益」に関して質問が出た際、当時の橋本総理は「大量の米国債を売却しようとする誘惑にかられたことは、幾度かあります。」と返しました。


橋本龍太郎氏
そして、アメリカ経済が与える世界経済への影響などを理由に挙げた上で「米国債を売却し、外貨準備を金に替えようとしたい誘惑に、屈服することはない」と続けました。しかし、大量の米国債を保有する日本の首相が「米国債を売却」への言及をしたことが大きく注目され、ニューヨーク証券取引所の株価が一時下落しました。

しかし、今回はそうはならないでしょう。米国の市場はこのような中国の動きに惑わされることはないでしょう。何か影響があっても、一時的なことに過ぎないでしょう。

このように金融面からみても、中国が迂闊に戦争などできないことははっきりしています。日本のメデイアはこのあたりを報道すべきです。無論、中国が未来永劫戦争をしないと言っているわけではありません。ただ、当面は戦争しても全く良いことはないということです。

しかし、これは国際情勢が変われば、どうなるかはわかりません。実際、日米戦争では互いに相手国の資産を凍結しました。

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2017年7月8日土曜日

北を抑えられない中国…トランプ氏の切り札は“超メガバンク”制裁―【私の論評】手始めに金融制裁。次は食料制裁!いずれ中国本格制裁の前兆だ(゚д゚)!



 核・ミサイル開発で挑発を繰り返す北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長。トランプ米大統領は4日の弾道ミサイル発射について、大統領得意のツイッターでも「たぶん中国が重く動いてこのばかげた行動を終わらせるだろう」と発信した。トランプ氏は中国の習近平国家主席からは裏切られっ放しなのだが、今度ばかりは何やら確信ありげである。本当にそうなるのか。

 伏線は、6月末に米財務省が発表した中国の丹東銀行への金融制裁である。中朝国境の遼寧省丹東市にあるこの銀行は北の核・ミサイル開発を金融面で手助けしたという。ドル取引が禁じられ、国際金融市場から締め出される。

 米国が北朝鮮関連で中国の金融機関を制裁対象にしたのは初めてだが、中国側の反応は抑制気味だ。「他国が自身の国内法に基づき、中国の企業や個人を統制することに反対する。米国側が直ちに誤りを是正するように求める」(6月30日、中国外務省の陸慷報道官)と、反発も紋切り型だ。

 ワシントン筋から聞いたのだが、米側は丹東銀行について、事前に中国側と打ち合わせしたうえで「制裁」を発表した。当然、丹東銀行が米側の容疑対象であることを中国側は事前に察知しており、米側制裁に伴う混乱を回避する対応措置を取っている。

 混乱とは、丹東銀行への信用不安から預金者による取り付け騒ぎが起きることなどだ。もとより、丹東銀行のような地域に限定された小規模な金融機関なら、カネを支配する党の手で信用パニックの防止は容易だ。丹東銀行制裁は米中の出来レースなのだろう。

そんな現実なのに、中国がトランプ氏のつぶやき通り「重く動く」だろうか。トランプ政権は制裁の切り札を温存している。中国の4大国有商業銀行の一角を占める中国銀行である。

 米ウォールストリート・ジャーナル紙によれば、国連の専門家会議も、中国銀行のシンガポール支店が北朝鮮の複数団体向けに605件の決済を処理していたことを把握している。今年2月には米上院議員有志が、中国銀行が北の大量破壊兵器開発に資金協力してきたと、ムニューシン財務長官に制裁を求めた。

 米財務省は言われるまでもなく、オバマ前政権の時代から中国銀行の北朝鮮関連の資金洗浄を調べ上げてきたが、何しろ相手は資産規模で世界第4位、三菱東京UFJ銀行の1・5倍、米シティバンクの2倍もある超メガバンクで、国際金融市場で中国を代表する。

 制裁対象になれば、米金融機関ばかりでなく外国の金融機関とのドル取引が禁じられる。中国側の反発の激しさはもちろん、国際金融市場への波乱は丹東銀行の比どころではない。

 米外交専門誌「フォーリン・ポリシー」によれば、オバマ前政権時代でも中国銀行は俎上にのぼったが、金融市場への影響や中国との関係悪化などの事態に対応準備ができない、ということで、おとがめなし。ビビったのだ。トランプ政権はどうするか。(産経新聞特別記者・田村秀男)

【私の論評】手始めに金融制裁。次は食糧制裁!いずれ中国本格制裁の前兆だ(゚д゚)!

トランプ政権は、金融市場への影響や中国との関係悪化などおそれずに、中国への金融制裁を実行することでしょう。そもそも、中国からキャピタルフライト並の外貨の流出が数年まえから続いている現状では、米国が中国に対して金融制裁をしようがしまいが、あまり変わりない状況になってきています。

それに、トランプ大統領は中国が南シナ海に進出した本当の理由である、南シナ海の深い海を中国原潜の聖域にするという試みは絶対に阻止することでしょう。

北のICBMと中国の南シナ海の原潜聖域化は、絶対に阻止するでしょう。そうなると、トランプ大統領は、中国が本格的に北への制裁に踏み切らないならば、中国銀行への本格的な金融制裁に踏み切ることでしょう。

まずは、北を筋合いにして、中国が今後も傍若無人な海洋進出をやめなければ、さらに厳しい金融制裁に踏み切ることを中国に周知させることを目的に、実行することでしょう。

米国のムニューシン財務長官は会見で、今回の措置に関して「われわれはこれら行動で決して中国を標的にしていない」と説明。「われわれは外部の北朝鮮支援者をターゲットとすることにコミットしている」と語り、北朝鮮が核兵器と弾道ミサイルの開発プログラムを断念するまで圧力を強める考えを示しました。

米国ムニューシン財務長官
米政府は中国の丹東銀行を国際金融システムから遮断しました。財務省は発表資料で、同行は「北朝鮮が米国および国際金融システムにアクセスする経路」となっており、北朝鮮の武器開発プログラムに関与する企業の取引を手助けしているとしました。

ムニューシン長官は、資金の流れを断つことがイランを交渉のテーブルに引き出すのに「極めて効果的」だったと指摘。北朝鮮についても同じ効果を求めているとしました。丹東銀行だけでは効果がなければ、いずれ超メガバンクにも同じ制裁をすることでしょう。

このようなことは、最初からわかっていたことです。これについては、以前もこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【スクープ最前線】トランプ氏「中国敵対」決断 台湾に急接近、習近平氏は大恥かかされ…―【私の論評】トランプ新大統領が中国を屈服させるのはこんなに簡単(゚д゚)!
台湾の蔡英文総統との電話会談で中国を牽制したトランプ次期米大統領
写真はブログ管理人挿入 以下同じ
現在の米国は、軍事的にはオバマ政権時代に軍事予算を大幅に減らしたので、従来よりはその力は低下しています。これをトランプ氏は補おうとはしていますが、さりとてすぐにそれが成就するわけではありません。人員を増やすにしても、訓練をしなくてはなりません。軍艦や航空機を増加させるにしても、今すぐにつくってそれを現場に投入するとうわけにもいかず、実際に軍備を増強するまでには時間がかかります。

しかし、アメリカには他にも大きな強みが2つあります。それは、金融と食料です。この記事より、これに関する部分を以下に引用します。
超大国といわれるアメリカの一番の強さは、軍事力でもなく、イノベーション力でもありません。それは、米国による世界の金融支配にあります。現在の世界の金融体制は、ブレトン・ウッズ体制に端を発しています。これは、第二次世界大戦末期の1944年にアメリカのブレトン・ウッズで連合国通貨金融会議が開かれ、国際通貨基金(IMF)や国際復興開発銀行(IBRD)の設立が決定されたものです。 
当時、世界の金の80%近くがアメリカに集中しており、アメリカは膨大な金保有国でした。その金と交換できるドルを基軸通貨とし、他国の通貨価値をドルと連動させるという仕組みで、金・ドル本位制ともいわれます。
さらに、現在の中国の食料自給率が85%以下という状況もあります。
世界各国、特に先進国の中で、食料や資源を100%自給できている国は少ないです。中国の食料自給率は85%以下といわれており、アメリカから穀物を買えない事態になれば、13億の人民は飢餓に苦しむことになります。

これに関しては、一昔前にある中国の高官が穀物の需要が増えたり、減ったりする中国の状況を「中国人の胃はゴムボールのようである」と語っていたことがあります。要するに、穀物需要がかなり減ったり、増えたりしても、中国は何とかなることを強調したかったのでしょう。

現実には、そんな馬鹿な話があるはずもなく、貧困層は穀物が手に入らず飢え死にしていたというのが実情でしょう。しかし、それは今から数十年も前のことで、今ではそのようなことはあり得ないでしょう。現状では、中国の貧困層でも何とか食欲を満たす穀物は手に入れられる状態になっていることでしょう。
実際最近では中国が突如、近年世界の穀物輸入国上位に躍り出てきました。2013年~14年期、中国の穀物輸入量は2,200万トンという膨大な量になりました。2006年の時点では、ま中国では穀物が余り、1,000万トンが輸出されていたというのに、何がこの激変をもたらしたのでしょうか?

2006年以来、中国の穀物消費量は年間1,700万トンの勢いで増大し続けている年間1,700万トンというと、大局的に見れば、オーストラリアの小麦年間収穫量2,400万トンに匹敵します。 
人口増加は鈍化しているにもかかわらず、穀物の消費量がこれほど増加しているのは、主に、膨大な数の中国人の食生活レベルが向上し、より多くの穀物が飼料として必要な肉や牛乳、卵を消費しているからです。

2013年、世界全体で推定1億700万トンの豚肉が消費されました。そのうちの半分を消費したのが中国でした。人口14億人の中国は現在、米国全体で消費される豚肉の6倍を消費しています。 
とはいえ、中国で近年、豚肉消費量が急増しているものの、中国人一人当たりの食肉全体の消費量は年間合計54キロ程度で、米国の約107キロの半分にすぎません。しかしながら、中国人も世界中の多くの人々と同じように、米国人のようなライフスタイルに憧れています。

中国人が米国人と同量の肉を消費するには、食肉の供給量を年間約8,000万トンから1億6,000万トンへとほぼ倍増させる必要があります。1キロの豚肉を作るにはその3倍から4倍の穀物が必要なので、豚肉をさらに8,000万トン供給するとなると、少なくとも2億4,000万トンの飼料用穀物が必要になります。 
それだけの穀物がどこから来るのでしょうか。中国では、帯水層が枯渇するにつれて、農業用の灌漑用水が失われつつあります。たとえば、中国の小麦生産量の半分とトウモロコシ生産量の1/3を産出する華北平原では、地下水の水位が急激に低下しており、年間約3メートル低下する地域もあるほどです。 
その一方で水は農業以外の目的に利用されるようになり、農耕地は減少して住宅用地や工業用地に姿を変えています。穀物生産高はすでに世界有数レベルに達しており、中国が国内生産高をこれ以上増やす潜在能力は限られています。 
2013年に中国のコングロマリットが世界最大の養豚・豚肉加工企業、米国のスミスフィールド・フーズ社を買収したのは、まさに豚肉を確保する手段の一つでした。 
また、中国政府がトウモロコシと引き換えに30億ドル(約3,090億円)の融資契約をウクライナ政府と結んだのも、ウクライナ企業と土地利用の交渉を行ったのも、その一環です。こうした中国の動きは、私たち人類すべてに影響を与える食糧不足がもたらした新たな地政学を実証したものです。 
このようなときに、米国に金融制裁を実施されたら、食料事情は逼迫するでしょうし、食料以外にも様々な物資の供給に支障をきたすことになります。
米国が中国を制裁する方法は、まずは金融制裁、それでも駄目なら食料制裁、それでも駄目なら軍事制裁と、この三段階があります。この制裁、少し前だと実施しにくい面もありましたが、現在では、あのオットー・ワームビア氏の悲惨な死によって、超党派で制裁を実行する機運が高まっています。

トランプ大統領は「北朝鮮当局の残虐な行為を非難する」という声明を出しました。議会でも超党派で「北朝鮮の非人道的行為を許してはならない」(共和党のジョン・マケイン上院議員)という糾弾が表明されました。

米国が本格的に金融制裁、食料制裁をやりはじめれば、中国はひとたまりもないでしょう。海洋進出どころか、人民が食べるのに困るということになります。そうなれば、現中国の体制は崩壊するしかありません。崩壊するか、崩壊する前に音を上げて降参するしかありません。

これをトランプ大統領は様子を見ながら逐次実行していくことでしょう。ここまで、問題が複雑化してしまったのは、オバマ大統領が及び腰で、金融制裁や食料制裁に踏み切らなかったからです。オバマ時代にこれを実行していれば、今の世界は随分と変わっていたことでしょう。

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2016年11月15日火曜日

タイラー・コーエン 「ピーター・ナヴァロ ~経済方面における『トランプ大統領』の一番の指南役?~」―【私の論評】米国が軍事・金融制裁で本気を出した場合、現中国体制は瓦解する(゚д゚)!

タイラー・コーエン 「ピーター・ナヴァロ ~経済方面における『トランプ大統領』の一番の指南役?~」

(2016年8月1日、9月27日)

タイラー・コーエン氏

●Tyler Cowen, “The economist whose ideas guide Trump the most”(Marginal Revolution, August 1, 2016)

「トランプの考えに最も強い影響を及ぼしている経済学者は誰か?」と尋ねられたら私なら「それはピーター・ナヴァロ(Peter Navarro)だ」と答えることだろう。ナヴァロはカリフォルニア大学アーバイン校に籍を置く経済学者だが、彼の経歴についてはブルームバーグに寄稿したコラムで詳述したばかりだ。その一部を引用しておこう。
ナヴァロは中国に批判的なドキュメンタリー映像を公けにしているが、いずれもトランプから賞賛されている。ナヴァロとトランプが直接会ったことはこれまでに(2016年8月の段階では)一度もないようだが、ナヴァロ自身の説明によると「トランプ陣営とは経済や貿易、中国、アジアにおける外交政策といったテーマについて密に協力」しているとのことだ。 
ナヴァロは今年の3月にトランプを支持する記事を書いており、その中で数々の批判からトランプを擁護している。アカデミズムの世界(大学をはじめとした研究機関に籍を置く経済学者の中)にはトランプを支持する経済学者はほとんどいないことを踏まえると、ナヴァロは「トランプ政権」で重要なポストに就く可能性のある有力候補の一人だと考えてもよさそうだ。 
・・・(略)・・・ナヴァロが中国について書いている他の記事にしてもやはり同じことが言える。理性的で冷静な分析が加えられているかと思うと感情的で過激なコメントが火を噴くといった具合に論調が極端にあちこちに振れて慌ただしいのだ。とは言え、その言わんとするところをまとめるとおおよそ次のようになるだろう。 
アメリカは中国との通商交渉でタフな(強硬な)姿勢を貫け。中国国内での知的財産権の侵害は厳しく取り締まれ。 
中国からの輸入品には高い関税を課せ。中国の重商主義に真っ向から立ち向かえ。アメリカに職を取り返せ。そして・・・「偉大なアメリカ」を取り戻せ。「中国に関するトランプの考えを知りたいのだけれど、そのためには誰の本を読めばいいだろう?」。そういう疑問をお持ちの方はナヴァロ(が書いたもの)を読むといい。
ブルームバーグのコラムではまだ他にも色んな話題を取り上げている。ナヴァロの学者としての経歴(シカゴ学派流のアプローチとして括れるような研究や「公共選択論」、「法と経済学」といった方面で優れた業績を数多く残している)や資産運用に関する彼独自のアドバイス(はっきり言って眉唾物で誇大広告なところがある)、それまでは親中派が優勢だった共和党を反中派(中国懐疑派)が優勢な党へと様変わりさせる上で彼が果たした重要な役割等々だ。

今のところ世間では「ナヴァロ? 誰それ?」状態だが、仮に「トランプ政権」が誕生した暁にはナヴァロが(閣僚(ないしは閣僚級高官)として)経済方面で主導的な役割を果たすであろうことは容易に想像できることだ。「トランプ政権」が誕生する未来ももしかしたらやってくるかもしれない(30%くらいの確率でそうなるかもしれない)のだからそれに備えて是非とも全文に目を通していただきたいところだ。

ピーター・ナヴァロ氏

●Tyler Cowen, “Peter Navarro outlines the Trump economic plan”(Marginal Revolution, September 27, 2016)
トランプ陣営が掲げる経済政策プランの輪郭が示された。執筆者の一人はピーター・ナヴァロだ。
貿易赤字の削減に伴う便益がどの程度になるかを見積もるためには複雑なコンピュータモデルに頼る必要はない。貿易赤字の削減に伴って税収がどれだけ増えるか、設備投資がどれだけ増えるか(その結果として税収がどれだけ増えるか)を単に足し合わせるだけでいいのだ。 
ただし、以下では貿易赤字の削減に伴う便益のすべてが考慮されているわけではない。貿易赤字の削減が(企業が手にする)利益と(労働者が手にする)賃金にどのような効果を及ぼすかだけが考慮されており、貿易赤字の削減に伴うその他のプラス効果(景気を刺激する効果)は無視されているからだ。 
輸出の増加と輸入の削減の組み合わせを通じて5000億ドルに上る貿易赤字を帳消しにするというのが我々トランプ陣営の提案である。これまでと同様に、賃金総所得が名目GDPに占める割合は44%だという仮定で話を進めると、貿易赤字が5000億ドルだけ削減されるとそれに伴って賃金所得は2200億ドルだけ増える計算になる。 
賃金所得に課せられる所得税の実効税率が28%だとすると、2200億ドル分の賃金所得の増加に伴って税収は616億ドルだけ増える計算になる。 
さらには、利益率が低めに見積もって15%だと仮定すると、5000億ドル分の貿易赤字の削減に伴って企業部門が手にする税引き前利益は750億ドルだけ増える計算になる。我々トランプ陣営は法人税率を(現行の35%から)15%へと引き下げることを提案しているが、法人税率がその提案通りに15%に引き下げられたとすると、750億ドル分の税引き前利益の増加に伴って法人税収は112億5千万ドルだけ増える計算になる。
太文字による強調は私によるものだ。

全文はこちら(pdf)。ピーター・ナヴァロの経歴については少し前にブルームバーグに寄稿したコラムで取り上げたばかりだ。この情報はニューヨーク・タイムズ紙の敏腕記者であるビンヤミン・アッペルバウム(Binyamin Appelbaum)に教えてもらったものだ。アッペルバウムに感謝。

(追記)スコット・サムナーが(トランプ陣営の経済政策プランに)批判を加えている。あわせて参照されたい。

【私の論評】米国が軍事・金融制裁で本気を出した場合、現中国体制は瓦解する(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事で、タイラー・コーエン氏が述べているように、今のところ世間では「ナヴァロ? 誰それ?」状態です。実際、日本版のウィキペディアにもその名称は見当たりません。

トランプ政権」が誕生した現在ではナヴァロ氏が(閣僚(ないしは閣僚級高官)として)経済方面で主導的な役割を果たすことになりそうです。これから、この名前は頻繁にでてきそうですから、覚えておくことにこしたこはないと思います。

370人の米国の経済学者が今月の1日、米大統領選の共和党候補ドナルド・トランプ氏を次期大統領に選出すべきでない理由を列挙して他候補への投票を呼び掛ける連名の書簡を公表して。これに対し、トランプ氏の経済アドバイザーを務めるピーター・ナヴァロ氏は、誤った通商協定が失業を招いている実態を彼らは把握していないと直ちに反論していました。

同書簡については先に米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が報じていました。経済学者らはトランプ氏が「有権者を欺いて」おり、「実行可能な経済政策の選択肢を慎重に評価することよりも、魔術的思考や陰謀説に傾かせている」と指摘していました。

一方、トランプ氏の経済アドバイザーであるカリフォルニア大学アーバイン校のピーター・ナバロ教授はこの書簡は「経済学者の企業オフショアリング(自社業務の海外への委託・外注)賛成派の恥」だとした上で、トランプ氏の経済プランは成長加速や賃金上昇、新たな税収をもたらすと述べていました。

「反トランプ」の経済学者らは同書簡で、「トランプ氏は米国にとって破壊的かつ危険な選択だ」とした上で、「大統領に選ばれれば、民主制度や経済制度に加え、米国の繁栄を脅かす唯一無二の存在になる」と指摘した。これら経済学者のグループには数人のノーベル経済学賞受賞者も加わっている。

トランプ氏は成長支援に向け減税と北米自由貿易協定(NAFTA)脱退を公約している。一方、クリントン氏は経済プランとして、通商上の執行措置の強化や富裕層増税のほか、従業員への利益配分を容認する企業に見返りを与える案を打ちだしている。

何やらこの状況、デジャブーというか既視感がありませんか。そうです。昨年の、日本国内での集団的自衛権を含む安保法制の審議過程における反対派の動きです。

日本のリベラル・左翼が大騒ぎして、国会周辺でデモを行ったり、日本の主流派の憲法学者の憲法学者のほとんどが、安保法制は意見であると意見書を出してみたり、憲法学者ではないもののノーベル賞学者が安保法制反対の声明を出したりしていました。

日本国内での安保法制反対のデモ
そうして、「安倍が〜、安倍が~」と大騒ぎして、それだけではなく国会では民主党(現民進党)が大立ち回りを演じていました。そうして、憲法学者も、マスコミもリベラル・左翼も野党の多くも大反対をしていたにも、かかわらず、結局安保法案は成立しました。

その結果内閣支持率はどうなったかといえば、当初は下がっていましたが、最近では上がってきています。

結局、日本でもマスコミや、野党や、憲法学者やノーベル賞受賞学者が大反対しても、大きく声には出さないものの、それに同調しない多くの国民が存在していたということです。このことに、マスコミは今でも気づいてないようです。

アメリカのトランプ現象も同じことです。あれだけ、マスコミや政治家や、経済学者などがトランプ氏に反対しても、それに同調しない勢力が多数存在したということです。にもかかわらず、トランプ氏が大統領選に勝利した後でも、トランプ反対デモなどが行われています。


これから、アメリカでも日本の「アベノセイダーズ」のように、何でも「安倍のせいだ」とするような「トランプノセイダーズ」のような人々が出てくるのだと思います。

今回トランプ氏が大統領選に勝利したことで、民意を反映しないデモなど実行しても日米いずれでも、全く無意味であることが実証されたようです。

ブログ冒頭の記事では、タイラー・コーエン氏が「ナヴァロは中国に批判的な本とドキュメンタリー映像を公けにした」としていますが、それについて若干以下に触れておきます。



ドキュメンタリー映像を以下にあげておきます。


米大統領選でのトランプ氏勝利を受けて、中国政府系メディアは直後に、世界での米国の影響力は衰えていくとし、今後は中国共産党政権がアジア地域での覇権を握る可能性が高まったと示唆していました。しかし、この中国当局の認識は誤りで、トランプ氏は対中政策でタカ派路線を歩む可能性が高いです。

米紙ワシントン・ポストが11日に以下の様に伝えています。

中国政府系メディアはこれまで、トランプ氏に関して「アジア太平洋地域から撤退する孤立主義者」「中国の人権問題を批判しない現実主義者」と認識していました。

中国北京にあるシンクタンク、カーネギー清華グローバル政策センターのポール・ヘンリー(Paul Haenle)氏はワシントン・ポストに対して、現在入手した情報から見ると、中国当局の認識は誤りで、トランプ氏の対中政策はよりタカ派だと述べました。

トランプ氏の政治外交顧問、アレキサンダー・グレイ氏とピーター・ナヴァロ氏は外交・安全保障専門誌「フォーリン・ポリシー」に寄稿し、トランプ氏は冷戦時のレーガン元大統領が行った「力による平和」外交戦略を受け継いでいくと述べました。

両氏は同記事において、トランプ氏は今後、米海軍が保有する軍艦の数を現在の274隻から350隻に増やし、海軍規模を拡大する考えを示した。また「(トランプ政権の下で)米国はアジア太平洋地域における自由を守る役割を担い続けていく」との見解を示ししました。

また、トランプ氏は日本と韓国に対して米軍の駐留費用負担増加を求めていますが、「トランプ氏はアジア各同盟国との同盟関係を同地域における安定の礎と見なしている」「この同盟関係を保持していく」としました。

両顧問によると、トランプ氏は台湾に対して必要な武器を全面的に供給する意向を示しているといいます。

トランプ氏は当選した後、日本の安倍首相と電話会談し、両国の「特別な関係」を強化していきたいと述べました。

ロイター通信によると、トランプ氏の政治顧問は、トランプ氏は17日にニューヨークで安部首相と会見する際、日本政府のトランプ氏への誤解や不安を払拭し両国の信頼関係を高めていくとの意欲を示しました。「トランプ氏は、中国共産党政権のアジアでの影響力拡大をけん制するために日本政府の協力を必要としている」「トランプ氏はアジアにおいて、日本がより積極的な役割を担っていくよう願っている」といいます。

同顧問によると、トランプ氏が大統領就任後の最初の100日の計画では、国防費強制削減を廃止し、海軍の軍艦増加に新たな国防予算案を提出する。「米国が今後もアジアに駐在するとのシグナルを中国当局に送った」とコメントしました。

また、韓国の朴槿恵大統領との電話会談においても、朴大統領がトランプ氏に対して「両国の同盟関係は非常に重要である」と強調し、米国が北朝鮮に対して制裁を強めていく必要があるとしました。これに対して、「100%同意する。米国は韓国と最後まで共に歩む。(両国関係が)揺らぐことはない」とトランプ氏は述べました。

中国北京の政治経済シンクタンク「龍洲経訊」(Gavekal Dragonomics)の謝艶梅氏はワシントン・ポストに対して、「各国と如何に取引するかをよく知る中国当局は、トランプ氏が取引に長けているビジネスマンなので、トランプ氏を扱うのは簡単だと楽観視しているようだ。一方、トランプ氏周辺の政治外交顧問が親中的だとは全く思えない」と指摘しました。

トランプ政権成立によって追い詰められる習近平
以上のような事実を知ると、トランプ政権の対中国政策は経済的にも軍事的にも完璧にタカ派的な対応になるとみて間違いないようです。

このブログにも従来何度か掲載したように、オバマ現大統領の及び腰により、アメリカは世界各地で、存在感を失ってきましたが、今後は着実失地回復をしていくことになるでしょう。

中国は、過去においては日米に対して、少しずつ挑発をして、米国が何もしないことがわかると、自分たちの思い通りに、南シナ海や東シナ海で示威行動をし、覇権を拡大していきました。

しかし、トランプ氏が大統領になれば、過去のオバマ政権の時のようなことにはならないでしょう。多少の軍事衝突もいとわず、反撃することでしょう。中国は、自分の軍事力の本来の姿を思い知ることになります。

経済的にも、米国が中国に対して中国の金融資産凍結などの、金融制裁を行った場合、中国はとんでもないことになります。

なぜなら、中国の外貨資産の大半はドルであり、残りはドルと交換できる国際通貨のユーロや円などです。つまり元は事実上、ドルの裏付けがあるという意味での信用を獲得し、増発が可能になっていたのです。

アメリカが本格的に金融制裁に踏み切れば、中国経済は完璧に崩壊します。経済が崩壊した状態では、とてもじゃないですが、アメリカと事を構えることなどできません。世界各国、特に先進国の中で、食料や資源を100%自給できている国は少ないです。中国の食料自給率は85%以下といわれており、アメリカから穀物を買えない事態になれば、13億の人民は飢餓に苦しむことになります。

いわゆるバブルマネーによって、中国経済は本来の実力以上に大きく見られているのですが、バブルが崩壊し、同時にアメリカが前述のような金融制裁を強めたら、どうなるでしょうか。当然、一気にこれまでの体制が瓦解し、中国は奈落の底に落ちることになります。

そうした構造を中国共産党自身がよくわかっているため、中国はアメリカのドル支配から抜け出そうとしています。アジアインフラ投資銀行(AIIB)や新開発銀行(BRICS銀行)の創設を主導し、さまざまな二国間投資を推進することによって、アメリカに頼らない体制をつくりたがっています。

その動きを必死に封じているのが日米であり、同時にASEAN(東南アジア諸国連合)の各国も日米に連動するかたちで自国の権益を守ろうとしています。

いずれにせよ、最初から勝負ありきということで、軍事的にも経済的にも、中国は徹底的に追い詰められることになります。国際法的見地からしても、中国の身勝手な言い分は通りません。

アメリカが本気で習体制を揺さぶれば、習には勝ち目は全くありません。さて、習はこの危機をなんとか打開できるのか、あるいは崩壊するのか、今後の推移を見守っていく必要があります。

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2015年11月6日金曜日

【異形の中国】死に物狂いで金集めに走る中国 日本株も静かに売却していた…―【私の論評】今の中国が最も恐れるのは南シナ海ではない! 日銀の追加金融緩和と、アメリカの金融制裁だ(゚д゚)!

【異形の中国】死に物狂いで金集めに走る中国 日本株も静かに売却していた… 

天津大爆発は、中国経済に打撃を与えた=8月

中国経済は「アリ地獄」に落ちた。「負の連鎖」が最悪の方向へ暴走し始めたことが、種々の経済データや現状分析から明瞭に観察できる。

今年6月以来の「上海株暴落」と、8月の「人民元切り下げ」。続いた「天津大爆発」により、世界第4位の港湾施設が麻痺(まひ)し、輸出入が激減したばかりか、北京への貨物輸送が途絶えた。

この前後の、経済動態を緻密に検証してみる。リーマンショック直後からの財政出動、強気のインフラ投資、新幹線建設はまだしも、各地にゴーストタウン(鬼城)が出現したあたりから、中国経済は崩落への道に突き進み、「負の連鎖」が始まっていたことが分かる。

中国の経済政策は制度上、国務院(=日本の内閣に相当)が所管する。このため、李克強首相が経済政策の中枢を担い、彼の推進する中国の経済を「リコノミクス」と呼ぶ。
李氏自らが認めたように、中国のGDP(国内総生産)統計は水増しが多く、信頼するに値しない。「電力消費量」と「銀行融資残高」「鉄道貨物輸送量」の3つのデータを重視するとした。

となると、計算上、電力消費量が40%、銀行融資残高が35%、鉄道貨物輸送量が35%として振り分けられる「李克強指標」で見ると、7%成長をうたう中国のGDPは、本当のところ2%前後しかない。 

電力消費量は横ばい、貨物輸送量は10%のマイナスだからだ。「実質はマイナス成長」に陥っていると推定できる。

中国の抱える債務はGDPの282%である。2015年末に400兆円、16年末に600兆円の償還時期がくるが、返済は無理。つまり借り換え、分かりやすくいえば、ギリシャのように「証文の書き換え」が目の前に来ているということだ。

5兆円にものぼった中国国富ファンドの日本株保有も、いつのまにか手元資金不足に陥って、静かに売却していた。

なぜなら、日本企業の株主リストは公開されており、豪のオムニバス・ファンド(=中国国富ファンドの別動隊)の名前が見つからなくなった。中国は日本株をほぼすべて売却していたのである。

あまつさえ中国は保有する米国債を取り崩し、備蓄した金も少しずつ売却している。次に地方政府の債券発行を認め、さらには住宅ローンの貸し出し分を担保の銀行融資枠を拡大し、10月には銀行金利の上限も撤廃した。 

加えて、人民元建ての中国国債をロンドンでも売り出して、死に物狂いの金集めを展開している。

これは末期的症状ではないのか。

■宮崎正弘(みやざき・まさひろ) 

【私の論評】今の中国が最も恐れるのは南シナ海ではない! 日銀の追加金融緩和と、アメリカの金融制裁だ(゚д゚)!

上の記事では、「中国国富ファンドの日本株保有も、いつのまにか手元資金不足に陥って、静かに売却していた」とありますが、その兆候はすでに、2013年当時から見られていました。それに関しては、このブログでも以前掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
市場から消えた中国マネー4兆円の怪 ~緊迫する尖閣との関連性~―【私の論評】消えた中国マネー4兆円は、中国国内の熱銭不足の解消に遣われただけ!日本が金融緩和という最強「対中カード」を握ったことをマスコミが報道しないのはなぜ(゚д゚)!
 
2012年まで中国政府系ファンドが所有していた日本株式

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、中国系政府ファンド『OD05オムニバス』が2013年当時、日本株を売却していた事実を示す記事を掲載します。
 消えた中国マネーが憶測を呼んでいる。中国政府系ファンド『OD05オムニバス』が9月中間決算を機に、日本の主要企業の大株主から次々と姿を消したのだ。その数、判明しているだけで実に127社。今年3月期には167社(3月決算以外の24社を含む)の大株主ベスト10に登場していたのだから、まさに“激減”の言葉がピッタリである。

 繰り返せば、その中国マネーが日本市場から一気に“蒸発”したのだ。大株主から消えた企業を列挙してみると、自動車ではトヨタ、日産、ホンダ、ダイハツ、スズキ、いすゞなど、ほぼ軒並み。電機ではパナソニック、東芝、ファナック、NEC、富士通などから消えた。ゼネコンでは鹿島、大成建設、大林組、清水建設。商社では三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、住友商事、丸紅。さらにJR東日本、JR西日本、JR東海、NTT、NTTドコモ、新日鉄住金、野村HD、大和証券グループ本社などからこつ然と姿を消した。 
 ベスト10に残っている企業でも日立、ソニー、武田薬品、ソフトバンク、三菱重工などが3月期比で半減している。一方、銘柄としては少数ながらも石油資源開発、富士重工、マツモトキヨシなどは保有株数が増えている。他にベスト10以下にとどまり、第三者にはうかがい知れないケースがあるにせよ、ざっと時価4兆円からの大枚が短期間に市場から消えた計算になるのだから“事件”といえるだろう。
さて、当時中国経済の実体を知らなかったと考えられる人の書いたこの元記事では、このー連の日本株売却を「有事に備えた叩き売り」などとし、「どうやら中国が強力な対日カードを握ったことだけは確かなようだ」と結んでいますが、これはとんでもない見立て違いでした。

なぜ中国がこの時点で、日本企業の株式を売却したかといえば、ブログ冒頭で宮崎氏が説明しているのと同じであり、平たくいうと当時の中国では金融が空洞化しつつあり、万が一に備えて売却せざるを得なかったというのが事実です。

なぜ、そのようなことになったかというと、2013年の4月より、日銀はそれまでの頑な、円高・デフレ政策である、金融引き締め政策一点張りの金融政策をやめ、大規模な金融緩和政策に踏み切っているからです。

そのあたりの事情をさらに、以下に引用します。
日本が包括的な異次元の緩和を行う前の中国を支えていたのは為替操作によるキャッチアップ型の経済成長であり、円高とデフレを放置する日本銀行によるものです。からくりはこうです。 
慢性的な円高に苦しむ日本企業は、過度な「元安」政策をとる中国に生産拠点を移し、出来上がった製品の一部を逆輸入しています。国内で一貫生産するより、わざわざ中国を経由した方がもうかる構造になっていたのです。つまり日銀は、「デフレ政策で日本の産業空洞化を促進し、雇用と技術を中国に貢ぎ続けた」ことになります。 
これ以上、日本経済が中国に振り回されないで済むにはどうしたら良かったのか。答えは簡単でした。日銀にデフレ政策をすぐやめさせることでした。そうして、実際に日銀の金融政策は、黒田日銀になってから180度転換しています。
さて、中国では、日本の金融引締めによる、超円高・元安という恵まれた経済・金融環境の中で、中国人が海外に蓄えた大量の資金を中国国内に再投資(熱銭)して、さら儲けるということが行なわれていました。まさに、大儲けです。
熱銭については、このブログでも以前紹介したことがありますので、その記事のURLを以下に掲載します。これは、 2013年4月の記事です。中国人民銀行総裁周小川の懸念がまさに現実化しました。

"
これも詳細は、この記事をご覧いただくものとして、熱銭に関連した部分のみ以下にコピペさせていただきます。

 
 中国が円安の衝撃を和らげるためには人民元を切り下げるしかない。中国は通貨の自由変動相場制をとっている日米欧と違って、外為市場介入によって人民元相場の変動幅を小さくする管理変動相場制をとっている。 
 従って、人民元を当局の意のままに切り下げることもできるが、米国は中国が意図的に人民元をドルに対して安い水準になるよう操作していると批判している。切り下げると、米国から「為替操作国」だと認定され、制裁関税を適用されかねない。 
 中国自身も国内事情の制約を受けている。というのは、中国の党幹部とその一族や大手国有企業はこれまで国外でため込んだ巨額の外貨を、中国国内に投資して不動産や株で運用してきた。これらが「熱銭」と呼ばれる投機資金であり、その流入によって不動産バブルの崩落は食い止められ、株価も崩壊を免れている。 
 通貨当局はこれまで熱銭を国内にとどめるためもあって、人民元レートを小刻みに切り上げてきたが、一転して人民元切り下げ政策に転換すれば、1000億ドル単位の熱銭が国外に逃げ出す恐れがある。アベノミクスによる円安に対し、中国はどうにも動けない。
このアベノミクスによる円安により、中国投資の魅力が失せて、実際に中国内の熱銭が底をつきはじめたというわけです。特に、 2013年7月頃ではかなり熱銭が減ったとみられます。
"

さて、中国はご存知の通り、実際に人民元切り下げを行いましたが、それでも経済は低迷し、株価は低迷し、中国から海外に天文学的な数字の金が流れ続けています。

そのため、外貨準備も底をつき、マイナスに転じていることはこのブログにも掲載しました。

この日本の金融緩和による中国の経済の弱体化は、まるで日本による中国に対する金融制裁のようではありませんか?実際、2012年にまだ白川体制だった、日銀が周りからせっつかれて、いやいやながら、若干の追加金融緩和を決めたときですら、吠えまくりました。

それについても、このブログで掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。この記事は、2012年9月のものです。
中国人民銀、日銀の追加緩和にいら立ち 過度の資本流入懸念−【私の論評】中国の経済破綻が始まる?!日銀を何とかしなければ、日本は草刈場になる!!
中国人民銀行
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、それにしても、この時の周小川の苛立ちの発言は、おかしなものでした。彼の発言は、「日本が金融緩和に転ずると、過度の資本流入の懸念がある」という、奇妙奇天烈、摩訶不思議な発言でした。

日本が金融緩和に転ずれば、当然のことながら、円安傾向になるわけですから、相対的に元高傾向になるわけです。とすれば、日本が円高で苦しんてきたようなことが、中国国内でも起こるわけです。要するに、中国の投資先としての魅力が失せるわけでてすから、当然のことながら、心配すべきは、過度の資本流入ではなく、過度の資本流出を懸念すべきです。

周小川としては、日本の金融緩和によって、本当は資本流出を恐れたのでしょうが、弱みを見せたくないということで、あのような珍妙な発言になったのでしょう。

とはいいながら、白川体制のときの追加金融緩和など微々たるもので、現実には周小川の懸念は、懸念で終わってしまいました。

しかし、日銀が黒田体制に変わり、異次元の金融緩和を実施しはじめたとたん、周小川の懸念は、現実のものとなりました。資本流出が本格的に始まったのです。

無論このときも、周小川はわめきまくりましたが、日本からいえば、円高・デフレを是正するために、金融緩和をしたのであり、これは単なる内政干渉に過ぎません。

だからこそ、2013年には、中国系ファンドが日本株の売却をはじめたということです。そうして、その状況は、今もかわらず、ブロク冒頭の宮崎氏の記事にもあるように、5兆円にものぼった中国国富ファンドの日本株保有も売却するような事態が続いているのだと思います。この流れは、まだ続きます。

瀬戸際に追い詰められた習近平



さて、このような中国が最も恐れるのは何でしょぅか。それは、もうお分かりでしょう。日銀による追加金融緩和です。これが、実施されると、ますます中国から金が逃げて、ほんとうにすっからかんになってしまいます。

それに、中国にはもっと恐ろしいことがあります。現在米国が、南シナ海にイージス艦を派遣していますが、このアメリカの示威行動に、中国が何らかの形で譲歩せずにつっぱり続けるとどうなるでしょうか。

それは、すでに米国が北朝鮮に対して行っている、制裁措置でもある、金融制裁です。実際米国は、今年一月に北朝鮮のサイバー攻撃に対する追加措置として、金融制裁を実行しています。

日本が、追加金融緩和を実施し、アメリカが大規模な対中国金融制裁を行ったとしたら、どうなるでしょうか。当然のことながら、日米もある程度火傷をするでしょうが、中国は、そんなことではすみません。中国経済は本格的に破綻します。

昨日もこのブログに掲載したように、次世代の党の和田幹事長が提唱する、金融緩和で名目成長5%を目指すなどの政策が実行されたら、中国は中国共産党幹部らは、恐慌状態に陥ることになります。

いつも強面を演出する傍若無人な中国ですが、 日米が本格的に金融制裁を発動したら、ひとたまりもありません。経済の崩壊だけではすまないです。習近平体制は完璧に崩れます。それだけで、すめば良いですが、それこそ現在の中国共産党一党独裁体制自体が崩壊する恐れも十分あります。中国が南シナ海で米国を納得させる、譲歩をしなければ最終的にはこうなります。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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