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2019年9月20日金曜日

ロシア統一地方選の結果をいかに見るべきか―【私の論評】日本が本気で北方領土返還を狙うというなら、今は中国弱体化に勤しむべき(゚д゚)!

岡崎研究所

 9月8日、ロシアでは、州知事や共和国の首長などを選出する統一地方選挙が実施された。このところ、モスクワでのデモ、地方での環境保護を求める抗議活動といった、プーチンの人気に陰りが出ていることを示す出来事が目に付くようになってきていたため、それなりに注目されたが、結果は、モスクワ市議会選挙などごく一部を除き、プーチンの与党の圧勝であった。モスクワ市議会選挙では共産党が勝利した。


 モスクワでは、今回の統一地方選挙に向けて野党系の候補者をプーチン政権側が不当に排除したのではないかということで、真の自由選挙を求めるデモが毎週行われていた。一方、地方では、モスクワその他の都市からのゴミの大きな埋め立て地を田舎に作る計画に対し、多くの抗議活動が行われている。そのほか、不満の源には、インフレ、停滞する生活水準 、定年延長、長距離トラックへの新しい通行料、ソーシャルメディア規制などがある。

 モスクワでのデモのインパクトが限定的であるのは、環境悪化や生活コストなどについてのロシア社会の不満を取り込むことに失敗しているためである。真に競争的選挙を呼びかけるというのは価値のあることではあるが、少し理念的に過ぎ、大衆の生々しい不満を反映する幅広いアピールに欠けている。他方、地方での抗議活動は生活に根差した不満の反映ではあるが、そこまで深刻なものではないということであろう。

昨年5月にも大統領就任式を前に各地で大規模な抗議デモが
 ロシアにおける抗議活動はプーチンの人気が下り坂にあることを示しているものの、今回の統一地方選挙の結果からも、プーチンが2024年までの任期を全うすることに問題を投げかけられているような状況にはないと言える。モスクワのデモも、市議会選挙で共産党(選挙から排除された野党勢力指導者アレクセイ・ナワリヌイが支持を呼び掛けていた)が勝利したこともあり、次第に収束していくのではないか。

 ただ、プーチン流の強権的なシステムが長期的に続くかどうかは、慎重な検討が必要であろう。フィナンシャル・タイムズ紙コラムニストのTony Barberは、8月26日付け同紙に‘After two decades in power, Putin should heed the warning signs’と題する論説を掲載、今後のロシアについて展望を示している。Barberは、以下のような点を指摘している。

・プーチンは2000年から2008年にかけて、エリツィン時代の社会混乱を克服し、石油価格上昇を通じて所得増を実現し、人気のある指導者であった。

・最近では、経済的不満、環境についての懸念、権力濫用への不平が、ロシア国民に対するプーチンの立場を悪くしているが、プーチンの権力掌握は弱くない。彼は反対を打ち砕く圧倒的な力を持っており、取り巻きは富と生き残りのために彼に依存している。

・しかし、時の経過とともに、ポスト共産主義の初期の経済・社会の崩壊を覚えている世代は消え去っており、プーチン以外の指導者を知らない若いロシア人が出てきている。少なくとも彼らの一部は変化を強く望んでいる。

・ロシア史を振り返ると、こうした時代は過去にもあった。ニコライI 世の長く専制的な支配が終わった 1850年代、 1953年のスターリン死後、ブレジネフの「停滞の時代」が終わった 1980年代である。 ピョートル大帝以来、ロシアでは、改革と反動が交代してきた。

・モスクワでのデモや環境についての抗議活動に次の自由化のサイクルを見るのは時期尚早であるが、何事も永遠ということはない。

 このBarberの論説は、ロシア史を踏まえて書かれた良い論説である。ロシア史は、スラブ主義者と欧化主義者が交代して指導者になってきた歴史であると考えてよい。Barberは改革と反動の交代と言っているが、そうも言えるだろう。

 プーチン後は、欧米諸国との関係を重視する政権がすぐにではないにしても、出てくる必然性が高いように思われる。どれくらいのスピードでそうなるかは分からないが、一旦変化が生じると加速度がついて、行き過ぎたりするようなところがロシア人にはある。

 それから、プーチンが任期満了後にすんなりと退任するのかという問題がある。つまり、鄧小平やカザフスタンのナザルバエフのような最高指導者を目指す可能性はないのかということである。これについては、ロシアには「院政」の伝統はないと思われるので、可能性はあまり高くないのではないだろうか。

【私の論評】日本が本気で北方領土返還を狙うというなら、今は中国弱体化に勤しむべき(゚д゚)!

9月5日にウラジオストクで行われた安倍晋三首相とプーチン・ロシア大統領の通算27回目の首脳会談は、平和条約交渉で一切進展がなく、暗礁に乗り上げた形でした。ロシア側は「2島」すら引き渡さない方針を固めており、安倍首相の「独り相撲」(朝日新聞と産経新聞の社説)が鮮明になりました。安倍外交は対露戦略の総括と見直しが急務です。

第27回日露首脳会談

日露両国は昨年11月のシンガポールでの首脳会談で、歯舞、色丹2島引き渡しをうたった1956年日ソ共同宣言を基礎に交渉を加速することで合意し、今年から本格交渉に入ったのですが、ロシア側は一転して高飛車に出ました。国是の「4島返還」から「2島」へ譲歩することで妥結は可能とみなした安倍首相の判断は裏目に出ました。

産経新聞(9月3日)は、ロシアが1月の国家安全保障会議で、「交渉を急がず、日本側のペースで進めない」「第2次大戦の結果、4島がロシア領となったことを日本が認める」などの交渉方針を決めたと報じました。事実なら、対日強硬路線を機関決定したことになり、プーチン大統領やラブロフ外相の一連の強硬発言もこれによって説明がつきます。

その背景として、大統領の支持率低下や民族愛国主義など国内要因が指摘されますが、むしろこの1年の米中露3国関係の構図の変化がロシア外交に与えた衝撃が大きいようです。

米露関係は、米国が対露制裁を強化し、国防予算を拡大して新型兵器開発を進めるに及んで、ロシアにとってはオバマ時代よりも悪化しました。ロシアは中国一辺倒外交に傾斜し、米中貿易戦争の長期化で、中国もロシアの利用価値を重視するようになりました。
こうして「米国対中露」の対立構図が深まり、ロシアは日米同盟を問題視するようになりました。ロシアにとって日本の重要性は以前より低下し、北方領土問題は米中露3国関係の新展開の中に埋没したということでしょう。

今後、プーチン政権と交渉を続けても、領土問題は低調な議論が続くだけでしょう。「私とウラジーミルの手で必ず領土問題に終止符を打つ」という首相得意のフレーズは色あせ、これを信じる国民はもはやいないです。むしろプーチン政権の存在自体が領土交渉の足かせになっているとの認識を持つ必要があります。

交渉が事実上破綻した今、安倍首相はこれまで秘匿してきた大統領との交渉内容を部分的にでも国民に開示し、領土政策を「4島」から「2島」に転換した真意を説明すべきでしょう。

対露支援8項目協力など経済協力を優先し、国家主権意識や安全保障観の希薄な経済産業省主導外交が通用しなかったことも、この際総括する必要があります。

大都市の若者が毎週末に行う反プーチン・デモが示すように、ロシアの若い世代には長期政権への閉塞感や国際的孤立への不満が強い。ポスト・プーチン時代を見越した長期的な対露戦略の再構築を図るべきです。

さらには、このブログでも過去に主張してきたように、現在の米中冷戦は、これからも長く続くことになること、中国が弱体化したときに、かつての中ソ対立が激化したときのように、中露対立が激化することも計算入れ、対露戦略を考えていく必要があります。

中露対決が激化したとき、ロシアは最大の危機を迎えます。現在のロシアのGDPは東京都や韓国なみです。日本の1/3規模です。そのロシアがクリミア占領や、中東に軍隊を派遣したりしているのです。

現状では、かつてのソ連のように、米国と制裁合戦をする余力もなく、米国から一方的に制裁をされるだけの状態です。かつてのソ連なら、米国から制裁をされたら、何らかの方法でそれに対して必ず報復したものです。やはり、経済が日本の1/3の国にできることは限られています。現状では米国抜きのNATOに対してもまともに対峙することは不可能です。

無論ロシアは、旧ソ連の核兵器や軍事技術を引き継いでいますから、軍事的には侮ることはできませんが、経済的には日本と比較すれば、小国と言っても良いくらい規模です。世の中には、未だロシアを超大国とみなし、北方領土の返還など、ありえないとする人もいますが、そんなことはありません。

やりかたを間違えなければ、帰ってくる可能性は、十分にあります。

ポストプーチンでロシア国内の求心力が弱まり、中露対立がかなり高まったときこそが、日本にとっての最大のチャンスです。

現状では、中露の経済力の差はとてもなく大きく、さらにロシアの人口が1億4千万であるのに比して、中国は13億人以上です。

これでは、現在のロシアは、どうみても中国に対抗できるわけもありません。しかし、米国による対中国冷戦で中国経済は弱体化しつつあります。更に弱れば、ロシアは積年の恨みつらみから、ロシアの中国に対する不満はいずれ大爆発します。

その時には、中露対立が顕になり、国境紛争も再度勃発することになるでしょう。現状の、中露の協調関係など、上辺だけのものに過ぎません。これは、元々はいつ破綻してもおかしくない関係なのです。

1969年3月2日中ソ国境紛争

その時こそ、日本の北方領土返還交渉のやり時なのです。安倍総理は、完璧に時期を間違えたと思います。

4島返還を本気で狙うなら、今から戦略を立てるべきです。当面は、ロシアには目もくれず、とにかく中国弱体化に勤しむべきなのです。

本来は、そのような時にいくら麻生氏が政権運用に不可欠とはいいながら、財務省の馬鹿共の策略にひっかりり増税などしている場合ではないのです。

国力を増す北方領土交渉を有利にするためにも、今は経済を良くするため、デフレからの完全脱却のために、増税などすべきではないのです。

安倍総理は、今のままだと、憲法改正はできず、北方領土交渉にも緒すらつけられず、政治生命を終えることになりかねません。

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2019年7月13日土曜日

【日本の解き方】韓国、日本への「対抗策」に手詰まり感… 文大統領は「事の重大性」認識できず!?―【私の論評】本気になった日本が、日米協同制裁を実行すれば崩壊する中韓露(゚д゚)!

【日本の解き方】韓国、日本への「対抗策」に手詰まり感… 文大統領は「事の重大性」認識できず!?

文在寅

日本政府の韓国に対する輸出管理の強化について、文在寅(ムン・ジェイン)大統領は「韓国企業に実害が発生した場合、政府としても必要な対応を取らないわけにはいかない」と述べた。また、「そうなるのを望まない」とも続け、日本側の措置撤回と両国間の「誠意ある協議」を求めた。韓国側はどの程度、事の重大性を認識しているのだろうか。

 日本側の措置は、外為法に基づく輸出管理の「強化」であることは間違いないが、優遇措置の見直しであり、韓国は「他国並み」になるだけだ。

 文大統領は、日本の輸出管理強化について「前例なき非常事態」としており、表向きは深刻に受け止めているようだが、政府自らが打開策をとるでもなく、「政府と経済界の緊密な疎通と協力が何より重要」と財界に協力を求めた。

 中国の華為技術(ファーウェイ)に対する米国の禁輸措置をめぐっても、韓国政府は対応方針を明らかにせずに、民間企業の自主対応に委ねている。こうした安全保障上の国際問題では、欧州諸国も政府としての対応を明らかにしている。政府も民間企業からの調達を行っているので、政府自身の対応を明らかにせざるを得ないからだし、何より民間企業に対して国としての確固たる方針を示す責任がある。

 しかし、韓国政府の方針ははっきりしない。政府は新たな方針を明示せず、事実上、従来通りにファーウェイを受け入れつつ、民間企業には自主対応を求めるという身勝手さが出ている。

 一方、日本の輸出管理「強化」は安全保障上の対応だ。こうした経緯は、経済産業省のウェブサイトにも、世耕弘成経産相のツイートにもハッキリ書かれている。

 こうした安全保障上の措置に対して韓国が対抗措置をとるのは、ロジカルには難しい。できることは、日本が懸念し、管理強化の根拠になった韓国側の「不適切事案」について、韓国側が謝罪し再発防止策を行うことである。

 「不適切事案」の内容は徐々に明らかになりつつあるが、韓国側は承知しているはずだ。おそらく米国政府も内容を共有しているだろう。もし一部で報道されているように、北朝鮮への横流しとなれば、この問題の収束はかなり難しくなる。

 いずれにしても、文大統領は、そうした問題を棚上げにして、日本側に措置撤回を求めるのであれば、事の重大性を分かっているとは言いがたい。

 もちろん、日本としては安全保障上の措置であり、「不適切事案」についての韓国側の対応が先であるので、こうした文大統領の申し出を受けるはずもない。実際、菅義偉官房長官は9日、日本側は措置を撤回しないと明言している。

 もし韓国が誠意を見せるのであれば、今回の措置の背景にあるとされる、いわゆる元徴用工判決について、日本企業に対する請求を韓国政府が肩代わりをするなどして、両国の信頼関係の構築を進めるべきだ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】本気になった日本が、日米協同制裁を実行すれば崩壊する中韓露(゚д゚)!

日本による実質上の対韓国経済制裁に対して、冒頭の記事にもあるように、文大統領は事の重大性を全く理解していないようです。この大統領、そもそも経済にも国際情勢に関しても相当疎いです。

日本の過去の社会科の教科書で「日本は貿易立国」だと教えていましたが、これはでたらめです。

貿易依存度(GDPに占める貿易額のシェア)は、日本は歴史的に20%程度ですが、米国はそれよりも低いです。一方、中国は40%程度、韓国は約70%もあります。中継ぎ貿易国の香港は300%もあります。

ロシアは37%であり、輸出のほとんどが、石油・天然ガスであり、価格の推移にかなり影響されます。


日本は輸出依存度(輸出/GDP)ということであれば、当然ながら輸入も多いですから、それは貿易依存度よりも下がります。GDPに占める輸出は、10数%ということになります。米国は数%に過ぎません。

教科書で教えていることがまったく信頼できないのは、韓国の歴史教科書に限ったことでは無いのです。日本の教科書も眉唾で読まなければならないですが、「不都合な真実」が教えるのは、米国と日本(特に米国)という自給自足経済圏は、たとえ世界経済から切り離されてもなんとかやっていけるのに対して、共産主義中国と韓国(特に韓国)の経済は世界経済から切り離されたら終了するということです。

しかも、日本はトランプ大統領が一度ひっくり返したものの、米国経済界が再び加入を希望している「TPP」を11か国でまとめて2018年12月30日に発効させるという離れ業を演じました。世界GDPの13%、域内人口5億人をカバーする一大経済圏です。



これはASEANの4倍の経済規模があるとされますが、もし世界の20%強を占める米国が参加すれば世界を牛耳ることができる。おそらく、トランプの次の米大統領は、もともと米国主導ではじめたTPPに加入することでしょう。

大国と持ち上げられる共産主義中国のGDPは10%台前半、かつてのソ連邦と同じ水準です。そのころの米国のGDPは世界の30%以上を占めていましたが、現在、米国とTPP11を合わせればそのくらいにはなります。

韓国に至っては東京都とほぼ同じであるので比較の対象にすらなりません。ついでに、現在のロシアも同程度です。全くもって問題外です。

ちなみに北朝鮮の貿易依存度は約40%ですが、やはり米国の経済制裁は国家の体制を揺るがすほどのダメージを与えています。

「貿易戦争」、「第2次冷戦」における経済制裁は、共産主義中国に破壊的なダメージを与えつつあるのですが、韓国に小指の先ほどの「経済制裁」を与えれば、あっという間に奈落の底に落ちるでしょう。

さらに、韓国内上場企業の株式の3割以上を外国人が保有し、そのうち米系の比率は4割以上です。特に大手銀行のほとんどの株を米国企業が所有しています。このため、韓国人が働いて、銀行に貯金をすると米国企業が潤うということになるので、韓国は米国の経済植民地といわれているくらいです。

外需頼みの中国・韓国にとっては本来、日米を含む諸外国を「おもてなし」すべき立場のはずです。

お笑いコンビ「ウーマンラッシュアワー」の村本大輔「スポンサーと出演者は対等だから、やりたいようにやる」と吐いていました。もちろんどのような人々にも基本的人権があって対等です。顧客も売り手も人間として平等です。

しかし「むかつく相手から商品を買わない自由」も、当然のことながらあります。顧客は金銭という対価を支払うのですから、自分の好きな相手から買う自由があります。売り手にも同じ自由があるはずですが、特に現在のような「供給過剰経済」では事実上の選択枝はほとんどないです。

美空ひばりや安室奈美恵、SMAPのような大スターなら、コンサートチケットにもプレミアムがついて売り手市場でしょうが、吉本興業は無数の芸人を抱えていて、スポンサーは自由にその中から選ぶことができます。

これは私自身はあまり好きな言葉ではないですが、「お客様は神様です」のような言葉さえあります。その「神様」に向かって唾を吐きかけるような行為をすれば「神罰」があたるのも当然です。

しかし、そのような当然なことさえ分からないほど、中国や韓国は愚かなのかという疑問も生じます。

改革・開放の初期に、儒教の影響で中国人の店員は頭を下げないといわれましたが、これは「孔子学院」を典型例とする誤った解釈です。日本ではその誤った解釈を修正した「朱子学」が盛んでした。

もしかしたら、誤った解釈では無く実は本質なのかもしれないですが、中・韓流の儒学の教えは「権力者にひれ伏せよ」ということです。権力者は偉いのだから、その偉い人の言動を下々が非難すべきでは無いということです。

言い換えれば、「強きを助け、弱きをくじく」、「水に落ちた犬はたたけ!」、「長いものには巻かれろ」です。「弱きを助け、子犬を救い、絶対権力に反抗する」西洋的、民主主義的価値観と真っ向から対立しています。

したがって、そのような文化圏の人々が、自由主義経済圏に参加すること自体が、世界にとっての不幸、ともいえるのです。

もちろん、顧客を地べたに座らせて、自分は椅子の上で胡坐をかいているような商人がビジネスで成功するはずが無いです。

サムスン財閥が韓国GDPに占める割合も、貿易に占める割合もおおむね2割程度です。日本では、トヨタの売り上げが30兆円ほどで日本のGDPが550兆円ほどであるから5.5%。トヨタグループの売り上げを倍の60兆円と仮定しても11%にしかならないです。

さらに韓国は、昔は30大財閥であったものが、現在は10大財閥へ集中しています。その中でもサムスンと現代に集約されつつあります。


共産主義中国経済は、ZTEとファーウェイへの米国からの攻撃で揺らいでいますが、韓国の場合は、サムスンを攻撃されたら経済そのものが瞬間蒸発します。

事実、ZTEやファーウェイ同様、サムスン製品や韓国発のLINEなどのSNSにおいても、情報漏えいリスクがあるのは否定できないです。

米国が本気で北朝鮮主導の南北統一を実行しようと考えているのであれば、韓国への経済制裁は「金融制裁」と「サムスンへの制裁」がセットになるでしょう。

ちなみに、現在の韓国の財閥支配の悲惨な現状を見ると、戦後GHQが行った財閥解体は企業間の自由な競争を促す独占禁止法的な役割を果たし、日本経済発の追い風になったと考えられます。

新技術・アイディアを生み出すには「自由」な環境が必要ですが、どちらの国にもそれが無いです。

たとえば、バナナ農園では、奴隷を監督官がムチ打って多少なりとも生産性をあげることは可能かもしれないです。

しかし、最先端の通信技術開発研究所で働く研究員の周りを、機関銃を水平に向けた兵士が取り囲んでいたとしたらどうでしょうか。モチベーションが上がって研究成果が出るどころか、研究員たちはそのような政府を転覆させることで頭がいっぱいになって、研究など手につかないでしょう。

シリコンバレーで、次々と素晴らしい研究成果が発表されるのは「自由な研究環境」が保障されているからです。

独裁国家では、そのような環境は望むべくもなく、結局他国から技術を盗むしかないのです。米国は、ZTEとファーウェイという盗掘トンネルを抑えるという素晴らしい対中戦略ですでに成功している。

日本からも、リストラされた大量の技術者が中・韓に流れています。カルロス・ゴーンのような王侯貴族並みの生活をしているわけではないですが、日本に多数存在する「首切り屋」から、職を奪われた人々の立場には同情します。しかし、彼らが中・韓へ先端技術を流しているのも事実です。

まず、この盗用の蛇口を締めることが先決です。米国はすでに蛇口を締めました。日本もそうすべきなのです。

わざわざ戦火を交えなくても、工作機械の輸出や先端技術の移転を禁じる「経済制裁」を行えば、中・韓は自滅します。露は、他の制裁でも十分に自滅します。

トランプ大統領の貿易戦争によって中国は既に王手をかけられています。日本も、韓国が、資産差し押さえや国際ルール違反の軍事挑発で、さらに敵対的になった場合、経済制裁(貿易戦争)を行って、相手を締めあげる手段は存在しています。

韓国の貿易依存度が高いことは既に述べましたが、対日において韓国は貿易赤字なのです。

すると皆さんは、「じゃあ、韓国は日本の大事なお客さんじゃないの?」と思うかもしれないです。確かにその通りなのです。実は日本は経済的には韓国にとって美空ひばりや安室奈美恵に匹敵する大スターであって、日本の売り手市場なのです。

韓国の対日赤字の大部分は工作機械の輸入によるものです。工作機械とは、製品を製造する機械のことであり、サムスンのスマホも、現代の自動車もこれ無しでは製造できないのです。

この工作機械の製造技術こそが【先端技術】であり、世界市場を日本とドイツが席巻しているのですが、その中でも繊細・微細な製品製造のための工作機械は日本の独壇場と言ってよいです。

皆さん、半導体などの製造機械は見ただけではわからないものの、お菓子や冷凍食品の工作機械などをテレビでご覧になったことがあるでしょう。あのような工作機械があれば、相当美味しい食品が、迅速に大量につくれます。あるのとないのとでは大違いです。

これと同じように、半導体や新素材、機械の製造における日本の工作機械は優れているのです。そうして、お菓子や冷凍食品は工作機械がなくても、ゆっくりなら作れるのですが、半導体、新素材、機械などは優れた工作機械がないと製造できません。

だから中韓は日本に「工作機械を売っていただいている」立場にあるのです。もし、日本が工作機機械の禁輸を行ったら、中・韓経済の将来は無いです。中国の「製造2050」など吹っ飛びます。

米国によるサムスンに対するファーウェイのような制裁と、日本からの工作機械の禁輸措置を同時に行えば非常に効果的です。

日本が韓国に対して、実施しはじめた輸出規制は、韓国がまともに対応しなければ、将来制裁にまで発展する可能性があります。そうして、これは中国やロシア、北朝鮮に対しても行われる可能性もあります。

その可能性に気づいたのか、中国やロシアなどはいまのところ、日本の対韓国輸出規制に沈黙しています。それだけ、工作機械などの禁輸はとてつもなく大変なことなのです。

日米協同で、中国、ロシアなどを制裁すれば、結果がでるのはかなり早くなるでしょう。中露はまさにそれを恐れているのです。そうして、いずれ米国は日本に対して、協同制裁を申し入れることになるでしょう。

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2019年4月20日土曜日

挙国一致で中国と対決、何が米国を本気にさせたのか?―【私の論評】戦略の発動の時期と順番を間違えた中国は米国の事実上の敵国となった(゚д゚)!

挙国一致で中国と対決、何が米国を本気にさせたのか?

これ以上中国を放置できない、米国の専門家が語る米中関係の展望
古森 義久

米国のロバート・ライトハイザー通商代表部代表(左)、中国の劉鶴副首相(中央)、
スティーブン・ムニューシン財務長官(右、2019年2月14日撮影、参考写真)

 米国の首都ワシントンで取材していて、外交について最も頻繁に接するテーマはやはり対中国である。政府機関の記者会見でも、議会の審議や公聴会でも、民間のシンクタンクの討論会でも、「中国」が連日のように語られる。

 しかも「中国の不正」や「中国の脅威」が繰り返し指摘される。ほとんどが中国への非難なのだ。

 そうした非難を述べるのはトランプ政権や与党の共和党だけではない。他の課題ではトランプ政権を厳しく糾弾する民主党系の勢力も、こと相手が中国となると、トランプ政権に輪をかけて、激しい非難を浴びせる。ときにはトランプ政権の中国への対応が甘すぎる、と圧力をかける。

 私はワシントンを拠点として米中関係の変遷を長年追ってきたが、米側からみるいまの米中関係は歴史的な変化を迎えたと言える(その実態を3月中旬、『米中対決の真実』という単行本にまとめた。本稿とあわせてお読みいただきたい)。

 では、なぜ米国は中国と対決するのか。今後の両国関係はどうなるのか。その原因と現状、さらには米中関係の展望について、米国有数の中国研究の権威であるロバート・サター氏に見解を尋ねてみた。

 サター氏は米国歴代政権の国務省や中央情報局(CIA)、国家情報会議などで中国政策を30年以上、担当してきた。10年ほど前に民間に移ってからも、ジョージタウン大学やジョージ・ワシントン大学の教授として中国を分析してきた。

 サター氏の認識に私が重きをおくのは、彼が政治党派性に影響されていないという理由もある。政府機関で働いた時期はもちろん官僚としての中立性を保ってきた。個人的には民主党支持に近い立場のようだが、民間での研究を続けてからも、時の民主党政権をも辛辣に批判し、共和党政権からも距離をおくという感じだった。

 今回はジョージ・ワシントン大学にあるサター氏の研究室を訪れて、話を聞いた。インタビューの主な一問一答は次のとおりである。

共和党も民主党も中国を強く警戒
──米中関係が歴史的な変化の時代を迎えたと言えそうですが、その変化をもたらした原因とはなんだと思いますか。

ロバート・サター氏(以下、敬称略) 変化を招いた直接の原因は米国側での危機感でしょう。中国をこのまま放置すれば米国が非常に危険な状況へと追い込まれるという危機感が、政府でも議会でも一気に強くなったのです。ただし中国側は米国のこの感覚を察知するのが遅かった。トランプ政権や議会を誤認していたといえます。ここまで強く激しく中国を抑えにかかってくるとは思わなかったのでしょう。

 米国側の危機感、切迫感を生んだ第1の要因は、中国がハイテクの世界で世界の覇権を目指し、ものすごい勢いで攻勢をかけてきたことです。米国は、このままでは中国に経済的にも軍事的にも支配されると感じたわけです。この状況を変えるには、たとえその代償が高くても今すぐに行動をとらねばならない、という決意になったのです。

 第2には、中国側が不法な手段を使って米国の国家や国民に対して体制を覆そうとする浸透工作、影響力行使作戦を仕掛けてきたことです。統一戦線工作を駆使しての威嚇、圧力、買収、スパイ工作まで米国の心臓部に踏みこむような乱暴な浸透活動が、米側で一気に指摘され、警戒されるようになったのです。
ロバート・サター氏

──米側の中国への不信はきわめて広範囲のようですね。

サター 一般国民も政府も議会も中国に対して強い警戒心を持っています。共和党議員だけではなく民主党議員も、共和党議員と歩調を合わせて対中強硬策を提唱しています。たとえば大統領選への名乗りをあげたエリザべス・ウォーレン上院議員が中国のスパイ活動を非難しました。また、民主党ベテランのパトリック・ リーヒ上院議員は「一帯一路」を嫌っています。民主党で外交問題に関して活躍するマーク・ウォーナー上院議員も、米国のハイテクが中国に輸出されることに強く反対しています。

──であれば、米中間の対立は今後もずっと続くということになりますね。

サター 摩擦がずっと続くでしょう。中国が米国の要求をすべて受け入れることはありえません。また、米国が中国に強硬な態度をとることへの超党派の強い支持は揺るがないからです。

これまでの大統領とは大違いのトランプ

──現在、米中両国の対立で最も分かりやすいのは貿易面での衝突ですね。米中関税戦争とも呼ばれます。

サター これまでの関税交渉では、米側が中国に圧力をかけ守勢に追い込みました。中国側はトランプ政権の勢いに押され、状況の悪化を恐れて、圧力に屈したという感じです。問題は、中国が米国の要求にどこまで応じ、米側からの圧力をどこまで減らすことができるか、でしょう。中国側がかなり妥協して、関税問題では一時的な休戦あるいは緊張緩和になるかもしれません。

 ただし経済問題では、トランプ政権内部にいくらかの姿勢の違いがあります。ロバート・ライトハイザー通商代表のように中国に対してきわめて強硬な人たちと、スティーブ・ムニューシン財務長官のようなやや協調的な人たちが混在しているのです。ではトランプ大統領がどんな立場なのかというと、この判定が難しい。

 関税問題では米側がある程度の妥協を示すこともあるでしょう。ただし、基本的な問題は厳然と残っています。関税問題の基盤にある米中間の底流は非常に対立的であり、険悪です。

 当面の関税交渉では、米国の中国に対する懲罰的な関税を中止するのかが焦点となりますが、この点に関してトランプ大統領はこれまでの歴代大統領とはまったく異なります。中国に対して譲歩や妥協をしないのです。トランプ氏にとって「譲歩」というのは、懲罰の量を減らすだけということになります。

──中国はトランプ大統領に対して戸惑っているということですか。

サター そうです。トランプ大統領はオバマ氏ら前任の大統領たちと違い中国に対して譲歩をしません。米側が欲することを中国側に圧力をかけて実行させるという点では、トランプ大統領は今のところ大きな効果をあげています。しかし、習近平主席は米側が求める総合的な構造変革をすることはないでしょう。ライトハイザー通商代表が要求しているような経済の体系的な変革はないだろう、ということです。

 中国側は「大きな変革を実行する」という合意に応じたところで、アメリカ側をだます見通しが強いといえます。このことはこれまで繰り返し起きてきました。ライトハイザー氏はすでにこのことを指摘しています。だから関税問題でたとえ米中間の合意が成立しても、両国関係の基本を変えるような前進はまずないだろうと思います。

──関税問題とは別に、厳然と残っている基本的な経済問題とはなんですか。

サター 米中間のハイテク競争、そして中国の米国への浸透、知的所有権の窃盗、米側企業を取得して米国のハイテク産業をコントロールすることなどです。米側は中国のこの種の動きに、はっきりと抵抗しています。

 さらには中国への輸出管理です。米側の商務省がこの問題に対処しています。中国の膨張を許すような品目の対中輸出は自粛する。これは東西冷戦時代にソ連圏への輸出を規制したココム(対共産圏輸出統制委員会)に似た概念です。中国との関係は、東西冷戦時代のソ連との対決とはまだ同じ段階に達していません。しかし、ファーウェイに対する米側の対応は事実上ココム的管理に等しく、その厳しさはさらに強くなっていくでしょう。
中国は「大きな変革」に着手するか

──サターさんは、米側が求める最終目標として中国側の「総合的な構造変革」という言葉を使いましたが、具体的になにを意味するのでしょうか。

サター 国家がコントロールする企業の役割、国家が産業界と一体になる産業政策、特定企業への優遇財政措置、外国企業、とくに米国企業の中国市場へのアクセスの制限、といった中国の産業政策が実際にどう変わるかです。知的所有権の扱い、外国の技術などの盗用、スパイも大きな要素です。こうした諸領域で中国政府がどんな改革措置をとるかが『総合的な構造変革』を占う指針となります。

 しかし、中国政府は表面をとりつくろうことがきわめて巧みです。なにもしていないのに、なにかをしているかのようにみせかける。そのため米国政府側の中国不信は非常に強い。だから米国政府は最大の注意を向けて中国側の動向を監視しています。もし中国側がこれまでのように大きな変革措置をとるという約束をして、実際にはしなかったことを確認した場合、米中関係は重大な危機を迎えるでしょう。トランプ大統領はそんな中国の背信を許さないでしょう。この点では、議会でも共和党、民主党が一致して中国への強硬な姿勢を保っています。
中国の危険な拡大を食い止めよ

──トランプ政権は経済問題以外でも中国を非難しています。具体的には中国のどのような動きが米側を最も強く反発させているのでしょうか。

サター 南シナ海での膨張、日本への圧力、ロシアとの結託、ウイグル民族の弾圧など米国の国益や価値観を侵害する一連の動きです。中国は米国のパワーを削ごうとしている。米国はその動きを止めようとしているということです。

 米国が究極的に目指すのは、中国にそのような侵略、侵害を冒させない国際秩序の保持だといえます。中国の攻勢に対しては、ケースバイケースで対応していく。そこで商務省、財務省、通商代表部、国防総省、連邦捜査局(FBI)などがそれぞれ中国の攻勢に立ち向かっているという状況です。

──サターさんのこれまで40年もの米中関係への関わりからみてトランプ政権の現在の中国への対応は適切だと思いますか。

サター はい、米国は中国の攻勢をはね返す必要があったと思います。中国が米国を弱いとみて進出や膨張を重ね、米国の勢力圏を侵害していくという近年の状況は危険でした。率直に述べて、オバマ政権時代の後半はそうでした。トランプ政権の政策担当者たちはそうした中国の危険な拡大を止めるための具体策を取り始めた。私はその基本姿勢に同意します。

 トランプ大統領が長期の総合的な対中政策のビジョンを持っているかどうかは別として、中国の膨張を止める政策を断固としてとれた指導者は、2016年の大統領選の候補者の中には他にいませんでした。中国への有効な対策を取るためには、米中関係の緊迫を覚悟せねばならない。トランプ氏以外にそうした緊迫を覚悟して自分の政策を推進できる指導者はまずいなかったと思います。現在のような強固な対中政策が米国には必要なのです。

【私の論評】戦略の発動の時期と順番を間違えた中国は米国の事実上の敵国になった(゚д゚)!

冒頭の記事において、米国側の危機感、切迫感を生んだ第1の要因は、中国がハイテクの世界で世界の覇権を目指し、ものすごい勢いで攻勢をかけてきたことをあげています。これについては、随分と報道などされてきているので、ここでは詳細は述べません。

第2の中国による統一戦線方式の対米工作については、特定部分がワシントンの半官半民のシンクタンク「ウィルソン・センター」から昨年9月上旬に学術研究の報告書として発表されました。

「米国の主要大学は長年、中国政府工作員によって中国に関する教育や研究の自由を侵害され、学問の独立への深刻な脅威を受けてきた」

このようなショッキングな総括でした。1年以上をかけたという調査はコロンビア、ジョージタウン、ハーバードなど全米25の主要大学を対象としていました。アジアや中国関連の学術部門の教職員約180人からの聞き取りが主体でした。結論は以下の要旨でした。
・中国政府の意を受けた在米中国外交官や留学生は事実上の工作員として米国の各大学に圧力をかけ、教科の内容などを変えさせてきた。 
・各大学での中国の人権弾圧、台湾、チベット自治区、新(しん)疆(きょう)ウイグル自治区などに関する講義や研究の内容に対してとくに圧力をかけてきた。 
・その工作は抗議、威嚇、報復、懐柔など多様で、米側大学への中国との交流打ち切りや個々の学者への中国入国拒否などを武器として使う。
この報告の作成の中心となった若手の女性米国人学者、アナスタシャ・ロイドダムジャノビク氏はこうした工作の結果、米国の大学や学者が中国の反発を恐れて「自己検閲」をすることの危険をとくに強調していました。

こうした実態は実は前から知られてきました。だがそれが政府公式の調査報告として集大成されて発表されることが、これまでなら考えられなかったのです。

これは、昨今の米国の対中態度の歴史的な変化の反映だといえるでしょう。さて、わが日本でのこのあたりの実情はどうでしょうか。日本でも、同様の工作が行われていることが、10年以上も前から言われてきました。

特に、日本は工作員天国といわれています。日本には世界の国ならどこでも持っている「スパイ防止法」がないのです。

工作員にとっての天国とは次のような状態です。①重要な情報が豊富な国、②捕まりにくく、万一捕まっても重刑を課せられない国のことです。

日本は最先端の科学技術を持ち、世界中の情報が集まる情報大国でもあります。しかも、日本国内で、工作員がスパイ活動を働いて捕まっても軽微な罪にしか問われないのです。スパイ活動を自由にできるのが今の日本なのです。つまり、工作員にとっては何の制約も受けない「天国」だということを意味しています。

アメリカに亡命したソ連KGB(国家保安委員会)少佐レフチェンコが「日本はKGBにとって、最も活動しやすい国だった」と証言しています。ソ連GRU(軍参謀本部情報総局)将校だったスヴォーロフは「日本はスパイ活動に理想的で、仕事が多すぎ、スパイにとって地獄だ」と、笑えない冗談まで言っています。

レフチェンコ氏

日本は北朝鮮をはじめとする工作員を逮捕・起訴しても、せいぜい懲役1年、しかも執行猶予がついて、裁判終了後には堂々と大手をふって出国していきます。日本もなめられたものです。

今後米国が、本気で中国と対決するというのですから、日本経由で米国の重要情報が漏れたり、たとえ米国の情報でなくとも、日本の技術等が中国に漏れそれが、中国を利することになり米国が不利益を受けることになっても、日本が現状を放置しておくことにでもなれば、米国は日本の大学や企業、政府機関、金融機関等を制裁対象とする可能性は十分にあります。

日本でも、米国のように日本国内での中国による統一戦線工作の実態を暴く報告書を作成するなどして実態を明るみに出し、それを期にスパイ防止法を成立させるべきです。

習近平

米国が、中国と本気で対決しようとしたのには、別の理由もあります。米国は中国が国債秩序を塗り替えるつもりではないかと懸念してきたことに対して、中国はそのとおりであると宣言したことです。

中国の習近平国家主席が、グローバルな統治体制を主導して、中国中心の新たな国際秩序を構築していくことを昨年宣言しています。この宣言は、米国のトランプ政権の「中国の野望阻止」の政策と正面衝突することになります。

習近平氏は昨年6月22日、23日の両日、北京で開かれた外交政策に関する重要会議「中央外事工作会議」で演説して、この構想を発表したといいます。

習主席はこの会議で「中国は今後グローバルな統治の刷新を主導する」と宣言し、「国際的な影響力をさらに増していく」とも明言しました。中国独自の価値観やシステムに基づいて新たな国際秩序を築くと宣言している点が、これまでの発言よりもさらに積極的でしたた。

習氏の演説の骨子は、以下のとおりです。
・中国はグローバルな統治を刷新するための道を指導していかねばならない。同時に、中国は全世界における影響力を増大する。 
・中国は自国の主権、安全保障、発展利益を守り、現在よりもグローバルなパートナーシップ関係の良い輪を作っていく。 
・中国は多くの開発途上国を同盟勢力とみなし、新時代の中国の特色ある社会主義外交思想を作り上げてきた。新たな国際秩序の構築のために、中国主導の巨大な経済圏構想「一帯一路」や「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」をさらに発展させる。
・中国主導の新しいスタイルの国際関係は、誰にとっても「ウィン・ウィン」であり、互恵でなければならない。
米国政府は中国に対して従来から警戒や懸念を表明してきました。習近平政権は米国の懸念に対して、それまで正面から答えることがなかったのですが、これは、その初めての回答とも呼べるものです。

つまり、米国による「中国は年来の国際秩序に挑戦し、米国側とは異なる価値観に基づく、新たな国際秩序を築こうとしている」という指摘に対し、まさにその通りだと応じたのです。米国と中国はますます対立を険しくすることになったのです。

中国の立場にたったとしても、私は、この宣言は早すぎたと思います。この宣言はできれば、20年後、早くても10年後にすべきでした。

現在の中国は、米国第二の経済国といわれていますが、まだまだ米国には及びません、個人あたりのGDPも当然米国に及ぶこともなく、日本や他の先進国にもまだまだ及びません。

このような宣言は、少なくとも国全体のGDPが米国と肩を並べるくらいになってからすべきでした。

過去においては中国の経済の成長は目覚ましいものがあり2017年には米国と肩を並べるなどともいわれていましたが、今は成長が鈍化し見る影もありません。かつての中国では、保八ということがいわれ、中国は発展途上であり、雇用を確保するためには最低8%の経済成長がなければ、それは不可能になるとして、経済成長率8%を死守するとしてきましたが、最近ではこの保八すら守れない状況になってきました。

これは、中国では十分な雇用を確保できなくなったことを意味します。さらには、最近ではこのブログでも掲載したように、金融緩和策も取れない状況に陥りました。マクロ経済学上の常識では、金融政策=雇用政策でもありますから、これは中国ではますますまともな雇用政策もできなくなったことを示しています。

現在の中国は経済力でも軍事力でも、米国には到底およびませんし、米国とその同盟国ということになれば、雲泥の差と言っても良いくらいです。ちなみに、米国では昨年は雇用状況がかなり良くなっていました。日本もそうでした。

中国が先のような宣言を昨年に実施したことにより、日米ならびにその同盟国は、中国に従来以上に警戒感を高め、中国に対抗しようという機運が高まりました。

もし、中国があのような宣言の内容をおくびにも出さず、20年後に宣言することになっていたとしら、それまでの間に、経済・軍事力を強化し、その頃になって、尖閣での示威行動をはじめたり、南シナ海を突然大規模に埋め立て、あのような宣言をしたとしたら、世界はとんでもないことになっていたかもしれません。それこそ、第三次世界大戦になる可能性もあったかもしれません。

しかし、中国が昨年の時点で、あのような宣言をしてしまったため、米国は無論他の先進国も事前に中国の野望を知りそれを阻止する暇が得られることになりました。

中国は、完璧に戦略を間違えました。戦略というより、戦略の発動の時期と順番を間違えました。ただし、時期と順番を間違えなかったとしても、それこそ第三次世界大戦となり、中国にとってもとんでもない事態になったかもしれません。

民主化、政治と経済の分離、法治国家化がなされていない、中国中心の新たな国際秩序とは、はっきり言えば闇の世界です。米国が第二次世界大戦後につくりあげてきた国際秩序は、良いことばかりではありませんが、それでも中国中心の新たな国際秩序よりは、はるかにましだし、まともです。

中国中心の新たな国際秩序なるものが形成されれば、結局のところ世界は、19世紀、もしくは18世紀の遅れた社会構造にもどることになるだけです。テクノロジーや、素材などが、最新のものでも、非効率、非生産的な遅れた社会では、特に先進国の人々は夢も希望も持てなくなります。

日本もせっかく明治維新で社会が近代化できたにもかかわず、江戸時代に戻ることになったかもしれません。そんなことは、米国だけではなく、世界中のまともな国々や、先進国では、たとえ政治的立場が保守派であろうが、リベラル・左派であろうが、とても許容できるものではありません。

本来は、中国こそが社会構造を変えていくべきなのです。日米などの先進国も、中国が経済発展すれば、そうなるだろうと期待していたのです。しかし、それは見事に裏切られたどころか、中国は自らの社会構造の遅れを認識せず、単に遅れた社会構造を自らの核心的価値観として世界に押し付けようとしたのです。だからこそ、米国は、超党派で中国に対抗しているのです。

この米国の姿勢は、中国が少しぐらい譲歩したからとって変わることはありません。中国が、社会構造改革を約束して、それを本当に実行するか、経済的に疲弊して、他国に影響力を及ぼせないくらいに衰退するまで続くことになります。この米国の姿勢は、もはや超党派のものとなり、トランプ政権の後の政権もこれを踏襲することになります。中国は米国の事実上の敵国となったのです。

他の先進国も、これに同調することになります。中国は金で多くの国をたらしこもうとするので、中には、イタリアや中欧諸国のように中国に同調しようとするような国もでてくるかもしれませんが、大勢としては、ほとんどの国、特に先進国が中国に対して対抗姿勢を顕にすることでしょう。結果が出るまで、約20年は続くとみておくべきでしょう。米中の対立の根は見かけよりもずっと深いのです。

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2019年3月30日土曜日

緊迫する南シナ海:中国の進出阻止に本気の米国―【私の論評】本気の米国、南シナ海で比に攻撃あれば米が防衛するとポンペオ氏明言(゚д゚)!

緊迫する南シナ海:中国の進出阻止に本気の米国

米軍、中東のテロ対策から対中戦略へ本格シフト

南シナ海で軍事拠点化を進める中国に対し、米軍が対中政策により力を入れ始めている。

 3月19日、ハワイのフォート・シャフター陸軍基地で開かれた会議で、米太平洋軍司令官のロバート・ブラウン陸軍大将が中国に対抗するため、本土から数千から万単位の兵士をアジアに配備する用意があると述べたのだ。

米太平洋軍司令官のロバート・ブラウン陸軍大将

 「南シナ海で問題(有事)が起きた時には陸海空および海兵隊の兵力が協力し合って対処していくことになります」

 この発言が海軍大将ではなく陸軍大将から出たところに注目したい。

 中国が南シナ海で人工島を造成し、軍事基地化を進めている中で、ブラウン大将は陸軍の出動も念頭に入れているということだ。

 米軍準機関紙『星条旗新聞』によると、実際の有事になった時にはハワイ州、ワシントン州、アラスカ州などから陸軍兵士を短期間、アジアに配備することになるという。

 同大将は具体的な兵数を口にしていないが、準備を整えている。

 「誰も紛争を望んでいません。我々も望みませんが、有事の際にはどんなシナリオにも対応できる体制を整える必要があります」

 海洋でも最終的には陸軍の出動が必要になるとの見方だ。さらにブラウン大将は同会議で「最優先は中国です」と明言した。

 これは過去20年ほど、米軍が第一義として精力を注いできた中東でのテロリズムとの戦いから、対中政策へと戦略がシフトしてきたということでもある。

 特にイラクとアフガニスタンに派遣していた兵力を世界の別地域に向かわせる中で、中国がプライオリティーになったのだ。

B52戦略爆撃機


 今月に入ってから、米軍は南シナ海上空に「B52」戦略爆撃機を3回も飛行させている。

 「定例訓練」であるが、米軍はわざわざ公表する義務がない。しかし3回とも公式発表している。

 最初は3月4日で、2機が米領グアムのアンダーセン空軍基地を飛び立ち、1機は南シナ海上空を「定例訓練」し、もう1機は航空自衛隊と共同訓練をして帰還した。

 14日にも2機のB52戦略爆撃機が、さらに19日にも同様に2機を飛ばしている。

 米太平洋軍報道官は「米航空機は同盟国や友好国、さらに自由で開かれたインド・太平洋地域を守るために恒常的に同地域で作戦行動を行う」と述べて、南シナ海での中国の行動をけん制した。

 さらに米第7艦隊は11日、イージス駆逐艦「スプルーアンス」と「プレブル」を南シナ海に派遣。これは「航行の自由」作戦の一環で、今後も定期的に行っていく予定である。

 作戦の目的は中国が南沙(スプラトリー)諸島で過度な海洋進出をしていることへの「異議申し立てと国際法に準拠した航路を維持するため」だ。

 今月の米軍によるこうした動きを見ると、前述したブラウン大将の「陸海空および海兵隊の兵力が協力し合って対処する」プランは着実に前に進んでいるかにみえる。

 米軍のこうした行動に中国はすぐに反発。

 外務省報道官は米イージス駆逐艦の派遣直後、「米軍艦が中国の許可なく海域に進入したことは中国の主権を侵す行為」と嫌悪感を露わにした。

 さらに「米国は南シナ海で挑発し、緊張を生み出し、平和と安定を脅かしている」と挑発した。

 しかし中国こそが挑発を繰り返す平和と安定の破壊者であるとの見方は、米国では広く支持されている。

 首都ワシントンにある新アメリカ安全保障センターのイーリー・ラトナー副所長は、米国が南シナ海を含めたインド太平洋地域で効果的な防衛体制を維持することは中国の拡張をけん制する意味で重要であると説く。

 「米国の抑止力が同地域でなくなったら、台湾をはじめとする所地域に政治的不安定がもたらされることになる」

 いますぐに南シナ海で有事が勃発する可能性は低いが、文字どおり万難を排して準備しておく必要性は高い。

 ただやっかいなことは、中国は南沙諸島の人工島を軍事基地だけでなく非軍事基地としても使用する意図がある点だ。

 民生基地としての併用であれば、米軍は民間人をむやみに殺傷できないとの思惑がある。

 南シナ海は地政学的に重要な場所であると同時に、海洋資源の宝庫であることは広く知られている。

 中国の貿易額の64%の貨物は南シナ海を通過しているし、南シナ海経由の原油のうち23%は日本にも来ている。

 海洋資源という点に目を向けると、原油と天然ガスの埋蔵量が豊富である。

 米エネルギー情報局(EIA)の調査によると、原油の未発見埋蔵量は112億バレル。ところが中国政府が見積もる埋蔵量はさらに多い。

 中国海洋石油総公司が算出した埋蔵量は、EIAの10倍以上にあたる1250億バレルに達する。

 また天然ガスの埋蔵量はEIAの調査では190兆立方フィート。一方の中国海洋石油総公司の見積もりは500兆立方フィートで、やはり中国の方が2倍以上も多い。

 埋蔵量を正確に算出することは難しいが、大量の天然資源が埋もれているとことは間違いない。

 世界の他地域と比較しても、原油と天然ガスは中東、ロシアの埋蔵量にはかなわないが、天然資源の宝庫と呼んで差し支えない。

 中国政府がそれを狙わないわけがない。地政学的、資源的、軍事的に南シナ海を内海したいとの野心は強まる一方なのだ。

 米専門家からは、南シナ海が「中国のクリミア半島」になりつつあると危惧が聞こえてくる。

 ロシアが2014年、力ずくでクリミア半島を併合した手法を中国は手本にしているとの見方だ。

 中国による明らかな国際法違反を、米国だけでなく関係国がともに異議として唱えると同時に、圧力を加えていく必要がある。

 前出のブラウン陸軍大将は「すべての領域でいいポジショニングを得るために、陸軍が果たす役割もある」と、米軍はすでに普段から南シナ海を眺め、陸海空および海兵隊が総合的に対中国戦略を練っていることを示唆した。
【私の論評】本気の米国、南シナ海で比に攻撃あれば米が防衛するとポンペオ氏明言(゚д゚)!


フィリピン・マニラで同国のテオドロ・ロクシン外相(左)と握手するマイク・ポンペオ米国務長官

以前のこのブログでも掲載したように、南シナ海に関しては、ポンペオ米国務長官も最近重大な発言を行っています。これも、南シナ海への中国の進出阻止に本気の米国の姿勢を示すものです。

ポンペオ米国務長官は、中国の南シナ海への覇権拡張をけん制するために、南シナ海におけるフィリピン軍等への攻撃が米比相互防衛条約の対象になると明言し、以下のように述べました。
島国としてフィリピンは、自由な海洋へのアクセスに依存している。南シナ海における中国の人工島建設と軍事活動は、米国だけでなく貴国の主権、安全、したがって経済的活動に脅威を与えている。南シナ海は太平洋の一部をなしているので、同海域におけるフィリピンの軍、航空機、公船に対する如何なる攻撃も、米比相互防衛条約第4条の相互防衛義務発動の引き金となる。
この発言は3月1日、訪問先のフィリピンでドゥテルテ大統領、ロクシン外相と会談、同外相との共同記者会見において行われたものです。

2017年末に発表された国家安全保障戦略(NSS)、2018年の8月に成立した国防権限法でもフィリピンや台湾防衛の強化が謳われており、既定路線だったと言えます。また昨年のマイク・ペンス副大統領の東アジア首脳会議(EAS)で、「中国による南シナ海の軍事化と領土拡張は違法で危険だ」との発言を一層具体化するものとなりました。

なぜポンペオ氏はこうした発言をしたのでしょうか。

米比相互防衛条約第4条では、「各締約国が太平洋地域におけるいずれか一方の締約国に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の手続きに従って、共通の危険に対処するように行動することを宣言する」と規定しています。

これまでは南シナ海が「太平洋地域」に入るのかどうかが不明であったため、「南シナ海は太平洋の一部である」と発言することで、その曖昧さを払拭したのです。これによって、以前もこのブログで掲載したように、南シナ海問題、米国とフィリピンの「温度差」を解消しようとしているのでしょう。

米国の政府高官がこうした発言をしたのは数十年ぶりです。オバマ政権下では、同種の規定のある日米安保条約が尖閣に対して適用されるという宣言があった一方で、米比相互防衛条約の適用は注意深く避けられてきました。つまり中国が着々と南シナ海において、人工島を造り、軍事基地化していた時期にこのような発言はなかったため、フィリピンの米国に対する不信は募っていました。

もし、米国が日本に与えたのと同じような確証を私達にも与えてくれるなら、フィリピンは米国に頼ることができ、ドゥテルテ大統領は、中国に対して独自の外交政策を進めようとは思わなかったでしょう。

しかし、フィリピンはすでに、2つの島を失っています。その時米国は、フィリピンを助けに行きませんでした。米国は、国際法のもとで解決されると考えており、領土問題でフィリピンの味方はしませんでした。

中国に対して独自の外交政策をすすめてきたドゥテルテ大統領

一方、米国が4条の適用を宣言してこなかったのは、その適用を宣言すれば、アメリカが望まない戦争に巻き込まれる危険や、中国がアメリカの「レッドライン」を試す可能性が高まるからです。

それにもかかわらず、米比相互防衛条約の適用を宣言したのは、着々と進む南シナ海の中国の内海化の動きです。

中国は、東シナ海、南シナ海を聖域化していく方針で、中国は2010年代半ばに南シナ海を「核心的利益」と呼び、戦争をも辞さないという姿勢を示しています。

この方針は、1989年から1997年まで中国共産党中央軍事委員会副主席であり、人民解放軍海軍の司令官であった劉華清氏(1916~2011)によって出されたものです。

劉氏は、中国の軍隊が陸軍中心に編成されていることに不満を持ち、近代的な海軍を保有するよう主張。中国は1992年に「領海法」を施行し、海洋での資源や戦略拠点といった海洋権益の確保が、中国の安全保障にとって死活的に重要だと規定しました。

その中で中国は、東シナ海、南シナ海、南沙諸島を自国の領土だと一方的に宣言しています。つまり第一列島線から南シナ海を中国の内海として支配することを決めたのです。

中国は南シナ海を中国原潜の聖域にすることを狙っている

中国はすでに西沙諸島や南沙諸島において岩礁等を埋め立てて人工島を造り、軍事基地化しています。さらにフィリピンの隣に位置するスカボロー礁の埋め立てを完成すれば、戦略的トライアングルができ、南シナ海の内海化が完成します。

南シナ海は水深が深いため、ここに中国の原子力潜水艦が潜み、海南島の三亜海軍基地から南シナ海を通り、バシー海峡から太平洋に出ていくことができれば、アメリカ本土に核弾頭を打ち込むことができるようになります。

つまり米国に王手を打つことができるわけです。それは、米国が世界の警察官から撤退することを意味し、日本がアメリカの核の傘を失う時でもあるのです。

米比相互条約の適用について、「取引(deal)」が得意なトランプ大統領も、何のディールも持ち出していません。フィリピン防衛の表明は、アメリカは「覇権から降りない」という意志の表明そのものでもあるためでしょう。


南シナ海は、日本に輸送される石油の9割がこの海域を通過するなど、日本にとっても生命線ともいえる海域です。

この海域を護るために、日本は現在2つのことをしています。1つは、フィリピンやベトナムといった沿岸国に教育訓練を施したり、防衛装備を供与したりすることであり、もう1つは、南シナ海で潜水艦が訓練し港に寄港するなど、訓練と寄港で「中国の自由にさせない」というプレゼンスを示しています。

しかし、南シナ海に戦力を投じれば、東シナ海が手薄になるため、いずもを空母化したり、シーパワーを増やしていかないと、これ以上のことはできないでしょう。

政治とは未来を変えるために現在意思決定をすることです。海軍力の増強には時間がかかるため、日本も海軍力の増強に本腰を入れるとともに、米、英、仏とともに海洋の自由を守ることが不可欠となってきています。

このような準備をすすめる一方で、現在米国が行っている対中国冷戦も大きな意味を持ちます。これによって、中国共産党一党支配をやめ、中国が民主化、政治と経済の分離、法治国家し体制を変えるならば、新中国は国際法を遵守することになり、問題は解決します。

もし、中国が体制を変えないというなら、経済冷戦をさらに強め、米国のみならず世界の先進国がこれに協力し、中国経済を弱体化させ、その後自滅を待つか、軍事的に弱体化したとき、米国およびその他同盟国は、南シナ海の海域で何らかの軍事行動を起こすことになるでしょう。

中国は、現在の体制と、南シナ海の軍事基地をなんとしても守り抜くことになるでしょうから、米国は中国が他国に影響力を行使できなくなるくらいまで、経済を弱体化させ、軍事行動にでることになるでしょう。それは、いますぐということではなく、はやくても10年後くらいになることでしょう。

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2018年11月16日金曜日

米国が本気で進める、米中新冷戦「新マーシャル・プラン」の全貌―【私の論評】日本は中国封じ込めと、北方領土返還の二兎を追い成功すべき(゚д゚)!

米国が本気で進める、米中新冷戦「新マーシャル・プラン」の全貌

北方領土問題とも無関係ではない
ジャーナリスト
長谷川 幸洋

マーシャル・プランを発表するジョージ・C・マーシャル氏 写真はブログ管理人挿入 以下同じ


米ソ冷戦下の「援助計画」に酷似

米国の「中国包囲網」作りが急ピッチで進んでいる。トランプ政権はインド太平洋諸国の社会基盤(インフラ)整備に、最大600億ドル(約6兆8000億円)の支援を決めた。米ソ冷戦下の欧州復興計画(マーシャル・プラン)を思い起こさせる。

支援計画は、来日したペンス副大統領と安倍晋三首相との会談後の記者会見で発表された。会談では、日本が100億ドルを上乗せすることで合意し、支援総額は最大700億ドル(約7兆9000億円)になる。各国の発電所や道路、橋、港湾、トンネルなどの整備に低利融資する。

これはもちろん、中国の経済圏構想「一帯一路」を念頭に置いている。中国は各国のインフラ整備に巨額融資する一方、相手国の返済が苦しくなると、借金のかたに事実上、取り上げてしまうような政策を展開してきた。スリランカのハンバントタ港が典型だ。

ペンス氏はこれを「借金漬け外交」と呼んで、批判してきた。今回の支援計画には、そんな中国による囲い込みをけん制する狙いがある。「自由で開かれたインド太平洋」というキャッチフレーズは、まさにインド太平洋が「中国の縄張り」になるのを防ぐためだ。

この計画を米国がいかに重視しているかは、なにより金額に示されている。ポンペオ国務長官は7月、インド太平洋諸国に総額1億1300万ドルの支援を表明していた(https://jp.reuters.com/article/usa-trade-indian-ocean-china-idJPKBN1KK1W4)。それが、なんと一挙に530倍に膨れ上がった。こう言っては失礼だが、ケチなトランプ政権としては「異例の大盤振る舞い」だ。

支援の枠組みも一新した。 この話をいち早く特ダネとして報じた読売新聞(11月10日付朝刊)によれば、それまで米国の海外支援は国際開発庁(USAID)と海外民間投資公社(OPIC)の二本立てだった。ところが、10月に海外支援を強化するビルド法(BUILD)を成立させ、国際開発金融公社(USIFDC)に一本化した。そのうえで、新公社に600億ドルの支援枠を設けた、という。

10月といえば、ペンス副大統領が中国との対決姿勢を鮮明にする演説をしたのが10月4日である(10月12日公開コラム、https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57929)。その後、ペンス氏の来日に合わせて、日本の協力もとりつけたうえで計画を発表した。

ペンス演説から1ヵ月という動きの速さに注目すべきだ。本当の順番は逆で、トランプ政権は水面下で支援の枠組み作りを先行させ、メドが立ったのを確認したうえで、ペンス演説を世界に発信したのかもしれない。それほど、手際の良さが際立っている。

そうとでも考えなければ、わずかな期間で支援額を530倍にするような芸当は難しい。

支援額と発表のタイミングから、私は米ソ冷戦下の欧州復興計画(マーシャル・プラン)を思い出した。1947年6月、当時のマーシャル米国務長官が戦争で荒廃した欧州の復興を目的に発表した大規模援助計画である。

「冷戦のセオリー」通りの展開

米国は1951年6月までに、ドイツやフランス、オランダ、イタリアなど西欧諸国を対象に、総額102億ドルに上る食料や肥料、機械、輸送機器など物資と資金を提供した。マーシャル・プランなくして、西欧の復興はなかったと言っていい。

マーシャル・プランは単なる経済援助ではなかった。チャーチル英首相の「鉄のカーテン演説」(46年)から始まりつつあった「ソ連との冷戦」を戦う仕掛けの一つだった。自由な西欧を早く復興させ、米国とともに東側の共産勢力と対峙するためだ。

クリントン元大統領が1997年のマーシャル・プラン50周年記念式典で明らかにした数字によれば、102億ドルの援助額は現在価値にすると、880億ドルと見積もられている。偶然かもしれないが、今回の700億ドルは当時の援助額にほぼ匹敵する数字である。

チャーチル演説から1年後のマーシャル・プランと、ペンス演説から1カ月後のインド太平洋支援計画というタイミングも、まさに「歴史は繰り返す」実例を目の当たりにしているようだ(チャーチル演説など米ソ冷戦との比較は10月26日公開コラム参照、https://gendai.ismedia.jp/articles/-/58138)。

トランプ政権はあたかも、かつて米国がソ連相手に展開した「冷戦のセオリー」にしたがって、政策を打ち出しているかのように見える。そうだとすれば、これから何が起きるか。

経済援助から始まったマーシャル・プランは、次第にソ連を封じ込める軍事援助の色彩を強めていった。同じように、先の読売記事によれば、今回のインド太平洋支援計画も支援対象を「外交・安全保障政策上の理由から戦略的に選べるしくみとなった」という。

トランプ政権は当分、認めないだろうが、支援計画は次第に「中国封じ込め」の色彩を濃くしていく可能性がある。

ペンス演説は中国との対決姿勢を鮮明に示していたが、トランプ政権は公式には「中国との冷戦」や「封じ込め」の意図を否定している。たとえば、ポンペオ国務長官は11月9日、ワシントンで開いた米中外交・安全保障対話終了後の会見で「米国は中国に対する冷戦や封じ込め政策を求めていない」と語った。

だが、それを額面通りに受け止めるのはナイーブすぎる。私はむしろ、国務長官の口から「冷戦」「封じ込め」という言葉が飛び出したことに驚いた。言葉の上では否定しながら、それが世界の共通理解になりつつあることを暗に認めたも同然だ。

安全保障の世界では、国家の意図を指導者の言葉ではなく、実際の行動で理解するのは常識である。トランプ政権の意図は国務長官の言葉ではなく、中国の「一帯一路」に対抗するインド太平洋諸国への大規模支援計画という行動に示されている。

南シナ海は「中国の縄張り」に

一方、中国はますます強硬になっている。

米国は米中外交・安保対話で南シナ海の人工島に設置したミサイルの撤去を求めたが、中国は応じなかった。2015年9月の米中首脳会談で、習近平国家主席が「軍事化の意図はない」とオバマ大統領に言明した約束を守るようにも求めたが、中国側は「外部からの脅威に対抗する施設も必要だ」と開き直った。

それだけではない。 11月14日付読売新聞によれば、中国は東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国に対して、南シナ海で外国と軍事演習するときは、事前に中国の承認を求めている。要求は中国とASEANが検討中の南シナ海における行動規範の草案に盛り込まれた、という。

草案が採択されたら、南シナ海で米国や日本とASEAN加盟国の軍事演習は事実上、難しくなる。南シナ海が中国の縄張りになったも同然だ。

米ソ冷戦下では、マーシャル・プランの後、1950年1月から対共産圏輸出統制委員会(COCOM)が活動を始め、東側諸国への軍事技術や戦略物資の輸出が禁止された。

米国は8月、情報漏えいの恐れから国防権限法に基づいて、米政府及び政府と取引のある企業・団体に対して、中国政府と関係が深い通信大手、HuaweiやZTE製品の使用を禁止した。この延長線上で、中国への輸出を規制する「中国版COCOM」の策定も時間の問題ではないか。

以上のような米中のつばぜり合いを目の当たりにしても、日本では、いまだ米中新冷戦を否定し「貿易戦争は妥協の決着が可能」といった楽観論が一部に残っている。おめでたさを通り越して、ピンぼけというほかない。

現実を真正面から見ようとせず、願望混じりの現状認識が日本を誤った方向に導くのだ。

米中新冷戦とロシアの思惑

さて、ここまで書いたところで、北方領土問題についてニュースが飛び込んできた。安倍晋三首相が11月14日、シンガポールでロシアのプーチン大統領と会談し、1956年の「日ソ共同宣言」を基礎に平和条約交渉を加速させることで合意した、という。

日ソ共同宣言には、平和条約を締結した後、歯舞、色丹の2島を日本に引き渡すと明記されている。したがって、平和条約が結ばれれば、北方4島のうち、少なくとも歯舞、色丹は日本に戻ってくることになる。

ここに来て、日ロ交渉が前進しているのはなぜか。

私は、最大の理由はここでも「米中新冷戦」にある、とみる。11月2日公開コラム(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/58279)で指摘したように、ロシアは中国を潜在的なライバルとみている。中国が米国とガチンコ対決に入るなら、ロシアは逆に米国に接近する可能性があるのだ(この点は月刊『WiLL』12月号の連載コラムでも「米中冷戦で何が動くのか」と題して指摘した)。

その延長線上で、ロシア側には日本とも関係改善を図る動機があった。それが、今回の平和条約交渉加速につながっているのではないか。

9月14日公開コラム(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57520)に書いたように、北方領土問題の最大のハードルは「返還された領土に米国が米軍基地を置くかどうか」である。つまり、米国が問題解決の大きな鍵を握っている。

だが、その米国が中国を最大の脅威とみて「戦う資源」を中国に集中させていくなら、北方領土に米軍基地を新設して、わざわざロシアとの新たな火種を作る必要はない。安倍首相もプーチン氏も、そんな安全保障環境の新展開を受けて、交渉加速を合意した可能性が高い。

東アジアはまさに大激動の局面を迎えている。

【私の論評】日本は中国封じ込めと、北方領土返還の二兎を追い成功すべき(゚д゚)!

マーシャル・プランというと、中国の「一帯一路」を中国版「マーシャル・プラン」であるとする識者もいます。

これについては、英誌"The Economist"に"Will China’s Belt and Road Initiative outdo the Marshall Plan?"(中国の一帯一路構想は、マーシャル・プランに勝るか?)という記事が参考になります。以下に要約和訳して引用します。
マーシャル・プランと言えば、大規模な資金援助であったかのように思われがちですが、実際には、驚くほど少なかったということを歴史学者は指摘しているようです。資金援助を受けた国(16ヶ国)のGDPの2.5%に満たない額というのですから、確かに、資金援助としては「小さい」としか言い様がないですね。

これに対して、一帯一路構想は、既に締結された契約投資額で既にマーシャル・プランを上回っていて、2017年5月の中国政府主催の会議では、今後5年間の投資額は1500億ドルに達し、中国当局は1兆ドルでも問題ないというスタンスのようであり、金額については、一帯一路構想の圧勝です。

「量」で勝てなかったら、「質」ではどうだ!?という感じで、定性的な比較が始まります。 
金額だけでは一帯一路構想の過大評価につながるのと同時に、マーシャル・プランの貢献度を過小評価することにもなるとして、マーシャルプランの意義を援助金の額ではなく、市場適合的な政策を促進した点にあるとしています。すなわち、米国からの援助金を受け取る条件として、欧州各国の政府は金融の安定性を回復させ、貿易障壁を取り除いたり、また、マーシャルプランによる援助額と同額の自国通貨を積み立てることが義務付けられ、この積立金は米国の承認を得た場合にのみ使用が許されるなど、マクロ経済の安定化や貿易自由化、資本蓄積の推奨など市場経済の導入を促進したわけです。 
これに対して、中国の一帯一路構想が、資金援助国の市場経済化に貢献することはないと言い切ります。というのは、マーシャル・プランの成功要因は、資金配分の役割を市場に任せたところにあり、国家資本主義の中国政府は、国内の経済でさえ市場に任せず、国家統制しているから、同構想の資金を市場に任せないが故に失敗すると結論づけています。
以上のことから、中国の「一帯一路」は、マーシャル・プランとはそもそも異なることがわかります。中国は元々、民主化、政治と経済の分離、法治国家化ができていないわけですから、マーシャル・プランが目指した、マクロ経済の安定化や貿易自由化、資本蓄積の推奨など市場経済の導入の促進などてできないということです。

一方米国の経済支援は、どの程度の範囲でこの資金を提供するかは今のところ、わからないものの、金額自体はマーシャル・プランと同規模のようです。そうして、米国としては支援対象国に対して、マクロ経済の安定化や貿易自由化、資本蓄積の推奨など市場経済の導入の促進をはかるでしょうから、やはりマーシャル・プランとかなり似た性格のものになるでしょう。

エコノミクス誌は、マーシャル・プランの成功要因は、資金配分の役割を市場に任せたところにあるとしています。一方、「一帯一路」は、資金を国家統制し市場に任せないので失敗するとしています。

このブログでは、以前から対外ブロジェクトは、自国よりもかなり大きく経済成長で実行(例えば成長率数%の成熟国が、成長率10%以上の成長国に投資)すると、見返りが大きいのですが、そうでない場合は見返りが小さいということで、現在の中国は経済成長が停滞しているもののある程度の伸びは達成しているのですが、「一帯一路」の当該国はさほど経済成長しているところはないので、「一帯一路」は、失敗するとしてきました。

AIIB当初参加国

いずれにしても、「一帯一路」は失敗するのは最初から、確定と言って良いものと思います。1980年代のソ連のように、中国の労働力がもたらした長期的な繁栄は尽きようとしており、投資によって成長神話を維持しようとしています。「一帯一路」の失敗と米国による対中国「冷戦Ⅱ」により、中国はかつてのソ連のように滅亡へと向かう力の前に倒れてしまうことになるでしょう。

一方、「新マーシャル・プラン」は、マーシャル・プランと同じように、マクロ経済の安定化や貿易自由化、資本蓄積の推奨など市場経済の導入の促進という目的にすれば、成功する確率は高いでしょう。

さらに、日本が100億ドルを上乗せすることで合意し、支援総額は最大700億ドル(約7兆9000億円)になったことも有意義であったと考えます。そもそも、中国の「一帯一路」などの対象地域になる国々は米国に対する反発心が強いです。米国が単独で投資ということになれば、かなり難しいです。

しかし、これに日本が関与し、日本がこれらの国々と米国を橋渡しすれば、かなりやりやすくなるのは間違いないです。

上の記事では、長谷川氏は、
ここに来て、日ロ交渉が前進しているのはなぜか。

私は、最大の理由はここでも「米中新冷戦」にある、とみる。ロシアは中国を潜在的なライバルとみている。中国が米国とガチンコ対決に入るなら、ロシアは逆に米国に接近する可能性があるのだ。その延長線上で、ロシア側には日本とも関係改善を図る動機があった。
としています。

米国の戦略家である、ルトワック氏は従来から、中ロ接近は見せかけにすぎないことを指摘していました。それについては、ブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【西村幸祐氏FB】ルトワックはウクライナ危機でシナとロシアの接近は氷の微笑だと分析する。―【私の論評】東・南シナ海が騒がしくなったのは、ソ連が崩壊したから! 安全保障は統合的な問題であり、能天気な平和主義は支那に一方的に利用されるだけ(゚д゚)!
ルトワック氏
この記事は、2014年5月のものですが、この時点でルトワック氏は簡単にまとめると中ロに関しては、以下のうよな予想をしています。
ロシアは、中国とは仲良くならない。シベリアなどに侵食してくる中国を脅威だとみているからだ。むしろ、ロシアは中国をにらみ、本当は日米と協力を広げたいはずだ。
実際、ロシアは以前からそう考えていたのでしょう。安倍総理も従来から、ロシアを対中国封じ込めの一角に据えたいと考えていたようです。

ここにきて、ペンス副大統領の言う「冷戦Ⅱ」が本格的に始まったわけですから、ロシアとしては日米に急接近したいと考えるのは当然でしょう。米国による制裁の停止や、日本の経済援助など喉から手が出るほど欲しがっていることでしょう。

ロシアは軍事力は未だに強力であり、そのために大国とみられていますが、一方では経済ではいまや韓国よりもわずかに下です。その韓国の経済の規模は東京都と同程度です。これを考えると、最早ロシアは大国ではありません。



北方領土交渉も、日ロの関係だけではなく、中国や米国も考慮しなければならない事項となってきたともいえます。ただし、このような状況になったからこそ、返還交渉が急加速する可能性もでてきたということです。

安倍総理としては、この機会を逃さず、さらなる中国封じ込めと、北方領土返還の両方に成功して頂きたいものです。そうして、これはやりようによっては、成功する見込みは十分にあると思います。

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2017年4月21日金曜日

半島に米原潜など50隻集結! 金正恩氏はのど元に「トマホーク」を突き付けられている状況―【私の論評】世界最大の原潜「ミシガン」がなりを潜めている!トランプ大統領は本気だ(゚д゚)!

半島に米原潜など50隻集結! 金正恩氏はのど元に「トマホーク」を突き付けられている状況

世界最強の攻撃型原潜、米海軍のバージニア級 写真はブログ管理人挿入 以下同じ
朝鮮半島の周辺海域で「水面下の戦い」が繰り広げられている。米国と北朝鮮、中国、日本、韓国、ロシアなどの50隻前後とみられる潜水艦が、息を殺して、お互いをけん制しているのだ。ドナルド・トランプ米大統領は「無敵艦隊を派遣した。空母よりずっと強力な潜水艦も持っている」と、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長に警告した。水中から巡航ミサイルのターゲットにされた正恩氏は、「6回目の核実験」を強行できるのか。

 「アジア太平洋地域の平和と安全にとって、北朝鮮は最も危険で差し迫った脅威だ」「われわれはいかなる攻撃をも打ち負かし、通常兵器や核兵器が使用された際にも、米国は圧倒的かつ効果的に対応する」

 マイク・ペンス米副大統領は19日、米軍横須賀基地(神奈川県横須賀市)に停泊中の原子力空母「ロナルド・レーガン」の艦上で、米兵や自衛隊員らを、こう強く激励した。

ロナルド・レーガンの艦上で、米兵や自衛隊員らを激励したマイク・ペンス米副大統領
 北朝鮮は来週25日の「建軍節」(朝鮮人民軍創建記念日)に合わせて、「6回目の核実験」や「ICBM(大陸間弾道ミサイル)の発射」を強行する可能性が指摘されている。

 いずれも、トランプ政権が設定する「レッドライン」(越えてはならない一線)といわれ、北朝鮮が暴挙に踏み切った場合、トランプ氏は「斬首作戦」「限定空爆」を命じることも示唆している。北上が遅れていた原子力空母「カール・ビンソン」も、25~28日頃には朝鮮半島近くの日本海に到着する見込みだ。

 中国の習近平国家主席は、トランプ氏がシリア攻撃で見せた覚悟を受けて、北朝鮮の暴発を押さえ込もうと、さまざまなチャンネルで交渉を試みているとされる。

 朝鮮半島をめぐる神経戦が続くなか、周辺海域では「究極のステルス兵器」といわれる潜水艦の情報が相次いでいる。

 ペンス氏が韓国を訪問し、北緯38度線の非武装地帯(DMZ)視察した17日、米海軍のロサンゼルス級原子力潜水艦「シャイアン」が、米軍佐世保基地(長崎県佐世保市)がある同港内で一時浮上し、約45分間で海の中に消えたという。フジテレビが同日伝えた。

 シャイアンはロス級62番艦で、2003年に始まった「イラクの自由作戦」(イラク戦争)に参加し、最初に巡航ミサイル「トマホーク」を打ち込んだ攻撃型潜水艦として知られる。

 軍事ジャーナリストの世良光弘氏は「シャイアンは、イラク戦争で戦果を挙げた。実戦経験のある主力艦を見せつけることで、北朝鮮や中国を威圧する狙いがあったのだろう。佐世保に寄港し、「トマホーク」を補給した可能性もある。浮上したのはシャイアンだけだが、米軍は朝鮮半島の周辺海域に、複数の攻撃型原潜を展開しているはずだ」と分析した。

 米軍は、北朝鮮のICBM発射などに備え、迎撃ミサイルを搭載したイージス艦16隻を周辺海域に展開しているとの情報がある。加えて、数十発の巡航ミサイルを搭載した攻撃型潜水艦も周辺海域に潜んでいるようだ。

 北朝鮮の首都・平壌(ピョンヤン)と、朝鮮半島西側の黄海は50キロ程度しか離れていない。潜水艦からのミサイル攻撃は秘匿性があり、敵に探知されにくいため打撃力がより高まる。正恩氏はのど元に「トマホーク」を突き付けられている状況といえる。

 当然、北朝鮮の潜水艦や潜水艇も潜行しているはずだ。そして、「血の友誼(ゆうぎ)」を結ぶ中国軍も動き出した。

 韓国・中央日報(日本語版)は14日、中国海軍の北海艦隊と東海艦隊が潜水艦を10隻ずつ、朝鮮半島の周辺海域に急派したと伝え、狙いについて以下のように伝えた。

 《中国軍は(中略)戦争勃発の可能性に備えている》《米国と北朝鮮の武力衝突が発生する場合、最初に米軍は、韓国と日本に脅威となる(水中からミサイル『北極星1号』を発射した)北朝鮮『新浦(シンポ)級潜水艦』を打撃する。(中略)中国海軍は新浦級潜水艦を監視追跡する》

北朝鮮『新浦(シンポ)級潜水艦』
 前出の世良氏は「米韓合同軍事演習が始まってから、中国は朝鮮半島周辺に潜水艦を派遣している。米軍艦船が集結するなか、潜水艦の作戦遂行に欠かせない各艦のデータを集める狙いだろう。中国海軍が20隻派遣しているなら、米海軍も同程度の派遣をしている可能性がある」と語った。

 米国と中国が20隻ずつ計40隻前後とすれば、北朝鮮や韓国、日本、ロシアなどの潜水艦も合わせれば、周辺海域に50隻程度が静かに集結している可能性もある。まさに、各国艦が海中でにらみ合っている状況だ。

 評論家で軍事ジャーナリストの潮匡人氏は「潜水艦は極めて秘匿性が高く、当局者ですら知らないことがある。緊迫した情勢下では、さまざまな情報が出てくる。火のないところに煙は立たない。何らかの動きの片鱗(へんりん)であり、1つ1つの事実を積み上げていくしかない。水面下での神経戦は今後も続くだろう」と語った。
【私の論評】世界最大の原潜「ミシガン」がなりを潜めている!トランプ大統領は本気だ(゚д゚)!

さて、上の記事では、北朝鮮、韓国、日本、ロシアなどの潜水艦も合わせれば、周辺海域に50隻程度が静かに集結している可能性があると掲載されていました。

当然といえば、当然でしょう。日本の潜水艦も間違いなく、潜伏していることでしょう。そうして、このブログでも過去に何度かこのブログに掲載してきたように、日本の潜水艦は世界一ステルス性が優れているため、米軍は別にして、北朝鮮、中国、ロシア側にはいつさいその位置を知られることなく、隠密裏に行動し、哨戒活動などにあたっていることでしょう。

そうりゅう型5番艦 SS-505ずいりゅう
これに対して、北朝鮮の潜水艦のステルス性などとるに足らないほどの性能の低さであり、日米は北朝鮮の潜水艦の行動を丸裸にでもしたような状態で逐一把握していることでしょう。日米の潜水艦隊にとっては、北朝鮮の潜水艦は赤子の手をひねるように簡単に撃沈できます。SLBMを発射するような不穏な動きを見せた途端に、あっと言う間に撃沈してしまうことでしょう。

さて、その他にも、日本の哨戒機なども、哨戒活動にすでにあたっている可能性もあります。日本の哨戒機などの哨戒活動もこのブログに何度か掲載してきたように、世界トップクラスの水準であるため、これも使わない手はないはずです。すでに以下のようなニュースも伝わってきています。

日本の対潜哨戒機P3C
韓国国防省によると、韓国南部の済州(チェジュ)島沖の公海で今月3日、日米韓による北朝鮮の潜水艦を探知、追跡する合同訓練が始まりました。3カ国合同での訓練は初めてでで、5日まで行われました。 
訓練には、海上自衛隊から護衛艦「さわぎり」とP3C哨戒機、ヘリが、米韓海軍からはイージス駆逐艦やヘリ、哨戒機などがそれぞれ参加。北朝鮮の潜水艦が海域に展開していることを想定した上で、これを探索、識別、追跡し、3カ国で情報を交換します。北朝鮮が潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の開発などを進めていることに対応するため計画されました。 
護衛艦「さわぎり」
韓国国防省では、今回の訓練が昨年12月の日米韓防衛実務者協議で話し合われてから初の実施であるとしており、北朝鮮の核とミサイルの挑発に対し3カ国の強力な対抗姿勢を示すものであることを強調しています。
その他米国からは、北朝鮮有事にあわせて、普段はなかなか見られないような様々な艦船や航空機が日本に来ています。以下に、それを掲載します。無論これは、軍事行動なので、直接米軍が公表したものではありません。たまたまそれを発見したマスコミなどが分析してわかったものです。

まずは、コンスタントフェニックスという航空機です。これは先日日本の沖縄嘉手納基地に展開されたばかりです。


この航空機の胴体の「UNITED STATES AIR FORCE」の文字の下に出っ張りが付いています。 高い高度を飛びながらこの部分から空気を取り入れます。この中にフィルターがあって、空気中のこまかい塵を集めます。

その塵の中には、核実験で発生した生成物質があるかもしれません。あるいはアルゴンとかラドンとかの放射性のガスがあるかもしれません。

そういった物質がどういう種類でどのくらいの割合で出てきているかを調べると元の核爆弾はウラニウムなのかプルトニウムなのか、どちらにせよどのくらいうまく爆発したのか、あるいはあんまりうまく爆発しなかったのかなどを分析できるのです。これは世界に2機しかありません。コンスタントフェニックスは飛びながらその微粒子を機内ですぐに、ある程度分析する能力もあります。

さて、さらに珍しい船が沖縄と横浜で確認されています。


上の写真は、沖縄の那覇軍港に停泊する、「Cチャンピオン」というアメリカ海軍の特殊部隊「シールズ」の訓練支援用の船です。この船自体は民間の船ですが、アメリカ海軍が雇って使っています。船の後ろの部分に赤いクレーンのようなものがあって、そこに今は一隻RHIBっていう高速ゴムボートを積んでいます。

ある書籍によると、アメリカ海軍特殊部隊シールズが敵地に潜入する時に使う特殊作戦用小型潜水艇SDVが積まれることがあるというのですが、この写真では確認できません。

しかし、この船が来ているということは日本の周辺で海軍特殊部隊シールズが何かの訓練をしているということを、うかがわせます。確かに米韓演習ではこの船が上陸演習も実施しています。日本でも、シールズが海から陸に上陸し海岸を偵察してくるような演習をやっているのかもしれません。いずれにせよ、今ネイビー・シールズが日本周辺にいるのかもしれないという事実を示すものかもしれません。

さて、次は横浜で発見された艦船です。


これは、アメリカ海軍の遠征ドック型輸送船「モントフォードポイント」という船です。変わった形をしています。

真ん中を削ったような形をした船ですが、この船が何をするかというと、まず、沖合で他の船に横付けして戦車とかトラックとか車輌をおろします。さらにLCAC(エルキャック)という上陸用のホバークラフトを搭載していて、そのLCACに戦車やトラックを乗せて、LCACがモントフォードポイントから発進して海岸まで運ぶのです。

つまり港のないところでもモントフォードポイントがあると戦車やトラック、あるいは兵士を陸揚げすることができるのです。

つまりこの船は、上陸作戦の支援用のとても大きな船なのです。LCACが3隻ぐらい乗ります。輸送用のホバークラフトLCACはモントフォードポイントが船体を傾けることで船上から海上に移動させることができます。

モントフォードポイントは「動く海岸」のようなものです。この船が傾き、下のイラストのようにのにLCACというホバークラフトがこの船を海岸に見立てて行き来できるのです。この船の中にはタンクが42個あってタンクに水を入れることで傾きを調整するようになっています。全長240mもあります。


さて、アメリカのトランプ大統領がFOXビジネスネットワークの番組、「モーニングス・ウィズ・マリア」で自ら空母派遣について言及しました。

ブログ冒頭の記事にもあるように、トランプ大統領は、この番組の中で対北朝鮮問題にふれ「我々は無敵艦隊(カール・ビンソン打撃群)を送りつつある。とても強力だ。我々は潜水艦も保有している。大変強力で空母よりももっと強力なものだ。それが私の言えることだ」と発言していました。そうしてカールビンソンはまもなく朝鮮半島周辺のいずれかの海域に到着します。

この番組で、空母より強力な潜水艦というのはどんな潜水艦なのか、トランプ大統領が具体的に何を言っているのか断定はできませんが、アメリカ海軍は4隻、太平洋側と大西洋側に2隻ずつ改良型オハイオ級巡航ミサイル潜水艦を持っていますおそらくそれを意味するものと思います。

さて、「ミシガン」というオハイオ級原子力潜水艦もブログ冒頭の記事にある、朝鮮半島付近の海域に展開されていることが考えれます。この潜水艦は特殊部隊シールズを乗せることができるだけでなく、巡航ミサイルのトマホークを1隻で最大154発、水中から連射できるのです。

オハイオ級原子力潜水艦はアメリカ海軍が現在保有する唯一の戦略ミサイル原子力潜水艦(以下SSBNと表記)です。西側諸国で最大の排水量を誇る潜水艦であり、また全長と弾道ミサイル搭載数は現役の潜水艦で最大です。

先日のシリアの攻撃の時に駆逐艦2隻で発射したトマホークの数が59発だからその規模がとんでもないことがわかります。下の写真は、水中のハッチが開いて7つある発射口からトマホークが高圧空気で押し出されるところです。


このあと水上に飛び出してロケットに点火、水上すれすれを飛んで目標に向かいます。太平洋上には「オハイオ」と「ミシガン」が展開されているのですがオハイオは先ごろアメリカ本土でドック入りしたんで、今動いているとすればこのミシガンのはずです。

しかし潜水艦は、もともと隠密裏に動くものですから、米国もこの潜水艦が今どこにいるかなど公表しておらず、今どこで何をしているのか正確なことはわかりません。しかし、この潜水艦が付近に潜伏している可能性は十分あります。

ドック入りした改良型オハイオ級巡航ミサイル潜水艦「ミシガン」 その巨大さがわかる
ブログ冒頭の記事では、ロサンゼルス級原子力潜水艦「シャイアン」が米軍佐世保基地(長崎県佐世保市)がある同港内で一時浮上し、約45分間で海の中に消えたという事実を伝えていますが、「ミシガン」はこれを上回る大きなものであり、私自身は、トランプ氏が発言した「空母より強力な潜水艦」はこちらのほうではないか思います。

仮にもしトマホークを154発撃てるような代物が朝鮮半島付近をうろうろしているとしたら、これは大変な状況です。そうして、本命のミシガンが未だどこに潜伏しているのかわからないという状況が非常に不気味です。

この本命の「ミシガン」が、「シャイアン」のようにどこかに姿を表せば、今回のトランプ大統領による軍事行動も威嚇の範疇にはいるのではないかと推測できるのですが、潜伏したきりで音沙汰がないというのが、気にかかります。

やはり、トランプ大統領は今回もし北朝鮮が、核実験に踏み切った場合、何らかの軍事行動に打って出るとみておくべきものと思います。

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