スクープ最前線 加賀孝英
トランプ米大統領は16日、フィンランドの首都ヘルシンキで、ロシアのプーチン大統領と会談 写真はブログ管理人挿入 以下同じ |
「トランプ氏は、中国に史上最大の貿易戦争を仕掛けた。中国の習近平国家主席は報復を宣言した。それどころか、習氏がキレて、南・東シナ海での、米国との軍事衝突まで想定した『極秘指令を軍に出した』という情報がある」
旧知の米軍関係者は緊張した声でそういった。
ご承知の通り、米国は6日の340億ドル(約3兆7600億円)に続き、10日、2000億ドル(約22兆円)の中国製品に対し、追加制裁を発表した。中国も同等の報復を宣言。全世界に衝撃が走った。
外務省関係者は「トランプ政権は、中国が軍事を含む米国のハイテク技術を盗みまくり、『覇権国家を目指している』と激怒している。中国のハイテク産業の息の根を止めるつもりだ。これに対し、習氏は6月下旬、北京で開かれた外交政策の中央外事工作会議で、『中国中心の新たな国際秩序を構築していく』と宣言した。『米国を潰す』と言ったに等しい。このままでは、貿易戦争だけでは終わらない」と解説した。
6月下旬、北京で開かれた中央外事工作会議で、『中国中心の 新たな国際秩序を構築していく』と宣言した習近平 |
米中が、軍事的に対峙(たいじ)する最前線は、南シナ海と台湾周辺、沖縄県・尖閣諸島を含む東シナ海だ。中でも、最も警戒すべきは南シナ海だ。
ご承知の通り、中国は国際法を無視して、南シナ海で岩礁を埋め立て、複数の人工島を軍事基地化し、電波妨害装置や対艦巡航ミサイル、地対空ミサイルなどを配備した。戦略爆撃機の離着陸訓練まで実施している。
「ふざけるな!」だ。中国は、世界屈指のシーレーンである南シナ海を、自国の内海として支配するつもりだ。
環太平洋合同演習(リムパック、RIMPAC)2018(VOA) |
米国防総省は5月末、世界最大規模の多国間海軍演習「環太平洋合同演習」(リムパック=6月下旬~8月初旬実施、20カ国以上参加)に「中国の招待を取り消す(=排除する)」と発表した。
中国が周辺国を軍事力で恫喝(どうかつ)し、シーレーンの一方的支配を画策していることへの、米国の強烈な抗議表明だ。米国防総省は、対艦巡航ミサイルなど、軍事施設の即時撤去を求めている。当たり前だ。
ところが、どうだ。習氏は6月27日、ジェームズ・マティス米国防長官と会談した際、南シナ海の軍事拠点化について、「祖先から受け継いだ領土は一寸たりとも失うことはできない」と一蹴。米国の要求を拒絶した。
その南シナ海で、中国は仰天行動に出ている。以下、複数の中国人民解放軍、中国政府関係者から入手した情報だ。
「中国海軍は5月下旬、南シナ海で、56基の無人小型ボートによる『群れ攻撃』の訓練を実施し、映像を公開した。米艦船が『航行の自由』作戦で、人工島周辺に侵入すれば、無人小型ボートに爆薬を積んで『特攻自爆攻撃をする』という米国への警告だ」
「兵士が漁民に偽装してゲリラ工作をしている。米国が海中に設置したパッシブ・ソナー(=潜水艦の音などを監視する水中聴音機)を撤去し、米軍の監視網を破壊している。2~3人乗りの小型潜水艦で、米艦艇のスクリューを破壊する訓練も行っている」
中国国内で「反米デモを日常化させ、人民の反米感情を扇動し、対米軍事衝突への世論工作」も検討されているという。
驚かないでいただきたい。日本にも危機が迫っている。
日米情報当局関係者は「中国は、台湾への武力侵攻を本気で計画している。その際、日本の尖閣諸島への同時侵攻計画がある。中国は今後、ロシアやシリア、イラン、北朝鮮、韓国などと『反米反日包囲網』を構築するつもりだ。安倍晋三首相潰しの世論工作、日本への恫喝が激しくなる危険がある」と語った。
トランプ氏が16日、プーチン氏と米露首脳会談を行い、中国を牽制(けんせい)した意味は大きい。
日本は断じて屈してはならない。あえていう。国難が迫っている。こうしたなか、一部の左派野党は、多数の犠牲者を出した「平成30年7月豪雨」まで、政争の具にして騒いでいる。いい加減にしろ!
■加賀孝英(かが・こうえい) ジャーナリスト。1957年生まれ。週刊文春、新潮社を経て独立。95年、第1回編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム大賞受賞。週刊誌、月刊誌を舞台に幅広く活躍し、数々のスクープで知られている。
【私の論評】米中貿易戦争は、国際秩序の天下分け目の大戦の始まり(゚д゚)!
今年の軍事演習には26カ国から2万5000人の兵力、戦艦や潜水艦など52隻、航空機200機ほどが参加しています。参加国は〇ブラジル、カナダ、チリ、コロンビア、フランス、ドイツ、インド、インドネシア、〇イスラエル、日本、マレーシア、メキシコ、オランダ、ニュージーランド、ペルー、韓国、フィリピン、シンガポール、〇スリランカ、タイ、トンガ、英国、米国、〇ベトナム(〇は初参加国)。
米シンクタンクのCNA海軍解析センターの上級研究員ロジャー・クリフ氏は米政府系VOAの取材で、米軍の目的は「志を共にする」国と訓練を実施し、アジア太平洋地域における中国の影響力を抑制することだと語りました。特に、中国不在のなかで、最も中国に近いベトナムが参加することは意義深いとしました。
ベトナム国防省によると、ベトナムは8人の海軍職員を派遣しました。船舶は参加していません。
米軍紙スター・&・ストライプスもまた、米国はベトナムは潜在的なアジア太平洋地域の均衡をとる力があると見なしていると報じました。
2016年以来、米国とベトナムの関係は強化しています。2016年、米国はベトナムへの殺傷力ある武器の販売禁止を解きました。2018年3月、米国空母は40年ぶりにベトナム港に寄港しました。日本官製の外交専門誌「外交」 によると、ベトナムは日本の提唱する「自由で開かれたインド太平洋戦略」の重要なパートナーだといいます。
軍事演習には、災害救援、水陸両用作戦、海賊対策、ミサイル射撃、地雷除去、海上保安、対潜水艦戦、防空作戦などがあります。米軍は専門特殊部隊がリムパックに初めて参加します。
実弾演習では、特殊部隊が海上の船舶を沈める「海軍打撃ミサイル」を発射します。上空では「長距離対艦ミサイル」を発射する予定です。
米紙ポピュラー・マシーナリーによると、ますます軍事力を強化させる中国海軍に対抗して、米空軍B-1B爆撃機は、新しい「長距離対艦ミサイル」を発射する可能性が高いです。同紙は、日本が「島に配備された対艦ミサイルが、日本の排他的経済水域を頻繁に通過する中国艦隊に圧力をかけることができる」ことを証明したいと望んでいる、と報じました。
陸軍の「海軍打撃ミサイル」は、地上の海岸線または島に配備を想定し、数千平方キロメートル離れた洋上の敵艦隊を排除できる能力があります。
中国共産党メディア・環球時報は、中国専門家の話として、リムパックのプログラムのかなりの割合は、中国を対象と想定しているとの分析を報じました。
5月23日、米国防総省は、リムパックに参加するための中国への招待をキャンセルすることを決めました。米国防総省の関係者は、中国の南シナ海における人工島の軍事拠点化に対する予備対応だと語りました。
中国は以前、2014年と2016年のリムパックに参加したことがあります。米国防総省は14日までに、中国のスパイ船がハワイ沖で実施中の環太平洋合同演習(リムパック)を偵察していることを明らかにしました。
米太平洋艦隊のチャールズ・ブラウン報道官は声明で、「ハワイ周辺の米領海外で中国の偵察船が活動しているのを監視中だ」と説明。この船は今後も米領海外にとどまる見通しだとし、リムパックを妨害する動きは取らないものとみていると述べました。
国防総省は5月に中国の招待取り消しを発表した際、南シナ海の係争水域での「軍事化の継続」を理由に挙げ、対艦ミサイルや地対空ミサイルシステム、電子妨害装置の配備などに言及していました。
米軍当局者がCNNに明かしたところによると、スパイ船がハワイ沖の海域に到着したのは今月11日。これまでのところ米国の領海には進入していないといいます。
演習参加国で作る合同部隊の海上部門司令官も、中国船の出没を批判。「非参加国の艦船の出没により演習が妨害される可能性があるというのは非常に残念」と述べました。
私自身は以前からこのブログで述べているように、米中が軍事力で直接対決するのは現実的ではないと考えています。
ピーター・ナバロ氏 |
トランプ大統領は就任当初、米国の通商政策の司令塔として新設した「国家通商会議」のトップに、このナバロ氏を据えました。
ところが、トランプ大統領が当選した直後、北朝鮮による弾道ミサイルと核開発問題が浮上しました。実はオバマ政権の間に軍事費が大幅に削られたため米軍が弱体化してきており、すぐ北朝鮮に対して軍事行動を起こせる状況ではありませんでした。
ゆえに時間稼ぎの必要もあり、トランプ政権は中国の習氏と組んで北朝鮮に圧力を加える方策を採用し、対中強硬策を控えてきたのですが、はかばかしい成果は見られませんでした。
そこでトランプ大統領は昨年12月、安全保障政策の基本方針を示す「国家安全保障戦略」の中で、中国とロシアを力による「現状変更勢力」、すなわち「米国の価値や利益とは正反対の世界への転換を図る勢力」として名指しで非難しました。このトランプ政権の「反中」戦略を真っ向から批判したのが、パンダ・ハガー(対中融和派)たちでした。
しかしその後、中国共産党自らが「長期独裁を目指す」と主張しました。ドラゴン・スレイヤー(対中国強硬派)とすれば、「やはりトランプ政権の反中戦略は正しい」となります。長期独裁を目指す習氏のおかげで米国では、ドラゴン・スレイヤーの力がますます増していくことでしょう。
そこでトランプ大統領は昨年12月、安全保障政策の基本方針を示す「国家安全保障戦略」の中で、中国とロシアを力による「現状変更勢力」、すなわち「米国の価値や利益とは正反対の世界への転換を図る勢力」として名指しで非難しました。このトランプ政権の「反中」戦略を真っ向から批判したのが、パンダ・ハガー(対中融和派)たちでした。
しかしその後、中国共産党自らが「長期独裁を目指す」と主張しました。ドラゴン・スレイヤー(対中国強硬派)とすれば、「やはりトランプ政権の反中戦略は正しい」となります。長期独裁を目指す習氏のおかげで米国では、ドラゴン・スレイヤーの力がますます増していくことでしょう。
この戦いは、たとえば中国が貿易黒字をこれだけ減らせば終わり、だとか、米大統領選中間選挙までといった期限付きのものではなく、どちらかが音を上げるまで長引くであろう、というのが多くのアナリストたちの予測です。
やはり、これは、ピーター・ナバロ氏の通商、金融、軍事、外交を組み合わせて中国の軍事的台頭を抑制しようとする戦略の最初の発動と捉えるべきです。この戦争は、中国がある程度の民主化、政治と経済の分離、法治国家化を実現するか、現体制のまま経済的に相当弱体化するまで継続されることになるでしょう。
「韜光養晦」という中国の外交・安保の方針を提唱した鄧小平 |
このことが米国の対中警戒感を一気に上昇させ、トランプ政権の対中強硬路線を勢いづけることになりました。
今、北戴河会議(8月、避暑地の北戴河で行われる共産党中央幹部・長老らによる非公式会議)を前に、米中貿易戦争の責任を王滬寧が取らされて失脚するといった説や長老らによる政治局拡大会議招集要求(習近平路線の誤りを修正させ、集団指導体制に戻すため)が出ているといった噂が出ているのは、その噂の真偽はともかく、党内でも習近平路線の過ちを追及し、修正を求める声が潜在的に少なくない、政権の足元は習近平の独裁化まい進とは裏腹に揺らいでいるようです。
この貿易戦争がどういう決着にいたるかによっては、独裁者習近平が率いる中国の特色ある現代社会主義強国なる戦後世界秩序とは全く異なる世界が世界の半分を支配する世の中になるかもしれないですし、世界最大の社会主義国家の終焉の引き金になるかもしれないです。
今、北戴河会議(8月、避暑地の北戴河で行われる共産党中央幹部・長老らによる非公式会議)を前に、米中貿易戦争の責任を王滬寧が取らされて失脚するといった説や長老らによる政治局拡大会議招集要求(習近平路線の誤りを修正させ、集団指導体制に戻すため)が出ているといった噂が出ているのは、その噂の真偽はともかく、党内でも習近平路線の過ちを追及し、修正を求める声が潜在的に少なくない、政権の足元は習近平の独裁化まい進とは裏腹に揺らいでいるようです。
この貿易戦争がどういう決着にいたるかによっては、独裁者習近平が率いる中国の特色ある現代社会主義強国なる戦後世界秩序とは全く異なる世界が世界の半分を支配する世の中になるかもしれないですし、世界最大の社会主義国家の終焉の引き金になるかもしれないです。
これは、間違いなく国際秩序の天下分け目の大戦なのです。我が国としては経済の悪影響を懸念したり漁夫の利を期待するだけでは足りないです。別の視点で補いながら、その行方と対処法を探る必要があります。
トランプ政権の対中国貿易戦争を単に自由貿易体制への脅威とみなす人もいるようですが、そのような見方は物事の裏表のうちの、片面しか見ていないと思います。
米中のこの大戦においては、北朝鮮の問題は、大戦を有利に戦うための、駒のようなものです。北朝鮮だけみていては、その真の姿はみえてきません。私は、トランプ政権は金正恩が米国の対中戦略駒として動き、役に立つというのなら、北の存続を許容するでしょうが、そうでなければ、見限ると思います。
場合によっては、中国への見せしめのため、軍事攻撃をするかもしれません。それは、中国も同じことです。米中のどちらにつくかによって、金正恩の未来は大きく変わることでしょう。
期待が高いだけに実際に軍事紛争が勃発した際、日本が軍事的に貢献できなければ、日米同盟は致命的な傷を負いかねないです。何よりもさらに独裁体制を強化した習政権はますます日本に対して牙をむくことになるでしょう。特に尖閣諸島は極めて危険な状態です。
この危機に対応するためには、日本自身の防衛体制の強化、つまり防衛大綱の全面見直しと防衛費の増額、そして憲法改正を進めるべきです。そうして、日本も通商、金融、軍事、外交を組み合わせて中国の軍事的台頭を抑制する日本独自の方法を模索し実行すべきです。
特に金融に関しては、我が国は物価目標2%を達成するまで、量的緩和を実行し続けるべきです。実は、これが中国に対してかなりの圧力になることを忘れるべきではありません。中途半端でやめてしまえば、我が国の経済の回復が中途半端になるばかりか、中国を利することになることを忘れるべきではありません。
そうして、日本が金融緩和をやりきることが、中国の現体制の崩壊にむけて最大の貢献になるかもしれません。このあたりは、掲載すると長くなってしまうので、いずれまた改めて掲載しようと思います。
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