このまま増税すると大変なことになる。安倍総理の決断は? |
政府の基調判断は「足踏みを示している」から、数カ月前に景気後退入りした可能性が高いことを示す「下方への局面変化」に下方修正した。同様の表現は14年11月以来、4年2カ月ぶりという。
やはり、中国経済の減速に伴う輸出不振の影響が大きいという。
半導体大手のルネサスエレクトロニクスは今春以降、国内の主要6工場で2カ月間、生産を停止する。主な原因は車載半導体の中国向け需要の減少で、在庫調整の狙いがある。
政府は、景気拡大期が1月で「戦後最長の6年2カ月に達した」との暫定的な見解を示してきたが、疑問符が付く結果となった。
安倍晋三首相は10月の消費税増税について、「2008年のリーマン・ショックのようなことがない限り」との条件付きで実施する考えを示している。中国だけでなく、欧州経済の先行きにも不安があるなか、政府はどう判断するのか。
「リフレ派の論客」として知られる上武大学の田中秀臣(ひでとみ)教授は「景気の現状を楽観視して、消費税を増税するシナリオは間違いだ。世界経済の不透明感が増しており、増税すれば日本経済の悪化が顕在化していくことになるだろう。引き上げ率が2%と前回より低く、さまざまな増税対策も取られているが、前回と比べて消費が盛り上がっていない。消費税増税の可能性は半々だろうが、自民党内にも慎重な判断を求める声がある。4月に決断をしなければ間に合わない。夏の参院選で(増税凍結の)信を問うことが手っ取り早いだろう」と語っている。
【私の論評】ロンドンオリンピック直前に消費税増税した英国の大失敗に学べ(゚д゚)!
金融緩和を実施している現在、増税をするということは、車の運転でいえば、アクセルを踏みながら(金融緩和しながら)、ブレーキを踏む(緊縮財政の一手法である増税)を実行するようなもので、非常に矛盾しています。
本来ならば、金融緩和と積極財政を実施し、景気が加熱しインフレ率が上昇した後に、金融引き締めをしたり、緊縮財政を実行して、景気を沈静化させるというのが王道です。
(金融緩和政策+積極財政)もしくは、(金融引き締め+緊縮財政)が、まともなマクロ経済政策であり、金融緩和しつつ緊縮財政であるとか、金融引き締めしつつ積極財政するなどは、邪道以外の何ものでもありません。
そうして、現在はデフレから完璧に脱却していないのですから、(金融緩和+積極財政)をすべきです。積極財政といえば、公共工事、減税、給付金などいくつか方法があります。
古いタイプの政治家は経済対策=公共工事と考える政治家もいるようですが、オリンピックにあわせて公共工事が増えている現状では、公共工事を増やしたとしても、公共工事の供給制約になるだけで、まともな経済対策にならないのは明らかです。
であれば、減税、給付金等の経済対策を実施すべきです。マクロ経済対策の観点からは、増税などとんでもないと言わざるを得ません。
ロンドンオリンピックのビーチバレーの試合 |
日本では、東京オリンピックの直前に10%の消費税増税を予定していますが、これと似たようなことは以前英国で実施されており見事に失敗しています。
英国は2008年9月のリーマン・ショック後、中央銀行であるイングランド銀行が米国を上回る速度でお札を大量に刷り続け、量的緩和政策によって、ポンド安に成功。2010年秋までに景気が回復基調にありました。
ところが、個人の消費意欲を示す「消費者信頼度指数」は、2010年後半から急速に悪化し、皮肉にも五輪聖火リレーが始まるころから再び下落します。
ロンドン五輪の経済効果が出なかった理由は、キャメロン政権が「緊縮財政路線」を決め、「付加価値税率(日本の消費税にあたる)」を17.5%から20%へ引き上げたからです。
2010年5月に発足したキャメロン保守党・自由民主党連立政権は、さっそく付加価値税率17.5%を11年1月から20%に引き上げる緊縮財政政策を決定しました。他にも銀行税を導入するほか、株式などの売却利益税の引き上げ、子供手当など社会福祉関連の予算削減にも踏み切った。他方で法人税率を引き下げ、所得税控除額も12万円程度引き上げ、成長にも多少配慮しました。
こうして国内総生産(GDP)の10%まで膨らんだ財政赤字を15年度までに1.1%まで圧縮する計画でしたが、結果は無残でした。
これは以下のグラフをご覧いたたげれば、ご理解いただけると思います。付加価値税収は11年から激減し、2012年5月までの1年間でも前年同期比でマイナス8.4%減です。個人消費動向を示す消費者信頼指数は09年9月のリーマン・ショック時よりもっと冷え込んでいました。景気の悪化を受けて、所得税収、法人税収とも前年同期比マイナスに落ち込みました。だ政府債務残高のGDP比は11年末で85.7%(10年末79.6%)と増え続けました。
こうして国内総生産(GDP)の10%まで膨らんだ財政赤字を15年度までに1.1%まで圧縮する計画でしたが、結果は無残でした。
これは以下のグラフをご覧いたたげれば、ご理解いただけると思います。付加価値税収は11年から激減し、2012年5月までの1年間でも前年同期比でマイナス8.4%減です。個人消費動向を示す消費者信頼指数は09年9月のリーマン・ショック時よりもっと冷え込んでいました。景気の悪化を受けて、所得税収、法人税収とも前年同期比マイナスに落ち込みました。だ政府債務残高のGDP比は11年末で85.7%(10年末79.6%)と増え続けました。
BOEは11年秋から英国債を大量に買い上げ、ポンド札を金融市場に流し込んでいました。BOEはリーマン・ショック後、米連邦準備制度理事会(FRB)に呼応して量的緩和第1弾に踏み切ったのですが、インフレ率が上昇したのでいったんは中断していました。
インフレ率は5%前後まで上昇しましたが、そんなことにかまっていられず、12年5月にはリーマン前の3.7倍にまでマネタリーベース(MB)を増やしました。幸い、インフレ率は需要減退とともに同年5月には2.8%まで下がりました。国債の大量購入政策により、国債利回りも急速に下がっています。ポンドの対米ドル、ユーロ相場も高くならずに推移し、ユーロ危機に伴う輸出産業の競争力低下を防いでいます。
英国のインフレ率 |
量的緩和政策を渋る日銀が、今後仮に英国のように政策転換したとしても、脱デフレや景気てこ入れ効果は限られるかもしれません。
自動車など主要企業は国内生産に見切りをつけることになるでしょう。若者の雇用機会は失われ、慢性デフレで細った勤労者の家計はジリ貧になります。税収は減り、財政悪化に加速がかかることになります。
英国は量的緩和政策で景気が回復基調に入ったにもかかわらず、「付加価値税」の引き上げで消費が落ち込み、再び景気を停滞させてしまいました。
その後、リーマン・ショック時の3.7倍の量的緩和を行っても、英国経済が浮上しなかった教訓を日本も学ぶべきです。
このようなことを主張すると、英国の財政は日本よりも良い状況だったからなどという人もいるかもしれませんが、日本の財政は負債のみでなく、資産にも注目すれば、さほどではないどころか、英国よりもはるかに良い状況にあります。
それについては、昨年のIMFのレポートでも裏付けられています。このレポートの内容を掲載した記事を以下の【関連記事】の一番最初に掲載しておきます。
これを知れば、増税など絶対にすべきでないことは明らかです。
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