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2019年3月9日土曜日

景気後退…消費増税「回避」待ったなし!? 専門家「4月に判断しないと間に合わない」―【私の論評】ロンドンオリンピック直前に消費税増税した英国の大失敗に学べ(゚д゚)!

景気後退…消費増税「回避」待ったなし!? 専門家「4月に判断しないと間に合わない」

このまま増税すると大変なことになる。安倍総理の決断は?

内閣府7日、1月の景気動向指数(速報値)を発表した。景気の現状を示す一致指数は前月比2・7ポイント低下の97・9で、3カ月連続の悪化となった。世界経済の先行き不安も広がるなか、永田町では、今年10月の消費税率10%への引き上げへの慎重論が目立ってきた。専門家も「楽観視してはいけない。4月に増税回避の判断をしないと間に合わない」と力説した。 

 政府の基調判断は「足踏みを示している」から、数カ月前に景気後退入りした可能性が高いことを示す「下方への局面変化」に下方修正した。同様の表現は14年11月以来、4年2カ月ぶりという。

 やはり、中国経済の減速に伴う輸出不振の影響が大きいという。

 半導体大手のルネサスエレクトロニクスは今春以降、国内の主要6工場で2カ月間、生産を停止する。主な原因は車載半導体の中国向け需要の減少で、在庫調整の狙いがある。

 政府は、景気拡大期が1月で「戦後最長の6年2カ月に達した」との暫定的な見解を示してきたが、疑問符が付く結果となった。

 安倍晋三首相は10月の消費税増税について、「2008年のリーマン・ショックのようなことがない限り」との条件付きで実施する考えを示している。中国だけでなく、欧州経済の先行きにも不安があるなか、政府はどう判断するのか。

 「リフレ派の論客」として知られる上武大学の田中秀臣(ひでとみ)教授は「景気の現状を楽観視して、消費税を増税するシナリオは間違いだ。世界経済の不透明感が増しており、増税すれば日本経済の悪化が顕在化していくことになるだろう。引き上げ率が2%と前回より低く、さまざまな増税対策も取られているが、前回と比べて消費が盛り上がっていない。消費税増税の可能性は半々だろうが、自民党内にも慎重な判断を求める声がある。4月に決断をしなければ間に合わない。夏の参院選で(増税凍結の)信を問うことが手っ取り早いだろう」と語っている。

【私の論評】ロンドンオリンピック直前に消費税増税した英国の大失敗に学べ(゚д゚)!

金融緩和を実施している現在、増税をするということは、車の運転でいえば、アクセルを踏みながら(金融緩和しながら)、ブレーキを踏む(緊縮財政の一手法である増税)を実行するようなもので、非常に矛盾しています。

本来ならば、金融緩和と積極財政を実施し、景気が加熱しインフレ率が上昇した後に、金融引き締めをしたり、緊縮財政を実行して、景気を沈静化させるというのが王道です。

(金融緩和政策+積極財政)もしくは、(金融引き締め+緊縮財政)が、まともなマクロ経済政策であり、金融緩和しつつ緊縮財政であるとか、金融引き締めしつつ積極財政するなどは、邪道以外の何ものでもありません。

そうして、現在はデフレから完璧に脱却していないのですから、(金融緩和+積極財政)をすべきです。積極財政といえば、公共工事、減税、給付金などいくつか方法があります。

古いタイプの政治家は経済対策=公共工事と考える政治家もいるようですが、オリンピックにあわせて公共工事が増えている現状では、公共工事を増やしたとしても、公共工事の供給制約になるだけで、まともな経済対策にならないのは明らかです。

であれば、減税、給付金等の経済対策を実施すべきです。マクロ経済対策の観点からは、増税などとんでもないと言わざるを得ません。

ロンドンオリンピックのビーチバレーの試合

日本では、東京オリンピックの直前に10%の消費税増税を予定していますが、これと似たようなことは以前英国で実施されており見事に失敗しています。

英国でもオリンピック直前に、アクセルを吹かしながらブレーキを同時に踏み込こんだことがありましたが、当然ながら大失敗しました。

英国は2008年9月のリーマン・ショック後、中央銀行であるイングランド銀行が米国を上回る速度でお札を大量に刷り続け、量的緩和政策によって、ポンド安に成功。2010年秋までに景気が回復基調にありました。

ところが、個人の消費意欲を示す「消費者信頼度指数」は、2010年後半から急速に悪化し、皮肉にも五輪聖火リレーが始まるころから再び下落します。

ロンドン五輪の経済効果が出なかった理由は、キャメロン政権が「緊縮財政路線」を決め、「付加価値税率(日本の消費税にあたる)」を17.5%から20%へ引き上げたからです。

2010年5月に発足したキャメロン保守党・自由民主党連立政権は、さっそく付加価値税率17.5%を11年1月から20%に引き上げる緊縮財政政策を決定しました。他にも銀行税を導入するほか、株式などの売却利益税の引き上げ、子供手当など社会福祉関連の予算削減にも踏み切った。他方で法人税率を引き下げ、所得税控除額も12万円程度引き上げ、成長にも多少配慮しました。

こうして国内総生産(GDP)の10%まで膨らんだ財政赤字を15年度までに1.1%まで圧縮する計画でしたが、結果は無残でした。

これは以下のグラフをご覧いたたげれば、ご理解いただけると思います。付加価値税収は11年から激減し、2012年5月までの1年間でも前年同期比でマイナス8.4%減です。個人消費動向を示す消費者信頼指数は09年9月のリーマン・ショック時よりもっと冷え込んでいました。景気の悪化を受けて、所得税収、法人税収とも前年同期比マイナスに落ち込みました。だ政府債務残高のGDP比は11年末で85.7%(10年末79.6%)と増え続けました。


窮余の一策が、中央銀行であるイングランド銀行(BOE)による継続的かつ大量の紙幣の増刷(量的緩和)政策でした。BOEといえば、世界で初めて金(きん)の裏付けのない紙幣を発行し、フランスなどとの戦争費用を政府に提供した中央銀行であり、その大胆さは世界でもずぬけています。

BOEは11年秋から英国債を大量に買い上げ、ポンド札を金融市場に流し込んでいました。BOEはリーマン・ショック後、米連邦準備制度理事会(FRB)に呼応して量的緩和第1弾に踏み切ったのですが、インフレ率が上昇したのでいったんは中断していました。

インフレ率は5%前後まで上昇しましたが、そんなことにかまっていられず、12年5月にはリーマン前の3.7倍にまでマネタリーベース(MB)を増やしました。幸い、インフレ率は需要減退とともに同年5月には2.8%まで下がりました。国債の大量購入政策により、国債利回りも急速に下がっています。ポンドの対米ドル、ユーロ相場も高くならずに推移し、ユーロ危機に伴う輸出産業の競争力低下を防いでいます。

英国のインフレ率

英国のお札大量発行は増税に伴う経済災害を最小限に食い止める大実験なのですが、財政政策面ではブレーキをかけたまま、金融政策でアクセルを踏むわけで、効果ははかばかしくありませんでした。

量的緩和政策を渋る日銀が、今後仮に英国のように政策転換したとしても、脱デフレや景気てこ入れ効果は限られるかもしれません。

自動車など主要企業は国内生産に見切りをつけることになるでしょう。若者の雇用機会は失われ、慢性デフレで細った勤労者の家計はジリ貧になります。税収は減り、財政悪化に加速がかかることになります。

英国は量的緩和政策で景気が回復基調に入ったにもかかわらず、「付加価値税」の引き上げで消費が落ち込み、再び景気を停滞させてしまいました。

その後、リーマン・ショック時の3.7倍の量的緩和を行っても、英国経済が浮上しなかった教訓を日本も学ぶべきです。

このようなことを主張すると、英国の財政は日本よりも良い状況だったからなどという人もいるかもしれませんが、日本の財政は負債のみでなく、資産にも注目すれば、さほどではないどころか、英国よりもはるかに良い状況にあります。

それについては、昨年のIMFのレポートでも裏付けられています。このレポートの内容を掲載した記事を以下の【関連記事】の一番最初に掲載しておきます。

これを知れば、増税など絶対にすべきでないことは明らかです。

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2018年11月18日日曜日

来年1月4日の国会召集は妙手 消費増税の最終判断は4月に 7月衆参ダブル選の可能性も―【私の論評】増税すれば、安倍政権はレイムダック化し憲法改正もできず、何も良いことはない(゚д゚)!

来年1月4日の国会召集は妙手 消費増税の最終判断は4月に 7月衆参ダブル選の可能性も


高橋洋一 日本の解き方



国会 衆議院会場

来年の通常国会を1月4日召集とする説が浮上している。消費増税をめぐる判断や憲法改正のスケジュール、参院選と衆院選との同日選の可能性など、来年想定される政治日程を考えてみよう。

 政治の世界は一寸先は闇といわれる。そのとおりなのだが、その中でも予測をするためには、スケジュールがどうなるかを検討するのはイロハのイだ。そこでまず押さえておくのは事前に確定している政治・外交日程と経済指標の発表日である。

 確定している政治日程として、来年1月中に通常国会召集、3月中に来年度予算案成立(見込み)、4月上旬から中旬に統一地方選、5月1日改元、6月中に通常国会会期末、7月中に参院選、7月28日参院の任期満了となっている。

 外交日程は、今年11月末にアルゼンチンのブエノスアイレスで開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議、来年6月末の大阪でのG20首脳会議がある。

 経済指標発表では、来年2月中旬に2018年10~12月期国内総生産(GDP)速報値、来年5月中旬に1~3月期GDP速報値が予定されている。

 来年の最大の政治イベントは7月の参院選だ。この結果いかんでは憲法改正のスケジュールなどは全く無意味になってしまう。そこで、参院選の争点となりうる経済、消費増税の是非に関心がいく。消費増税については、法律上、来年10月から実施が予定されているが、まだ安倍晋三首相が最終決断したわけでない。本コラムでも書いてきたが、今のところ可能性は高くないものの、来年4月に君子豹変(ひょうへん)する可能性なしとはいえない。

 焦点は参院選の投開票日だ。確定しているのは7月28日の任期満了である。公職選挙法では、「議員の任期が終わる日の前30日以内」(32条1項)と、この30日間が国会閉会から23日以内にかかる場合は閉会から「24日以後30日以内」(同2項)だ。

 結論を言おう。国会は150日間開催なので、できるだけ早く通常国会を召集したほうが、延長をしなければ会期末が早くなり、結果として参院選の開催オプションが広がるのだ。国会召集は法律上、1月中なら可能なので、一番早い1月4日にすると参院選は6月28日から7月27日の間、日曜なら6月30日、7月7日、14日、21日で可能になる。

 いずれにしても、国会召集日がいつになるかによって参院選の日程が絞られる。

 国会開催中に首相が衆議院を解散すれば、40日以内で総選挙になるので、衆参ダブル選挙も可能になる。来年の通常国会で予算案以外の法案を出さずに1月に早期召集すれば、参院選日程のオプションが広がる。その場合、7月のどこかで衆参ダブル選もありえる。

 ダブル選挙は、野党の共闘が困難になるので、与党有利といわれている。年内は政府・与党内で来年度予算が作られるが、来年早々から与野党間で国会スケジュールをめぐるつばぜり合いがあるだろう。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】増税すれば、安倍政権はレイムダック化し憲法改正もできず、何も良いことはない(゚д゚)!

増税は、まともに考えれば、安倍政権にとっては命取りになることははっきりしています。なぜなら、10%増税を予定通りに来年の10月に実行してしまえば、その後安倍政権の支持率は確実に落ちます。そうなると、国会では改憲派が過半数以上という状況を維持するのは困難になります。

安倍総理

そうなると、残りの任期中には、憲法改正どころか、レームダックになってしまうことになります。安倍総理は念願の憲法改正には、手も足もでなくなってしまいます。

私は、安倍総理がこのような道を選ぶとは思えないのです。安倍総理は、国会て改憲派が半数以上という状況を維持しつつ、何とか憲法改正に道筋をつけたいと考えているはずです。であれば、増税を回避あるいは、延期するのが、もっとも安全策であると考えるはずです。

それに、安倍総理自身は、10%への消費税増税は全く無意味であることをご存知であると考えます。

消費税を増税しても無意味であることは、このブログでも過去に何度も掲載してきました。これについては、過去のブログの記事を参照していただきたいと思います。それはそれとして、経済的な知識などなくても、常識で考えれば増税しても無意味なことは小学生でも簡単に理解できることです。本日はそのことを以下に掲載します。

まずは、以下に1989年と2016年の税収内訳を掲載します。1989年というと、3%の消費税が導入された年です。


2016年は、消費税が8%です。1989年と、2016年を比較すると、消費税の税収はあがっていますが、所得税と法人税は下がり、総税収は54.9兆円と55.5兆円でほぼ同水準です。

消費税の無かった1988年の税収も54兆9000億ですから 消費税を何%上げても総税収は変わらないといえるのではないかと思います。結局総税収上げるなら経済成長するしか無いようです。

以下に、過去の"消費税の「導入」と「増税」の歴史"をチャートにまとめたものをあげておきます。


以下には、消費税を導入してから直近までの税収の推移のグラフを掲載します。


消費税をはじめて導入した1989年には、税収は確かに伸びていますが、消費税を上げる直前の2013に至るまで、1988年の税収を一度も上回っていません。それでも、消費税を8%にした後の、17年、18年には、1988年の税収を若干上回っているようですが、それもごく僅かです。

さらに、先にあげたように、2016年の1989年と総税収はほぼ同等なのですが、所得税、法人税は減って、消費税が増えています。

これは、常識的に考えると、消費税をあげると景気が落ち込み、所得税と、法人税が減少し、税収はあまりかわっていないことを示しています。

これをみただけでも、消費税増税はほとんど意味がないことがわかります。

景気の回復指標としては、値動きが激しい生鮮品とエネルギー価格を抜いた、コアコアCPIの前年同月比が参考になりますが、直近の数字は+0.4%の微弱な上昇を示しています。日銀のインフレターゲットは2%ですので、全く達成できていません。

このようなときに増税すれば、微弱や0.4%の物価上昇など、消費が低迷して、すぐにマイナスになることでしょう。せっかくデフレの重力から抜けかかっている日本経済が、再びデフレ状態に舞い戻ることになります。

せっかく日銀が、マイナス金利政策を導入し、市場から国債を買って金融緩和をしているにもかかわず、これでは景気の回復を政府(財務省)が邪魔をすることになります。

しかも、何らかの規制をするにしても、外国人労働者を受け入れ、さらに増税をするということになれば、日本人はもとより外国人も失業というダブルパンチを見舞うようなものです。

この試みは、結局日本人は無論のこと、まさか一端受け入れた外国人を生活できないなら母国に帰れなどとはいえないでしょうから、外国人の生活保障という形で跳ね返ってくることになります。財務省は、財政と社会保障の一体改革などという看板をあげているにもかかわらず、消費税をあげて生活保障のコストをあげるという全く相矛盾したことになります。

財務省は、消費が下がらない前提で、消費税1%の増税で、税収2.4兆円の増収などというとんでもない計算をしていますが、本当に増税して個人消費がさがならないなどと言い切れるのでしょうか。14年に増税したときは、個人消費が落ち込み、その悪影響はかなり長期わたって続きました。

税収を上げる方法は、税収の式を見ればすぐに理解できます。

税収=名目GDP✕税収弾性値✕税率
税収弾性値=税収の伸び率÷名目成長率

1995年から2013年までの財務省公式税収弾性地平均は4.4です。この式からも、税収をあげるには、税率を1%あげるよりも、名目GDPを1%あげるほうが、4.4%税収が増えることがわかり、はるかに増えることが理解できます。

税収を増やすには、マイルドなインフレによる経済成長にともなう税収アップ以外にはありえません。

どうしても、消費税を10%にあげたいというのなら、会計上は10%ということにして予算を組み、消費税減税法を作れば良いです。そもそも、消費税をあげて皮算用の税収を稼げない場合は、国債を発行することになるわけですから、減税して国債発行するのも同じことです。

インフレターゲット2%を達成するには、現在の8%では達成できないのは、もうわかっているのですから、現在消費税5%、できれば0%にまで減税すべきです。

インフレ率が2%超えてきたら、減税分を減らして8%にして、それでも歯止めが止まらなければ10%にするなどの調整が必要です。

それでも、まだインフレが亢進するというなり、マイナス金利をやめれば良いのです。

それでも、まだ亢進するというなら、今度は日銀が溜め込んだ国債を今度は市中銀行に売り出し、日銀が現金を吸い上げればよいだけの話です。国債の金利もかなり下がっているにもかかわらず、現状はかなり国債は品薄ですし、日銀が国債を売り出せば、入れ食い状態になるのはわかりきっています。

ようするに、ハイパーインフレの心配など全くないということです。

安倍総理には、無意味な消費税増税は、先送りもしくは廃止していただき、そのためには、「消費税先送り」を公約として、来年は衆参同時選挙を行い、大勝利して、経済を立て直し、国民の支持率をさらにあげて、改憲勢力をさら多くして、改憲に成功していただきたいものです。

【関連記事】

2018年9月2日日曜日

種子法廃止に反対している人たちが、誤解しているかもしれないことむしろメリットのほうが多い可能性も―【私の論評】4月に種子法が廃止されて以来何も不都合は起こっていないし、起こるはずもない(゚д゚)!。

種子法廃止に反対している人たちが、誤解しているかもしれないことむしろメリットのほうが多い可能性も

ドクターZ

奨励品種はなくらならい

今年4月に廃止された種子法(主要農作物種子法)が、'19年の参院選に影響するのではないかと、にわかに話題になっている。

種子法は1952年、戦後の食糧の安定供給を図るために制定された8条からなる比較的短い法律だ。米・麦・大豆の3種類を対象に、奨励品種の選定や原種の生産に都道府県が責任を持つことが定められた法律である。

これが廃止されると、海外から遺伝子組み換えの種子が流入し、海外に日本の食が乗っ取られるとして、一部の農家からは強い批判がある。ひいては与党支持にも影響が出るのではとされているのだが、政府としては種子法が「役割を終えた」ものとして廃止を決めたわけで、今後はどうなっていくのか。

種子法廃止に反対しているのは、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)に猛反対していた層とほぼ一致するが、農協などの農業関係者のなかでは冷静な見方をする向きも多い。

まず、彼らが懸念する遺伝子組み換えの種子については、厚労省管轄の食品衛生法の問題で、同法による安全性審査で規制されている。なお種子法が廃止されても、食品衛生法の規制は変わりない。


また、いろいろな食物の種子ビジネスに外資が入ってくるという理屈も不明瞭で、種子法に指定された3種だけでなく、対象外の野菜などの種子でも日本のメーカーのシェアは大きい。

種子法の「奨励品種」とは、たとえば「あきたこまち」のような都道府県でブランド化された作物になるが、たしかに地方としてはこの指定がなくなれば困るかもしれない。だが、じつは種子法廃止とともに、各地方自治体では、種子法と同様な条例や要綱を作った。これで、各地方自治体において奨励品種がなくなることは避けられたのだ。

種子法では、国が地方自治体に奨励品種の義務を課していたが、これからは地方自治体が独自に行うとしている。要するに、奨励品種は、国(中央政府)の仕事から地方自治体(地方政府)の仕事に変わっただけであり、やる主体が政府であることは変わりない。

昔よりも作物の生産量に差が広がった大都市と農業県では、農業への取り組み方が違うのは当たり前のことだ。国主体では、たとえば米の減反など、非効率的な政策しか取ることができないため、むしろ農業従事者のためには種子法廃止のメリットは大きいはずだ。

では、なぜ一部の人が反対するのか。しかも、種子法の廃止だけを強調し、同じ内容の各地方自治体の条例が同時に制定されていることを言わないのは、あまりにバランスを欠いている。

その理由としては、やはり一部でTPP反対論を引きずっている人がいるからだろう。

このときも日本の農業は外資に乗っ取られるとしてきたが、アメリカが抜けたことで枠組みは大きく変わり、反対論者の説得力は失われた。そのタイミングで種子法廃止が俎上に載り、TPPのときとまったく同じ絵を描いたのだ。

だが、これまで述べてきたように、日本の農業を守る枠組みはきちんと維持される。事が事だけに早とちりしている人も多いかもしれないが、正しく事情を理解しておけばその間違いに気づくはずだ。

【私の論評】4月に種子法が廃止されて以来何も不都合は起こっていないし、起こるはずもない(゚д゚)!

日本の食の安全を脅かす種子法廃止がなぜ問題にならないのか、なぜ話題にならないのかと疑念を抱いている方がいます。答えは簡単です。問題では無いからです。なにか陰謀があるからだ、などと言っている人いますが、そんなことはありません。

何の問題も無い些末な事を針小棒大に煽って、アジって自らのビジネスにしている輩が居る。ただそれだけのことです。

 以下にその例をあげます。
日本の農業をぶっ壊す種子法廃止、なぜほとんど話題にならない?
田中優 (MONEY VOICEより 2018年2月25日)

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
ならば「安全な種から育てた食品を選ぼう」と思ったとしても、主要農産物の種を守ってきた「主要農作物種子法」が2018年の今年から廃止されて、種は入手が困難になっていく。種は遺伝子組み換えのものに入れ替わり、それから育てた作物しか選べなくなる。
一見すると私たちに関係なさそうな「主要農産物種子法の廃止」が、私たちの選択の余地をなくし、健康を維持できない可能性が高まるのだ。
この記事の内容は、本当に酷いです。冒頭からデマ全開です。種子法が廃止されても種が遺伝子組み換えのものに入れ替わる事はありません。

種子法は元々別に遺伝子組換え作物を規制しているわけではないので、種子法が廃止されたからといって、種が遺伝子組換えのものに替わる事はないです。

 国内での遺伝子組換え作物の栽培は、特別に許可され隔離された圃場での実験栽培だけです。現在承認されているのはトウモロコシ、ダイズ、セイヨウナタネ、ワタ、パパイヤ、アルファルファ、テンサイ、バラ、カーネーション9作物だけです。また、商業栽培が行われているのはバラのみです。

 これもTPPのISD条項で訴えられて、外国から種子無秩序にがはいってくることになるような、主張をしている人を見かけますが、ISDは他国の法律を変える事はできませんし、もともとあった法律で規制されているのに外国企業が日本に乗り込んできて損をしたなどとして、訴えるなどということはできないですし、仮に訴えたとしても完全に非があるのは企業側なので、100%企業側が負けます。

また、上記の記事中では自閉症の増加とラウンドアップの普及に相関性があるから、ラウンドアップの成分、グリホサートに自閉症の原因があるに違いないとしていますが、なぜか記事では途中でネオニコチノイド系殺虫剤の話になっています・・・)グリホサートと自閉症に因果関係があるかどうかについては、色々調べてみましたが、それを裏付ける様な研究や論文をありませんでした。


ラウンドアップ

それに、遺伝的な要因が強いというとする論文はありますが、近年自閉症が増加している原因についてはまだ科学的にはっきりと解明されていません。

それをグリホサートの増加と相関があるから因果関係もあるはずだと結論付けるのは乱暴すぎるのではないかと思います。

このやり方ならば、自閉症増加と同時期に増えたものはなんでも因果関係があると結論付けてもいいと言うことになってしまいます。

 また、グリホサートはあまりに性能的に優れた除草剤であるため、現在グリホサートの代替となる除草剤が存在しません。

グリホサートを使用すると不耕起での栽培が可能になるので、農業生産性が大きく向上し、且つ土壌が流出しないため周囲の河川汚染のリスクが減るという報告があります。

この様な状況で、下手にグリホサートを規制すると、農家は他の毒性が強く、環境に負荷を与えやすい除草剤を使うことになってしまうため、意味がないどころかかえって事態の悪化を招きかねません。これでは本末転倒です。

そういった背景もあり、EUではグリホサート規制の声が大きかったものの、使用許可期限を5年間延長する決定が下されました。代わるものが無いのですから仕方がありません。グリホサートなしでは農業生産性が著しく低下しますので、農作物価格の高騰を招く可能性が大です。

 ネオニコチノイド系の殺虫剤も然りです。今の農業はネオニコチノイド系の殺虫剤前提で成り立っていますので、規制されたら別の有害な有機リン系の殺虫剤を使わざるを得なくなり、周辺の生態系に与える影響は必然的に大きくなりかねません。また、農業生産コストを増大させて農作物の価格は高騰するでしょう。

 では、農薬不使用の有機栽培をやればいいじゃないかという意見もあろうかと思いますが、農薬不使用で農作物を栽培するのはかなり困難です。
さらに、農薬が防ぐのは虫だけではありません。有毒なカビや病気も予防します。

自閉症誘発というハザードがある(この記事では完全なこじつけですけど)から廃止しろ
と言うのはかなり乱暴な議論で、きちんと経済利便性や、リスクを評価して総合的な判断を下さなければならないでしょう。

「危険性又は有害性(ハザード)」と「リスク」の違いとは ライオンは固有の危険性をもっているのでハザードにあたりますが、左の図はライオンのそばに人がいないので、ライオンに襲われる危険性はありません。 ... 「危険性・有害性(ハザード)」とリスクを明確に区別して理解をする必要があります。



車は交通死亡者を増やすハザードがあるからといって車の生産や利用が規制されないことと同じです。車がなければ現在の生活が成り立たないのと同様に、今の農業は農薬がなければ成立しないものになっています。

 農薬無しでできないことはないのですが、農作物価格の高騰は覚悟しなければなりません。日本はまだ先進国だから大丈夫かもしれませんが、途上国の貧しい人たちの中では餓死してしまう者が増えるかもしれません。

 何やら、話が飛んでしまったかのような印象をうけますが、上で引用した記事は元々は、種子法廃止の話だったはずです。グリホサートとネオニコチノイド系の殺虫剤とか、種子法とは種子法とは、一切関係ないはずです。

 ホームセンターいくとわかりますが、グリホサート系除草剤、殺虫剤など、大量に売られてます。それにJAが積極的にラウンドアップの拡販普及に力を入れています。本当に害があれば、そんなことをするはずもないです。

このような主張をする記事に煽られる必要はありません。一番はっきりしていることは、すでに4月に種子法が廃止されていますが、具体的に何か不都合が起こったでしょうか。

種子法廃止に反対する人々は、まともなエビデンス(証拠・根拠、証言、形跡)をあげてほしいです。エビデンスなしに、不安を煽るのはやめるべきです。

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