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2020年2月18日火曜日

日本が犯した3度目の過ち、消費増税が経済に打撃―【私の論評】財務省の動きを封じなければ、安倍晋三氏は歴史に「消費税を2度あげた総理大臣」として名前を刻まれる(゚д゚)!

ウォール・ストリート・ジャーナル厳選記事



――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」

***

 日本経済は2019年10~12月期に急激な落ち込みを演じた。実質国内総生産(GDP)は前期比年率換算で6.3%減少し、四半期の成長率としては過去10年で2番目に悪い数字となった。政策当局者が犯した3度目の間違いがその原因でなかったとすれば、まだしも受け入れやすかったかもしれない。


 日本政府は昨年10月に消費税率を8%から10%に引き上げた。その結果、消費支出が大幅に落ち込み、家計支出は10~12月期に年率換算で11.5%減少した。

 1997年と2014年に消費税を引き上げた際も同じように経済が大きな打撃を被った。過去25年間に家計消費が最も大きく落ち込んだ3度の四半期は、いずれも消費税が引き上げられた時のことだ。

 幸いなことに、日本は今のところ、さらに消費税を引き上げる考えはなさそうだ。しかし、こうした破壊的な行動につながる考え方は異様なほど根強く残っている。増税が日本経済に与えたダメージが明確になっていた先週も、国際通貨基金(IMF)は今後10年間に税率をさらに15%に引き上げるべきだとの考えを表明している。

 それは比較的小さなものに聞こえるかもしれないが、日本の家計消費は過去10年間に実質ベースでわずか2.6%しか増加していない。こうした微々たる伸びは、消費者が家計の手取り収入やインフレ率が大きく上向くとは予想しておらず、支出も控えめに抑えるとの見通しを強めている。

 2012年末に安倍晋三氏が首相に返り咲いて以来、日本経済は見事な回復を遂げてきた。1990年代や2000年代のデフレは姿を消し、投資は著しい盛り上がりを見せた。失業率も数十年ぶりの水準に低下した。だが、家計消費は景気拡大に全く寄与していない。

 財政を再建する必要性に迫られているのであれば、増税に伴う経済的痛みも受け入れられやすい。だが、日本政府が抱える純債務の利払い負担は、主要7カ国(G7)の中で最も低い水準にある。

  日本政府が積み上げてきた政府債務の利払いは容易になっている。増税や支出抑制を主張してきた当局者は、その理由についてもっと明確な理由を示さなくてはならない。それらの政策は試されてきたが、日本の国民を裏切っている。

 しかも、日本はおそらく他のどの国よりも、財政政策との関係を見直す必要がある。米連邦準備制度理事会(FRB)は昨年金利を引き下げ、欧州中央銀行(ECB)は独自の景気刺激策を拡大したが、日銀は何の手も講じていない。

 日本では、少なくとも現在の経済的枠組みの下では金融政策に関する選択肢がほぼ尽きているため、今後景気が悪化する場面があれば、財政政策が一段と大きな役割を担わなくてはならない。政策当局者はそうした場面が訪れる前に、財政政策を積極的に活用する術を身につけておく必要がある。

【私の論評】財務省の動きを封じなければ、安倍晋三氏は歴史に「消費税を2度あげた総理大臣」として名前を刻まれる(゚д゚)!

上の記事、ざっくり言ってしまうと、国民経済等は無視して省益優先で増税した財務省にWSJからも批判されたということです。

特に以下の下りは強烈です。
日本政府が積み上げてきた政府債務の利払いは容易になっている。増税や支出抑制を主張してきた当局者は、その理由についてもっと明確な理由を示さなくてはならない。それらの政策は試されてきたが、日本の国民を裏切っている。
ここでは、「当局者」としていますが、これは当然主に財務省のことを言っているのです。政府に主に大きな責任があると考えているなら「当局者」「政策当局者」などという書き方ではなく、「政府」と書くはずです。

これは、当然のことながら、財政をよく知っているはずの、財務省が、増税キャンペーンを繰り返し、足繁く政治家や、マスコミ等にも「ご説明資料」を持参し、丁寧にわかりやすく、増税の正当性を主張してきたからにほかなりません。

IMF(国際通貨基金)は、今後の日本経済について、高齢化に伴う費用を賄うためには消費税率を2030年までに15%に引き上げるべきだと提言しました。

来日した、IMF・ゲオルギエワ専務理事は、「徐々に消費税率を引き上げるのが有効というのがIMFの見解です」と述べました。

IMFは昨年の報告書で高齢化が進む日本について、働き手世代が減る一方で高齢者が増えるため、年金や医療費などが増え続けて国の財政運営が厳しくなると指摘しました。そのうえで、こうした費用を賄うには消費税率を2030年までに15%、さらに2050年までには20%まで段階的に引き上げるべきだと提言しています。また、日銀が掲げる物価上昇率2%の目標については「賃金が上がれば達成できる」という見解を示しました。

このような報道を読むと、消費税増税も仕方ないのかなと思う人が多いでしょう。IMFといえば、有名な国際機関で、英語で書かれたものに弱い日本人は多いです。

IMFのこうした報告書の作成は、各国政府との協議を経て行われます。IMFの他にも国際機関が日本に関する報告書を作成するときに、国際機関の報告書という体裁をとっているものの、実質的には日本政府の主張なのです。よくいえば、日本政府と国際機関の共同作業です。いずれにしても、日本政府の意向に反するものが書かれることはまずありません。

IMFについていえば、日本は第2位の出資国です。いうなれば大株主である日本政府を無視できるはずがありません。さらに、日本は大株主の力を背景にして、IMFのナンバー2である4人いる副専務理事ポストの一つを確保しています。

このポストは歴代財務省財務官の天下りポストなのです。そのほかにも、日本はIMFの理事ポストも持っており、これも財務省からの出向者です。理事を支えるスタッフとして理事室があるのですが、その職員も財務省からの出向者が多くいます。

消費税率15%は財務省の意図でもあります。東日本大震災直後に、不謹慎にもホップ、ステップ、ジャンプ増税計画がいわれていました。震災増税がホップ、社会保障増税がステップ、そして財政再建増税がジャンプです。

今、とうとうステップの直前まで来ています。ちなみに、民主党野田政権の時に、消費税増税を織り込んだ中期財政試算では、10%まで消費税増税しても2023年度においてもプライマリーバランス対GDP比は、▲0.9~▲2.7%とされていました。

この赤字を解消するためには、消費税増税を2~6%しなければいけないというのが、財務省の意向です。つまり消費税率は12~16%まで引き上げるということです。

IMFの年次審査報告書は財務省の息がかかっているとしても、IMF本体の理事会では、数名の理事が消費税増税が成長に悪影響があるかもしれないとの懸念を表明しています。これは、IMFが各国に緊縮財政を求めすぎたことへの反省でもあります。ただし、こうした報道はあまりありません。

IMFは先に述べたように、財務省出向職員が仕切っている側面もあり、単なる財務省の代弁としか言いようのないレポートもあるのですが、財務省の出向職員があまり手を出せないスタッフペーパーのなかには、良いものもあります。

たとえば、昨年10月公表された「IMF Fiscal Monitor, October 2018 Managing Public Wealth」(https://www.imf.org/en/Publications/FM/Issues/2018/10/04/fiscal-monitor-october-2018)です。

これは、各国の財政状況について、負債だけではなく資産にも注目して分析したものです。このレポート、海外メディアの注目度は高いです。(たとえば https://jp.reuters.com/article/imf-g20-breakingviews-idJPKCN1ML0NF)が、日本のメディアではさっぱり取り上げられません。

これについては、このブログでも取り上げました。その記事のリンクを掲載します。
コラム:日本の純資産はプラマイゼロ、IMFの新国富論―【私の論評】財務省は解体し複数の他官庁の下部組織として組み入れ、そのDNAを絶つべき(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、上のグラフでも理解できるように、日本政府の資産と負債を比較してみると、その額は同程度であり、相殺するとセロです。日本政府の借金がとてつもなく大きいというのは、一側面をみているだけです。100万の資産がある人が、100万円の借金を抱えているときに、100万の資産には目をつぶり、100万の借金ばかりを論じているようなものです。

これは、財務省が意図して意識して、日本政府を借金地獄であるかのように喧伝するのに、外国の機関である、IMFまで自分たちに都合の良いように利用しているという実体を示すものです。財務省の意向では、消費税は10%増税ではすみません、先にも述べたように、12~16%にするのです。

私自身は、増税したり、減税したりするのは当然のことと思います。ただ、財務省のように一方的に増税を続けるというのは完璧なあやまりです。

マクロ経済の標準的な教科書でも教えているとおり、その時々で、景気が良すぎれば、増税し、景気が悪ければ、減税すれば良いだけでなのです。これを格好の良い言い方をすれば、機動的財政政策です。この機動的財政政策が日本以外の国なら普通に行われて舞います。

なぜか、日本では、消費税は一度上げると、下げられないものという認識が一般的ですが、消費税などを含む、他の増税も景気が加熱すれば、実施し、経済が悪ければ、減税すべきなのです。

しかし、財務省は、景気におかまいなしに、一方的に増税を繰り返してきましたし、これからもそうしようとしています。

今回、実質国内総生産(GDP)は前期比年率換算で6.3%減少し、四半期の成長率としては過去10年で2番目に悪い数字となったとしても、財務省はこの方針を変えないでしょう。

今後、新型肺炎の蔓延がしばらくは続くことを考えれば、これも経済に甚大な影響を与えることは確実で、これから経済の悪化が沈静化する可能性はありません。さらには、アウトバウンド需要も期待できません。

私自身は、オリンピックの頃には、日本の夏の湿度の高さは、コロナウィルスの大敵であるので、新型肺炎も終息まではいかなくても、かなり罹患率など下がると思います。そのためオリンピックそのものは開催されるでしょうが、観光客は相当減るかもしれません。そうして、秋にはポイント還元がなくなります。

これから、悪くなる一方です。さらに、中国経済をはじめ、ブレグジットもあり、世界経済は悪化する懸念があります。このようなときに実行すべきは、減税です。消費税が8%になってこのかた、経済が大幅に伸びたことはなく、韓国以下の成長率しかないわけですから、いまできる最善の方法は、減税です。減税なら、何も特別なことをしなくて良いですから、すぐにでも実行すべきです。

しかし、これには、財務省は大反対でしょう。また、財務省の総力を結集して、大増税キャンペーンを実施し続けるでしょう。

それにしても、なぜ財務省はこのような行動をするのでしょうか。これについては、最近のこのプログで官僚の習性をあげたことがあります。

隠匿という点では、昔の官僚も現在の官僚も変わりません。現在の財務省の官僚は、物資を隠匿はしていませんが、様々な形で資金を隠匿しています。それこそ、いっとき盛んにいわれていた財務省の埋蔵金というものです。

これは、いわゆる特別会計という複雑怪奇で一般の人にはなかなか理解できない、巨大な会計の中に隠蔽されていたりします。それは、戦時中の隠匿物資のように、一般人には見つからないように隠匿されています。



しかし、それは、終戦直後に大多数の国民が窮乏生活を送っていたときに、国富が70%もあったというのと同じく、現在でも統計資料を見ると理解できます。

先にもあげたように、日本政府には借金だけではなく、膨大な資産があるのです。この資産を財務省は、世間から隠しているのです。これは、終戦直前に軍部というか、陸軍省、海軍省の官僚らが、膨大な物資を隠匿していたのと似ています。

官僚というものは、どうやらきちんと監督していないと、とにかく金をためたがるようです。警察組織にも各地でプール金があったことが摘発されたこともありましす、財務省以外の省庁でもプール金が摘発されたことがあります。

なんのことはない、財務省は、特別会計などの手法等をもちいて、あちらこちらに合法的に資金をプールしているということで、従来の軍部の物資隠匿と同じことをしています。

そうして、財務省はこの隠匿を合法的に、しかもIFMを活用するなど、かなり洗練されたスタイルで行っています。

もう、安倍政権としても財務省のこの動きを封じるしか、道はないでしょう。財務省すら封じることができなければ、新型肺炎を封じることもできず、その結果支持率が落ち、念願の憲法改正は叶わぬ夢になることでしょう。

そうして、歴史には、「消費税を2度あげた総理大臣」として名前を刻まれることになるでしょう。

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2019年10月1日火曜日

消費増税なぜ止められなかった? 財務相の顔立てた政治的決定も…社会保障の制度設計をないがしろに―【私の論評】安倍総理は、いずれ「5%減税」を公約として、衆院解散総選挙の道を選ぶことになる(゚д゚)!

消費増税なぜ止められなかった? 財務相の顔立てた政治的決定も…社会保障の制度設計をないがしろに

高橋洋一 日本の解き方

安倍総理

10月1日から消費税率が10%に引き上げられた。「3党合意」で増税が決まった経緯や、その後2回増税を延期した安倍晋三首相が今回は延期しなかった理由などをあらためて振り返っておこう。

 3党合意とは、2012年6月、民主党、自民党、公明党の3党間における「社会保障と税の一体改革」に関する合意を指す。消費増税、子ども・子育て支援、最低保障年金などが盛り込まれるなかで、消費増税だけが先行、子ども・子育て支援はその後制度化されたが、最低保障年金などは実現していない。

 社会保障と税の一体改革といえば、世界的な潮流は税と社会保険料を一体として徴収する「歳入庁」の設置が主要な鍵になるが、民主党は歳入庁を公約して政権交代しながら、その後取り下げた。一方、消費税を社会保障目的税化するという世界にも例のない無謀な社会保障改革だったことは、筆者は繰り返し指摘してきた。

 世界の社会保障運営は保険方式であり、その財源は社会保険料である。ただし、低所得者の保険料は高所得者の所得税から充てられている。

 社会保障運営を保険方式とするのは、社会保障を「施しもの」と考えると支出基準が曖昧になり、結果としてひどい財政運営になってしまうためだ。保険原理であれば、機械計算で給付額が決定され、給付が可能になる。残念ながら、保険方式以外の社会保障運営で成功した例は寡聞にして知らない。

 こうした社会保障の運営を保険方式にする以上、支出段階では、所得再分配機能はあまりない。年金は死んだ人から長生きの人への再配分、医療は健康な人から病気の人への再配分でしかないからだ。かろうじて所得再配分になっているのが、社会保険料を低所得者人から取らずに、高所得者の所得税で充てている点だ。この意味からも、消費税が社会保障財源にならないのが世界の常識だ。

 3党合意は社会保障運営の大前提で間違っている。これは3党合意を主導した財務省のロジックの破綻でもある。財務省は、単に社会保障を人質とすれば消費税を上げやすいと考え、社会保障の長期的な制度設計をないがしろにしたのだ。

 しかも、11年の東日本大震災後に、連帯といいながら、震災復興増税、8%への消費増税、さらに10%への消費増税という恐ろしい「ホップ、ステップ、ジャンプ増税」を、政権運営が不慣れな民主党に押しつけた。自民党もそれに乗り、まんまと成功したわけだ。

 安倍首相はそうした経緯を知っていたはずで、2回増税をスキップしたが、盟友の麻生太郎財務相の顔にこれ以上泥を塗ることはできないという政治的な理由で今回増税を決定したのではないか。

 経済政策としてまずいのは承知の上なので、臨時国会などで適切な経済対策を打ち、消費増税の悪影響を極力回避しようとするだろう。

 だが、米中貿易戦争や英国の欧州連合離脱問題、ホルムズ海峡問題、日韓問題の影響は大きく、日本経済がどうなるのか、不安は消えない。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】安倍総理は、いずれ「5%減税」を公約として、衆院解散総選挙の道を選ぶことになる(゚д゚)!

上の高橋洋一氏の記事では、過去の増税を阻止できなかった状況について様々な分析をしています。この分析は総合的でありながら、かなり緻密で簡潔にまとまっています。

これに対して何かを付け足すことはできませんし、付け足したにしても冗長になるだけなので、それはやめて、私としては今後のことについて掲載しようと思います。

今後のことを考えるには、やはり衆院選の行方を考えるとわかりやすくなると思います。
今年に入って、まことしやかにささやかれていた衆参同時選挙。ふたを開けてみると、7月に行われた「第25回参議院議員通常選挙(以下、参院選)」は、参院選だけで行われ、衆議院解散総選挙(以下、衆院選)は行われませんでした。では、2017年10月に前回選挙が行われた衆院選は、いつ行われるのでしょうか?

衆議院議員の任期は4年間ですが、歴史を紐解いても、任期を満了したのは1度だけ。ほかは、すべて任期の途中での解散総選挙となっています。衆議院の解散権が時の内閣総理大臣の専権事項となっている以上、安倍首相の解散「カード」の切り方が今後の政局の焦点となってきています。

安倍首相は7月の参院選が終わった直後、「迷わなかったといったら嘘になる」と衆参同時選挙の可能性も考えたことを否定しませんでした。これは、自民党が65議席を獲得して大勝した2013年参院選の当選組が改選を迎え、当初大幅な議席減が予想されたためですが、情勢調査などにより危機は小さいとの判断が党内でなされ同時選挙の可能性がなくったとみられています。参院選の結果も自民党は56議席を獲得したように、大幅な減少とはなりませんでした。

今後、それでも2021年9月の自民党総裁任期満了までに、衆議院の解散総選挙が行われると見るべきです。日本国憲法制定後、これまで衆議院の任期満了まで解散がなされなかったのは、1976年の三木武夫内閣の際の1度だけしかありません。

三木武夫氏

解散はいずれある、と考えるのが現実的です。そして、そのタイミングですが、大きく分けて3つあでしょう。1つ目が年内。2つ目が来年。3つ目が再来年です。そして、3ついずれも首相にとってはネガティブな要素がつきまといます。

年内をみてみると、10月1日に消費税が10パーセントに引き上げられました。この増税では、与党の中でも公明党が主張した軽減税率も導入されますが、導入前から制度の複雑さに先行きが危惧されている制度だけに、国民からの不満が政府に向かう可能性もあるとみられています。また、同22日には、天皇陛下の即位の「即位礼正殿の儀」が行われます。

来年2020年になると、増税の影響で、景気が落ち込む可能性があります。同年の7月から9月にかけては、東京五輪・パラリンピックも開催されます。同年7月30日には、東京都知事が任期満了を迎えるため、それまでに都知事選も行われることになります。慌ただしいスケジュールの上に、景気批判が高まっているかもしれません。

再来年2021年になると、自民党の党総裁選が9月、衆議院議員の任期満了が10月、と大きな政治日程が続くことになり、追い込まれた形での解散を首相が選択する可能性も高まります。

こういった中で、自民党関係者や経済界の方々の間では「消費税がやはりカギなのではないか。安倍首相も簡単に、負ける選挙はしないと思われる」という声が大きいようです。

消費増税でも、国民の消費が下がらず、成果が上がるということは14年の増税の時でも明らかなように、あり得ません。バブル崩壊後、現在まで続いているデフレーションですが、さらにデフレスパイラルの底に沈む可能性が高いです。

それは、以下のグラフをみても明らかです。消費税を増税すると消費税税収自体は「安定」的ですが、税収全体は消費税の影響でそれまでの税収の伸びから大きくダウンすることが観測できます。影響は複数年に及びます。さらにその後も経済全体のコントロールをきちんとしないと税収は伸びず、消費税はまったく安定に寄与しません。

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来年の秋頃には、消費税10パーセントに上げた影響で、景気がどうなっているかはっきりします。悪い数字が出た直後に、首相は『消費増税は成功とは言えなかった。責任を持って、消費税を(5パーセントあたりまで)下げます』といって、それを理由とした解散をすすべきです。

これは私の憶測ですが、これについては案外麻生副総理と安倍総理は合意しているのではないかと思います。麻生氏は義理堅いですから、安倍首相にあらがってまで、財務省の肩を持つことはないでしょう。

財務省の増税シフトはかなり強く、彼らにとっては、10%増税は中途経過に過ぎなく、いずれ15%、20%それ以上を増税をする腹です。

おそらく、一度10%増税に踏み切らないと、財務省の抵抗は凄まじいものなると予想されたのだと思います。日本の官庁としては、最低といわれるような文部省ですら、加計学園問題では、前川元事務次官をはじめかなりの抵抗を示したわけですから、財務省の抵抗はそれを遥かに凌駕した凄まじいものになるでしょう。

安倍総理としては、日本の将来を考えた場合、10%を超える増税は望ましくないと考えているようです。実際、安倍晋三首相は7月の参院選に先立つ記者会見で、追加増税について「今後10年間くらいは必要はない」と述べています。

であれば、10%以上の増税をさせないためにも、国民の信を問うために、総選挙を実施する必要があります。時期としては、東京五輪・パラリンピック後、来年の晩秋から年末にかけての頃が効果的です。

そうして、この時に5%への減税を公約にすれば良いのです。消費税を下げた場合、長期的にはインフレーションになっていくことが見込まれますが、現在の20年以上続くデフレ状況と違って、モノは売れるようになることが想定されます。そうして、日本はデフレから完璧に脱することになります。そうなると、日銀の物価目標2%も達成しやすくなります。

さらには、安倍総理の念願である、憲法改正もやりやすくなるはすです。何もしなければ、そもそも、景気が低迷し、内閣支持率が低下し、選挙をしても改憲勢力が2/3を占めることも叶わず、憲法改正は遠のくことになるでしょう。

そうして、物価目標2%超えて、4%にでもなった場合には、今度は財務省が大好きな増税をすれば良いのです。これに抵抗する勢力は今の日本では皆無でしょう。

増税して、減税して、また増税するという一連のサイクルを実施すれば、財務省の何がなんでも、一方的に増税する、何が何でも緊縮するという世界の財政政策からみれば、かけ離れた馬鹿げた政策は打ち砕かれることになります。

それこそ、必要に応じて機動的に増税、減税を実施するというまともな財政政策が日本でも当たり前にできるようになります。

減税導入当初は、市場が活気を帯びることが予想され、そうなると、2021年に予定されている自民党総裁選の行方も違った形でみえてくるのでは、と考えられます。さらに、その後、景気が加熱したときに、タイミングを逃さず増税すれば、大多数の国民の中にも、日本でも機動的財政政策が当たり前になったとの確信を持つことができるのではないでしょうか。

いずれにせよ最終的な解散の判断は、安倍首相の意向ひとつです。与党も、野党も、衆議院の解散時期に関しては首相の動向に油断できない状態が続きそうです。

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2019年7月4日木曜日

参院選で自民「40台」衝撃予測! 消費増税で国民の不満が蓄積…残る手は全品目の軽減税率だ―【私の論評】生理用ナプキンが安倍政権を窮地に追い込むのか?

安倍総理

参院選は4日に公示、21日投開票される。年金問題や消費増税問題などの争点が、有権者の投票行動にどう影響するか。

自民党は10月からの消費増税を決めたので、選挙では逆風も強まるだろう。マスコミは「年金問題が自民党にとって逆風要因」と書く。しかし、年金で老後の全てを面倒見ることは不可能だと国民は知っている。年金問題をあおっているのは、軽減税率をほしがり、消費増税を目立たなくしたい一部マスコミのように思える。

ともあれ、マスコミが書かなくても、国民には消費増税の不満がたまってくる。実際、政府が正式に消費増税を決めた6月21日の閣議の少し前から、テレビで軽減税率を見込んだCMが出始めた。今後は、10月から消費増税だからと、その前に買ったほうがいいというCMも出るはずだ。

そうなると、国民の怒りがジワリと出てくるだろう。すでにその萌芽(ほうが)は出ていて、6月21~23日にNHKが実施した世論調査までは、内閣支持率は前回調査より6ポイント減少し42%、自民党の支持率は5・1ポイント低下し31・6%になった。これには驚いた。

政界には、「青木方程式」というものがある。自民党の青木幹雄元参院議員会長の持論で「内閣支持率と政党支持率の合計が50%を切ったら、政権は終わり」というものだ。

内閣支持率と政党支持率は、過去の国政選挙の自民党の議席獲得率ともかなり密接な関係があるので、それを活用して、選挙予測ができる。

前月の調査結果から、予測される自民党議席数は「53」程度だったが、「48」程度まで落ち込んだ。その後、支持率は少し持ち直したが、消費増税問題が露出すると、獲得議席が落ち込む可能性も否定できない。

参院選の勝敗ラインについて、菅義偉官房長官は、自公両党で非改選を含む全体の過半数の確保といい、二階俊博幹事長は、改選過半数の確保という。

改選124議席の過半数なら63、非改選を含む全体の過半数なら123。自公の改選議席は77のため、菅官房長官のラインは25議席減でもいい。もっとも、二階幹事長のラインは14議席減で、これだと危ない。菅官房長官が勝敗ラインを明確にしたのは危機感の表れだろう。

20カ国・地域(G20)首脳会合で安倍晋三首相のテレビ露出はかなり大きいものだった。ただし、投開票日の7月21日で、消費増税の露出が大きくなる中で、どこまで自民党は持ち堪えられるか。

世界の著名エコノミストがこぞって批判する消費増税である。今からでも、対応可能な手はある。財務省は消費増税、公明党は軽減税率の導入を唱えている。この両者の意見を満たしながら、景気への悪影響を防ぐには、10月から10%への消費増税を行い、同時に全品目を8%の軽減税率の対象にするのだ。これであれば、軽減税率への対応努力も無駄にならないし、基本税率も10%に引き上げられたので増税派も満足だろう。実際の税負担は今と同じなので景気悪化にもならない。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】生理用ナプキンが安倍政権を窮地に追い込むのか?

ブログ冒頭の記事で、「全品目を8%の軽減税率の対象にする」という主張は正しいと思います。実際、生活必需品で軽減税率の対象になっていないものがあり、かなりの話題となっています。

特に、生理用品やオムツなどの生活必需品が軽減税率の対象外になっていることに、ツイッター上などで不満が続出しています。

きっかけは、生理用品が対象でないと知ってびっくりしたと、7月3日に投稿されたツイートからです。

この投稿者は、生理用品は生活必需品ではないのかと不満を漏らし、嗜好品や贅沢品の扱いはおかしいと怒りをぶつけました。


さらに、トイレットペーパーや乳児・介護用のオムツも対象外なのを知って愕然としたとし、その一方で、新聞が対象になっているのは理解しがたいと訴えました。

国税庁のサイトにある軽減税率制度の手引きによると、対象品目は、酒類・外食を除く飲食料品と週2回以上発行される定期購読の新聞だけです。これらを対象にしたのは、低所得者への配慮からと説明されています。

とすると、生活必需品すべてが軽減税率の対象ではなく、先の投稿者は制度への誤解があることになります。投稿者は指摘を受け、後に一連のツイートを削除しています。

とはいえ、軽減税率の内容を理解している人は3割台に過ぎないとの調査結果もあり、投稿者のような誤解はまだ多い可能性があります。また、厚労省の調査で、「生活が苦しい」世帯が約6割と4年ぶりに増加に転じており、こうした背景もあってか、投稿者への共感の声は多かったです。

「なんで新聞ははいってて生活必需品はないんだ」「少子高齢化悪化させたいの?」「政治家の女性比率が少ないからだろうな」「新聞が行う政府批判が信じられなくなる」などです。

生理用品などが軽減税率の対象になっていないことに先の投稿者が驚いたのは、テレビで頻繁に放映しているレジ補助金のCMを見たからの可能性が指摘されています。以下のそのテレビのCMの動画を掲載します。



このCMは、政府が正式に消費増税を決めた6月21日の閣議の直前から流れています。その中で、スーパーのレシートを見せ、たまねぎやじゃがいもなどの飲食料品は対象品目のチェックが付いているものの、紙ナプキンなどにはチェックが付いていませんでした。

投稿者は、このレシート映像を見て、生理用ナプキンなどについても調べたのかもしれないです。そうして、近いうちに生理用品だけでなく、様々な適用除外品に関しても、不まおが鬱積していくと思います。

高橋洋一氏は、

「今後は、10月から消費増税だからと、その前に買ったほうがいいというCMも出るはずだ。

そうなると、国民の怒りがジワリと出てくるだろう」

としています。そうなると、これからジワジワと国民の消費税造成への反発が高まってくることになります。そうなると、高橋洋一氏が語っているように、参院選は自民党がかなり負けることになることが予想できます。

日本記者クラブが主催して、与野党7党による党首討論会が3日、東京都内で開かれました。安倍晋三首相(自民党総裁)は10月予定の消費税率10%への引き上げ後、さらなる増税について「消費増税を今後10年は、10%から上げる必要はない。社会保障などの財源は高齢者の再雇用による税収増で賄う」としていますが、そうならば8%からの引き上げも同じ理屈で必要がないはずです。

社会保障のため財政健全化をやらないと財政が持たないと、このブロクでは何度も指摘している財務省の大嘘を心の底から信じて、真正面から安倍首相に対し突きつけられるのは麻生氏しかいません。財務省は、麻生財務大臣を通じたことで、各方面に様々な増税キャンペーンを実施しやすかったとみえます。

麻生氏が財務省のトップではなくなったら、今後財務省は10%以上には増税できなくなるでしょう。ということは、安倍総理としては、増税10%後は、麻生切りができるとみているのでしょうか。麻生切とは、無論財務省の力を弱めるということです。


そうして、麻生切ができるということは、麻生氏が政権内にいなくても、安倍総理は十分に政権運営ができるということです。それの裏返しで、今はそれができないということですし、それがために勢いを回復した財務省に対して、増税せざるを得ない状況に追い込まれたということです。

参院選で負けて、その後に麻生切をしたとしたら、後は自民党どうなるのでしょうか。また、どうしなければならないのでしょうか。

今回の増税は10%とかなり切が良く、誰でも計算しやすいので、再び個人消費はかなり冷え込みます。そうなると、経済はまたデフレに舞い戻り、円高になり、雇用情勢も悪化することでしょう。そうして、国民の不満はつのっていきます。

現在の世界経済には不安要素がかなりあります。その不安が現実になり、そのときに日本経済が増税のために落ち込んでいた場合、リーマン・ショックを超えるショックが日本を襲うかもしれません。

そのようなときに、日本がリーマン・ショック時のように、緊縮財政、金融引き締めなどしていては、日本経済は再びどん底に落ち込むと思います。

そのような兆候が少しでもみられた場合、安倍総理はなりふりかまわず、減税と、再び異次元の量的緩和に踏み切るべきです。その時に麻生切ができていれば、それができるでしょう。そうでないと、安倍総理は念願の憲法改正はできずに、政治生命を終えると思います。

女性の恨みは怖いです。ナプキンで安倍総理は本懐を遂げられなかったということにならないようにしていただきたものです。そうして、本来ならばなんとしても最初から10%増税などするべきではありません。全品軽減税率対象などしてしまえば、煩雑な手間が増えるだけです。それにしても、財務省はしぶといです。

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2019年6月3日月曜日

消費増税のために財務省が繰り出す「屁理屈」をすべて論破しよう―【私の論評】財務省の既存の手口、新たな手口に惑わされるな(゚д゚)!

消費増税のために財務省が繰り出す「屁理屈」をすべて論破しよう

「大地震発生で財政破綻するから」…?

高橋洋一氏

財政の「正論」に消費税は不要である

これまで、財務省は消費税を増税するために、いろいろな理屈を言ってきた。

今から30年くらい前には、(1)直間比率の是正だった。これは理屈というより、単に消費税を導入したいという願望だ。税金を直接税と間接税に分けても、その比率は国によって様々であるので、最適比率を探そうとしても無駄だからだ。

次には(2)財政破綻だ。財務省は、国の借金残高がこれまで急増していることを理由に、表だって「財政破綻する」とまでは断言しないものの、いろいろな局面で「ポチ」を使って、陰に陽に財政破綻論を国民に吹き込んでいる。

しかし、本コラムで再三述べているように、「借金」だけではなく「資産」を考慮しないと、本当の財政状況は理解できない。

そこで、市場で取引されているCDS(クレジットデフォルトスワップ。日本国債の「保険料」みたいなもの)から、現在の日本の財政破綻確率を推計すると、今後5年間で1%程度と、ほぼ無視できる低さなのだ。このあたりに興味のある方は、昨年10月15日付けの本コラム「IMFが公表した日本の財政『衝撃レポート』の中身を分析する」(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57978)等を参照していただきたい。

その次に財務省が消費増税の理由として出してきたのが、(3)社会保障のため、というものだ。しかし、これも本コラムで繰り返し述べてきたように、社会保障の財源には社会保険料をあてるのが筋だ。

なにしろ、消費税を社会保障目的税とする国はない。社会保険料が究極の「社会保障目的税」なのだから。もちろん、すべての人に社会保険料を払わせるのは不適当なので、それが払えない人の分は累進所得税によって賄う。

財政に関する「正論」には、消費税などどこにも出てこない。

例えば社会保障を充実させたいなら、現在放置されている社会保険料の徴収漏れについて対策を打つことがまず先決だ。

その具体策が、世界の多くの国がやっているのに、日本ではやっていない「歳入庁」の創設である。歳入庁を、こちらも海外と比べて遅ればせながら導入された、「マイナンバー制度」による所得の捕捉と組み合わせることが重要だろう。

筆者は、かつて第一次安倍政権において歳入庁を創設しようとして、財務省の猛烈な反対にあった。

その理由は、「国税庁を財務省の配下におけなくなると、財務省からの天下りに支障が出る」という実に情けないもので、愕然とさせられた。彼ら財務官僚は、口では偉そうに国家を語るが、その本音は自己保身でしかないことがわかり、興ざめしたものだ。

「大地震」という新たな理屈

(1)直間比率の是正、(2)財政破綻、(3)社会保障という「消費税増税のための理屈」それぞれの間違いを指摘してきたが、ここに最近、新たに4つ目として「大地震の可能性」も加わったようだ。

もっともこれは、いつものように財務省が前面に出ることはない。財務省は「ポチ」と言われる、自らの言いなりになるマスコミ人や学者を駆使するのだ。

まずはマスコミ人だ。筆者は、5月26日放送のBS朝日の「激論!クロスファイア」において、原真人・朝日新聞編集委員と討論した。

そこで原氏は、近い将来の大地震発生確率の高さに触れて、財政破綻の可能性を主張した。YouTubeなどを探せば、この時の状況がわかる(例えば、https://www.youtube.com/watch?v=n1bPxAVTX6w&list=PLZNNFTj6GlEP_zYOlpNykSJy7gtQaYlGW )。

筆者は、「財政破綻がリスクであると言うなら、確率として表現すべきだ」と指摘したが、原氏は一切説明できなかった。もちろん筆者は、「財政破綻の確率は今後5年以内で1%程度、一方で首都直下地震の確率は今後5年以内に1割強だから、桁がひとつ違う」と数字を挙げて説明した。

やりとりを見てもらえばわかると思うのだが、原氏の論は苦しい。財政破綻のリスクと言い募りながら、具体的なことが言えないのだ。司会者の田原総一郎氏からも「しっかりして」と言われていた。

原氏のツイッターには、「先の日曜深夜に放映されたBS朝日『激論クロスファイア』で、リフレ派の中心、高橋洋一氏と初めて討論した。都合のいいデータと数字、解釈だけ持ち出して議論してくるのにはうんざり。」と書いてある。

筆者の論拠が「都合のいいデータと数字、解釈」であるなら反論も簡単なはずだが、原氏はそれができなかった。当該ツイートのコメント欄を見ても、原氏に対して辛辣なものばかりだ(https://twitter.com/makotoha/status/1133562158011129856)。


なお原氏は、番組の中で資料を使っていたが、その内容は財務省の資料そのものであった。筆者は番組収録中にすでに気がついていたが、財務省の資料そのものを、出典も明記せずに使うのは、マスコミ人としても問題だろう。



その資料の内容についても指摘しておきたい。

原氏は「戦争による財政破綻と今の状況が似ている」と言いたかったようだが、まったく違う。まず、(1)財務省資料には政府資産の額が書かれていない。戦争期には実質的に政府資産がなかったが、現在は資産がたっぷりあるという点で、事情が異なっている。

また、(2)社会の生産力も大きく異なる。戦争期の日本は生産手段を破壊され、生産力がほぼ皆無という状況に追い込まれているが、今は技術に支えられた生産力があり、これまたまったく事情が異なる。そもそも、戦時中〜戦後に酷いインフレになるのは日本に限らず、どこの国でも見られる現象だ。

なお、(1)直間比率の是正、(2)財政破綻、(3)社会保障それぞれについての筆者の詳しい見解は、政策カフェ「高橋洋一教授出演!「消費増税 賛否両論」(優子の部屋 特別版)」(https://www.youtube.com/watch?v=vBHJp4QKBXs)でまとめているのでご覧いただきたい。

東日本大震災の教訓

次に、学者にも、大震災を理由に消費増税を主張する人が出てきた。

吉川洋・立正大学長は、「首都直下、南海トラフなどの大地震も財政破綻の引き金になり得るとみて、これに備えるためにも地道な財政再建が必要であり、原則消費増税を実施すべきだ」と主張する(https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-05-30/PS9RQK6TTDS301)。

大震災対応の一般論について考えてみよう。

仮に、大震災が500年に1度発生するとしよう。事前の対策としては建物などの減震・免震が考えられるが、これはインフラ整備のため、長期国債発行で賄われる。事後対応としてもやはり国債発行により復興対策が行われるが、大震災発生の確率から考えれば500年債、500年償還とするのが適切だ。

いずれにしても、増税は悪手だ。というのも、増税が大震災の経済ショックを増幅するダブルパンチになるからである。

こうした話は、経済学の大学院レベルの課税平準化理論の簡単な応用問題だ。しかし、実際に東日本大震災が発生した際、民主党政権下では財務省の主導により、復興対策費用は復興増税で賄われ、長期国債は発行されず課税平準化理論は無視された。

もちろん筆者は、2011年3月14日付本コラム(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/2254)や4月18日付本コラム(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/2463)などで復興増税を批判した。

しかし、日本の主流派経済学者は、ほとんど全員が東日本大震災後の復興増税に賛同した。その賛同者リストは、今でも見ることができる(http://www3.grips.ac.jp/~t-ito/j_fukkou2011_list.htm)。この愚策のために、いまや日本の大学の経済学の講義では、まともな理論を教えられなくなってしまった。

吉川氏の意見は、東日本大震災後の愚かな政策を再び実行しようと唱えているわけで、筆者にとっては信じがたい。
なお吉川氏は、2014年の消費増税前、その影響について「軽微だ」と述べ、予想を外している。実際には増税後に景気動向指数が低下し、誰の目にも景気悪化は明らかだった。
ところが、景気の「山」や「谷」を判断する、内閣府の景気動向指数研究会も「消費増税による景気悪化はなかった」としている。この景気動向指数研究会の座長は、実は吉川氏だった。さもありなんという話だ。

消費増税の理由に、(4)大地震の可能性を持ち出すのは筋悪だ。上に書いたように、そもそも震災対応は増税によるべきでない。さらに、大地震は今後30年間で7割の確率、今後5年以内では1割強の確率で発生するといわれ、そのリスクは財政破綻の確率1%程度に比べて桁違いに大きい。これは、大地震でも財政破綻など起こらないことを意味する。

もし本当に、この「財政破綻の確率は1%」が間違いだと思うなら、市場でCDS(クレジットデフォルトスワップ)を購入すれば、確実に儲けられる。大地震論法を採用している人はCDSを買っているのだろうか。そうした行動をせずに、財政破綻だけ主張することを、一般的には「煽り」という。
財務省に「直接対決」を申し込むと…

筆者は、これまで上記のような「消費増税のための理屈」がいかにバカバカしいかについて、様々な場で書いたり、話したりしてきた。

ただし、こうした手法はまどろっこしいので、「増税の理屈の『発信元』と思われる財務省に直接言えばいいのではないか」と思うに至った。幸いなことに、政策NPO「万年野党」が運営協力している政策カフェで、財務省による「訪問講座」(https://www.mof.go.jp/tax_policy/publication/houmon.php)を使った企画が出てきた(https://twitter.com/seisaku_cafe/status/1133953980457934848)。
【どうなる消費増税?】7/1 19時~,『財務省出張講座』を依頼中です。
政策カフェチャンネルでは前回,不要論の高橋洋一先生@YoichiTakahashiのお話を伺いました。次回は財務省のご担当者からお話を伺ってみたいと思っています。動画配信他,会場参加の申込も受付ける予定です。
(準備が整い次第受付開始)

財務省による「訪問講座」とは、「税の仕組みや税を取り巻く状況等の説明、意見交換を目的として、皆さんの集まりや勉強会、職場研修、ゼミ、中学・高校の授業等に(財務省)職員が訪問して話す」というものである。そこに筆者が参加すれば、財務官僚とじかに「意見交換」ができる。

しかし財務省は、「YouTube等の不特定多数が視聴される媒体等への出席はご遠慮させて頂いております」とし、拒否してきた(https://twitter.com/seisaku_cafe/status/1134468192892416000)。


なお、高橋洋一先生をお招きした会の動画は、こちらからご覧頂けます。https://youtu.be/vBHJp4QKBXs 
【調整報告1-1】財務省さんから残念ながら「Youtube等の不特定多数が視聴される媒体等への出席はご遠慮させて頂いております」とのご回答を頂きました。
(続く)
税に関する議論は広く国民に共有されるべきはずなのに、財務省自ら、不特定多数が視聴する「もっともオープンな場」を避けるとは実に情けない。

【私の論評】財務省の既存の手口、新たな手口に惑わされるな(゚д゚)!

上の記事でも、クロスファイア 「高橋洋一 ✕ 原真人」のリンクが貼ってありましたが、同じクロスファイアの番組でも、小沢一郎が出演している「選挙」関連のものにリンクされていたので、以下に正しいリンクを貼っておきます。


この動画、勝ち負けで判断したくはないですしそれ以前の話ではあるのですが、高橋教授の完封勝利です。 高橋教授は確率に基づく数字を提示しているのですが、原氏は何らの数字的な根拠を示されていないです。 反対の意思表示を示すのであるならばそれなりに数字で表して説明しないと議論以前の問題です。

上の高橋洋一の記事と、この動画をご覧いただければ、現在の日本経済の諸問題が明らかになると思います。

この記事に改めて、何かを新たに付け加えることもありませんが、しいて付け加えるとすれば、上の記事の中にある課税平準化理論という言葉の意味をさらに詳細に理解しやす形で付け加えようと思います。

これは、高橋洋一氏はあまりも当然のことなので、詳しく説明する必要もないと判断したのでしょう。私自信も、当然のことだとは思うのですが、周りの人に聞いてみると地震の復興を税金で行うべきか、国債をもちいるべきなのか、あやふやな人が結構いたので。今回はこれについて説明しようと思います。

結論からいうと、これは高橋洋一氏も語るように、国債を用いるべきなのですが、その正解をいえるためには、課税平準化理論の意味を知っていることが前提となります。

大震災が起こったときに、その復興などに増税で賄うような国はないです。日本の復興税だけが、世界の例外です。古今東西にこれだけが、唯一の例外です。ただし、古代はどうだったのか、あるいは聞いたことがない国に地域まで絶対なかったとはいえませんので、誰かご存知の方がいらっしゃいましたら是非教えていただきたいです。無論その結果も含めて教えていただきたいです。

しかし、ネットで調べた限りではそのような国は古今東西ありませんでした。繰り返しいいますが、日本だけが例外です。このようなときには、長期国債を使うのがマクロ経済学上のセオリーです。「課税の標準化(タックス・スムージング)」という理論があるように、課税のインパクトは薄く伸ばして緩和させるのが基本です。

仮に百年に一度の震災だとすれば、震災の経済に与えるショックを百年にわたって広く薄く負担し、軽減させるため、百年債を発行して100分の1ずつ償還します。それが世界中の財政の常識です。これを否定する人は世界中に誰もいません。いるとすれば、日本の財務省の官僚か、財務省の走狗に成り果てたエコノミストや識者だけでしょう。

なぜそのようなことをするかといえば、世代間の不公平を是正するためです。百年に一度の地震に関して復興税で復興してしまえば、地震が発生した世代にだけ負担が重くのしかかります。

復興では、様々なインフラを整備します。その多くは、地震が起こった時の世代だけではなくその後の世代も使い続けます。だからこそ、百年債を発行して、毎年広く世代間で平準化し、地震に遭遇した時代の世代や他世代の負担を減らすのです。国債は、次世代につけをまわすなどのことは全くの詭弁以外の何者でもありません。そうではなく、せだいか復興税など、全くこの「課税標準化理論」からすれば、矛盾にみちみちています。

結局のところ、財務省は増税できるなら、何で良いようです。経済理論などを捻じ曲げても、国民生活が悪くなろうが、とにかく増税さえできれば、自分たちの勝ちと考えているようです。

さて、このようなことを考えているうちに、最近の財務省増税に向けての動きがもう一つあったことを思い出しました。

それは、GWも明け直後からいきなり朝日新聞を利用した財務省のMMT派への攻撃が始まったことです。朝日新聞が5月7日以下のような記事を掲載しました。一部を引用します。
「MMT」に気をつけろ! 財務省が異端理論に警戒警報
 財政の破綻(はたん)など起きっこないから、政府はもっと借金してもっとお金を使え――米国で注目を集める「MMT」(Modern Monetary Theory=現代金融理論)と呼ばれる経済理論が、日本の政治家の間にも広まり始めている。政府が膨大な借金を抱えても問題はない、と説くこの理論は米国で主流派経済学者から「異端」視され、論争を巻き起こしている。これまで消費増税を2度延期し、財政再建目標の達成時期も先送りしてきた日本では、一見心地よく聞こえそうなMMTはどう受け止められていくのだろうか。 
 4月22日午後、東京・永田町の衆院議員会館の会議室に、10人あまりの国会議員が集まった。自民党の若手議員らが日本の財政問題などを考えるために立ち上げた「日本の未来を考える勉強会」の会合。テーマは「MMT」だ。 
 この会でMMTが取り上げられるのは、一昨年以降、これで3回目という。最近、MMTの提唱者のニューヨーク州立大教授、ステファニー・ケルトン氏のインタビューが報じられるなど、日本のメディアでもMMTが取り上げられ始め、勉強会の参加者の一人は「世界が、我々に追いついてきたね」と誇らしげだ。(後略)』
後略部で、「評論家」の中野剛志氏について、わざわざ「現役の経産官僚でありながら」と書いている時点で、悪意というか「攻撃の意思」むき出しです。

ちなみに、財務官僚はMMTについて、「(MMTは)要するに、いっぱいお金を使いたい人が言っているだけ。論評に値しない。(経済政策の)手詰まり感の現れだろう」(ある財務省幹部)と、予想通り「論評に値しない」と切り捨てています。

論評に値しないならば、無視すればいいのに、そうすることもできないようです。

議論になったら負けるので、MMT派(というか反・緊縮財政派)に対する個人攻撃、誹謗中傷や、ストローマン・プロパガンダ、権威・プロパガンダ等々で貶め、潰そうとしてきているわけです。

私自身は、MMTに関しては、もしある国が有する生産性能力を超えてまで、過剰に貨幣を増やせば、当然過剰なインフレになるのは明らかなので、この点一点をもっても、かなり懐疑的です。政府の借金についても、このブログにも述べているように、無論現状の日本はそのような状況ではないではないので、心配する必要もないですが、際限なく借金しても問題がないという考え方には賛同はできません。

やはり、一昨日にも掲載した、「現在の日本の環境では、プライマリーバランス赤字を継続し、おそらくはプライマリーバランス赤字を拡大し、国債の増加を受け入れることが求められています。プライマリーバランス赤字は、需要と産出を支え、金融政策への負担を和らげ、将来の経済成長を促進するものです。要するに、プライマリーバランス赤字によるコストは小さく、高水準の国債によるリスクは低いのです」という考え方には、多いに賛成です。

そうして、この考えは、何もMMTなる理論でなくても、既存のマクロ経済学で十分に説明できます。だから、なせMMTなる理論を持ち出すのかその意味がわかりません。さらに、困ったこととには、MMT派の人々は、その理論を数式用いて説明していません。

MMTにはモデルがなく滋賀って数式もないです。そのためか、主張する人によって中身が変わります。これでは議論のしようがないです。これについては、以下の動画をご覧いただくとご理解いただけるものと思います。



以上のようなことから、欧米でもまともな経済学者はMMTに関してはほとんど相手にしていないというのが実情です。

それにしても、この財務省の動きは気になります。今後も、MMT派に対する様々な攻撃(特に、スキャンダル系)が続くものと思います。

この動きは、財務省による増税キャンペーンにも関係あるのではないかと思います。結局のところ、MMTを批判することによって、既存のマクロ経済の理論まで否定して、増税のための根拠に仕立てる魂胆ではないかと思うのです。

興味深いことに、朝日新聞は菅官房長官が顧問の「政府紙幣及び無利子国債の発行を検討する議員連盟」についても取り上げています。(自民党の20人超の有志議員で構成)

政府の負債(国の借金ではない)、具体的には国債・財投債の内、すでに46%が日銀保有しています。

【2018年末時点 日本国債・財投債所有者別内訳(総計は1013兆円)】


日銀が保有する国債について、政府は返済負担や利払い負担がありません(子会社ですから)。

日本銀行の株式の55%は、日本政府が所有しています。日本銀行は歴とした日本政府の子会社です。日本銀行のホームページには、
本銀行は、特別の法律(日本銀行法)により設立され、設立に関し行政庁の認可が必要な「認可法人」と位置付けられています。日本銀行は株式会社ではなく、また株主総会もありません。
と、書かれていますが、何しろ日本銀行は「株式」を東証JASDAQに上場しているのです。現時点で、日本銀行の株価は一株36,000円程度で、単位株式数が100株なので、誰でも360万円ほどで日銀の株主になれます。ただし、日銀は日本政府の純然たる子会社であるため、株主になってもあまり意味はありません。

株式市場に株式を上場しておきながら、「株式会社ではない」など通るはずがありません(ならば、上場するな、という話)。少なくとも、会計上、日銀は疑いようもなく政府の子会社なのです。

この手の「事実」やMMTの考え方などは全く別にして、既存のマクロ経済学で十分に説明がつきます。そうして、これは早急に国民が共有しなければなりません。

ちなみに、「政府紙幣及び無利子国債の発行を検討する議員連盟」の「無利子国債」は、無期限無利子国債だと思いますが、確かに日銀保有の国債を新規の「無期限無利子国債」と交換してしまえば、政府の負債は実質はもちろん、名目でも消滅します。

もっとも、そんな面倒なことをしなくても、単に「日銀保有国債について、政府の債務不履行はあり得ない(当たり前)」という認識を国民や政治家が持てば住む話です(別に、無期限無利子国債の発行に反対しているわけではないですが)。黒田総裁が国会で発言すれば、財務省も反論できません。

自国通貨建て国債のデフォルトはあり得ない」(ただし先進国などのまともな経済)という、当たり前の真実を国民が早急に共有し、日本の財政破綻の可能性はゼロであることを前提に財政拡大に転じるべきです。

そうして、財務省のMMT批判については、その動向も今後も見守っていこうと思います。

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