高橋洋一 日本の解き方
安倍総理 |
参院選は4日に公示、21日投開票される。年金問題や消費増税問題などの争点が、有権者の投票行動にどう影響するか。
自民党は10月からの消費増税を決めたので、選挙では逆風も強まるだろう。マスコミは「年金問題が自民党にとって逆風要因」と書く。しかし、年金で老後の全てを面倒見ることは不可能だと国民は知っている。年金問題をあおっているのは、軽減税率をほしがり、消費増税を目立たなくしたい一部マスコミのように思える。
ともあれ、マスコミが書かなくても、国民には消費増税の不満がたまってくる。実際、政府が正式に消費増税を決めた6月21日の閣議の少し前から、テレビで軽減税率を見込んだCMが出始めた。今後は、10月から消費増税だからと、その前に買ったほうがいいというCMも出るはずだ。
そうなると、国民の怒りがジワリと出てくるだろう。すでにその萌芽(ほうが)は出ていて、6月21~23日にNHKが実施した世論調査までは、内閣支持率は前回調査より6ポイント減少し42%、自民党の支持率は5・1ポイント低下し31・6%になった。これには驚いた。
政界には、「青木方程式」というものがある。自民党の青木幹雄元参院議員会長の持論で「内閣支持率と政党支持率の合計が50%を切ったら、政権は終わり」というものだ。
内閣支持率と政党支持率は、過去の国政選挙の自民党の議席獲得率ともかなり密接な関係があるので、それを活用して、選挙予測ができる。
前月の調査結果から、予測される自民党議席数は「53」程度だったが、「48」程度まで落ち込んだ。その後、支持率は少し持ち直したが、消費増税問題が露出すると、獲得議席が落ち込む可能性も否定できない。
参院選の勝敗ラインについて、菅義偉官房長官は、自公両党で非改選を含む全体の過半数の確保といい、二階俊博幹事長は、改選過半数の確保という。
改選124議席の過半数なら63、非改選を含む全体の過半数なら123。自公の改選議席は77のため、菅官房長官のラインは25議席減でもいい。もっとも、二階幹事長のラインは14議席減で、これだと危ない。菅官房長官が勝敗ラインを明確にしたのは危機感の表れだろう。
20カ国・地域(G20)首脳会合で安倍晋三首相のテレビ露出はかなり大きいものだった。ただし、投開票日の7月21日で、消費増税の露出が大きくなる中で、どこまで自民党は持ち堪えられるか。
世界の著名エコノミストがこぞって批判する消費増税である。今からでも、対応可能な手はある。財務省は消費増税、公明党は軽減税率の導入を唱えている。この両者の意見を満たしながら、景気への悪影響を防ぐには、10月から10%への消費増税を行い、同時に全品目を8%の軽減税率の対象にするのだ。これであれば、軽減税率への対応努力も無駄にならないし、基本税率も10%に引き上げられたので増税派も満足だろう。実際の税負担は今と同じなので景気悪化にもならない。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
【私の論評】生理用ナプキンが安倍政権を窮地に追い込むのか?
ブログ冒頭の記事で、「全品目を8%の軽減税率の対象にする」という主張は正しいと思います。実際、生活必需品で軽減税率の対象になっていないものがあり、かなりの話題となっています。
ブログ冒頭の記事で、「全品目を8%の軽減税率の対象にする」という主張は正しいと思います。実際、生活必需品で軽減税率の対象になっていないものがあり、かなりの話題となっています。
きっかけは、生理用品が対象でないと知ってびっくりしたと、7月3日に投稿されたツイートからです。
この投稿者は、生理用品は生活必需品ではないのかと不満を漏らし、嗜好品や贅沢品の扱いはおかしいと怒りをぶつけました。
さらに、トイレットペーパーや乳児・介護用のオムツも対象外なのを知って愕然としたとし、その一方で、新聞が対象になっているのは理解しがたいと訴えました。
国税庁のサイトにある軽減税率制度の手引きによると、対象品目は、酒類・外食を除く飲食料品と週2回以上発行される定期購読の新聞だけです。これらを対象にしたのは、低所得者への配慮からと説明されています。
とすると、生活必需品すべてが軽減税率の対象ではなく、先の投稿者は制度への誤解があることになります。投稿者は指摘を受け、後に一連のツイートを削除しています。
とはいえ、軽減税率の内容を理解している人は3割台に過ぎないとの調査結果もあり、投稿者のような誤解はまだ多い可能性があります。また、厚労省の調査で、「生活が苦しい」世帯が約6割と4年ぶりに増加に転じており、こうした背景もあってか、投稿者への共感の声は多かったです。
「なんで新聞ははいってて生活必需品はないんだ」「少子高齢化悪化させたいの?」「政治家の女性比率が少ないからだろうな」「新聞が行う政府批判が信じられなくなる」などです。
生理用品などが軽減税率の対象になっていないことに先の投稿者が驚いたのは、テレビで頻繁に放映しているレジ補助金のCMを見たからの可能性が指摘されています。以下のそのテレビのCMの動画を掲載します。
このCMは、政府が正式に消費増税を決めた6月21日の閣議の直前から流れています。その中で、スーパーのレシートを見せ、たまねぎやじゃがいもなどの飲食料品は対象品目のチェックが付いているものの、紙ナプキンなどにはチェックが付いていませんでした。
投稿者は、このレシート映像を見て、生理用ナプキンなどについても調べたのかもしれないです。そうして、近いうちに生理用品だけでなく、様々な適用除外品に関しても、不まおが鬱積していくと思います。
高橋洋一氏は、
「今後は、10月から消費増税だからと、その前に買ったほうがいいというCMも出るはずだ。
そうなると、国民の怒りがジワリと出てくるだろう」
としています。そうなると、これからジワジワと国民の消費税造成への反発が高まってくることになります。そうなると、高橋洋一氏が語っているように、参院選は自民党がかなり負けることになることが予想できます。
日本記者クラブが主催して、与野党7党による党首討論会が3日、東京都内で開かれました。安倍晋三首相(自民党総裁)は10月予定の消費税率10%への引き上げ後、さらなる増税について「消費増税を今後10年は、10%から上げる必要はない。社会保障などの財源は高齢者の再雇用による税収増で賄う」としていますが、そうならば8%からの引き上げも同じ理屈で必要がないはずです。
麻生氏が財務省のトップではなくなったら、今後財務省は10%以上には増税できなくなるでしょう。ということは、安倍総理としては、増税10%後は、麻生切りができるとみているのでしょうか。麻生切とは、無論財務省の力を弱めるということです。
そうして、麻生切ができるということは、麻生氏が政権内にいなくても、安倍総理は十分に政権運営ができるということです。それの裏返しで、今はそれができないということですし、それがために勢いを回復した財務省に対して、増税せざるを得ない状況に追い込まれたということです。
参院選で負けて、その後に麻生切をしたとしたら、後は自民党どうなるのでしょうか。また、どうしなければならないのでしょうか。
今回の増税は10%とかなり切が良く、誰でも計算しやすいので、再び個人消費はかなり冷え込みます。そうなると、経済はまたデフレに舞い戻り、円高になり、雇用情勢も悪化することでしょう。そうして、国民の不満はつのっていきます。
現在の世界経済には不安要素がかなりあります。その不安が現実になり、そのときに日本経済が増税のために落ち込んでいた場合、リーマン・ショックを超えるショックが日本を襲うかもしれません。
そのようなときに、日本がリーマン・ショック時のように、緊縮財政、金融引き締めなどしていては、日本経済は再びどん底に落ち込むと思います。
そのような兆候が少しでもみられた場合、安倍総理はなりふりかまわず、減税と、再び異次元の量的緩和に踏み切るべきです。その時に麻生切ができていれば、それができるでしょう。そうでないと、安倍総理は念願の憲法改正はできずに、政治生命を終えると思います。
女性の恨みは怖いです。ナプキンで安倍総理は本懐を遂げられなかったということにならないようにしていただきたものです。そうして、本来ならばなんとしても最初から10%増税などするべきではありません。全品軽減税率対象などしてしまえば、煩雑な手間が増えるだけです。それにしても、財務省はしぶといです。
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