決裂した第2回米朝会談 |
先月ベトナムのハノイで開かれた2回目の米朝首脳会談が決裂してから米国議会で対北朝鮮制裁を強化する動きが表面化している。
ロイター通信は5日、北朝鮮と取引するすべての個人と企業にセカンダリーボイコットを義務付ける法案が米上院銀行委員会に再び上程されたと報道した。
報道によると、上院銀行委員会に所属する共和党のパット・トゥーミー上院議員と民主党のクリス・バン・ホーレン上院議員はこの日、「オットー・ワームビア対北朝鮮銀行業務制限法案」を共同発議した。北朝鮮に抑留されて送還後に死亡した米国人大学生のオットー・ワームビア氏を追慕するためワームビアという名前が付けられた。
ブリンクアクトとも呼ばれるこの法案は北朝鮮の挑発が続いた2017年に上院で初めて発議され、同年11月に銀行委員会を全会一致で通過したが、上院本会議に回付されることができず会期終了にともない昨年末に自動廃棄された。
バン・ホーレン議員は法案再上程と関連、「北朝鮮が核能力を増やそうとしているという指摘が出続けているが米国がだまっていてはならない。2回目の米朝首脳会談が決裂した状況で議会が線を明確に引く必要性はいつになく重要になった」と明らかにした。
法案は北朝鮮政権と取引するすべての海外金融機関と北朝鮮政権を助力するために制裁を回避する個人にセカンダリーボイコットを義務的に課すことを骨子とする。
具体的には、北朝鮮と金融取引など利害関係がある個人と企業の米国内の外国銀行口座を凍結させ、関連海外金融機関の米国内口座開設を制限する措置が法案に盛り込まれた。
また、北朝鮮と合弁会社を作ったり追加投資を通じた協力プロジェクトを拡大する行為も国連安全保障理事会の承認がなければ禁止するようにした。
ただし2017年に法案が初めて発議された時に含まれた「南北経済協力事業開城(ケソン)工業団地再開反対」の条項は除外された。
ホーレン議員は「北朝鮮の石炭、鉄、繊維取引と、海上運送そして人身売買を手助けするすべての個人と企業に強力な制裁を課すよう義務化することで既存の国際法を効果的に執行させることに焦点を合わせている」と説明した。
ワームビア氏の両親はこの日声明を通じ、「この法案に含まれた制裁は金正恩(キム・ジョンウン)とその政権の行動を変えさせる有用な新たな道具を米国に提供するだろう」としてブリンクアクトの再上程を歓迎した。
【私の論評】軍事オプションを選択する可能性もある米国の北制裁(゚д゚)!
「オットー・ワームビア対北朝鮮銀行業務制限法案」は、17カ月間北朝鮮に抑留されて死亡した米国大学生、オットー・ワームビア氏の名を取った対北制裁案が米下院で可決しされたものです。上の記事にもあるように、 2017年に上院で初めて発議され、同年11月に銀行委員会を全会一致で通過しましたが、上院本会議に回付されることができず会期終了にともない昨年末に自動廃棄されました。
北朝鮮・平壌で、涙ながらに記者会見する米大学生の オットー・ワームビア氏。(2016年2月29日) |
米議会レベルでの対北制裁法は2017年7月末、米上院が北朝鮮の石油輸入封鎖など全方向での制裁を入れた「北朝鮮・ロシア・イラン制裁パッケージ法」可決(8月2日発効)後、さらに推進されたものでした。
既存法は▼北朝鮮の原油・石油製品の輸入遮断▼北朝鮮労働者の雇用禁止▼北朝鮮の船舶と国連対北朝鮮制裁を拒否する国家船舶の運航禁止▼北朝鮮のオンライン商品の取り引きおよび賭博サイト遮断--など全方向での制裁措置が含まれていました。エド・ロイス下院外交委院長(共和党)が「対北朝鮮遮断および制裁現代化法」で発議しました。
「オットー・ワームビア対北朝鮮銀行業務制限法案」は、既存法の実効性を高めるために北朝鮮との貿易取り引きを助ける金融分野の制裁に焦点を当てたものです。北朝鮮関連企業と取り引きをする外国金融機関、貿易業者と仲介業者などを米国主導の国際金融システムから排除する「セカンダリーボイコット(二次的制裁)」です。
既存法は▼北朝鮮の原油・石油製品の輸入遮断▼北朝鮮労働者の雇用禁止▼北朝鮮の船舶と国連対北朝鮮制裁を拒否する国家船舶の運航禁止▼北朝鮮のオンライン商品の取り引きおよび賭博サイト遮断--など全方向での制裁措置が含まれていました。エド・ロイス下院外交委院長(共和党)が「対北朝鮮遮断および制裁現代化法」で発議しました。
「オットー・ワームビア対北朝鮮銀行業務制限法案」は、既存法の実効性を高めるために北朝鮮との貿易取り引きを助ける金融分野の制裁に焦点を当てたものです。北朝鮮関連企業と取り引きをする外国金融機関、貿易業者と仲介業者などを米国主導の国際金融システムから排除する「セカンダリーボイコット(二次的制裁)」です。
特に、すべての規制を行政府の義務事項に規定するなど制裁の度合いを最高レベルに引き上げました。この法案によると、海外に派遣されている北朝鮮勤労者を雇用した外国企業も金融制裁の対象になります。国連などによれば、現在約5万人の北朝鮮住民が外貨稼ぎのために海外に派遣されており、金正恩政権は彼らの給与のほとんどを没収して年間3億ドル(約340億円)の収益を得ています。
米政治専門メディア「Washington Examiner」はこの法案が結局、北朝鮮との貿易・金融取り引きが最も多い中国をターゲットにしたものと解釈していました。
米政治専門メディア「Washington Examiner」はこの法案が結局、北朝鮮との貿易・金融取り引きが最も多い中国をターゲットにしたものと解釈していました。
ワームビア法は、米議会 北朝鮮と取引する人や団体に対して、セカンダリーボイコット(二次的制裁)を義務付ける法案ということです。 米国大統領が 「制裁出来る」 から 「制裁しなくてはいけない」にかわるという事です。大統領の 裁量権がなくなり、法律違反した個人や組織を制裁しなければならなくなるということです。違反した個人や組織と取引した銀行も処罰の対象であり、最悪破綻することもあり得るということです。
例えば韓国軍が瀬取りに関与していた場合、韓国軍や韓国という国家が制裁対象になるということです。それは、中国も同じことです。中国の制裁破りに政府が関与(ほとんどの場合直接、間接に関与)ていた場合、中国政府も制裁対象になるということです。
スティーブン・ビーガン対北朝鮮特別代表 |
米国では、「ワームビア法」など対北朝鮮制裁を強化する動きが表面化していますが、それに加えて軍事オプションを求める声も起きていました。
米国務省のスティーブン・ビーガン対北朝鮮特別代表は2018年11月20日、李ドフン韓半島(朝鮮半島)平和交渉本部長との単独会談を行い米韓ワーキンググループ実務陣との全体会議を進める中で、「米朝交渉の推進派も(米国)国内で政治的に追い込まれているうえに、民主党が下院多数党になり、このように時間が流れることを待っているわけにはいかない」との立場を明らかにし、「(米朝対話の)窓が閉められている」という発言をしました。
もちろんトランプ政権が北朝鮮の不誠実な態度に反発して直ちに北朝鮮に対する軍事行動を準備する可能性は低いと思われますが、「機会の窓」発言はトランプ政権内部で強硬圧迫論が頭をもたげていることを示唆するもので注目が必要です。
北朝鮮が対話による「核兵器の完全な廃棄」に応じない場合、制裁強化とともに軍事オプションの復活も否定できないです。しかしそうした行動には文在寅政権が必死に妨害することは明らかです。そのために米国はいま、韓国軍を動員しない方法でのミサイル基地破壊と「金正恩除去(レジームチェンジ)」訓練を強化し始めています。
ミサイル基地破壊訓練としては、11月19日に米国ユタ州ヒル空軍基地で史上初のF35A 60機によるミサイル基地破壊訓練「エレファントウォーク」が実施されました。この訓練は、中国やロシアを想定したものだとしていますが、実は北朝鮮のミサイル基地、特には移動式ミサイル発射台を壊滅する訓練でした。
014年就航の強襲揚陸艦「アメリカ」 |
金正恩除去作戦も同時に準備されています。在日米軍基地を活用した韓国軍を使わない「斬首作戦体制」の構築です。そのために上陸用強襲揚陸艦「ワプス」(1989年就航、41500トン)を2014年就航の強襲揚陸艦「アメリカ」(44900トン)に交代させます。
「アメリカ艦」は海上上陸作戦用の「ワプス艦」とは違い、特殊部隊含む海兵隊と輸送機オスプレイ、スーパーコブラ戦闘ヘリ、重量輸送ヘリのシー・スタリオン(CH-53)、対潜水艦ヘリ、偵察ヘリ、そしてF35Bステルス戦闘機など、空からの潜入に特化した最新鋭武器を搭載しています。
韓国の民間シンクタンク、峨山政策研究院は12月19日に「2019年国際情勢展望」と題したリポートで「韓国が来年も北朝鮮問題ばかりに集中すれば、北東アジアのパワーバランスが変化する過程で『コリア・パッシング(韓国外し)』が現実化する恐れがある」と指摘しました。
2019年、韓国は「北朝鮮非核化」をめぐって米国と北朝鮮のどちらの側につくのかの選択を迫られることとなるでしょう。
米国の制裁はますます厳しくなりそうです。このままだと北朝鮮はとんでもないことになります。金正恩委員長が核兵器の申告に踏み出すか否か、トランプ大統領が、これまでの核兵器全面破棄の原則を守れるかどうか、2019年朝鮮半島の行方はこの二人の指導者の決断にゆだねられています。
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