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2019年1月27日日曜日

米国務長官、タリバンとの協議で「進展」 米軍のアフガン撤収に「真剣」―【私の論評】ドラッカー流マネジメントの観点からも、戦略的な見方からも、米国が中国との対峙を最優先する姿勢は正しい(゚д゚)!


ポンペオ米国務長官のツイート

ポンペオ米国務長官は26日、アフガニスタン情勢に関しツイッターで「米国は和平を追求し、アフガンが今後も国際テロの空間とならないようにするとともに、(米軍)部隊を本国に帰還させることを真剣に考えている」と述べ、将来的にアフガニスタン駐留米軍を順次撤収させていく考えを示した。撤収開始の時期などについては明らかにしなかった。

 米国のハリルザド・アフガン和平担当特別代表は21~26日にカタールのドーハでアフガンのイスラム原理主義勢力タリバンと和平協議を実施。現地からの報道では、双方は米軍撤収に関し一定の合意に達したとされるが、ポンペオ氏は「協議では和解に関し重要な進展があった」としたものの、米軍撤収に関する合意には言及しなかった。

米国のハリルザド・アフガン和平担当特別代表

 ポンペオ氏はまた、和平に関し「アフガン政府および全ての関係当事者と一緒に取り組んでいる」と指摘。「米国はアフガンの主権と独立、繁栄を目指す」とも語り、不完全な合意で情勢を不安定化させないよう慎重に協議を進める立場を打ち出した。

 一方、ハリルザド氏もツイッターで「近く協議を再開する」とした上で、「多くの取り組むべき課題が残されている。関係当事者間の対話と包括的停戦を含む全ての課題で合意できなければ合意にはならない」と強調した。

 ロイター通信などによると、今回の協議では和平合意が成立してから16カ月以内に米軍がアフガンから撤収を始めることで一致したとされるが、ハリルザド氏の発言は米軍撤収の議論が先行することにクギを指す狙いがあるとみられる。

【私の論評】ドラッカー流マネジメントの観点からも、戦略的な見方からも、米国が中国との対峙を最優先する姿勢は正しい(゚д゚)!

米国とアフガニスタンの旧支配勢力タリバン(Taliban)は26日、17年以上にわたるアフガン紛争の終結を目指す和平協議で、いくつかの争点が残っているものの、大きく前進したと発表しました。

米国のザルメイ・ハリルザド(Zalmay Khalilzad)アフガン和平担当特別代表はカタールで、タリバンの代表団と6日間という異例の長さの和平協議を行っていました。ハリルザド氏はアフガン生まれ。ジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)元米政権下の外交で重要な役割を果たしました。

ハリルザド氏はツイッター(Twitter)に「ここでの協議は、これまで行われてきたものよりも実りが多かった。重要な諸問題で著しい進展があった」と投稿しました。アフガンとその重要な近隣諸国で協議を行ってからカタール入りしたハリルザド氏は協議後、アフガンの首都カブールに戻り、今回の協議の成果について説明することになっています。

合意案の詳細は明らかにされていないですが、タリバンが外国の過激派をかくまわないと保証することと引き換えでの米軍撤収も含まれているとの観測が出ています。米軍事介入のそもそもの原因は、タリバンが外国過激派をかくまったことでした。

タリバンのザビフラ・ムジャヒド(Zabihullah Mujahid)報道官は、協議で「進展」があったと認める一方、停戦やアフガン政府との協議に関する合意があったとの報道は「事実ではない」と述べました。

タリバンのザビフラ・ムジャヒド(Zabihullah Mujahid)報道官

しかし、タリバンのある幹部は協議後、匿名を条件にパキスタンからAFPの電話取材に応じ、「米国はわれわれの要求の多くを受け入れた。双方は重要な点に関してかなりの合意に達した」「まだ意見の一致を見ていない問題で妥協点を見いだす努力が続いている。アフガン政府も関与している」と述べ、協議の先行きに楽観的な見方を示しました。

米国はアフガニスタンからも撤退しそうですが、ではなぜこのようなことを米国はするのでしょうか。これには、様々な憶測が飛び交っていますが、私はやはりトランプ氏の意向がかなり反映していると思います。

長い間企業家の道を歩んで、失敗や成功を数々積み重ねてきたトランプ氏は、既存の政治家や、軍人とは異なる考え方をします。その最たるものは、物事に優先順位をつけるということでしょう。

経営学の大家であるドラッカー氏は優先順位について以下のように語っています。
いかに単純化し組織化しても、なすべきことは利用しうる資源よりも多く残る。機会は実現のための手段よりも多い。したがって優先順位を決定しなければ何事も行えない。(『創造する経営者』)
トランプ政権にとって最大の優先課題は、やはり中国です。中国の体制を変えるか、体制が変えられないなら、経済的に他国に影響を与えることができないほどに中国の経済を衰退させることです。

経済の指標としては、現在のロシアあたりを念頭においているかもしれません。ロシアの現在のGDPは最新の統計では韓国と同程度の規模です。そうして、これは東京都と同程度の規模です。

これでは、いくらロシアのプーチンが力んで見せても、どうあがいても米国の敵ではありません。最早、NATOともまともに対峙することはできないです。ただし、旧ソ連からの核兵器や軍事技術などを引き継いでいるのは現ロシアなので、その点では確かに侮ることはできないですが、GDPがこの程度の規模のロシアには、できることは限られています。

とはいいながら、やはりロシアは侮れません。油断すれば、米国はウクライナでの失敗を繰り返すことになります。

ロシアと中国の両方と対峙するべきと主張していたのが、先日国防長官を辞任したマティス氏です。

しかし、考えてみてください、中国とロシアの両方に対峙し、さらにアフガン、シリア、イラクなどで戦っている状況は、優先順位というものを考える人間からすると、これでは戦える戦も負けてしまうと考えるのが普通です。これは、戦中の日本を彷彿とさせます。

トランプ氏は、実際に米国の大統領の立場に立ち、米国の軍事力や経済力の現実を知り、その上で今一度米軍の安全保障政策をみると、実務家のトランプ氏はこれでは到底、米国はいずれの戦線でも勝つことはできないと考えたに違いありません。

いまや世界で唯一の超大国米国にも、限界があります。第二次世界大戦時には米国も総力戦となり、米国だけではなく、多数の連合国とともに戦いました。だから、ドイツと日本と同時に戦うことができました。しかし、現状はそのようなことはなく、ほとんどが米国の負担によってすべての戦線で戦わければならないのです。

それは、到底不可能で、現状のままであれば、米国は勝てる戦争にも勝てないとトランプ氏は考えたのでしょう。だからこそ、先日はシリアからの撤退を決めたのです。そうして、今度はアフガニスタンからの撤退を決めたのでしょう。

ドラッカー氏

ドラッカー氏は優先順位について、さらに以下のように語っています。「誰にとっても優先順位の決定は難しくない。難しいのは劣後順位の決定。つまり、なすべきでないことの決定である。一度延期したものを復活させることは、いかにそれが望ましく見えても失敗というべきである。このことが劣後順位の決定をためらわせる」。

トランプ氏はシリア問題やアフガニスタン問題に関しては、劣後順位が高いと考えたのでしょう。

シリアについては、以前もこのブログで述べたように、反政府勢力が勝っても、アサド政権側が勝っても米国に勝利はありません。反政府勢力が、米国の味方などという考えは間違いです。もし反政府戦力が勝てば、反米政権を樹立するだけです。

このあたりについては、他の記事で挙げています。一番下の「関連記事」のところにリンクを掲載しておきますので、興味のあるかたは当該記事をご覧になってください。

この混乱したシリアに関しては、トルコがこれに介入すると名乗りをあげたので、トランプ氏としてはトルコに任せるべきと判断したのでしょう。そうして、イラクには米軍を駐留させ続けながら、シリアからは撤退する道を選んだのでしょう。

アフガニスタンに関しては、17年間も紛争が続いているのにもかかわらず、未だに米国は勝利を収めていません。これ以上米軍が関与しても、米国が勝利を収めることはできないでしょう。もっと上位の問題を解決しないとこの紛争は本質的に解消しないとトランプ氏は考えたのでしょう。であれば、暫定政権を支援しつつアフガニスタンからは撤退すべきなのです。

優先順位の分析については多くのことがいえます。しかしドラッカーは、優先順位と劣後順位に関して重要なことは、分析ではなく勇気だといいます。彼は優先順位の決定についていくつかの原則を挙げています。そしてそのいずれもが、分析ではなく勇気にかかわる原則です。

 第一が、「過去ではなく未来を選ぶこと」である。 

 第二が、「問題ではなく機会に焦点を合わせること」である。

 第三が、「横並びでなく独自性を持つこと」である。

 第四が、「無難なものではなく変革をもたらすものに照準を当てること」である。

そうして、ドラッカー氏は、優先順位について以下ような結論を述べています。
容易に成功しそうなものを選ぶようでは大きな成果はあげられない。膨大な注釈の集まりは生み出せるだろうが、自らの名を冠した法則や思想を生み出すことはできない。大きな業績をあげる者は、機会を中心に優先順位を決め、他の要素は決定要因ではなく制約要因にすぎないと見る。(『経営者の条件』)
今一度、アジア情勢でこの結論をあてはめてみると、米国にとって最大の機会は、中国の覇権主義を封じることです。今や一人あたりのGDPはまだまだの水準ですが、国としてGDPは中国は世界第二の水準になりました。これについては、実際ははるかに小さくてドイツ以下であろうとみるむきもあります。

ただし、それが事実であろうが、なかろうが、ロシアなどよりははるかに大きく、現在は米国が問題を抱える国としては、中国が最大です。

であれば、中国との対峙を最優先にあげることは、ドラッカー氏の結論にも適合しています。そうして、中東の問題や、北朝鮮、韓国の問題なども、そうしてロシアの問題もこの優先順位の高い中国の対峙という問題に比較すれば、決定要因ではなく制約要因にすぎないと見るべきなのです。

実際、中国の問題が解消できれば、北朝鮮問題や韓国の問題など簡単に解決できるでしょう。ほとんど何もしなくても半自動的に解消されるかもしれません。ロシアとの問題も解消できるかもしれません。

米国が、第一次冷戦ソ連に勝利し、第二次冷戦でも中国に勝利すれば、ロシアは米国に対峙することはためらうことでしょう。それよりも良好な関係を継続したいと考えるようになるでしょう。

その後は、ロシアか中東が米国にとっての最優先課題になるのかもしれません。しかし先にも述べたように、ロシアは今やGDPは東京都より若干少ない程度ですし、中東諸国もそのロシアよりも下回る程度に過ぎません。

こうして、考えるとやはり米国が中国との対峙を最優先するのは当然のことです。そうして、超リアリストの 政治学者であるミアシャイマー氏やこのブログにも度々登場する、世界一の戦略家ともいわれるルトワック氏は、 「ロシアと組んで中国を封じ込めろ」と主張しています。

ミアシャイマー氏

そして、ルトワック氏は、米ロが直でつながるのは難し いので、 「日本が米国とロシアをつないでくれ」 といっているのです。 そして、彼は日本がロシアに接近することを勧めています。 ロシアとつながることが、日本がサバイバルできるかどう かの分かれ目だととも語っています。

安倍総理がプーチンとの会談を重ねているのも、領土問題そのものよりも米国とロシアとの橋渡し役が多いのかもしれません。米国といえども中国とロシアを同時には戦えません。そのためにはロシアと中国を組ませない工作が必要です。シリアからの撤退もその一つかもしれません。

このように経済学の大家ドラッカー流の考え方でも、国家戦略の大家からみても、やはり米国は中国との対峙を最優先として、他の要素は決定要因ではなく制約要因にすぎないと見るべきなのです。

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2015年6月27日土曜日

中国株また暴落 習政権の経済対策評価されず 中国経済へ不信感―【私の論評】今のままだと中国の社会経済活動は今後数百年何らの進展がないどころか、低迷し続ける(゚д゚)!

中国株また暴落 習政権の経済対策評価されず 中国経済へ不信感
2015.06.26


中国株がまた暴落した。25日の上海市場で、代表的な指数である上海総合指数の終値が前日比3・46%安となり、26日午前も5%超暴落する場面があった。習近平政権は6兆円規模のファンド設立や銀行の融資規制緩和を打ち出したが、市場の評価は厳しかった。

26日午前の相場では、上海の米ドル建てB株指数が一時7%超下落したほか、深●(=土へんに川)の香港ドル建てB株指数は一時4%超安。深●(=土へんに川)のベンチャー企業向け「創業板」指数は約8%下落するなど、いずれも前日に続く暴落となった。

証券当局が28社の新規株式公開(IPO)を承認したことから需給悪化の懸念が広がり売りが相次いだとの市場関係者の解説もあるが、最大の要因は中国経済への不信感だ。

習近平政権は24日、保険会社の資金を集めて3000億人民元(約6兆円)規模のインフラ建設にあてる「中国保険投資基金」の設立と、預金残高の75%を超えてはならないと規制されている銀行の貸出残高比率を撤廃すると打ち出した。

ところが、25日の上海市場では、恩恵を受けるはずの大手銀行やインフラ関連株が売り浴びせられた。市場で「融資拡大の効果は限定的で、追加金融緩和の期待も遠のいた」との見方が広がったためで、習政権の政策が真っ向から否定された形だ。

先週に約13%暴落した上海総合指数は、今週に入って2日連続で上昇したものの再び腰折れした。投資家の疑念は払拭できていない。

【私の論評】今のままだと中国の社会経済活動は今後数百年何らの進展がないどころか、低迷し続ける(゚д゚)!

中国の悪あがきが続いているようです。結局平たく言うと先の6兆円に及ぶ「中国保険投資基金」が、中国国内資金の“巻き上げ" ツールであり、「AIIB」が外国資金の“巻き上げ”ツールということです!! 要するに中共は今、資金が枯渇し、減速する経済成長へのテコ入れ策が採れなくなってきたということです。それが、投資家に見抜かれて株が暴落したということです。

そりゃそうです。以前にもこのブログでお伝えしたように、過去10年間で、天文学的な数字の金が国外に流れているのですから。それに関しては、このブログでもたびたび掲載してきました。その記事の輪駆を以下に掲載しておきます。

中国寄りの専門家さえついに唱えだした「中国大崩壊」の論拠―【私の論評】ニッポン人中国スパイ、親中派、媚中派は速やかに転向せよ、そうでないと飯のくいあげになるぞ(゚д゚)!
中国寄りのデービッド・ジャンボー教授ですら、最近で中国崩壊の可能性を示唆
詳細、この記事をご覧いただくものとして、この記事では中国金融の空洞化を掲載しました。その部分のみを以下に掲載します。
2000年から2011年統計で、中国からの海外逃避資金のトータルが3兆7900億ドルとなると、史上空前の新記録。邦貨換算で417兆円弱。日本のGDPの80%にあたる。 
これは中国の金融が空洞化していることを示して余りある。 
以下に掲げる「ワースト・ランキング」はGFIが集計した2002年から2011年の合算統計である。
1)中国      3兆7900億ドル
2)ロシア      8809億ドル
3)メキシコ     4618
4)マレーシア    3704
5)インド       3431 
とんでもない額の金が不正資金してして、海外に垂れ流されている中国。これでは、国際的信用は丸つぶれです。

それに外貨準備高もどんどん減っています。これについても、以前このブログで掲載したことがあります。その記事の輪駆を以下に掲載します。
【日曜経済講座】インフラ銀…その正体は「共産党支配機関」 参加論を斬る―【私の論評】中国主催のインフラ投資銀行に出資すれば、敵に塩を送るようなものどころか、振り込め詐欺の誘いに乗っかるようなものである(゚д゚)! 
詳細はこの記事をご覧いただくものとして、中国の外貨準備の昨年度の状況を示すグラフを以下に引用します。


外貨準備がどんどん減っていて、対外銀行の借り入れをマイナスすれば、実質上中国には外貨準備などないどころか、マイナスといっても良いくらいです。

それに直近の経済は低迷しています。以下に昨年度の成長率を掲載します。



中国政府はすでに、中国経済の「新常態」ということを発表しており、今後の経済成長率は、7%前後になるとしています。従来中国では保八というスローガンがあり、経済成長率8%は中国政府が守るべき最低水準としてきました。

なぜなら、中国は未だ発展途上であり、経済成長率が8%を割ってしまっては十分に国内の雇用を吸収できないからです。しかし、政府が公式にこの保八を継続できない旨を公表したわけです。実際に、中国では大学新卒の就職率が極端に低く、なかなかまともなところに就職できない状況が数年前から続いいてました。

この有様であるにもかかわらず、中国は「AIIB」、「中国保険投資基金」だけではなく、「シルクロード基金」まで創設して、日本に対抗しようとしています。その概要を以下に図で示します。


以上を総合してみてみると、中国は借金に借金を重ねて、AIIB、中国保険投資基金、シルクロード基金を創設して、アジアのインフラ整備をしようとしています。

結局、金のない国が、金を借りまくって、金貸しの胴元をするということです。

なぜ、金がないのかといえば、そもそも過去においては中国は海外からの外国からの借金や、熱銭(海外に流れた中国の資金)による借金で、国内のインフラ投資をして経済発展をしてきたのですが、そのビジネスモデルが崩壊したからです。

さすがにインフラ投資だけでは、もう経済発展は望めないということです。にもかかわらず、中国は今度は国内のインフラ整備ではなく、中国外のアジアのインフラ投資をして経済発展をしようと試みているわけです。

しかし、これはどう考えてうまくはいきそうもありません。アジアのインフラ投資の前哨戦でもあった、中国のアフリカ投資はことごとく失敗しています。そもそも、中国国内では政府の都合で自分たちの押し付けで、インフラ整備をしてきたわけですが、中国以外ではそれだけですむはずもなく、中国にはそのあたりのノウハウが完璧に欠落しています。

そもそも、インフラ整備をするのは、当外国の社会を良くするために実施するのであり、インフラ整備をして、官僚などか肥え太るためにするのではありません。自国の社会をなおざりにしている国が、他国の社会を良くするためのインフラ整備などできるわけがありません。


そもそも、中国には海外でのインフラ投資のまともな実績がありません。海外のインフラ投資では、中国が過去にやってきたように、急ピッチで道路や橋、港湾、空港、建物などを作ればそれで良いというわけではありません。対象地域の現実にあわせた、インフラ整備をしなければなりません。そんな芸当は中国にはできそうもありません。

アジア・インフラ投資にも失敗することは確実です。そうなると、当面中国には全く経済が良くなるとか、現状を維持できる見込みは全くありません。

ただし、一つだけ実施できる可能性があります。

それは、過去に日本が数十年というとてつもなく短い時間で行ってきたこと、西欧先進国が数百年かけて行ってきたことを実施すれば良いだけです。


それは、何かといえば、いわゆる経済的な中間層を増やし、それらの社会・経済活動を活発化させることです。日本は、戦後の高度成長でそれを短期間に実行しました。

中間層が増えて、活発な社会・経済活動を行うようになれば、中国も日本が発展したようにかなり発展することが期待できます。

中国では、経済発展して、富裕層が存在します。しかし、この富裕層はほんの一握りにすぎません。富裕層がいくら贅沢をしたといっても、それには限りがあります。中間層がかなり増えれば、中間層の個々人の社会・経済活動は富裕層に比較すると、わずかなものですが、それでも貧困層よりははるかに活動するようになり、全体では富裕層のそれを凌駕するようになり、国内の内需が拡大します。

日本ができたのですから、中国でもできないはずはありません。しかしながら、中国がそれを実行するためには、大きな壁があります。

中間層を多く輩出させ自由に社会・経済活動をしてもらうためには、それなりの基盤が必要です。その基盤とは、民主化、経済と政治の分離、法治国家化です。これらがある程度整っていなければ、とても中間層は増えませんし、増えたにしも、社会経済活動を活発にすることはできません。

そもそも、本来経済がまともに発展するためには、ある程度まともで健全な社会が出来上がっていなければ無理な話です。あの経済の大家ドラッカー氏は、かつての日本の政治家・官僚に対して、彼らが重視したのは社会であり、社会が良くなることのほうを重視していたと語っています。確かに、池田総理大臣などは、社会を重視していました。社会を良くしようと努力した結果、脅威の経済成長がついてきました。

おそらく、これは、逆をやっても実行できなかったでしょう。まさに、日本の逆をやったのが、中国で鄧小平氏は「富める者から、富め」とのキャッチフレーズで、社会は二の次にして、経済発展することを最優先にしました。社会はなおざらにして、国家経済が発展する道を選択しました。しかし、もうそれは不可能です。

日本の高度成長の新幹線に乗った鄧小平 右奥
過去の中国は、海外の資金の流入と、インフラ整備だけで、経済成長をすることができましたが、今やそれは不可能です。国内や、諸外国のインフラ整備をするだけでは、もう無理です。

本当は、中国は日本の過去の政策などを謙虚に学ぶべきなのでしょうが、それはできないようです。そうなると、日本の経済発展などよりはるかに遅れることが予想されます。

日本が数十年でやってしまったことを中国は数百年かかってしかできないか、永遠にできない可能性だってあります。

いずれにしても、中国の社会・経済はこの先しばらくは良くなる見込みが全くありません。それどころか、現状維持もできず、低迷することになるでしょう。その頃には、中国の過去の経済発展は単なるイリュージョンになっていることでしょう。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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