ラベル 米国務長官 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 米国務長官 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2019年1月27日日曜日

米国務長官、タリバンとの協議で「進展」 米軍のアフガン撤収に「真剣」―【私の論評】ドラッカー流マネジメントの観点からも、戦略的な見方からも、米国が中国との対峙を最優先する姿勢は正しい(゚д゚)!


ポンペオ米国務長官のツイート

ポンペオ米国務長官は26日、アフガニスタン情勢に関しツイッターで「米国は和平を追求し、アフガンが今後も国際テロの空間とならないようにするとともに、(米軍)部隊を本国に帰還させることを真剣に考えている」と述べ、将来的にアフガニスタン駐留米軍を順次撤収させていく考えを示した。撤収開始の時期などについては明らかにしなかった。

 米国のハリルザド・アフガン和平担当特別代表は21~26日にカタールのドーハでアフガンのイスラム原理主義勢力タリバンと和平協議を実施。現地からの報道では、双方は米軍撤収に関し一定の合意に達したとされるが、ポンペオ氏は「協議では和解に関し重要な進展があった」としたものの、米軍撤収に関する合意には言及しなかった。

米国のハリルザド・アフガン和平担当特別代表

 ポンペオ氏はまた、和平に関し「アフガン政府および全ての関係当事者と一緒に取り組んでいる」と指摘。「米国はアフガンの主権と独立、繁栄を目指す」とも語り、不完全な合意で情勢を不安定化させないよう慎重に協議を進める立場を打ち出した。

 一方、ハリルザド氏もツイッターで「近く協議を再開する」とした上で、「多くの取り組むべき課題が残されている。関係当事者間の対話と包括的停戦を含む全ての課題で合意できなければ合意にはならない」と強調した。

 ロイター通信などによると、今回の協議では和平合意が成立してから16カ月以内に米軍がアフガンから撤収を始めることで一致したとされるが、ハリルザド氏の発言は米軍撤収の議論が先行することにクギを指す狙いがあるとみられる。

【私の論評】ドラッカー流マネジメントの観点からも、戦略的な見方からも、米国が中国との対峙を最優先する姿勢は正しい(゚д゚)!

米国とアフガニスタンの旧支配勢力タリバン(Taliban)は26日、17年以上にわたるアフガン紛争の終結を目指す和平協議で、いくつかの争点が残っているものの、大きく前進したと発表しました。

米国のザルメイ・ハリルザド(Zalmay Khalilzad)アフガン和平担当特別代表はカタールで、タリバンの代表団と6日間という異例の長さの和平協議を行っていました。ハリルザド氏はアフガン生まれ。ジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)元米政権下の外交で重要な役割を果たしました。

ハリルザド氏はツイッター(Twitter)に「ここでの協議は、これまで行われてきたものよりも実りが多かった。重要な諸問題で著しい進展があった」と投稿しました。アフガンとその重要な近隣諸国で協議を行ってからカタール入りしたハリルザド氏は協議後、アフガンの首都カブールに戻り、今回の協議の成果について説明することになっています。

合意案の詳細は明らかにされていないですが、タリバンが外国の過激派をかくまわないと保証することと引き換えでの米軍撤収も含まれているとの観測が出ています。米軍事介入のそもそもの原因は、タリバンが外国過激派をかくまったことでした。

タリバンのザビフラ・ムジャヒド(Zabihullah Mujahid)報道官は、協議で「進展」があったと認める一方、停戦やアフガン政府との協議に関する合意があったとの報道は「事実ではない」と述べました。

タリバンのザビフラ・ムジャヒド(Zabihullah Mujahid)報道官

しかし、タリバンのある幹部は協議後、匿名を条件にパキスタンからAFPの電話取材に応じ、「米国はわれわれの要求の多くを受け入れた。双方は重要な点に関してかなりの合意に達した」「まだ意見の一致を見ていない問題で妥協点を見いだす努力が続いている。アフガン政府も関与している」と述べ、協議の先行きに楽観的な見方を示しました。

米国はアフガニスタンからも撤退しそうですが、ではなぜこのようなことを米国はするのでしょうか。これには、様々な憶測が飛び交っていますが、私はやはりトランプ氏の意向がかなり反映していると思います。

長い間企業家の道を歩んで、失敗や成功を数々積み重ねてきたトランプ氏は、既存の政治家や、軍人とは異なる考え方をします。その最たるものは、物事に優先順位をつけるということでしょう。

経営学の大家であるドラッカー氏は優先順位について以下のように語っています。
いかに単純化し組織化しても、なすべきことは利用しうる資源よりも多く残る。機会は実現のための手段よりも多い。したがって優先順位を決定しなければ何事も行えない。(『創造する経営者』)
トランプ政権にとって最大の優先課題は、やはり中国です。中国の体制を変えるか、体制が変えられないなら、経済的に他国に影響を与えることができないほどに中国の経済を衰退させることです。

経済の指標としては、現在のロシアあたりを念頭においているかもしれません。ロシアの現在のGDPは最新の統計では韓国と同程度の規模です。そうして、これは東京都と同程度の規模です。

これでは、いくらロシアのプーチンが力んで見せても、どうあがいても米国の敵ではありません。最早、NATOともまともに対峙することはできないです。ただし、旧ソ連からの核兵器や軍事技術などを引き継いでいるのは現ロシアなので、その点では確かに侮ることはできないですが、GDPがこの程度の規模のロシアには、できることは限られています。

とはいいながら、やはりロシアは侮れません。油断すれば、米国はウクライナでの失敗を繰り返すことになります。

ロシアと中国の両方と対峙するべきと主張していたのが、先日国防長官を辞任したマティス氏です。

しかし、考えてみてください、中国とロシアの両方に対峙し、さらにアフガン、シリア、イラクなどで戦っている状況は、優先順位というものを考える人間からすると、これでは戦える戦も負けてしまうと考えるのが普通です。これは、戦中の日本を彷彿とさせます。

トランプ氏は、実際に米国の大統領の立場に立ち、米国の軍事力や経済力の現実を知り、その上で今一度米軍の安全保障政策をみると、実務家のトランプ氏はこれでは到底、米国はいずれの戦線でも勝つことはできないと考えたに違いありません。

いまや世界で唯一の超大国米国にも、限界があります。第二次世界大戦時には米国も総力戦となり、米国だけではなく、多数の連合国とともに戦いました。だから、ドイツと日本と同時に戦うことができました。しかし、現状はそのようなことはなく、ほとんどが米国の負担によってすべての戦線で戦わければならないのです。

それは、到底不可能で、現状のままであれば、米国は勝てる戦争にも勝てないとトランプ氏は考えたのでしょう。だからこそ、先日はシリアからの撤退を決めたのです。そうして、今度はアフガニスタンからの撤退を決めたのでしょう。

ドラッカー氏

ドラッカー氏は優先順位について、さらに以下のように語っています。「誰にとっても優先順位の決定は難しくない。難しいのは劣後順位の決定。つまり、なすべきでないことの決定である。一度延期したものを復活させることは、いかにそれが望ましく見えても失敗というべきである。このことが劣後順位の決定をためらわせる」。

トランプ氏はシリア問題やアフガニスタン問題に関しては、劣後順位が高いと考えたのでしょう。

シリアについては、以前もこのブログで述べたように、反政府勢力が勝っても、アサド政権側が勝っても米国に勝利はありません。反政府勢力が、米国の味方などという考えは間違いです。もし反政府戦力が勝てば、反米政権を樹立するだけです。

このあたりについては、他の記事で挙げています。一番下の「関連記事」のところにリンクを掲載しておきますので、興味のあるかたは当該記事をご覧になってください。

この混乱したシリアに関しては、トルコがこれに介入すると名乗りをあげたので、トランプ氏としてはトルコに任せるべきと判断したのでしょう。そうして、イラクには米軍を駐留させ続けながら、シリアからは撤退する道を選んだのでしょう。

アフガニスタンに関しては、17年間も紛争が続いているのにもかかわらず、未だに米国は勝利を収めていません。これ以上米軍が関与しても、米国が勝利を収めることはできないでしょう。もっと上位の問題を解決しないとこの紛争は本質的に解消しないとトランプ氏は考えたのでしょう。であれば、暫定政権を支援しつつアフガニスタンからは撤退すべきなのです。

優先順位の分析については多くのことがいえます。しかしドラッカーは、優先順位と劣後順位に関して重要なことは、分析ではなく勇気だといいます。彼は優先順位の決定についていくつかの原則を挙げています。そしてそのいずれもが、分析ではなく勇気にかかわる原則です。

 第一が、「過去ではなく未来を選ぶこと」である。 

 第二が、「問題ではなく機会に焦点を合わせること」である。

 第三が、「横並びでなく独自性を持つこと」である。

 第四が、「無難なものではなく変革をもたらすものに照準を当てること」である。

そうして、ドラッカー氏は、優先順位について以下ような結論を述べています。
容易に成功しそうなものを選ぶようでは大きな成果はあげられない。膨大な注釈の集まりは生み出せるだろうが、自らの名を冠した法則や思想を生み出すことはできない。大きな業績をあげる者は、機会を中心に優先順位を決め、他の要素は決定要因ではなく制約要因にすぎないと見る。(『経営者の条件』)
今一度、アジア情勢でこの結論をあてはめてみると、米国にとって最大の機会は、中国の覇権主義を封じることです。今や一人あたりのGDPはまだまだの水準ですが、国としてGDPは中国は世界第二の水準になりました。これについては、実際ははるかに小さくてドイツ以下であろうとみるむきもあります。

ただし、それが事実であろうが、なかろうが、ロシアなどよりははるかに大きく、現在は米国が問題を抱える国としては、中国が最大です。

であれば、中国との対峙を最優先にあげることは、ドラッカー氏の結論にも適合しています。そうして、中東の問題や、北朝鮮、韓国の問題なども、そうしてロシアの問題もこの優先順位の高い中国の対峙という問題に比較すれば、決定要因ではなく制約要因にすぎないと見るべきなのです。

実際、中国の問題が解消できれば、北朝鮮問題や韓国の問題など簡単に解決できるでしょう。ほとんど何もしなくても半自動的に解消されるかもしれません。ロシアとの問題も解消できるかもしれません。

米国が、第一次冷戦ソ連に勝利し、第二次冷戦でも中国に勝利すれば、ロシアは米国に対峙することはためらうことでしょう。それよりも良好な関係を継続したいと考えるようになるでしょう。

その後は、ロシアか中東が米国にとっての最優先課題になるのかもしれません。しかし先にも述べたように、ロシアは今やGDPは東京都より若干少ない程度ですし、中東諸国もそのロシアよりも下回る程度に過ぎません。

こうして、考えるとやはり米国が中国との対峙を最優先するのは当然のことです。そうして、超リアリストの 政治学者であるミアシャイマー氏やこのブログにも度々登場する、世界一の戦略家ともいわれるルトワック氏は、 「ロシアと組んで中国を封じ込めろ」と主張しています。

ミアシャイマー氏

そして、ルトワック氏は、米ロが直でつながるのは難し いので、 「日本が米国とロシアをつないでくれ」 といっているのです。 そして、彼は日本がロシアに接近することを勧めています。 ロシアとつながることが、日本がサバイバルできるかどう かの分かれ目だととも語っています。

安倍総理がプーチンとの会談を重ねているのも、領土問題そのものよりも米国とロシアとの橋渡し役が多いのかもしれません。米国といえども中国とロシアを同時には戦えません。そのためにはロシアと中国を組ませない工作が必要です。シリアからの撤退もその一つかもしれません。

このように経済学の大家ドラッカー流の考え方でも、国家戦略の大家からみても、やはり米国は中国との対峙を最優先として、他の要素は決定要因ではなく制約要因にすぎないと見るべきなのです。

【関連記事】

もう“カモ”ではない、トランプの世界観、再び鮮明に―【私の論評】中東での米国の負担を減らし、中国との対峙に専念するトランプ大統領の考えは、理にかなっている(゚д゚)!

米軍シリア撤退の本当の理由「トランプ、エルドアンの裏取引」―【私の論評】トランプ大統領は新たなアサド政権への拮抗勢力を見出した(゚д゚)!

【瀕死の習中国】トランプ氏の戦略は「同盟関係の組み替え」か… すべては“中国を追い込む”ため―【私の論評】中国成敗を最優先課題にした決断力こそ企業経営者出身のトランプ氏の真骨頂(゚д゚)!

中国経済が大失速! 専門家「いままで取り繕ってきた嘘が全部バレつつある」 ほくそ笑むトランプ大統領―【私の論評】すでに冷戦に敗北濃厚!中国家計債務が急拡大、金融危機前の米国水準に(゚д゚)!


2014年2月8日土曜日

米国務長官、岸田外相との会談で日本の防衛にコミット示す―【私の論評】アジアの平和と安定の敵は中国ということをようやっと理解したヘタレアメリカ、しかしその対応は十分ではない、まだまだやるべきことがある!

米国務長官、岸田外相との会談で日本の防衛にコミット示す

ケリー米国務長官と岸田文雄外相

[ワシントン 7日 ロイター] -ケリー米国務長官は7日、ワシントンを訪れている岸田文雄外相と会談し、日本の防衛、およびアジア太平洋地域の安定に対するコミットメントを確認した。

ケリー国務長官は会談後、「米国が同盟国である日本と条約の順守にこれまでになくコミットし続けていることを強調した」とし、「これには東シナ海の情勢も含まれる」と述べた。

その上で、中国が東シナ海上空に設定した防空識別圏(ADIZ)について、米国は「これを承認もしていないし、容認もしていない」と述べた。

また、「米国は、アジア太平洋地域の繁栄と安定を維持することに深くコミットしている」との立場も表明。同国務長官は来週、アジア歴訪の一環として中国を訪問する。

ケリー国務長官は、安倍晋三首相が前年末に東京の靖国神社を参拝したことについては直接言及しなかった。

この記事の詳細はこちらから!

【私の論評】アジアの平和と安定の敵は現体制の中国ということをようやっと理解したヘタレアメリカ、しかしその対応は十分ではない、まだまだやるべきことがある!

この報道に関しては、あの石平氏が以下のようなツイートをしています。
石平氏は、アメリカがアジアの平和の最大の敵は誰かが分かったのかとしていますが、分かっただけではどうにもなりません。行動が伴わなければ、何も変わりません。そうして、やるべきこととは、現在の中国の体制は崩壊するものとして、対中国政策をすべて見直すということです。

中国の現在の体制がそのまま続くなどということは、合理的に考えればあり得ないことです。中国は短ければあと5年で、遅くても10年以内には今の体制は確実に崩壊します。それが、どのような形になるかは、まだはっきりしませんが、現体制がそのまま続くとはとても考えられません。そうして、現体制は中国を変革することはとても無理です。であれば、いくつかの国に分裂するするものとしてそれに対する方針を予め定めておく必要があります。

その一環として、上の記事のように、米日韓の連携が重要であることを再認識するとともに、日本がアジアのリーダーになることを認めるべきです。これに関しては、以前このブログにも掲載したことがあるので、その記事のURLを以下に掲載します。
オバマ氏に啓上、親米保守の嘆き 杏林大学名誉教授・田久保忠衛―【私の論評】アジアのリーダー次第で、暗黒アジアと民主アジアへの分岐点が決まる!オバマは、アジアのリーダーとして日本を選べ(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、オバマは日本がアジアのリーダーになることを認めること、そうしてその手始めとして、尖閣は日本固有の領土であり、日中の間には領土問題など存在しないということを公式に発表すべきことを掲載しました。

こうすべきことは、あまりにはっきりし過ぎているのですが、肝心な時にヘタレとなるアメリカでは、まだまだこのことが理解されていないようです。

いままさに、アメリカは中国に対してヘタレ状況になっています。オバマが尖閣に関する声明を発表し、さらに南シナ海に関しても、もともと南シナ海は中国とは全く関係ないものと公式見解を発表すれば、中国は動きがとれなくなります。というより、中国はいろいろ周辺諸国に挑発をして、アメリカの様子をみて、アメリカが何も言わないので、さらに挑発をエスカレートさせ、それでも黙っていれば、尖閣や南シナ海をわが物にしようとしているだけです。

アメリカがヘタレ状況になっている、この「ヘタレ」とは、倉山満氏の『嘘だらけの日米近現代史』という書籍を読んでいただければ、良くご理解いただけるものと思います。

詳細はこの書籍を読んでいただくものとして、この書籍の最初のほうに掲載されていた、三つのコアメッセージを掲載しておきます。
『本書をとりあえず一読してください。通説、つまり、「日本人が信じている、教科書的アメリカ史」がいかに嘘にまみれているかがわかると思います。
そして3つのコアメッセージさえ理解できれば、アメリカとの関係はそう難しくありません。
その一、アメリカはバカ
その二、アメリカはヘタレ
その三、でも、やるときはやる!』
実際、アメリカの最近の対中国対策をみていると、最初はまるで「バカ」な対応ばかりしていました。アメリカにも日本に負けず劣らず、バカなチャイナスクールが存在していて、今の中国がそのまま成長して、経済も軍事力も強大になると信じて疑わないバカが多数存在して、結果として対中国対策を誤りました。

その後は、最近のオバマのように中国に対して弱腰で、ヘタレ状況に陥り、フィリピンから撤退したりして、中国の南シナ海への進出を許してしまいました。その後も、尖閣問題への及び腰、日本の艦船へのレーダー照射に対する及び腰、防空圏設定に対しても煮え切らない態度を取りつづけ、まさにヘタレ状況です。

しかし、そのアメリカもブログの冒頭の記事のように、ヘタレ状況から脱却しつつはあるようですが、まだ「やるときにはやる」という状況にはなってはいないようです。

そもそも、現体制の中国がそのまま継続するようなことは絶対にあり得ないのに、まだまだ、米国内のチャイナスクールの連中の中国幻想に引きづられているいるようです。

しかし、この幻想はいずれ近いうちに、崩れます。この中国幻想について、はっきり認識しているのはロシアのようです。それを示す査証となるような記事をこのブログで以前紹介したことがあります。その記事のURLを以下に掲載します。
旧ソ連と同じ罠にはまった中国、米国の仕掛けた軍拡競争で体力消耗―露メディア―【私の論評】ロシアの弱体化を吐露する記事、中国を封じ込めることと引き換えにロシアとの領土交渉を!!
アメリカのスターウォーズ構想概念図

詳細は、この記事を読んでいただものとして、この記事では、ロシアの弱体化を中心に記載しましだか、この記事の冒頭のロシア側のソ連の崩壊の理由は正しいです。そうして、中国がその道を歩もうとしていることも事実です。中国は、歴史を真摯に顧みることもなく、日本の歴史を捏造していますが、ソ連崩壊の歴史も真摯に学ぼうという姿勢はないようです。

旧ソ連法は、いろいろ問題がありましたが、特にアメリカとの軍拡競争で巨大な軍事費を費やしていたことは事実です。そうして、最終的にアメリのレーガンが打ち出した、スターウォーズ計画に対抗しようとし、ロシア版スターウォーズ計画を打ち出し、これを実行しようとして、巨大な軍事費をそれに費やしはじめたことにより、経済が完璧に疲弊し、国内の経済社会が落ち込むだけ落ち込み、とんでもないことになり、崩壊しました。

現在中国は、かつてのソ連のように、軍拡を開始していて、毎年軍事費を増やしています。国内は2010年あたりから、毎年暴動が8万件も発生しているといわれています。このような状況が続けば、いずれ中国の現体制は維持できなくなり、崩壊するのは目に見えています。

ドラッカー氏

ソ連の崩壊は、ドラッカー氏が予測していました。ドラッカー氏は、『乱気流時代の経営』において、婉曲ながらソ連の分裂の危機を予言しました。その10年後の『新しい現実』では、ソ連が崩壊すると断言しました。現在もドラッカー氏か存命なら、おそらく中国の崩壊も断言したと思います。

日本では、小室尚樹氏が予測していました。小室氏は、1981年の「ソビエト帝国の崩壊」によって、一躍有名になりました。氏49歳の時でした。山本七平に「天才」と絶賛され、京大理学部数学科卒、阪大大学院経済学研究科、東大大学院法学政治学研究科、マサチューセッツ工科大学、ハーバード大学という華麗なキャリアを引っ提げての鮮烈なデビューでした。同著はベストセラーとなったが、その後矢継ぎ早に刊行された著書もヒットを重ね、先の山本七平や渡部昇一らに持ち上げられ、保守論客期待の星として注目を集めました。



本著では、平等のはずのソ連において資本主義社会以上の特権階級が存在し、また、自己目的化された軍事費の増大によって国民経済が圧迫されていることなどが指摘されていました。さらに、ソ連においてすら、マルクス主義経済学の有効性が疑問視されていることにも言及していました。そして、ソ連は基本的に資本主義が成熟する以前の農民社会であり、伝統的価値観としてのツアリズムが残っており、ニコライ2世がスターリンに代わっただけの話だとしていました。そして、フルシチョフのスターリン批判によってカリスマの権威が失墜し、急性アノミー(無規範状態)が起こっていると説いていました。小室氏は、後に「中国共産党帝国の崩壊」(1989)を出しています、これでは、毛沢東を中華皇帝になぞらえ、人民革命は易姓革命だったと説いています。

小室氏の「ソビエト帝国の崩壊」は、発表後の約10年後に実際にソビエトは崩壊しました。中国の崩壊に関しては、結局は外れているようにも見えます。しかし、私自身は、これもいずれ起こるものとみています。

ソビエト崩壊に関して、小室氏の説には反対の人もいるようですが、いずれにしても、無理な体制が長続きした試しは過去の歴史を見ても、ありません。どんな体制であっても、その時代においてそれなりの、正当性があり、存在価値のあるものであれば、その体制は続きます。しかし正当性がなくなれば、存在価値もなくなり崩壊します。ソ連も正当性がなくなり存在価値がなくなり、崩壊しただけです。結局中国も同じ運命をたどることになります。



私も、昔は中国はもっと早い時期に崩壊するだろうと考えていました。しかし、私の見方は甘かったと反省しています。どこが甘かったかといえば、まずは、中国自体が旧ソ連とは比べ物にならないほど貧乏だということです。それと、中国にはそれこそ、人民解放軍から公安警察、最近で城官まで、日本などの国では考えられないほど、強固で幾重にも張り巡らされた、暴力装置が存在しており、それらが武力を用いて、ことごとく、反体制派を弾圧できるということを、軽視していました。

しかし、これらの暴力装置にも限界がくるほど、人民の憤怒のマグマは煮えたぎっており、いつ何時中国のいたるところで、大噴火を起こしてもおかしくない状況になっています。そんなことは、おかまいなしに、中国は軍拡に走っています。そうして、日本が金融引締めをして中国にとってまるで、打ち出の小槌のような政策をとり、中国投資や技術移転などがしやすい環境をつくりだしていましたが、それも、昨年の4月からの日銀の包括的金融緩和によって、そうしたぬるま湯のような環境も潰えてしまいました。

最近の中国は資金ショートが目立つようになりました。日本からは、中国ファンドが、日本のあらゆる企業に対して、投資していましたが、それも昨年の夏あたりに、日本国内から一斉に消えてしまいました。その総額は、4兆円にのぼるといわれています。これは、日本ではほとんど報道されませんが、中国の資金ショートの現実を雄弁に物語っていると思います。

米中間合同軍事演習

このような状況をみていれば、現体制の中国はとても長続きするとは思えません。次の段階では、アメリカは中国のこの現実を直視すべきです。そうして、無論のこと韓国もです。韓国は、アメリカがヘタレ的な行動をとるから、中国になびいているだけです。韓国に対しても、以前のように厳しく対応していれば、中韓接近などということはなかったと思います。

そうして、アメリカ一国だけで、軍拡をするには限界があります。韓国は、東京都と同じくらいのGDPしかありませんから、そもそも軍拡など最初から無理です。日本の軍拡も認め、日米合同で軍拡をすれば、比較的楽に、現中国を旧ソ連のように追い込むことができます。わざわざ追い込む必要はないではないかという人もいるかもしれません。しかし、いずれ中国は崩壊しますが、その崩壊が長引けば、長引くほど、アジアの平和と安定は脅かされることになります。

なるべく早く崩壊に追い込むのが得策です。そのほうが、中国人民にとっても良いことです。チベット、ウィグルにとっても良いことです。本当に一番良いのは、現中国共産党中央政府自らが改革をして民主化、政治と経済の分離、法治国家体制を築けば良いのですが、そのような動きは全くないし、それをする能力もないようです。であれば、外圧によってそれを促すしかありません。

こうすることにより、アメリカは「ヘタレ」状況から、たちあがり、「やるときはやる」という状況になることでしょう。いずれにせよ、今のアメリカは、なるべく早く中国幻想から脱却すべきです。そうでなければ、いつまでも「ヘタレ)状況がら脱却できず、アメリカの相対的に地位を低下させ続けることになります。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

【関連記事】

オバマ氏に啓上、親米保守の嘆き 杏林大学名誉教授・田久保忠衛―【私の論評】アジアのリーダー次第で、暗黒アジアと民主アジアへの分岐点が決まる!オバマは、アジアのリーダーとして日本を選べ(゚д゚)!

 「オバマ政権は尖閣は日本領と表明せよ」 米紙ウォールストリート・ジャーナルが主張―【私の論評】オバマは尖閣日本領表明によって、自ら頭の中のお花畑の虚構に生きるルーピーではないことを証明せよ(゚д゚)!

【アゴラ】日本は、中国や韓国と関われば国家の衰退や危機を招き、欧米と関わると繁栄する…現代史が教える外交の法則―【私の論評】現代史の史実が、中国対応の正しい方法は「ノータッチ」という「タッチ」が最も良い方法であることを教えている(゚д゚)!

世界のエネルギー革命を成し遂げるのは日本か―ロシアの声 −【私の論評】日本のメディアがほとんど伝えないこの事実!!ロシアがみる極東の軍事バランス!!

日本へ脅迫、見過ごせず…米大統領が中国けん制―【私の論評】米中一体化は習近平の妄想にすぎない!!第二のニクソンショックはないのに日中一体化と騒ぐ日本のマスコミこれいかに(゚д゚)!

【関連図書】

嘘だらけの日米近現代史 (扶桑社新書)
扶桑社 (2012-11-02)
売り上げランキング: 305


中国共産党帝国の崩壊―呪われた五千年の末路 (カッパ・ビジネス)
小室 直樹
光文社
売り上げランキング: 33,461




乱気流時代の経営 (1980年)
P・F・ドラッカー
ダイヤモンド社
売り上げランキング: 421,326


[新訳]新しい現実 (ドラッカー選書)
ダイヤモンド社 (2012-09-14)
売り上げランキング: 46,155

中国が優勢、南シナ海でのエネルギー争奪戦-米国には不愉快な実態―【私の論評】中国の南シナ海進出 - エネルギー・ドミナンス確立が狙い

中国が優勢、南シナ海でのエネルギー争奪戦-米国には不愉快な実態 まとめ ベトナム、フィリピンは国内の天然資源開発を計画していたが、中国の南シナ海における一方的な領有権主張と強硬な行動により妨げられている。 中国は法的根拠が不明確な「九段線」「十段線」に基づき、南シナ海のほぼ全域に...