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2020年2月12日水曜日

2020年も引き続き予測を破る米雇用市場―【私の論評】日韓の政治家は、真摯にトランプ大統領の金融政策に対する姿勢を学ぶべき(゚д゚)!


<引用元:ホワイトハウス 2020.2.7>大統領経済諮問委員会

労働統計局(BLS)の毎月雇用状況の最新データから、歴史的に見て強い米国労働市場が2020年も継続して拡大していることが確認できる。

一般教書演説で雇用の良さを強調したトランプ大統領
報告書の事業所統計によると、1月は22万5千人の雇用が増加し、15万8千人の雇用という市場予測を破った。11月と12月の上方修正を含めて、過去1年の月平均雇用増加は17万1千人という健全なものとなった。先月最も増加した分野は教育と医療サービス(+72,000)、建設(+44,000)、そしてレジャー・サービス業(+36,000)だった。

今月の報告書には事業所統計に対するBLSの年間修正も含まれていた。この修正によって、2019年3月の年度末の間に以前報告されたよりも51万4千人少ない雇用増加だったことが分かった。この修正は雇用が失われたという意味ではなく、むしろ以前は過大に見積もり過ぎていたという意味だ。だが1月の強い雇用増加によって、それでもトランプ大統領の選出以来700万人の雇用が増加している。選挙から38カ月、そのうち34の月で少なくとも10万人の雇用を創出しており、毎月雇用が増加している。

長期化した雇用創出は米国人の賃金を引き上げている。過去1年半では景気後退以来で最大の賃金上昇となった。平均時給は前年比で3.1パーセント増加し、18カ月連続で3パーセント以上の上昇率となっている。賃金上昇は製造・非管理職労働者でさらに速く、前年比で3.3パーセントとなった。トランプ大統領の下で、労働者の賃金は管理職の賃金よりも速いペースで増加している――前政権とは逆の結果である。

別の世帯調査では1月に失業率が3.6パーセントに上昇したことが分かっているが、1969年以来最低のレベル近辺に留まっている。1月には23カ月連続で失業率が4パーセント以下となった――50年で最長の記録だ。失業率は、連邦議会予算事務局の選挙前の最終予測である5.0を依然として大きく下回っており、トランプ大統領が2016年11月に選出された時のレベルより1.1パーセント低い。

歴史的に見て恵まれないグループは、現在のひっ迫した労働市場から利益を受けている。2019年にアフリカ系米国人、ヒスパニック系米国人、アジア系米国人の失業率は全て過去最低となった(テーブル参照)。高校卒業資格を持たない人々と障害者も昨年は過去最低の失業率となった。


1月のわずかな失業率上昇の主要原因は、傍観者の立場にいた労働者が仕事を探そうと労働人口に加わることが増えたためだった。この3カ月で労働市場外から来た新たな労働者の平均割合は73.2パーセントだった。1月に就労率は63.4パーセントにまで上昇した――2013年以来で最高のレベルだ。重要なこととして、働き盛り世代(25歳から54歳)の就労率も1月に83.1パーセントに上昇したが、2016年11月の数字を1.8パーセント上回るものだ。

重要性が小さく見える就労率の変化は雇用市場に重大な影響を持っている。例えば、トランプ大統領の下で働き盛り世代の就労率が上昇したということは、労働力として220万人の働き盛り世代労働者が加わったということになる。就労率の増加以上に、働き盛り世代労働者の労働力人口比率は1月に0.2パーセント上昇して80.6パーセントとなった――2001年5月以来最高レベルだ。

労働者の流入は経済に対する自信増大と就職見通しの改善を示している。全米産業審議会の消費者信頼感は1月に131.6に上昇し、トランプ大統領の選出前月から31パーセントの増加となった。その上仕事が「得難い」と答えた人に比較して、仕事が「十分にある」と答えた人の割合は4対1以上だ。

過去最高の2019年の後、2020年の米国経済は再び強い雇用報告で始まった。昨年起きたように、1月の雇用増加は予測を破り、賃金は3パーセント以上上昇し、失業率は歴史的な低さかそれに近い数字を保った。

【私の論評】日韓の政治家は、真摯にトランプ大統領の金融政策に対する姿勢を学ぶべき(゚д゚)!

本ブログの読者であれば、金融政策が雇用政策であることを私が繰り返し書いてきたことを知っているでしょう。その意味では、米国で金融緩和により失業率が低下し、有効求人倍率が上昇してきたのは、私にとっては想定内のことです。

失業率の定義は、労働力人口に対する完全失業者の占める割合です。完全失業者は労働力人口から就業者を引いたものなので、失業率は、1から就業者数の労働力人口に対する割合を引いた数になります。

トランプ大統領は金融政策と為替の関係を理解しているようです。これは考えてみれば、簡単なことなのですが、これを理解しない人は結構多いようです。

金融緩和にはいくつかの方法がありますが、この世界に緩和の方法がお札を刷り増すことしかなかったとします。そうすると、ドルを徹底的に刷ります、すなわち金融緩和を徹底的に行うと、ドルが相対的に増え、ドル安になります。

逆に、米国が大規模な金融緩和をしていないにもかかわらず、日本や、EUが円やユーロを徹底滝に刷り増せば、相対的に円やユーロがドルよりも増えて、ドルの価値が下がり、ドル安になります。

為替の動きは、短期的には様々な要因がありなかなか正確にあてることはできないですが、長期的には米国と他国の金融緩和政策の方向性で6割型は、予想できます。長期では、結局金融政策の方向性でほとんどか決まります。これは、小学生でもわかる理屈です。お金も、相対的に他国、特にドルと比較して多ければ、安くなりますし、少なければば、高くなります。それだけの話です。

トランプ大統領は、金融政策が雇用と、為替に大きく影響することを、どの政治家よりも理解しているようです。それは、不動産業をやってきた実績から、学んだことなのでしょう。

実際トランプ大統領は昨年3月2、共和党関連の行事で演説し、中央銀行の金融引き締め策がドル高を招き、米経済に悪影響を及ぼしているとして米連邦準備理事会(FRB)を再び批判しています。FRBは1月、2019年に2回想定していた追加利上げを見送って「当面は様子見する」方針を示していたのですが、トランプ氏は改めてけん制した格好でした。
トランプ氏は「米国にとって好ましいドル(の水準)を求めている。外国と事業取引するのを妨げるような強すぎるドルは求めていない」と主張しました。名指しを避けつつも「利上げを好み、量的引き締めを好み、非常に強いドルを好む紳士がFRB内に1人いる」と述べ、パウエル議長を暗に批判した。

不動産業はその時々のFRBの政策に大きく影響されます。だから、いつが儲け時なのか、耐え時なのかを判断するには、FRBの金融政策に大きく影響されます。そのため、実践的に金融政策の重要性を学んだのでしょう。

米国経済を見るときのポイントは、失業率とインフレ率です。それに応じて、マクロ経済政策がどのようになるのか、ほとんど予測できます。

実際の金融政策は「テーラー・ルール」によって行われているといわれています。テーラー・ルールとは、1933年にスタンフォード大学のテーラー教授が提唱したもので、オリジナルな形は、インフレ率と実質国内総生産(GDP)水準の2つから、実際に行うべき金利政策がほとんど説明できるというものです。

実質GDP水準は、失業率と密接な関係があるので、インフレ率と失業率から決まるといっても良いです。具体的にいえば、インフレ率がインフレ目標の2%より高い時に利上げ、低い時に利下げとなり、失業率がNAIRU(インフレを加速しない失業率)といわれる4%より高い時に利下げ、低い時には利上げということが多いとされてきました。

昨年の4月の米国のインフレ率は2%、失業率は3.6%でした。この時点で過去1年くらい、失業率は4%以下となっており、従来のテーラー・ルールからみれば利上げになるという状況でした。

米経済で、失業率が4%を下回ることは極めて珍しいです。戦後を見ても、1960年代後半の4年間程度に見られただけの「超人手不足」状態でした。

これまでであれば、インフレ率がかなり高くなっているはずでしたが、まだ高くなっていませんでした。まさにインフレ目標2%の範囲内になっていました。

当時は、じわりとインフレ率が高まりつつありましたが、より重要な将来のインフレ予想はそうでもありませんでした。

インフレ予想は、物価連動国債と通常国債の金利差である「ブレークイーブン・インフレ率」によって測ることができます。そのデータを見ると、2017年以降、2%の上下0.2ポイント程度で安定していました(5年物)。

従来のデータでは、米国のNAIRUは4%程度というのが定説ですが、ここ1年くらい失業率が4%を下回りながらも、インフレ率が上がっていないということは、NAIRUが3%台半ばになっているのかもしれないことが認識できました。

「超完全雇用」であっても、雇用のミスマッチや、避けられない失業があるためにゼロにはならない。ただ、最近は、インターネットの発達などにより、雇用のミスマッチが少なくなっていることも考えられます。

このブログでは、失業率を事実上の最低ラインのNAIRU(インフレを加速しない失業率)になるように、一方で経済が過熱しないようにインフレ目標があると説明してきました。もし、NAIRUが3%台半ばであれば、それに対応するインフレ目標は2%台半ばになっている可能性もありました。その場合、当時のインフレ率や失業率であれば、利下げの可能性もありえました。結局は、FRBはトランプ大統領の圧力もあって、利下げはしませんでした。

その結果として、上の記事でも示されるいるように、米国の雇用は過去最高の2019年の後、2020年の米国経済は再び強い雇用報告で始まったのです。昨年起きたように、1月の雇用増加は予測を破り、賃金は3パーセント以上上昇し、失業率は歴史的な低さかそれに近い数字を保ったのです。

日銀はNAIRUを無視して事実上の利上げである「イールドカーブ・コントロール(長短金利操作)」を行っています。米国の動きは、円高を加速させる可能性はかなりありました。そうして、実際そうなっています。

以下は、マクロ政策・フイリップス曲線といわれるものです。数値は日本のものです。日本では、NAIRU最近まで、3%台と思われてきたのですが、3%切ってもインフレ目標が達成されないため、2%台であると認識されるようになりました。米国の場合はNAIRUは従来は4%台であると認識されていたのですが、米国でも失業率が3%台になっても、目立った物価上昇はみられず、NAIRUが3%台であると認識されるようになりました。

マクロ政策・フィリップス曲線

さらに、財務省は昨年10月に消費税増税を実行してしまいました。2014年の増税のときも、それまで積み上げてきた、日銀による金融緩和の成果をぶち壊しにしました。特に、インフレ目標(物価目標)の実現はさらに遠のきました。ただし、緩和は継続されてきたので、雇用の良さはすぐに戻ってきました。

しかし、イールドカーブ・コントロールが実施され、消費税が10%に増税された後はどうなるのでしょうか。日銀が今のまま、抑制気味の金融緩和政策を継続し続ければ、せっかくの金融緩和の成果である、雇用はまた悪化し、インフレ目標実現もさらに遠のいてしまうでしょう。

韓国に至っては、金融緩和をしないで最低賃金だけを機械的にあげたので、大方のエコノミストの予想通り、雇用が激減してとんでもないことになりました。


トランプ大統領は、先の述べたように、金融政策と雇用、為替の関係を理解しているようで、そのせいでしょうが、上の記事にも示されているように空前の雇用の良さを実現しています。

しかし、日本では未だにインフレ目標も達成できず、それでも安倍総理は日銀をトランプ大統領がFRBを批判したようには、批判していません。韓国では、金融緩和をせずに機械的に最低賃金を上げて、雇用が激減する有様です。

安倍総理に関しては、少なくとも文韓国大統領よりは、金融政策に関しては理解があるようですが、それにしても、現在はまさに大規模な緩和のやりどきなのにもかかわらず、実際には日銀を動かせていません。文韓国大統領は、なりふり構わぬ、親北姿勢を崩しませんが、そのようなことの前に、まずは正しい金融緩和政策を実施して、韓国の雇用市場を立て直すべきです。

これは、総理や大統領だけではなく、両国の他の与野党の政治家にも言えることです。親北や「もりかけ桜」は、政治家のメインの仕事ではありません。まともな政治家は、まずは政府だけが実行できるまともなマクロ経済政策を理解し、まともな政策を実行できるように動くべきです。それができない政治家は、政治家とはいえません。単なる政治屋です。

両国とも、米国を見習って、まともな金融政策を実施すべきです。それによって、雇用がよくなり、さらに経済にも良い影響を及ぼすのは確実です。特に、トランプ大統領の金融政策に対する姿勢を学ぶべきです。

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2017年5月3日水曜日

【憲法施行70年】安倍晋三首相がビデオメッセージで憲法改正に強い意欲 「9条に自衛隊書き込む」「2020年に新憲法を施行」―【私の論評】憲法典を変えればすべてが変わるというファンタジーは捨てよ(゚д゚)!




 ご来場の皆さま、こんにちは。自由民主党総裁の安倍晋三です。

 憲法施行70年の節目の年に、「第19回公開憲法フォーラム」が盛大に開催されましたことに、まずもって、およろこびを申し上げます。憲法改正の早期実現に向けて、それぞれのお立場で、精力的に活動されている皆さまに、心から敬意を表します。

 憲法改正は、自由民主党の立党以来の党是です。自民党結党者の悲願であり、歴代の総裁が受け継いでまいりました。私が総理・総裁であった10年前、施行60年の年に国民投票法が成立し、改正に向けての一歩を踏み出すことができました。しかし、憲法はたった一字も変わることなく、施行70年の節目を迎えるに至りました。

 憲法を改正するか否かは、最終的には、国民投票によって、国民が決めるものですが、その発議は国会にしかできません。私たち国会議員は、その大きな責任をかみしめるべきであると思います。

 次なる70年に向かって日本がどういう国を目指すのか。今を生きる私たちは、少子高齢化、人口減少、経済再生、安全保障環境の悪化など、わが国が直面する困難な課題に対し、真正面から立ち向かい、未来への責任を果たさなければなりません。

 憲法は、国の未来、理想の姿を語るものです。私たち国会議員は、この国の未来像について、憲法改正の発議案を国民に提示するための具体的な議論を始めなければならない。その時期に来ていると思います。

 わが党、自由民主党は、未来に、国民に責任を持つ政党として、憲法審査会における具体的な議論をリードし、その歴史的使命を果たしてまいりたいと思います。

 例えば、憲法9条です。今日、災害救助を含め、命がけで24時間、365日、領土、領海、領空、日本人の命を守り抜く。その任務を果たしている自衛隊の姿に対して、国民の信頼は9割を超えています。しかし、多くの憲法学者や政党の中には、自衛隊を違憲とする議論が、いまなお存在しています。「自衛隊は、違憲かもしれないけれども、何かあれば命を張って守ってくれ」というのは、あまりにも無責任です。

 私は、少なくとも私たちの世代のうちに、自衛隊の存在を憲法上にしっかりと位置付け、「自衛隊が違憲かもしれない」などの議論が生まれる余地をなくすべきであると考えます。

 もちろん、9条の平和主義の理念については、未来に向けてしっかりと、堅持していかなければなりません。そこで、「9条1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込む」という考え方、これは国民的な議論に値するのだろうと思います。

 教育の問題。子供たちこそ、わが国の未来であり、憲法において、国の未来の姿を議論する際、教育は極めて重要なテーマだと思います。誰もが生きがいを持って、その能力を存分に発揮できる「1億総活躍社会」を実現する上で、教育が果たすべき役割は極めて大きい。

 世代を超えた貧困の連鎖を断ち切り、経済状況にかかわらず、子供たちが、それぞれの夢に向かって頑張ることができる、そうした日本でありたいと思っています。

 70年前、現行憲法の下で制度化された、小中学校9年間の義務教育制度、普通教育の無償化は、まさに戦後の発展の大きな原動力となりました。

 70年の時を経て、社会も経済も大きく変化した現在、子供たちがそれぞれの夢を追いかけるためには、高等教育についても、全ての国民に真に開かれたものとしなければならないと思います。これは、個人の問題にとどまりません。人材を育てることは、社会、経済の発展に、確実につながっていくものであります。

 これらの議論の他にも、この国の未来を見据えて議論していくべき課題は多々あるでしょう。

 私は、かねがね、半世紀ぶりに夏季のオリンピック、パラリンピックが開催される2020年を、未来を見据えながら日本が新しく生まれ変わる大きなきっかけにすべきだと申し上げてきました。かつて、1964年の東京五輪を目指して、日本は大きく生まれ変わりました。その際に得た自信が、その後、先進国へと急成長を遂げる原動力となりました。

 2020年もまた、日本人共通の大きな目標となっています。新しく生まれ変わった日本が、しっかりと動き出す年、2020年を新しい憲法が施行される年にしたいと強く願っています。私は、こうした形で国の未来を切り拓いていきたいと考えています。

 本日は、自由民主党総裁として、憲法改正に向けた基本的な考え方を述べました。これを契機に、国民的な議論が深まっていくことを切に願います。自由民主党としても、その歴史的使命を、しっかりと果たしていく決意であることを改めて申し上げます。

 最後になりましたが、国民的な議論と理解を深めていくためには、皆さま方、「民間憲法臨調」「美しい日本の憲法をつくる国民の会」のこうした取り組みが不可欠であり、大変心強く感じております。

 憲法改正に向けて、ともに頑張りましょう。

【私の論評】憲法典を変えればすべてが変わるというファンタジーは捨てよ(゚д゚)!

自民党安倍政権は憲法改正を目指しています。私自身は進駐軍軍に銃剣を突きつけられて、与えられたような憲法はいずれ改正すべきだとは、考えています。

現憲法の制定手続きが正当であり、合法的というならば、ナイフを突きつけてセックスを強要することも強姦ではなく、合意の上の行為となります。このようなことは、文明社会で許されるものではありません。

このような「強姦憲法」を不磨の大典かのごとく崇め奉っているいる日本のマスコミ、リベラル・左派、左翼の皆様は、強姦を是とするのでしょうか?
 
その一方で、保守改憲論者の言動をみていると不安になります。自衛隊を巡る法整備やら、予算の問題やらなにやらの諸問題が憲法それも憲法典(文書に書かれた憲法)を改正すればたちどころに解消するかのようなことを主張しています。

しかし、憲法(典)改正は魔法の杖ではありません。憲法を変えなくとも、法律や予算を変えるだけでも可能なことも多々あります。

かつての有事法、国民保護法の制定でも一部それが、実現しました。さらには、2015年には、集団的自衛権を含む安保法制が国会を通りました。ですが、彼らは憲法改正をしなくてもできる、地道な法改正や予算の増額などを主張することはあまりなく、とにかく憲法を変えればすべては劇的に解決するとファンタジーを主張しているようです。

さらには、現行憲法でさえ憲法の解釈を変えればできることはいくらでもあります。実際、このブログでも憲法9条の解釈を変更すれば、自衛隊は違憲ではなくなるし、防衛戦争も可能になることを主張したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
佐々木惣一の「憲法第九条と自衛権」―【私の論評】安保法制=戦争法案としてデモをする人々は、まるで抗日70周年記念軍事パレードをする人民解放軍の若者と同じか?
佐々木惣一
以下に、佐々木惣一氏の憲法9条に関する考えを簡単にまとめた部分のみ引用します。
法によれば、国家は、戦力、武力による威嚇及び武力の行使については国際紛争を解決する手段としてではなく、自衛などの国際紛争を解決する手段以外では、日本国が戦争をし、武力による威嚇をし、武力を行使することを禁じているのではない。 
交戦権については、「第一項は戦争するという事実上の行動に関する規定であり、第二項は、戦争に関する意思の活用に関する規定である」として、国際紛争を解決する手段としての戦争をする意思を活用することを表現している。そのためこの交戦権も自衛権を放棄していることではない。 
この佐々木による解釈は純粋な法理論のモノであり、現実の政策とは分けて考えるべきであり、どんなに憲法解釈が純法理的にすばらしくても、現実に平和が維持されないでは意味をなさない。
そうして、この考えは、他国の憲法を検討すれば、正しいことがわかります。憲法・比較憲法学を専門とする西修氏によると、現行の憲法典182のうち、なんらかの平和主義条項を有する憲法典のある国は、 150カ国もあり、これは全体の82%超です。

なかには、核兵器や生物兵器、化学兵器を持たないことを明記したり、外国の軍事基地を設けないことなど、日本よりももっと徹底した平和主義条項を持つ国があるのです。

世界には、日本のように平和憲法を持ちながら、防衛軍などの名称で軍隊を保有し、自衛のためであれば、戦争することを是とする国も多数存在するのです。であれば、日本も憲法解釈を変えることによって、自衛戦争を可能にすることもできるはずです。

しかし、まずは憲法解釈を変えるとか、予算や法律を整備することにはあまり熱心でなく、とにかく憲法典の条文を変えれば、それで事が足りると無邪気に信じる護憲派もおおいです。

しかし、現状の憲法を変えなくても、できることはあるのです。たとえば、陸上自衛隊には2012年までファーストエイドキットもまともにありませんでした。その後採用されたキットも国内用と国外用(PKO用)があり、特に国内用は包帯と止血帯しか入っていません。これは現代の軍隊ではありえないお粗末さです。

ここで陸自の「個人携行救急品」の海外用(国内用は3アイテム)と米陸軍の「IFAK(Improved First Aid Kit) II」の構成品の違いを検証します。

IFAK IIは従来のIFAKよりも収納力を増やし、個人用アイテム整備の効率化や経済化を図ることを改良の主眼にしており、「米陸軍が専用に装備するアイテム」「米陸軍全員に使用法を習熟させるべきアイテム」として選定した12品目を「基準アイテム」として常備しています。

そしてこれを全員に支給しておき、静脈路確保用留置針、留置針固定用テープ、胸腔減圧用脱気針などの病院であればどこでも備蓄しているアイテムは必要の都度調達し、最大18品目まで補完することで、携行品数に柔軟性を付与するようになっています。

これは管理することが難しく、使用期限のある医療資材を効率的に整備すると共に教育が不十分な兵士が誤用するケースを防ぐ目的もあるといいます。IFAK IIの構成品は12品ではなくその最低基準アイテムが今は12個ということです。

以下に図表で説明します。


以下に自衛隊の個人傾向衛生品の詳細を掲載します。驚くべきことがわかります。


国際活動等の装備としては8つのアイテムがあるのですが、平素の装備(国内用)は3つのアイテムしかありません。何と救急品袋、止血帯、救急包帯だけです。震災のときなど、米軍をもうならせるほどの展開能力をみせたほどの、底力を見せつけた陸上自衛隊ですが、普段の個人傾向のファースト・エイドはこのようなお粗末さです。

東日本大震災の時も、個人が携行したのはこのような貧弱な装備だったと思います。無論、他の装備は別に持たせたのでしょうが、それにしてもあまりに貧弱です。

これは、ほんの一例ですが、現在の自衛隊の置かれて立場を象徴的に現していると思います。他にも自衛隊装備の貧弱さをあらわすものがあります。

たとえば、トイレットペーパーです。全国の自衛隊駐屯地でトイレットペーパーは2ロール目から自腹です。


上の写真は、陸上自衛隊駐屯地のトイレのものです。 悲しいのですが、これが現状なのです。これでは、緊急時に対処できません。常に有事に備えるのが自衛隊のはずです。憲法改正も、有事法制も必要ですが、もっと切迫した有事にも備えて欲しいです。 自衛官自身が有事に常に備えてトイレットペーパーを携行せよという事なのでしょうか?

さらには、射撃訓練をするために予算を削られている陸上自衛官は、平均して年間200発も射撃訓練をしていないそうです。これはアメリカ軍楽隊以下の水準です。

以上のようなことは、他にもいくらでもあります。代表的な例をあげただけです。これに対処するにはどうしたら良いのでしょうか。それは、無論のこと予算を多くすることです。

これらのことは憲法を変えないとできないことなのでしょうか。

訓練費も定足数も、同じ話です。これらを充足するためには、憲法どころか、法律の改正すらいらないです。

必要なものを必要と主張すればよいのです。堂々と財務省主計局に予算請求すればよいのです。しかし、防衛省自衛隊関係者の前では、予算の話はタブーなのです。どこの省庁も、もはや錦の御旗と化している「財政健全化」を持ち出されたら、予算支出の増額を言いにくくなるのですが、官界では最弱小官庁の防衛省自衛隊は主計局の前では蛇に睨まれた蛙に等しいのです。

安倍内閣で防衛費が5年連続増額しているのを、評価する向きもあるでしょう。しかし、防衛費1%枠などという何の根拠もない霞が関の掟を頑なに守っている枠内での話に過ぎません。

トランプ米大統領は、「同盟国は義務を果たすべきだ。せめて防衛費を文明国水準のGDP2%にまで引き上げよ」と訴えています。

これは大きなチャンスです。増やせば良いのです。これだけ北朝鮮が暴れまわり、中国やロシアといった不安定要だらけの隣国に囲まれているのです。日本が防衛費をGDP2%に増やしたとて文句を言うのは敵国だけです。

しかし、国内には防衛費増額を拒む勢力がいます。財政支出抑制を金科玉条とする財務省主計局、彼らに唯々諾々と従う防衛省自衛隊、そしてそれを是とする政治家。

防衛費増額と憲法は何の関係もありません。それとも、自衛隊が、「米軍並のファーストエイドキット携行できるにようにするとか、軽武装をできるだけの人数を充足させる、アメリカ軍楽隊よりもマシな訓練を行えるようにする、トイレットペーパーの減り具合を気にしないで済むようになする」というような、これらの予算請求もすべて憲法改正をしなければできないのでしょうか。そんな馬鹿な話があるはずがありません。

平成27年度自衛隊音楽まつりに参加した米軍の軍楽隊
本気で戦争に備えているのであれば、防衛省は予算の拡大を要求するはずです。現状を見るに、自日本の本気で戦争する気は無いように思えます。このような現状は仮想敵国には見透かされているでしょう。であれば、自衛隊の抑止力はかなり低いと考えられます。

憲法を改正する以前に、努力してより自衛隊を実戦的に変えることは可能なはずなのです。ところが威勢のいいことを言う「保守の論客」はこのような小さな問題をコツコツと掘り起こし、解決しようという地道な努力をしようとしません。

世論を煽り、新しい玩具を買え、防衛費を増やせ、自衛隊の定員を増やせ、憲法を変えろと叫ぶだけです。まあ、その方が楽だし人気もでるのかもしれません。しかし、いくら喰うためとはいえ、そんなことで良いのでしょうか。

できるかどうかもわからない、非常にハードルが高い憲法改正を叫び、それが出来れば世の中は変わると主張し、小さな努力はしない。それでは沖縄で反基地闘争をやっている連中と同じではありませんか。

彼らは沖縄の戦略的な重要性を知っており、米軍が撤退しないことも知っています。仮に撤退しても自衛隊が代わりにその隙間を埋めることを知っています。しかし、憲法典が代わると、途端に日本は侵略戦争を開始し、国内では憲兵隊が個人の自由を著しく制限するようになるというファンタジーを信奉しているようです。

沖縄の基地反対運動
右も左も、手間がかかり、地味な改革には見向きもせず、簡単には実現しもそうもないことを実現しようと、大きなスローガンを掲げて、声を張り上げているほうが楽だし、楽しいし、金が儲かるのでしょう。民進党などの野党にもそのような傾向があります。

やっていることや主張は少なからずプロ市民や観念に凝り固まった非現実的な左翼と大同小異です。こういう手合いに限って自衛隊を美化礼賛し、自衛隊は常に正しい、という無謬論を唱えます。

防衛省、自衛隊に問題があるとするならばそれは憲法が悪いからだと、問題を矮小化してしまいます。このようなことで、本当に憲法が改正できるのでしょうか。いろいろなできることをやった上で、これ以上変えるためには憲法を変えるしかないと主張するのが筋なのではないでしょうか。

このように、無邪気に憲法が変わればすべてが変わると、主張する単純な人たちが憲法を変えようと主張することは極めて危険です。憲法典が変われば、すべてが変わると考えるのは、ファンタジーに過ぎません。

憲法改正ももちろん大事でしょうが、我々はもっと地道な努力をすべきです。ブログ冒頭の、安倍総理のビデオメッセージは確かに、立派です。しかし、安倍総理が憲法を改正するにしても、その前にできることをしなければ、無意味になってしまいます。

憲法典が改正されたとしても、自衛隊のトイレットペーパーの個人負担や、ファーストエイドキットがまともになったり、射撃訓練がまともにできるようならなければ、何も変わらないのです。

安倍総理には、これらの地道な努力を重ねていった上で、最終的に憲法を改正するという道を歩んでいただきたいです。

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