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2020年2月12日水曜日

2020年も引き続き予測を破る米雇用市場―【私の論評】日韓の政治家は、真摯にトランプ大統領の金融政策に対する姿勢を学ぶべき(゚д゚)!


<引用元:ホワイトハウス 2020.2.7>大統領経済諮問委員会

労働統計局(BLS)の毎月雇用状況の最新データから、歴史的に見て強い米国労働市場が2020年も継続して拡大していることが確認できる。

一般教書演説で雇用の良さを強調したトランプ大統領
報告書の事業所統計によると、1月は22万5千人の雇用が増加し、15万8千人の雇用という市場予測を破った。11月と12月の上方修正を含めて、過去1年の月平均雇用増加は17万1千人という健全なものとなった。先月最も増加した分野は教育と医療サービス(+72,000)、建設(+44,000)、そしてレジャー・サービス業(+36,000)だった。

今月の報告書には事業所統計に対するBLSの年間修正も含まれていた。この修正によって、2019年3月の年度末の間に以前報告されたよりも51万4千人少ない雇用増加だったことが分かった。この修正は雇用が失われたという意味ではなく、むしろ以前は過大に見積もり過ぎていたという意味だ。だが1月の強い雇用増加によって、それでもトランプ大統領の選出以来700万人の雇用が増加している。選挙から38カ月、そのうち34の月で少なくとも10万人の雇用を創出しており、毎月雇用が増加している。

長期化した雇用創出は米国人の賃金を引き上げている。過去1年半では景気後退以来で最大の賃金上昇となった。平均時給は前年比で3.1パーセント増加し、18カ月連続で3パーセント以上の上昇率となっている。賃金上昇は製造・非管理職労働者でさらに速く、前年比で3.3パーセントとなった。トランプ大統領の下で、労働者の賃金は管理職の賃金よりも速いペースで増加している――前政権とは逆の結果である。

別の世帯調査では1月に失業率が3.6パーセントに上昇したことが分かっているが、1969年以来最低のレベル近辺に留まっている。1月には23カ月連続で失業率が4パーセント以下となった――50年で最長の記録だ。失業率は、連邦議会予算事務局の選挙前の最終予測である5.0を依然として大きく下回っており、トランプ大統領が2016年11月に選出された時のレベルより1.1パーセント低い。

歴史的に見て恵まれないグループは、現在のひっ迫した労働市場から利益を受けている。2019年にアフリカ系米国人、ヒスパニック系米国人、アジア系米国人の失業率は全て過去最低となった(テーブル参照)。高校卒業資格を持たない人々と障害者も昨年は過去最低の失業率となった。


1月のわずかな失業率上昇の主要原因は、傍観者の立場にいた労働者が仕事を探そうと労働人口に加わることが増えたためだった。この3カ月で労働市場外から来た新たな労働者の平均割合は73.2パーセントだった。1月に就労率は63.4パーセントにまで上昇した――2013年以来で最高のレベルだ。重要なこととして、働き盛り世代(25歳から54歳)の就労率も1月に83.1パーセントに上昇したが、2016年11月の数字を1.8パーセント上回るものだ。

重要性が小さく見える就労率の変化は雇用市場に重大な影響を持っている。例えば、トランプ大統領の下で働き盛り世代の就労率が上昇したということは、労働力として220万人の働き盛り世代労働者が加わったということになる。就労率の増加以上に、働き盛り世代労働者の労働力人口比率は1月に0.2パーセント上昇して80.6パーセントとなった――2001年5月以来最高レベルだ。

労働者の流入は経済に対する自信増大と就職見通しの改善を示している。全米産業審議会の消費者信頼感は1月に131.6に上昇し、トランプ大統領の選出前月から31パーセントの増加となった。その上仕事が「得難い」と答えた人に比較して、仕事が「十分にある」と答えた人の割合は4対1以上だ。

過去最高の2019年の後、2020年の米国経済は再び強い雇用報告で始まった。昨年起きたように、1月の雇用増加は予測を破り、賃金は3パーセント以上上昇し、失業率は歴史的な低さかそれに近い数字を保った。

【私の論評】日韓の政治家は、真摯にトランプ大統領の金融政策に対する姿勢を学ぶべき(゚д゚)!

本ブログの読者であれば、金融政策が雇用政策であることを私が繰り返し書いてきたことを知っているでしょう。その意味では、米国で金融緩和により失業率が低下し、有効求人倍率が上昇してきたのは、私にとっては想定内のことです。

失業率の定義は、労働力人口に対する完全失業者の占める割合です。完全失業者は労働力人口から就業者を引いたものなので、失業率は、1から就業者数の労働力人口に対する割合を引いた数になります。

トランプ大統領は金融政策と為替の関係を理解しているようです。これは考えてみれば、簡単なことなのですが、これを理解しない人は結構多いようです。

金融緩和にはいくつかの方法がありますが、この世界に緩和の方法がお札を刷り増すことしかなかったとします。そうすると、ドルを徹底的に刷ります、すなわち金融緩和を徹底的に行うと、ドルが相対的に増え、ドル安になります。

逆に、米国が大規模な金融緩和をしていないにもかかわらず、日本や、EUが円やユーロを徹底滝に刷り増せば、相対的に円やユーロがドルよりも増えて、ドルの価値が下がり、ドル安になります。

為替の動きは、短期的には様々な要因がありなかなか正確にあてることはできないですが、長期的には米国と他国の金融緩和政策の方向性で6割型は、予想できます。長期では、結局金融政策の方向性でほとんどか決まります。これは、小学生でもわかる理屈です。お金も、相対的に他国、特にドルと比較して多ければ、安くなりますし、少なければば、高くなります。それだけの話です。

トランプ大統領は、金融政策が雇用と、為替に大きく影響することを、どの政治家よりも理解しているようです。それは、不動産業をやってきた実績から、学んだことなのでしょう。

実際トランプ大統領は昨年3月2、共和党関連の行事で演説し、中央銀行の金融引き締め策がドル高を招き、米経済に悪影響を及ぼしているとして米連邦準備理事会(FRB)を再び批判しています。FRBは1月、2019年に2回想定していた追加利上げを見送って「当面は様子見する」方針を示していたのですが、トランプ氏は改めてけん制した格好でした。
トランプ氏は「米国にとって好ましいドル(の水準)を求めている。外国と事業取引するのを妨げるような強すぎるドルは求めていない」と主張しました。名指しを避けつつも「利上げを好み、量的引き締めを好み、非常に強いドルを好む紳士がFRB内に1人いる」と述べ、パウエル議長を暗に批判した。

不動産業はその時々のFRBの政策に大きく影響されます。だから、いつが儲け時なのか、耐え時なのかを判断するには、FRBの金融政策に大きく影響されます。そのため、実践的に金融政策の重要性を学んだのでしょう。

米国経済を見るときのポイントは、失業率とインフレ率です。それに応じて、マクロ経済政策がどのようになるのか、ほとんど予測できます。

実際の金融政策は「テーラー・ルール」によって行われているといわれています。テーラー・ルールとは、1933年にスタンフォード大学のテーラー教授が提唱したもので、オリジナルな形は、インフレ率と実質国内総生産(GDP)水準の2つから、実際に行うべき金利政策がほとんど説明できるというものです。

実質GDP水準は、失業率と密接な関係があるので、インフレ率と失業率から決まるといっても良いです。具体的にいえば、インフレ率がインフレ目標の2%より高い時に利上げ、低い時に利下げとなり、失業率がNAIRU(インフレを加速しない失業率)といわれる4%より高い時に利下げ、低い時には利上げということが多いとされてきました。

昨年の4月の米国のインフレ率は2%、失業率は3.6%でした。この時点で過去1年くらい、失業率は4%以下となっており、従来のテーラー・ルールからみれば利上げになるという状況でした。

米経済で、失業率が4%を下回ることは極めて珍しいです。戦後を見ても、1960年代後半の4年間程度に見られただけの「超人手不足」状態でした。

これまでであれば、インフレ率がかなり高くなっているはずでしたが、まだ高くなっていませんでした。まさにインフレ目標2%の範囲内になっていました。

当時は、じわりとインフレ率が高まりつつありましたが、より重要な将来のインフレ予想はそうでもありませんでした。

インフレ予想は、物価連動国債と通常国債の金利差である「ブレークイーブン・インフレ率」によって測ることができます。そのデータを見ると、2017年以降、2%の上下0.2ポイント程度で安定していました(5年物)。

従来のデータでは、米国のNAIRUは4%程度というのが定説ですが、ここ1年くらい失業率が4%を下回りながらも、インフレ率が上がっていないということは、NAIRUが3%台半ばになっているのかもしれないことが認識できました。

「超完全雇用」であっても、雇用のミスマッチや、避けられない失業があるためにゼロにはならない。ただ、最近は、インターネットの発達などにより、雇用のミスマッチが少なくなっていることも考えられます。

このブログでは、失業率を事実上の最低ラインのNAIRU(インフレを加速しない失業率)になるように、一方で経済が過熱しないようにインフレ目標があると説明してきました。もし、NAIRUが3%台半ばであれば、それに対応するインフレ目標は2%台半ばになっている可能性もありました。その場合、当時のインフレ率や失業率であれば、利下げの可能性もありえました。結局は、FRBはトランプ大統領の圧力もあって、利下げはしませんでした。

その結果として、上の記事でも示されるいるように、米国の雇用は過去最高の2019年の後、2020年の米国経済は再び強い雇用報告で始まったのです。昨年起きたように、1月の雇用増加は予測を破り、賃金は3パーセント以上上昇し、失業率は歴史的な低さかそれに近い数字を保ったのです。

日銀はNAIRUを無視して事実上の利上げである「イールドカーブ・コントロール(長短金利操作)」を行っています。米国の動きは、円高を加速させる可能性はかなりありました。そうして、実際そうなっています。

以下は、マクロ政策・フイリップス曲線といわれるものです。数値は日本のものです。日本では、NAIRU最近まで、3%台と思われてきたのですが、3%切ってもインフレ目標が達成されないため、2%台であると認識されるようになりました。米国の場合はNAIRUは従来は4%台であると認識されていたのですが、米国でも失業率が3%台になっても、目立った物価上昇はみられず、NAIRUが3%台であると認識されるようになりました。

マクロ政策・フィリップス曲線

さらに、財務省は昨年10月に消費税増税を実行してしまいました。2014年の増税のときも、それまで積み上げてきた、日銀による金融緩和の成果をぶち壊しにしました。特に、インフレ目標(物価目標)の実現はさらに遠のきました。ただし、緩和は継続されてきたので、雇用の良さはすぐに戻ってきました。

しかし、イールドカーブ・コントロールが実施され、消費税が10%に増税された後はどうなるのでしょうか。日銀が今のまま、抑制気味の金融緩和政策を継続し続ければ、せっかくの金融緩和の成果である、雇用はまた悪化し、インフレ目標実現もさらに遠のいてしまうでしょう。

韓国に至っては、金融緩和をしないで最低賃金だけを機械的にあげたので、大方のエコノミストの予想通り、雇用が激減してとんでもないことになりました。


トランプ大統領は、先の述べたように、金融政策と雇用、為替の関係を理解しているようで、そのせいでしょうが、上の記事にも示されているように空前の雇用の良さを実現しています。

しかし、日本では未だにインフレ目標も達成できず、それでも安倍総理は日銀をトランプ大統領がFRBを批判したようには、批判していません。韓国では、金融緩和をせずに機械的に最低賃金を上げて、雇用が激減する有様です。

安倍総理に関しては、少なくとも文韓国大統領よりは、金融政策に関しては理解があるようですが、それにしても、現在はまさに大規模な緩和のやりどきなのにもかかわらず、実際には日銀を動かせていません。文韓国大統領は、なりふり構わぬ、親北姿勢を崩しませんが、そのようなことの前に、まずは正しい金融緩和政策を実施して、韓国の雇用市場を立て直すべきです。

これは、総理や大統領だけではなく、両国の他の与野党の政治家にも言えることです。親北や「もりかけ桜」は、政治家のメインの仕事ではありません。まともな政治家は、まずは政府だけが実行できるまともなマクロ経済政策を理解し、まともな政策を実行できるように動くべきです。それができない政治家は、政治家とはいえません。単なる政治屋です。

両国とも、米国を見習って、まともな金融政策を実施すべきです。それによって、雇用がよくなり、さらに経済にも良い影響を及ぼすのは確実です。特に、トランプ大統領の金融政策に対する姿勢を学ぶべきです。

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2018年8月2日木曜日

世界が反緊縮を必要とする理由―【私の論評】日本の左派・左翼は韓国で枝野経済理論が実行され大失敗した事実を真摯に受け止めよ(゚д゚)!

世界が反緊縮を必要とする理由

ケイザイを読み解く野口旭

『そろそろ左派は〈経済〉を語ろう――レフト3.0の政治経済学』表紙
写真はブログ管理人挿入 以下同じ


<現在の世界経済を貫く経済政策上の基本的な対抗軸は、もはや政治イデオロギーにおける右や左ではなく、「緊縮vs反緊縮」である...>

経済論壇の一部ではいま、本年の4月に出版された『そろそろ左派は〈経済〉を語ろう――レフト3.0の政治経済学』(ブレイディみかこ・松尾匡・北田暁大、亜紀書房)が話題になっているようである。

ただし、ネット上の書評などをぱらぱらと見てみると、その受け取られ方は必ずしも好意的なものばかりではない。むしろ、この本に関する書評や論評に関して言えば、長々と書き連ねているものほど辛辣な内容で埋め尽くされていることが多い。そして、そうした執拗な批判の書き手は、明らかに右派ではなくて左派である。

同書がこのように、左派的な読者の一部から強い反発を受けている理由は明白である。それは要するに、同書が、左派的な人々が蛇蝎のように嫌っている現在の安部政権の経済政策すなわちアベノミクスを、「金融緩和プラス拡張財政」というその骨格的な部分において肯定しているからである。

松尾匡氏

もちろん、同書の3人の著者はいずれも左派を自認する論者であるから、アベノミクスの一部を是認してはいても、安部政権そのものを支持しているわけではない。というよりも、少なくともその政治的なスタンスとしては、この3人の論者は明らかに「アベ政治を許さない」と叫んでいる側に近い。

にもかかわらず本書が反安倍を掲げる左派から目の敵にされているのは、「じゃぶじゃぶの金融緩和で株価を引き上げただけ」、「悪性インフレやハイパーインフレの種を撒いた」、「財政バラマキによる将来世代へのツケ回し」、「財政規律を失わせて財政破綻を招き寄せている」といった、これまでの左派による定番のアベノミクス批判が的外れであることを指摘し、それらを容赦なく切り捨ていているからである。

さらには、アベノミクスが発動されて以降、経済状況とりわけ人々の生活に直結する雇用状況が民主党政権以前と比べて明確に改善しているという、左派の人々にとっては受け入れ難い事実を事実として指摘し、安部政権への特に若い世代から高い支持がこうした雇用改善に基づくものであることを冷静に分析しているからである。

アベノミクスの把握と評価をめぐるこうした左派における「分断」は、現在の世界経済を貫く経済政策上の基本的な対抗軸が、もはや政治イデオロギーにおける右や左ではなく、「緊縮vs反緊縮」であることを示唆している。同書の著者たちはもちろん、人々にいま必要とされているのは反緊縮政策であること、そして左派こそがその反緊縮の中核を担うべきことを主張する。

しかしながら、アベノミクスに対する左派からの反応の多くは、上の定番的批判が示すように、要するに「緊縮の側からのアベノミクス批判」の左派的形態にすぎない。同書はその問題性を、あえて左派の内部から提起しているのである。

緊縮から反緊縮へ

マクロ経済政策における反緊縮とは、「赤字財政を可能な限り許容しつつ金融緩和を進めること」と定義できるであろう。要するに「金融緩和プラス拡張財政」である。ただし、不況期には財政赤字を許容すべきという赤字財政主義それ自体は、ケインズ主義の伝統的な政策指針であり、目新しい点はまったくない。近年における反緊縮主義が旧来の赤字財政主義と異なるのは、その赤字財政が必ず金融緩和とセットになっているという点にある。この「金融緩和に裏付けられた赤字財政」というマクロ経済政策のあり方が「反緊縮」と呼ばれているのは、それがとりもなおさず、2010年頃から世界的に浸透し始めた経済政策における緊縮(Austerity)へのアンチテーゼとして提起されていたからである。

2008年9月のリーマン・ショックを契機として「百年に一度の世界経済危機」が生じたとき、各国政策当局はまず、景気対策の定石通り、財政拡張政策と金融緩和政策によってそれに対応しようとした。そして、それらの政策によって、世界は少なくともかつての世界大恐慌のような経済的大惨事の再発を防ぐことには成功した。とはいえ、2009年頃の各国の経済収縮はきわめて深刻であり、多くの国が政府財政の急激な悪化に直面した。

そこに生じたのが、2010年5月のギリシャ・ショックであり、それに続く欧州債務危機であった。それを契機として、各国の財政スタンスは、拡張から緊縮へと、まさに急転回することになる。とりわけ、債務危機の震源である欧州では、各国に対して財政規律の確保を強く求めるドイツの主導の下で、厳格な財政引き締め、すなわち増税あるいは歳出削減が実行された。その結果、ギリシャ、スペイン、ポルトガルなどの南欧の債務危機国では、経済が急激に縮小し、若年層の失業率が50%近くあるいはそれを超えるまでにいたった。

アメリカでは、ティーパーティーと呼ばれる草の根保守派が、政府財政赤字の拡大を問題視し、「アメリカ経済が低迷しているのは財政赤字のせいだ」といったプロパガンダを始めた。そして、それに後押しされた共和党が、政府債務の上限引き上げ拒否という議会戦術に打って出た。それはその後、強制歳出削減に伴う「財政の崖」と呼ばれる一大騒動をもたらした。

その状況は日本でも同様であった。2009年9月に発足した民主党政権は、少なくともその政権獲得当初は「消費税増税は当面は行わない」ことを明言していた。しかし、2010年春にギリシャ・ショックが生じて以降は、消費税増税問題が与野党を巻き込む最大の政策的争点となった。未だに喉に刺さったトゲのごとく日本経済に痛みを与え続けている、民主党・野田佳彦政権下の2012年夏に成立した「消費税引き上げの三党合意」は、その帰結である。

反緊縮とは要するに、こうした形で世界的に推し進められていった財政緊縮への政策的アンチテーゼである。そこで金融政策の役割に改めて焦点が当てられるようになったのは、金融緩和は赤字財政主義を貫徹するためにも必要不可欠であることが、まさにこの財政危機から財政緊縮にいたる経緯の中で明らかになったためである。

金融政策は「財政の足かせ」を緩めるのに役立つ

そもそも、赤字財政主義は、それ自体としてはきわめて脆弱なのである。不況下には財政赤字を拡大すべきとはいっても、実際に赤字が拡大すれば「財政危機懸念」が生じるのは避けられないし、その懸念がやがては現実の危機に転じる可能性も否定はできない。それがまさに、多くの国が「不況下の緊縮財政」という最悪の選択を行うにいたった理由である。

しかし、金融政策は、そのような政策選択に追い込まれるのを避ける大きな手助けとなる。そこには少なくとも、以下の三つのチャネルがある。

第一は、中央銀行による国債購入を通じた国債市場の安定化である。中央銀行が行う金融緩和とは、一般的には国債等の資産を購入して自国通貨を供給することである。不況期には通常、税収の減少や景気対策のための財政支出によって政府財政が悪化し、国債の発行が増加する。それは時には、国債市場の攪乱要因となり、国債の価格下落と金利上昇をもたらす。しかし、中央銀行が不況期に国債購入を通じた金融緩和を行えば、国債金利は低位に保たれ、市場の攪乱は自ずと抑制される。

第二は、中央銀行の国債保有拡大による政府の国債利払い費の縮小である。政府が国債を発行して財政赤字を賄えば、当然ながら民間の国債保有者に対して金利を支払い続けなければならない。しかしながら、その国債を中央銀行が民間から買い入れた場合には、政府はその分の金利支払いを免れることができる。というのは、政府が中央銀行に支払った国債保有分の金利は、国庫納付金などとして再び政府に戻ってくるからである。したがって、中央銀行が国債保有を拡大すればするほど、政府の国債利払い費は縮小する。債務とは金利を支払ってこそ債務なのであるから、中央銀行が保有している国債に関しては、政府債務が事実上存在しないに等しい。これがいわゆる通貨発行益(シニョレッジ)である。

そして第三は、金融緩和を通じた景気回復による財政の改善である。金融緩和は一般に、金利や為替の低下を通じて雇用、所得、そして企業収益を改善させる。税収は基本的に所得や企業収益に依存するものであるから、その所得と企業収益の改善は、自ずと不況によって減少していた税収の改善に結びつく。

つまり、金融政策が自由度を持つということは、「政府の財政収支制約」を一時的にせよ大きく緩和できることを意味する。ギリシャをはじめとする欧州各国に債務危機が発生したのは、まさしく統一通貨ユーロという「足かせ」に縛られて自国のための独自の金融政策が実行できなかったためである。仮にこれら欧州の債務危機国がユーロには加入せずにそれぞれの通貨を保持していたならば、債務危機を当初から免れていた可能性は十分ある。

財務省出身の政治家であり、政権交替直後の民主党・鳩山由起夫政権で財務大臣を務めた藤井裕久は、2016年8月14日付けの日本経済新聞(電子版)インタビューで、「カネをばらまくだけ」のアベノミクスはいずれ破綻すると述べたのちに、以下のように発言している。

藤井裕久

黒田(東彦日銀総裁)も(金融政策の限界を)分かっていると言わざるを得ない。これは、書いたっていいや。大蔵省に本当の幹部達の集まりがある、あるんだよ。僕は、黒田にこう言った。「君、分かっているじゃないか。財政を健全にしろと良いことを言ってくれている。だけど、君、ばらまいていたら、健全化にはならないんだよ。だって、(間接的に)国債買うんだろと。健全になるわけないんだよ」と、ひとつ言いました。

この藤井の発言は、その意図はどうであれ、「金融政策は財政制約の緩和に役立つ」という重要な真理を含んでいる。ただ、反緊縮の側がそれを肯定的に捉えるのに対して、典型的な緊縮論者である藤井は、それをアプリオリに悪と考えているわけである。

緊縮を打ち負かしたオルト・ライト・ケインズ主義

上掲『そろそろ左派は〈経済〉を語ろう』では、欧州で拡大しつつある反緊縮に向けた政治潮流の現状がつぶさに紹介されている。そこで興味深いのは、反緊縮の担い手は必ずしも左派とは限らないという事実である。実例として挙げられているは、2010年に成立したハンガリーのオルバーン政権である。その経済政策である「オルバノミクス」は、金融緩和と財政支出の組み合わせであり、まさしく反緊縮そのものである。しかしながら、この政権それ自体は、民族主義的かつ復古主義的な特質を持つ、まごうことなき右派であった。

ハンガリーのオルバーン・ビクトル首相

同様のことはおそらく、アメリカのトランプ政権に関しても言える。筆者は以前のコラム「オルト・ライト・ケインズ主義の特質と問題点」(2017年02月28日付)において、トランプ政権の経済観は、旧来の保守派の経済観、すなわちティーパーティーも含む共和党主流派が奉じてきた「小さな政府」を標榜する新自由主義におけるそれとは対極的であり、本質としてはむしろケインズ主義の方に近いことを指摘し、それを「オルト・ライト・ケインズ主義」と名付けた。実際、トランプが大統領選挙時から一貫して訴え続けてきた「減税や公共投資といった財政政策を用いてアメリカの労働者の雇用を増加させる」という政策手法は、アメリカの保守派が葬り去ろうとしてきた旧来のケインズ主義そのものであった。

トランプが打ち出したこの拡張財政政策に対する専門家からの反応は、当初はきわめて冷笑的なものであった。専門家の多くは、「リーマン・ショックの直後に行うならともかく、アメリカ経済がほぼ完全雇用に近づいた今になって行う拡張財政政策は、恩恵よりもむしろ景気過熱と高インフレをもたらす可能性が高い」と考えたのである。

ところが結果として見れば、正しかったのは彼ら専門家ではなく、トランプの方であった。というのは、2018年第2四半期の経済成長率が4%を超えたことが示すように、トランプ政権が2017年末に行った減税政策は、人々に明らかな恩恵をもたらしているからである。他方で、それによってアメリカ経済が過熱したとかインフレが加速したという徴候はほとんど見られていない。トランプ政権がその粗暴な政策運営に対する内外からの数多くの批判にもかかわらず、国内では依然として一定の支持基盤を確保しているのは、こうした経済面での実績によるところが大きい。

「世界的貯蓄過剰2.0」の世界にどう対応するのか

これまでのところ、その担い手が右派か左派かにはかかわらず、人々に苦難を強いてきたのはほぼ常に緊縮であり、人々の救いとなってきたのは反緊縮であった。しかしながら、これはあくまでも反緊縮側の見方である。緊縮の側からすれば、そのような評価はまったく受け入れ難いものであろう。というのは、「緊縮は確かに苦しいが、財政破綻やハイパーインフレといった将来における惨禍を防ぐためには現在の緊縮を甘受するしかない」というのが、藤井裕久元財務大臣に代表される緊縮論者たちの強固な信念だからである。

緊縮論者のこうした考え方は、確かに一定の歴史的な根拠を持っている。多くの国がこれまで財政破綻や悪性の高インフレに見舞われてきたが、その背後にはほぼ常に、放漫な財政政策や過度な金融緩和政策があった。

1960年代末から始まったアメリカの高インフレや、1970年代初頭の日本の「狂乱物価」が示すように、金融緩和や財政拡張の行き過ぎによる経済的混乱は、少なくとも1980年代前半までは、先進諸国においても決して珍しいものではなかった。つまり、その時代には確かに「財政と金融の健全な運営」がマクロ経済政策における正しい指針だったのである。

ところが、近年の世界経済においては、状況はまったく異なる。「景気過熱による高インフレ」なるものは、少なくとも先進諸国の間では、1990年代以降はほぼ存在していない。リマーン・ショック以降は逆に、日本のようなデフレにはならないにしても、多くの国が「低すぎるインフレ率」に悩まされるようになった。また、異例の金融緩和を実行しても景気が過熱する徴候はまったく現れず、逆に早まった財政緊縮は必ず深刻な経済低迷というしっぺ返しをもたらした。世界経済にはこの間、いったい何が起こったのであろうか。

一つの仮説は、筆者が秘かに「世界的貯蓄過剰2.0」と名付けているものである。世界的貯蓄過剰仮説とは、FRB理事時代のベン・バーナンキが、2005年の講演「世界的貯蓄過剰とアメリカの経常収支赤字」で提起したものである。バーナンキはそこで、1990年代末から顕在化し始めた中国に代表される新興諸国の貯蓄過剰が、世界全体のマクロ・バランスを大きく変えつつあることを指摘した。リマーン・ショック後に生じている世界経済のマクロ状況は、その世界的貯蓄過剰の新段階という意味で「2.0」なのである。

各国経済のマクロ・バランスにおける「貯蓄過剰」とは、国内需要に対する供給の過剰を意味する。実際、中国などにおいてはこれまで、生産や所得の高い伸びに国内需要の伸びが追いつかないために、結果としてより多くの貯蓄が経常収支黒字となって海外に流出してきたのである。

このように、供給側の制約が世界的にますます緩くなってくれば、世界需要がよほど急速に拡大しない限り、供給の天井には達しない。供給制約の現れとしての高インフレや高金利が近年の先進諸国ではほとんど生じなくなったのは、そのためである。

この「長期需要不足」の世界は、ローレンス・サマーズが「長期停滞論」で描き出した世界にきわめて近い。その世界では、財政拡張や金融緩和を相当に大胆に行っても、景気過熱やインフレは起きにくい。というよりもむしろ、財政や金融の支えがない限り、十分な経済成長を維持することができない。ひとたびその支えを外してしまえば、経済はたちまち需要不足による「停滞」に陥ってしまうからである。それが、供給の天井が低かった古い時代には必要とされていた緊縮が現在はむしろ災いとなり、逆に、その担い手が右派であれ左派であれ、世界各国で反緊縮が必要とされる理由なのである。

野口旭氏プロフィール



1958年生まれ。東京大学経済学部卒業。
同大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。専修大学助教授等を経て、1997年から専修大学経済学部教授。専門は国際経済、マクロ経済、経済政策。『エコノミストたちの歪んだ水晶玉』(東洋経済新報社)、『グローバル経済を学ぶ』(ちくま新書)、『経済政策形成の研究』(編著、ナカニシヤ出版)、『世界は危機を克服する―ケインズ主義2.0』(東洋経済新報社)等、著書多数。

【私の論評】日本の左派・左翼は韓国で枝野経済理論が実行され大失敗した現実を真摯に受け止めよ(゚д゚)!

ブログ冒頭の野口旭氏の記事にもある通り、アベノミクスに対する左派からの反応の多くは、要するに「緊縮の側からのアベノミクス批判」の左派的形態に過ぎないものです。

昨年野党第一党となった、立憲民主党の枝野幸男代表も結局のところ、経済理論はアベノミクスに反対すると言っているに過ぎないようずて。実際枝野氏は、安倍晋三政権に対抗するとして、経済政策を訴えています。

枝野氏

枝野氏は、安倍政権政権のキャッチフレーズ「成長なくして分配なし」を逆転させ、低所得者層への再分配を主張し、法人税率の引き上げにも言及しています。果たして実効性はどこまであるのでしょうか。

 「日本の中だけ見ると、バブルが崩壊してから(景気は)悪くなっている。社会は下から支えて押し上げる。消費不況を脱出するには、底上げを図らないといけない」

枝野氏は昨年12月13日、文化放送のラジオ番組に生出演し、低所得者層の賃上げに取り組む考えを示しました。

枝野氏は12日のロイター通信のインタビューでも、「分配なくして成長なし。内需の拡大のためには適正な分配が先行しなければならない」といい、次のように主張しました。

 「(自民党の)所得税の改革は、本当の富裕層の増税にならず、中間層の増税になっている。何より、企業の内部留保を吐き出させなければだめ。単純に法人税を大幅に増税すればいい」

この野党第1党のリーダーが説く経済政策は有効なのでしょうか。

これは、残念ながら経済の仕組みをまるで分かっていないとしか言いようがないです。成長があって分配できるのであって、『初めに分配ありき』などということはありえないです。経済が成長しないのに分配をすれば、雇用が激減するか、被用者一人あたりの賃金を減らすしか方法はありません。

法人税率引き上げ案も、それを実行したとしても企業に内部留保を吐き出させること直結することにはならないです。そもそも、企業の内部留保は現金のように、すぐに出せる形で積み上がっているわけではありません。

そもそも、欧米やアジア諸国が法人税の増税に慎重ななかで、日本だけが引き上げれば、国際競争では不利になります。現時点で単純な企業いじめをしても得られるところは何もないです。

さて、このように私ごときが、枝野氏の経済政策を批判したとしても、説得力はないかもしれません、激しく批判すれば、左派や左翼の方々からは、ネトウヨなどと謗られるだに終わるかもしれません。

ところが、枝野氏の主張するような経済政策は韓国ですでに実施されて、その結果は大失敗です。私は、もし私の主張が左派や左翼の方々に反対されたとしたら、以下のことを反証としてあげたいと思います。

ご存知のとおり、韓国の文在寅政権はかなりリベラル寄りの政権で、経済政策を財閥優遇から、労働者に直接恩恵をもたらす政策に舵を切りました。目玉は次の3つです。

1)福祉・雇用に財政支出を傾斜配分(2018年度予算15兆ウォンのうち4割程度を配分)

2)公務員数の増加(5年で81万人の雇用増が目標)

3)最低賃金の引き上げ(2020年までに1万ウォンまで引き上げる)

韓国の1~3月期の実質国内総生産(GDP)は前期比1.0%増加していますが、内容は半導体関連の輸出とそれに伴う設備投資のみに頼った形であり、国内消費は低調なままで、総じてよくない状態です。

韓国では、不況期の景気下支えを主に公共投資によって行ってきましたが、文政権ではこれを一気に削減し、雇用・福祉関連支出への配分が大幅に拡大されました。

またそれまでは概ね7%程度の増加であった最低賃金を、2018年には前年比+16.4%の大幅に引き上げ、今後も目標である1万ウォンを目指して同程度の引き上げが予想されます。また同時に法人税の22%から25%への引き上げや、週労働時間の短縮の要請も行っています。

その結果、どうなったでしょうか。韓国の今年3月の完全失業率は4.0%と上昇し、雇用環境は悪化しています。ちなみに、4%という失業率は韓国でも、リーマンショック後に1回あっただけという悪さです。

特に、15歳から29歳までの若年失業率は9.7%にも上っています。人件費の上昇により、企業が採用を抑制し始めたのです。

韓国の中央銀行(Bank of Korea)は、昨年11月に利上げを行い(1.25%→1.50%)、金融政策は緊縮気味です。その結果、韓国の通貨ウォンは、対ドルで5%強も上昇しました。

韓国は輸出主導の経済構造です。輸出依存度はGDP比で55%弱であり(日本は15%弱)、通貨高は経済に直接悪影響を与えます。

緊縮気味の金融政策は、先に述べた雇用・福祉重視政策と相まり、財閥企業の海外移転(国内空洞化)を促しており、雇用環境は、今後、ますます悪化することが予想されます。

枝野経済理論を韓国で実行した文在寅韓国大統領

文政権と日本の左翼政党・メディアと共通しているのが、理念先行で、実際の経済の波及経路や効果などの検証がほとんどないということです。また、マクロ経済をどうやら、ミクロ的な視点でのみ語り、「労働者の利益を上げるためには企業から奪ってくるしかない」という視野狭窄を起こしています。

マクロ経済は、「特にデフレや不況に陥っているときは、まずは積極財政と、金融緩和でまずは全体のパイ(GDP)を増やしてから、次に分配(企業、労働者、政府)を考える」というのが基本ですが、個々のプレイヤーの分配のみを考えているので、結果的に全体のパイが縮小するという愚を犯しているのです。

枝野理論は、韓国で似たような政策が実行されて、大失敗しました。これについては、日本の報道機関は、韓国で雇用や経済が悪くなったことを伝えるばかりで、韓国の文在寅による経済政策が、枝野理論と同じく、金融緩和抜きで分配を強化したにもかかわらず、結局雇用が激減して大失敗したということは報道しません。

一方で、安倍政権の経済政策「アベノミクス」や、先の衆院選で掲げた、2019年10月の消費税率10%引き上げはどうかといえば、教育や防衛の予算など『未来への投資』が十分でなく、国民は不安を感じています。

増税に関しては、過去には増税に反対した野党も存在はしましたが、それは残念ながら、経済を理解しているというよりは、選挙対策のために反対したというに過ぎないものばかりでした。まともな経済理論にのつとった上で、増税に反対したことはありませんでした。

今後、安倍政権は増税などせずに、アベノミクスをさらに加速すべきです。消費税率10%引き上げは消費意欲をさらに減退させるだけです。『緊縮政策は政権を短命にする』というのが世界の潮流です。撤回すべきです。

野党をはじめとする、左派や左翼の方々は、枝野氏の経済理論が、韓国で現実に実行され、大失敗しているという現実を真摯に受け止めるべきです。

ブログ冒頭の野口旭氏が語るように、世界各国で反緊縮が必要とされる理由を理解すべきです。それは、左派・左翼に限りません、与党の政治家達や保守層もしっかり認識せず、安易に緊縮政策を採用したり、それを支持するようなことをしてしまえば、日本経済は再び長期停滞にみまわれ、それこそ「失われた20年」どこか、本来は招く必要もないし、招く必然性もない「失われた100年」を自ら招いてしまうことになるかもしれません。

その時には、日本にも文在寅のような政治家が跋扈して、政権を掌握するかもしれません。

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2018年5月27日日曜日

日大アメフト内田前監督は「次の理事長」ともいわれた実力者―【私の論評】日大理事会は真摯さに欠ける理事を全員辞任させよ!さもなければ、組織が完全腐敗し、いずれ崩壊する(゚д゚)!

日大アメフト内田前監督は「次の理事長」ともいわれた実力者

2018年5月、アメリカンフットボールの悪質な反則行為問題について、
羽田空港で取材に応じ、うつむく日大の内田正人監督

 日本大学アメフト部が起こした悪質タックル事件は、監督を辞任することを表明した内田正人氏(62)が“首謀者”とされたことで、混迷を極めた。問題のプレーは5月6日、関西学院大学との定期戦で起こった。パスを投げ終えて2~3秒後の無防備なQBに、日大選手が背後から猛タックル。倒れた選手は全治3週間のケガを負った。

 タックルをした選手は、「“(反則)やるなら(試合に)出してやる”といわれた」と周囲に話していたことが相次いで報じられ、内田氏の指示が疑われている。日大選手は関東学生連盟から処分を受け、内田氏は辞任を表明した会見で「一連の問題は全て私の責任」と語ったが、反則を指示したかについては語らず、関学大側に文書で回答するとしている。

 日大は、本誌・週刊ポストの取材に対して「監督についてはラフプレーを指示した事実はありません。ですから、現在は責任を問う状況になっていません」(広報部)と話していたが、結局は辞任に追い込まれた形だ。大学側がそこまで擁護し続けた内田氏とは、どういった人物なのか。

 スパルタで知られる日大の名将、故・篠竹幹夫監督のもとでQBとして活躍し、後にコーチとなって支えた。2003年に監督に就任すると、大学日本一を決める甲子園ボウルに5度の出場を果たす。昨年は27年ぶり21度目の日本一に導いた名将である。

 監督であると同時に、日大卒業後は大学に就職した職員でもある。保健体育事務局長という役職から、理事を経て、現在は5人しかいない常務理事となっている。日大関係者が明かす。

「内田さんは出世街道を歩んできた“日大エリート”です。日大には体育会の入部人数や予算を差配する保健体育審議会があり、その事実上のトップが内田さん。前トップが今の田中英壽理事長で、このポジションは日大の出世コースといわれています。

 内田さんは人事部長も兼ねていて人事権も持つ。学内では田中理事長の側近と見られており、“理事長に万一のことがあれば次は内田”といわれている実力者です」

 アメフト部の監督は辞任したが、大学の常務理事という立場は続くことになる。

【私の論評】日大理事会は真摯さに欠ける理事を全員辞任させよ!さもなければ、組織が完全腐敗し、いずれ崩壊する(゚д゚)!

スポーツの世界では、スポーツ・インテグリティ(sports integrity)ということが最近いわれています。

これは、何かといえば、だいたい以下のことに集約されます。

1.「インテグリティ」とは、「高潔さ・品位」「完全な状態」を意味する言葉。 
2.スポーツにおけるインテグリティ(スポーツ・インテグリティ)とは、「スポーツが、様々な脅威により、欠けることなく、価値ある高潔な状態」。 
3.本来、スポーツには、人々を幸福にして、社会を善い方向に導く力があるといわれている。スポーツが本来持つ力を発揮するためには、誠実性・健全性・高潔性が守られていることが前提。
以下に、このスポーツ・インテグリティを脅かす要因についてのチャートを掲載します。



今回の事件はスポーツ・インテグリティを脅かすものであって、その結果あのような事件が起こってしまったものです。

スポーツ・インテグリティに関しては、笹川財団の行った昨年のセミナーのレジメが詳しいです。
「スポーツ・インテグリティについて考える」 

そうして、今回の事件では、スポーツ・インティグリティの毀損の理由としてガバナンスの欠如についてはあまり報道されていません。これに関しては、日大自体のガバナンスの欠如、それと学生スポーツそのものをガバナンスする機構が欠けているということをこのブログでは指摘しました。おそらく巷の報道よりは、かなりガバナンスについて突っ込んだものになっていると思います。

それに関する記事のリンクを以下に掲載します。
日大悪質タックル問題 醜聞にまみれた米名門大の「前例」―【私の論評】我が国では大学スポーツという巨大資源をガバナンスの範疇から外し腐らせている(゚д゚)!
日大選手の記者会見 

詳細はこの記事をご覧いただくものとして、この記事では、日本では学生スポーツ全体をガバナンスする機関もなく、日大のガバナンスにも問題があること、特に内田正人氏が、日大の常務理事と監督を兼任していたことが問題であることと、日大自体のガバナンスの正当性に問題があること等を指摘しました。

この記事では、ガバナンスとはそもそも何かというその定義や、あるべき姿なども掲載しました。

また、ガバナンス(統治)の正当性については、以下のようにまとめました。
社会においてリーダー的な階層にあるということは、本来の機能を果たすだけではすまないということである。成果をあげるだけでは不十分である。正統性が要求される。社会から、正統なものとしてその存在を是認されなければならない。
そのような正統性の根拠は一つしかない。すなわち、人の強みを生かすことである。これが組織なるものの特質である。したがって、マネジメントの権限の基盤となるものである。 
そうして、この記事では述べませんでしたが、ガバナンスの正当性の根拠である「人の強みを活かす」ことであることはかなり重要なことです。そうして、この点を理解していないマネジメントも多いです。

そうして、これはマネジメントするもの、すなわちマネジャーのインテグリティに多いに関わっています。インテグリティは、スポーツ界はもとよりありとあるゆる組織のマネジャーに必要不可欠な資質なのです。

「インテグリティ」(integrity)とは誠実、真摯、高潔、整合性などの概念を意味する言葉です。組織のリーダーやマネジメントに求められる最も重要な資質、価値観を示す表現として、特に欧米の企業社会でよく使われます。

あらゆる組織のーのインテグリティ(誠実さ)を最優先し、法令順守だけでなく、より幅広い社会的責任の遂行と組織の倫理の実践を目指す広義のコンプライアンス経営を、インテグリティ・マネジメントと呼びます。

米国企業の経営方針や社員が守るべき行動規範を記した文面には、「インテグリティ」という言葉が頻繁に使われています。「人を雇うときは三つの資質を求めるべきだ。すなわち、高潔さ、知性、活力である。高潔さに欠ける人を雇うと、他の二つの資質が組織に大損害をもたらす」(スティーブ・シーボルト著『一流の人に学ぶ自分の磨き方』より)と語ったのは、世界一の投資家と呼ばれるウォーレン・バフェット氏です。

ここで「高潔さ」と訳されている概念がインテグリティです。インテグリティを伴わない知性や活力は危険でさえあり、それならばいっそ愚かで怠惰な人間を雇うほうがましだと、バフェット氏は主張しています。


この言葉を好んで用い、インテグリティこそが組織のマネジメントを担う人材にとって“決定的に重要な資質”だと喝破したのが、経営学の大家ピーター・ドラッカーでした。ドラッカーはたとえば著書『現代の経営』で、次のように語っています。
マネジャーが学ぶことのできない資質、習得することができず、もともと持っていなければならない資質がある。(中略)それは、才能ではなく真摯(integrityの日本語訳)さである。 
部下たちは、無能、無知、頼りなさ、不作法など、ほとんどのことは許す。しかし、真摯さ(integrity)の欠如だけは許さない。 
真摯さ(integrity)に欠けるものは、いかに知識があり才気があり仕事ができようとも、組織を腐敗させる。
三番目の言葉には、先述したバフェット氏の指摘との共通性も感じられます。とはいえ、「高潔さ」「真摯さ」といわれても、あまりに漠然としていて、いまひとつピンとこないのも事実です。

人を雇ったり、リーダーを選んだりする場合、要するに、インテグリティに優れた人とはどういう人のことなのか、具体像がこの言葉だけからではつかみにくいです。

実はドラッカー本人でさえ、「インテグリティの定義は難しい」と語っています。ただし、“インテグリティの欠如”を定義するのは難しくないとしています。ドラッカーは、インテグリティの欠如した人物の具体例を、『現代の経営』中で次のように列挙しています。
  • 人の強みではなく、弱みに焦点を合わせる者
  • 冷笑家
  • 「何が正しいか」よりも「誰が正しいか」に関心をもつ者
  • 人格より頭脳を重視する者
  • 有能な部下を恐れる者
  • 自らの仕事に高い基準を定めない者
上記のような者は、たとえ他の何かが優れれていたとしても、真摯さ(integrity)に欠け、組織を腐らせるとしています。

マネジメントの担い手としてインテグリティに優れた人材を充てようと思ったら、逆に、このような“インテグリティの欠如”を物語る特徴にフォーカスして人を判別すべきだと思います。

ドラッカーは「真摯さ(integrity)は習得できない。仕事についたときにもっていなければ、 あとで身につけることはできない。 真摯さはごまかしがきかない。 一緒に働けば、その者が真摯であるかどうかは数週間でわかる。 部下たちは、無能、無知、頼りなさ、無作法など、 ほとんどのことは許す。しかし、真摯さの欠如だけは許さない。 そして、そのような者を選ぶマネジメントを許さない」としています。

さて、日大の内田正人常務理事はどうなのでしょうか。会見などでの発言を聴いている限りでは、真摯さに欠ける面があるようにも、思われます。

日大の理事会は、内田氏に限らず、理事の中に真摯さに欠ける人間がいるかどうかを精査すべきです。ドラッカーが指摘するように、理事会にともに他の理事働いたことのある理事は、すでにそれを判別できるはずです。



日大理事会は、真摯さに欠ける理事がいたら、すぐにもそのような人物は辞任させ、真摯さに欠けない人間だけで、理事会を構成するようにして、今一度スポーツだけではなく、すべての分野においての統治機能を強化するべきです。それが今回の不祥事のようなことを起こらないにするための第一歩です。

これをしなければ、日大の組織は完璧に腐敗し、いずれ崩壊することになります。なぜなら、どんな組織も社会が許容するから存続が許されているのであり、社会が許容しなければ、どんな巨大組織であっても一夜にして崩壊するからです。

現状を放置すれば、やがて日大もそのような運命をたどることになるでしょう。

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2017年8月23日水曜日

イオンまた値下げ 「インフレ目標で価格決めない」 ―【私の論評】真摯に市場の声を聴けば今の日本経済が見えるはず(゚д゚)!

イオンのチラシ
イオンは23日、グループのスーパー2800店舗で25日から、プライベートブランド(PB)の食品や日用品114品目を値下げすると発表した。値下げ幅は平均で10%程度。同社は昨秋と今春にも合わせて約520品目を値下げした。継続的な値下げで低価格をアピールし、節約志向の消費者の需要を喚起する。

 値下げの対象は食品88品目、酒類7品目と日用品19品目。パック入りのご飯を29円安い429円、レギュラーコーヒーを108円安い753円などに値下げする。

 イオンの三宅香執行役は値下げの理由を「低価格への意識が強い消費者のニーズに応えるため」と説明した。物流の効率化や店舗拡大のスケールメリットによる原価低減を値下げに充てたという。日銀は2%の物価上昇を目標に掲げるが、脱デフレの動きは鈍い。三宅執行役は「インフレターゲットを意識しながら価格を決める小売業はない。我々は顧客のニーズだけを見ている」と述べた。

【私の論評】真摯に市場の声を聴けば今の日本経済が見えるはず(゚д゚)!

イオンは今年4月11日にも、傘下のスーパー400店で、食品や日用品の最大254品目を4月17日から順次値下げすると発表していました。値下げ幅は平均で10%程度。全体の品目数からするとごくわずかにすぎないものの、同社は昨秋から順次、プライベートブランド(PB)とメーカー品を合わせて約270品値下げするなど、定番商品の価格引き下げを続けています。

4月に値下げしたのは、総合スーパー(GMS)のイオンリテールが販売するメーカー品が約240品目、グループ共通で扱うPBが15品目。メーカー品では税抜き98円で販売している菓子パンを88円に、同235円の歯ブラシを215円に引き下げました。PBでは「トップバリュ天然微炭酸の水」を税込み149円から105円ににしました。


イオンリテールの岡崎双一社長は昨年10月、子育て世代など、節約志向が強い層の客離れが起きているとして「強烈な売価訴求」を重要課題に掲げました。メーカー品の価格見直しは半年ごとなど定期的にしており、「社会保障負担などが高まる春に合わせ、日用必需品を買いやすくする」(広報)としていました。

この4月の値下げととともに、今回の値下げで、約520品目を値下げしたことになります。この動きは、イオンだけではありません。

今年の春以降に、大規模な値下げをした企業は他にもあります。 代表的なものを見るとセブン-イレブンでは、日用雑貨品61品目を値下げしました。 これは実に、8年ぶりとなりました。

最大手のセブン-イレブンでの値下げは、またたく間に小売りの現場に広がりました。 例えば、ローソンでは、「シャンプー」を21円値下げするなど、およそ30品目を5%前後下げました。ファミリーマートもこの「柔軟剤」など、25品目値下げしました。

「値下げの春」などと大きな話題になりましたね。 晩夏を迎える今、こうした春先から続いている値下げの動きは、さらに広がりを見せています。

イオンの三宅執行役は「インフレターゲットを意識しながら価格を決める小売業はない。我々は顧客のニーズだけを見ている」と述べたいますが、まさにそのとおりです。

先日は、数字的な裏付けから、日本では未だ緊縮財政で脆弱なわが国経済の実情を掲載しました。上のような事実をみるとこの記事で主張したことがさらに正しかったことが裏付けられたものと思います。当該記事のリンクを以下に掲載します。
日本を完全雇用・適度なインフレに導く、極めて効果的な方法があった―【私の論評】数字を見ればわかる、未だ緊縮財政で脆弱なわが国経済(゚д゚)!
以下に、この記事で掲載したグラフを再掲します。

この記事より、このグラフの解説を以下に再掲します。
今回は、実質成長が「6期連続」で、かつ、それが「11年ぶりだ」なのではありますが、だからといってこれだけで、すぐに、今景気は良いという判断にはなりません。
なぜなら、「実質成長率」は、「デフレが加速してデフレータ(物価)が下落」すれば、上昇するものだからです。つまり、「実質成長率は、デフレの深刻さの尺度」にすらなり得るのです! 
実際、上記グラフからも明白なとおり、消費増税以降、デフレータは下降し続け、今やマイナス領域を推移しています(黄色)。
これこそ、「6期連続、実質成長率がプラス」となった理由です。実際、このグラフに示した「名目成長率」(前年比・青線)は、今期こそ、僅かに上昇傾向を見せていますが、ここ最近、ゼロ近辺を推移しているということ、つまり、「成長していない」事を示しています! 
日本経済は、本格的な好景気状況からはほど遠い状況にあるのです。 
にもかかわらず、2017年4~6月期GDPは年率4.0%増、プラスは6四半期連続となったり、名目GDPの成長率も年率4.6%と好調となり、名目が2四半期ぶりにプラスになっています。

この理由は簡単に理解できます。その一部の理由は、「公共投資は5.1%増-補正予算の効果でプラスに寄与」というものです。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-08-13/OUAL466S972801

一年前の昨年夏に調整した、アベノミクスにおける「大型景気対策」の効果がようやく効き始めた、と言うのが、「今期」における一部良好な数字の原因の一つです。

さらに、以下のよう要因もあります。
①ここ2、3年間、外需が伸びてきた事を受けて、外需関連企業の収益が改善した、 
②その影響を受け、ここにきてようやく、民間企業がトータルとして「内部留保」を縮小させ、消費と投資を拡大しはじめる程に景気が改善してきた。 
③これを受けて、ようやく(物価の力強い上昇は達成されていないものの──)「名目GDP」も上向き始めた──。
つまり、今の「よい数字」を導いた基本的な原因は「外需」だったわけであり、それがここにきてようやく、民間企業の力強い成長に結びついてきた、と言うことです

さらに、高橋洋一氏は、この記事の元記事で、日本の構造的失業率は2%半ばであり、まだ日本は完全雇用に達していないということを数字的裏付けをもとに主張しています。

この状況に対応して、イオンなどのスーパーや、コンビニなどの業態が値下げに次ぐ値下げ政策を実行しているというわけです。

日本銀行は7月20日の金融政策決定会合で、物価上昇2%達成時期を「2018年度ごろ」から「19年度ごろ」に先送りしました。

日本の経済の中身をみると、このようにまだまだ、物価目標も道半ばである、完全雇用の状況にもなっていないし、何よりもGDPデフレータがマイナスであることから、どう考えても未だデフレから脱却したとは言い難い状況です。

この状況では、増税などとんでもない悪手であり、減税をするか大型補正予算を組むなどで積極財政を実施するのは当然であり、物価目標すら達成できない現状では、追加の量的緩和も実行すべきです。

茂木敏充経済再生担当相
この状況で、茂木敏充経済再生担当相は、記者会見で今回のGDP速報について「率直にいい数字だと思っている」との認識を示し、「内需主導の経済成長が続くように万全の対応をしていきたい」と強調した。一方で、「現段階で具体的に新たな経済対策は想定していない」とも語っていました。

これは、全くの間違いです。これは、数値的な分析をさほどしなくても、ブログ冒頭の記事にあるように、イオンが値引きに次ぐ値引きをしているとか、イオンだけではなく、他のコンビニもそうしていることの意味を良く考えれば理解できることです。

政治家は本来このような声を読みとつていかなければ、ならないはずであり、それができないというのならいずれ有権者からそっぽを向かれてしまいます。

かといつて、現状の自民党以外の野党は、ほとんどが実体経済を理解していないという状況です。まだ、自民党のほうがましというお寒い状況です。だから、次に選挙があっても、受け皿になれる野党が存在しないという状況です。

民進党は、代表戦をする予定になっていますが、代表戦に出馬す前原氏も、枝野氏も経済にはうとすぎます。
民進党代表選の公開討論会で、記者の質問に答える枝野元官房長官。
左は前原元外相=22日午後、東京・内幸町の日本記者クラブ
そうして、若狭氏が立ち上げた政治団体「日本ファーストの会」ですが、正直なところ何をしたいのか分かりにくいです。「自民党対抗の受け皿」としての国政政党ということのようですが、若狭氏はほんの少し前まで自民党員でした。昨年10月の衆院補選では自民党公認として当選し、その後離党しました。

せめて補選の前に離党していれば、大義名分は立っていたのでしょうが、その意味では政治判断を誤ったといわざるを得ないです。こうしたことは、その後の政治活動に影響するので、若狭氏主導の「日本ファーストの会」の先行きは必ずしも明るいといえません。さらには、若狭氏も経済にはうといようで、経済対策とし具体的に何をやるのかなど目立った主張はありません。

何をしたいのか良く理解できない若狭氏
このまま日本経済が放置されれば、市場関係者や流通関係者から怨嗟の声があることになります。またデフレに舞い戻れば、自民党はさらに支持を失うことでしょう。

その時に、経済を理解した野党がでてくれば、それが受け皿になるのは必定です。

その意味では自民党も油断していれば、先はないです。一番良いのは、安倍首相が初心に立ち返って、追加金融緩和と積極財政を実施し、デフレから早期に脱却することです。そのことを少なくとも、自民党の幹部連中が理解すれば、安倍政権は一強どころか、特強状況になれると思います。

なぜなら、今後経済で目立った失敗がなくなるからです。これは、とてつもなく大きなことです。特に、過去にデフレで20年以上も苦しんできた日本です。

デフレにならないということだけでも、すごいことになります。しかし、これは本来そんなに難しいことではないはずです。不景気というならまだしも、デフレは経済の癌であって、異常事態です。本来このような状態が長く続くのは異常中の異常です。

にもかかわらず、どうして日本ではデフレが長期間続いてきたかとといえば、財政や金融政策が間違えていたからです。このことに一日もはやく政治家に気づいていたただきたいです。

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