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2025年8月7日木曜日

【日米関税交渉】日本だけ「優遇措置」が文書に書かれなかった──EUとの差を生んだ“書かせる力”の喪失


まとめ

  • 日本への新関税15%は、日米で説明が食い違い、米国側文書には日本に関する軽減措置が一切明記されていない。
  • EUは防衛費GDP比5%への増額を制度として明記し、米国との協力を「文書化」することで関税軽減を勝ち取ったが、日本は口頭レベルの曖昧な合意にとどまった。
  • 石破政権は中国寄りの姿勢と保守派排除によって、外交・通商・安全保障の専門性を喪失し、米国との交渉力も著しく低下している。
  • 安倍政権は日米同盟や貿易協定で米国に明文化させる「書かせる力」を発揮しており、その外交スタイルと胆力の違いが際立つ。
  • 「書かせる力」を失った今の日本外交では、国民や企業が代償を負う構造が続く。国家の信頼を守るには、再び文書化させる胆力と構想力が必要である。
2025年8月7日、トランプ政権は日本からの輸入品に最大15%の関税を正式に発動した。対象は電子部品、自動車部品、農産品など。再選を果たしたトランプ大統領の「アメリカ第一主義」が、同盟国とされる日本にまで容赦なく牙を剥いた。

日本政府は日米合意の直後、関税の運用方針として「15%未満の関税は15%に引き上げ、15%以上の関税は据え置き」と説明していた。自動車関税についても、現在の27.5%から15%に引き下げられるとアナウンスされた。

しかし、問題はその“合意”の中身にある。米国側の大統領令や通商当局の文書には、日本に対する軽減措置が一切記載されていなかったのだ。EUについては関税緩和の明記があったにもかかわらず、日本だけが書かれていない。「書かれなかった約束」こそが、日本外交の最大の落とし穴であった。
 
🔳「書かせる交渉力」の欠如が明暗を分けた
 
この不平等の根底には、日本の外交姿勢の問題がある。日本は長年、アメリカに対して過剰なまでに低姿勢を貫いてきた。安全保障で依存し、経済でも譲歩を繰り返す。米国にとって、日本は「押せば引く」都合の良い交渉相手と化している。


対照的に、EUは自らの立場を制度で明示した。イランの核開発に対し、アメリカが軍事的に行動したことを受け、NATO加盟国は防衛費をGDP比5%まで引き上げると明文化した。これは単なる数字の約束ではない。「米国と運命を共にする」という政治的意思を制度で示した結果、EUには関税の緩和措置が文書として確保された。

一方の日本は、防衛費の2%目標すら「将来的に目指す」という曖昧な表現にとどまり、具体的な制度設計も示さなかった。これでは信頼も得られなければ、譲歩も勝ち取れない。

さらに石破政権の問題も大きい。政権発足以来、中国との融和姿勢を強め、保守派を冷遇。外交・通商・安全保障の専門家たちが次々と排除された。その結果、交渉の現場には理念も経験も乏しい人物ばかりが並ぶこととなった。これでは「書かせる」どころか、「聞き返す」ことすらままならない。
 
🔳安倍政権が体現した「書かせる力」とは何だったか
 

今の外交がここまで無力化したのは、かつて存在していた交渉力を失ったからだ。安倍晋三政権こそ、「書かせる外交力」を体現した時代である。

2017年、安倍政権はトランプとの首脳会談で「日米同盟は地域の平和と安定の礎である」とする文言を、共同声明に書かせた。2019年の日米貿易協定では、農産品の関税水準が「TPP以上にはならない」との条項を文書に明記させた。これにより国内の農業団体の反発を抑え、外交成果として堂々と発表することができた。

ここにあるのは、「言った言わない」では済まされない世界で戦うための力である。発言を紙に書かせ、署名させ、国際社会に示す。これこそが国家の信頼であり、外交交渉における本当の成果だ。
 
🔳書かせる力を失った国に、未来はない

今回の「書かれなかった約束」は、日本がもはや交渉の場で尊重されていないという厳しい現実を突きつけた。制度で示す意思もなく、言葉を文書に落とす力もない。その代償を払わされているのは、日本の企業であり、国民である。

「交渉力」とは、声を荒らげることではない。紙に書かせる力こそが、国家の尊厳を守るのだ。かつてそれができた日本に、いま必要なのは、再び世界に対して書かせるだけの胆力と構想力である。書かせる力を持たない国に、未来はない。

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2025年7月11日金曜日

中国の軍事挑発と日本の弱腰外交:日米同盟の危機を招く石破首相の矛盾

 まとめ

  • 中国の挑発行為:2025年7月9日・10日、中国軍のJH7戦闘爆撃機が東シナ海上空で航空自衛隊のYS11情報収集機に最短30メートルまで異常接近。6月にも同様の接近があり、9日には空対空ミサイルとみられる物体が確認された。
  • ドイツのレーザー照射事件:2025年7月2日、紅海のEU「アスピデス」作戦で、ドイツの偵察機が中国海軍からレーザー照射を受けた。ドイツは大使を召喚し強く非難。
  • 日独の対応の違い:日本は外交ルートで懸念を伝えるにとどまり、大使召喚や公開非難を避けた。ドイツは断固とした抗議を行い、EU・NATOを背景に強硬姿勢を示す。
  • 石破首相の発言:2025年7月9日、石破首相は参院選演説でトランプの25%関税政策に「なめられてたまるか」と反発。選挙向けの強硬姿勢だが、中国への対応は穏便。
  • 日米同盟への影響:日本の対中弱腰と対米強硬の矛盾は、米国から「同盟を軽んじている」と受け取られるリスクがある。トランプは日米安保を「不公平」と批判し、同盟の基盤が揺らぐ懸念がある。
2025年7月、中国の傍若無人な行動が日本とドイツを揺さぶった。東シナ海では航空自衛隊の機体が中国軍機に異常接近され、紅海ではドイツの偵察機がレーザー照射を受けた。日本の対応は穏便、ドイツは断固。一方、石破茂首相は米国への強硬姿勢を打ち出しながら、中国には及び腰だ。この矛盾は日米同盟を危うくする。事態の真相とその裏に潜む危機を追う。
中国の挑発、日本とドイツの試練

YS-11EB 電波情報収集機

2025年7月9日と10日、東シナ海上空で航空自衛隊のYS11情報収集機が中国軍のJH7戦闘爆撃機に追い詰められた。9日、15分間にわたり最短30メートルまで接近。10日も10分間、最短60メートルまで迫られた。YS11は電波情報を集める特殊機体だ。9日にはJH7の翼下に空対空ミサイルらしき物体が確認された。6月7日・8日にも海上自衛隊の哨戒機が同様の接近を受けている。被害はなかったが、衝突の危険は明らか。日本政府は中国に懸念を伝え、再発防止を求めたが、強い非難はなかった(出典:Nippon.com)。

EUの新たな紅海での作戦「アスパイド作戦」

一方、7月2日、紅海でEUの「アスピデス」作戦に参加中のドイツ偵察機(MSP)が中国海軍の軍艦からレーザー照射を受けた。「アスピデス」は紅海の商船をフーシ派の攻撃から守り、航行の自由を確保する任務だ。ドイツ国防省は「乗員と任務が危険にさらされた」と断じ、外務省は中国大使を召喚。「許しがたい」と声を上げた。任務は中断、機体はジブチに着陸したが、EUの安全保障に暗雲が垂れ込めた。中国は「事実無根」と否定したが、ドイツの対応は揺るぎなかった(出典:Reuters)。

日独の対応、明暗を分ける

佐藤正久参議院議員

日本の対応は慎重すぎる。外務省は電話で懸念を伝え、再発防止を求めたが、大使召喚や公開非難は控えた(出典:India Today)。ドイツは対照的だ。中国大使を呼び出し、公式声明で非難の声を響かせた(出典:The Guardian)。佐藤正久参議院議員は「日本の曖昧さは安全保障を弱める。ドイツの明確な姿勢を見習うべきだ」と喝破する(@SatoMasahisa, 2025年7月10日)。日本の遠慮は中国との経済・外交関係への配慮か。ドイツはEUとNATOの後ろ盾で強気に出る。この差は国の立ち位置を映し出す。

石破首相の矛盾、同盟の危機

石破茂首相は7月9日の参院選演説で、トランプ米政権の25%関税政策に噛みついた。「国益をかけた戦いだ。なめられてたまるか」と吠えた(出典:India Today)。選挙向けの強気な言葉だが、米国との交渉を意識したものだ。しかし、中国の領海侵犯や軍機接近には穏便な対応に終始。佐藤正久は「中国には弱腰、米国には強気。この矛盾は日本の安全保障を危うくする」と断じる(@SatoMasahisa, 2025年7月10日)。


トランプは日米安保条約を「不公平」と切り捨て、貿易と安全保障を絡める(出典:Bloomberg, 2025年3月7日)。日本の対米強硬姿勢は同盟に亀裂を生む。Reutersは「日本の発言は緊張を高める」と警告する(Reuters, 2025年7月7日)。対中の弱腰と対米の強硬の矛盾は、米国から「同盟を軽んじている」と受け取られかねない。日米同盟の基盤が揺らぐ危機は、決して小さくない。

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参政党・神谷宗幣の安全保障論:在日米軍依存の減少は現実的か?暴かれるドローンの落とし穴  2025年7月9日
神谷のビジョンは情熱的だが、情熱だけでは足りない。私が気づくようなドローンの落とし穴を放置し、専門家からも批判されるようでは、参政党の未来は危うい。

トランプの関税圧力と日本の参院選:日米貿易交渉の行方を握る自民党内の攻防 2025年7月8日
日本の未来は、参院選の結果と自民党内の力のせめぎ合いに懸かっている。トランプの強硬策にどう立ち向かうか。日本は今、試されている。

トランプの「公平」に挑む英国の勝利と日本の危機:石破退陣でTPPを世界ルールに! 2025年7月2日 
日本は関税の危機を跳ね返し、自由貿易の旗手として世界に立つ。トランプ氏の「公平」を逆手に取れ。日本にその力はある。

参政党の急躍進と日本保守党の台頭:2025年参院選で保守層の選択肢が激変 2025年7月6日
保守派も含めた有権者の政治への熱が、今回の選挙戦をさらに激化させるだろう。

2025年東京都議選の衝撃結果と参院選への影響 2025年6月23日
東京都議選の結果は、来るべき参院選への重要な示唆を与える。国会での与野党の力関係が拮抗すれば、より活発な政策議論が期待され、国民にとってより良い政治環境が整うだろう。

2025年7月9日水曜日

参政党・神谷宗幣の安全保障論:在日米軍依存の減少は現実的か?暴かれるドローンの落とし穴

まとめ

  • 神谷宗幣の発言と参政党の政策は、在日米軍依存の減少を目指す点で一致。
  • 私が指摘する神谷の盲点は、ドローンやAIに偏重し、索敵能力や情報統合能力を見落としていること。
  • ウクライナの「蜘蛛の巣」作戦やイスラエルの対イラン攻撃は、索敵と情報統合が現代戦の鍵であることを示す。
  • 高橋洋一は神谷の安全保障理解を「幼稚園レベル」と批判し、党首の資質に疑問を投げかける。
  • 神谷の専門性欠如は、参政党の信頼性と選挙での支持に影響を与える可能性がある。

参政党の神谷宗幣代表

参政党の神谷宗幣代表が打ち出す安全保障論は、日本の自主防衛を掲げ、在日米軍への依存を減らす大胆なビジョンだ。しかし、その主張には私のような一般人でも気づく致命的な穴がある。2025年参院選を前に、この問題は党の信頼性や神谷の指導力を揺さぶっている。以下で、その核心を明らかにする。

神谷の主張と参政党の政策:米軍依存からの脱却

2025年7月6日、ニコニコ動画の「ネット党首討論 参院選2025」で、神谷は日本の国防が在日米軍に頼りすぎていると問題視した。段階的な米軍撤退と日米地位協定の見直しを訴え、軍事費増強には慎重な姿勢を示した。高額な外国製武器購入を批判し、サイバー戦争対策、スパイ防止法、AIやドローンの活用を優先すべきだと力説した。特に、プロゲーマーを起用したドローン部隊の創設や国産兵器の開発を提案し、専守防衛を前提に内需拡大につながる軍拡なら支持すると述べた。

ヘグセス米国防長官(右)と中谷防衛相(3月30日)

この発言は、日米集団防衛体制を揺さぶるものと受け止められる可能性がある。参政党の改定憲法草案に「外国軍の駐留や基地設置を禁止する方針が明記されている」という情報は、2025年初頭の情報源(例:Wikipedia, 2025-07-03)やX上の投稿(例@kogurenob, 2025-07-07)で確認されていた。しかし、最新の調査(2025年7月9日時点)では、参政党の公式サイト(参政党公式サイト)や最新の政策カタログ(参政党政策カタログ)にこの記述は見当たらない。Xの投稿(例:@tohgafujita, 2025-07-07)によると、この方針が選挙戦での批判や外交上の現実的配慮により削除された可能性が指摘されている。ただし、削除の公式発表や理由は不明であり、党の公式見解を確認する必要がある。神谷の発言は引き続き米軍依存の脱却を訴えており、過去の草案と一致していた時期があったことは事実と見なせる。これは、日本の安全保障はもとより、アジア太平洋地域、いや世界の安全保障から言ってもあり得ない認識と言わざるを得ない。

神谷の盲点:ドローン偏重の落とし穴

神谷はドローンやAIの軍事活用を声高に叫ぶが、現代戦の核心である索敵能力(人的・電波など・公式資料からの情報収集能力)や情報統合能力には一切触れていない。私のような一般人でも、この見落としは明らかだ。ウクライナの「蜘蛛の巣」作戦は、ドローン攻撃の成功例だが、ウクライナ軍と米軍の高度な索敵能力と情報統合能力が支えた。

イスラエルによる対イラン攻撃も、精密な索敵と情報統合が鍵だった。敵を見つけられなければ、どんなドローンや兵器も無力だ。索敵能力があっても、情報が統合されなければ軍事力は機能しない。神谷がこの基本を見落としているのは、彼の安全保障論が表面的である証拠だ。ドローンは軍事的には、道具にすぎない。

専門家の批判と選挙への影響:信頼性の危機

高橋洋一チャンネル

経済学者で安全保障に詳しい高橋洋一氏は、YouTube動画(高橋洋一チャンネル)で、神谷の主張を「幼稚園レベル」「安全保障0点」「国際舞台に立てない」 「政党の代表どころか、議員としても相応しくない」と一刀両断した。高橋氏の批判は、私が感じた神谷の知識不足を裏付ける。安全保障は国家の命運を握る。党代表が基本を見誤るのは、党の信頼を揺さぶる。神谷のビジョンは情熱的だが、情熱だけでは足りない。私が気づくようなドローンの落とし穴を放置し、専門家からもその安全保障感を批判されるようでは、参政党の未来は危うい。日本は米国との同盟を基盤に安全保障を構築している。米軍撤退は地域の安定を崩しかねない。選挙戦で有権者がどう判断するか、注目が集まる。 【関連記事】

トランプの関税圧力と日本の参院選:日米貿易交渉の行方を握る自民党内の攻防 2025年7月8日
日本の未来は、参院選の結果と自民党内の力のせめぎ合いに懸かっている。トランプの強硬策にどう立ち向かうか。日本は今、試されている。

トランプ関税30~35%の衝撃:日本経済と参院選で自民党を襲う危機 2025年7月3日
日本の防衛費増への消極姿勢や中国寄りの経済協力が、トランプの不満を煽り、交渉を複雑化させる。歴史的傾向、現在の政治的脆弱性、選挙直前のタイミングを考えれば、支持率低下は確実だ。

トランプの「公平」に挑む英国の勝利と日本の危機:石破退陣でTPPを世界ルールに! 2025年7月2日
日本は関税の危機を跳ね返し、自由貿易の旗手として世界に立つ。トランプ氏の「公平」を逆手に取れ。日本にその力はある。

保守派も含めた有権者の政治への熱が、今回の選挙戦をさらに激化させるだろう。

2025年東京都議選の衝撃結果と参院選への影響 2025年6月23日
東京都議選の結果は、来るべき参院選への重要な示唆を与える。国会での与野党の力関係が拮抗すれば、より活発な政策議論が期待され、国民にとってより良い政治環境が整うだろう。

2025年7月8日火曜日

トランプの関税圧力と日本の参院選:日米貿易交渉の行方を握る自民党内の攻防

まとめ
  • トランプ大統領は2025年7月7日、日本に25%の関税を課す書簡を石破総理大臣に送り、貿易赤字是正と米国内製造促進を狙う。
  • 日本の参院選(7月20日)は交渉に影響を与え、米国財務長官が選挙を「日本の制約」と指摘。
  • 自民党内の農業保護派は農産物譲歩に反対し、参院選敗北で主導権を握れば交渉が難航する。
  • 「自由で開かれたインド太平洋戦略本部」が主導すれば、自由貿易を推進し、米国に外交的対抗を試みる。
  • 参院選結果と自民党内の力学が交渉の行方を左右し、日本は日米同盟と国内バランスの間で試される。
トランプの関税通知と日本の動向

記者会見で、トランプ米大統領から石破茂首相への関税に関する書簡を示すレビット報道官

2025年7月7日、トランプ米大統領は日本の石破茂首相に書簡を送り、8月1日から日本製品に25%の関税を課すと宣言した。この書簡は、米国が抱える対日貿易赤字を叩き潰し、米国内の製造業を復活させるための強烈な一撃だ。書簡はTruth Socialで公開され、韓国の李在明大統領にもほぼ同じ内容が送られた。以下はその全文だ。(日本語訳はこの記事一番最後「続きを読む」に掲載します)

Letter to Prime Minister Shigeru Ishiba of Japan
Dear Prime Minister Ishiba, 
For many years, the United States has experienced a long-term, and very persistent, Trade Deficit with Japan. Starting on August 1, 2025, we will charge Japan a Tariff of only 25% on any and all Japanese products sent into the United States, separate from all Sectoral Tariffs. Goods transshipped to evade a higher Tariff will be subject to that higher Tariff. If for any reason you decide to raise your Tariffs, then, whatever the number you choose to raise them by, will be added onto the 25% that we charge. There will be no Tariff if Japan, or companies within your Country, decide to build or manufacture product within the United States and, in fact, we will do everything possible to get approvals quickly, professionally, and routinely – In other words, in a matter of weeks.
We look forward to working with you as a Trading Partner for many years to come. If you wish to open your heretofore closed Trading Markets to the United States, and eliminate your Tariff, and Non Tariff, Policies and Trade Barriers, we will, perhaps, consider an adjustment to this letter. Please understand this 25% number is far less than what is needed to eliminate the Trade Deficit disparity we have with your Country. These Tariffs may be modified, upward or downward, depending on our relationship with your Country. You will never be disappointed with The United States of America.
Sincerely, Donald J. Trump President of the United States

この書簡は、米国の2024年対日貿易赤字(約685億ドル)を背景にしている。トランプは「America First」を掲げ、米国内の雇用と産業を守るため、関税を武器に日本に圧力をかける。書簡の言葉は直接的で、まるでビジネスの取引を持ちかけるような調子だ。「25%は控えめだ」と言いながら、報復関税にはさらに上乗せすると警告し、日本に市場開放や米国での工場建設を迫る。「数週間で承認する」と約束する一方、日本の市場を「閉鎖的」と批判する強烈な言葉も飛び出す。最後の「アメリカに失望することはない」という一文は、米国の力を誇示し、国内の支持者を鼓舞するパフォーマンスだ。

経済的には、この関税は日本の対米輸出(2024年で約1,480億ドル)に大打撃を与える。自動車や電子機器の価格が上がり、企業は利益を失うだろう。米国での工場建設を促す狙いはあるが、そんなものは一朝一夕にできるものではない。米国側でも、物価上昇や日本の報復関税(例えば米国の農産物に対する関税)のリスクがちらつく。政治的には、日米同盟にひびが入る危険があり、日本は交渉、報復、WTO提訴の三択を迫られる。だが、同盟の重みを考えると、慎重な対応を選ぶだろう。書簡の前提である「貿易赤字は悪」「関税で解決できる」という論理には、経済学者から疑問の声が上がる。サプライチェーンの混乱や国際貿易の停滞を招くリスクも見逃せない。

参院選と日本の交渉姿勢


2025年7月20日、日本の参院選が迫る。この選挙は日米貿易交渉に影を落とす。米国財務長官スコット・ベッセントは「選挙が日本の交渉を縛っている」と語り、トランプ政権が日本の国内政治を交渉の障害と見ていることを示した(出典:NHK WORLD-JAPAN News)。自民党の支持率は低下し、東京都議選での敗北が響く。農業界は自民党の強力な支持基盤だ。米国との交渉で農産物の市場を開けば、有権者の反発は避けられない。石破首相は板挟みだ。

自民党内部では、農業保護を主張する勢力が強い。森山裕委員長の「食料安全保障強化本部」は、米国からの米の輸入拡大に反対する決議を出し、小野寺五典政策調査会長も国内産業を守る必要性を訴える(出典:The Japan NewsThe Japan News)。もし参院選で自民党が敗れ、石破政権が弱体化すれば、農業保護派が交渉の主導権を握る可能性がある。そうなれば、農産物に関する譲歩はさらに難しくなる。

食料安全保障強化本部で挨拶する森山裕自民幹事長

一方で、「自由で開かれたインド太平洋戦略本部」(FOIP本部)が別の道を提示する。麻生太郎最高顧問が本部長を務め、高市早苗や茂木敏充ら約60人の議員が参加するこの本部は、2025年5月14日に再始動し、自由貿易と地域の安定を掲げる(出典:自民党NHK)。FOIP本部が主導権を握れば、自由貿易を推し進め、トランプの関税に外交的な反撃を試みるだろう。

CPTPPやRCEPといった多国間貿易枠組みを強調し、米国に自由貿易の価値を訴える可能性がある。だが、国内の農業保護派との対立は避けられない。麻生はトランプとの過去の対話経験を生かし、強気な交渉を展開するかもしれないが、農業界の反発を抑えるため、農業分野の譲歩は最小限にとどめる巧みなバランスを取るだろう。

自民党内の力学と交渉の行方

自民党の派閥は政治資金スキャンダルで解散したが、影響力は消えていない。安倍派、森山派、岸田派、二階派が名目上解散しても、非公式なネットワークは生きている(出典:The Mainichi)。農業保護派の森山や小野寺は、農業界の声を背に強硬な姿勢を崩さない。対して、FOIP本部は自由貿易と国際協力を重視し、日米同盟を地域戦略の基盤と見る。参院選の結果がこの力学を左右する。自民党が敗北し、農業保護派が勢いづいた場合、交渉は硬直する。一方、FOIP本部が主導権を握れば、自由貿易を軸にした柔軟な交渉が期待できる。

自民「自由で開かれたインド太平洋戦略本部」の初会合で挨拶する麻生最高顧問(5月14日、党本部)

FOIP本部が主導した場合、日本は単なる受け身の姿勢を脱し、積極的に日本のビジョンを打ち出すだろう。麻生の外交手腕、高市の経済安全保障の知見、茂木の貿易交渉の経験が活かされ、米国に自由貿易の重要性を訴える。だが、国内の農業保護派との衝突は避けられず、譲歩の範囲を巡る綱引きが続く。

結論:日本の選択と未来

トランプの関税は、日本に厳しい選択を迫る。経済的には輸出産業が苦しみ、政治的には日米同盟に亀裂が入る危険がある。参院選は日本の交渉姿勢を大きく左右する。ただ、現状では自民党が参院選で大敗しようがしまいが、米国との貿易交渉は当面自公政権が担うことになるだろう。自民党内の農業保護派が主導すれば、農産物の市場開放は進まず、交涉は難航する。一方、FOIP本部が主導すれば、自由貿易を掲げ、米国に堂々と対峙するだろう。だが、国内のバランスを無視すれば、政権はさらなる危機に瀕する。日本の未来は、参院選の結果と自民党内の力のせめぎ合いに懸かっている。トランプの強硬策にどう立ち向かうか。日本は今、試されている。

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トランプ関税30~35%の衝撃:日本経済と参院選で自民党を襲う危機 2025年7月3日

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〈提言〉トランプ関税にどう対応すべきか?日本として必要な2つの分野にもっと支出を!—【私の論評】トランプ関税ショックの危機をチャンスに!日本の柔軟な対応策と米日協力の未来 2025年4月21日

高橋洋一氏 中国がわなにハマった 米相互関税90日間停止 日本は「高みの見物」がいい―【私の論評】トランプの関税戦略は天才か大胆不敵か? 中国との経済戦を読み解く 2025年4月15日


2025年7月3日木曜日

トランプ関税30~35%の衝撃:日本経済と参院選で自民党を襲う危機

まとめ

  • トランプの関税引き上げ脅威:2025年4月に24%の「相互関税」を提案、7月9日までに合意がない場合30~35%に引き上げ。日本の貿易黒字(約8兆円)、農産物輸入制限、消費税への不満が背景。
  • 経済的影響:GDP成長率0.8%低下、自動車・鉄鋼産業に打撃。消費者物価上昇や失業増が予想され、6.3兆円の経済対策も長期化には不十分。
  • 参院選への影響:7月20日の参院選で自民党に逆風。少数与党で支持率低迷、交渉力不足が批判され、野党が攻勢。地方や農村部の支持離反リスク大。
  • 日本の姿勢と複雑化:EUと対照的に防衛費増に消極的、トランプの要求(3.5%)に及ばず。中国との経済協力(RCEPなど)が交渉を難航させ、不信感増幅。
  • 結論:関税発動なら自民党の議席減少確実。交渉成功や他の争点で逆風緩和の可能性もわずかにあるが、経済・外交への不信感が危機を高める。
ドナルド・トランプ米大統領が2025年に日本へ突きつけた30~35%の関税引き上げの脅威は、日本経済を揺さぶり、7月20日の参院選で自民党に強烈な逆風を吹かせる可能性がある。日本の現政権がEUと比べて防衛費増に消極的で、中国との経済協力を優先する姿勢が、トランプの不満を増幅し、交渉をさらに難しくしている。この問題は、単なる経済の話ではない。国民の生活と自民党の政治的命運を左右する火種だ。以下、関税問題の背景、経済と国民生活への影響、政治的波及効果を分析し、参院選への影響を明らかにする。


関税問題の背景とトランプの狙い

トランプ大統領は2025年4月、米国の貿易赤字を是正し、国内製造業を守るため「解放の日」に24%の「相互関税」を日本を含む主要貿易相手国に突きつけた。7月9日までに日米貿易協定がまとまらなければ、関税を30~35%に引き上げるという。日本との貿易黒字は約8兆円。トランプは日本の農産物、特に米の輸入制限や、消費税を「関税」とみなす主張で圧力を強める。自動車(すでに25%の関税)、鉄鋼・アルミニウム(50%)が主な標的だが、スマートフォンや半導体は現時点で除外されている。国際緊急経済権限法を盾に、トランプは貿易赤字を「国家緊急事態」と位置づけ、関税を交渉の武器とする。


地政学的な背景も見逃せない。トランプは貿易と安全保障を絡め、日本に米軍駐留経費の増額や米国製兵器の購入を要求。さらに、日本の対中経済協力、例えばRCEPや日中韓FTAの推進を「中国寄り」とみなし、牽制する意図がある。EU諸国がNATOを通じて防衛費をGDP比2%以上に引き上げ、米国製兵器購入を積極化する一方、日本の防衛費は2023年度でGDP比1.3%にとどまる。2027年までに2%を目指す計画も、トランプの要求する3.5%には遠く及ばない。この消極姿勢が交渉を複雑化させ、トランプの不満を煽っている。

経済と国民生活への打撃

石破首相と面会し、自動車産業支援を申し出る湯崎広島県知事

関税30~35%が発動されれば、日本経済は深刻な打撃を受ける。日本銀行は2025年の経済成長率予測を0.5%に下方修正し、関税の影響を見越して金利引き上げを見送った。石破茂首相はこれを「国家危機」と呼び、特に自動車産業など輸出依存型の経済への影響を懸念する。経済分析では、関税によりGDP成長率が0.8%低下し、企業収益の悪化、消費者物価の上昇、失業率の上昇が予想される(ブルッキングス研究所)。政府は6.3兆円の経済対策を打ち出し、中小企業支援や消費者保護を強化したが、関税が長期化すれば効果は限定的だ。特に地方経済や中小企業は影響を受けやすく、失業や収入減が国民生活を直撃する。

国民の不満はすでに高まっている。Xでは、トランプの関税を「脅迫」と非難する声や、消費税廃止を求める意見が飛び交う。しかし、日本のメディアは詳細な分析を怠り、芸能ニュースに埋もれがちだ。国民の関心が低いまま、経済的打撃が現実化すれば、自民党への怒りが一気に噴出するだろう。

参院選への政治的影響と自民党の危機

関税問題は、7月20日の参院選で自民党に強烈な逆風を吹かせる。自民党は2024年の衆院選で過半数を失い、少数与党として脆弱な立場にある。世論調査では、経済政策への不信感や民主主義への不満が広がり、石破首相の支持率は低迷している(ピュー研究所)。関税30~35%が発動されれば、政府の交渉力不足や外交失敗として批判が集中し、立憲民主党や日本維新の会がこれを攻撃材料に支持層を広げるだろう。特に、7月9日の関税期限が参院選直前であるため、国民の関心が高まり、経済的打撃が投票行動に直結する可能性が高い。

日本の選挙史を見ると、経済問題は与党の命取りだ。2009年の衆院選では、経済危機が自民党の政権交代を招いた。2024年の衆院選でも、経済政策への不満が野党支持を増やし、自民党は議席を失った(IISS)。関税による打撃は、地方有権者や農村部の支持基盤を直撃し、農業保護や物価上昇への懸念から離反が加速するだろう。日本の防衛費増への消極姿勢や中国寄りの経済協力が、トランプとの交渉を難航させ、国民の目には政府の弱腰外交として映る。これが自民党への不信感をさらに煽る。


ただし、逆風には限界もある。7月9日までに交渉が成功し、関税引き上げが回避されれば、石破首相の外交手腕が評価され、支持率が回復する可能性がある(CNN)。また、参院選で憲法改正や社会保障、防衛政策が関税問題を上回れば、自民党は影響を抑えられるかもしれない。しかし、トランプの強硬姿勢、日本の農業保護方針、防衛費増への消極姿勢、中国との経済協力による地政学的緊張が交渉を難しくしている。政府は生産拠点の多角化や国内経済強化を模索するが、インフレに苦しむ日本経済では報復関税は現実的ではない。国際的には、中国(最大145%の関税)、カナダ、メキシコ、EUも標的となり、貿易戦争のリスクが高まる。

関税30~35%が発動されれば、参院選での自民党への逆風は避けられない。経済的打撃と国民の不満が選挙結果に直結し、野党の攻勢で自民党の議席減少が予想される。日本の防衛費増への消極姿勢や中国寄りの経済協力が、トランプの不満を煽り、交渉を複雑化させる。歴史的傾向、現在の政治的脆弱性、選挙直前のタイミングを考えれば、支持率低下は確実だ。ただし、交渉成功や他の争点が浮上すれば、逆風は和らぐ可能性もある。しかし現時点では、経済と外交の失敗への国民の不信感が、自民党にとって最大の危機となる。

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2025年7月2日水曜日

トランプの「公平」に挑む英国の勝利と日本の危機:石破退陣でTPPを世界ルールに!

 まとめ

  • トランプの関税圧力: 2025年7月1日、トランプ氏は日本との貿易交渉で合意は難しいと断じ、自動車に30~35%の高関税を検討。日本のコメ輸入拒否が「不公平」と映り、7月9日の期限までに道筋は見えない。
  • 英国の「公平」の勝利: 英国は2025年5月9日の協定で関税緩和や牛肉輸出枠を確保。トランプ氏の「公平」(相互利益と相手尊重)を貫き、公式声明にその姿勢を明記し、交渉を成功させた。
  • コロンビアの教訓: コロンビアのペトロ大統領は不法移民送還を拒み、トランプ氏の「公平」に反し、25%関税を突きつけられた。日本の硬直姿勢も同様の批判を招く。
  • 石破の限界: 赤沢経済再生相を交渉司令塔に任命したが、石破氏の曖昧な対応はトランプ氏に通用しない。まともな交渉には石破氏の退陣と実行力あるリーダーが必要だ。
  • TPPで逆転: 日本はTPPを主導し、英国加盟で勢力を拡大。消費税廃止や米国資産買収で短期的な均衡を図り、TPPルールで世界を握り、トランプ氏の「公平」の信念に訴えるべき。
トランプの関税圧力と日本の危機

トランプ米大統領は2025年7月1日、日本との貿易交渉で強硬な姿勢を崩さなかった。エアフォースワンで記者団に語った。「日本との合意は難しい。おそらく無理だろう」。自動車など日本からの輸入品に30~35%、場合によってはそれ以上の高関税を突きつけた。これは4月に示した24%の関税率をはるかに超える。

トランプ氏は、日本が米国で数百万台の自動車を売りさばきながら、米国産コメの輸入を拒む姿勢を「簡単な要求の拒否」と切り捨てた。米国の対日貿易赤字への苛立ちと、日本の自動車産業の強さが背景にある。日本は農業保護を盾にコメの輸入を拒み続ける。高関税が現実になれば、自動車価格は跳ね上がり、日本企業の米国市場での競争力は落ち込む。トランプ氏の強硬な態度は、中国やEUにも向けられる保護主義の流れだ。7月9日の交渉期限が迫るが、合意の道筋は見えない。日本の硬直した姿勢は、トランプ氏の不満をさらに煽るだけだ。

英国の「公平」が切り開いた道

スターマー英首相

対照的に、英国は米国との貿易交渉で鮮やかな成果を上げた。2025年5月9日、トランプ大統領とスターマー英首相は「経済繁栄協定」を結んだ。鋼鉄・アルミニウムへの25%関税の緩和、牛肉の輸出枠設定(双方で13,000トン)といった具体的な前進だ。デジタルサービス税やサービス貿易の課題は残るが、英国はトランプ氏の関税の嵐を巧みに避けた。その鍵は、トランプ氏がこだわる「公平」という考え方にある。「公平」とは、単なる数字の帳尻合わせではない。互いの利益を尊重し、相手の立場を理解する姿勢だ。英国はこの原則を貫いた。米国との年間1800億ドルのサービス貿易や投資の絆を活かし、原産地ルールの緩和で譲歩しつつ、米国産牛肉の市場を開放。金融や通信の市場を守る戦略でバランスを取った。

2025年1月26日の両首脳の電話会談は「温かく親密」と評され、45分間で信頼を築いた。会談後の公式声明(リードアウト)には、「公平な二国間経済関係の推進」が明記された。英国の規制緩和の姿勢が、トランプ氏の経済政策と重なり、交渉を後押しした。

コロンビアのペトロ大統領

コロンビアの事例は、トランプ氏の「公平」の厳しさを物語る。コロンビアのペトロ大統領は、米国による不法移民の送還を拒み、「移民」を犯罪者扱いする米国を批判した。トランプ氏はこれを「不公平」と断じ、コロンビア製品に25%の関税を課すと宣言。50%への引き上げも示唆した。ペトロ氏の「移民」と「不法滞在者」の混同や一方的な批判は、トランプ氏の求める相互尊重に欠けた。結局、コロンビアは米軍機の受け入れを余儀なくされた。日本のコメ輸入拒否や自動車産業保護も、トランプ氏には「不公平」に映る。日本の逆転戦略と石破の限界


日本は対抗策を打ち出した。2025年7月8日、政府は赤沢経済再生相を対米交渉の司令塔に任命した。赤沢氏は石破首相の側近で、TPPや日米貿易協定の経験者だ。農産品関税や省庁横断的な課題を担う適任者とされる。だが、石破首相の対応はあまりにも弱い。7月7日のトランプ氏との電話会談では、対立を避け、日本が対米投資大国であることを強調したが、具体策はゼロ。「率直で建設的な話し合い」と胸を張るが、交渉の方向性は示さない。
政府内では日米関係の悪化を恐れる声が強いが、トランプ氏の強硬姿勢を前に、この曖昧さは通用しない。石破氏の優柔不断な姿勢は、トランプ氏との交渉の重さに耐えられない。まともな交渉を進めるには、石破氏に退陣を願い、実行力あるリーダーが必要だ。日本には逆転のチャンスがある。トランプ関税を逆手に取り、TPP(CPTPP)を武器に世界の貿易ルールを握る戦略だ。米国が2017年にTPPを離脱した後、日本はCPTPPを主導。2023年の英国加盟で、GDP総額は世界の15%近くに膨らんだ。トランプ氏の関税で米国が孤立すれば、CPTPPの価値は跳ね上がる。中国やロシアの不公平な貿易慣行を締め出す厳格なルールは、トランプ氏の「公平」の理念とも一致する。米国にTPP復帰の利益を示せば、交渉の流れを変えられる。短期的な策も必要だ。消費税廃止で内需を爆発させ、年間4兆円以上の家計消費を押し上げる。米国の攻撃型原潜(1隻35億ドル)の購入で安全保障の絆を強化。トランプ氏が嫌うリベラル系企業や大学の買収で、貿易赤字を減らし、ソフトパワーを高める。これらの大胆な一手は、トランプ氏の「公平」に訴え、関税のリスクを和らげる。英国は「公平」を武器にトランプ氏との交渉を制した。日本の硬直した姿勢—農業保護や自動車優先—は、トランプ氏の不満を煽るだけだ。赤沢氏の任命は悪くはないが、石破氏の曖昧さでは勝負にならない。石破氏ではトランプ氏との交渉は荷が重すぎる。退陣を願い、実行力あるリーダーが消費税廃止やTPP主導の戦略をトランプ氏に叩きつければ、日本は関税の危機を跳ね返し、自由貿易の旗手として世界に立つ。トランプ氏の「公平」を逆手に取れ。日本にその力はある。【関連記事】

中国フェンタニル問題:米国を襲う危機と日本の脅威  2025年7月1日



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2025年5月13日火曜日

米中、追加関税引き下げで合意 トランプ氏「中国が完全に国を開放した」—【私の論評】米中貿易合意の真相:トランプの爆弾発言で資本取引自由化を巡る熾烈な攻防戦が始まった

米中、追加関税引き下げで合意 トランプ氏「中国が完全に国を開放した」

まとめ
  • 関税引き下げ合意: 米国と中国は相互の関税率を115%ポイント下げ、10%に設定。90日間の関税上乗せ停止も決定。
  • 協議メカニズム構築: 経済・貿易関係の新たな協議メカニズムを構築し、貿易戦争の緊張緩和を目指す。
  • 特定業種の関税維持: 米国は医薬品、半導体、鉄鋼、EVなどの関税を維持し、フェンタニル関連関税(20%)も継続。
  • 小口輸入品の関税免除除外: 中国・香港からの小口輸入品の関税免除(デミニミス・ルール)は合意に含まれず。
  • 今後の再協議: 数週間以内の再協議でさらなる合意を目指すが、為替問題は議論されず、先行きは不透明。

米国と中国は5月12日、スイスのジュネーブで10~11日に行われた閣僚級協議の結果、両国の貿易問題を巡り、相互に課していた関税率を115%ポイント引き下げ、10%にすることで合意したと発表した。さらに、関税の上乗せ分を90日間停止し、経済・貿易関係に関する新たな協議メカニズムを構築することも決定。米国の対中関税率は145%、中国の対米関税率は125%に達していたが、この合意で貿易戦争は一時的に小康状態となり、世界的な景気後退への懸念が和らいだ。ただし、先行きには不確実性が残る。

ベセント米財務長官は会見で、「デカップリング(経済分断)は望まないというコンセンサスが得られた。高関税は禁輸に近い状況を生み、双方にとって好ましくなかった」と述べ、貿易の促進が目標だと強調。中国の何立峰副首相も「率直かつ建設的な協議で大きな進展があった」と評価した。ベセント長官はCNBCのインタビューで、今後数週間以内にさらなる合意を目指す再協議を行う可能性に言及したが、具体的な日程や場所は未定。

合意では、医薬品、半導体、鉄鋼など、米国がサプライチェーンの脆弱性を指摘する特定業種の関税は維持される。また、フェンタニル問題で2~3月に発動した20%の関税や、電気自動車(EV)、鉄鋼・アルミニウム向けの既存関税も継続。中国と香港からの小口輸入品に対する関税免除(デミニミス・ルール)の廃止は含まれなかった。トランプ政権が4月2日に発表した24%の相互関税上乗せ分は90日間停止されるが、貿易収支の不均衡是正に向けた購入協定の可能性も示唆された。為替問題は協議されず、今後の進展に注目が集まる。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】米中貿易合意の真相:トランプの爆弾発言で資本取引自由化を巡る熾烈な攻防戦が始まった

まとめ
  • 米中貿易合意の内容: 2025年5月12日、米国と中国は関税引き下げで合意。米国は対中関税を145%から30%に、中国は対米関税を125%から10%に削減。90日間の関税上乗せ停止と新たな貿易協議枠組みも決定したが、医薬品、半導体、鉄鋼などの関税は維持。
  • トランプの発言と意図: トランプ大統領は「中国が完全に国を開放した」と発言するも、しかし合意は関税に限定されている。この発言は資本取引自由化を求めるトランプ大統領の警告と解釈できる。
  • 中国の約束不履行: 中国はWTO加盟時(2001年)や「フェーズワン」合意(2020年)で市場開放や知的財産保護を約束したが、産業補助金や技術移転強制などで履行不足が指摘されている。
  • 資本取引自由化の対立: 米国は中国の資本取引制限が貿易黒字を支えているとし自由化を要求。中国は経済安定を優先し慎重姿勢を崩さず、両国の攻防が続く。
  • 今後の見通し: トランプの発言は中国への圧力を示し、資本取引自由化が交渉の焦点に。中国は抵抗を続け、対立が世界経済に影響を与える可能性がある。
米中、追加関税引き下げ合意に関連して、トランプ大統領が「中国が完全に国を開放した」と表明したことは、注目に値する。中国側は、追加関税の引き下げに合意したのであって、完全に国を解放する、特に資本取引、市場開放に関して自由化するなどとは述べていない。

これは、明らかにトランプ大統領の中国に対する警告と言える。中国対して、市場の解放、資本取引の自由化をせよと迫るものだ。

合意とトランプの爆弾発言

2025年5月12日、スイス・ジュネーブ。米中の閣僚が顔を突き合わせ、関税引き下げで握手を交わした。米国は中国製品への関税を145%から30%へ。中国は米国製品への関税を125%から10%へ。それぞれ大幅に下げた。さらに、90日間の関税上乗せ停止と、新たな貿易協議の枠組みも決まった。医薬品、半導体、鉄鋼の関税は残り、フェンタニルや電気自動車関連の関税もそのまま。妥協の産物である。


だが、ここでトランプが爆弾を落とした。「中国が完全に国を開放した」。この一言に世界がざわついた。中国は即座に反撃。「関税下げただけだ。資本取引の自由化など約束していない」。両者の言い分が真っ向からぶつかる。このズレは、ただの誤解ではない。根深い対立の象徴である。トランプの言葉は誇張だ。合意を超えた発言である。だが、これは計算ずく。中国にさらなる譲歩を迫るプレッシャーだ。米国は市場開放と資本取引の自由化を本気で求めている。

中国の裏切りと米国の怒り

中国は2001年、米国の助力によるWTO加盟時に甘い約束を並べた。市場を開き、知的財産を守ると。だが、現実は違う。産業補助金や技術移転の強制が横行した。2020年の「フェーズワン」合意でも、米国製品の購入増を誓ったが、目標の半分にも届かず。こうした裏切りが、米国を疑心暗鬼にさせている。

2001年 中国のWTO加盟の調印式

米国が狙うのは、資本取引の自由化だ。投資や為替が自由に動く状態。人民元が市場原理で決まる世界である。中国の制限が人民元を不当に安く保ち、貿易黒字を支えていると米国は睨む。これを打破したいのだ。トランプの発言は、その意図を明確に示す。中国への警告である。

自由化を巡る攻防と未来

対する中国は頑なだ。経済の安定が第一。自由化すれば資本が逃げ、人民元が乱れ、金融危機が起きかねない。適格外国機関投資家ような仕組みで、少しは門を開いたが、完全な自由化は夢のまた夢。両者の意地が火花を散らす。

この戦いの裏に、スコット・ベセントがいる。米国財務長官だ。為替の鬼才。アベノミクスの円安や1992年のポンド危機で名を馳せた男である。人民元安が中国の武器だと見抜き、自由化を押し進める戦略を握る。トランプの言葉を支える頭脳だ。

ベセント米国財務長官

トランプの発言は強烈な一撃である。中国に自由化を迫る。だが、合意にそんな内容はない。中国は安定を選び、抵抗を続ける。溝は埋まらない。対立は続く。この衝突は貿易を超える。世界経済の形を変えるかもしれない。認識のズレが解けない限り、不確実性は増す。

トランプの言葉は、合意以上の意味を持つ。中国に市場開放と資本取引自由化を突きつける戦略だ。過去の不履行を盾に、米国は攻める。中国は守る。今後、為替と自由化が焦点となり、米中の戦いは激しさを増す。目を離すな。この対決はまだ終わらない。今まさに始まったばかりである。

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