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2025年5月13日火曜日

米中、追加関税引き下げで合意 トランプ氏「中国が完全に国を開放した」—【私の論評】米中貿易合意の真相:トランプの爆弾発言で資本取引自由化を巡る熾烈な攻防戦が始まった

米中、追加関税引き下げで合意 トランプ氏「中国が完全に国を開放した」

まとめ
  • 関税引き下げ合意: 米国と中国は相互の関税率を115%ポイント下げ、10%に設定。90日間の関税上乗せ停止も決定。
  • 協議メカニズム構築: 経済・貿易関係の新たな協議メカニズムを構築し、貿易戦争の緊張緩和を目指す。
  • 特定業種の関税維持: 米国は医薬品、半導体、鉄鋼、EVなどの関税を維持し、フェンタニル関連関税(20%)も継続。
  • 小口輸入品の関税免除除外: 中国・香港からの小口輸入品の関税免除(デミニミス・ルール)は合意に含まれず。
  • 今後の再協議: 数週間以内の再協議でさらなる合意を目指すが、為替問題は議論されず、先行きは不透明。

米国と中国は5月12日、スイスのジュネーブで10~11日に行われた閣僚級協議の結果、両国の貿易問題を巡り、相互に課していた関税率を115%ポイント引き下げ、10%にすることで合意したと発表した。さらに、関税の上乗せ分を90日間停止し、経済・貿易関係に関する新たな協議メカニズムを構築することも決定。米国の対中関税率は145%、中国の対米関税率は125%に達していたが、この合意で貿易戦争は一時的に小康状態となり、世界的な景気後退への懸念が和らいだ。ただし、先行きには不確実性が残る。

ベセント米財務長官は会見で、「デカップリング(経済分断)は望まないというコンセンサスが得られた。高関税は禁輸に近い状況を生み、双方にとって好ましくなかった」と述べ、貿易の促進が目標だと強調。中国の何立峰副首相も「率直かつ建設的な協議で大きな進展があった」と評価した。ベセント長官はCNBCのインタビューで、今後数週間以内にさらなる合意を目指す再協議を行う可能性に言及したが、具体的な日程や場所は未定。

合意では、医薬品、半導体、鉄鋼など、米国がサプライチェーンの脆弱性を指摘する特定業種の関税は維持される。また、フェンタニル問題で2~3月に発動した20%の関税や、電気自動車(EV)、鉄鋼・アルミニウム向けの既存関税も継続。中国と香港からの小口輸入品に対する関税免除(デミニミス・ルール)の廃止は含まれなかった。トランプ政権が4月2日に発表した24%の相互関税上乗せ分は90日間停止されるが、貿易収支の不均衡是正に向けた購入協定の可能性も示唆された。為替問題は協議されず、今後の進展に注目が集まる。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】米中貿易合意の真相:トランプの爆弾発言で資本取引自由化を巡る熾烈な攻防戦が始まった

まとめ
  • 米中貿易合意の内容: 2025年5月12日、米国と中国は関税引き下げで合意。米国は対中関税を145%から30%に、中国は対米関税を125%から10%に削減。90日間の関税上乗せ停止と新たな貿易協議枠組みも決定したが、医薬品、半導体、鉄鋼などの関税は維持。
  • トランプの発言と意図: トランプ大統領は「中国が完全に国を開放した」と発言するも、しかし合意は関税に限定されている。この発言は資本取引自由化を求めるトランプ大統領の警告と解釈できる。
  • 中国の約束不履行: 中国はWTO加盟時(2001年)や「フェーズワン」合意(2020年)で市場開放や知的財産保護を約束したが、産業補助金や技術移転強制などで履行不足が指摘されている。
  • 資本取引自由化の対立: 米国は中国の資本取引制限が貿易黒字を支えているとし自由化を要求。中国は経済安定を優先し慎重姿勢を崩さず、両国の攻防が続く。
  • 今後の見通し: トランプの発言は中国への圧力を示し、資本取引自由化が交渉の焦点に。中国は抵抗を続け、対立が世界経済に影響を与える可能性がある。
米中、追加関税引き下げ合意に関連して、トランプ大統領が「中国が完全に国を開放した」と表明したことは、注目に値する。中国側は、追加関税の引き下げに合意したのであって、完全に国を解放する、特に資本取引、市場開放に関して自由化するなどとは述べていない。

これは、明らかにトランプ大統領の中国に対する警告と言える。中国対して、市場の解放、資本取引の自由化をせよと迫るものだ。

合意とトランプの爆弾発言

2025年5月12日、スイス・ジュネーブ。米中の閣僚が顔を突き合わせ、関税引き下げで握手を交わした。米国は中国製品への関税を145%から30%へ。中国は米国製品への関税を125%から10%へ。それぞれ大幅に下げた。さらに、90日間の関税上乗せ停止と、新たな貿易協議の枠組みも決まった。医薬品、半導体、鉄鋼の関税は残り、フェンタニルや電気自動車関連の関税もそのまま。妥協の産物である。


だが、ここでトランプが爆弾を落とした。「中国が完全に国を開放した」。この一言に世界がざわついた。中国は即座に反撃。「関税下げただけだ。資本取引の自由化など約束していない」。両者の言い分が真っ向からぶつかる。このズレは、ただの誤解ではない。根深い対立の象徴である。トランプの言葉は誇張だ。合意を超えた発言である。だが、これは計算ずく。中国にさらなる譲歩を迫るプレッシャーだ。米国は市場開放と資本取引の自由化を本気で求めている。

中国の裏切りと米国の怒り

中国は2001年、米国の助力によるWTO加盟時に甘い約束を並べた。市場を開き、知的財産を守ると。だが、現実は違う。産業補助金や技術移転の強制が横行した。2020年の「フェーズワン」合意でも、米国製品の購入増を誓ったが、目標の半分にも届かず。こうした裏切りが、米国を疑心暗鬼にさせている。

2001年 中国のWTO加盟の調印式

米国が狙うのは、資本取引の自由化だ。投資や為替が自由に動く状態。人民元が市場原理で決まる世界である。中国の制限が人民元を不当に安く保ち、貿易黒字を支えていると米国は睨む。これを打破したいのだ。トランプの発言は、その意図を明確に示す。中国への警告である。

自由化を巡る攻防と未来

対する中国は頑なだ。経済の安定が第一。自由化すれば資本が逃げ、人民元が乱れ、金融危機が起きかねない。適格外国機関投資家ような仕組みで、少しは門を開いたが、完全な自由化は夢のまた夢。両者の意地が火花を散らす。

この戦いの裏に、スコット・ベセントがいる。米国財務長官だ。為替の鬼才。アベノミクスの円安や1992年のポンド危機で名を馳せた男である。人民元安が中国の武器だと見抜き、自由化を押し進める戦略を握る。トランプの言葉を支える頭脳だ。

ベセント米国財務長官

トランプの発言は強烈な一撃である。中国に自由化を迫る。だが、合意にそんな内容はない。中国は安定を選び、抵抗を続ける。溝は埋まらない。対立は続く。この衝突は貿易を超える。世界経済の形を変えるかもしれない。認識のズレが解けない限り、不確実性は増す。

トランプの言葉は、合意以上の意味を持つ。中国に市場開放と資本取引自由化を突きつける戦略だ。過去の不履行を盾に、米国は攻める。中国は守る。今後、為替と自由化が焦点となり、米中の戦いは激しさを増す。目を離すな。この対決はまだ終わらない。今まさに始まったばかりである。

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 2025年4月4日

2025年5月5日月曜日

自衛隊以下かよ! 米軍の「空飛ぶレーダーサイト」数が過去最低に いつになったら新型とどく?—【私の論評】米軍の危機と日本のAWACS優位性:グローバル化の代償とトランプの逆襲

自衛隊以下かよ! 米軍の「空飛ぶレーダーサイト」数が過去最低に いつになったら新型とどく?

まとめ

  • E-3の役割E-3「セントリー」はボーイング707基盤のAWACSで、360度レーダーによる索敵・指揮・情報共有を担い、米空軍の空中指揮中枢。
  • E-3の老朽化湾岸戦争などで活躍も、50年経過で16機に減。部品難や疲労により、2025年現在指揮統制に空白の危機。
  • E-7導入後継E-7「ウェッジテイル」はボーイング737基盤。高性能レーダー搭載、2027年から導入、26機配備まで約10年。
  • E-7の利点と課題オーストラリアなどで実績。整備性優れるが、移行期はE-3酷使と同盟国連携が課題。
  • 航空自衛隊E-767とE-2C/Dで18機運用。規模小さいがAWACS数で米超え。米はE-7移行で空の覇権維持が課題。

空中警戒管制機(AWACS)のE-3「セントリー」

空中警戒管制機(AWACS)のE-3「セントリー」は、1970年代の冷戦期に登場し、アメリカ空軍の空中指揮統制の中枢として湾岸戦争やアフガニスタンなど主要作戦で活躍。ボーイング707を基に、360度監視可能な回転式レーダードームを搭載し、索敵、戦術指揮、データリンクによる情報共有、陸海軍との連携を担う「空の中枢神経系」だ。しかし、製造から約50年が経ち、構造的疲労や部品供給難、メンテナンス負担増により、2025年現在は16機にまで減少。冷戦期の30機以上から大幅に縮小し、指揮統制に空白が生じる危機にある。

これを受け、アメリカ空軍は次世代AWACSとしてE-7「ウェッジテイル」の導入を決定。ボーイング737-700を基盤に、高性能な固定式フェーズドアレイ・レーダー「MESA」を備え、高リフレッシュレートの監視能力や柔軟な通信ネットワークを誇る。すでにオーストラリア、韓国、トルコで運用され、NATOやイギリスも採用。整備性とコスト面でも優れるが、2027年から本格導入予定で、最大26機の配備完了には約10年を要する見込み。移行期は既存E-3の酷使が続く厳しい状況だ。

一方、航空自衛隊はE-767を4機、E-2C/Dを14機、計18機のAWACS・AEW機を運用。国土規模や任務範囲がアメリカより小さいにもかかわらず、AWACS保有数で上回る充実ぶりを誇る。アメリカ空軍はE-3からE-7への移行期に、整備体制の刷新、海軍やNATO・同盟国との統合作戦による機能補完など、喫緊の課題に直面している。空の情報掌握が戦局を決める現代、空の覇権を維持するため、E-3の遺産からE-7の新時代への転換は、アメリカ空軍の将来を左右する重大な挑戦である。

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【私の論評】米軍の危機と日本のAWACS優位性:グローバル化の代償とトランプの逆襲

まとめ
  • 米軍の装備危機:潜水艦とAWACSは老朽化と製造能力低下に直面。ロサンゼルス級原潜は2028年頃に49隻から46隻に減少し、E-3「セントリー」は16機に激減。グローバル化による製造業の海外依存が原因。
  • 潜水艦の課題:ロサンゼルス級の退役で戦力低下。オハイオ級は戦略任務に特化し、通常海戦では限定的。寿命延長やバージニア級の強化で対応するが、建造遅延が問題。ディーゼル潜水艦技術は失われた。
  • AWACSの状況:E-3の老朽化で戦力空白。E-7導入は2027年から。部品供給難とメンテナンス負担が戦力維持を阻む。
  • 日本のAWACS優位性:航空自衛隊はE-767(4機)とE-2C/D(14機)の18機で世界最高水準。アメリカや他国を上回り、高性能レーダーと日米連携で島国防衛を確保。
  • トランプ政権の対応:グローバル化の代償で生産基盤が弱体化したため、経済合理性を犠牲にしてでも製造業の国内回帰を推進。関税や補助金でサプライチェーンを再編し、軍事産業の復活を目指す。


米海軍機主力のロサンゼルス級攻撃型原潜

米軍の装備は、老朽化と製造能力の低下という危機に瀕している。AWACSと潜水艦戦力は、その象徴だ。その背後には、グローバル化がもたらした製造業の空洞化が横たわる。一方、日本の航空自衛隊はAWACSで世界最高水準の戦力を誇り、対照的な姿を見せる。この現実を前に、トランプ政権がなぜ製造業の国内回帰にこだわるのか、その理由が浮かび上がる。

アメリカ海軍の潜水艦は、主力のロサンゼルス級攻撃型原潜の老朽化が進む。2020年代後半から2030年代にかけて退役が集中し、2028年頃には現在の49隻が46隻程度にまで落ち込む。この「谷間」は、中国の対艦ミサイルや潜水艦増強が脅威となるインド太平洋での抑止力を危うくする。オハイオ級弾道ミサイル原潜や巡航ミサイル原潜は戦略任務に特化し、通常の海戦では役に立たない。特に巡航ミサイル原潜の2028年退役は、火力の大幅な低下を意味する。

米海軍はロサンゼルス級の一部に核燃料交換とオーバーホールで寿命を延ばし、バージニア級新造艦にバージニア・ペイロード・モジュールを追加して艦体を延長、トマホークミサイル40発を搭載することで戦力の穴埋めを図る。しかし、建造の遅れが足を引っ張る。

AWACSも同様だ。アメリカ空軍のE-3「セントリー」は老朽化で2025年時点で16機に激減。次世代のE-7「ウェッジテイル」は2027年から導入予定だが、移行期の戦力空白は避けられない。部品供給の途絶やメンテナンスの負担が、戦力維持を困難にしている。

アメリカは1990年にディーゼル電気潜水艦を全廃し、すべての潜水艦を核動力原潜に統一した。バージニア級、オハイオ級、開発中のコロンビア級は長期間の潜航と高速性を誇るが、静粛性や沿岸作戦に優れるディーゼル潜水艦の技術は失われた。遠洋作戦に特化した原潜は強力だが、沿岸での柔軟性を欠き、技術の再構築は不可能に近い。

造船能力の低下も深刻だ。冷戦終結後、造船所は50以上から20未満に激減。原潜建造は2社に限られ、コロンビア級とバージニア級の同時建造で生産は限界に達する。核認証を受けた労働者の不足、低賃金による若手の離職、部品供給の途絶が追い打ちをかける。バージニア級の建造ペースは目標の年2隻に対し1.2~1.3隻にとどまり、2025年度予算では調達がさらに削減された。AUKUS協定でのオーストラリアへの潜水艦売却も、生産能力の不足で暗礁に乗り上げる。

サンフランシスコ海軍造船所

これらの問題の根底には、グローバル化による製造業の変容がある。アメリカはコスト削減を優先し、製造業の生産部門を中国や東南アジアにアウトソーシングした。デザインや研究開発は国内に残したが、部品製造は海外依存となり、国内のサプライチェーンは脆弱化した。造船所の労働力や専門技術も失われ、潜水艦の建造遅延やAWACSのメンテナンス難を招いた。

対照的に、日本の航空自衛隊はE-767(4機)とE-2C/D(14機)の計18機のAWACS・AEW機を運用し、世界最高水準の戦力を誇る。2025年現在、機数はアメリカのE-3(16機)、NATOのE-3(約14機)、ロシアのA-50(約10機)、中国のKJシリーズ(10~15機)を上回る。E-767はE-3並みの高性能レーダーとリンク16で広域監視を、E-2Dは精密監視とミサイル防衛で相互補完性を発揮。日本の狭い領空に最適化され、高度な訓練と日米連携が強みだ。

アメリカのE-3は老朽化し、E-7は未配備。ロシアのA-50は電子機器が時代遅れで、中国のKJ-500は実戦経験が乏しい。日本は機数と質のバランスで他国を圧倒し、島国防衛の情報掌握を確実にしている。中国の新型機やロシアのA-100の性能が未知数でも、日本のトップクラスの地位は揺るがない。


日本の優位性は頼もしいが、アメリカの状況は気がかりだ。潜水艦とAWACSの危機は、グローバル化の代償そのものだ。だからこそ、トランプ政権は製造業の国内回帰を強力に推し進める。経済合理性を多少犠牲にしても、製造業をアメリカに取り戻す戦略だ。グローバル化のコスト競争が、潜水艦やAWACSの生産基盤を弱体化させ、戦略的戦力の維持を危うくしたとの認識が根底にある。関税引き上げ、補助金による産業保護、労働力育成の強化を通じて、サプライチェーンを自国中心に再編し、軍事産業の持続可能性を確保しようとしている。

米潜水艦とAWACS戦力は、老朽化、戦力減少、造船・製造能力の低下に直面する。中国の海軍・航空戦力の急拡大を前に、産業基盤の再構築は待ったなしだ。米海軍と空軍は労働力育成やサプライチェーン投資を進めるが、2028年までの生産回復は厳しい。インド太平洋の抑止力維持は、この戦略的危機を乗り越えられるかにかかっている。アメリカの再起は、製造業の復活にかかっているのだ。

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2025年5月3日土曜日

中国車にエコカー補助金も問題だが一番は不当な為替レート 元安は世界経済混乱の元凶—【私の論評】元安の裏に隠された中国の為替操作とは? 世界経済混乱の真相

中国車にエコカー補助金も問題だが一番は不当な為替レート 元安は世界経済混乱の元凶


髙橋洋一氏が「髙橋洋一チャンネル」第1265回で、中国製電気自動車(EV)へのエコカー補助金支給問題と人民元の過度な安さ(元安)を厳しく批判した。2025年5月2日に公開された動画では、日本政府が環境性能を基準に支給するクリーンエネルギー自動車導入促進補助金(CEV補助金)が、中国のBYDなど外国車にも適用されている現状に疑問を投げかけた。

立憲民主党の藤岡隆雄議員が国会で国産メーカーを保護すべきだと是正を求めた際、政府が「難しい」と回答したことに対し、疑問を投げかけた。補助金が中国メーカーの日本市場拡大を後押しし、国産車との競争で不利になると訴えた。動画では、中国のEVが補助金込みで約200万円という低価格で販売されている例を挙げ、「安すぎる」と問題視した。

中国は国内でもエコカー普及策を講じている

さらに髙橋氏は、補助金以上に深刻な問題として元安を取り上げた。人民元が不当に安く抑えられていることで、中国製EVが低価格で日本市場に流入し、日中貿易の不公平な構造を生み出していると主張。元安は市場原理に基づかず、中国政府による為替操作が背景にあるとし、資本取引の制限がその要因だと説明した。この状況が続けば、日本の自動車産業のみならず世界経済全体に混乱をもたらす「元凶」になると警告した。

日本の政策対応についても苦言を呈した。現政権が補助金廃止や元安是正に積極的でない姿勢を批判し、「難しい」と繰り返す政府の態度に「何が難しいのか」と疑問を投げかけた。解決策として、補助金制度を見直し、中国車への支給を制限する一方、関税や税金を課す「マイナスの補助金」を導入するよう提案。

元安是正に向けては日本単独では難しいとし、アメリカと連携して中国に圧力をかけるべきだと訴えた。具体的には、アメリカが元安是正を強く主張すれば、日本がその流れに乗る形で効果的な対応が可能だと述べた。補助金に頼る政策よりも、ガソリン税減税など直接的な国民支援策を優先すべきとの考えも示した。

最後に、髙橋氏は視聴者に対し、エコカー補助金や元安問題の裏にある国際的な経済競争の「アンフェアな構造」を理解するよう呼びかけた。政府やメディアの情報を鵜呑みにせず、データや事実に基づいて問題の本質を見極める重要性を強調し、日本の経済政策がこのままでは産業競争力や国民生活が脅かされると警鐘を鳴らした。

この記事は、高橋洋一氏のYouTube番組「高橋洋一チャンネル」の内容を新聞記事風にまとめたものです。詳細を知りたい方は、動画をご覧ください。

【私の論評】元安の裏に隠された中国の為替操作とは? 世界経済混乱の真相

まとめ
  • 高橋洋一氏は、人民元の過度な元安が市場のルールに反すると批判し、中国政府の為替操作と資本取引の制限が原因だと指摘する。
  • 元安になっても外国投資家の買いが制限され、高くなっても国内の売りが抑えられるため、市場で自然なバランスが取れない。人民銀行が人民元を売買し、意図的に安く保つ構造が元安を維持。
  • 人民元の価値が市場より安くなり、中国製品が輸出先で安く売れる。エコカーや太陽光パネル、低価格な鉄鋼製品が世界市場を席巻し、各国の産業に打撃を与えている。
  • 高橋氏は、元安が政府の操作によるもので、日本の自動車産業など他国の競争力を損ない、世界経済に混乱をもたらすと警告する。トランプ政権の高関税を彷彿とさせる指摘だ。
  • 解決策として、米国と協力し、中国に資本取引の自由化を求める圧力をかけるべきだと高橋氏は訴える。真実を見極め、立ち向かう姿勢が必要だと強調する。
人民元

高橋洋一氏は、人民元の過度な元安が市場のルールに反すると鋭く批判する。中国政府が為替を操作し、資本取引に厳しい制限を設けていることがその原因だ。中国では、個人や企業が人民元をドルや円に換える金額に年間の上限があり、たとえば個人は年間5万ドルまでと決められている。それを超える場合や、海外への資金移動、投資には国家外為管理局の事前承認が必須だ。
たとえば、子どもの留学費用を送るにも目的を証明する書類が必要で、企業が海外投資のために資金を動かすにも当局の許可が欠かせない。違反すれば罰則が科される。この仕組みが、人民元の価値を市場の需要と供給で自然に決まるのを邪魔しているのだ。
人民元が安くなりすぎれば、普通なら外国の投資家が「安い」と感じて人民元を買い、その結果、人民元の価値が上がるはずだ。しかし、中国では海外からの投資が厳しく制限されている。金融や不動産など特定の分野では外資の参入が禁止されたり制限されたりしており、上海自由貿易区のような一部地域でしか緩和されていない。
逆に、人民元が高くなりすぎた場合も、国内から人民元を売って外貨に換える動きが制限されるため、市場のルールで自然にバランスを取ることができない。こうした状況下で、中国の中央銀行である人民銀行は、為替市場で人民元を売ったり買ったりして、意図的に人民元を安く保つ政策を進められるのだ。上の
その結果、人民元の価値が市場の実情よりも安く抑えられ、中国製品が輸出先で驚くほど安く売れるようになる。高橋氏が動画で題材としたエコカーでは、中国の電気自動車が日本で安く売られている背景にこの元安が大きく影響しているが、他にもひどい例は少なくない。たとえば、中国製の太陽光パネルや鉄鋼製品が、元安による価格競争力で世界市場を席巻し、日本のメーカーが太刀打ちできない事態が続いている。
中国のゾンビ企業の敷地に置かれた鉄鋼製品の山

特に鉄鋼製品は高付加価値のものではないが、大量生産される低価格な粗鋼や鋼板が多く、これが各国市場に溢れかえっているのだ。安価な中国製品が大量に流入することで、各国の産業が打撃を受け、雇用の喪失や貿易赤字の拡大を招いている。
しかし、この元安は市場のルールではなく、政府の操作によるものだと高橋氏は断言する。日本の自動車産業をはじめとする他国の競争力が損なわれ、世界経済に混乱をもたらしていると警鐘を鳴らす。高橋氏は、トランプ政権が中国に高関税を課した背景、つまり為替操作や不公正な貿易慣行への対抗措置を直接支持しているわけではないが、元安が不公平な貿易構造を生むという指摘は、それを彷彿とさせるものだ。
この問題を解決するには、米国などと協力して中国に資本取引の自由化を求める国際的な圧力をかけるべきだと高橋氏は訴える。真実を見極め、立ち向かう姿勢が求められているのだ。

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