日銀は19日、10兆円の資産買い入れ基金の増額を柱とする追加金融緩和を決めた。直前に市場関係者と話す機会があったが、ECB(欧州中央銀行)とFRB(連邦準備制度理事会)が6日、13日と相次いで大胆な金融緩和を発表していたことから意外感はなかったようだ。
ECBは南欧1~3年国債を無制限で買い入れ、FRBは労働市場が改善するまで量的緩和を続ける(QE3=量的緩和第3弾)というもので、ともに、期限や量の制限を付けていないものだ。
ドラギECB総裁の「ユーロ防衛へあらゆる措置」を行うとの決意は、危険な状態にあったスペイン国債などをとりあえず沈静化させた。
FRBの決定に対しても、プリンストン大学教授を務めるブラインダー元FRB副議長は「素晴らしい」と語った。コロンビア大学のウッドフォード教授はプリンストン大時代にはバーナンキFRB議長と同僚で、辛口の理論家として有名で私も彼の講義を聴いたが、QE3に具体的な時期を設けなかったことを評価し、過去の量的緩和より効果があるという見解を示した。
こうした中で、日銀のとる手は「追随」しか残されていなかった。市場関係者も19日の金融緩和を織り込んでおり、「もし緩和がなかったら猛烈な円高になってしまう」といっていた。
ただし、いかにも日銀臭く「シャビー(みすぼらしい)」な緩和だ。まず、ECBやFRBは、時期や量などの条件をつけずに政策目標達成のためには「無制限」に金融緩和をするというもの。だが、相変わらず小出しの日銀は10兆円という量の制限をつけてしまった。
全国にいくつかある貧乏神の像 心なしか白川総裁に似ている |
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【私の論評】白川大貧乏・デフレ・円高大明神10兆円のご託宣とはこれいかに?
上の記事全くその通りで、まさに我が意を得たりというおももちがします。最近テレビをみていたら、ある金融問題が専門の有名な方が、「日銀は十分やっている」という発言をしていました。私としては、本当にびっくり唖然としました。(本日は、貧乏神と、アニメ『貧乏神が!』の画像とともに掲載させていただきます)これが、まだ、アメリカのEQ3(大規模緩和措置)が発動されることが決まる前であれば、多少とも納得がいくのですが、この後の発言だったので、唖然です。アメリカやヨーロッパなどが、大金融緩措置をした後では、たった10兆円くらいじゃ話にも何もなりません。一体こういうことを言う人は、アメリカのEQ3の実体をわかって言っているのかと思ってしまいます。
EQ3が発動されれば、アメリカでは、毎月3兆円が、市場に供給されるようになります。そうして、雇用があらかじめ設定された目標まで達成しなければ、次の月もまた次の月も供給され、とにかく、目標が達成されるまでは、制限なしで供給されます。1年間継続されれば、36兆円です。2年間なら、72兆円です。3年間なら、108兆円です。
それにしても、日本は不思議の国です。アメリカが、これだけの緩和措置をするというのに、日本では、日銀がたった10兆円の金融緩和しかしないというのに、国民はもとよりマスコミも、政治家も、官僚もほとんど誰も、日銀を非難しません。そうして、上記の有名な金融専門家と目される人まで、上のような発言をしています。おそらく、日銀は、この10兆円の金融緩和ですらまともにやらないかもしれません。少しでも、物価があがり、インフレ傾向になれば、追加緩和措置を打ち切り、デフレ・円高守護神の地位を守り続けることでしょう。
特に、国民は大人しいです。リーマンショックのときだって、本来日本は、何ら影響を受けるような立場でもなかったのに、他国が大増刷を含む大金融緩和措置を行ったというのに、日本はほとんど緩和しませんでした。そのため、震源地であるアメリカは素早く立ち直ったのに、日本の回復は、先進国中で最も遅れてしまい、日本は一人負けという状況に陥ってしまいました。私は、日本とリーマンショックとは、全く関係ないと思っていましたが、日銀が他国が金融緩和をしても、日銀は全くしないなどということは、計算外だったので、予測が全く外れてしまいました。しかし、これは、私が予想をたがえたというより、その責任は、日銀にあるはずです。しかし、日本には、これを追求する人はほとんどいません。
このブログにも掲載してきたように、平成10年に日銀法が改悪されてから、日銀は、なぜか日銀の独立性を盾にとって、ことあるごとに、十分な金融緩和をせずに、このデフレの最中に何か、緩和措置を行って、少しでも物価が上がりそうになれば、追加金融緩和を打ち切るということを繰り返してきました。だから、いつまでたっても、円高・デフレは解消されませんでした。
現在のデフレ、無論歴代の政府がずっと、緊縮財政をしてきたことにも原因があります。しかし、マンデルフレミング効果によれば、小国で、変動相場制の国であれば、財政政策は、ほとんど効果がなく、金融政策のほうが効果があるといわています。日本の場合は、大国(日本は紛れもなく大国です。経済は大きいし、人口だってかなりです。ロシアだって人口は、1億4千万です。中国や、インドなどは例外中の例外です。だから、金融政策があまり効果を奏さない場合もあります。それにしても、ずっと金融引き締めばかりやっていれば、デフレ・円高になるのは、当たり前です。
特に円高は、リーマンショックのときや、今回のように他国が大規模な金融緩和をやるときに、変動相場制の日本が何もせずに、そのまま放置すれば、円高傾向になるのは、当たり前の真ん中です。今回のQE3が初どうされても、日銀が、総額10兆円の金融緩和措置だけしかしないというのなら、さらに、円高になるのは、間違いありません。おそらく、年末にかけて、円高が進行し、とんでもないことになるのは必定です。
それに、日本では、全く不思議なことなのですが、雇用というと、すぐに個々人の問題であるとか、企業の問題であるとか、厚生労働省の管轄であるかのような扱いがされます。しかし、これは、全くの間違いです。厚生労働省は、決まった雇用枠の中で、雇用のミスマッチを是正することはできますが、それ以上のことはできません。厚生労働省は、日本国全体の雇用枠の調整はできません。それができるのは、日本では、日銀だけです。このことが、全く理解されていません。
このことは、少なくてもアメリカでは理解されています。それは、上の記事を見ていてもわかることです。アメリカのQE3の目的や、目標は何でしたか?そうです。 上の記事に「FRBは労働市場が改善するまで量的緩和を続ける」とあるように、労働市場の改善です。すなわち、雇用枠を広げるということです。
マクロ経済学では、どこの国でも、その国の中央銀行が、何らかの手段で、2〜3%物価をあげることに成功したら、要するに、2〜3%のインフレにすることに成功したら、それだけで、他には何をせずとも、一夜にして、大量の雇用が発生することが理論的にも、実証的にも確かめられた事実とされています。
アメリカや、日本なら、一夜にして、数百万の新たな雇用が生まれます。だからこそ、FRBは、新たな雇用を生み出すために、金融緩和素をするのです。これが、第一の目的なのです。日本では、こうした中央銀行である日銀の役割があまり理解されていないので、雇用状況が悪化しても、日銀を責める人はほとんどいません。
今後他国が大規模な金融緩和をしているにもかかわらず、日銀だけが、しないというのなら、円高傾向となり、ますます、多くの企業が国際競争力が低下するのをおそれ、海外移転を推進することになるでしょう。こうした背景のなか、デフレ傾向も払拭されず、日本国内の雇用はますます、悪化することでしょう。
まさに、日本は、本来豊であるはずなのに、日銀という貧乏神に取り憑かれていると言わざるを得ません。この貧乏神を退治するためには、まずは、白川総裁を任期が終了する前に、退任させることと、日銀法を改正して、中央銀行の独立性の意味を本来のものに戻す以外にありません。
中央銀行の独立性とは、現状では、日銀が「政府から全く独立性して、日銀が、日本の金融政策を決定する権限」があると考えているのをあらため、世界の常識でもある、「日銀は、日本政府の金融政策に従い、それを実施するときに、専門家的な立場から、方法を選択できる」というように、変えることです。
このようにしなければ、私たちは、いつまでたっても、貧乏神に取り憑かれている現状を改善することができず、しなくても良い苦労をしなければならなくなります。今のままであれば、本来関係のない、アメリカの不況や、EUの不況の影響を受けて、日本もさらに不況にいたり、円高・デフレスパイラルの泥沼に落ち込み、また、リーマンショックの二の舞になりかねません。それだけは、回避すべきと思うのは、私だけでしょうか?
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