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2012年11月17日土曜日

若者の雇用を奪うのは一体誰なのか?−【私の論評】根本原因は、デフレであってこれを解消しなければ何も解決されない!!

若者の雇用を奪うのは一体誰なのか?:

 新卒大学生の就職内定率の低下がおびただしいものになっている。2011年度(2012年春卒業)は改善されたというものの、それまでは下落する一方であり、ニュース等でも内定が取れない学生たちの悲哀の声を耳にしたものだ。

 この新卒採用を取り巻く厳しい状況は、これからも改善されていくのだろうか? それとも別のシナリオが待ち受けているのだろうか。

 『若者はなぜ3年で辞めるのか?』(光文社... 続きを読む

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新刊JP
ウェブサイト: http://www.sinkan.jp/



【私の論評】根本原因は、デフレであってこれを解消しなければ何も解決されない!!

長い間のデフレで賃金が減り続けているの世界でも先進国では日本だけ
最近確かに、就職内定率は、低下しているようです。このようなときには、上の城氏のような論調が必ずでてきます。上の記事での城氏の語っていることを以下にコピペします。
 こうした状況を打破するために、城さんは賃下げや解雇といった不利益変更のルール化が必要だとしている。新卒採用カット以外のアプローチでも雇用調整できるようになるから、新卒の就職難は緩和されることになるという考えだ。
 しかし、ここにも大きな溝がある。
 若者の雇用を改善しようとしても、当の政治家たちが動くとは考えられないというのだ。
 日本は民主主義国家であり、有権者一人一人に投票権が与えられているが、票を獲得するために、若者たちよりも数が多い高齢者の声のほうが優先されるだろうし、若者の投票率が低いこともそれに拍車をかけている。 
この中で、城氏が言うように、「賃下げや解決といった不利益変更のルール。若者の飛躍的な投票率の向上」を完璧に実現したとしても、それだけでは若者の雇用問題は、解消されません。なぜなら、若者の雇用を奪っている根本原因は、デフレだからです。世代間の社会保障費の格差も、結局はデフレによるところが大きいです。

就活女子。特に、女子の内定率は低い
ご存知のように、デフレは、物価が下げ、賃金が下げ、雇用も削減するからです。デフレは経済の癌とも呼ばれ、インフレなどとは違い、徐々に悪影響をを及ぼしていくため、なかなか認知されにくいところがあります。インフレの場合は、狂乱物価などといわれたように、物価が一気にかなり上昇したりするため、かなり認知しやすいです


GDPデフレーターの推移(1980~2012年) - 世界経済のネタ帳
国内総生産(GDP : Gross Domestic Product)とは、国内の生産活動による商品・サービスの産出額から原材料などの中間投入額を控除した付加価値の総額のこと。
GDPはその国の経済規模を示す際の、最も重要な指標のひとつである。
GDPデフレーター = 名目GDP ÷ 実質GDP × 100
消費者物価指数が国内で消費される商品・サービスの価格の変化を示すものであるのに対し、GDPデフレーターは国内の企業の利益や労働者の賃金など所得の変化を示す指数である。
しかし、デフレの場合、ハイパーデフレなどは古今東西の例などなく、最高でも、年率で2%くらいの物価下落が普通なので、意外と単年度などでは理解できず、長期にわたって、グラフなどをみて始めて認知できるものです。だから、デフレの真っ最中にあるときには、多くの人がなかなか認識できないというのが普通です。

インフレは、直裁的に認識しやすいが、デフレはそうではない!!
そうして、このブログでも、再三にわたり掲載させていただいたように、日本ではすでに、デフレ傾向になってからは、20年、統計上ではっきりと誰もが認めざるを得ないデフレになってからも、14年も経過しています。これは、古今東西に例もなく全く異常なことです。これに関して、以前このブログにも掲載したことがあるので、下に当該記事のURLと、関連部分のみ掲載しておきます。

マック、崩れた「勝利の方程式」:日経ビジネスオンライン―【私の論評】民間のデフレ対策もそろそろ限界、潔さではどうにもならない状況に!!
ちなみに、国際通貨基金(IMF)のデータベースをもとに、1980年以降に消費者物価が前年と比べて2年以上続けて下落した国を「デフレ経験国」とすると、ブルキナファソやマリ、中央アフリカなど、ほとんどが開発途上国です。先進国で、日本のようにデフレが続いた国はありません。 
リーマン・ショック後の消費者物価をみると、2009年は米国やスイス、台湾、ポルトガルなどでマイナスでしたが、10年にはアイルランドと日本だけが「デフレ経験国」になりました。そのアイルランドも11年には物価が上がり、デフレから抜け出しています。最早、デフレは、主要な先進国では、日本特有の現象になりました。デフレとは、このブログにも過去に何度か掲載してきたように、経済の癌とも呼ばれるような、経済の病です。日本では、このようなデフレを過去20年にもわたって、放置してきたということです。 
デフレを前提として、経済や、金融、そうして、企業活動などを考えるなどということは、根本的な誤りです。デフレ下では、企業がいくら努力しても、業績があげられない面があります。
マクドナルドなどの企業がいくら努力しても、なかなか業績があげられない状況に陥っているわけですから、多くの企業が、当然採用も控えるわけです。だから、若者の雇用がなくなるのも当然のことです。特に、新卒ということになれば、経験もなく、企業に入ってから再訓練・再教育をしなければならないので、なおさらです。

さらに、日本では、中央銀行(日本では、日銀)による、雇用枠の調整ということがほとんど理解されていません。これに関しては以前このブログにも掲載したことがあります。

若者雇用戦略のウソ―【私の論評】雇用と中央銀行の金融政策の間には密接な関係があることを知らない日本人?!

詳細は、上昇の記事をご覧いただくものとして、以下に一般的な雇用に関する中央銀行の役割に関するところだけコピペしておきます。
アメリカでは、雇用問題というと、まずは、FRB(管理人注:アメリカの中央銀行)の舵取りにより、大きく影響を受けるということは、あたりまえの常識として受け取られていますし。雇用対策は、FRBの数ある大きな仕事のうちの一つであることははっきり認識されており、雇用が悪化すれば、FRBの金融政策の失敗であるとみなされます。改善すれば、成功とみなされます。 
この中央銀行の金融政策による雇用調整は、世界ではあたりまえの事実と受け取られていますが、日本だけが、違うようです。日本で雇用というと、最初に論じられるのは、冒頭の記事のように、なぜか厚生労働省です。 
このブログでも、前に掲載したと思いますが、一国の雇用の趨勢を決めるのは、何をさておいても、まずは中央銀行による金融政策です。たとえば、中央銀行が、インフレ率を2〜3%現状より、高めたとしたら、他に何をせずとも、日本やアメリカのような国であれば、一夜にして、数百万の雇用が生まれます。これに関しては、まともなマクロ経済学者であれば、これを否定する人は誰もいないでしょう。無論、日本に存在するマクロ経済学と全く無関係な学者とか、マルクス経済学の学者には、否定する人もいるかもしれませんが、そんなものは、ごく少数であり、グローバルな視点からすれば、無視しても良いです。
上の内容をご覧いただければ、中央銀行、日本では日銀の金融政策が雇用に大きな関わりを持っていることが良くお分かりになると思います。一般に、日本では、雇用というと、すぐに厚生労働省の政策であると考えられがちですが、厚生労働省のできることは、すでに決まっている雇用枠の中で、雇用のミスマッチを是正することくらいしかできません。雇用枠に直接それも、速やかに影響を及ぼすことができるのは、日銀です。日銀の金融政策によって、その時々の雇用枠が定まります。上の城さんの論調も、心情的には良く理解できるのですが、雇用のミスマッチを是正するだけであり、雇用枠を変えることはできず、根本原因を取り除くことはできません。
日本だけが、マネタリーベースが異常に低い、これではデフレになるのが当たり前
それに、政府による、財政出動なども、雇用に大きな影響を及ぼします。デフレなどの最中には、政府は積極財政を行い、公共工事など積極的に行い、雇用を創出すべきなのです。にもかかわらず、政府は、この20年間もの間わずかの例外を除き、緊縮財政ばかりやってきました。公共工事なども、いまや、世界の他の先進国と比較すると最低水準にまで落ち込んでいます。デフレの最中に増税などすれば、さらに、緊縮財政を推進することとなり、さらに、デフレを推進し、物価が下がり、賃金が下がり、雇用も減少するだけです。この流れは、民主党政権になってから、「コンクリートから人へ」のスローガンによりますます、加速されました。

公共投資も80年㈹り低い状況、これではデフレになるのが当たり前
過去20年間、日銀は、金融引き締めばかりやり、政府もほとんど緊縮財政ばかりやってきました。これでは、デフレになるのが当たり前です。だからこそ、他の先進国が一時デフレになっても、すぐに抜け出したのに、日本だけが、デフレから抜け出すことができませんでした。

このようなことを20年も続けため、本来異常であるはずのデフレが、多くの人々にとって、当たり前になり、多くの人々がデフレを前提でものを考えるようになりました。これは、政治家はもとより、一般の人々も同じことです。ですから、若者の雇用を考えるにしても、デフレを前提として、上記のような論調がでてくるのです。しかし、これでは、何の解決にもならないということです。

根本的には、デフレを解消するしかありません。雇用問題を語るには、デフレ抜きでもの語ったり、考えたりしても根本的な解決にはなりません。

アメリカの投票を呼びかけるポスター
そうして、最近の政局をみてみると、デフレからの脱却、日銀のインフレ目標を3%にする、日銀法を改正するなどのことをはっきりあげて、デフレ解消をはっきり打ち出しているのは、安部自民党のみです。自民党の中でも、先日の総裁選で、こうしたデフレ脱却を謳っていたのは、安部総裁のみでした。そうして、不思議なことに、これだけ日本は、デフレに苦しめられているというのに、なぜか過去の選挙においては、デフレ脱却は、ほとんど選挙の争点にはなってきませんでした。安部総裁ですら、過去の選挙では、これをはっきりと争点にはしていませんでした。だから、過去の選挙においては、若者がかなり投票したとしても、雇用や賃金などとはあまり関係ありませんでした。しかし、今回は、少なくとも安部総裁は、はっきり争点にしています。

右安倍総裁、左は最近亡くなった政治評論家の三宅久之さん。三宅氏のご冥福をお祈りします。
次の選挙では、デフレ脱却を公約にする政党が勝利すれば、かなりの確率で本当に脱却できると思います。選挙も間近です。日銀に関しては、安部自民に限らず、他の多くの政党も、日銀法改正などに積極的です。上記のようなことも考え合わせると、若者の雇用を考えた場合、現状では、安部自民党に次の選挙で勝ってもらい、安部総裁になっていただき、上記のような政策を強力に推進していただくことが一番だと思います。

来月はいよいよ、衆議院議員選挙
太陽の党と、維新の会は、両方とも、平成14年4月からの増税に賛成しています。みんなの党は反対です。太陽の党と、維新の会は、みんなの党ぬきで、合流することを決めました。みんなの党は、やはり、増税など反対ということで、この点は譲れなかったのだと思います。当然のことと思います。

私は、次の選挙では、若者の雇用、日本国内の景気を考えた場合には、今のとろ安部自民党に勝っていただき、安部総理大臣を実現するほかはないと思います。次の選挙では、安部自民党が勝利する率がかなり高いようです。しかし、選挙は水ものです。やってみなければわからないものです。意外と伏兵があるかもしれません。

トリンプのキャンペーンブラ「投票率向上ブラ」こんな投票箱だったら、若者の投票率が向上するかも?
選挙での投票率が低いといわれている若者も、次の選挙は、自分たちの雇用や賃金が今後どうなるか、今まさに分岐点にあることをしっかり認識して、デフレ脱却を公約に掲げる候補者に投票すべきと思います。皆さんは、どう思われますか?

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2012年9月25日火曜日

【日本の解き方】日銀のみすぼらしい金融緩和…欧米より周回遅れ―【私の論評】白川大貧乏・デフレ・円高大明神10兆円のご託宣とはこれいかに?

【日本の解き方】日銀のみすぼらしい金融緩和…欧米より周回遅れ:



 日銀は19日、10兆円の資産買い入れ基金の増額を柱とする追加金融緩和を決めた。直前に市場関係者と話す機会があったが、ECB(欧州中央銀行)とFRB(連邦準備制度理事会)が6日、13日と相次いで大胆な金融緩和を発表していたことから意外感はなかったようだ。

 ECBは南欧1~3年国債を無制限で買い入れ、FRBは労働市場が改善するまで量的緩和を続ける(QE3=量的緩和第3弾)というもので、ともに、期限や量の制限を付けていないものだ。

 ドラギECB総裁の「ユーロ防衛へあらゆる措置」を行うとの決意は、危険な状態にあったスペイン国債などをとりあえず沈静化させた。

 FRBの決定に対しても、プリンストン大学教授を務めるブラインダー元FRB副議長は「素晴らしい」と語った。コロンビア大学のウッドフォード教授はプリンストン大時代にはバーナンキFRB議長と同僚で、辛口の理論家として有名で私も彼の講義を聴いたが、QE3に具体的な時期を設けなかったことを評価し、過去の量的緩和より効果があるという見解を示した。

 こうした中で、日銀のとる手は「追随」しか残されていなかった。市場関係者も19日の金融緩和を織り込んでおり、「もし緩和がなかったら猛烈な円高になってしまう」といっていた。

 ただし、いかにも日銀臭く「シャビー(みすぼらしい)」な緩和だ。まず、ECBやFRBは、時期や量などの条件をつけずに政策目標達成のためには「無制限」に金融緩和をするというもの。だが、相変わらず小出しの日銀は10兆円という量の制限をつけてしまった。

全国にいくつかある貧乏神の像 心なしか白川総裁に似ている
本コラムで、為替は両国のマネタリーベースで決まると言ってきた。実証分析の時には過去のマネタリーベースのデータを用いるが、実際の現場なら、将来のマネタリーベースの見通しで為替の動きを見るだろう。

この記事の詳細は、こちらから!!

【私の論評】白川大貧乏・デフレ・円高大明神10兆円のご託宣とはこれいかに?

上の記事全くその通りで、まさに我が意を得たりというおももちがします。最近テレビをみていたら、ある金融問題が専門の有名な方が、「日銀は十分やっている」という発言をしていました。私としては、本当にびっくり唖然としました。(本日は、貧乏神と、アニメ『貧乏神が!』の画像とともに掲載させていただきます)

これが、まだ、アメリカのEQ3(大規模緩和措置)が発動されることが決まる前であれば、多少とも納得がいくのですが、この後の発言だったので、唖然です。アメリカやヨーロッパなどが、大金融緩措置をした後では、たった10兆円くらいじゃ話にも何もなりません。一体こういうことを言う人は、アメリカのEQ3の実体をわかって言っているのかと思ってしまいます。


EQ3が発動されれば、アメリカでは、毎月3兆円が、市場に供給されるようになります。そうして、雇用があらかじめ設定された目標まで達成しなければ、次の月もまた次の月も供給され、とにかく、目標が達成されるまでは、制限なしで供給されます。1年間継続されれば、36兆円です。2年間なら、72兆円です。3年間なら、108兆円です。


それにしても、日本は不思議の国です。アメリカが、これだけの緩和措置をするというのに、日本では、日銀がたった10兆円の金融緩和しかしないというのに、国民はもとよりマスコミも、政治家も、官僚もほとんど誰も、日銀を非難しません。そうして、上記の有名な金融専門家と目される人まで、上のような発言をしています。おそらく、日銀は、この10兆円の金融緩和ですらまともにやらないかもしれません。少しでも、物価があがり、インフレ傾向になれば、追加緩和措置を打ち切り、デフレ・円高守護神の地位を守り続けることでしょう。

特に、国民は大人しいです。リーマンショックのときだって、本来日本は、何ら影響を受けるような立場でもなかったのに、他国が大増刷を含む大金融緩和措置を行ったというのに、日本はほとんど緩和しませんでした。そのため、震源地であるアメリカは素早く立ち直ったのに、日本の回復は、先進国中で最も遅れてしまい、日本は一人負けという状況に陥ってしまいました。私は、日本とリーマンショックとは、全く関係ないと思っていましたが、日銀が他国が金融緩和をしても、日銀は全くしないなどということは、計算外だったので、予測が全く外れてしまいました。しかし、これは、私が予想をたがえたというより、その責任は、日銀にあるはずです。しかし、日本には、これを追求する人はほとんどいません。


こんな先例があるにも関わらず、日本では、ほとんど日銀が非難されません。そうして、今回もまた、リーマンショックの二の舞を舞いそうだというのに、本当におかしなことだと思います。こんな実体を見るにつけ、私は、日本では、日銀白川総裁はもとより、政治家、官僚、一般国民まで貧乏神にとりつかれているのではないかと疑ってしまいます。



このブログにも掲載してきたように、平成10年に日銀法が改悪されてから、日銀は、なぜか日銀の独立性を盾にとって、ことあるごとに、十分な金融緩和をせずに、このデフレの最中に何か、緩和措置を行って、少しでも物価が上がりそうになれば、追加金融緩和を打ち切るということを繰り返してきました。だから、いつまでたっても、円高・デフレは解消されませんでした。


現在のデフレ、無論歴代の政府がずっと、緊縮財政をしてきたことにも原因があります。しかし、マンデルフレミング効果によれば、小国で、変動相場制の国であれば、財政政策は、ほとんど効果がなく、金融政策のほうが効果があるといわています。日本の場合は、大国(日本は紛れもなく大国です。経済は大きいし、人口だってかなりです。ロシアだって人口は、1億4千万です。中国や、インドなどは例外中の例外です。だから、金融政策があまり効果を奏さない場合もあります。それにしても、ずっと金融引き締めばかりやっていれば、デフレ・円高になるのは、当たり前です。


特に円高は、リーマンショックのときや、今回のように他国が大規模な金融緩和をやるときに、変動相場制の日本が何もせずに、そのまま放置すれば、円高傾向になるのは、当たり前の真ん中です。今回のQE3が初どうされても、日銀が、総額10兆円の金融緩和措置だけしかしないというのなら、さらに、円高になるのは、間違いありません。おそらく、年末にかけて、円高が進行し、とんでもないことになるのは必定です。


それに、日本では、全く不思議なことなのですが、雇用というと、すぐに個々人の問題であるとか、企業の問題であるとか、厚生労働省の管轄であるかのような扱いがされます。しかし、これは、全くの間違いです。厚生労働省は、決まった雇用枠の中で、雇用のミスマッチを是正することはできますが、それ以上のことはできません。厚生労働省は、日本国全体の雇用枠の調整はできません。それができるのは、日本では、日銀だけです。このことが、全く理解されていません。


このことは、少なくてもアメリカでは理解されています。それは、上の記事を見ていてもわかることです。アメリカのQE3の目的や、目標は何でしたか?そうです。 上の記事に「FRBは労働市場が改善するまで量的緩和を続ける」とあるように、労働市場の改善です。すなわち、雇用枠を広げるということです。

マクロ経済学では、どこの国でも、その国の中央銀行が、何らかの手段で、2〜3%物価をあげることに成功したら、要するに、2〜3%のインフレにすることに成功したら、それだけで、他には何をせずとも、一夜にして、大量の雇用が発生することが理論的にも、実証的にも確かめられた事実とされています。

アメリカや、日本なら、一夜にして、数百万の新たな雇用が生まれます。だからこそ、FRBは、新たな雇用を生み出すために、金融緩和素をするのです。これが、第一の目的なのです。日本では、こうした中央銀行である日銀の役割があまり理解されていないので、雇用状況が悪化しても、日銀を責める人はほとんどいません。

今後他国が大規模な金融緩和をしているにもかかわらず、日銀だけが、しないというのなら、円高傾向となり、ますます、多くの企業が国際競争力が低下するのをおそれ、海外移転を推進することになるでしょう。こうした背景のなか、デフレ傾向も払拭されず、日本国内の雇用はますます、悪化することでしょう。

まさに、日本は、本来豊であるはずなのに、日銀という貧乏神に取り憑かれていると言わざるを得ません。この貧乏神を退治するためには、まずは、白川総裁を任期が終了する前に、退任させることと、日銀法を改正して、中央銀行の独立性の意味を本来のものに戻す以外にありません。

中央銀行の独立性とは、現状では、日銀が「政府から全く独立性して、日銀が、日本の金融政策を決定する権限」があると考えているのをあらため、世界の常識でもある、「日銀は、日本政府の金融政策に従い、それを実施するときに、専門家的な立場から、方法を選択できる」というように、変えることです。

このようにしなければ、私たちは、いつまでたっても、貧乏神に取り憑かれている現状を改善することができず、しなくても良い苦労をしなければならなくなります。今のままであれば、本来関係のない、アメリカの不況や、EUの不況の影響を受けて、日本もさらに不況にいたり、円高・デフレスパイラルの泥沼に落ち込み、また、リーマンショックの二の舞になりかねません。それだけは、回避すべきと思うのは、私だけでしょうか?


   

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2012年9月1日土曜日

若者雇用戦略のウソ―【私の論評】雇用と中央銀行の金融政策の間には密接な関係があることを知らない日本人?!

若者雇用戦略のウソ


政府がまとめた「若者雇用戦略」が批判を浴びている。策定に加わった委員までもが、省庁の権益拡大を警告する。就職難を口実に、行政の効率化が疎かになってはいないか。

厳しい雇用情勢が続く中、政府が労使の代表と6月にまとめた「若者雇用戦略」。この内容を巡って、今も関係者の間で批判がくすぶっている。


「戦略という言葉の使い方を勘違いしている」

そう指摘する東京学芸大学の藤原和博・客員教授は、若者雇用の専門家として、戦略を策定する「雇用戦略対話」の委員に招かれた。だが、議論はあくまで政府や連合が主導し、従来の民主党政権の政策を追認するばかり。各省の政策の優先順位を明確にすることもない「雇用戦術報告会と呼ぶべきものだった」。

4回目の会合で政府関係者が注文だけ言って途中退席すると、「これ以上の議論はムダだ」と悟った。「単なる予算要望の場に、力を貸すつもりはない」。藤原氏はこの会合を最後に、辞任を申し出た。

若年層の雇用情勢の改善に向け、野田佳彦首相の肝いりでまとめられた今回の若者雇用戦略。ただし、その内容は全国の大学にハローワークの窓口を設けるなど、既存の政策を拡充するものばかりだ。

過去に事業仕分けでいったん廃止と判定されたこともある「ジョブ・カード制度」についても、今回の戦略では普及促進の方針が明記された。藤原氏の指摘の通り、雇用対策を口実に各省庁が権益拡大を狙った内容とも受け取れる。

労働行政に残るムダ

「雇用のことって正直、よく分からないんだよね」。今春まで約8年間、東京都内のハローワークで契約職員として勤務していたある女性は、正規職員の上司が何気なく発した言葉に愕然としたことがある。


このハローワークでは、業務の大半をキャリアコンサルタントの資格を持つ非正規の職員が支えていた。非正規の職員には紹介や相談件数などのノルマが課される一方、正規職員は管理業務が中心。勤務時間中に宴会の案内状を作っている上司の姿を見て、苛立ちを感じたこともある。

・・・・・・・・・・・〈中略〉・・・・・・・・・・・・・ 

野田首相は今回の戦略策定に当たり「分厚い中間層の中核を担う若者たちのために、切実な危機感を共有しよう」と呼びかけた。しかし、企業は厳選採用の傾向を強めており、雇用は一握りのグローバル型人材と多数のローカル型人材に2極化しつつある。ある人材サービス会社の幹部は、「『分厚い中間層』という考え方がそもそも幻想ではないか」と指摘する。

政府は今回の戦略によってフリーターの半減などを目指すが、労働市場の実態と乖離した方向性のままでは、新たな行政のムダを招く恐れがある。既存の政策の総点検を避けたことが、将来世代の負担を増やす結果になってはならない。

この記事の詳細は、こちらから!!

【私の論評】雇用と中央銀行の金融政策の間には密接な関係があることを知らない日本人?!

本日の日経新聞には、以下のような記事が掲載されています。

米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長は31日、金融政策について「特に米労働市場の改善が重要で、必要に応じ追加緩和政策を行う」と述べた。具体的な手段に踏み込むのは避けつつも、当面の雇用統計などの結果次第では緩和に動く姿勢を強調したものだ。
これは、FRBの米連邦公開市場委員会(FOMC)におけるバーナンキFRB議長の公演内容の一部です。

上の発言で特に注目していただきたいのは、「特に米労働市場の改善が重要」というところです。この発言に関して、奇異に感じる人は、平均的な日本人かもしれません。奇異とも何とも思わず、当たり前の発言であると感じた人は、中央銀行による雇用調整策についてよくご存知の人かもしれません。


このブログの冒頭の記事を読んでいると、雇用に関して、野田総理大臣はもとより、この記事のなかに登場する人たちも、それに、この記事を書いた記者も、中央銀行(日本では日本銀行)による、雇用調整や対策のことを全く知らないのではないかとさえ思ってしまいます。

アメリカでは、雇用問題というと、まずは、FRBの舵取りにより、大きく影響を受けるということは、あたりまえの常識として受け取られていますし。雇用対策は、FRBの数ある大きな仕事のうちの一つであることははっきり認識されており、雇用が悪化すれば、FRBの金融政策の失敗であるとみなされます。改善すれば、成功とみなされます。

この中央銀行の金融政策による雇用調整は、世界ではあたりまえの事実と受け取られていますが、日本だけが、違うようです。日本で雇用というと、最初に論じられるのは、冒頭の記事のように、なぜか厚生労働省です。

このブログでも、前に掲載したと思いますが、一国の雇用の趨勢を決めるのは、何をさておいても、まずは中央銀行による金融政策です。たとえば、中央銀行が、インフレ率を2〜3%現状より、高めたとしたら、他に何をせずとも、日本やアメリカのような国であれば、一夜にして、数百万の雇用が生まれます。これに関しては、まともなマクロ経済学者であれば、これを否定する人は誰もいないでしょう。無論、日本に存在するマクロ経済学と全く無関係な学者とか、マルクス経済学の学者には、否定する人もいるかもしれませんが、そんなものは、ごく少数であり、グローバルな視点からすれば、無視しても良いです。

日銀が、やるつもりもないインフレ目処1%など無視して、インフレ率を本当に2〜3%上昇させたとします。そうすれば、日本でも、一夜にして、数百万の雇用が生まれます。これは、マクロ経済学上で昔から知られているし、経験則としても成り立っている法則です。

無論、雇用対策のため、のべつまくなく、インフレにするというわけにはいきません。ある程度以上、インフレになれば、ハイパーインフレとなり大変なことになる場合もあります。そういうときは、中央銀行は、すぐにはインフレ率を高めるわけにはいきませんから、これは、打ち出の小槌のようにいつもできるというわけではありません。雇用枠が増えても、ハイパーインフレということにでもなれば、雇用が増えたという経済に対するブラス要因が、ハイパーインフレというマイナス要因によってかき消されるどころか、経済が悪化してしまいます。


それに、経済のその時々の状況で、インフレ率を高める方法もいろいろあります。いろいろある方策のうち、雇用に悪影響を及ぼす方策もあります。同じ二つ三つの金融政策を実施するにしても、順番があります。順番を間違えると、かえって、雇用に悪影響を与える場合もあります。こうしたことを認識しながら、雇用調整を行うことは、本当に難しいことです。だからこそ、アメリカではFRBの金融政策の専門家が専門家的立場から、これを調整して、雇用対策を行います。

雇用を直接生み出すのは、日本でも、本来日銀であるはずです。しかし、日本では雇用対策といえば、厚生労働省の管轄とかたく信じて疑わない人が多いようです。しかし、厚生労働省は、雇用枠を増やすことはできません。一定の雇用枠の中で、雇用対策ができるのみです。できることは限られていて、雇用のミスマッチを改善することくらいのものです。


日銀と、厚生労働省の二つの雇用対策がマッチしてはじめて、若者の雇用なども含むまともな雇用対策ができます。日銀が、金融政策で雇用枠を増やしたとしても、それは、枠を増やしたというだけであって、現実には、雇用のミスマッチがあれば、雇用問題は解消しないわけです。ここで、厚生労働省が、実効的な雇用のミスマッチを是正する政策を行えば、雇用問題が解消するわけです。


しかしながら、現在日本で行われているような、厚生労働省が行う、雇用対策は、帯に短くタスキに長しという対策がほとんどのようです。まさに、このブログの冒頭の記事に書かれてあるようなことが、実態であると考えられます。このようなことを防ぐため、アメリカなどでは、地域に密着したNPOが、地域の雇用のミスマッチを解消するために、求職者に住宅から、職業教育、職場斡旋を含む包括的なブログラムを提供するということが行われています。このような、NPOの中には、地方銀行や、建築会社までメンバーとして含まれていたりします。NPOとはいっても、日本とは全く意味合いや、規模が違います。おそらく、こちらのほうが、政府が直接手を下すよりもはるかに、効果があると思います。こういうことも、大方の日本人は知らないようです。NPOというと、奇特な人たちが、手弁当で奇特なことをするものという認識だと思います。

その先端的な試みの一つとして、たとえば、COUSERAがあります。これは、最近できた、オンラインでアメリカのいくつもの大学の授業を無料で受けられる、というブログラムです。私もさっそくいくつかの講義に登録したことは、以前のこのブログにも掲載したことがあります。従来、こうしたプログラムは、いくつかありましたが、このブログラムが他のものとは明らかに異なる点があります。それは、大学の講義が受けられるだけではなく、仕事を探すというブログラムも含まれているということです。


私は、実際にこれで求職活動を行うことはないので、実際の仕組みがどうなっているか、詳しくはわかりません。おそらく、COURSERA側から、企業に対して、求職者履歴書と、このブログラムで提供している、大学教授による講義の成績の評価内容や、COURSERAの質問応答サイト(学生同士で質問したり、それに答えるサイト)での活動履歴などが求職者の情報として企業に発信されるのだと思います。そうなれば、企業としても、履歴書や面談、テストだけでなく、より包括的に学生の適性をみることができるのだと思います。このシステムに興味のある方は、下のTEDの動画をご覧になってください。



このような先端的なこころみは、国に期待することはほとんど無理だと思います。厚生労働省は、自ら直接雇用のミスマッチを是正するようなことはせずに、地域の民間営利企業や、民間非営利企業がこのようなことをやりやすくするための、インフラを整備する側にまわるべきと思います。

しかし、ここで、はっきりさせておきますが、厚生労働省の若者雇用戦略が良かろうが、まずかろうが、いずれにしても、雇用枠を生み出すのは、本来日銀の仕事であるということです。雇用枠が増えないのに、厚生労働省が、雇用のミスマッチ対策をしていても、ほとんど効果は期待できません。部分的にみるのではなく、国全体としてみれば、雇用枠がもとのままであれば、結局若者の誰かが、厚生労働省のプログラムてで就職したとすれば、他の若者の誰かが就職できなかったということになるだけのことです。


厚生労働省の記録には、当該ブログラムにて、誰かが就職したという記録が残りますが、これによって、就職できなかった他の人の記録は残らず見えないだけで、結局は、全体では何も変わらないということになります。そうして、現在の雇用情勢をみれば、これが、実体だと思います。


こんな簡単な理屈を野田首相もわかっていないようです。雇用枠を広げる仕事をすべき日銀が、デフレ・円高促進政策ばかりやって、結局雇用枠を減らすことばかりに執着しているようでは、雇用枠はいつまでたっても増えません。そんな最中に、厚生労働省だけが、若者雇用戦略として、雇用対策を行っても効果がでないのは、あたりまえの真ん中です。日本では、雇用は、厚生労働省だけの管轄であり、日銀はまるで蚊帳の外のような扱いです。

そんな馬鹿な話はありません。  日本でも、諸外国で当たり前のど真ん中になっている、日本の中央銀行である日銀に雇用枠を広げる仕事に真面目に取り組ませるべきだし、その責めを負わせるべきであると思うのは私だけでしょうか?そうしなければ、若者雇用戦略など最初から成り立ちません!!冒頭の記事で、若者雇用戦略を批判している人たちだって、ほんど的外れです。なぜ、雇用に関する戦略に日銀が全く関与しないのか。関与しなくても、誰も気にしない!!このような慣行がいつからまかり通るようになったのか、私には全く理解できません。皆さんは、どうお考えになりますか?

 

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