2014年9月20日土曜日

英女王、独立否決のスコットランド人に「相互尊重」を呼びかけ―【私の論評】ソ連崩壊、ユーゴ崩壊、そうしてスコットランドの独立への希求!国民国家を求める声が高まる今日、中国の分裂崩壊の始まる日も近い(゚д゚)!

英女王、独立否決のスコットランド人に「相互尊重」を呼びかけ

Ice Budket Challengeをした、アレックス・サモンドスコットランド行政府首相

【AFP=時事】英スコットランド(Scotland)のアレックス・サモンド(Alex Salmond)行政府首相は19日、英国からのスコットランド独立の是非を問う住民投票での敗北を受けて辞任を表明した。一方、連合王国(英国)が無傷で残ったエリザベス女王(Queen Elizabeth II)は、独立の是非で分裂したスコットランド人の間の「相互尊重」を呼びかけた。

英首相、全国で地方分権推進を約束、スコットランド独立否決

選挙運動終盤でのスコットランド民族主義の支持急上昇にもかかわらず、投票結果は独立反対が55.3%、賛成は44.7%だった。投票率は84.6%で、英国の選挙では過去最高となった。

サモンド行政府首相はエディンバラ(Edinburgh)で行った記者会見で敗北を認め、行政府首相とスコットランド民族党(Scottish National Party、SNP)党首を11月に辞任すると発表。「指導者としての私の時代は終わりに近づいているが、スコットランドの運動は継続し、その夢が死に絶えることはない」と強調した。

独立反対派の運動員たちはスコットランド全土で歓呼し、抱き合い、踊った。デービッド・キャメロン(David Cameron)英首相は、「大変嬉しい」と語り、スコットランド独立問題は「一世代の間」は一段落したとの見方を示した。

このニュースの詳細はこちらから(゚д゚)!

【私の論評】ソ連・ユーゴ崩壊、そうしてスコットランドの独立への希求!国民国家を求める声が高まる今日、中国の分裂崩壊の始まる日も近い(゚д゚)!

イギリスの国旗をデザインとした水着

スコットランドの独立は否決されましたが、私達はこの出来事をどう解釈すべきでしょうか。

スコットランドの旗をデザインにした水着
旧ソビエトは、崩壊し最近何かと話題の多いウクライナをはじめとして多くの国々が独立しました。ユーゴスラビアも、崩壊しいくつかの国に分裂しました。

スコットランドの場合は、上記の国々のように統一されてから数十年ということはなく、イギリスに統一されてから、かなりの歴史があります。

そのあたりの歴史を以下に簡単に振り返っておきます。

1603年にイングランドとスコットランドが同君連合を形成、1707年、スコットランド合併法(1707年連合法)により、イングランドとスコットランドは合併しグレートブリテン王国となりました。

さらに1801年には、アイルランド合併法(1800年連合法)によりグレートブリテン王国はアイルランド王国と連合し、グレートブリテン及びアイルランド連合王国となりました。

ウィンザー朝ジョージ5世1922年英愛条約が発効され、北部6州(北アイルランド;アルスター9州の中の6州)を除く26州がアイルランド自由国(現アイルランド共和国)として独立しました。

1927年に現在の名称であるアイルランド共和国へと改名しました。スコットランドが独立すべきかどうかを問う住民投票が2014年9月に実施されたが独立は否決されました。

今回の独立の否決は、旧ソ連やユーゴの崩壊・分裂した国々とは異なり、やはり統一の歴史がかなり古いことと、元々生活習慣や言葉な生活・文化・習慣などが、似通っているとこがあったからだと思います。

ソ連、ユーゴなどのように崩壊して分離・独立した国々においては、そもそも言葉が全くことなるとか、宗教が異なるなどの違いがありました。

この一連の動きは、やはり国民国家への希求ということだと思います。

国民国家への希求については、このブログにも以前掲載したことがありますので、その記事のURLを掲載します。
NHK総合5年ぶり「もしドラ」アニメ化―【私の論評】もっと多くの分野の人々にドラッカーの考えを知ってもらうのに良い機会か?!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、私はこの記事で国民国家について以下のように掲載しました。
国民国家の消滅に関しては、産業革命の時代の初期から、国家間の経済的な相互依存性は国家主義的な情熱よりも強く作用するするはずであると説かれてきました。最初にこれを言ったのはカントでした。「国家の死滅」を現したカール・マルクスも、1950年代、60年代のバードランド・ラッセルなどの最高頭脳も、国民国家の死を予告してきましたが、その通りにはなりませんでした。 
旧ソ連邦のミハエル・ゴルバチョフ氏も、国民国家よりも、経済的な結びつきの方が強いだろうと考えていたのが、旧ソビエトの解体でそうではなかったことがはっきりしました。それにひき続いた旧ユーゴスラビアなどの解体でますますはっきりしてきました。現在では国民国家が主流です。これらの国々は解体によって国民国家を実現しましたが、日本の場合は違います。日本国家解体は、国民国家の破壊です。旧ユーゴスラビアなどとは、まったく反対です。 
少なくとも、現在までは、政治的な情熱と国民国家の政治が、経済的な合理性と衝突したときには、必ず国民国家のほうが勝利してきています。これからも、余程のことがない限り、これは続くことでしょう。
これは、ドラッカーの著作から引用して私がまとめたものです。

スコットランドの独立は否決されましたが、多くの場合、統合したほうが、経済的にも政治的にも合理的であっても、いくつかの国々が統合するよりは、国民国家を優先するという考え方のほうが勝っていたということです。


世界を見回せば、今でも国民国家のほうが、優勢です。いわゆる、世界市民などという考えは、全く通用しません。

何をもって、国民とするのかは、いろいろあって、ひとくくりにはできません。日本のように、そもそも日本人という括りにするのか、言語や、生活習慣による場合もありますが、何よりも重要なのは、国家としての大義でしょう。

この大義を共有できる人々が国民であり、国民国家の主役なのです。

さて、現在でも、旧ソ連や、ユーゴスラビアのように、いわゆる国民国家ではなく、多数の民族、もともとは多数の国から構成されている国があります。

いくつかありますが、その最大のものは、中国です。

この国は、先日もこのブログに掲載した記事の中の地図で示させていただいたように、いくつかの国が一つにまとまったものです。

その記事のURLと地図を以下に掲載します。
「スコットランド独立」は他人ごとでない 沖縄の日本からの分離独立、法的に可能か―【私の論評】日本にとって、沖縄独立は虚妄に過ぎず、スコットランド独立は対岸の火事。しかし、台湾独立それに続く他の中国自治区等の独立は十分にあり得る話(゚д゚)!


詳細は、この記事をご覧いただくものとして、チベットも、ウィグルも、内モンゴルも、満州ももともとは他国であり、これを建国してから間もない、中華人民共和国が武力によって侵略し、併合してできたのが、今の中国の版図です。

もともとの支那にも多く少数民族がいますが、これはあくまで少数民族ですが、チベット、ウイグル、内モンゴル、満州はそれぞれ、支那とは違います。

民族も、言語も、宗教、生活習慣、文化が異なります。そりゃそうです。もともとは、支那ではなく外国なのですから。それに統一されてから、すべて数十年以内です。

スコットランドとイングランドの相違は、これらの国々の間の相違と比べればほんのわずかのものです。

それと、最大の違いをあげておきます。

グレートブリテン及びアイルランド連合王国には、統合の象徴でもあり権威でもある王室があるということです。

残念ながら、現中国にはそのようなものはありません。この国は、元々は共産主義国家であり、建国と同時に、それまでの権威や、伝統・文化などを打ち捨てました。

それから、何度となく、現中国の英雄や統合の象徴のようなものをつくりだそうとしましたが、結局失敗しています。

最初は、毛沢東を統合の象徴としようともしましたが、結局のところ毛沢東は、あまりにも多くの人を殺しすぎたため、中国人のほとんどが、親しい人の誰かが毛沢東の犠牲となっている有り様では、できるはずがありません。

鄧小平氏は、鄭和を統合の象徴としましたが、これも鄭和は漢民族ではなく少数民族出身ということで、うまくはいきませんでした。

このようなことがあるため、習近平が主席になる前に、日本を訪れたときに、是が非でも天皇陛下に謁見しようとしたり、最近では李克強首相がイギリスを訪れる際に、エリザベス女王への謁見を強く要望したりしたのです。

これは、中国国内向けのパフォーマンスであり、自分はこういう権威ある人々と会うことができるのだという、権威づけです。どこの馬の骨ともわからない、このようなむさ苦しい連中会わなければならなかった、天皇陛下もエリザベス女王も大変お気の毒なことでありました。

結局のところ、現中国は、人民解放軍の軍事力や、公安警察、城管などにより、人民を弾圧して管理して統合するしかないのです。

城管の取り締まり風景

その結果、建国以来中国内では、毎年2万件の暴動が発生していたといわれていましたが、個々数年では、毎年10万件もの暴動が発生するようになっているそうです。最近では、あまりの暴動の多さに、中国政府もこの統計数値を発表しなくなりました。

この状況が続けば、中国はまた分裂して、まずは上記の地図で示したような状態に戻る可能性は十分にあります。

過去の中国の歴史は、統合、分散の繰り返しです。これについいては、以前にもこのブログに掲載したことがあります。そのURLを以下に掲載します。
中国分裂の筋書き-(その1)繰り返される歴史
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事で、中国の過去の歴史が統合と分散の繰り返しであったことを掲載しました。

その部分のみを以下に掲載します。
中国の歴史を振り返ると、時代が移り変わり、登場人物も変わり、一見すべてが変わって見えるのだが、非常に単純化すると以下のような図式になる。 
1.天下統一して、現代中国に近い版図の大国家ができる。 
2.官僚主義により行政が腐敗する。 
3.民衆が官僚主義の現況である大国家に反発する。それにつけこんだ新興宗教が広がり、大国家全土で反乱が多数興る。 
4.叛乱の多発に乗じて地方軍が軍閥化する。軍閥が肥大化して群雄割拠の時代となる。 
5.国内の乱れにより周辺異民族の活発化する。大国家の権威が地に落ちる。長い戦乱の世が続き多くの人民が疲弊する。厭戦的な世論が形成される。 
6.大国家の権威が地に落ちたのを機に英雄が現われ周辺異民族を巻き込み再びの天下統一をはかる。 
以上サイクルを繰替えす。多少の前後があったとしても、大体がこのパターンに従うのが中国の歴史だ。現代中国でも、まさに短期サイクルでは、建国以来繰り返されきたし、長期サイクルでもまず間違いなく、これから繰り返されいくだろう。
中国の国旗をデザインした水着 現中国の体制はいつまで続くのやら・・・・・
これについては、あの憲政史家の倉山満氏も同じようなサイクルを提唱しています。

また、経済評論家の上念司氏は、中国周辺の国々のランドパワーを増すことが、日本の安全保障に寄与することを主張しています。

それについては、このブログにも以前掲載したことがありますので、その記事のURLを以下に掲載します。
上念司「中国包囲網の決定打はモンゴル・トルコのランドパワー強化に在り!」―【私の論評】ソ連崩壊後、小国ロシアになってから国境溶解が顕著になり中国にとって軍事的脅威はなくなった!日本は経済援助を通じて中国と国境を接する国々のランドパワーを強化すべき(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、確かに中国と国境を接する、モンゴル・トルコはもとより、インドやロシアなどの国々の経済力ならびに軍事力が伸びれば、中国としてはそちらのほうにも軍事力をさかなければならなくなり、大変なことになります。

実際、安倍首相は、安全保障のダイヤモンド構想により、他国のランドパワーを増すことにも積極的です。

これについては、以下の記事を御覧ください。
安倍首相の「安保ダイヤモンド構想」、対中抑止へ完成間近-【私の論評】鳩山の構想は報道しても、安部総理の構想は一切報道しない日本のマスコミの存在意義を問う(゚д゚)!


確かに、中国周辺国のランドパワーが強くなれば、これに乗じて、チベットも、ウィグルも、内モンゴルも、満州も独立に向けて動きやすくなります。

それに、現中国としても、現在のように周辺国と直接対峙するよりも、チベット、ウィグル、内モンゴル、満州が中国から経済的には近い関係にありながらも、間に入って緩衝地帯となってもらえれば、安全保障にも都合が良いです。

今のままの大きな領土では、これを守るための軍事力も膨大なものを要します。

それよりも、何よりも、今回のスコットランドのように、チベットも、ウィグル、内モンゴル、満州などで、独立のための賛否を問えば、ほとんどの地方で、独立賛成派が大多数を占めると思います。

反対派は、後から入植した中国本土の中国人だけだと思います。

無論、現在の中国中央政府は絶対にそんなことはしないでしょうが、それは暫くの間だけです。いずれ、分裂せざるを得ない時が必ずやってくると思います。

このような、ことから中国はいずれ必ず分裂すると見ておくのが妥当だと思います。

もしそうなれば、日本としては、まずは満州と国交を樹立して、親しい関係になるべきと思います。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

【関連記事】






【関連図書】

最後の転落 〔ソ連崩壊のシナリオ〕
エマニュエル・トッド
藤原書店
売り上げランキング: 371,964


リタの鐘がなる 竹鶴政孝を支えたスコットランド女性の生涯 (朝日文庫)
早瀬利之
朝日新聞出版 (2014-09-05)
売り上げランキング: 37,710

とびきり哀しいスコットランド史 (ちくま文庫)
フランク レンウィック
筑摩書房
売り上げランキング: 54,880

0 件のコメント:

日銀追加利上げのハードルさらに上昇か、世界的な金融緩和強化の流れ―【私の論評】日銀の独立性と過去の失敗:石破政権が目指すべき金融政策の方向性

日銀追加利上げのハードルさらに上昇か、世界的な金融緩和強化の流れ まとめ 英中銀とECB、一段と積極的な緩和の道筋が予想されている 他国・地域の利下げペース加速時の日銀利上げは一段と困難との見方 日銀は、金融政策決定会合で、政策金利を0.25%程度に引き上げる追加の利上げを決定 ...