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2017年8月9日水曜日

【北ミサイル】北朝鮮が「グアム周辺に火星12を発射」と米トランプ政権に警告 小野寺防衛相名指しで「日本列島を焦土化できる」とも―【私の論評】北朝鮮の脅威が顕著になると、円高になるのはなぜ(゚д゚)!


「火星14」発射の様子
北朝鮮の朝鮮人民軍戦略軍は、北朝鮮に対するトランプ米政権の軍事的圧迫を非難し、中長距離弾道ミサイルと称する「火星12」で「グアム島周辺への包囲射撃を断行する作戦案を慎重に検討している」と警告する報道官声明を発表した。朝鮮中央通信が9日、伝えた。

 声明は、作戦案が間もなく最高司令部に報告され、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が決断を下せば「任意の時刻に同時多発的、連発的に実行されるだろう」と主張。米国に「正しい選択」をし「軍事的挑発行為を直ちにやめるべきだ」と迫った。

 トランプ政権が大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験を行ったり、戦略爆撃機を韓国に飛来させたりしていることに反発したもので、爆撃機の出撃基地のあるグアムをけん制して警告を送るためだとしている。火星12は、5月に試射され、グアムに届く5千キロ前後の射程があると推測されている。

 朝鮮中央通信は9日、「敵基地攻撃能力」保有の検討に言及した小野寺五典防衛相や、安倍晋三首相を名指しで非難し、「日本列島ごときは一瞬で焦土化できる能力を備えて久しい」と威嚇する記事も報じた。

【私の論評】北朝鮮の脅威が顕著になると、円高になるのはなぜ(゚д゚)!

北朝鮮で有事が発生し、日本にミサイルが飛んでくるかもしれない事態になったと普通に考えるとこれは、日本にとってはマイナスな出来事ですので、ドルが買われて、円が売られる円安になるのではと思われます。

しかし、現実にはそうではありません。本日もブログ冒頭の記事のよう似、北朝鮮の危機が有るにも関わらず、円相場は上昇しました。

東日本大震災
東日本大震災の時には、日本は大きな打撃を受けたにもかかわらず、円高になり、G7の国際協調による為替介入を招く事態になりました。

実は、日本にマイナスな東日本大震災の時にも円高になったときの理由は、以前にもこのブログに掲載したように、震災からの復興のため、復興のための資材を購入したりするため、円の需要がかなり高まったためです。

そうして、このようなことは、先進国では良くあることです。実際、東日本大震災の少し前に、オーストラリアで大水害が発生したましたが、このときもいっときオーストラリア・ドルが高騰しました。

ご存知のように、その後も円高が続きましたが、それは、円の需要が高まって円高傾向になったにもかかわらず、当時の日銀が金融緩和をせず、引き締め状況を維持したからです。2013年からは、大規模な金融緩和に踏み切ったため、それまでの超円高は是正され、円安傾向となりました。

金融緩和すれば、通貨安傾向に、金融引締めをすれば、通貨高傾向になります。為替相場は、六割がたはこれで説明がつきます。

簡単に言うと、米国が金融緩和をして、日本が金融引締めをすれば、ドル安、円高傾向になります。米国が金融引締めをして、日本が金融緩和をすれば、ドル高、円安傾向になります。

米国も、日本も金融緩和をしていれば、より量的な金融緩和の度合いが高いほうの通貨が安くなります。

そうなると、金融緩和をどんどん実施すれば、自国通貨をかなり安くできて、有利になると思われる方もいらっしゃるかもしれまんせんが、これにも限度があります。

どこまでも、金融緩和を続ければ、いずれハイパーインフレを招き、良いことはありません。だから、緩和を続けて自国通貨を安くするという、通貨戦争なる幻想はなりたちません。

日本銀行
これで、為替は6割りがたが決まってしまいます。そうして、長期的には通貨高、通貨安はこれが原因でほとんどが決まります。ただし、短期的には、様々な要素があるので、後の4割は、他の要因で決まるわけです。

しかし、今回の北朝鮮の脅威に関しては、特に日銀が北朝鮮の脅威に対応して、金融政策を実行しているわけではないにもかかわらず、北朝鮮の脅威が顕著になったときには、実際には円高傾向になっています。これは、日銀の金融政策とは関係のない動きです。ではなぜ、このようなことが起こるのでしょうか。
それは、大きく3つの理由によると考えられます。

①機関投資家や海外投資家のポジション解消のため
②株価下落による海外投資家の為替ヘッジのため
③日本企業や投資家などのリパトリのため

1つずつ解説したいと思います。

円高理由その1 機関投資家や海外投資家のポジション解消
最初の円高になる理由は、リスク高まったときにおこる機関投資家や海外投資家のポジション解消の動きです。 
大きなリスクがあるときは、相場がどちらに振れるかわからないために投資家がポジションを解消してフラットにする動きが活発になります。 
トランプ政権下で円安ドル高の傾向が高かったためにドル買いのポジション持っている人が多くいて、その投資家たちがポジション解消するとドル売り円買いになり、円高になるということです。
円高理由その2 株価下落による海外投資家の為替ヘッジ
北朝鮮で有事が起こった場合は、まず間違いなく日本株が下落することが予想できます。 
その際に日本市場特有の海外投資家の取引割合が6~7割という特殊性で海外投資家の動きがドル円為替にも波及してきます。 
海外投資家が日本株を買う場合は、自国の通貨から日本円に両替して日本株を買います。 
その際に為替変動のリスクがあるために同時に日本円の売りを行います。いわゆる為替ヘッジと呼ばれるもので、日本円に両替する=日本円を買うという行為を行う場合に反対の注文の日本円を売るという取引をすることによって、為替リスクを避けるというものです。 
株価が下落した場合は、株を売る際に日本円を売るという注文を解消し、日本円を買うことになります。 
株が下落すると日本円を買う注文が入り、円高になるのです。 
さらに海外投資家が、日本株を買う場合は、レバレッジを利かせて日本円を売る注文を出します。 
株価が下落した場合は、証拠金を積み増して、ロスカットを防ぐために円買いを積み増すことも起こります。 
このように日本の株価が下落した場合に海外投資家の為替ヘッジの動きのために円高になるのです。
円高理由その3 日本企業や投資家などのリパトリ
リパトリとは、リパトリエーションの略で企業や投資家が海外から本国に資金を引き揚げることを指します。 
東日本大震災の際にも保険金の支払いなどで保険会社が海外資産の一部を日本円に買える動きが出ています。 
日本に打撃があった場合は、日本で必要なお金を集めるために海外の資産を日本円に変える動きが出てきます。 
その場合も日本円が買われて、円高傾向になります。 
東日本大震災の時には、先に述べたように、円の需要が高まったにもかかわらず、日銀が金融引締めの姿勢を崩さなかったことが、円高の主要因であったことを述べました。 
それと同時に、このリパトリを先読みしてのヘッジファンドなどの円買いが入り、さらに円高に拍車をかけました。 
北朝鮮の脅威が高まると、円高になる理由として上記の3つの動きがあると思われます。ただし、短期(1年以内)の為替はほとんどがランダムウォークであり、予測は困難です。

北朝鮮有事が起こる確率は極めて小さいと思いますので、1994年や2003年のように米国側が攻撃をあきらめるというシナリオが一番ありえそうですが、最悪のシナリオを想定しておくのも重要なことだと思います。

最後にアナリストでも意見が分かれていますので、北朝鮮有事の際に円高になるか円安になるか予想した記事を一覧にします。

私が調べた限りですので、抜け漏れ等はありますが、参考にしてください。

○円高予想

・ロイター:コラム:北朝鮮有事の円相場シミュレーション=佐々木融氏

・日経新聞:北朝鮮有事で円高どこまで 豊島逸夫の金のつぶやき

・Newsweek 「トランプ円高」が加速 朝鮮半島リスクとドル高けん制で

・MONEY VOICE 北朝鮮の隣なのに安全通貨?「無慈悲な日本円買い」はなぜ起こるのか=久保田博幸

○円安予想

・ロイター:コラム:朝鮮半島有事の「日本売り」シナリオ=斉藤洋二氏

・SnkeiBiz:最悪なら「円安」シナリオも…迫る「Xデー」 朝鮮半島有事で日本経済どうなる

・フィスコ:【市況】【フィスコ・コラム】:円:北朝鮮リスク、円はどちらに動くのか?

アナリストの記事では、円高のほうが若干多いようです。私も、その立場をとります。なぜなら、北朝鮮有事の場合でも日本が甚大な被害を受けなければ、上記で述べたようなことが繰り返されることになるからです。

さらに、このようなことはあってはならないことですが、実際に核ミサイルが日本の都市に落とされたとして、現状の北朝鮮の核では大都市の場合は、たとえ、北朝鮮が全部の核を打ち込んでも全部を破壊することは不可能であるため、かなり大きな被害にあったとしても、日本国のインフラなどの大部分は残り、いずれ復興に入るはずです。

そうなれば、東日本大震災のときと同じく、円の需要が増し、当然のことながら、円高となります。

その時に、日銀が金融緩和をすれば、円高を防ぐことができます。東日本大震災あたりまでの、日銀はしょっちゅう金融政策を間違えていましたが、13年頃からようやくまともになりました。北の脅威が顕著になれば、円高にふれることはわかりきっているので、今後はまともな政策を実行していただきたいものです。

それにしても、国家破綻に近かった、ロシア危機や韓国通貨危機、アルゼンチンのデフォルト時には、当然のことながら超通貨安に悩まされました。

日本の場合は、国家が破綻するほどの災厄に見舞われれば別ですが、そうでなければ、円高にみまわれるということですから、いかに日本が強固な基盤の上に成り立っているのか良くわかります。

北朝鮮ウォンなど、今でも価値が低いですが、北有事ということにでもなれば、国際的には紙くず同然になるものと思います。

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