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2018年12月2日日曜日

米、新たな対中関税を90日延期 首脳会談 不公正取引の改善へ協議継続―【私の論評】90日後にトランプは一気に本丸に攻め込み、中国に内部改革と長年の悪行の放棄を迫る(゚д゚)!

米、新たな対中関税を90日延期 首脳会談 不公正取引の改善へ協議継続

中国の習近平主席(左端)との会談に臨むトランプ大統領(右端)=1日

 トランプ米大統領と中国の習近平国家主席が1日、アルゼンチンの首都ブエノスアイレスで会談した。焦点の貿易分野では、米国が来年1月に予定した制裁関税の引き上げを90日延期。中国による知的財産権侵害の改善策に関する協議の継続で合意した。中国は農産物を中心に米国からの輸入拡大も進める。米国は90日以内に中国の改善策に合意できなければ、関税引き上げを実施するとしている。

 トランプ氏は会談後、ホワイトハウスが発表した声明の中で、「米中双方に無限の可能性をもたらす生産的な会談になった」と評価した。会談は20カ国・地域(G20)首脳会議に合わせて実施された。

 声明によると、米中は最大90日間、中国の知財侵害や外国企業に対する技術移転の強要、サイバー攻撃などの改善策を集中的に協議。貿易不均衡の是正に向けて、農産物やエネルギーなど、中国が購入を増やす具体的品目についても詰める。

 米国は知財侵害などの不公正貿易を問題視。中国からの輸入品に高関税を課す制裁を段階的に発動し、これまで中国からの輸入額のほぼ半分に当たる計2500億ドル(約28兆円)分に関税を適用。このうち2千億ドル分の税率を来年1月から現行の10%から25%に引き上げる予定だった。

 米政府は、中国の不公正取引が改善されていないとして、さらに2670億ドル分に対する新たな制裁関税を実施する準備があると表明し、圧力をかけていた。

 外交・安全保障分野では、北朝鮮の非核化問題に関し「大きな進展があった」との認識で米中が一致したとした。また、トランプ氏と習氏が北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長と朝鮮半島の非核化実現に向けて一緒に取り組んでいくことで合意したとしている。

 トランプ氏はさらに、金氏に対する「友情と敬意」を表明したという。

 一方、トランプ政権が掲げる「インド太平洋戦略」の推進に向けた最大懸案の一つとなっている、中国による南シナ海の軍事拠点化に関しては、声明では言及はなかった。

【私の論評】90日後にトランプは一気に本丸に攻め込み、中国に内部改革と長年の悪行の放棄を迫る(゚д゚)!

2018年G20にあわせて設定されたトランプ大統領と習近平国家主席との米中首脳会談が終わりました。結論としては、上の記事にもある通り、米国側が追加関税導入を90日間猶予するというものです。

中国側はこの期間に、知財保護、技術移転の強要問題、サイバー攻撃などの分野で改善策を示す必要があるとのことです。しかし、これはほとんど無理というものでしょう。

今回の米中首脳会談では、米国側から
トランプ大統領、ナバロ大統領補佐官(通商担当)、ライトハイザー通商代表、ムニューシン財務長官、カドロー国家経済会議議長、ボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)、ポンペオ国務長官、ケリー大統領首席補佐官、クシュナー大統領上級顧問
中国側から
習近平・国家主席、劉鶴・副首相、楊潔篪・共産党政治局員(外交担当)、王毅・国務委員兼外相、何立峰・国家発展改革委員会主任、丁薛祥・共産党中央弁公庁主任、鐘山・商務相、崔天凱・駐米大使、王受文・商務次官
が出席しました。

今回の会議で注目すべきは、ライトハイザーとナヴァロという超強硬派が出席し、そのうえで協議が一応成立したということです。

対中タカ派のライトハイザーUSTR代表(左)とナバロ国家通商会議委員長

この二人が出席することから、市場ではそもそも協議が成立しない可能性もあるのではないかと懸念されていました。

中国側は90日以内に、知的財産権保護、技術移転の強要、サイバー攻撃、非関税障壁、サービスと農業の市場開放の分野でさらなる改善策を示す必要があります。

90日間で合意できない場合、米国側は中国からの輸入品2000億円分にの関税を25%に引き上げるとしています。

中国は米国から農産物(大豆など)やエネルギー(原油、LNG)、工業製品(航空機など)を輸入することで対米貿易黒字を減らす必要があります。

今回の米中首脳会談の最重要ポイントは、「中国製造2025」への言及がなかったことです。中国製造2025は、中国が国を挙げて産業を保護、育成する政策で、その根幹にあるのが「自前で用意できるものは何でも自前で用意しよう」という思想です。

『中国製造2025』の5大プロジェクト


中国は半導体分野で大幅な貿易赤字を抱えており、これはエネルギー分野における貿易赤字よりも大きいのが実情です。

中国は大量の最新鋭半導体露光装置を導入することで、この輸入に頼り切った状況を打破しようとしています。

中国の半導体メーカー合肥長鑫(睿力集成電路/イノトロン)が、オランダのALMSから7nmプロセス用EUV(極端紫外線)露光装置の調達めざして交渉中とのことです。

ASMLは欧州、オランダの半導体製造装置メーカーです。ASMLが強みとするのは半導体製造装置でも上流部にあたる部分、とくに半導体露光装置(ステッパー、フォトリソグラフィ装置)の業界において世界の最先端を走る企業です。

このことが、米国側の利害と非常に大きな衝突をもたらしています。


今回、この中国製造2025への言及がなかったのは、米国は「製造2025」の根底にある中国が「自前で用意できるものは何でも自前で用意しよう」という考え自体には反対ではないということを示しているのだと思います。

確かに、このような考え方自体は、中国であろうが、他の国であろうが、それは当該国の任意で実施すべきことであり、それに対して反対することは、内政干渉です。

ただし、自前で用意するときに、窃盗とか強制技術移転、その他の不公正な方法で実行することに対しては、米国は断じてこれを許さないとしているのです。

米国側は論点を明確にするために、敢えて「中国製造2025」という言葉を使わなかったのでしょう。

中国側としても中国製造2025の破棄だけは、絶対に応じるわけにいかない部分でした。もし米国側が破棄を要求すれば、首脳会談は決裂していたことでしょう。

それにしても、中国は米国からの工業製品の輸入拡大や農産品の即時輸入開始を約束してやっと、米国から追加関税引き上げの90日猶予を得ました。しかし今から約3ヶ月間、米国の要求に応じて構造改革を断行しなければならないのは中国です。これはほとんど不可能だと思います。

習近平の首の皮の一枚はこれで、一応繋がったようですが、彼に与えられた猶予時間はわずか90日、90日以内に今までの悪行 を改めて米国の要求を受け入れなければ今度こそは「斬首」ということでしょうか。

これは、全く対等の交渉ではありません。まるで戦勝国と敗戦国との暫定的休戦協定のようです。米国の絶対的優位です。

今度の米中合意は貿易戦争の収束や緩和などではなく、前哨戦に次ぐ本戦の開始を意味するものでしょう。中国に追加関税引き上げの90日猶予を与えたことで、トランプ大統領は、この90日間で中国がどのように出るのか見極める腹です。

90日間は短いですが、この期間にすべてはできないものの、どのくらいの期間で何をどのように変えるかとなどは決定することができるはずです。90日後に中国は米国にこれらを、すぐにできることとともに回答することになるでしょう。

トランプ大統領としては、この反応をみてから、一気に本丸に攻め込む勢いで、中国に内部改革と長年の悪行の放棄を迫っていくことになるとみられます。トランプ大統領の戦いはこれからです。

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