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2020年6月23日火曜日

香港の国家安全法は「内政問題」という誤った主張— 【私の論評】2047年問題があっても西側民主主義諸国は団結により、当面の香港の自由を守る価値は十分ある!(◎_◎;)

香港の国家安全法は「内政問題」という誤った主張


岡崎研究所

 6月6日号の英Economist誌は、「香港は中国と世界をつなぐ通路であり続けられるのか。金融センターとしてのその将来はこれに掛かっている」との社説を掲載している。


 今のところ、新たな国家安全法を香港に適用するという5月28日の中国共産党の決定以降も、香港の金融市場は比較的落ち着いているが、今後どうなるかを占う基準として、エコノミスト誌の社説は、次の3つを挙げた。

 1つ目の基準は、中国が新しい国家安全法をどのように実施するか、である。たとえば、独立した裁判官によって適用されるのか、中国共産党に同情的な裁判官によって適用されるかである。2つ目は、アメリカが香港のドル支払いシステムを制裁対象とするかどうかである。もし制裁対象となれば、香港の金融市場にとって即時の混乱を引き起こす可能性がある。そして最後は、中国共産党が香港での抗議行動の抑圧や政府批判者への威嚇だけではなく、裁判所、中央銀行、規制当局、会計処理の適正さなど、香港の独立した機関を損なわないかどうかである。香港がこれらのテストに合格しない場合、グローバルな金融センターとしての地位は失うことになるだろう。

 香港情勢が今後どうなるか、まだ不明確な点が多くあるが、はっきりしている点もある。中国の王毅外相は、香港問題は中国の内政問題であり、他国は内政には干渉しないようにとの発言をしている。が、これは間違った主張である。香港の1997年の中国返還を定めた1984 年の「英中共同声明」は、名前が共同声明なので誤解している人もいるが、れっきとした条約で、批准条項もあり、英中間で批准書も交換されている。


 今回、国家安全法を中国の全国人民代表大会(全人代)で作ると言うのは、香港は立法権を持つという条項に違反している。中国が条約という国際法に違反していることは、はっきりしている。そのことに文句をいうのは内政干渉には当たらず、条約は守られるべしとの国際法の大原則に基づく正統な主張である。

 「英中共同声明」については、その違反を公式に咎めうるのは当事国である英国であるが、香港の法的地位は、他国の権益にも関係がある。日米両国も、そういう利害関係国として一定の発言をすることが許されるだろう。

 最近の中国は、新型コロナウイルスを米軍が武漢に持ち込んだとか、中国が武漢で新型コロナウイルスの感染拡大を抑え込んだことに世界は感謝すべきとか、安倍総理が新型コロナウイルスの発生を中国の責任にしようとしたと非難するなど、ゲッベルス並みの嘘も百回繰り返せば真実になるということに基づく宣伝を行っている。米軍がウイルスを持ち込んだとの陰謀論を最初に打ち出した趙立堅は報道官に取り立てられている。今度の王毅外相の「内政干渉論」も同工異曲である。

 こういう中国の国際法違反や不当な宣伝工作については、厳しく追及していくべきであろう。

 香港の経済の将来については、米国がどのような制裁を課すかにより変わってくる。上記のエコノミスト誌の社説があげている3つのポイントは重要であるが、政治的には反発するが、経済的にはおおむね従来通りという姿勢は良くないと考えている。中国がその国際法違反に何の代償も払わないということにしてはならない。香港人の経済的利益を損ねるのは忍び難いところがあるが、国際法違反に対しては、きちんとした不利益を中国に与えるべきであろう。そうでないと、中国の国際法違反行為は南シナ海でのものを含め、ブレーキがかからず、将来に禍根を残すことになろう。

 レーニンは「資本家は利潤のためには自らを縛り首にする縄でさえ売る」と言ったことがあるが、香港についての政経分離の対応は中国の狙い通りになることであるほか、中国の軽侮を招くと思われる。

 香港問題については、西側民主主義諸国の団結を重視すべきである。それが日本の安全にもつながる。

【私の論評】2047年問題があって西側民主主義諸国は団結により、当面の香港の自由を守る価値は十分ある!(◎_◎;)

冒頭の記事にもあるように、香港の1997年の中国返還を定めた1984 年の「英中共同声明」は、名前が共同声明なので誤解している人もいるが、れっきとした条約で、批准条項もあり、英中間で批准書も交換されています。

しかし、これとは別の問題もあります。「2047年問題」です。今から27年後、2047年は、英国と中国との取り決めによって「一国二制度」が終了する期限です。27年後は遠い先のように感じられますが、多くの人、特に香港若者にとっては「近い将来」でもあります。20歳の若者は、27年後には47歳であり、その頃は十分に生きており社会の中核を占めるような存在になっている可能性がかなり大きいです。

最近香港の若者の中に「独立」を目指す動きが出てきていましたが、私にはこれは、当然の動きのように見えます。むろんそれを中国本土の政府は許さないでしょう。

そもそも一国二制度とは何かについて振り返っておきます。それを可能にしているのは「特別行政区」の制度です。中華人民共和国憲法(1982年以降)第31条は「国家は、必要のある場合は、特別行政区を設置することができる。特別行政区において実施する制度は、具体的状況に照らして、全国人民代表大会が法律でこれを定める」と規定しました。


香港とマカオについて全国人民代表大会が「特別行政区基本法」を制定し、2つの特別行政区を設置したのです。

この「二制度」故に香港の人々はこれまで基本的にはイギリス統治の時とほぼ同じ生活スタイルを保ち、法的権利を享受してきました。そのため日本人が香港に行っても、「自分の国とは違う」とはあまり感じませんでした。親しみが持てました。大陸中国の本土に旅行に行けば、橋(戦略的施設との判断)の写真も許されないのとは全く違います。現在までの中国本土と香港は、実質的に「違う国」のようです。

しかし中国本土政府は、いずれ完全に返還される香港への統治スタイルを徐々に強化・硬化してきました。「いずれ帰ってくる」のだから、その準備を中国としても急がねばならないと考えたのかもしれません。

2014年6月10日に公表された中国国務院(政府)新聞弁公室の白書では、香港特別行政区における一国二制度について「香港固有のものではなく、全て中央政府から与えられたものである」と定義しました。これは、中央政府がいつでも剥奪できると言っているようなものでした。

これに並び、同年8月31日に第12期全国人民代表大会常務委員会が2017年からの香港の普通選挙制度について、事実上の香港親中派優遇、民主派締め出し策を設けることを発表しました。この頃から、香港では中国中央政府の支配力強化に対する強い懸念が表面化していました。

同じような地位にあったマカオが、香港に先行して中国化が進むのを見て、香港の人々の間に警戒感が強まったこともありました。マカオでは返還前の一二・三事件(1966年12月3日にポルトガル領マカオで発生したマカオ史上最大の暴動)から事実上本土との一体化が進みました。今ではマカオは返還後の急成長の原動力となった、中国本土からの観光客に強く依存している状態です。


中国が香港市民に中国本土の人民とは異なる権利(発言の自由、経済的豊かさ、選挙への参加など)を認めてきた一国二制度が、始まったのは1997年です。英国の植民地だった香港が中国に返還されるにあたり「50年間は資本主義を採用し、社会主義の中国と異なる制度を維持する」ことが約束され、外交と国防を除き「高度な自治」が認められたのです。香港の憲法にあたる基本法には、中国本土では制約されている言論・報道・出版の自由、集会やデモの自由、信仰の自由などが明記されています。

問題は2047年以降の香港がどうなるのかです。基本的には「一国一制度」になります。ということは、「言論・報道・出版の自由、集会やデモの自由、信仰の自由」などが香港の人たちから剥奪されることになります。

それを香港の人々、特に若者は恐れています。香港は政治環境としては日本など西側の先進国に近いです。皆それを享受し、当然だと思ってきました。だからこそ、27年後に「そうではなくなる」ということは、香港の人々にとっては深刻な問題なのです。

中国のサイドから見れば、27年後の「もうすぐに、いずれ本土と一緒になるのだから、何を今更」という空気感があります。しかし各種の自由を謳歌してきた香港市民には、その傲慢さが許せないようです。香港市民には、「中国の発展の原動力は我々だった」という誇りもあります。

香港市民にとって「27年後に自分がどこに身を置くべきか」は実に切実で深刻な問題なのです。香港ではすでに、「富裕層は米国や欧州など海外に出るのではないか」「多くの人たちは台湾に行くのではないか」との見方がかなり人々の口の端に上っています。国家安全法の導入は、香港市民の先行き不安を一段と強めたと言えます。中国は香港との境界線近くに軍隊まで派遣しました。香港市民の警戒心が強まるのは当然です。

そうした中で当然出てくるのが独立という発想です。昨年9月26日の日経電子版には『「最終目標は独立だ」 香港、一国二制度に不信』という記事がありました。「中国70年目の試練」という、とても良い特集の一つで、ここには「一国二制度は失敗だった。最終的な目標は中国からの独立だ」と主張する若者の声が載っていました。この声は実は多くの香港人を代表するものではないかと思います。

無論中国は将来の台湾を視座に置きながら、それを一番恐れています。これは「一つの中国」というスローガンの崩壊をも意味するからです。そもそも一国二制度は台湾を想定して作られた制度だと言われでいます。

日本の植民地だった台湾をいかにして中華人民共和国に組み入れるかを討議する中で出てきた発想です。しかしそれが実際に適用されたのは香港とマカオでした。台湾でも「独立派」が強い勢力を持っています。

香港が抱える現時点の経済問題も深刻です。香港市民の大部分は、マンションは高根の花ですし、家賃も非常に高いです。今でも普通の若者が部屋を借りるのに相当苦労するといいいます。加えて物価の高さが大きな問題です。それに加えて貧富の格差の大きさもあります。

香港の家賃・生活費が高い一因は明らかに中国本土から資金と人が香港に流れ込んできているからです。香港の一般市民は、それもあって中国本土の富裕層や、中国政府に対する怒りを増しています。中国本土の人民は、「自分たちより先に豊かになったと言って、我々を馬鹿にしている」と香港の人たちに反感を持つという悪循環になっているようです。本土では「香港嫌い」が増えているとも伝えられています。感情的な対立が激化しているのです。

香港では平均住居価格を平均家庭年収で割った数値が世界一で、東京の3倍以上

香港問題については、西側民主主義諸国の団結により、当面香港の「言論・報道・出版の自由、集会やデモの自由、信仰の自由」が守られる可能性は残ってはいます。

しかし、2047年は、英国と中国との取り決めによって「一国二制度」が終了する期限です。その時には、現在の中国の体制が続いていれば、香港でも「言論・報道・出版の自由、集会やデモの自由、信仰の自由」は失われるのです。

ただ、希望もあります。それは、中国共産党一党独裁政権は、過去のものになっているかもしれないからです。

ご存知のように、従来の米中の対立は、コロナ禍を契機に〈米国+他の先進国等〉と〈中国+イラン等の経済弱小国〉の戦いの様相を見せるようになってきました。

特に、香港問題の当事者である、英国は従来は、立場を鮮明にしていませんでしたが、香港問題を機に、中国と対決する姿勢を固めました。特に、米英加豪は対中国で一致しています。

日本やEUもはっきりしないところがありましたが、これも中国と対決する側に傾いていますし、いずれはっきりと対中国へと踏み切るでしょう。特に、私としては、安倍総理に、日独仏伊をまとめて、米英加豪との橋渡しをしていただきたいと思っています。

そうなれば、世界の国々は対中国でまとまるでしょう。親中国的な国はわずかで、しかも中国の資金をあてにするような経済的弱小国がほとんどです。これでは、中国にはかなり部が悪いです。

そうして、こうした先進国の対中国への結束は、コロナ禍が推進したと思います。今後の世界でも中国の体制が変わらなければ、いつ何時コロナ禍のような禍が再び発生するかもしれない疑念は拭いされないからです。

米国等の国々は、中国が体制を変えることを望むでしょう。ただし、中国が体制を変えれば、中国共産党は統治の正当性を失い、崩壊する可能性が大きいです。

それを嫌い中共が体制を変えることを拒むかもしれません。そうなれば、米国等の国々は、徹底的に中国の経済を弱体化されることになるでしょう。

そうなると、27年後には、確実に中国の体制が変わっているか、香港やウイグル、チベットや台湾に対して、強い影響力を及ぼすには経済が衰退しできなくなっている可能性が大です。

であれば、現在西側民主主義諸国は団結により、当面の香港の「言論・報道・出版の自由、集会やデモの自由、信仰の自由」が守る価値は十分にあります。

中国が永遠に香港を支配し続けることはできないのです。それを中国に知らしめるためにも、先進国は団結して香港の自由を守り抜くべきです。

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2020年6月19日金曜日

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国家安全法で締め付けられる香港人の受け入れ

岡崎研究所

 中国は、香港国家安全法の適用を強行し、香港への締め付けを強化し、国際的約束である香港の一国二制度を葬り去ろうとしている。

 これに対し、トランプ大統領は5月29日、記者団を前にホワイトハウスで「香港には最早十分な自治はなく、返還以来我々が提供して来た特別な待遇に値しない」「中国は約束されていた“一国二制度”の方式を“一国一制度”で置き換えた」と述べ、「香港に異なる特別の待遇を与えている政策上の例外を撤廃するプロセス」を始めると言明した。これは、昨年成立した「香港民主主義・人権法」に基づく措置である。その他、トランプは中国の悪行を列挙し、「(中国寄りの)WHOとの関係を停止する」ことを含め、各種の対応策を講じることを予告した。


 香港に対する特別な待遇の撤廃は、犯罪人引渡、技術移転に対する輸出規制、ビザ、香港を中国とは別個の関税地域として取り扱うことなどに関係するとされるが、トランプは具体的詳細には踏み込まなかった。トランプは敵対的な調子で対中非難を展開したが、例によって、言いたいことを言っておいて、具体的詳細は中国の出方を測りつつ今後の検討に委ねるということのようである。対中輸入に発動している高関税を香港に適用するか否かの問題にも言及しなかった。

 香港に対する特別待遇の撤廃は強い副作用を伴うことになろう。香港住民の生き様を大きく害し、香港の金融センターとしての地位を損ない得る。2000社ある米国企業は撤退するかも知れない。資本も逃避するかも知れない。香港の価値が下がることによって世界は関心を失う。場合によっては、香港は自壊する。そのことは北京の思う壺かも知れない。仮に米国が、香港の自治の侵食に責任のある中国および香港の当局者に対する制裁を発動するとしても、それで中国の行動を抑止できる訳ではない。

 そこで、5月29日付けのウォールストリート・ジャーナルの社説‘Visas for Hong Kong’が提案するのが、希望する香港人を米国へ受け入れ、更には市民権を与えることである。香港国家安全法が施行されるに伴い、香港を脱出することを希望する人達は当然いるであろう。脱出するだけの財力ある人達の数は限られようが、多くは、まずは米国を目指すであろうから、米国は当然受け入れるべきである。

 逃避する香港人の自国受け入れについて、上記ウォールストリート・ジャーナル社説は中国に対する懲罰という捉え方をしているが、むしろ、自由と人権の擁護という理念に基づく行動、あるいは人道上の行動と捉える方が良いのではないか。5月28日、英国のラーブ外相は英国が一定の香港人を受け入れる用意のあることを表明したが、これも英国の旧宗主国としての立場を考慮して香港の人達を守る趣旨によるものと理解すべきであろう。ラーブは「中国が国家安全法を履行するに至るのであれば、香港の英国海外市民旅券(BNO passport)の所持者が英国に入国し、現行の6ヶ月ではなく、12ヶ月(更新可能)就労し就学することを認める、このことは将来的に市民権を得ることを可能にする」との趣旨を述べた。また、5月28日、台湾の蔡英文総統は、香港人を受け入れ支援する仕組みを整備したいと述べるとともに、過去1年香港からの移住者は41%増え5000人を超えていることを指摘している。

 日本への逃避を希望する香港人も、数は多くはないであろうが、出て来る可能性は十分予測できる。その場合、現在の入国管理制度でどうなるのかという問題があるかも知れないが、門前払いだけはすべきでない。むしろ、有能な人材の確保の観点を含め予め検討しておく必要があろう。 


【私の論評】香港市民が観光では日本を頻繁に訪れながら、移住となると豪英加・台湾になるのか、今一度真摯に考えてみるべき!(◎_◎;)

香港人の受け入れの話は、英国では昨年もありました。それについては、このブログでも取り上げたことがあります。その記事のリンクを以下に掲載しました。
香港人に英国籍付与、英議員の提案は香港問題の流れをどう変えるか?―【私の論評】コモンウェルズの国々は、香港市民に国籍を付与せよ(゚д゚)!
英国国会議員、外交委員会委員長のトム・タジェンダット(Tom Tugendhat)氏

この記事は、2019年8月17日のものです。元記事は、立花 聡氏によるもので、以下のようなことが、掲載されていました。
「 英国国会議員、外交委員会委員長のトム・タジェンダット(Tom Tugendhat)氏は、1997年香港撤退(中国返還)の際に放置されてきた市民の国籍問題の解決を促し、英国籍付与の範囲を香港の中華系市民(ホンコン・チャイニーズ)にも及ぶべきだとし、英国が香港から引き上げた当時そうしなかったのは間違いであって、それを是正すべきだ(wrong that needs correcting)と主張した(8月13日付け英字紙デイリー・メール Online版)」。
なおこの記事には、立花 聡氏自身のコメントが寄せられていたのですが、最近はもっぱらツイッーを用いているので、コメントのほとんどはツイッターで寄せられるで、ブログに直接コメントが寄せられることは滅多になく、立花氏からのコメントがあったことに数ヶ月間も気づかず、比較的最近気づいたので、そのままになています。せっかく寄せていただいたのに、残念なことをしてしまいました。ここにお詫びいたします。(ただし、この記事も読んでいだければということになるとは思いますが・・・・)

この元記事を受けた形で、私自身は【私の論評】において、英国だけではなく、顧問ウェルズの国々も香港市民に国籍を付与すべきだと主張しました。

コモンウェルスの国々とは、イギリスの旧植民地の国々のことです。 地図で示すと以下の国々です。


これらの国々と英国は、今でも関係が深いですし、法体系なども似たところがあり、香港市民も全く縁もゆかりも無い国々よりは、移住しやすいと思います。

元々コモンウエルズとは、コモンウェルス(英: commonwealth)とは、公益を目的として組織された政治的コミュニティーを意味する用語です。歴史的には共和国の同義語として扱われてきましたが、原義としては哲学用語である「共通善 (英: common good)」を意味します。だからこそ、これらの国々が香港の人々を受け入れるべきと思ったのです。

かつてイギリスの植民地だった諸国との緩やかな連合体として「Commonwealth of Nations」が結成されており、その加盟国の中で現在もイギリスの君主を自国の君主元首)として戴く個々の国を「Commonwealth realm」(「レルム(realm)」の記事も参照)と呼びます。

米国でも、コモンウェルスを名乗っていないものの、バーモント州は、その州憲法の4箇所で「The Commonwealth」と自己言及しており、同様にデラウェア州も、州憲法で「当コモンウェルスの安全を脅かし得る手段を以って…」と自己言及しています。

これらコモンウェルズの国々と、米国のパーモント州や、デラウェア州なども香港の人々を受けいれる歴史的な根拠があるわけです。

日本にはこのような歴史的背景はないのですが、コロナ以前の香港人の日本訪問客はかなり多いです

コロナ直前の、2019年の年間訪問者数は、229万700人でした。これまで過去最高だった 2017 年 の223万1568人を超えました。年々、右肩上がりに上昇しており、2013年から約3倍ほど増えています。

香港の人口は、2018年で745.1万人ですから、この訪問客数は、かなりのものです。単純計算では、香港人の4人に1人以上は日本を訪れている計算になります。

もちろん単純に香港人の4人に1人が日本を訪れているというわけではなく、リピーターの数が多いことが見て取れます。日本政府観光局(JNTO)の調べによると、日本を訪れる香港人のうちリピーター率は82.1%でした。

訪日香港人人旅行者の消費額 は、2019年は約3,525億円。2013年時点では1,054億円程度だったため、数年で3倍以上に増加しています。

ちなみに、訪日香港人旅行者の都道府県別訪問率は以下の通りです。
1位:⼤阪府(33.3%)
2位:東京都(30.0%)
3位:千葉県(27.6%)
4位:京都府(20.2%)
5位:福岡県(11.2%)
出典:観光庁『訪日外国人消費動向調査(2018年版)』
最近の訪日香港人旅行者の傾向として、関西地方の人気が高く、大阪、京都、奈良へセットでまわる人が増えています。大阪はグルメやショッピング、京都は金閣寺、銀閣寺、清水寺など写真に収めたくなるような歴史の古いお寺巡りの人が多く訪れています。

リピーターが多いため、定番のスポットを巡るより、観光客があまり多くない穴場スポットへ行きたがる人が増えています。また、香港から日本までのLCCの路線が多く、東京や大阪など大都市だけではなく、九州や四国や中国地方の直行便もあります。

そのため、同じ場所へ旅行するより、いろいろな都市を制覇したがる傾向にあります。また、短期間で多くの観光地に行きたいという願望があります。さらに屋台文化のため、夜遊び好き。夜遅くまで営業している商業施設やドラッグストアの買い物が好きです。朝から夜遅くまで出かけて、時間を存分に使う人も少なくありません。

日本にこれだけ頻繁に訪れる香港の人々ですが、いざ移住ということになると、やはり
は豪英加ということになりそうです。台湾にも関心が高まっているそうです。

豪英加は、香港市民は、無論コモンウェルスの価値観を共有しているという側面があるのでしょう。それに、香港では、広東語と英語が公用語です。英語が公用語という豪英加は、魅力でしょう。

香港の人は広東語を話しますので、本当の中国語、北京語を理解しているか疑問に思う日本人が多いです。

また、台湾のことを違う国と考え、中国語と言ってもたぶん中国の中国語とは違う言葉を話していると思う日本人も少なくないでしょう。

実は北京語は香港でも台湾でも通じます。しかも香港と台湾だけでなく、マカオ、シンガポール、マレーシアでも通じます。香港は1997年に中国に帰還されてからすでに20年以上経ちました。

返還されてから中国語と中国史が必須科目になりましたので、今の香港の若い世代はもちろんのこと、非常に年配の方以外、ほとんどの世代の香港人は中国語を話せます。

ただ家族や友達同士での会話となるとやはり広東語が主流です。

台湾は香港よりもっと前、内戦後国民党が台湾に引っ越ししてから、中国語の普及教育が始まり、すでに70年位の歴史があります。

香港と違って、今はもはや家族、友達同士など身内でも中国語で会話している台湾人はとても多いです。

台湾の友人から聞いた話では、台南ではまだ家族で方言「台語」を使っている家庭はありますが、台北ではほとんどみんな中国語で会話しているとのことでした。

そうなると、台湾は香港人にとっては言葉も通じるし、文化的にも近いということで、魅力でしょう。

香港の人々にとって観光目的で日本に来るのと、日本に住むということでは、やはり隔たりが大きいのでしょう。

ただ、安倍晋三首相は11日の参院予算委員会で、香港の金融センターをはじめとする人材受け入れを推進する考えを表明しています。「香港を含め専門的、技術的分野の外国人材を受け入れてきた。引き続き積極的に推進する」と強調しました。自民党の片山さつき氏への答弁でした。

中国が香港への統制を強める「香港国家安全法」を巡り、片山氏は「香港の金融センターの人材を日本が受け入れるのも選択肢ではないか」と質問しました。

首相は「東京が金融面でも魅力あるビジネスの場であり続け、世界中から人材、情報、資金の集まる国際都市として発展を続けることは重要だ」と述べました。「金融センターとなるためには人材が集まることが不可欠だ」とも語りました。

英国のジョンソン首相は中国が香港国家安全法を撤回しない場合、香港の住民に英国の市民権を取得させる意向を示しています。香港情勢について首相は「日本としても深い憂慮を表明している。関係国とも連携し、適切に対応する」と強調しました。

英国ジョンソン首相

首相は新型コロナウイルスの感染拡大を受けてマスクや防護服などのサプライチェーン(供給網)を見直す意向も示しました。国民生活で必要な製品に関し「保健衛生、安全保障などの観点で、価格競争力だけに左右されない安定的な供給体制を構築する」と述べました。

中国を念頭に過度な依存を避ける考えを示したものです。「多角的な自由貿易体制の維持、発展が前提だ」とも語りました。

新型コロナの感染拡大を踏まえ、首相は「国難とも言える状況の中で様々な課題が浮かび上がった」と指摘しました。主要7カ国首脳会議(G7サミット)などの場を通じ「世界のあるべき姿について日本の考え方を提示し、新たな国際秩序の形成をリードする」と主張しました。

この言葉の通り、日本も新たな国際秩序の形成をリードできるようにしていただきたいものです。そのための指標として、香港の優秀な人材が日本を目指したくなるように、社会経済をレベルを上げていくべきです。経済的には日本は、今後大発展している可能性があることをこのブログでも掲載したとがあります。

香港市民がなぜ、観光では日本を頻繁に訪れながら、移住ということになると豪英加・台湾になるのか、今一度真摯に考えてみる必要がありそうです。これらの国々あって、日本にはない魅力とは何なのかを探る必要がありそうです。


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