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2017年8月21日月曜日

日本を完全雇用・適度なインフレに導く、極めて効果的な方法があった―【私の論評】数字を見ればわかる、未だ緊縮財政で脆弱なわが国経済(゚д゚)!

いまこそ財政支出の「ダメ押し」が必要だ

 消費増税すべき、だと…?

内閣府が14日に発表した2017年4~6月期GDPは年率4.0%増、プラスは6四半期連続となった。名目GDPの成長率も年率4.6%と好調だった。名目は2四半期ぶりにプラスになった。

これに対して日経新聞は、「4%成長は追い風参考記録だ」というの社説を出した( http://www.nikkei.com/article/DGXKZO20027630W7A810C1EA1000/)。社説では「1.0%未満とされる日本経済の潜在成長率を大きく上回った」としたうえで、「成長率を大きく押し上げたのは、個人消費と設備投資という民間需要の2本柱だ」という。

そして、「2016年度補正予算の執行が本格化し、公共投資が成長に寄与した面も見逃せない」と書いていた。公共投資は主役扱いでない、ということのようだ。最後に、記事は「政府は労働市場や規制緩和などの構造改革の手を緩めてはならない」と締めくくっている。

GDP速報の公表後、筆者のところに、これだけ内需が伸びているのだから、秋の補正では経済対策は不要であり、この流れのなかで消費増税もやらなければいけない、という声が聞こえてきた。そこで、

<GDP速報。これで消費増税(が必要)とかいっている人もいるが。これはZ(財務省)のささやきだろう。ただ16年の2次補正が効いたとしか読めないぞ。要するに緊縮しなければ成長するという当たり前の話だろう。だから秋の補正でも(経済対策をやれ)ということだ>

とツイートした(https://twitter.com/YoichiTakahashi/status/897284790029754368 なお、書き損じなどを修正)。その際、以下の表も添付した。


改めてGDP速報(http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/gaiyou/pdf/main_1.pdf)をみたら、公共投資が大幅に伸びて、その結果、消費と設備投資への波及効果があったのだと筆者は思った。これが、普通の見方だろう。

ところが、日経新聞は社説のように、公共投資が伸びて、それが波及したことを前に出さないように書いている。おそらく財務省関係からささやかれていた話に従うかのように、記事や社説を書いたのだろう。そこには、「秋の補正での経済対策は不要である」という財務省の意図が滲み出ている。

そうした空気は、政府内にもあるようだ。茂木敏充経済再生担当相は、記者会見で今回のGDP速報について「率直にいい数字だと思っている」との認識を示し、「内需主導の経済成長が続くように万全の対応をしていきたい」と強調した。一方で、「現段階で具体的に新たな経済対策は想定していない」とも語った。

はたして茂木経済再生担当相の認識・方針は正しいのか。それを考えるために、今回のGDP速報について詳しく見てみよう。

 「完全雇用」と早合点してはいけない

需要項目別に見ると、民間消費3.7%、民間住宅6.0%、民間設備投資9.9%等で民間需要5.3%。政府消費1.3%、公共事業21.9%で公的需要5.1%。民間と公的を合わせた国内需要は5.2%だった。一方、輸出▲1.9%、輸入5.6%であったので、外需のマイナスを内需でカバーした形である。

公共事業の伸びが大きかったのは、16年度第2次補正予算に盛り込んだ経済対策が寄与したからだ。今回のGDP速報は、適切な補正予算によって、個人消費が牽引され、内需主導の望ましい経済成長が可能になったことを示している。

総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは前年同期比▲0.4%だった。1-3月期には▲0.8%であったので、改善の方向であるが、依然としてデフレから完全に脱却したわけでないことが明らかだ。

これを指摘しても、茂木経済再生担当相や日経新聞は、日本経済の潜在成長率が低いことを主張して、現時点で経済対策は不要であるというだろう。

ちなみに、内閣府は、2017年1-3月期GDP2次速報後のGDPギャップ(潜在GDPと実際のGDPの乖離)を+0.1%としている。今回のGDP速報では、さらにプラス幅が拡大するはずだ。プラスということは、需要超過なので、これで有効需要をさらに増やす経済対策は不要、というロジックである。

日経新聞も、潜在GDP成長率は「1.0%未満」と社説に書いているので、すでに「需要超過」という内閣府と同じ意見を有しているのだろう。というか、このあたりの話になると、マスコミでは自分で検証できないので、役所のいいなりである。

さて、GDPギャップについては、重要な経済データなので、内閣府だけではなく日銀でも算出しており、GDPギャップは実際のGDP(国内総生産)と潜在GDPの差の、潜在GDPに対する比率と定義されている。

問題なのは、潜在GDPである。一般的には、経済の過去のトレンドから見て平均的な水準で、資本や労働力などの生産要素を投入した時に実現可能なGDPとされているが、GDPギャップの大きさについては、前提となるデータや推計方法によって結果が大きく異なるため、相当の幅をもって見る必要がある。このことはGDPを推計している内閣府や日銀でも注意事項として認識されている。

内閣府の数字は0.1%となっているが、この結果をもって、「GDPギャップがないからすでに完全雇用だ」「経済対策は必要ない」と早合点はできない。潜在GDPについて、これまでの実現GDPをベースに算出するが、その結果、これまで完全雇用が実現されていないような水準に引きずられて、完全雇用水準から過小評価になる傾向があるからだ。

つまり、潜在GDPは必ずしも完全雇用を意味していないのだ。その理由を簡単に言えば、まだインフレ率が上がっていない以上、失業率はまだ下がる余地があり、インフレ目標達成とさらなる失業率の低下を進めるために、経済対策の余地はあるということだ。

ただしGDPギャップについては、その変化はおおいに参考になる。内閣府のデータは公表されている(http://www5.cao.go.jp/keizai3/getsurei/getsurei-index.html)ので、それを活用してみよう。それを使って、完全雇用水準からどの程度、過小評価になっているのか考えてみよう。

 構造失業率は2%程度

まず、失業率とインフレ率の関係(フィリップス曲線)を整理しておこう。それを仔細に見ていくと、ちょっと違った姿が見える。失業率とインフレ率は、逆相関になっているが、実は、両者の間に、GDPギャップが介在している。

例えば、GDPギャップがマイナスで大きいと物価が下がり、失業率が大きくなる。逆にGDPギャップがプラスで大きいと物価が上がり、失業率が小さくなる。

下の図1は、2000年以降四半期ベースで見たGDPギャップとインフレ率の関係である。左軸にGDPギャップ率、右軸にインフレ率(消費者物価総合対前年比)をとっている。GDPギャップは半年後(2四半期後)のインフレ率とかなりの相関関係がある。


ここで、GDPギャップとインフレ率の関係から、「2%インフレ」にするために必要なGDPギャップ水準を算出してみると、+4.5%程度である。

それを埋め合わせるためには、有効需要25兆円程度が必要になる。1単位の財政出動による需要創出効果を示す財政乗数が、内閣府のいう1.2程度としても、この有効需要を作るための財政出動は20兆円程度である。

また、この財政出動はGDPギャップを縮小させるので、インフレ率の上昇とともに、これ以上は下げられない「構造失業率」まで失業率の低下をもたらすはずだ、

下の図2は2000年以降の、四半期ベースで見たGDPギャップと失業率の関係である。左軸にGDPギャップ率、右軸に失業率をとっている。図をわかりやすくするために、左軸は反転させて表示しているが、GDPギャップはやはり半年後(2四半期後)の失業率とも、かなりの逆相関関係がある。


GDPギャップと失業率の関係式から見た、GDPギャップ+4.5%程度に対応する失業率は2%半ば程度である。筆者は、2016年5月30日付け本コラム(「消費増税延期は断固正しい! そのメリットをどこよりも分かりやすく解説しよう」 http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48779)において、これ以上下げられないとされる構造失業率を2%半ばと推計している。

一般的に、構造失業率の推計には、UV分析と潜在GDPによる分析の二通りがある。昨年の本コラムでは前者のUV分析を使ったが、今回は後者である。

いずれにしても、二つの異なる分析によっても、日本の構造失業率が2%半ばと同じになっているのは興味深いことだ。数学の問題では、二つ以上の別の解法により解けば、その命題はより正しいとされるが、経済学でも別の二つの方法で同じ結果であれば、よりもっともらしいといえるだろう。

 デフレ論者は否定するだろうが…

以上の分析を総合すると、構造失業率は2%半ば程度であろうとともに、それに対応するインフレ率はインフレ目標の2%である。その状態は完全雇用なので、内閣府の潜在GDPは4.5%程度過小評価になっている。

であれば、現実のGDPをその「完全雇用水準」まで引き上げるためには、有効需要25兆円、財政出動に換算して20兆円規模となる。逆にいえば、そこまでGDPを高めれば、インフレ目標2%を達成し、同時にこれ以上下げられない構造失業率2%半ばを達成することになる。この意味で、適度なインフレの下で、回避できない失業を除いて完全雇用を実現する合理的な政策となる。

さて、本題に戻ろう。今回のGDP速報結果を分析すれば、公共事業に支えられて、民間需要が誘発された形である。ここで、すでに民間需要に火がついたと勘違いして、経済対策の手を緩めれば、元の木阿弥になるだろう。というのは、現在は実際には完全雇用にほど遠い状態であり、賃金上昇に本格的な火のついていない状態だからだ。

実際、安倍政権下について考えれば2013年度は公共事業が活発で経済も良かった。しかし、2014年度以降公共事業が低調だった。消費増税の影響も相まって、緊縮財政傾向になり、GDP成長率は今一歩だった。

現時点で財政問題は気にする必要はない。これは、2015年12月28日付け本コラム(「日本の借金1000兆円」はやっぱりウソでした~それどころか… http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47156)などで繰り返してきたので、読者ならばおわかりだろう。

むしろ国債市場では国債「玉不足」が言われている状況だ。今の低金利時代に、将来投資を行い、同時に、インフレ目標2%、構造失業率2%半ばを達成するのが正しい経済政策である。そうすれば、民間需要に本当の火がつくだろうし、過去20年間以上苦しんだデフレ経済からも本当に脱出できるだろう。

このように書くと、デフレ論者から、「金融政策だけではインフレ目標が達成できなくなったから、また別の手を出してきた」という批判が出てくるだろう。それは違う。上にも書いたが、2014年度以降は消費増税の影響もあり、緊縮財政だったので、それが金融政策の足をひっぱってきた。だから、それを改めよという話をしているのだ。

デフレ論者は消費増税・緊縮財政指向なので、彼らの主張が日本経済のためにならないのは、改めていうまでもない。

【私の論評】数字を見ればわかる、未だ緊縮財政で脆弱なわが国経済(゚д゚)!

確かに、「年率実質4%成長」という数字は、「良い数字」であることは間違いありません。そして、実質成長が6期連続のプラスなのも、それが11年ぶりであることも、事実です。

しかし、それら数字についての「解釈」は、いずれも著しく「不適切」であるとしか言いようがありません。

なぜなら、「いい数字」もある一方で、日本経済が未だにデフレであることを明確に示す「わるい数字」も存在しているからです。

ついては以下、現状の経済状況がいかなるものなのかを、客観的視点から確認してみることにしましょう。

まず、上記の報道における「景気が良い!」という論調の根拠はいずれも「実質成長率」(前期比)に基づくのですが、景気判断は下記のような多様な尺度を参照せねばなりません。
・実質成長率(前期比、対年前年度比)
・名目成長率(前期比、対年前年度比)
・デフレータ変化率(前期比、対年前年度比)
こういった尺度が全て良好になったときはじめて、本格的な成長軌道にのったと判断できるのです。それはまさに、健康診断の時の「血液検査」と同じようなもの。健康な人は全ての尺度が「良好」なのです。不健康な人は、これらの内、複数の尺度が「不健全」なのです。

さて、その視点で、今回公表された各数値を確認しますと以下となっています。
・実質成長率———–前期比年率3.9%——前年比2.1%
・名目成長率———–前期比年率4.6%——前年比1.7%
・デフレータ変化率—–前期比0.2%———-前年比-0.4%
ご覧の様に、成長率は「前期比」に比べれば随分と「景気の良い数字」なのですが(実質、名目共に年率4%前後以上)前期比でみれば、たいしてよい数字とは言えません。

何よりも深刻なのは、デフレータ(物価)がほとんど改善していないという点(前期比の増加率0.2%という数字は到底力強い上昇とは言えません)です。むしろ「前年比」で見れば「マイナス」の状況にあります。

そもそも、実質成長3%と名目成長4%(つまり、デフレータ1%増)を目指している我が国政府の基準を踏まえれば、これら数字は以下の様に判定することもできるでしょう。
・実質成長率     前期比年率3.9%(○)  前年比2.1%(△)
・名目成長率     前期比年率4.6%(○)  前年比1.7%(△)
・デフレータ変化率  前期比0.2%  (×)  前年比-0.4%(×)
これでは、「景気は良好!」とは決して言えません。

つまり、「前期比」の年率「実質」成長率だけを見て、「かなりよい景気だ、だから、もう対策は不要だ!」というマスコミ論調は、まさに「木を見て森を見ず」というか、「森の中の一本の木だけを見て、森どころか隣の木すら見ていない」、極めて愚かな論調に過ぎません。

確かに、今回は、実質成長が「6期連続」で、かつ、それが「11年ぶりだ」なのではありますが、だからといってこれだけで、すぐに、今景気は良いという判断にはなりません。

なぜなら、「実質成長率」は、「デフレが加速してデフレータ(物価)が下落」すれば、上昇するものだからです。つまり、「実質成長率は、デフレの深刻さの尺度」にすらなり得るのです!

実際、下記グラフからも明白なとおり、消費増税以降、デフレータは下降し続け、今やマイナス領域を推移しています(黄色)。


これこそ、「6期連続、実質成長率がプラス」となった理由です。実際、このグラフに示した「名目成長率」(前年比・青線)は、今期こそ、僅かに上昇傾向を見せていますが、ここ最近、ゼロ近辺を推移しているということ、つまり、「成長していない」事を示しています!

日本経済は、本格的な好景気状況からはほど遠い状況にあるのです。

とはいえ、「今期」は、少なくとも「前期比」で見れば、デフレータ、名目成長率、実質成長率が全てプラスという、(他の国なら当たり前の)「正常」な数字も、久々に一部において見られたわけですが、これがなぜもたらされたのかをしっかり認識する必要があります。さもなければ、誤診に基づいて間違った治療を施すヤブ医者のように、日本経済を完全に治癒する(=デフレ完全脱却させる)ことが不可能となるからです。

その一部の理由は、「公共投資は5.1%増-補正予算の効果でプラスに寄与」というものです。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-08-13/OUAL466S972801

つまり、ちょうど一年前の昨年夏に調整した、アベノミクスにおける「大型景気対策」の効果がようやく効き始めた、と言うのが、「今期」における一部良好な数字の原因だったのです。この事を踏まえれば、この景気回復基調を確実なものにするためにはやはり、政府の経済対策の当面の継続が必要であることが見えてきます。

ただし、これ以外にも、「個人消費や設備投資など内需が堅調」という点も、事実です。今期は消費も投資も双方、おおよそ6000億円(名目値)ずつ前期から拡大しています。

この消費と投資の回復は一体なぜもたらされたのか──その根拠は、下記のグラフから読み取ることができます。


このグラフは、日本経済を構成する「四主体」の内の三つ、「民間」「政府」「海外」の「貯蓄態度」を示すもの(日銀資金循環統計から)。

この「貯蓄率」という数字は「貯蓄額の対GDP比」ですから、各主体が「ケチ」になって「金づかい」が悪くなって貯金ばかりするようになると「上がり」ます。一方、各主体が「豪気」になって「金づかい」が良く(=荒く)なると、は「下がり」ます。

ご覧のように「民間」の貯蓄率は、この1年ほど「下落」してきています。これは、民間企業が「ケチ」な態度から「豪気」な態度にシフトし始めた事を意味しています。

別の言い方をすると、「内部留保する傾向を弱めてきている」という事を意味します。つまり、民間企業が、儲けたオカネを貯金する(=内部留保する)のでなく、消費や投資に使うようになってきたということを示しているのです。これこそ、「今期の消費と投資の拡大」を意味する統計値です。

では、なぜ、民間が貯蓄率を減らし、投資や消費を拡大し始めたのでしょうか。それは、海外の貯蓄率が下がってきた」という点に求められます。

ご覧の様に、この3年ほど、海外の貯蓄率は下落し続けています。これはつまり、外国人が日本で使うカネの量が、過去三年の間、増えてきた事を意味します。これは要するに、(相対的に)「輸出が増えてきた」ということを反映したもの。実際、ここ最近景気の良い企業の多くが、「輸出企業」だったのです。

http://datazoo.jp/w/%E8%BC%B8%E5%87%BA/32830318

さて、これらのデータを全て踏まえると、我が国のここ最近の経済動向は、次のようなものだ、という「実態」が見えてきます。
①ここ2,3年間、外需が伸びてきた事を受けて、外需関連企業の収益が改善した、 
②その影響を受け、ここにきてようやく、民間企業がトータルとして「内部留保」を縮小させ、消費と投資を拡大しはじめる程に景気が改善してきた。 
③これを受けて、ようやく(物価の力強い上昇は達成されていないものの──)「名目GDP」も上向き始めた──。
つまり、今の「よい数字」を導いた基本的な原因は「外需」だったわけであり、それがここにきてようやく、民間企業の力強い成長に結びついてきた、と言う次第です。

さて、この実情を踏まえれば、確かに、(金融緩和→円安→外需拡大をもたらした)アベノミクスは着実に、一定成功していることが見て取れるのですが、それと同時に、未だ、我が国経済の「成長の兆し」はとても確実で安定的なものだとは言えない、という姿も同時にくっきりと見えてきます。なぜなら我が国の現時点の成長の兆しは、「外需頼み」のものに過ぎず、したがって、極めて不安定なものと言わざるを得ないからです。

つまり今後、例えば朝鮮半島の緊張の高まりを受けて世界経済の成長が鈍化して外需が冷え込んだり、あるいは、円高で輸出企業が厳しくなったり、あるいは、石油価格が高騰したりすれば、この好景気への僅かな兆しも、瞬く間に失われ、完全デフレ状態に舞い戻ってしまうことになる、という事が危惧されるのです。

そうなる前に一刻も早く、デフレを終わらせ、「外需頼み」で回復し始めた日本経済を、力強い確実な成長軌道に乗せるべく、徹底的な景気対策を図る必要があります。

そもそも、我が国政府は、消費増税以降、徹底的な「緊縮」政策を、ここ数年継続させていた、という事実を忘れてはなりません。改めて先に紹介したグラフの「青線」をご覧ください。

これは政府の貯蓄率。ご覧の様に、我が国政府は、貯蓄率を「拡大させ続けて」いるのです。

これはつまり、増税をして緊縮財政にして、カネをマーケットから吸い上げ続けている、という事を示しています。すなわち我が国政府は、外需が改善してきているのを良いことに、自分だけカネをため込んで、マーケットで使わず、景気の足を引っ張り続けている、と言うことです。

この緊縮的な態度を辞めない限り、デフレ脱却なぞ、絶対にあり得ません。

デフレを完全脱却させるために、外需と一緒に、政府もまた、貯蓄率を引き下げ、民間がさらにさらに投資と消費を拡大できる状況を作らねばならないのです。

アベノミクスの成功、すなわち、デフレ完全脱却は、確実に私達に近づいてきています。そのチャンスを手にするか否かを決めるのは、もちろん、政治の判断です。

我が国内閣の、客観的な情報に基づく理性的判断を、心から祈念したいと思います。

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2016年1月17日日曜日

やさしいデータと数字で語る「フクシマ」の虚と実 雇用は激増 離婚は減少 出生率もV字で回復―【私の論評】行動するなら感情ではなく、エビデンス(証拠・根拠、証言、形跡)に基づき行え(゚д゚)!




「福島は危険だ」「福島の人は怯え苦しんでいる」──震災から5年、未だ情緒的な文脈で語られる「フクシマ」。しかし、誰にでも入手可能なデータと数字を分析するだけで、そこには、容貌を異にした実態が見えてくる。福島出身、31歳の社会学者、開沼博が記す「福島の虚と実」。

***

はじめに3つの問いから。

(1)福島に暮らしていた人のうち、どれくらいの割合の人が震災によって、現在県外で暮らしているか?

(2)直近(2015年11月)の福島の有効求人倍率は、都道府県別で全国第何位か?

(3)3・11後の福島では「中絶や流産が増えた」「離婚率が上がった」「合計特殊出生率が下がった」のうち、どれが正しい?

答えは、

(1)約2・2%

(2)4位

(3)出生率のみ正しい

いかがでしょうか?

抱いていた「福島」のイメージと実際の姿との間には、かなりのギャップがあったのではないでしょうか?

今年で東日本大震災の発生から5年、節目の年を迎えます。3月11日には、大々的なマスコミ報道が為されることでしょう。

「福島の問題は絡(から)みにくいんですよね……」

私は震災後、福島大学の特任研究員や、復興庁の生活復興プロジェクト委員などを務め、社会学の観点からフィールドワークや統計の分析を続け、福島の動きについて研究してきました。その中で先のような言葉を耳にします。曰く、「福島難しい」「福島面倒くさい」──。善意もあるし、困難な問題を解決してきた実績もある人たちが、福島と付き合うことに高い壁を感じているようです。

なぜか?

ポイントは3つあります。福島の「過剰な政治化」「過剰な科学化」「ステレオタイプ&スティグマ化」。

「政治化」「科学化」についてはおわかりだと思います。

福島と言えばやはり思い浮かべるのは、「原発」「放射線」。二項対立化しやすく、違うイデオロギーを持つ人同士の溝を埋めることが困難に見える。「声の大きな人」に絡まれそうだから普通の人は意見を言わなくなる。


声の大きな人が必ずしも福島の真実を語っているわけではない

また、福島の問題に言及しようとすると、科学的に高度過ぎてわかりづらい。ヨウ素、セシウム134に137、汚染水や地下水バイパス……。今から勉強し直すのはかなり厳しい。

そして何より、福島は、過度に固定観念(=ステレオタイプ)化された中で語られています。福島は、「避難」「賠償」「除染」「原発」「放射線」「子どもたち」という6つのキーワードとしばしば結び付けられますし、逆にそれ以外と結び付けられて語られることは少ない。

しかし、福島の問題はこの「6点セット」が全てではありません。こればかりが語り続けられる中で、現場で常にアップデートされている様々な問題は看過され、一方で多くの人は福島に“飽きている”。

加えて、今、目の前にパソコンがあれば、googleの検索画面に「福島」「農家」と打ち込んでみてください。「人殺し」「死ね」というワードが自動的に表示されるでしょう。同様に「福島」「子ども」と打てば、「甲状腺がん」「奇形」、「福島」「病気」なら「放射能」「隠蔽」と出てくる。これはサジェスト機能と言って、一般に数多く検索されている語句の組み合わせが表示されるものです。既に福島には、相当強いスティグマ=負の烙印が押されている。つまり、それに言及しただけで、誰かを傷つけうると、タブー化され始めています。

かくして、「絡みにくさ」が増大し、福島について語ることは、大きな壁となって私たちの前にそびえ立ち、固定化されてしまっている。

他方、「福島では今もみんな避難したがっている。放射能に恐れおののき避難者は増え続けている」「福島では農林水産業、製造業、観光業など多くの産業に多大な影響が出て、失業者が急増している。ハローワークに行っても求人票がない」「原発事故のせいで、人々が分断され離婚が急増した。福島で子どもを持つことに不安を抱く女性ばかりになって“産み控え”が続いている」という「俗流フクシマ論」が蔓延(はびこ)っている。データを見れば明らかですが、全部大嘘です。多くの人が大嘘を真面目に信じこんでしまっている。

これが4年半経った今の現状と言えるでしょう。

これは憂うべき状況です。

そこで、私は2つの方針を立ててみました。一つは、先の6点セットをあえて外し、他のテーマから福島の現状をあぶり出してみること。そして、政治的な立場や予断ではなく、データと理論を用いながら福島について語ること。これを基に、私は『はじめての福島学』という本を上梓しました。それを下敷きに、改めて福島についての現状を捉え直してみたいと思います。

■1日何十件ものデマ

冒頭の問いに戻ります。

まず(1)の福島の人口について。私はこれまで講演会やシンポジウムの度にこの質問を繰り返してきましたが、「10%くらい」「3割」「40%とか」と、様々な答えが返ってきます。しかし、実際は4万3497人(15年12月10日時点)で「2・2%」ですから、福島の人口流出は10倍誤解されていると言って良い。人口の何十%もが県外に大流出しているなんてことはなく、多くの人は県内に住み、生活を続けている。これが福島の実態です。

もうひとつ重要なのは、この人口流出・減少が福島だけの問題なのか、ということです。福島の10年の人口は202万人、14年は193万人。減少率は4・5%です。一方、同じ時期の秋田県の減少率は、4・4%。青森や山形もこれに近い数字です。つまり、秋田や青森は、何もなくても、福島と同じくらいのレベルで人口減少が起きている。

農業についても、同じような誤解が生まれています。

「福島県の米の生産高は都道府県ランキングで、震災前の10年は何位で、震災後の11年には何位か?」

「福島県では放射線について、年間1000万袋ほどの米の全量全袋検査を行っています。そのうち放射線量の法定基準値(1キロあたり100ベクレル)を超える袋はどれくらい?」

答えは、それぞれ、「10年には4位、11年には7位」、「12年度が71袋、13年度が28、14年度が2、15年度がゼロ(15年12月30日時点)」。

前者については、そもそも作付面積自体が原発事故の影響で2割も減っていることから鑑みると、意外とうまくいっていると評価してもよいでしょう。後者については、1000万袋に対し、当初でも100袋未満。現在はゼロになっていることから見て、確実に良い方向に向かっています。しかし、SNSの世界では、数字を調べもしないで、毎日何十件も、「福島の作物を食べたらとんでもない被曝をする」といったデマを流している方が一定数いる。こうしたことから、「3・11で福島の農業は終わった。福島産の作物なんか“もう誰も買わない”“もう誰もつくらない”状況になっているに違いない」という偏見が生まれています。

同じ1次産業である漁業の数字は、より示唆的です。

「福島県の漁業の水揚量は、10年と比べてどれくらいに回復しているか?」

「76%」「15%」(14年)の2つの答えが出てきます。どういうことか?

「76%」は、「属人」による統計、つまり福島県に所在地をおく漁業経営体が水揚げした数字。県内に所在地をおく会社や個人の漁獲量は半分以上回復しているわけです。一方の「15%」は、「属地」による統計。福島県に水揚げされているものだけの数字です。

つまり、福島の漁師さんたちは、収穫物があっても他の県で水揚げする傾向にあることがわかります。その理由の一つは、風評被害によって福島に揚げても高い値段が付かないから。北海道でとったサンマや八丈島沖のカツオなど、沖合・遠洋でとれたものが福島で水揚げされたからと言って、リスクが上がるということは科学的にありえません。にもかかわらず、福島で水揚げされただけで、市場価格が下がってしまう。そのため、カツオの場合、11年に福島の小名浜で水揚げしても例年の半分以下、サンマも三陸などの6~7割の値段しかつきませんでした。こうして福島の漁港やその周辺の経済システムは停滞したまま。この点の復興はまだまだ途上段階だと言わざるをえないでしょう。

■人手不足の雇用市場

ここまで1次産業について述べてきました。が、これについても誤解がひとつ。実は、福島の1次、2次、3次産業従事者の割合は、それぞれ7・6%、29・2%、60%(10年)。3・11後、「土や水、風とともに生きる福島の人々の生活が根こそぎ奪われてしまった」みたいなノスタルジックな言い方が散々繰り返されましたが、あまりにステレオタイプなものの見方です。

では、その2次、3次産業はどうなっているのか?

冒頭の(2)の問い=「直近(15年10月)の福島の有効求人倍率は、都道府県別で全国第何位か?」

先に述べたように、答えは4位。数値は1・68倍。月によっては1位になることもあります。100人しか働き手がいないところに168人の求人が出ている状態です。つまり人手不足が起こっています。改めて言うまでもなく、背景にあるのは「復興需要による福島の雇用市場の活性化」です。

むしろ福島の製造業にとっては、震災よりリーマンショック(08年)の方が影響が大きかった。事業者数、従業者数、新製品出荷額、付加価値額、いずれもリーマンショック後の方が、震災後よりも落ち幅が大きいのです。逆に、福島の13年の企業の倒産件数は、10年の0・35倍。3分の1の値です。

昨年の11月の福島県の有効求人倍率を伝えるてれ

3次産業のうち、もっとも原発事故の影響を受けそうな観光についての数字も見てみましょう。

「10年と比べて、福島県に観光客はどれくらい戻ってきている?」

答えは「82%の水準まで回復している」(14年)です。原発のある「浜通り」は、やはり厳しく、6割弱の回復にとどまりますが、浜通りのいわき市にある「スパリゾートハワイアンズ」はかえって知名度を上げ、観光客を増やしています。「中通り」は9割以上、「会津地方」については、大河ドラマ『八重の桜』効果もあり、震災前よりも数字が伸びた時期もありました(14年は9割)。

他方、問題なのは、修学旅行客の数字が伸び悩んでいること。福島を修学旅行で訪れた人の数は、10年度の67万3912人に対し、14年度は35万704人。回復は52%に留まっています。この動きを指摘すると「被曝を避けたい親の不安を軽視するのか」などともっともらしいことを言う人が出てきます。ですが、例えば、飛行機で成田―NYを往復した時の被曝量は100マイクロシーベルトほど。これと同じレベルの被曝をするには福島第一原発の真横を走る国道6号線を50回以上通り抜ける必要があります。海外旅行をした方が、福島に行くより遥かに被曝する。不勉強と事なかれ主義を、「不安」などという言葉で正当化すべきではありません。

加えて、外国人観光客も回復していません。震災前に福島を積極的に訪れていた韓国、中国、香港、台湾、アメリカの観光客は、14年の数字で、10年の27%。特に、韓国は6%、香港は23%など、万単位の客が逃げてしまっています。これを呼び戻すことは不可欠の課題と言えるでしょう。

■善意の暴走
一番触れづらかった「家族や子ども」の問いについても、記しておきます。

冒頭の(3)の問い=「3・11後の福島では『中絶や流産が増えた』『離婚率が上がった』『合計特殊出生率が下がった』のうち、どれが正しい?」

答えは、先に述べた通り「出生率のみ正しい」です。

「震災離婚ってよく聞く」とか「チェルノブイリ事故の時には中絶が増えたって聞いた」という、俗流フクシマ論を耳にした人も多いのではないでしょうか。

しかし、流産は震災前後で変化はなく、中絶については、10年に妊娠100件あたり17・85だったのが、13年4~6月は16・24と、むしろ減少が認められました。離婚率も明確に下がり、10年の1・96に対し、14年は、1・64と全国平均より下。婚姻率も上がる気配を見せています。出生率については、確かに10年の1・52に対し、11、12年は1・48、1・41と「産み控え」とも見える現象がありました。しかし、13年には、1・53という全国最大幅のV字回復を示し、14年も1・58。震災前後で、先天奇形・異常の発生率に変化がないことは言うまでもありません。

ちなみに、福島の平均初婚年齢は、14年に夫が30・2歳で全国3位の若さ。妻は28・4歳で16年連続1位。ある面では、福島は、人が生まれないどころか、晩婚化、少子高齢化に抗するヒントが眠っているかもしれない県であるのです。

いかがでしょうか。

経産省の前に違法に設営された脱原発テント

私が述べたかったことは、「だから福島は元気です。ダメじゃありません」ということではありません。

依然、福島は重大な問題を抱えています。例えば、震災関連死。これは、建物の倒壊や火災、津波など地震による「直接死」ではなく、その後の避難生活での体調悪化や過労など間接的な原因で死亡することを指します。その数は15年9月30日の時点で1979人。福島県内の震災「直接死」の死亡者1612人、行方不明者199人に匹敵する数字です。避難者のケアが後手に回り、避難を続けることが心身に大きな負担を与えています。

また、放射線への恐怖感から、子どもを外に出さないことによって、子どもの体力低下や肥満、虐待の増加なども指摘されています。

福島のことを怖い顔して時に怒鳴りながら語ったり、ものすごく難しい言葉で議論し続けたりするような人ではなくて、「福島のこと、知っておきたいんだけど、何か取っつきにくいし、でも今更聞けないよな……」と思っている「普通の人」に、問題を考える糸口を提示する。明らかになっているデータを基に、ぼんやりと思ったことを立証、あるいは反証していく。私も時には「福島は絶対危険なのにそう言わないお前は国と電力会社の回しもの」と罵られることがありますが、このアプローチこそが、膠着状態になっている福島を語る議論に風穴を開けられると考えています。本当に福島を応援したい人、「福島をどうしたらいいんですか」という問いを持つ人が、この問題に向き合うための「引き出し」を作ることが出来ると考えているのです。

福島の子どもがかなり被爆していると頑なに信じこむ人々も多い

勝手に福島県民を犠牲者と見なして憐憫の情を向け、悦に入る。「福島の人は立ちあがるべきだ」と上から目線意識の高い説教をする。脱原発、被曝回避運動に利用しようとする──。こうした「善意の暴走」は単なる「ありがた迷惑」です。

いま必要なのは、具体策もないまま「福島を忘れない」と優等生的な理念を唱え続けることでも、人々の不安につけこんだデマを妄信することでもありません。

例えば、福島のものを買ったり観光に行ったりする。仕事の中で関わってみる。そんな、日常生活の中の「買う・行く・働く」を通して接点を少しでも作っていくことなら誰でも気軽にできるでしょう。震災から5年。福島は「正しく」現状を知りながら「楽しく」関わる方法を探求すべき時期を迎えているのです。

開沼博(かいぬま・ひろし)
1984年福島県いわき市生まれ。東京大学文学部卒業。同大学院の修士論文を書籍化した『「フクシマ」論』で毎日出版文化賞を受賞。他の著書に『フクシマの正義』『漂白される社会』がある。

【私の論評】行動するなら感情ではなく、エビデンス(証拠・根拠、証言、形跡)に基づき行え(゚д゚)!


開沼博氏
上の記事現状の福島を等身大に知るためには、非常に良い資料だと思います。これを読んでいて、私は経営学の大家ドラッカー氏が、後世の歴史家が、第二次世界大戦中の統計資料をだけを見た場合、第二次世界大戦があったことなど気づかないかもしれないということを語っていたことを思い出しました。それについては、以前このブログにも掲載したことがあるので、その記事のリンクを以下に掲載します。
【堀江貴文氏ブログより】私がSEALDsをdisる理由―【私の論評】ホリエモンも瀬戸内寂聴も見えない、安保の当たり前のど真ん中(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部引用させていただきます。
"
経済学の大家ドラッカー氏は、経済統計だけをみたとしてら、後世の歴史家は、第二次世界大戦が起こったことなど、気づかないだろうとしています。


確かに、第二次世界大戦は世界中に大惨禍をもたらし、大勢の人が亡くなり、社会が混乱しましたが、経済統計だけを見ているとそうではないというのです。

これは、にわかには信じがたいことですが、第二次世界大戦で敗北した、ドイツや日本でも、確かに戦争の惨禍で、とんでもない状況にはなりましたし、物資も不足はしましたが、それでも、戦争中には普段よりもかなり多く、兵器を製造したり、軍隊にそれを支給したりして、大きな経済活動が営まれました。

さらに、日本を例をとり、後世の歴史家が経済指標だけ見ていたら、大東亜戦争があったことなど気づかないかもしれないことを実証してみせようと思います。

以下は、最近読んだ古谷経衡氏の『戦後イデオロギーは日本人を幸せにしたか』という書籍に掲載されていた、統計資料です。

クリックすると拡大します
この統計資料に関して、古谷氏は、以下のような説明をしています。
 これを見ると、日本は先の大戦で、すべての国富のうち、その4分の1を失ったことになるが、逆説的に言えば、4分の3は残存していると見なすことができ、その水準はおおむね1935年のそれであった。

簡単に言えば、日本は1935年から1944年までの拡大分が戦争最後の1年、つまり戦争末期の大空襲であらかた吹き飛び、日本の敗戦時の国富は終戦時点の10年前である1935年の水準に逆戻りしたと考えればわかりやすい。 
 よって、「日本は敗戦でゼロからのスタート」を余儀なくされたのではなく、「敗戦により、おおむね1935年の国富水準からスタート」と言い換えることができるのだ。
1935年のレベルといえば、言うまでもなくアジアの中ではトップクラスです。戦後の日本の復興は、「ゼロからのスタート」とするのは程遠い実態です。

終戦直後にこの状況であり、温存された国富の源となった、爆撃されなかった町や村などは生産活動を継続し、さらに戦争遂行のための様々な経済活動なども加えれば、日本も経済指標だけみていれば、戦争のあったことなど後世の歴史家は気づかないかもしれません。
"
現在の福島も同じことです。津波の被害が甚大だった、原発事故が甚大だったにしても、福島県全部が甚大な被害にあったということはないし、被害を受けたところだって、直後からかなりのスピードで復興しているわけですから、「ゼロからのスタート」とするのは程遠い実態であり、ブログ冒頭の記事はそれを数値的に裏付けているわけです。

ブログ冒頭の記事では、経済的あるいは、人口動態的に福島か回復していることを示していまたが、被爆実態については示していません。これに関しては、以前このブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
被ばく量「国内外で差はない」 福島高生、英学術誌に論文―【私の論評】発言するならこの高校生たちのように感情ではなく、エビデンス(証拠・根拠、証言、形跡)に基づき行え(゚д゚)!

 この記事では、福島の高校生らが、福島や県外、外国の放射線被ばく量を体系的に組織だって計測をして、その結果をまとめましたが、その調査結果が英国の放射能に関する学術誌に掲載が決まったことを掲載しました。

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この高校生らが計測してわかった事実のみ以下に掲載します。


この結果から、福島県内、県外、海外においても、ほとんど差がないことが明らかになりました。

この事実を踏まえ、私はこの記事を以下のように締めくくりました。
いずれにせよ、何か発言したり行動するならこの高校生たちのように感情ではなく、エビデンス(証拠・根拠、証言、形跡)に基づき行えと、声を大にして言いたいです。

そうして、こうした若者にさらに大きな機会を与える社会にしていきたいものです。
無論、上の記事で指摘しているように、依然、福島は重大な問題を抱えています。このようなことは、統計数値だけを眺めていてはみえないところがあります。

大東亜戦争のときも、経済などは瞬く間に復活したわけですが、戦争が人々の心に残した傷はなかなか癒えませんでした。福島でも、震災が人々の心に残した傷はまだ癒えていない部分があるのも確かです。

しかし、いずれにせよ、私達が福島と関わるときには、上のブログでも指摘していたように、いま必要なのは、具体策もないまま「福島を忘れない」と優等生的な理念を唱え続けることでも、人々の不安につけこんだデマを妄信することでもなく、「正しく」現状を知りながら「楽しく」関わる方法を探求すべき時期を迎えているということを十分に考えるべきと思います。

まずは、「正しく」現状を知ることが必要不可欠です。福島産の農産物や、漁獲物が危険だとか、現地に行けば大量に被爆すると思い込んでいては、そもそも、行動など起こせません。

やはり、行動するなら、この高校生たちのように感情ではなく、エビデンス(証拠・根拠、証言、形跡)に基づき行えということを強調したいです。そうでなければ、いくら善意で行動したとしても、かえつて悪影響を与えかねないです。

善意だけでは何も変わりません。行動するなら、何らかの成果があることをすべきです。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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