住宅に国産木材を用いる[08/5/20放送WBS]
目に見えない箇所も国産100%にこだわっています。
価格は一坪あたり72万円から。高級ブランドとして売り出しています。外国産の木材価格が高騰していることや、風通しや肌触りに優れていることなどから、コストや環境面でも国産木材の有用性が見直されています。
「一棟でも多く国産材住宅を建てることで、国の森林を守ることに。国民全体で環境意識を高めていくことが大事」(中嶋一郎 商品開発部長/住友林業)
注目を集め始めた国産の木材ですが、自給率はおよそ20%と言われています。いかにこの自給率を上げるのか、新たな試みが始まろうとしています。
「”食べ物”と”住宅”は国産比率を高めないといけない」(青木宏之 会長/全国中小建築工事業団体連合会)
住宅問題を食糧問題になぞらえながら始まったこの会見。一同に介したのは、中小の工務店のトップ達です。国産材を使った新たな住宅造りを訴えかけました。その内容は、福田総理が提唱している”200年住宅”の木材を100%国産で賄おうという計画。コスト面など、将来、外国産に比べて国産の方が割安になる可能性に言及しています。
「構造的にしっかりした家造りをすればコストはかからない」(青木宏之 会長/全国中小建築工事業団体連合会)
木材流通の業界団体も研究会を立ち上げ、国産材を広めようと力を注ぎます。
「日本の木材の自給率は20%だが、実際はもっとストックがあるので、それを活用すれば日本の森林にも良い」(落合祐二/日本木青連 国産材住宅振興研究会)
日本の森林の実体
さて、この最後に書かれている「それを活用すれば日本の森林にも良い」という意味は皆さんお分かりでしょうか? 日本の森林は、環境の問題を考えるにしても、その場、その時でいろいろ変わっることを知るための格好の素材だと思います。
それを活用するとは、当然伐採することを意味します。しかし、世界の常識でいうと、「伐採=悪」です。最近では、よくアマゾンの森林が伐採されて畑に転用されたなどというニュースが流れてきます。日本国内では、いまだに植樹祭などが行われてまいます。また、また、森林はco2を吸いこみ、o2を吐き出すため環境に良いなどとされています。
日本の森林
しかし、日本の場合は少し事情が違います。まず、日本においては大抵の場合伐採は悪ではなく、善です。伐採したほうが、環境問題に寄与することになります。実は日本の森林の多くが、遠くから見ると青々としているのですが、実際に中に踏み入ってみると、森林が生い茂り、枝が広がり天井を覆ってしまい、中は薄暗く林床には、叢(くさむら)も何もなく、叢がないために、小動物も住まず、林床には何もなくまるで砂漠のようになっています。間伐や伐採が全くなされていない、下の写真の左側のよな森では、森林から恵まれるマツタケのようなキノコ類や、その他山菜なども全く育ちません。こういうところでは、伐採して林床に光を当ててやる必要があります。無論伐採するにしても、間伐をすることは無論、資源として伐採するにも計画的に実施する必要があります。しかし、最近日本の木材の高騰のため、海外産が使われ日本の森林はほとんど伐採されなくなりました。これが、日本の森林の状況を悪化させてました。
間伐前後の林内の比較 | |
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間伐前の林内林内に陽光が入らないと下層植生が衰退し、土砂が流出してしまいます。 | 間伐後の林内間伐によって林内に十分な陽光が入ると、下層植生が繁茂し、土砂の流出が抑制されます。 |
木材200年住宅で住居を森に
上記の説明で、適度な伐採や間伐などは実施しなければ、かえって森林の環境は悪化することがお分かりになったと思います。だからこそ、日本の森の木材を使うことにより、森林の環境が良くなるので、木材の住宅は環境に良いということになります。
しかし、それだけではありません。実は、森林はco2を吸いこみ、o2を吐き出すため環境に良いというのは、すべての森林にあてはまることではありません。成長期の森林は、体を成長させるために、多くの炭素(C)を必要とします。どんどんco2を吸い込み、炭素を同化して、酸素を吐き出します。ところが、ほとんど成長が済んでしまった森林においては、体を成長させる必要もなく、体を維持させていくためだの炭素(C)がありさえすれば、良いのであまりco2は吸い込まないどころか、酸素を吸い込み炭素を排出するようになります。古い森林では、co2を吸いこみ、O2を吐き出すという図式はなりたちません。
だからこそ、こうした古い森林は適度に伐採していく必要があります。さらに、伐採された木材のことを考えてみてください。木材は炭素できています。木材のほとんどは、成長しきった木からつくられています。もしこの木が木材にならないとしたら、いつの日か朽ち果てるまでco2を排出し続けます。木材になればそのようなことはありません。木材の200年住宅を数多く作ったとすれば、その住宅はco2を出すことはなく、成長しきる前の森林を多くつくったのと同じ効果があるわけです。まさに、木材200年住宅で住居を森林にしているのと同じ効果があるのです。
新たな産業としての期待
日本では、終戦直後には禿山も多く、そのため植林が熱心に行われ続けてきました。最近その成果として、日本は世界でも稀にみる森林大国となりました。しかも、外国産木材が値上がり基調にあるため、国内木材は見直されつつあります。しかも、最近では環境問題の立場から、原始林などを大量に伐採することは国際的に非難を浴びるようになってきました。
日本の森林は、しばらく安い外国産の木材におされて、省みられることがなく長い間放置されてきましたが、いまこそ日の目を見る時期がやってきたのだと思います。木材200年住宅によって、住環境も環境問題も解決できます。むろんシックハウス症候群など一掃されると思います。日本の森林、新たな産業として活躍することが期待されています。この政策素晴らしいと思います。
環境問題はその場、その時で異なる
さて、ここまで読んでいただき誠に有難うございます。最後の結論となりますが、やはり、日本の森林の問題の特殊性から、環境問題はその場、その時で異なるということがお分かりになったと思います。もし、このまま日本で、植林ばかり行って、伐採を全くしなかったとしたら、日本の森林は崩壊してしまいます。適度な間伐や、計画的な伐採を行っていく必要があります。これが、中国のような場合は全く別次元の問題があります。森林を伐採しすぎたために、各地で砂漠化の被害が相次いでいます。もう一度、植林を徹底的に行い、これらの被害を防止したり予防する必要があります。
まさに、環境問題に教条主義のような、これだけが絶対に正しいとか、これは、絶対に間違いなどということはなく、その場、その時で対処の仕方は違ってこなければならないということです。
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