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2018年12月27日木曜日

株急落は来年の様々なリスクの前兆、消費増税の余裕はない―【私の論評】財務省は本気で全国民から恨まれ、米国を敵にまわしてまでも増税できるほど肝が座っているのか?

株急落は来年の様々なリスクの前兆、消費増税の余裕はない


 25日の株価は大荒れだった。東京株式市場では日経平均株価が1000円超下落し、2017年9月15日以来1年3ヵ月ぶりに2万円の大台を割り込んだ。

 24日の米国ダウの653ドル(2.9%)の下落を受けたものだが、日経平均は1010円(5.0%)の下落であり、米国を上回る下げだった。

 米株価急落は世界的な景気減速や米中貿易戦争への懸念が市場を覆う中で、米連邦政府の一部閉鎖やマティス国務長官の辞任など、トランプ大統領の政権運営への不安が広がったのが背景だが、日本では株価だけでなく、来年はさまざまなリスクが予想される。
日経平均株価が2万円台割れ12月では69年ぶりの下落率

 12月に入って、米国ダウは3日の25,538.46ドルから24日の21,792.20ドルまで、3746.26ドル下がった。下落率は14.67%だ。

 月内の下落率は、大恐慌の1931年(17%)に迫る歴史的な下げ幅だ。

 日経平均株価の12月の下落幅も、3日の22,574.76円から25日の19,155.74まで3419.02円、下落率は15.14%とほぼパラレルに下落している。
 
 過去の日経平均でも、1949年5月から今年12月までの836ヵ月で、、今月1ヵ月の下落率15.14%は、21番目に悪い数字だ。12月に限ってみれば、1949年12月に19.55%下落して以来、69年ぶりに悪い数字だ。(図表1)


 836ヵ月の1月間の値動きのデータをみると、平均は0.69%、標準偏差は8.02だ。
来年はもう一回、大幅下落あれば、「リーマン級の事態」

 株価急落を受けて、菅義偉官房長官は25日午前の記者会見で、「経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)は堅調だ」と述べ、来年10月の消費税率引き上げに向けて「経済運営に万全を期していきたい」としている。

 また、消費税増税については「リーマンショック級の事態が起きない限り、法律で定められた通り来年10月から引き上げる予定だ。引き上げる環境整備が政府の大きな課題だ」と述べた。

 たしかに、今の時点では「リーマンショック級の事態」とは言えないだろう。12月の株価の変動は、リーマンショック直後の2008年10月の36.99%、11月19.09%、2009年1月16.85%ほどではない。

 だが、来年にもう一回、大幅急落が来れば、リーマンショック級になるだろう。

 もう一回来るかどうかは、わからないが、その確率が以前に比べて高まったのは事実だ。

南海トラフと首都圏直下地震5年以内の発生確率は2割

 また来年のリスクは、経済変動に限らない。筆者が心配しているのは、自然災害である。

 これは、確率計算が可能だ。南海トラフ地震について、今後30年間での発生確率は70~80%というのが、政府の見解である。また、首都直下型地震についても、今後30年間が横浜市で78%となっている。

 今後30年間で8割程度の発生確率となると、今後5年に引き直せば、2割強の発生確率になる。

 そうなると、関西の南海トラフ地震か関東の首都直下型地震のいずれかが、今後5年以内に起こる確率は2割強になる。

 いずれかが起こるというのは、1から両地震が起こらない確率を引いて得られるが、両地震の起こらない確率は9割弱×9割弱で8割弱になるからだ。

 2割強というとどの程度の確率かと言えば、プロ野球で規定打席に達した選手のうち最下位レベルの打者の打率である。規定打席に達しているので、一応レギュラークラスの野手であるので、投手よりはもちろん高い。

 巨大地震が起こるリスクはかなりの“打率”と考えたほうがいい。

北朝鮮問題などで有事のリスクも

 このほかにも、日本には有事のリスクもある。これはなかなか定量的に表せないが、極東アジアは、これまでの歴史の中で紛争が比較的多い地域である。

 筆者は、米国プリンストン大留学で国際関係論を学んだ。指導教官は、民主平和論の大家であるマイケル・ドイル教授だった。

 ドイル教授は、民主的な国同士は戦争をしないというカント流の考え方を現代に復活させたが、筆者はドイル教授の意見を統計的に示した。

 つまり、(1)民主国同士、(2)民主国と非民主国、(3)非民主国同士はそれぞれ戦争確率が増加する傾向があるのだ。

 これを極東アジアに当てはめると、(2)のケースになるので、戦争確率は決して低くはない。もちろん、この戦争確率は、外交努力などによって下げられるので、その努力は必要だ。

 今年は、シンガポールで行われた米朝首脳会談での「非核化合意」で、極東アジアでの紛争確率は一応は低くなった。

 しかし、北朝鮮は核を依然として手放していない。アメリカも慎重派のマティス米国防長官の辞任が決まっている。今回の株価急落にトランプ大統領はいらついているようだ。

 戦争の確率を考えたくはないが、不満や閉塞状況を打開する手段として、軍事オプションの可能性が、少なくとも今後は高まるようにみえる。

 このように、来年は、経済、自然現象、安全保障のすべての分野でリスクが高まる状況ではないか。

財政破綻のリスクはない増税はやめるのが合理的

 そうした状況で消費増税をやっている余裕があるのか。

 本コラムでは、政府の財政について、負債だけではなく、資産も含めたバランスシートで考えなければいけないと、何度も書いてきた。筆者は20年以上もこのことを繰り返してきた。「統合政府論」というファイナンス論の基礎でもある。

 この考え方をもとに、大蔵省(現財務省)勤務時代に、単体のみならず連結ベース政府のバランスシートを作成した。それをみると、それほど国の財政状況は悪くないことが分かった。

 国の徴税権と日銀保有国債を政府の資産と考えれば、資産が負債を上回っていることも分かった。この財政の本質は、現在まで変わっていない。

 また資産といっても、一般に考えられている土地や建物などの有形固定資産は全資産の2割にも満たない程度だ。大半は売却容易な金融資産で、政府関係機関への出資・貸付金などだ。

 その当時、筆者は上司に対して、ファイナンス論によれば、政府のバランスシート(日本の財政)はそれほど悪くないことを伝え、もし借金を返済する必要があるのであれば、まずは資産を売却すればいいと言った。

 それに対し上司から、「それでは天下りができなくなってしまう。資産は温存し、増税で借金を返す理論武装をしろ」と言われた体験もいろいろなところで話してきた。

 ちなみに、日銀を含めた連結ベース、つまりいわゆる統合政府のバランスシートに着目するのは、その純資産額が政府の破綻確率に密接に関係するからだ。

 これもファイナンス論のイロハである。IMF(国際通貨基金)も、統合政府の純資産に着目して、日本では実質的に負債はないといっている。

 純資産額の対GDP比率は、その国のクレジット・デフォルト・スワップ・レートと大いに関連する。それは破綻確率に直結するからだが、日本の破綻確率は今後5年以内で1%にも満たない。

 この確率は、多くの人には認識できないほどの低さであり、日本の財政の破綻確率は、無視しても差しつかえないほどである。

 一方で、来年は上述したような経済や自然災害、安全保障のリスクが考えられるのだ。

 消費増税は、社会保障の安定財源確保や財政再建のためだと言うが、財政破綻の可能性を考えれば、経済、自然災害、安全保障のリスクのほうがはるかに大きいので、やめるのが合理的な判断だろう。

(嘉悦大学教授 高橋洋一)
【私の論評】財務省は本気で全国民から恨まれ、米国を敵にまわしてまでも増税できるほど肝が座っているのか?
ブログ冒頭の記事で、高橋洋一氏は、「消費増税は、社会保障の安定財源確保や財政再建のためだと言うが、財政破綻の可能性を考えれば、経済、自然災害、安全保障のリスクのほうがはるかに大きいので、やめるのが合理的な判断」と締めくくっていますが、全くそのとおりです。
しかし、増税をやめるべき理由は高橋洋一氏が述べる国内事情にとどまるものではありません。それは、トランプ政権による反対です。
これについては、以前もこのブログに掲載したことがあります。その記事のリストを以下に掲載します。
G20「各国の力関係の変化」と共同宣言の本当の読み方を教えよう―【私の論評】トランプが目の敵にしてる日本の消費税引き上げを安倍総理は本当に実行できるのか(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、トランプ大統領がなぜ消費税増税に反対するのかを説明した部分のみ以下に引用します。
日本では、輸出業者に消費税が還付される「消費税還付制度」があります。たとえば、自動車を1台生産する場合、部品をつくる会社は部品を売ったときの消費税を国に納め、その部品を買って組み立てて製品にした会社は、それを親会社に売るときに消費税を納めます。そうやって、いくつもの会社が払ってきた消費税が、最終的に製品を輸出する企業に還付される仕組みになっています。
本来なら、部品をつくる会社、それを組み立てる会社と、消費税を払うそれぞれの業者にも出されてしかるべきですが、最終的に輸出されるときには輸出業者は免税で、そこにまとめて還付されることになっています。 
この輸出業者に還付されるお金は、全国商工新聞によると約6兆円。つまり、消費税徴収額約19兆円のなかで、主に輸出業者に戻される還付金が約6兆円もあるということです。みんなから集めた消費税の約3割は、輸出企業に戻されているのです。 
これに対してトランプ大統領は、アメリカに輸出する日本の企業は政府から多額の補助金をもらっていると怒っていて、だからダンピングでクルマなどが売れるのだと考えているようです。消費税を「輸出を促すための不当な補助金」だと非難しているわけです。 
そもそも、米国には消費税がありません。州単位では「小売売上税」という消費税に似たような税金を徴収していますが、国としてはないのです。1960年代から何度も消費税導入の議論はされていますが、ことごとく却下されています。 
なぜ米国の議会が消費税導入を却下するのかといえば、彼らは消費税というのは不公平な税制だと思っているからです。アメリカには、儲かった企業がそのぶんの税金を払うのが正当で、設備投資にお金がかかるので儲けが出にくい中小企業やベンチャー企業からは税金を取らないという考え方があります。儲かっていない中小企業の経営を底支えし、ベンチャー企業を育てて、将来的に税金を払ってくれる金の卵にしていく。それが正しい企業育成だというのです。 
しかし、消費税は、儲かっていても儲かっていなくても誰もが支払わなくてはいけない性質の税金です。さらにいえば、儲かっているところほど相対的に安くなる逆進性を持っているので、アメリカでは不公平な税制だというのが議会や経済学者のコンセンサスになっています。

消費税の引き上げにおいては、国内での議論とは別に日本が無視することのできない「巨大な外圧」があるのです。

来年以降、『アメリカ・ファースト』(アメリカ第一主義)を掲げるトランプ政権との貿易交渉が本格的にスタートするこのタイミングで、日本が消費税10%引き上げへ向かえば、アメリカの強い反発を招くことは避けられないでしょう。

日本やヨーロッパなど、約140の国と地域で採用されている消費税(日本以外では付加価値税と呼ばれる)ですが、実はそこに連邦国家アメリカは含まれていません。

ただし、米国には商品の小売り段階でのみ消費者に課税する『小売売上税』という州税があります。しかしこれは、原材料の仕入れから、製造、流通、卸売り、小売りに至るまで、すべての商取引の段階で課税される『消費税』や『付加価値税』とは根本的に異なるものです。

以下に消費税と小売売上税(売上税)の違いを示すチャートを掲載します。



米国でも過去何度も消費税導入が議論されたことがありますが、そのたびに退けられてきました。その背景には、上での述べたように消費税や付加価値税を『不合理で不公正な税制』ととらえる米国の考え方があります。そのため、この税制に関して、米国は一貫して否定的なスタンスを取り続けてきたのです。

もちろん、消費税を採用している国から見れば、米国は『少数派』ということになりますが、多くの政策で独自路線を突き進み、公平な市場環境を訴えるトランプ政権が『こちらに歩調を合わせるべきだ』と言いだしても不思議はないです。

しかし、米国が消費税導入に否定的だとしても、彼らが他国の税制に「不公正だ」「非関税障壁だ」と不満を訴えているのはなぜなのでしょうか。

その最大の理由は、上でも述べたように日本も含めた消費税導入国が自国の輸出企業に対して行なっている「輸出還付制度」の存在です。米国はこれを「自由競争の原則を歪(ゆが)める制度」だとして問題視しているのです。

消費税は仕入れから小売りまで、すべての段階で課税されます。そして事業主は基本的に、最終的な売り上げにかかる消費税(購入者から預かった消費税)から、その前の段階の仕入れなどにかかる消費税を差し引いた額を税務署に申告することになります。ただし、インボイス制度未採用(*)の日本で正確に計算ができるのかという問題がまずあります。

仕入れから製造までを国内で行なう企業がその製品を海外に輸出する場合、消費税は実際に消費が発生する輸出相手国の税制に沿って課されることになります。

仕入れの段階でも日本の消費税を払っているので、このままでは輸出相手国と国内とで2度消費税が課されることになります。そうした『二重課税』が起きないよう、輸出製品については仕入れなどにかかる消費税が国から還付されることになっています。これが『輸出還付制度』です。

(*)日本の消費税は、ヨーロッパの付加価値税のように取引に関する個々の請求書、領収書ベースで消費税額を計算するインボイス制度を採用していません。


例えば、日本の自動車メーカーが国内から部品を調達していれば、そのメーカーは国内の下請け企業に「部品代+消費税」を支払っていると見なされ、そのクルマを輸出して海外で販売した場合は、国内で払った消費税分が全額還付されるのです。これは消費税制度のない米国に輸出する場合も例外ではありません。

米国はこの還付金を、政府が輸出企業に与える『実質的なリベート』だと見なしていて、強い不満を訴えています。消費税制度のある国からアメリカに輸出する企業は消費税免除により『輸出還付金』の形でリベートを受け取るのに対し、アメリカ国内の企業にそうした制度はなく、輸出先の相手国の消費税を課税されています。これが米国からすると『不公正だ』という主張です。

ではアメリカにとって日本の消費税引き上げはどんな意味を持つのでしょうか。

もちろん、こうした米国側の主張については、さまざまな異論もあると思います。しかし、あくまで米国側の立場で見れば、日本の消費税の8%から10%への引き上げは、『日本の輸出企業へのリベートの引き上げ』と『日本向けアメリカ輸出企業への実質的な課税強化』ととらえることになります。当然、米国が強く反発するのは避けられないでしょう。

米国は日本だけ目の敵にしているわけではありません。欧州の付加価値税や日本の消費税のような間接税については還付制度を認め、直接税では認めないWTO(世界貿易機関)のルール自体を変えるべきだと主張しているのです。

「日本自動車工業会」会長豊田章男氏

実は、そうしたアメリカ側の空気に最も敏感に反応しているのが、日本の自動車メーカーによる業界団体で、トヨタ社長の豊田章男氏が会長を務める「日本自動車工業会」(自工会)です。

これまで基本的に政府の「消費税引き上げ」という方針を支持してきた自工会が、今年9月20日に発表した「平成31年度税制改正に関する要望書」では増税反対という明確な表現は避けながらも、消費税10%への引き上げについて国内市場縮小への懸念を強く訴えています。

こうした自工会の消費税に対する姿勢の変化に、彼らの日米関係に対する「シビアな現状認識」が表れているようです。

韓国とのFTA(2国間貿易協定)の見直しに続いて、10月にはメキシコとカナダとのNAFTA(北米自由貿易協定)に代わる新たな協定(USMCA)の合意にこぎ着けたトランプ政権が、『次のターゲット』として日本を視野に入れるのは当然でしょう。

日本はこれから、自動車関税25%への引き上げをチラつかせるトランプ政権と、2国間貿易協定の交渉に臨みます。しかし、前述したように米国は日本の消費税に対して、強い不満や不信感を抱いています。

そんな状況で日本が消費税の引き上げを強行すれば、日米交渉のテーブルでは米国側が態度をさらに硬化させ、場合によっては自動車関税25%発動という、自工会にとって最悪のシナリオを招きかねません。

今年9月25日、国連総会出席のため訪米した安倍首相に同行した茂木敏充経済再生担当大臣がUSTR(アメリカ通商代表部)のライトハイザー代表と会談しましたが、このライトハイザー氏は消費税の『輸出還付制度』を一貫して不当なリベートだと訴え続けてきた人物として知られています。

安倍首相の訪米直前のタイミングで、自工会があえて『消費増税への懸念』を表明したのも、アメリカ側に配慮した自工会のメッセージではないかとみられます。

また、先ほど述べたUSMCAでは、アメリカへの関税が免除される製品に関して『部品の現地調達率』などの条件が大幅に強化されており、これまでメキシコでの現地生産でNAFTAの恩恵を受けていた日本企業にとって、かなり厳しい内容になっています。

日本の自動車メーカーにとってはトランプ大統領の言う『メキシコ国境の壁』がつくられたも同然で、今後アメリカ市場での拡大があまり期待できないことを考えれば、『消費税引き上げで国内市場まで縮小されてはたまらない』というのが自工会の本音ではないでしょうか。

もちろん、税制は日本の「内政問題」です。それに消費税を採用せず、輸出還付制度を不公正なリベートと見なす米国の考え方が必ずしも正しいとは限らないです。

しかし、世界には米国のように消費税に対して否定的な超大国もあるということです。そして、その米国の姿勢がさまざまな形で日米関係に大きな影響を与えかねないという現実があることは理解する必要があるでしょう。

日本の税制をめぐる大切な議論が、日米貿易交渉の「取引材料」に使われる可能性は大いにあるということだけは認識すべきでしょう。

消費増税は、社会保障の安定財源確保や財政再建のためだと言うが、財政破綻の可能性を考えれば、経済、自然災害、安全保障のリスク、さらには米国による自動車関税25%のほうがはるかに大きいので、やめるのが合理的な判断です。

ムニューシン米財務長官

ムニューシン米財務長官は10月13日、日本との新しい通商交渉で、為替介入をはじめとした競争的な通貨切り下げを防ぐ「為替条項」を要求する考えを示しました。インドネシア・バリ島で記者団に語りました。日本政府は通貨政策や金融政策を縛られるため受け入れがたく、日米交渉の新たな火種になる可能性が出てきました。

日米は9月、安倍晋三首相とトランプ米大統領の首脳会談で、農産物や工業製品の関税引き下げに向けた「日米物品貿易協定(TAG)」の交渉開始で合意しました。ムニューシン氏は今回、この交渉に絡み、「今後の貿易協定に(通貨安への誘導を禁止する)為替条項を盛り込むことが目標だ」と発言しました。

今後の交渉では、消費税がやり玉にあがる可能性はかなり大きいです。米国は自動車関税を皮切りに他の製品や、鉄鋼や部品などにも関税をかけてくる可能背もあります。さらに、「為替条項」まで強制されれでば、とんでもないことになります。このような危機を招く消費税増税は絶対にすべきではありません。

為替条項などは、経済学の常識で、「一国が為替操作のために、意図的に金融緩和策を採用しつづけると、今度はハイパーインフレに見舞われる。そのため、為替操作を続けることはできなくなる」という一般論で十分切り抜けられると思いますし日本は実際為替操作などしていません。しかし、消費税に関してはなかなか、合理的に説明するのは難しいです。米国も納得しないでしょう。

ふたたび増税すれば、個人消費が落ち込み、また日本はデフレにまいまどりとんでもないことになります。過去においては、デフレの原因などあまり明るみにされませんでしたが、今後は多くの識者がその原因を詳細にわたって解説することでしょう。そうして、その現況となった財務省は当然のことながら糾弾され、やがて全国民から恨まれることになります。

財務省は、本当に国民経済を破壊し国民から恨まれるだけではなく、さらに米国を敵にまわしてまで増税するつもりなのでしょうか?

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2017年6月24日土曜日

悪質さ増す日本メディアの世論誘導 信じる人はもはや絶滅危惧種―【私の論評】絶滅危惧種も国民なのだ(゚д゚)!

悪質さ増す日本メディアの世論誘導 信じる人はもはや絶滅危惧種


安倍晋三内閣の支持率が、6月の世論調査で軒並み急落した。5月は56・1%だった産経・FNNの調査結果は、今回47・6%と8・5ポイント低下した。そのほか、読売と日経が49%、共同通信44・9%、朝日41%、毎日36%と、いずれも50%を切った。

 これは野党やメディアの勝利なのか。そうとは思えない。緊迫する北朝鮮情勢や欧州で相次ぐテロ事件には目もくれず、ひたすら安倍内閣の足を引っ張り続けた「国壊」議員たちに、愛想を尽かした国民は多いはずだ。

 読売は世代別支持率も公表した。30代以下の若い世代の内閣支持率は今回も60%以上だった。民進党などの野党と一部のメディアが「倒閣運動の好機」ととらえた「森友・加計学園」問題や、「テロ等準備罪」を新設する改正組織犯罪処罰法の採決をめぐるカラ騒ぎは、若者の心には響かなかった。

 中高年と比べて、ツイッターやフェイスブック、ユーチューブなどを通じ、多角的な情報を入手しているからだろう。

 テレビや新聞などの情報だけで物事を判断する世代と、ネット情報も参考にする世代との情報格差は広がる一方だ。数十年後は現在の若者が中高年である。メディア情報で世論誘導される人々は、もはや絶滅危惧種なのだ。

 米国でドナルド・トランプ大統領が誕生した背景の1つに、米国民の根強いメディア不信がある。米メディアは「暴言」を繰り返すトランプ氏が共和党候補になれば、自分たちが応援する民主党のヒラリー・クリントン元国務長官の勝利は確実だと考えていた。

 思惑通り、トランプ氏が共和党予備選を制したが本選挙も圧勝した。メディアが終始報じた「ヒラリー優勢」の世論調査は完全に間違いで、世論誘導できると信じていたメディアの完敗だった。

 懲りない米メディアは再び民主党と組んで「トランプ降ろし」に励んでいる。日本の一部メディアの「安倍降ろし」と同じ構図だ。日米ともメディアの病巣は根が深い。

 最近、日本メディアの情報操作は悪質さを増している。沖縄の反米軍基地運動家の暴力性や、左派団体が「国連」の権威を利用して日本を貶めてきたカラクリは、前衆院議員の杉田水脈(みお)氏や、キャスターの我那覇(がなは)真子氏、テキサス親父日本事務局の藤木俊一氏らのおかげで白日の下にさらされた。だが、積極的に報じるのは夕刊フジと産経新聞くらいだ。

 築地市場の豊洲移転の問題で、小池百合子都知事の独断が多額の損失を発生させており「都民ワースト」である事実も、都民への周知が足りない。

 メディアの横暴を放置すれば、先の絶滅危惧種の絶滅よりも、日本国の絶滅が先かもしれない。

 ■ケント・ギルバート 米カリフォルニア州弁護士、タレント。1952年、米アイダホ州生まれ。71年に初来日。著書に『儒教に支配された中国人・韓国人の悲劇』(講談社+α新書)、『トランプ大統領が嗤う日本人の傾向と対策』(産経新聞出版)、『日本覚醒』(宝島社)など。

【私の論評】絶滅危惧種も国民なのだ(゚д゚)!

確かに、ケント・ギルバート氏が指摘するように、「野党やメディアの勝利なのか。そうとは思えない」です。

このことを野党やメディアは全く気づいていないようです。

「内閣支持率が下がった分、そのまま野党第一党の支持率が上がることはない。安全保障法制のときもそうだ」と野田佳彦幹事長は19日の記者会見で、言い繕いました。

野田氏は内閣支持率の低下について、加計学園問題などで政府を追及したことを挙げ、「終盤国会での攻勢があったがゆえに低下を実現した」と評価。通常国会での党の対応を「批判もあるかもしれないが、ベストを尽くした」として今後も加計問題などで追及を続ける考えを示しました。

しかし、数字を精査すると、内閣支持率低下は政府自らの「エラー」であって、野党の「手柄」では残念ながらないです。この事実をはき違えている限り、民進党の支持率アップは見込めないでしよう。野党がよく口する「安倍一強」なる批判も、なぜ「一強」なのか自らに問うということはしていないようです。

安倍内閣の支持率は25年12月に10ポイント前後低下したことがありましたが、やがて回復しました。

「もり・かけ」問題は、最初からとうてい安倍総理を辞任に追い込んだり、倒閣に結びつくような可能性ははなから全くありませんでした。

しかし、これらの問題に対する政府の説明はあまり要領を得たものではありませんでした。特に加計問題に関しては、一般にも公表されている戦略特区ワーキング・グループの議事録等を読めば誰にでも簡単に「総理のご意向」などあり得ないことが、わかる内容です。しかし、政府がこれを説明することはありませんでした。

これらの議事録などとは、以下のようなものです。
①2015年6月8日国家戦略特区ワーキンググループ議事録(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc_wg/hearing_s/150608_gijiyoushi_02.pdf) 
②2015年6月29日閣議決定(文科省部分、http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu22/siryo/__icsFiles/afieldfile/2015/09/02/1361479_14.pdf) 
③2016年9月16日国家戦略特区ワーキンググループ議事録(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc_wg/h28/shouchou/160916_gijiyoushi_2.pdf
これらの文書を読めば、文科省はワーキンググループの時点で、完敗していることが手にとるようにわかります。

たとえば、①2015年6月8日国家戦略特区ワーキンググループ議事録では、以下のよう牧野課長補佐の発言があります。牧野課長補佐とは、以前にもこのブログに掲載した、伝言ゲームで今回の問題で誤解が広まったその元になった文書を作成した人です。

課長補佐の牧野美穂氏(33)
○牧野課長補佐 そこまでは言っていませんけれども、既存の獣医師養成の分野に関して は少なくとも今足りているというように我々は農水省さんから聞いておりますので、その 上で関係者も納得するような、これは新しい構想だというようなものを具体的な需要の数 までも示した上でお示しいただければ、こちらとしても一緒に検討していきたいというこ とでございます。 
○原委員 挙証責任がひっくり返っている。
ここで、原委員の言う「挙証責任がひっくり返っている」という発言の意味するところは、本来既存の獣医師数が足りているのか足りていないのか、あるいは新しい構想による獣医師の需要数など、本来文科省が示すべきなのに、あたかも農水省にその責任があるかのように牧野氏が述べていることに対するものです。

そうなのです。本来規制する側が、需要は足りているということを示すことをしなければならないはずです。新しく、獣医学部を設立することを認可しないというのであれば、それを誰もが納得できる形で、データに基づいた資料を提示して説明する責任があるのです。

にもかかわらず、牧野氏は農水省などにこの説明責任を転嫁しているのです。これでは、話にも何もなりません。無責任そのものですし、これでは、新設獣医学部を規制することは到底不可能です。

③2016年9月16日国家戦略特区ワーキンググループ議事録には、以下のような浅野課長の発言がしるされています。

浅野 敦行 文部科学省高等教育局専門教育課長
○浅野課長 御指摘いただいたように、もう繰り返しになりますので申し上げませんけれ ども、我々としては先ほど本間先生からも御指摘いただいたように、既存の獣医師でない 構想、獣医師養成でない構想が具体化し、かつライフサイエンスなどの獣医師が新たに対 応すべき分野における具体的な需要が明らかになって、既存の大学・学部では対応困難だ ということであれば、そういったこともしっかり検討していくというつもりでございます。
○八田座長 そうであるかどうかという判定というのはもう今、進めていらっしゃるので すか。それとももう少し提案者等からのヒアリングが必要だということですか。 
 ○浅野課長 恐らくこれは文科省だけでは決められないと思いますので、きちっとしかる べく多分政府全体として、需要と供給の問題も全く関係ないわけではありませんので。  
○八田座長 それは関係ないでしょう。文科省は研究が必要かどうか、その観点からやる から文科省に権限があるので、実際の人たちの損得を斟酌するなどということはあり得な いでしょう。文科省は研究の必要性、ちゃんと需要が十分ある研究者を養成するというこ とが必要なら、それは当然やるべきではないですか。ほかのところを見る必要などは何も ないでしょう。
これを読むと、浅野課長は何とか新設獣医学部の設立を阻止しようとしているのですが、その根拠が脆弱なので、やり込められていことが良くわかります。

以前このブログでも示したように、①と③を読むと、内閣府・特区有識者委員と文科省(農水省)による規制緩和議論は、前者の規制緩和推進派の完勝であることがわかります。

②の閣議決定では、要求されている獣医学部新設の需要見通しについて、許認可をもち需要見通しの挙証責任がある文科省が、まったくその役割を果たせていないことが分かります。しかも、②では、2015年度内(2016年3月までに)に獣医学部の新設の是非について検討するという期限が切られているのですが、それすら文科省は守れていないことがわかります。

これでは、文科省の完敗です。加計問題に係る規制緩和の議論は、課長レベルの事務交渉で決着がついてしまっていたののです。総理の参加する諮問会議の前にこれだけ完膚なきまでに文部省は負けてしまい、さらにはその無能ぶりまでさらけ出してしまってるのです。この問題のいずれかの過程で「総理の意向」が出てくる余地はまったくありません。

そうして、いわゆる例の怪文書は、その他の文書なども、これらの議事録の後の日付のものです。であれば、これだけワーキンググループで文科省は惨敗した後に「総理のご意向」があったということになり、全く時系列的に成り立たないことが、あまりにはっきりしすぎています。

にもかかわらず、政府はこの議事録をもとに丁寧に説明するということを怠ってしまいました。さらに、政府なら立場上他の有益な情報もあったかもしれません。しかし、結局これらを開陳して丁寧に説明するということはしませんでした。

結局政府としては「総理のご意向」で加計学園に獣医学部が開設されることになったなどという与太話は、あまりにも馬鹿馬鹿しくて、まともに付き合っていられないということなのでしょうが、それにしても石破大臣が「高をくくっていると、恐ろしいことが起こる」と語ったことにも一理あるかもしれません。

そうして、それは現実のものになるかもしれません。それは今のタイミングであの豊田氏の大暴言が、テレビで繰り返し報道されたからです。

豊田真由子氏
豊田氏の「暴言」は、NHKを含めテレビ各局で繰り返し流されました。都議選告示日の前日22日という自民党にとっては最悪のタイミングでした。またも「魔の2回生」の不祥事で、自民党は7月2日投開票の都議選への影響を懸念しています。繰り返しますが、同党は襟を正さないと、選挙で痛い目に遭うかもしれないです。

都民の投票行動は、そのときの風や雰囲気に流されやすいからです。都議会選挙は苦戦をしいられるかもしれません。そうして都議選で負けると、過去においては次の国政選挙では自民党はあまり良い結果を出せていません。

政府としては、メディアは常に悪質で低劣な世論誘導をしようと虎視眈々と狙っているということを片時も、忘れてはならないのです。そうして、その動機はメディアは「自分たちの使命は、権力、政権に反対することである」との単純な思い込みです。

本来、上記のような戦略特区ワーキング・グループの議事録など、メディアが丹念に読み込んで、時系列も加味した上で丁寧に報道すれば、このような誤解は最初から生じようもないのですが、メディアは自らの使命を完璧に忘却して「世論誘導」に地道をあげています。

であれば、このようなことは政府自らが実行しなければ、誤解を招くばかりです。

ガラパゴスでは他の地域では絶滅した種が生き続けている
ブログ冒頭の記事で、ケント・ギルバート氏が指摘するように、世論誘導に簡単にのってしまう人々は、確かに絶滅危惧種なのですが、ここ日本はガラパゴスのように他の地域ではすでに絶滅したような種が生き残っているところでもあります。

ここ数年は少なくともこの絶滅危惧種の数は侮れないほど多いということを肝に銘ずるべきです。しかし、絶滅危惧種も国民であることには変わりないのです。これに対抗するためには、あまりにも馬鹿馬鹿しい、それこそ小学生にもわかりそうに思えることでも、誠意をつくして丁寧に説明していく必要があるのです。

さらには、一見関係ないようにみえるかもしれませんが、そうそうに追加金融緩和や積極財政をして、8%増税の悪影響を駆逐し、デフレから完全脱却することも重要です。かつて、池田内閣は所得倍増計画を数年前倒しで実行しましたが、その結果何がもたらされたかといえば、日本国内からソ連の影響が一掃されました。結局、生活が豊かになったので、誰もわざわざソ連のプロパガンダにのるような人は居なくなったのです。そうして、今日ソ連の影響下で動かされるような当時の絶滅危惧種はすっかり影を潜めたのです。

絶滅危惧種の人にも丁寧な説明をすること、これは、本当にもどかしいことなのですが、それが民主主義というものです。

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