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2019年9月6日金曜日

「EU離脱」が英国にむしろ好ましいと考える理由―【私の論評】ブレグジット後、安全保障面と自由貿易で日本との関係が深まる英国(゚д゚)!

「EU離脱」が英国にむしろ好ましいと考える理由

一時的な円高や株の大幅安を招く懸念は残る

村上 尚己 : エコノミスト

ジョンソン首相は解散総選挙に持ち込みたいが、簡単ではなさそうだ。市場は今後どう反応するのか

8月22日のコラム「アメリカ株は再度大きく下落するリスクがある」
では、アメリカ株の下振れリスクが依然大きいと述べた。その後、8月23日にダウ工業株30種平均(ダウ平均株価)は2万5500ドル前後まで急落する場面があった。ただ、同29日には米国との関税交渉について中国の姿勢が穏当であることを期待させる報道などをうけて、ダウ平均は約2万6300ドルと、急落前の水準までほぼ戻った。

米中貿易戦争の下振れリスク織りこみはこれから

 アメリカ株市場は、米中貿易戦争に関する思惑で一喜一憂している状況と言える。北京で10月初旬に行われる中国の政治方針を決める会議の前後に、米中貿易戦争が沈静化するとの見方も聞かれる。米中貿易戦争の展開について、筆者は確固たる見通しを持ち合わせていない。だが、両政府が妥協するには至らず貿易戦争は長期化するため、米国が表明する対中関税のほとんどは実現すると想定している。

 問題は、米中による関税引き上げ合戦によって、両国を中心に世界経済がどうなるかである。筆者は、世界貿易の停滞が長引くため、製造業を中心に世界経済の成長率は2020年まで減速すると予想している。これまで利益拡大が続いてきた、アメリカ企業の利益の頭打ちがより鮮明になると見込まれるが、アメリカの株式市場は企業利益の下振れリスクを十分織り込んでいないとみている。

 そして、目先のリスクイベントとして注目されるのが、イギリスの欧州連合(EU)からの離脱問題である。ボリス・ジョンソン氏は7月下旬に保守党党首選に勝利し、政権を発足させると、10月末が期限となっているEUからの離脱を強硬に進める姿勢を強く打ち出した。それ以降、8月中旬まで外国為替市場でポンド安が進むなど、「合意なきEU離脱リスク」が懸念されている。

 10月末の期限までに合意なきEU離脱が実現する可能性は、現状で約40%と筆者は想定している。イギリス議会では合意なきEU離脱を阻止する政治勢力が強いことから、総選挙が想定されるなど今後の政治情勢が大きく変わりうる。どのような結末になるかは、同国政治の専門家ではない多くの投資家にとっても、見通すことは難しいだろう。

 金融市場は、10月末までに合意なき離脱が起きるかどうかの思惑で揺れ動いており、合意なき離脱となれば円高、株安をもたらすと見る向きが多い。筆者が警戒しているアメリカ株の下落は、合意なき離脱への懸念が高まり、市場心理が悪化することによって引き起こされる可能性がある。

 こうした意味で、目先のイベントとしてイギリスのEU離脱の行方を警戒している。ただ、どのような形であれイギリスがEUから早期に離脱することは、同国経済にとってむしろ望ましいと考える(この点は5月30日コラム
「EUへの民衆の支持が一段と落ちると読む理由」ですでに指摘した)。

 2016年以降の約3年間にわたり、EU離脱問題がどのような結末になるか分からないという不確実性が、同国の企業の設備投資を抑制し、成長率を下押ししてきた。EU離脱の行く末がはっきりすれば、抑制されていたイギリス企業の設備投資が増え始める可能性がある。

 もちろん、合意なき離脱となれば、モノ・ヒトの移動などに際して短期的に混乱が起きる可能性は否定できない。ただ、合意なき離脱となった場合は、英国は物品の87%の品目の輸入関税を無税にする暫定措置を発表、また関税職員を増やす対応を行っている。このため、海外からの輸入品が突如途絶えるリスクは限定的とみられる。

英国は合意なき離脱となっても、危機を回避する

 合意なき離脱によって、イギリスの株安、通貨安など金融市場にショックが起こり、金融システムが揺らぐこともリスクだろう。ただ、英イングランド銀行(中央銀行)は、ショックに備えて金融政策を慎重に運営しているが、合意なき離脱となれば利下げに転じ金融市場に流動性を供給する政策に踏み出すだろう。そして、政治情勢は予想できないが、ジョンソン首相は今後政府歳出を大規模に増やすプランを明示している。これらの政策対応によって、仮に合意なき離脱となっても英国は危機を回避すると予想する。

 つまり、今後想定されるイギリスの合意なき離脱は、2016年半ばのEU離脱の是非を問う国民投票後のように一時的に金融市場が大きく動く可能性はあるが、それが世界の景気動向に及ぼす影響は同様に軽微にとどまるだろう。

 むしろ、合意なき離脱となり経済的苦境に直面するのは、イギリスと経済関係が深いフランスを中心としたEU諸国ではないか。イギリスではEU離脱に向けた準備が進んでいるが、イギリスと貿易取引がさかんなフランスなどでは税関などの準備が十分に進んでいない可能性がある。さらに、ドイツでは2019年になってから景気指標の停滞が顕著で、イギリスのEU離脱が引き起こす混乱が、EU諸国の景気停滞をより深刻にするリスクがあるとみている。

なお、自国の経済安定のために、金融財政政策をフルに使える強みをイギリスが持っていることは、アメリカ同様の強みである。EUからの離脱を控え、イギリスはいずれの政権になっても拡張的な財政政策に転じるとみられる。この結果、現時点で緊縮財政政策を続けている主要国は、ほぼ日本だけであることは一層鮮明になっている。

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【私の論評】ブレグジット後、安全保障面と自由貿易で日本との関係が深まる英国(゚д゚)!

冒頭の記事にもあるように、英国の合意なき欧州連合(EU)離脱が「ますます不可避」のように見受けられ、英経済が来年、軽度のリセッション(景気後退)に陥ることになるのは必定のようです。

10月31日の期限を越えることがあるとしても合意なき離脱に至ることが今や英国の基本シナリオであるとみるべきです。

このシナリオをたどる場合、イングランド銀行(中央銀行)は2020年半ばまでに政策金利を50ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)引き下げ、政府は財政支出計画を前倒しすることになるでしょう。

中銀はこれまでのところ、金利はいずれの方向にも動き得るとしていますが、何人かの当局者は利下げの可能性がより高いと述べています。当然そうすることでしょう。

10月31日以降に先延ばしすることなくEU離脱を実現させることが、英国保守党の分裂を防ぎ将来の選挙で勝利するための政治的至上命令だと首相は考えているようです。

経済的リスクは軽く扱われ、緊急対策としての財政支出と金融緩和の効果が強調されています。そうして、これにより、英国経済は比較的短期間で復活する可能性が大きいです。



ところでブレグジット(イギリスのEU離脱)後の英国は、世界の舞台でどのような役割を果たすべきと考えているのでしょうか。テリーザ・メイ元首相ら英政権の閣僚たちは、かなり前からこの問題を検討していました。そして運命の国民投票の数カ月後に、メイとボリス・ジョンソン外相(当時)が示したのが「グローバル・ブリテン」構想でした。

メイは2016年10月の保守党大会で、グローバル・ブリテンとは、英国が「自信と自由に満ちた国」として「ヨーロッパ大陸にとどまらず、幅広い世界で経済的・外交的機会を求める」構想だと説明しました。

なぜなら国民投票の結果は、イギリスが「内向きになる」ことではなく、「世界で野心的かつ楽観的な新しい役割を担う」ことへの決意表明だったから、というのです。

この「世界における新しい役割」には、英海軍がインド太平洋地域で再び活発な役割を果たすことが含まれます。例えば、キム・ダロック駐米大使は2018年、「航行の自由を守り、海路と航空路の開放を維持する」べく、空母クイーン・エリザベスがインド太平洋地域に派遣されるだろうと述べました。

同年にオーストラリアを訪問したジョンソンは、英海軍が2020年代にクイーン・エリザベスとプリンス・オブ・ウェールズの空母2隻を南シナ海に派遣すると語りました。英海軍の制服組トップである第一海軍卿も、2020年代にクイーン・エリザベスを南シナ海に派遣すると語っています。


英国の外交政策はあまりにも長い間、ヨーロッパという狭い地域に縛られていたというのが、英政府高官らの考えです。彼らにとってブレグジットは、イギリスが単独で世界的な役割を果たすチャンスなのです。2018年末のサンデー・テレグラフ紙のインタビューで、当時のギャビン・ウィリアムソン国防相は以下のように語りました。

「(ブレグジットによって)イギリスは再び真のグローバルプレーヤーになる。私はそこで、軍が極めて重要な役割を果たすと考えている。......わが国のリソースをどのように前方配備して抑止力を構築するか、そしてイギリスのプレゼンスを確立するかを、私は大いに検討している。このような機会は極東だけでなく、カリブ海地域にも存在すると考えている」

さらにウィリアムソンは、「今後2年以内に」、極東に軍事基地を設置する計画を明らかにしていました。現時点の候補地はブルネイとシンガポールの2カ所です(イギリスは現在、シンガポールのセンバワン海軍基地に小規模な後方支援拠点を持つ)。

実際、イギリスは近年、東南アジアにおける防衛活動を拡大しています。その根拠となっているのは、1971年に英連邦5カ国(イギリス、マレーシア、シンガポール、オーストラリア、ニュージーランド)が締結した防衛協定(5カ国防衛協定)です。

ウィリアムソンは、2018年6月に開かれたアジア太平洋地域の安全保障会議「シンガポール・ダイアローグ」で、英国は海軍艇を派遣することにより、この地域の海における「ルールに基づくシステム」を強力に支持していくと語りました。「国家はルールに沿って行動する必要があること、そうしない場合にはそれなりの結果が伴うことを明確にする必要がある」

さらに英外務省のマーク・フィールド閣外相(当時:アジア太平洋担当)は昨年8月、訪問先のインドネシアのジャカルタで講演し、英国はアジアで恒久的な安全保障プレゼンスを維持する決意だとして南シナ海における航行の自由と国際法の尊重を各国に促しました。

これまで英海軍の艦艇が極東に派遣されたのは2013年が最後でした。同年、駆逐艦デアリングがオーストラリア海軍の創設100周年記念行事に派遣され、5カ国防衛協定の合同軍事演習にも参加しました。この年は超大型台風ハイエンの被害を受けたフィリピンの人道支援活動のため、軽空母イラストリアスも派遣されました。だが、その後の派遣はぱったり途絶えていました。

昨年晴海埠頭に入稿した英海軍揚陸艦「アルビオン」
状況が変わったのは2018年4月でした。英国は朝鮮戦争以来となる海軍艇3隻を極東に派遣しました。強襲揚陸艦アルビオンは、オーストラリアとニュージーランドに寄港し、5カ国防衛協定の合同軍事演習に参加しました。対潜フリゲート艦サザランドとフリゲート艦アーガイルは、日米韓合同軍事演習に参加するとともに、北朝鮮に対する経済制裁の履行監視活動に参加しました。

南シナ海では、英海軍とフランス海軍の合同チームが、航行の自由を確保するための哨戒活動を実施。アルビオンも8月に日本に寄港後、西沙群島(パラセル)近海で哨戒活動を行い、ベトナムのホーチミンに親善目的で寄港しています。米海軍との合同演習も、この地域における英海軍のプレゼンス強化をアピールするものになりました。

英国がインド太平洋地域に再び強力に関与するようになった背景には、3つの大きな要因があります。

第1に、英国はブレグジット後、EU加盟国としてではなく、独立した存在として世界における役割を規定しなければならないということがあります。その点、英国の貿易額の12%が通過する南シナ海、さらにはインド太平洋地域の安定と、ルールに基づく国際秩序の形成をサポートすることは、外交的にも経済的にも理にかなっています。

従って北朝鮮に対する制裁と、南シナ海における航行の自由を維持するために、5カ国防衛協定の加盟国やアメリカなどの同盟国、さらには日本などの安全保障パートナー諸国との協力が今後も重要になります。

第2に、インド太平洋地域は世界経済の成長のエンジンであり、英国はその成長に便乗する必要があります。このことがオーストラリア、日本、韓国、シンガポール、ベトナムとの自由貿易協定交渉、さらには「包括的かつ先進的TPP協定(CPTPP)」の交渉につながります。

第3に、インド太平洋地域の防衛に関与するには、イギリスの海軍と先端軍事技術、さらには安全保障パートナーとしての「頼りがい」を世界にアピールする必要があります。そこで英政府が積極的に進めているのが武器取引です。

ストックホルム国際平和研究所が発表した2013〜2017年の世界武器輸出国ランキングで、イギリスは6位に入りました。2017年だけでもイギリスの武器輸出額は1130億ドルに上ります。輸出先のトップ3はサウジアラビア、オマーン、インドネシアです。2018年には対潜フリゲート艦9隻の調達契約260億ドル相当をオーストラリアと締結しました。

かつて大英帝国の基礎となった植民地政策はあり得ないですが、ブレグジット後のイギリスの世界戦略にも、歴史ある海軍の力が欠かせないようです。そうして、ブレグジット後の英国は、安全保障面でも、自由貿易でも日本との関係が深まりそうです。

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2019年2月8日金曜日

いよいよ本格的に走り出したTPP11―【私の論評】いつの間にか、日本は世界の自由貿易をリードする絶好のポジションに(゚д゚)!

いよいよ本格的に走り出したTPP11

岡崎研究所

CPTPP(TPP11)は、昨年12月30日に発効したばかりであるが、時を置かず、1月19日、TPPの参加国11か国は、閣僚級の「TPP委員会」を東京で開催、閣僚声明を発表した。声明の抜粋は以下の通り。


 閣僚は、自由貿易を支持する強いシグナルを発し、21世紀にふさわしい高い水準でバランスの取れたルールを整備し、経済成長を促進し、我々の国の企業、消費者、家族、農業事業者及び労働者に対し利益をもたらす本協定を完全に履行することに対する確固たるコミットメントを表明した。閣僚は、委員会によってなされた決定が、協定の円滑な実施を確実にすることに寄与すること及び長期的な拡大を促進することを確信した。

 閣僚は、アジア太平洋地域において、そしてそれを越えて、自由貿易及び経済統合を力強く推進するにあたり、我々の強固な結束を維持する重要性を再確認した。この文脈で、閣僚は、7の署名国による早期の締結及び実施を歓迎し、本協定が可能な限り早期に全ての署名国について発効することにつき希望を表明した。

 閣僚は、最近の保護主義的傾向への懸念の高まりの中で、効果的で、開かれた、包摂的な、ルールに基づく通商システムという原則を維持し、更に強化していくことが最重要であるということで一致した。

 閣僚は、第1回委員会会合が成功裏に終了したことを祝福し、それが我々の地域のため、及びそれを越えて、高い水準のルールの強固なプラットフォームの創出に向けた重要な出発点となると認識した。

出典:首相官邸ホームページ

 上記声明は、自由貿易を是とし、保護主義に反対し、地域を越えた高い水準のルール作りを目指す、といったTPPの目標を端的に示した内容となっている。安倍総理は、あいさつで「様々な不安や不満があるからこそ、それに正面から向き合い、公正なルールを打ち立てることで、自由貿易を更に進化させていく。TPPは、その先駆けとも呼ぶべきものであります。」と述べている。第1回TPP委員会が日本で開催されたことは、TPP11を日本が主導したこと、日本の自由貿易への強固なコミットメントを国際社会に改めて印象付けるであろう。

 今回のTPP委員会では、TPP11の運用に関する次の4つの文書が採択され、TPP11は、いよいよ本格的に走り出したと言える。

(1)協定の運営:議長のローテーションや、2019年をTPP11全ての参加国の発効に向けた移行期間とすることなど、協定の円滑な運用のために必要な事項についての決定。

(2)新規加入手続:加入希望国・地域との協議の段取り、加入作業部会の立上げ等、実際に加入を調整していくにあたり必要な手続。

(3)国対国の紛争解決(SSDS)手続規則:紛争解決パネルでの審理手続に関する細則及びパネリストが審理を行うに当たって従うべきルール。

(4)投資家対国家の紛争解決(ISDS)仲裁人行動規範:仲裁人が仲裁を行うに当たって従うべきルール。

 新規加入に関しては、インドネシアやタイが関心を示しているほか、英国も加入を希望している。参加国が増えるほど、自由貿易のプラットフォーム、保護主義への反対、通商に関するハイレベルのルール作りといったTPPの価値が高まることになる。さらに、すぐにではないにせよ、米国の復帰を促す誘因にもなるであろう。

 新規加入希望国の中で、特に注目すべきは、昨年11月に参加希望を伝えてきた台湾であろう。台湾がTPPに参加できれば、中国による国際的孤立化の圧力を受けている台湾にとり、大きな助けとなる。地域にとっても経済的にも戦略的にもプラスとなろう。1月17日には、自民党の河井克行総裁特別補佐が訪台し、蔡英文総統と会談、蔡総統は台湾のTPP参加への支援を求めたという。台湾による東日本5県産食品の禁輸という大きなハードルがあるが、台湾のTPP参加は現実味を帯びた話になってきているように思われる。

【私の論評】いつの間にか、日本は世界の自由貿易をリードする絶好のポジションに(゚д゚)!

このブログではすでに過去に何度が説明していますが、TPPとは何なのか、その目的やメリット・デメリットなどについて簡単に以下に解説します。

まずは、現在のTPP11の参加国は、米国を除く、オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、日本、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、 ペルー、シンガポール、ベトナムです。

TPPの目的は、概略的にいうと、各国間のモノの受け渡しについて関税をなくしまおうということです。ただし、厳密にいうと他の知的財産とかビジネスのルールに関しても詳細に定めています。

各国間の物品の受け渡しである、貿易には自由貿易と保護貿易という大きく2種類があります。

自由貿易は、関税をなくして自由に物品の行き来きができるようにしましょうという貿易です。

保護貿易というのは、他国からの輸入品には関税を高くして自国の産業を保護しましょうという貿易です。

米国がTPPを抜けたのは、トランプ大統領は元々その思想が保護貿易主義的だったからです。そのため、米国は現在様々な分野で関税を高くするという施策をとっています。

では、米国が抜けたにもかかわらず、日本がTPPに参加するメリットは何なのかを以下簡単に解説します。

まず、TPP発効後の日本においては、TPP参加国の国に輸出した場合、関税が撤廃されているので、安く輸出することが出来ます。

これによって、様々なものが海外で売りやすくなります。日本だと、たとえば自動車はその筆頭格です。従来よりも多く自動車などの物品が多く売れれば、国内にその分のお金が入ってきます。そうすると、景気が良くなるというメリットがあります。

一方で、デメリットとしては、海外から輸入したものに対しても関税が撤廃されるので、国内の農家の人達が、海外の安い農作物と価格競争を強いられることになります。すると、国内の農作物が売れず、国内の農業が衰退してしまうのではというデメリットもあります。

日本としては、このメリットとデメリットによる影響を天秤にかけて、メリットの方が大きいと判断し、参加したのです。

以上、簡単にTPP11の参加国や、日本のメリット、デメリットを解説してみましたが、これから私たちの暮らしにどのように影響していくのか注意深く見ていく必要があります。

たとえば、スーパーには海外産の安い食品が並ぶことになるかもしれませんし、海外に行ったら日本の車が今まで以上に多く走っているかもしれません。


TPP11は、保護貿易に走ろうとする、米国ならびに、知的財産権を軽んじ、覇権主義的な中国に対して大きな牽制となってもいます。

さて、台湾のTPP参加のハードルとなっている東日本5県産食品の禁輸について解説します。

昨年台湾の国民投票で福島など日本5県産食品の禁輸継続が可決されたことを受け、河野太郎外相が昨年12月7日、台湾の環太平洋経済連携協定(TPP)参加に悪影響が出る可能性を指摘しました。

これについて行政院(内閣)のKolas Yotaka(グラス・ユタカ)報道官は同8日、日本の反応は「理解できる」とした上で、台湾はTPP加盟を目指して法改正などの準備を進めてきたと述べ、引き続き日本と意思疎通を図り、理解を求める姿勢を示しましーた。

謝長廷駐日代表(大使に相当)は同7日夜、日本側の発言について「非常に遺憾だ」と述べました。日本が具体的な報復措置に及ぶ可能性については、日本国内でも他国への影響を懸念する声や台湾に理解を示す声などさまざまな意見があるため「予測はできない」とし、相手に刺激を与えるような言動は慎むべきだと提言しました。

また、このことが日台の友好関係に影響を及ぼさないことを願うと述べ、力を尽くして日本側への説明を続けるとしました。

2011年の福島原発事故以来、台湾は福島など5県、中国は新潟、宮城、福島など10都県で生産・製造された食品の輸入を停止しましたが、中国は先月28日付で新潟産コメの輸入解禁を発表しました。

謝代表は、中国の規制緩和は日本に友好を示すものであるとした上で、台湾のTPP加盟に最も反対するのは中国であると指摘。台湾の国民投票の結果が反対勢力に格好の口実を与えてしまったとの見方を示しました。

日本での、福島などの産地での、検査体制はかなり他国よりも厳しいもので、これをバスした農産物など放射能による危険など考えられません。私自身も福島産の農産物など危険だとは全く思いません。

そのことを日本側はもっと台湾の人々に訴求していくべきでしょう。

一方日本と欧州連合(EU)間の画期的な2つの新協定が2月1日に発効しました。日本・EU経済連携協定(EPA)と戦略的パートナーシップ協定です。EPAはEUにとって市場規模の点で最大の二国間貿易協定であり、これにより世界でも史上最大の自由貿易圏が誕生することになりました。

この協定で日本とEU間の関税は劇的に減り、両者間の貿易をよりシンプルでスピーディーなものにする体制が整う。それに応じて貿易量も増加するだろう。戦略的パートナーシップ協定は、核拡散防止、地域安全保障、国際テロと組織犯罪、サイバーセキュリティ対策、エネルギーと気候の安全保障といった問題で日本とEUの協力体制を確実なものにします。



この2つの協定は、国際貿易とグローバル・ガバナンスの発展において非常に重要なタイミングで発効しました。ブレグジット(イギリスのEU離脱)でイギリスはEUとの関係を見直し、世界の他の国々と独自の貿易政策を構築しようとしているからです。

より重要なのは、日本とEUのこの新たな協定が、ドナルド・トランプ米大統領の「アメリカ第一主義」の貿易政策と正反対の動きを示していることです。2016年にアメリカ大統領に選ばれて以来、トランプは二国間協定を重視し、貿易障壁を保護主義に活用しWTO(世界貿易機関)のような国際機関を弱体化させてきました。

EUと日本の二つの協定に関する交渉が締結に向けた推進力を得たのは、トランプの政策、特に環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱が予想されたからです。大規模な貿易協定の交渉には延々と時間がかかるのが常で、EUと日本の交渉は2013年に開始していました。

日本とEU、そして特にドイツは輸出主導型の経済であり、いずれも開かれた貿易政策を支持する立場にあります。トランプの保護主義的な立ち位置は、こうした国々を不安にさせています。そのためこの新協定は、ルールに基づく国際貿易システムの重要性を強く再確認するものと受け止められています。

日本が農産物に関してEUに譲歩したことは、この封印された市場の開拓を長い間望んでいた米国の農家には打撃でした。日・EU協定は、自由貿易を擁護する日本の姿勢を強調し、アメリカの離脱で頓挫したTPPの残骸から復活した新たな多国間貿易協定「包括的及び先進的な環太平洋パートナーシップ協定(CPTPP)」に、はずみをつけるものになるでしょう。

EUと日本の経済をあわせると世界のGDPの約3分の1を占めます。したがって、この新しい貿易協定は世界経済を活性化するとともに、世界有数の2つの経済大国(米国・中国)による多国間協調主義に対する強い決意を示すうえで重要なものになるはずです。

米国とEUの貿易交渉が近く始まります。この交渉は、昨年7月、欧州からの自動車の輸入に追加的な関税を課すと脅迫するトランプに欧州委員会委員長のユンケルが訪米して直談判に及び、その結果決まったものです。
その見返りに、交渉が継続する間は双方とも追加的な関税を課すことはしない(米国が欧州の自動車に追加的な関税を課すこともしない)ことで折り合ったものです。
欧州委員会委員長のユンケル氏(左)とトランプ米大統領(右)

1月11日に米通商代表部(USTR)は、米国の交渉目標に関する17ページの文書を公表しています。この文書は共同声明に記された交渉の範囲にはおよそ無頓着で、工業品と農産品の貿易、通信・金融を含むサービスの貿易、衛生と植物防疫の措置、デジタル貿易と越境データ通信、投資、知的財産、政府調達など、果ては為替操作まで、目一杯の要求項目を並べたものです。これらの項目は日本との貿易交渉の目標としてUSTRが掲げるものとほぼ共通です。

マルムストローム貿易担当欧州委員とライトハイザー通商代表との間で事前に交渉したようですが、要するに交渉の範囲についてすら合意に至っていないらしいです。EUは交渉の範囲を絞り込んでおり、マルムストロームは「我々は米国との広範な自由貿易協定交渉を提案しているのではないことを明確にしておきたい」と述べています。

紛糾の種は幾らもあります。例えば農産品を含まない協定を米国議会が承認するかという問題があります。しかし、農産品は共同声明で交渉の対象から除外することに成功したとEUは思っているに違いないです。

渉の見通しは暗いです。しかし、もともとこの交渉は自由貿易の利益を共に享受しようという積極的意図によるものではないのですから、必ずしも交渉が成功裏に終わらなくても貿易戦争を避ける道具になってくれれば十分なのかもしれません。ただ、そういうことで何時までトランプを封じ込め得るかという問題はあります。

ただし、日本を軸として、TPP11・日欧EPAが発効し、米国と中国だけがこの趨勢から出遅れていること、中国は社会構造が遅れているため、自由貿易などそもそもできないのに、米国は可能であることを理解すれば、トランプ氏も考えを変えるかもしれません。トランプ氏は無理かもしれませんが、次の大統領は考えを変えるでしょう。

いつの間にやら、日本は世界の自由貿易をリードする立場になったようです。これは、民主党政権の時代には全く考えられず、やはり安倍政権になってから芽生え、それが今頃成果となって現れているのです。

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2017年4月24日月曜日

トランプ大統領に「揺さぶり」? 日本が「米国抜きTPP」模索―【私の論評】TPP11で日本が新たな自由貿易のリーダーになる(゚д゚)!


オバマケア廃止法案の可決に失敗した後、ホワイトハウスで記者会見するトランプ
トランプ米大統領が「離脱」を宣言した環太平洋パートナーシップ協定(TPP)を巡り、日本政府は米国を抜いた11か国での発効「TPP11(イレブン)」を目指す方向にかじを切った。これまでは米国を説得し、翻意するのを待つ構えだったが、アジア太平洋地域の自由貿易を推進する重要性や米国との2国間交渉を有利に進めるうえで、TPPイレブンが得策と判断した模様だ。

TPPは2015年10月、日米やオーストラリアなど12か国が大筋合意し、各国がそれぞれ国内で批准に向けた手続きを進めていた。しかし米大統領に就任したばかりのトランプ氏が2017年1月、離脱の大統領令に署名。TPPは、12か国GDP(GDP)合計の85%を占める6か国以上が批准しなければ発効できない取り決めになっており、約60%を占める米国の離脱で事実上、発効できない状況に陥っていた。

 米国に対する「防波堤」にする狙いも

日本は「市場規模の大きい米国が抜けたTPPは意味がない」との立場から、米国が将来、翻意するのを待って発効を実現したいとの立場だった。しかしTPPは先進国や途上国も含め、知的財産保護など従来の自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)と比べ「画期的なルール作りで合意できた」(経済産業省筋)という自負がある。複数の通商関係者は、世界的に保護主義的な動きが広がる中、日本がTPP発効を目指す姿勢を明確にすることが自由主義を守る立場として重要だと判断したという。

また、TPP11が発効すれば、豪州などは米国より低い関税で牛肉などを日本に輸出でき、米国の農産物の競争力は相対的に低下する。そうなれば米国の農業界は黙っていないはずで、トランプ政権がTPPに戻る可能性も出てくるとの期待もある。

一方、TPPを離脱した米国は今後、日本に対し、2国間のFTA交渉を求めてくるのは必至だ。特に、農業分野で厳しい要求が突きつけられる可能性は高く、TPP11を目指す姿勢を打ち出しておくことで、米国に対する「防波堤」にする狙いもある。

 ベトナムなどは再交渉を求める可能性

ただ、TPP11が実現するか否かには不透明要因も多い。まず、事実上、米国抜きで発効できないとの要件については、11か国の合意で条文から削らなければならない。また、そもそもTPP参加の最大の狙いが米国市場への参入だったベトナムやマレーシアにとって、TPP11は意味がないものに映りかねない。国有企業改革など厳しい条件をのんだベトナムなどは再交渉を求める可能性もある。各国が次々と再交渉を求める事態になれば、まとめるのは至難の業ということになる。

TPP11か国の中でメキシコやカナダは米国との北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉を控え、どこまで米国抜きのTPP発効に積極的になれるかも見通せない。

2017年5月後半にはベトナムで閣僚会合が開かれる。麻生太郎・副総理兼財務相は4月19日、ニューヨークでの講演で、「(閣僚会合で)米国なしで11か国だけでやろうという話が出る」と言明しており、各国の動向が注目される。
【私の論評】TPP11で日本が新たな自由貿易のリーダーになる(゚д゚)!

トランプ大統領は、TPPの離脱を決定しました。その一方米国内では、選挙キャンペーン中から公約の最も大きな柱としてきた、オバマケア廃止法案の可決には失敗しました。

このブログで何度か掲載してきたように、三権分立が厳密に適用されていることもあり、アメリカの大統領は平時には世界で最も権限のない権力者なのです。だからこそ、オバマケアの廃止法案の可決に失敗したのです。

日本国内では、米大統領というとかなり大きな権限を持っていて、何でも決めることができると誤解している人もいます。しかし、それは明らかな間違いです。こういう人から見ると、なぜトランプ大統領が、オバマケア廃止法案の可決に失敗したのか理解できないものと思います。オバマケア廃案に関しては、共和党の中にも反対する人々が多数いたので、廃案にはできなかったのです。

TPPに関しては、共和党の中にも反対者はいたのですが、圧倒的に多数が反対だったので、トランプ大統領がTPP離脱の大統領令を発して、それに反対したとしても、議会で勝つ見込みがないので、すんなりと通ってしまったということです。

こういうことを考えると、TPPに関しても、TPP11が発行すれば、米国が後から入るという可能性もあながち全く否定はできないです。

メキシコのグアハルド経済相
TPP11に関して、メキシコのグアハルド経済相は18日、環太平洋連携協定(TPP)から米国が離脱した場合でも、合意文書の文言を修正することで、発効は可能との見方を示しました。

日米の主導でアジア太平洋の12カ国が大筋合意に至ったTPPの合意文書には、米国抜きでは発効しないとする文言が含まれています。

グアハルド経済相は、日本がリーダーシップを発揮すれば、その文言を含む条項は「問題なく」削除でき、メキシコなど他の参加国は米国抜きでTPPを発効させることのメリットとデメリットを評価することが可能だと発言。米国を除く11カ国でTPPを推進させる考えを示しました。

トランプ米大統領は今年1月の就任直後、TPPから正式に離脱する大統領令に署名しました。

TPP参加国は、ベトナムで今年11月に開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で貿易に関する踏み込んだ協議を行う予定。閣僚らは5月に準備会合を開始します。

トランプ大統領は18日、米国人の雇用と、政府調達における米国製品の購入を促すことを目的とした大統領令に署名しました。

グアハルド経済相はこの大統領令について、影響はまだ明らかではないですが、北米自由貿易協定(NAFTA)に違反する可能性があると指摘しました。



TPPというと、日本ではかつて、民主党政権時代に「TPPは亡国の協定」とか、「国民皆保険がなくなる」とか、「日本の農業が壊滅する!」とか、面白いことを言って拍手喝さいを受けた人たちがいます。これを、今ではTPP芸人と予備揶揄する人もいます。

と安倍政権が誕生し、2013年にTPPへの参加を表明すると、この芸人たちは「表明した瞬間にすべてはアメリカの思い通り決まっている!」などと言っていました。しかし、残念ながら一発芸人の命は短いものです。

トランプ氏が「TPPから離脱」を宣言したことにより、TPP芸人バブルは完全に弾けてしまったようです。

そうして、もはや「死に体」とも見られているTPPですが、いつか生き返るかもしれない。そんな望みにかけているのが今の日本政府です。しかし、そのような日はそもそもやって来るのでしょうか。

トランプ大統領がーが翻意するわけがないというのが大半の見方です。万が一、米国が対応を変えるにしても、トランプ政権が続く最低4年間は無理というのが、大方の見方です。

しかし、そんな中で、TPP11への期待が高まっています。TPP11は日本にとっても望ましい結果を招くことになります。まず、米国の農産物が日本市場から駆逐されることになります。TPPが発効すれば、加盟国が日本に牛肉を輸出する際の関税は、現在の38・5%から将来は9%になります。

米国が非加盟なら関税は高いままですが、米国のライバル、オーストラリアやカナダが加盟すれば9%になります。他にも牛肉を生産する国はあります。日本の消費者は豪州牛やカナダ牛や他国の牛肉を安く買えるし選択の幅も広がります、米国牛は競争力を失います。米国は世界有数の輸出量を誇る小麦でも不利になります。

そうなれば米農業界は必ずトランプ氏を突き上げることになります。TPP11を使って米国を不利な状況に追い込み、自ら『加入させてほしい』と言わせるように持って行けば良いのです。

もし日本などがTPP11を発効させた後、米国が加入を求めれば、米国は日本など既加盟国の要求に応じねばならなくなります。米国が日本に輸出する自動車関税はゼロですが、日本が米国に輸出する際は現在2・5%です。TPP交渉では、2・5%を25年もかけて段階的に撤廃することでしかまとまらなかったのですが、今度は即時撤廃も夢ではありません。

中国が世界貿易機関(WTO)に加盟する際、中国の交渉担当者が「私たちは一切要求できないのに、なぜ既加盟国は一方的に要求するんだ」と怒ったら、米国の担当者は「それが加入交渉というものだ」と答えたといいます。日本も米国に同じことを言えば良いのです。まさに、米国に対する上手からの交渉ができる千載一遇のチャンスです。
TPP反対派が問題とした内容。今では、これはすべてデマであったことが発覚している
米国抜きでも発効する意味は大いにあります。あそこまで自由化の高い国際ルール作りは前例がなく、他の交渉に与える影響は大きいです。それに、発効しなければ各国の自由化も全部元に戻ってしまうことになります。

TPPは成長市場であるアジア地域で遅れていた知的財産保護などのルールを作りました。社会主義国のベトナムでさえ国有企業改革を受け入れました。TPPが棚上げとなれば各国の国内改革の動きも止まってしまうことになるのです。

TPP合意を機に、日本の地方の中小企業や農業関係者の海外市場への関心は高まっていました。電子商取引の信頼性を確保するルールなどは中小企業などの海外展開を後押しするものです。日の目を見ないで放置しておくのは、本当に勿体無いです。

さて、最後にTPP11が発効して、それに対して中国が入りたいという要望を持つことは十分に考えられます。このような要望が出てきた場合、米国は焦るものと思います。これによって米国のTPP加入を促すという手も考えられます。

ただし、中国はすぐにTPPに加入させるわけにはいかないでしょう。中国が加入するには、現状のように国内でのブラックな産業構造を転換させなければ、それこそトランプ氏が主張するようにブラック産業によって虐げられた労働者の労働による不当に安い製品が米国に輸入されているように、TPP加盟国に輸入されることとなり、そもそも自由貿易など成り立たなくなります。

このあたりを理解すれば、トランプ氏も意外とTPPに入ることを決心するかもしれません。そもそも、政治家としての経験のないトランプ大統領は、これを理解していないだけなのかもしれません。しかし、理解して、それが米国の利益にもなると理解すれば、意外とすんなり態度を改めるかもしれません。

やはり、中国もTPPに参加したいというのなら、社会主義国のベトナムでさえ国有企業改革を受け入れたのと同じように、国内の民主化、政治と経済の分離、法治国家化を進めなければならないでしょう。

それによって、中国自体の構造改革が進むことになります。こうして、TPPにより、中国の体制を変えることにもつなげることも可能です。

このような可能性を見ることができなかったトランプ大統領は後に後悔の臍を噛むことになります。

このようなことを掲載すると、「いやそのようなことはない。日本は米国の属国だから、米国の言いなりになるしかないし、そもそもTTPに米国が入ることもない」などと言う人もいるかもしれません。しかし、そのような人は、TTP芸人らの末路はどうなったのかと、言い返してやりたいです。

いずれにしても、上記で示したようなことを前提に、安倍総理にはまずはTPP11発効に向けて頑張って頂きたいものです。

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