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2012年5月16日水曜日

《書評》検証 財務省の近現代史 政治との闘い150年を読む 倉山満著―【私の論評】大蔵省復活、日銀白川を打て!!

《書評》検証 財務省の近現代史 政治との闘い150年を読む 倉山満著:

倉山満氏自身のブログの扉
明治に入り、政府が政策課題を実現するため、税金の徴収機関として設置された大蔵省(現財務省)。憲政史家である著者が、日本の近代史を陰で支えてきたその知られざる歴史と、税金を中心とした政治との関係を考察した。

病苦を押して職務に邁進、殉職同然に死去した藤井真信、戦時体制の中で「増税無限ループ」に抵抗した賀屋興宣、石渡荘太郎、青木一男、占領期に日本のグランドデザインを描いた下村治、高度成長を演出した森永貞一郎、石野信一など、一般にほとんど知られていない財務官僚たちの姿にスポットを当てている。

また、デフレ不況の中での増税路線が本当に正しいのかも、併せて検証している。


【私の論評】大蔵省復活、日銀白川を打て!!


私は、このブログで、デフレで不況であるときに、増税などもってのほかであること、これは、緊縮財政の一つの手法であること、また、日銀が金融引き締めばかりやることを非難してきました。そうして、多くの人たちが、デフレに慣れてしまっていて、デフレを前提として物事を考えるいることに警鐘を鳴らし続けてきました。

デフレは、経済の病というより、深刻な癌と考えて良いくらいの大病です。私は、過去のブログで、今の日本の状況を癌をわずらったサラリーマンにたとえてきました。

映画『クワイェットルームへようこそ』より
現在のこのデフレの状況下におい、財政バランスが崩れているからといって、これをデフレの克服の前に何とかしようなどという考えは、癌を患ったサラリーマンが、癌の手術をすれば、長期間入院しなければならず、そうなれば、会社を長期間休まねばならず、会社に迷惑をかけてしまうという理由で、入院しないサラリーマンのようなものです。

これは、本来まずは、入院して、癌を治すことが先決です。そのまま放置して、入院しなかった場合、癌は、あちこちに転移して、取り返しがつかないことになり、いずれ、サラリーマン自身が命を失ってしまいます。


これは、本当に簡単な理屈なのですが、ただし、このデフレ、あまりにも緩慢にすこしずつ、日本経済を侵食していくので、多くの人が"ゆで蛙"状況になってしまっているようです。

日本の経済は、成熟化していますから、いわば、癌のたとえにすると、このサラリーマンある程度歳がいっているので、癌の進行が遅いというような感じです。それにしても、癌は癌であり、放置しておけば、いずれ、天寿を全うすることなく死んでしまうことになります。

このようなことを考えていると、情報を集めるようになります。その中の一つがこの書籍です。最初この書籍を手にした理由は、財務省といえば、従来は、日銀も配下にある、旧大蔵省であり、いわば、エリート中のエリートであり、日本を明治時代から、ずっと導いてきた役所であるはずなのに、なぜ今増税に舵取りをするのかということです。

大蔵省錦絵
営利企業である会社でも、国でも、結局は、何をするにしても、お金の裏づけがなければ何もできません。だからこそ、大きな会社であれば、CFO(財務担当最高責任者)などという役職もあるくらいです。まさに、日本国のCFOが旧大蔵省であったはずです。政治家が何を言おうと、結局のところ、予算が割り振られなければ何にもできないわけです。その意味で、予算は、国家の意思です。その国家の意思を策定してきたのが大蔵省です。旧大蔵官僚だった人から、大蔵省の激務ぶりについても、聴いたことがあります。

関東大震災で瓦解した大蔵省
一番驚いたのは、国会の予算委員会などで、大蔵大臣や大蔵次官が質疑をしているときに、相手側が思いもかけない質問を投げかけてきた場合でも、大臣などは、その質問に対して答えるための「ペーパー」を要求するそうです。そのペーパーがなければ、かなり叱責されるため、予めあらゆる状況を想定して、ペーパーを作成しておくということを聴いたことがあります。

参議院予算委員会の一こま

それを聴いて、さすが、エリートは違うと思いました。そんなエリートであるはずの人々が、なぜ、この失われた10年というか、もうすでに20年になりかけているのに、それを放置して、それどころか、マクロ経済的にいえば、禁じ手とも言っていいような増税をするのか、それに、昔は、大蔵省の一部であった、日銀も、なぜこのデフレの最中に、金融引き締めばかりしているのか、どうしても合点がいかず、この疑問を晴らしてくれる情報はないのかと、いろいろ探していました。

その結果、この書籍に行き着いたというわけです。さて、この書籍を読んで、私の疑問は随分解消されたと思います。とにかく、現在の状況ばかり語るのでなく、大蔵省の生い立ちなどの歴史から、解説されているので非常に理解しやすかったです。

大蔵省庁舎

私のような疑問を抱く人には、この書籍かなり価値があります。是非読んでみてください。

アマゾンの書籍の説明など、以下に掲載してきます。
◎ 著者の言葉
これまで一部の研究を除いては、大蔵省が注目されることはあまりありませんでした。
明治以来の通史、しかも大蔵省の立場で、さらに政治というセンシティブな問題に着目してとなると、初めての試みだと思われます。
これはまるで、未開の地を探検する冒険者のような心境です。 
◎ 内容紹介
財務省とは、国の歳入と歳出を管理する官庁、すなわち税金を集めて予算として配分する役所であり、前身の大蔵省以来、「戦後最強の官庁」として日本に君臨してきた。しかし、明治以来、大蔵省ほど絶大な力を持ちながらも注目されてこなかった組織はない。そして今、財務省はデフレ不況下での増税を企んでいる。「増税やむなし」の空気が流れる中、これは本当に正しい選択なのだろうか。 
気鋭の憲政史家が大蔵省・財務省の歴史にメスを入れ、百五十年の伝統を検証しながら、知られざる政治との関係、「増税の空気」の形成過程を描き出し、日本再生への道を綴った本邦初の試みとなる意欲作。 
◎ 目 次
はじめに
第 1 章 大蔵省の誕生 ---- 財政の専門家とキャリア官僚制の起源 (1873-1923)
第 2 章 日本の最強官庁へ ---- 守護神・井上準之助の登場 (1924-1931)
第 3 章 パンドラの箱 ---- 大蔵省史観の「異物」 (1932-1945)
第 4 章 占領と復興 ---- 知力を尽くした戦いの歴史 (1945-1955)
第 5 章 復興から高度経済成長へ ---- 池田勇人のグランドデザイン (1955-1965)
第 6 章 三角大福、赤字国債、消費税 ---- 「無敵」大蔵省に忍び寄る悪夢 (1965-1982)
第 7 章 失われた十年 ---- 政治家に振り回される大蔵省 (1982-1996)
第 8 章 平成と未来の日本 ---- 財務省は「伝統」に目覚めるか (1997-2011)
おわりに
*推奨参考文献*
◎ 著者プロフィール
倉山満(くらやまみつる)
1973年香川県生まれ。中央大学大学院文学研究科日本史学専攻博士後期課程単位取得満期退学。
在学中より国士舘大学日本政教研究所非常勤研究員。
現在、国士舘大学講師。社会人を対象にした「帝国憲法講義」が注目を集めている。専門は憲政史。
著書に『誰が殺した? 日本国憲法!』(講談社)、
編著に『総図解よくわかる日本の近現代史』、
共著に『総図解よくわかる第二次世界大戦』(以上、新人物往来社)がある。
倉山満氏ご自身のブログのURLは、以下です。

http://www.kurayama.jp/modules/wordpress/index.php

さて、この書籍あまり解説してしまうと、読む楽しみを奪ってしまうと思いますので、詳しい解説はしません。



この書籍を読んで、私が結局倉山氏がいいたかったことは、大蔵省復活ならびに、日銀白川討伐であると思いました。とにかく、政治家の皆さんには、必ず読んでおいてもらいたい書籍です。それに、一般の人も読んでおいても損は絶対にないと思います。特に、現在の若い人たち、日本の歴史をあまりに知らなすぎです。日本の近現代史という観点からも読んでおいて、ためになります。自分の国の歴史も良く知らないようでは、そもそも、今の時代や将来も本質的には理解できません。



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2012年5月4日金曜日

高速バス事故の「事故の責任」は、あなたにも私にもあるかもしれない。ブラック企業を生み出す「ブラック消費者」という問題―【私の論評】この人の意見は正しい?ただし、デフレでなければ!!変態御用一般人的マスコミ人現る!?

高速バス事故の「事故の責任」は、あなたにも私にもあるかもしれない。ブラック企業を生み出す「ブラック消費者」という問題


藤岡市の関越自動車道を走行中の高速ツアーバスが道路左側の防音壁に衝突し、乗客45人が死傷、うち7名が死亡した事故は大変ショッキングな事故でした。運転手の居眠りが原因だと思われており、現在取り調べをされている最中です。本当にあってはならない事故であるし、亡くなられた方には心からご冥福をお祈りします。

現在はこの事件についてさまざまな問題提起がされています。高速バスそのものの安全性の問題、運転者のモラルの問題、運行会社の管理の問題、道路の構造問題、特に競争過多である路線バスのコスト削減競争が今回の事故原因の遠因ではないかという論点があり、確かにそれはそのとおりなんだろうと思います。もしバスの運転者が二人交代制であったならば、居眠りの問題は解消できたかもしれないし、一人体制よりも二人体制のほうが事故の発生確率はだいぶ抑えられるでしょう。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(中略)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

社会全体で給料が下がっていく。給料が下がる中でやりくりをしなければいけない。だから、消費者とするとより安いサービスを提供する業者にいかざるをえない。そうなるとその業者で働く労働者にしわ寄せがくる。そしてその労働者に過重労働か賃金引き下げのプレッシャーがくる。するとその人自身がブラック消費者になって、飲食店で怒鳴る。――というバッドスパイラルが起きています。

ある意味では、今回の事故を引き起こした原因を知らず知らずにうちに私たち全員で作り出しているかもしれない。

この負の連鎖を断ち切るのはどうしたらよいのでしょうか。政府が悪い、政治が悪い、官僚が悪い、大企業が悪い、と言っても天に唾する様なもので、すべて私たちに帰ってきます。ならば、まず自分たちでできることから始めたらどうでしょうか。

より良いサービスにお金を払う、「適切に支払う」ということは私たちが今日から行動できることです。「安く」でも「高く」でもなく「適切に」です。ほんの少しのトレンドの変化が世の中を変えます。少なくとも今回の高速道路の事故を少しでも「自分事」と受け止めて、少しずつ行動を変えることが、このような悲惨な事故を減らす、遠回りなようで、一番確実な方法です。

ブラック消費者にならずに賢明な消費者になろうとすれば、それが日本経済を発展させることができるでしょう。ひとりひとりが日本経済を支えているのですから。




【私の論評】この人の意見は正しい?ただし、デフレでなければ!!変態御用一般人的マスコミ人現る!?

最近、上念 司氏のツイートを、グーグルリーダーに登録しているので、本日も見てみたら、以下のようなツイートがありました。


私も、この意見に概ね賛成です。上の記事の意見が、全く間違いとは思いませんが、一つ条件を満たしていなければ、正しいとはいえはません。では、その条件とは、何かといえば、少なくとも、デフレでないということです。

給料が下がっていく真の理由は、デフレだからです。それを直さない限り、このようなことは必ず起こります。それに、デフレはどう考えても、まともなことではありません。日本では、あまりにデフレが長い間続いてしまったため、デフレが当たり前になってしまっている人が多いですが、はっきりいえば、デフレは経済の癌であり、異常な状態です。以前にもこのブログに掲載したことがありますが、デフレの最中に増税して、財政再建をしようなどと考えるのは、癌を患ってるサラリーマンが、癌で手術をすれば、長期間会社の仕事を休むことになり、会社に迷惑をかけることを心配しているようなものです。まずは、癌を治療することが、最優先課題であるはずです。最悪、会社をくびになっても、癌治療に専念すべきことは、いうまでもないことだと思います。

こんなナースがいる病院なら入院したい?
この異常状態をなくさない限り、どんなに多くの人がブラック消費者にならないように気をつけても、必ずでてきます。当然、ブラック企業もはびこるようになります。

上の記事の、長距離バスの運転手などの例もありますが、現在もっと酷い例もあります。たとえば、貧困ビジネスなどです。いわゆる、生活保護などを受けている老人を保護するという名目で、とんでもないところに押し込めて、生活保護費をピンはねする酷い業者などもいます。




とにかく、今は、本来政府なり日銀なりが、この状況を一刻でも改めなければならないときです。そんなときに、以下のようなことを公然というのは、全く的外れです。
政府が悪い、政治が悪い、官僚が悪い、大企業が悪い、と言っても天に唾する様なもので、すべて私たちに帰ってきます。ならば、まず自分たちでできることから始めたらどうでしょうか。
人には、個人で努力すれば、何とかなるものと、ならないものとがあります。確かに、不況だからといって、デフレだかといって、ものごとをすべてそのせいにして、消極的になるのは良いことではありません。しかし、デフレの最中では、運が悪ければ、落ちるところまで、落ちる人だって出てくることも避けられません。当たり前のことです。

日本銀行
それから、そもそも、上の記事を書いた人は、経済の根本が理解できていないと思います。まともな、マクロ経済学を書籍を一度でも読んで理解したならば、日本やアメリカなどで、2%くらいでもインフレになったとすると、一夜にして、数百万以上の雇用が生まれることなど、周知の事実であるはずです。無論これは、日銀のようにインフレ目処1%というだけではなく、本当に、物価が2%程度上昇して、インフレになった場合です。実際、アメリカなど日本以外の国では、雇用の創出は、中央銀行や政府の大きな仕事と考えられています。


無論、数百万の雇用とはいっても、すべての人にマッチする雇用が生まれるとは限りません。このミスマッチを是正するために、厚生労働省が何かするというのは当然のことと思います。また、その意味も十分あります。しかし、根元のところで、間違えていては、雇用は創出されません。何か、現在雇用対策というと、肝心要なことは何もせずに、それこそ、厚生労働省などが行う雇用のミスマッチなどへの対応ばかりが、クローズアップされます。上の記事を書いた人の考えも結局そうです。

実際そうです。雇用を創出したり、賃金をあげるにしても、個人や企業の努力だけでは限界があります。自分だけは、うちの会社だけはと考えで努力しても限界があるのです。だから、多くの人を助けることはできません。そうなれば、必然的にブラック企業だって、ブラック消費者だって、必ず生まれてきます。まあ、だからといって、この著者が言っているように、自分たちだできることからはじめることまで否定するつもりは無論ありません。

昨日は、田中秀臣氏、上念司氏、倉山満氏がでている動画「変態御用一般人化するマスコミ」を掲載しました。このタイトルにもなっている、変態御用一般人化という言葉の意味は、昨日も掲載しましたが、もう一度掲載すると、以下のようなものです。
御用一般人とは、一般人でありながらさしたる根拠もないのに、政府のすべての立場を擁護し、政府の立場だけからものを言う人のことです。これが、一般人でない学者やジャーナリスの場合は、餌がありますが、一般人の場合は、それはないにもかからず、その根底には、現実社会で、うまく適応できないという不安感があります。その不安感から、政府のすべての立場を擁護しようとするのです。 
そうして、変態御用一般人とは、御用一般人の中でも、たとえば、財務省とか、日銀など特定の機関などの立場を擁護し、その立場だけからものを言う人のことです。
結局、上の記事を書いた人も、日銀や政府のやるべきことには、目をつぶりというか、すっかりその立場たって、その怠慢を諌めることもせず、一般消費者に責任を擦り付けています。その意味から、この方も、上念氏がいうところの「変態御用一般人的マスコミ人」ということができると思います。ただし、この方経済専門でもないようなので、悪気があってこのようなことを書いているわけではないと思います。頭の中には、おそらく、このブログでも掲載した「スペンドシフト」という潮流があるのだと思います。確かに「スペンドシフト」という潮流自体は悪いとは思いません。それどころから、良いことだと思います。しかし、デフレ下で、スペンドシフトだけを強力に推し進めたからといって、ブラック企業やブラック消費者の問題を解消することはできません。

この問題に関しては、根本を根治しなければどうしようもありません。昨日は、ものごとを改革する人にありがちな根本病に関しても掲載しました。根本病とは、「改革を志向する人が、根本問題にのみ囚われている状態をいいます。体制や機構などの変改ばかりが先行して、実態の改善がおろそかになることです」。しかし、デフレの克服である、政府による財政出動、日銀による金融緩和に関しては、あまりにも長い間デフレを放置してきたので、これを実施することは、一見改革のようにみえますが、決して改革ではありません。


それは、改革ではなく、本来、政府や日銀が行う最低限の仕事であり、任務です。デフレの中でも、元気いっぱいとか、頑張っているといっても、仕方ないことです。これらは、水道から水があふれているのを器で、すくいとっているようなものです。根本的に直すには、水道栓をとめるしかありません。まずは、水道栓をとめてから、税や福祉、雇用のミスマッチなどの問題を考えるべきです。デフレを前提で、物事を考えても、モグラ叩きになるだけです。実際、今の政府はモグラ叩きばかりしています。それに、上の記事は、こうした問題を個々人の善意に頼って解消しようと考えている点で、まったく実効性に欠けます。



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2012年4月16日月曜日

日銀総裁いいたい放題!円高にしてくれといわんばかり−【私の論評】締めっぱなしでは、日銀DNAを存分に発揮できる場はつくれない!!

日銀総裁いいたい放題!円高にしてくれといわんばかり


本日は、ZAKZAKに高橋洋一氏の最近の、日銀総裁白川総裁の発言に関する記事が掲載されていたので、これを紹介します。詳細は、ZAKZAKのほうをご覧いただくものとして、以下に結論部分だけ、コピペしておきます。
10日の金融政策決定会合で日銀は追加緩和を見送った。また、日銀の白川方明総裁は決定会合後の記者会見で、金融政策で目指す物価の安定について「短期間に一気に実現するものではない」と述べている。白川総裁は、過去の日本のCPI(消費者物価指数)上昇率は「バブル経済の時期でも他の先進国に比べて低い水準だった」と指摘した上で、「プラス2%を掲げて政策を運営すると、過去に経験のない事態が起きるので大変不確実性が高く、経済活動にも悪影響を与える」と述べた。さらに「海外が2%だからといって、日本も2%を目指すというのは必ずしも適切ではない」と大胆に言い切った。
インフレ目標の数字について日本が海外より低いだけで、「購買力平価」(自国通貨と外国通貨の購買力の比率で為替レートが決まる説)を持ち出すまでもなく、円高要因になる。それを中央銀行総裁が公言したとなれば、円高にしてくれといわんばかりだ。2月14日の金融緩和によって、誰の目にも金融緩和が円安をもたらし、株高にすることがわかってしまった。普通の人ならば、さらに金融緩和すれば、経済が持ち直すので、日銀法改正の動きも少なくなると読むのが自然だ。しかし、白川総裁の行動はそうした動きをまったく考慮しないようだ。
2008年4月に就任した白川総裁は、5年間の任期満了まであと1年、このようなことは、白川総裁の前の総裁、福井氏も引退間際に似たようなことを実施している。何か、「金融引き締めは勝ち」という日銀のDNAとでもいうべきものが働いているのかもしれない。もしそうなら、これから1年間は恐ろしいことだ。

【私の論評】締めっぱなしでは、日銀DNAを存分に発揮できる場はつくれない!!

それにしても、白川さんなぜこのような行動をとるのか、理解できません。まるで、悪魔に魅入られているようです。では、以下に白川さんの、行動を分析してみましょう。本日は、様々な経済現象を悪魔にみたてて画像も掲載しつつ解説させていただきます。

まずは、白川さんは、何が何でもデフレにしなければならないというデフレ悪魔が好きなのでしょうか?しかし、デフレといえば、経済の癌のようなもの、とてもじゃないですが、常識的に言って下の写真のように魅力的なはずはありません。特にデフレであれば、雇用環境はかなり悪くなります。産業活動は停滞します。白川さんが、デフレ悪魔に恋焦がれているとは考えられません。白川さんは、デフレが好きで、金融緩和しないというわけではないでしょう。何か、他に原因があって、金融緩和をしないのだと思います。


デフレ悪魔

では円高悪魔が大好きなのでしょうか?円高ということになれば、日本の輸出産業にとっては良くないことです。であれば、これが好きなはずはないと思います。しかし、日本の輸出産業は、GDPの16%くらいしかなく、経常収支の中に含む割合も、所得収支(日本の外国への投資によるあがり)と比較するれば、微々たるものでしかありません

しかし、円高となれば、輸出が、GDPの40%以上を占めており、しかも、意図的な元安政策をとっている中国にとっては、かなり有利です。最近、EUの輸出がふるわない中国、円高のため、日本への輸出と、あとは、世界各地にいろいろと投資をして、しのいでいます。これに関しては、アメリカは、輸出がGDPに占める割合は、世界でも、もっとも少ない国ですから、これによるメリットは一般に思われていよりは、少ないです。ということは、円高悪魔によって、日本の富の大部分が中国様にすいとられているわけであり、これは、日本にとっては、望ましくはないです。だから、日銀が、円高悪魔に魅入られているとも思われません。

円高悪魔


では、インフレ大嫌い悪魔が大好きということなのでしょうか?インフレ大嫌い悪魔が好きな人は、政治家にはかなり多いです。とにかく、インフレは駄目だ、インフレにさえならければ、経済は良いとかたくなに信じている人々も多いです。その中には、このブログでもかつて、掲載したこのある、与謝野さんなんて人もいます。しかし、上の記事にも掲載されているように、インフレ目処1%を打ち出したこともあり、これは、本命ではなさそうです。このブログにも掲載したように、このインフレ目処はかなり不十分です。とはいいながらこれを実施していらて、少しの間は、確かに、実際に株価もあがり、円高もおさまりました。だから、これが、本命とは言い切れないところがあります。

インフレ大嫌い悪魔
ではデフレのときでも、何でも、財政規律を最重要視する、そのためには、増税もいとわない、財政規律悪魔が大好きなのでしょうか?これは、最近では、皆さんご存知のように、財務省や、政治家の一部の人が恋焦がれてやまない、悪魔でもありますが、でも、良く考えてみると、財政規律は、役所でいえば、財務省の管轄であるため、日銀には、直接関係はありません。無論間接的には、あるのでしょうが、財政規律を保つことができたからといって、白川さんが高く評価されるわけでもありません。それに、増税すれば、税収が減り、さらに景気は落ち込み、白川さんにとっては、金融引き締めの機会はおとずれません。政府が、増税をやめ、大規模な財政出動をしてくれれば、金融引き締めのチャンスが訪れます。

財政規律悪魔
では一体、本命はなんなのでしょうか?やはり、高橋洋一氏のように、白川さんは、金融引き締め悪魔に魅入られているに違いありません。ぞっこん惚れ込んでいるに違いありません。

金融引き締め悪魔
しかし、なぜ、こんな悪魔の位からいえば、地位の低い、いわば一手段、手法に過ぎない、金融引き締め悪魔になどに魂を売り渡すのでしょうか? その理由自体は、良くわかりませんし、理解できません。

しかし、仮に、高橋洋一氏が語っているように、 「金融引き締めは勝ち」というのが、日銀のDNAであったと仮定しましょう。そうすれば、いろいろなことに確かに説明できます。

まずは、白川さんが、1%のインフレ目処を導入しながら、追加金融緩和措置をしないどころか引き締めがちなのは、1%のインフレ目処により、金融が緩和気味になれば、金融引き締めができるからです。だって、今デフレですから!!デフレのときに、追加金融引き締め措置なんて、絶対にできないではありませんか!!もし、インフレ目処を打ち出さなければ、追加金融引き締め措置などできません。だからこそ、インフレ目処を打ち出したのです。

では、では、私が大胆な提案をいたしましょう!! 一度徹底的に金融緩和をしまししょう。そうして、財務省にも協力願い、徹底的な財政出動をやっていただきましょう。そうなれば、いずれ、かなりのインフレになります。まさに、そのときに、徹底的な金融引き締めを行うのです。それも、かなり思い切った引き締めをするのです。そうなれば、日銀総裁は、ひよっとすると、歴史に今でも、燦然とその名を残している、高橋是清のように、歴史に名前を残せることになります。そうして、日銀のDNAの力を存分に発揮できます。これこそ、日銀マン冥利につきるのではないでしょうか?

経済とは、バランスが重要ですから、いくら、金融引き締めが、日銀のDNAであるからといって、常時引き締めをやっていれば、目だった引き締めなど永遠にできないのは、当たり前のことです。どこかで、緩めて、どこかで締めるということによりはじめて胸躍る、大胆な、引き締めができるというものです。

ガードルブラも締めるところは締め、緩めるところは緩めているから美しい曲線を造形できる!

こんなこと、何も小難しい経済理論でなくても、理解できることです。たとえば、ガードルやブラだって、全部締めていれば、たるみが目立たないだけになるだけです。全部緩めていれば、そもそも、何の役にもたちません。やはり、締めるところは締めて、緩めるところは緩めるから美しい曲線が造形できるのです。全部締めっぱなしだと、色気も何もあったものではありません。

とはいいながら、白川さんには、もうあまり時間が残されていません。いままで、ずっと引き締め基調でやってきたので、この1年で、目だった大引き締めは到底不可能です。というより、ここしばらく、すべての総裁が、引き締め基調でやってきたので、大胆な引き締めをできた人はいません。白川さんには、あまり無茶をしないで、大過なくすごしていただき、次の総裁に期待というとこだと思います。

着任したらすぐに、緩和をして、任期間際で、晴れ舞台の大引き締めを行うなんていかがですか?そうすれば、緩和で景気が回復し、円安になり、その後の引き締めで、インフレ加熱を冷まし、全部で、4回も各方面から、絶賛されることになります。いや、それだけではない、歴史に名を残せることになります。あるいは、こうできるように、日銀法の改正をする必要があるのかもしれません。しかし、日銀法が改正されれば、歴史に名を残せる機会は、永遠に失われるかもしれません。




【私の論評】





「X国の独裁者の親族」米国防総省、30代女性を「機密」資格で失格に 金正恩氏と血縁か―【私の論評】日本で早急にセキュリティークリアランス制度を導入すべき理由

「X国の独裁者の親族」米国防総省、30代女性を「機密」資格で失格に 金正恩氏と血縁か まとめ 米国防総省のセキュリティークリアランス審査で、30代の女性が北朝鮮の指導者と血縁関係にあるとして最高機密レベルの資格を拒否された その女性は、北朝鮮の金正恩総書記の伯母の娘である可能性が...