2012年5月16日水曜日

《書評》検証 財務省の近現代史 政治との闘い150年を読む 倉山満著―【私の論評】大蔵省復活、日銀白川を打て!!

《書評》検証 財務省の近現代史 政治との闘い150年を読む 倉山満著:

倉山満氏自身のブログの扉
明治に入り、政府が政策課題を実現するため、税金の徴収機関として設置された大蔵省(現財務省)。憲政史家である著者が、日本の近代史を陰で支えてきたその知られざる歴史と、税金を中心とした政治との関係を考察した。

病苦を押して職務に邁進、殉職同然に死去した藤井真信、戦時体制の中で「増税無限ループ」に抵抗した賀屋興宣、石渡荘太郎、青木一男、占領期に日本のグランドデザインを描いた下村治、高度成長を演出した森永貞一郎、石野信一など、一般にほとんど知られていない財務官僚たちの姿にスポットを当てている。

また、デフレ不況の中での増税路線が本当に正しいのかも、併せて検証している。


【私の論評】大蔵省復活、日銀白川を打て!!


私は、このブログで、デフレで不況であるときに、増税などもってのほかであること、これは、緊縮財政の一つの手法であること、また、日銀が金融引き締めばかりやることを非難してきました。そうして、多くの人たちが、デフレに慣れてしまっていて、デフレを前提として物事を考えるいることに警鐘を鳴らし続けてきました。

デフレは、経済の病というより、深刻な癌と考えて良いくらいの大病です。私は、過去のブログで、今の日本の状況を癌をわずらったサラリーマンにたとえてきました。

映画『クワイェットルームへようこそ』より
現在のこのデフレの状況下におい、財政バランスが崩れているからといって、これをデフレの克服の前に何とかしようなどという考えは、癌を患ったサラリーマンが、癌の手術をすれば、長期間入院しなければならず、そうなれば、会社を長期間休まねばならず、会社に迷惑をかけてしまうという理由で、入院しないサラリーマンのようなものです。

これは、本来まずは、入院して、癌を治すことが先決です。そのまま放置して、入院しなかった場合、癌は、あちこちに転移して、取り返しがつかないことになり、いずれ、サラリーマン自身が命を失ってしまいます。


これは、本当に簡単な理屈なのですが、ただし、このデフレ、あまりにも緩慢にすこしずつ、日本経済を侵食していくので、多くの人が"ゆで蛙"状況になってしまっているようです。

日本の経済は、成熟化していますから、いわば、癌のたとえにすると、このサラリーマンある程度歳がいっているので、癌の進行が遅いというような感じです。それにしても、癌は癌であり、放置しておけば、いずれ、天寿を全うすることなく死んでしまうことになります。

このようなことを考えていると、情報を集めるようになります。その中の一つがこの書籍です。最初この書籍を手にした理由は、財務省といえば、従来は、日銀も配下にある、旧大蔵省であり、いわば、エリート中のエリートであり、日本を明治時代から、ずっと導いてきた役所であるはずなのに、なぜ今増税に舵取りをするのかということです。

大蔵省錦絵
営利企業である会社でも、国でも、結局は、何をするにしても、お金の裏づけがなければ何もできません。だからこそ、大きな会社であれば、CFO(財務担当最高責任者)などという役職もあるくらいです。まさに、日本国のCFOが旧大蔵省であったはずです。政治家が何を言おうと、結局のところ、予算が割り振られなければ何にもできないわけです。その意味で、予算は、国家の意思です。その国家の意思を策定してきたのが大蔵省です。旧大蔵官僚だった人から、大蔵省の激務ぶりについても、聴いたことがあります。

関東大震災で瓦解した大蔵省
一番驚いたのは、国会の予算委員会などで、大蔵大臣や大蔵次官が質疑をしているときに、相手側が思いもかけない質問を投げかけてきた場合でも、大臣などは、その質問に対して答えるための「ペーパー」を要求するそうです。そのペーパーがなければ、かなり叱責されるため、予めあらゆる状況を想定して、ペーパーを作成しておくということを聴いたことがあります。

参議院予算委員会の一こま

それを聴いて、さすが、エリートは違うと思いました。そんなエリートであるはずの人々が、なぜ、この失われた10年というか、もうすでに20年になりかけているのに、それを放置して、それどころか、マクロ経済的にいえば、禁じ手とも言っていいような増税をするのか、それに、昔は、大蔵省の一部であった、日銀も、なぜこのデフレの最中に、金融引き締めばかりしているのか、どうしても合点がいかず、この疑問を晴らしてくれる情報はないのかと、いろいろ探していました。

その結果、この書籍に行き着いたというわけです。さて、この書籍を読んで、私の疑問は随分解消されたと思います。とにかく、現在の状況ばかり語るのでなく、大蔵省の生い立ちなどの歴史から、解説されているので非常に理解しやすかったです。

大蔵省庁舎

私のような疑問を抱く人には、この書籍かなり価値があります。是非読んでみてください。

アマゾンの書籍の説明など、以下に掲載してきます。
◎ 著者の言葉
これまで一部の研究を除いては、大蔵省が注目されることはあまりありませんでした。
明治以来の通史、しかも大蔵省の立場で、さらに政治というセンシティブな問題に着目してとなると、初めての試みだと思われます。
これはまるで、未開の地を探検する冒険者のような心境です。 
◎ 内容紹介
財務省とは、国の歳入と歳出を管理する官庁、すなわち税金を集めて予算として配分する役所であり、前身の大蔵省以来、「戦後最強の官庁」として日本に君臨してきた。しかし、明治以来、大蔵省ほど絶大な力を持ちながらも注目されてこなかった組織はない。そして今、財務省はデフレ不況下での増税を企んでいる。「増税やむなし」の空気が流れる中、これは本当に正しい選択なのだろうか。 
気鋭の憲政史家が大蔵省・財務省の歴史にメスを入れ、百五十年の伝統を検証しながら、知られざる政治との関係、「増税の空気」の形成過程を描き出し、日本再生への道を綴った本邦初の試みとなる意欲作。 
◎ 目 次
はじめに
第 1 章 大蔵省の誕生 ---- 財政の専門家とキャリア官僚制の起源 (1873-1923)
第 2 章 日本の最強官庁へ ---- 守護神・井上準之助の登場 (1924-1931)
第 3 章 パンドラの箱 ---- 大蔵省史観の「異物」 (1932-1945)
第 4 章 占領と復興 ---- 知力を尽くした戦いの歴史 (1945-1955)
第 5 章 復興から高度経済成長へ ---- 池田勇人のグランドデザイン (1955-1965)
第 6 章 三角大福、赤字国債、消費税 ---- 「無敵」大蔵省に忍び寄る悪夢 (1965-1982)
第 7 章 失われた十年 ---- 政治家に振り回される大蔵省 (1982-1996)
第 8 章 平成と未来の日本 ---- 財務省は「伝統」に目覚めるか (1997-2011)
おわりに
*推奨参考文献*
◎ 著者プロフィール
倉山満(くらやまみつる)
1973年香川県生まれ。中央大学大学院文学研究科日本史学専攻博士後期課程単位取得満期退学。
在学中より国士舘大学日本政教研究所非常勤研究員。
現在、国士舘大学講師。社会人を対象にした「帝国憲法講義」が注目を集めている。専門は憲政史。
著書に『誰が殺した? 日本国憲法!』(講談社)、
編著に『総図解よくわかる日本の近現代史』、
共著に『総図解よくわかる第二次世界大戦』(以上、新人物往来社)がある。
倉山満氏ご自身のブログのURLは、以下です。

http://www.kurayama.jp/modules/wordpress/index.php

さて、この書籍あまり解説してしまうと、読む楽しみを奪ってしまうと思いますので、詳しい解説はしません。



この書籍を読んで、私が結局倉山氏がいいたかったことは、大蔵省復活ならびに、日銀白川討伐であると思いました。とにかく、政治家の皆さんには、必ず読んでおいてもらいたい書籍です。それに、一般の人も読んでおいても損は絶対にないと思います。特に、現在の若い人たち、日本の歴史をあまりに知らなすぎです。日本の近現代史という観点からも読んでおいて、ためになります。自分の国の歴史も良く知らないようでは、そもそも、今の時代や将来も本質的には理解できません。



【関連記事】

【現代ビジネス―経済ニュースの裏側】野田首相はやはり財務省傀儡なのか―【私の論評】野田氏は、財務省の傀儡というより、物事の原理・原則を知らないだけ、だから結果として傀儡のようにみえるだけ?






0 件のコメント:

「誤解受け不安にさせたのは当然」中国企業ロゴ問題で辞任の大林ミカ氏、会見主なやりとり―【私の論評】[重大警告]自民党エネルギー政策への中国の影響力浸透の疑惑 - 大林氏中国企業ロゴ問題で国家安全保障上の深刻な懸念

「誤解受け不安にさせたのは当然」中国企業ロゴ問題で辞任の大林ミカ氏、会見主なやりとり まとめ 問題発覚の端緒は、内閣府TFに提出された資料に中国国営電力会社のロゴマークが入っていたこと。 大林氏は、ロゴマークの存在に気付かなかったことを謝罪し、TF委員を辞任。 大野氏は、財団と国...