あるブランドのFacebookファンとはどういう人たちなのでしょうか。またそのファンの人たちはブランドの営業成績に実際どれくらい影響しているのでしょうか。
ソーシャル・メディアを使ったプロモーションはまだまだ成果が見えにくいのが現状で、この問いには多くの企業が悩まされていると思います。
大手調査会社Forrester Researchの若きアナリストジーナ・スベルドロフ(Gina Sverdlov) さんは、4月9日に出したレポートでこの問いに具体的な数値をもって答えました。そうして今回Facebookファンの顧客価値の意外な高さが浮き彫りになったのです。
ジーナさんはFacebookファンがブランドの営業成績にどれくらい貢献しているかを明らかにするため、ある期間中に特定のブランドの商品を①実際に購入した人、②購入を検討した人、③購入を他者へ勧めた人の数をファンと非ファンで比較しました。
調査対象になったのは飲料メーカーコカ・コーラ社、スーパーマーケットチェーンウォルマート社、家電量販店ベスト・バイ社、携帯電話メーカーリサーチ・イン・モーション社のBlackBerryという4ブランドです。
調査結果
上図はベスト・バイ社の調査結果をまとめたもので、左の黄緑の棒が非ファン、右の深緑の棒がファンのデータを表しています。調査項目は左から1年以内にベスト・バイで買い物をした、買い物を考慮するだろう、他人にベスト・バイでの買い物を薦めだろうと返答した人の比率を示しています。
今回調査の対象となった4ブランドのファンが商品を「実際に購入」「購入を検討」「他者へ推奨」した比率は、非ファンのその比率を大きく上回りました。上のグラフのベスト・バイ社の場合、過去12か月間でベスト・バイで買い物をした人は、非ファンが41%であるのに対して、ファンは実に79%です。またファンの内の74%が、他人にベスト・バイでの商品購入を薦めています。非ファンの38%と比べるとその差は歴然としていますね。
更にジーナさんは膨大なアンケート結果から、ブランドのプロモーションに一番貢献している層はFacebookファンだということを突き止めました。
つまり「Facebookのファン」は、他のどんな人よりも商品を「実際に購入」「購入を検討」「他者へ推奨」する確率が高いというのです。例えば、ある人が電化製品を購入するとき、その人がベスト・バイのFacebookファンであったら、そこで製品を購入する確率は5.3倍も上がります。
次に確率が高かったのは「電化製品を買うためにある程度下調べをした」という条件でしたが、それでさえ実際にベスト・バイで製品を買う確率を1.4倍しか上げませんでした。
この傾向はベスト・バイだけでなく他の3ブランドにも同様に見られました。例えば、「何かものを買うときにウォルマートでの購入を考慮するか」という質問に対して、「Facebookファンである」という人が「はい」と答える確率は、「近場にウォルマートがある」という人より2倍も高いのです。更に「どちらでもない人」と比べるとその確率は4倍にもなります。
すごい結果ですね。
考察
この調査結果を踏まえて、前述のアナリストジーナさんのボスであるテクノロジー・マーケティングのエキスパートジョッシュ・ベルノフ(Josh bernoff)さんは、『ブランドにとって大切なことは、むやみやたらと「いいね!」を増やすことではなく、既に「いいね!」をくれている忠実なファンを見定めて、その人たちと親密な関係を構築することだ。」と自身のブログで綴っています。
というのは今回の調査結果からだけでは、Facebookのファンであることがブランド商品を買わせているのか、それとももともとそのブランドの商品をよく買う人がFacebookでもファンになるのかが判断できないからです。何だか鶏が先か卵が先かのような話になっていますね。いずれにせよブランドが気をつけなくてはいけないのは、無理やり「いいね!」を増やすと、ファンベース全体のブランドに対する熱心さが、減少する可能性があることです。
今回のこのレポートは、Facebookファンの顧客としての質の大切さを強調してくれました。Facebookファンたちは、最も熱心にそのブランドの商品を購入し、購入を検討し、また知り合いに薦めてくれるロイヤリティーの強いベースなのです。
ブランドはこのファン層とFacebook上でコンテンツやインタラクションを通して親密な関係を構築していくことが大切なのではないでしょうか。ロイヤリティーが強いファンであるがゆえに、良い関係を築くことに成功すれば、彼らが強力な情報発信元になってプロモーションに貢献してくれるかもしれません。
【私の論評】何か、これって、当たり前といえば当たり前でないか?
むやみやたらと「いいね!」を増やすとは、どういうことなのでしょうか?facebookの会員になっていない人、なっていても、あまり使わない人には良くわからないかもしれません。これの非常にわかりやすい例を本日見つけましたので、まずは、これを掲載します。
全米大ヒットドラマ『コバート・アフェア』が4月18日からDVDのリリースをスタートしています。サイト上ではCIAに入れる素質がどれくらいあるかをサイトで診断できます。以下は、そのサイトの画面です。
わたしも診断してみたところ、素質はありということでした。ランクは、Aでした。 このランクAという結果表示とともに、facebookの"コバート・アフェア"のページへ誘導するボタンがあり、このページに移動すると、自分がどのようなCIA捜査官に向いているかを診断できると表示してあったので。
ボタンを押して移動してみました。そうすると、以下の画面になりました。
そうして、この診断を受けるためには、やらなければならないことがありました。それは、このページの「いいね!」ボタンを押すことでした。確かに、このようなやり方をすれば、「いいね!」がかなり増えることになります。私が、「いいね!」ボタンを押すと、これが、私のウォールにも掲載されました。それが、以下の画像です。
私のウォールに表示されるということは、当然私の友人である他の人たちのタイムラインにも掲載されるということです。この友達が興味を持てば、さらに、このサイトに行き、さらに、ページに行く人いるかもしれません。そうして、最終的に「いいね!」ボタンを押して、診断を受けるかもしれません。
しかし、この内容が、ウォールに掲載してから、しばらくして、facebookをみてみても、その時点ではまだ、誰もそのようなことをしていませんでした。
ちなみに、コバート・アフェアは、全米での初回視聴者数約500万人を獲得し、2010年新作ケーブルドラマ中No.1を記録した大人気シリーズです。USAネットワーク(※アメリカのケーブルテレビ向け娯楽専門放送局)の看板枠(火曜22時台)において、過去16年間で最も視聴された作品が、いよいよ今春、日本に上陸するということです。DVDも発売されますし、テレビでも放映される運びとなったため、そのキャンペーンとして、facebookも活用されたということです。以下に、その動画を掲載しておきます。
製作総指揮は、映画『ボーン・アイデンティティー』シリーズや『Mr.&Mrs.スミス』でおなじみのダグ・リーマン。お得意のアクション・シーンはまさにハリウッド超大作並みのド迫力!本作の見どころのひとつです。
ヒロインのCIA諜報員アニー・ウォーカーは、映画『コヨーテ・アグリー』でブレイクしたパイパー・ペラーボが演じます。本作では、2010年ゴールデングローブ賞ドラマ部門の主演女優賞にもノミネートされました。
CIAもので、女性がヒーローということで、なかなか面白そうな内容ではあります。以下にヒロインの画像を掲載しておきます。
さて、何やら、この番組の宣伝のようになってきましたが、いいたいのは、これではありません。要するに、このキャンペーンでは、上の記事の考察で言っていた「ブランドが気をつけなくてはいけないのは、無理やり「いいね!」を増やすと、ファンベース全体のブランドに対する熱心さが、減少する可能性があることです」という内容の、無理やり「いいね!」を増やすことをやっているということです。
このやり方は、すでに、facebookでは、古典的といっても良いやり方です。要するに、この事例では、「いいね!!」ボタンを押すことで、はじめて、スパイの適正診断を受けられるということで。このような、やり方は、他にも、たとえば、「いいね!」を押すと、ゲームができるだとか、クーポンがあたるだとかなどいろいろいあります。
共通しているのは、なんらかのインセンティブが得られるということです。こういうことをたくさん、やれば、確かに、「いいね!」がかなり増えることになります。しかし、こんなことをしても、あまり効果はないということです。
やはり、「いいね!」ボタンは、このような方式で、数を増やすというのではなく、ユーザーが本当に「いい」と思ったときに押してもらえるようにすべきであると言っているのです。そうして、すでに、「いいね!」ボタンを押す人をむやみに増やすのではなく、すでに、「いいね!」押しているユーザーを大切にしようと言っているということです。
でも、これって、facebookという新しいシステムについての調査結果ということで、それは、それなりに意味があるのでしょうが、普通に考えれば、別に調査をしなくても理解できることだと思います。
昨日は、K-POPが日本市場では、下火になっていることをお伝えしました。詳細は、昨日のブログをご覧いただくものとして、K-POPが日本で、下火になっている理由は、特に昨年あたり、あまりに、テレビや、YouTubeで一時に露出をかなり多くしてしまったことが、主な原因と思われます。むろんこれだけではありませんが・・・・・・・・。
facebookで、むやみに、「いいね!」を増やすということは、これに似ていると思います。一時にあまりに、露出が多すぎると、多くの人に飽きられるということです。それに、このやり方の場合は、多くのユーザーに対して、本当は、気に入って押している人もいるかもしれないのに、わざわさ゜、この「いいね!」は、ユーザーが本当に気にいって押してるのではなく、インセンティブがあるから、押しているんですと、告知して回っているようなものです。
faceookを使おうが、使うまいが、商売の基本は同じだと思います。本当に、お客様に気にいっていただくための知恵を絞るのが商売人なのであって、上記のように人為的にお客様の反応をただ増やすというのは、意味のない行為です。
これでは、無意味なディスカウントとあまり変わりないと思います。
しばらくの間は、通用するかもしれませんが、いずれ、通用しなくなります。上の調査結果は、そのことを示しているのだと思います。
顧客価値を高めることが本筋なのであって、これを軽視して、顧客の反応を増やしても意味はないということです。
もっとも重要な顧客、それに準ずる顧客は誰か?
顧客からどのような知見を得なければならないのか?
このような知見を得るため、どのような行動をしなければならないのか?このようなことに智慧を絞るべきです。 やはり、見る人に気にいってもらえるように、いろいろ考えることで、「いいね!」を増やして行きたいものです。皆さんは、どう思いますか?
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2 件のコメント:
こんにちは。記事読まさせて頂きました。確かにおっしゃるように本質はすでに「いいね」を押している人を大事に、その人が楽しい内容を更新していくというのが第一だと思います。ただ、インセンティブを置いて「いいね」を集めるのも、一つのユーザーさんとの出会いのきっかけにはなると思います。
喜んでもらえる更新を常に心がけて、タイミングを測ってインセンティブで「いいね」を集める企画を打つ。そうすれば、既存の人はいつも楽しいですし、インセンティブの企画でそのブランドのフェイスブックを知った人も。それをきっかけに興味を持った人は、読者として内容がおもしろいので残ってくれるはずです。
よって、インセンティブの方ばかりにコストをかけるのは誤りですが、楽しんでもらえるコンテンツを用意できているならば、インセンティブで「いいね」を集めるというのも手段ではないでしょうか。出会いのきっかけとして。
私はそのように考えました。
ブログいくつか記事を読ませていただきました♪面白いです!
経営コンサルタントT☆K様コメントありがとうございます。最近では、コンプガチャが話題となっていますが、やり方として、あまり射幸心を煽らない軽いものであれば、問題はないでしょうが、そうはいっても人為的インセンティブにいつも頼っていれば、いつしか、本質を忘れてしまいそうな気はします。
これからも、お気軽にお立ちよりください!!
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