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2018年12月6日木曜日

【コラム】文大統領専用機はなぜ米国で給油できなかったのか―【私の論評】文在寅は、米国による北朝鮮制裁の韓国への厳格な適用の事実を隠蔽しようとした?


朝鮮日報

チェコを訪問した文大統領

文在寅(ムン・ジェイン)大統領はチェコ・アルゼンチン・ニュージーランドの3カ国を訪問し、おととい夜帰国した。8日間にわたる海外歴訪だ。アルゼンチンは韓国のちょうど地球の裏側に当たる位置にある。これを対蹠点という。韓国から地球の中心に向かって井戸を最後まで掘っていくと、アルゼンチンに達する。

 ところが、1つ謎がある。文大統領はなぜチェコに行ったのだろうか。あいにくチェコには同国の大統領もいなかった。あるじのいない家に客が立ち寄ったのだ。あるじのいない家になぜ行ったのか。当初は、文大統領のチェコ訪問目的は「原発セールス」だと言っていたが、後に「原発は議題ではない」と言葉を翻した。苦しいことこの上ない。チェコ大統領はいなかったので当然会えず、代わりに首相に会ったが、それもチェコ側が要請して「非公式面談」として処理された。あるじのいない家に招待状もなく立ち寄ったので、公式の外交記録に残すのはやめようという意味だ。その過程で、文大統領歴訪のニュースを伝える韓国外交部(省に相当)公式英文ツイッターに、チェコを26年前の国名「チェコスロバキア」と誤記する恥までかいた。

 右往左往しながら言葉を翻したあげく、政府はついに「専用機の中間給油のため」と言った。文大統領専用機の空軍1号機は油を入れる場所がなくて、あえてチェコに行かなければならなかったのだろうか。当初は給油地として米ロサンゼルスを検討したが、直前にチェコに変えた。もしそうなら、文大統領が乗った空軍1号機は米国に着陸できない事情でもあるのだろうか。本紙社説も「本当に公表できない極秘の事情でもあったのか非常に気になるところだ」と書いている。

 では、文大統領と空軍1号機はなぜチェコに行ったのか。最大野党「自由韓国党」の洪準杓(ホン・ジュンピョ)前代表は次のように語った。「北朝鮮は首脳会談をタダでしたことがない。DJ(金大中〈キム・デジュン〉元大統領)の時もそうだったし、盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領の時もそうだった。MB(李明博〈イ。ミョンバク〉元大統領)も2億ドル(現在のレートで226億円)を要求され、MBが首脳会談を断念したことがあった。(文大統領は)先日送ったミカン箱の中に入っているのはミカンだけだろうか? (金正恩〈キム・ジョンウン〉朝鮮労働党委員長の叔父)金平一(キム・ヨンイル)が大使として駐在しているチェコに行ったのはなぜだろうか? 給油が目的だったと言っているが、それは正反対の飛行ルートではないのか?」

 すると、保守系野党・正しい未来党の李俊錫(イ・ジュンソク)最高委員が洪準杓前代表を批判した。「地球が丸いということを理解できていないある政治家が的外れなあら探しをした」というのだ。李俊錫最高委員は、仁川国際空港からチェコのプラハを経由してアルゼンチンのブエノスアイレスに行った場合は距離が2万75キロメートル、仁川空港から直接ブエノスアイレスに行った場合は1万9484キロメートルなので、500キロメートルほどしか差がないと言った。だから、「正反対の飛行ルート」という洪準杓前代表の発言は「的外れ」と言ったのだ。

 それなら、本当に文大統領が乗った空軍1号機はなぜチェコに行ったのか。トランプ大統領が乗る米大統領専用機は米空軍所属だ。管制塔コールサインも「エアフォースワン」だ。機長は空軍大佐で、乗務員も米空軍に所属している。トランプ大統領が乗る米大統領専用機は軍用機なので、海外歴訪時は米空軍基地に着陸する。シンガポールで行われた米朝首脳会談の時、金正恩委員長が乗ったエアチャイナは民間航空機なので民間国際空港のチャンギ空港に着陸し、トランプ大統領が乗ったエアフォースワンは空軍機なので軍事空港のパヤレバー空軍基地に着陸した。

 トランプ大統領が乗るエアフォースワンが米空軍機なのに対し、文大統領が乗る大韓民国空軍1号機は言葉こそ「空軍1号機」だが、実際には軍用機ではなく、民間から賃借したチャーター機だ。文大統領専用機は民間航空機なのだ。朴槿恵(パク・クネ)大統領が2014年末に大韓航空から1421億ウォン(現在のレートで約144億円)で5年間借りたものを文大統領がずっと使っている。ほぼ唯一、積弊(前政権の弊害)清算リストに載っていないのがこの「朴槿恵専用機」だ。文大統領専用機は管制塔コールサインも「エアフォースワン」ではなく、ただの「コードワン」だ。民間航空機だからだ。ならば、今年9月に北朝鮮の平壌に行った民間航空機・文大統領の「コードワン」はそれから6カ月間、米国に入国できない「制裁」に引っかかっているのではないか、という合理的な疑問が生じる。

民間航空機・文大統領の「コードワン」と同型機

 今年7月の南北統一バスケットボール競技大会に参加するため、韓国の選手たちが北朝鮮に行った時、空軍輸送機C-130Hに乗って行った。韓国のバスケットボール選手があえて軍用機に乗って行った理由は、民間機が北朝鮮を往復すればすぐに国際社会の対北朝鮮制裁に引っかかるからだった。

 さあ、韓国の当局者は答えなければならない。文大統領専用機、つまり民間機「コードワン」が米ロサンゼルスで給油せずにチェコで給油したのは、対北朝鮮制裁違反で米国に入国できなかったためではないのか。それとも別の理由があるのか。

キム・グァンイル論説委員

【私の論評】文在寅は、米国による北朝鮮制裁の韓国への厳格な適用の事実を隠蔽しようとした?

文大統領の外遊日程は先月27日から5泊8日でチェコ、アルゼンチンのG20首脳会議、最後にニュージーランド訪問でしたが、文大統領がG20首脳会議前になぜチェコを訪問したかで韓国メディアは騒いでいます。

ちなみに、文大統領がニュージーランドを訪問したときに、迎えたのは、首相でも、長官でもなく「海軍中佐」 だったというおまけもついてしまいました。

ニュージーランドを訪問した文大統領。迎えたのは、
首相でも、長官でもなく「海軍中佐」だった。

韓国中央日報や朝鮮日報は「文在寅大統領はG20首脳会議に出席するためアルゼンチンに向かう途中チェコに立ち寄ったが、これについて疑惑がいまだに収まらない」と報じています。

そこで文大統領のチェコ訪問に関わる疑問点を整理します。
①文大統領の訪問のチェコ側のホストはプロトコール上、ミロシュ・ゼマン大統領だが、同大統領はイスラエルを国賓訪問中で、文大統領がプラハ入りした時は不在だった。そのため、文大統領は28日、チェコではアンドレイ・バビシュ首相と会談している。 
②韓国政府は米ロサンゼルスで大統領専用機の給油をすると発表したが、10月中旬、急きょ変更され、給油目的のためチェコを訪問することになった。 
③韓国側は文大統領とチェコ首相との会談を「会談ではなく、面会」と説明してきたが、チェコ側の要請を受けて「非公式な面会」となった。両国間で訪問の綿密な準備がなかったことが伺える。 
④チェコ訪問の目的は政府の説明では「原発セールス」だったが、韓国大統領府は「原発は全く議題ではなかった」と弁明するなど、関係者の説明がコロコロ変更している。中央日報の先月29日報道では文大統領は韓国の原発の安全性をアピールしたという記事を流している。

韓国外務省は大統領のチェコ訪問を公表する時、チェコを旧名「チェコスロバキア」と表記するなど、初歩的外交ミスを犯しています。この記事の冒頭の朝鮮日報3日付の社説は「文大統領のチェコ訪問は本当に給油が目的だったのか」と報じ、疑惑視しているほどです。

一国の大統領の外国訪問でこれほど杜撰(ずさん)な準備は考えられないです。文大統領のチェコ訪問には「何かある!?」と韓国メディアが考えても可笑しくはないです。

そこで文大統領のチェコ訪問の「ナゾ」を考えてみました。直ぐに頭に浮かぶことは、チェコの首都プラハには文大統領の南北首脳会談の相手、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の叔父、金平一氏が北大使として赴任しているという事実です。

金平一大使(64)は故金日成主席と金聖愛夫人の間の長男で、金正恩氏の父親、故金正日総書記とは異母兄弟です。その上、政敵でもあったため、金大使は平壌の中央政界から追放され、欧州各地を転々とする外交官となりました。金大使の外交官キャリアは1982年、駐ユーゴスラビア武官時代から始まり、駐ハンガリー大使、駐ブルガリア大使、駐フィンランド大使、そして1998年から17年間余り駐ポーランド大使を務めた後、2015年から駐チェコ大使です。

金平一氏

すなわち、文大統領は金正恩氏の親戚が住んでいるチェコを急きょ、訪問したことになります。少なくとも、10月中旬までは予定ではありませんでした。給油地を変更し、ホスト国の大統領不在中という外交上異例の時、チェコを訪問しました。それほどチェコを訪問しなければならない理由が文大統領にあったことになります。

文大統領の金正淑夫人がプラハ城を見学中、文大統領は単独行動を取っています。そこで大胆に推測しました。文大統領は金平一大使とプラハ市内ないしはホテルで密かに会合したのではないでしょうか。目的は、①金正恩氏に依頼され、そのメッセージを伝言するか、②金大使を南北融和路線に加え、朝鮮半島の再統一を話し合うことでした。

①は非現実的ですが、問題は少ない、②は金正恩氏を困惑させるでしょうしし、ひょっとしたら、金正恩氏を激怒させるかもしれないです。

ちなみに、②は金平一大使を北朝鮮の暫定指導者にするといったラジカルなシナリオも考えられます。換言すれば、文大統領は金正恩氏の報道官ではなく、独自の南北再統一構想を描き、その線で動いているということになります。

この記事の冒頭の朝鮮日報の記事で、「今年9月に北朝鮮の平壌に行った民間航空機・文大統領の「コードワン」はそれから6カ月間、米国に入国できない「制裁」に引っかかっているのではないか、という合理的な疑問が生じる」とあります。

そこで、米国の北朝鮮に対する独自制裁について調べてみました。米国版のWikipediaを調べると、以下の記事がありました。
Sanctions against North Korea
この記事の中に以下のような文書がありました。
Also any aircraft or ship upon entering North Korea is banned for 180 days from entering the United States.
これを訳すと、「北朝鮮に入ったいかなる航空機も船舶も、180日間米国に入国できない」です。これによれば、民間であろうが、軍用機であろうが、北朝鮮に入った航空機は、180日間米国に入国できないことになります。

確かに、このような制裁が存在するのです。

平昌オリンピックでの北朝鮮選手団の移動には、韓国の民間航空会社アシアナ航空のチャーター便が使われました。そのためアシアナ航空がアメリカの独自制裁の対象になる恐れが指摘されましたが、韓国政府が側と事前に調整し、今回に限り認められました。

今回の文大統領のチェコ訪問が、米国の制裁にひっかかっためチェコで給油のためと仮定したとして、おそらく韓国政府は今回も米国側と事前に協議して、これを認めて貰おうとしたのですが、直前だったため調整が不可能だったのか、あるいは米国側が意図的にこれを認めなかったのかいずれかだと考えられます。そうして、私は後者のほうが可能性が高いと思います。

私としては、文大統領が金平一大使と密かに面談したという説よりも、こちらのほうがより筋が通ると思います。

現在、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は悪の帝国の一画である北朝鮮の番犬になり下がり、制裁破りともとられかねない言動を繰り返しています。トランプ大統領は北朝鮮を手なずけようとしているのですが、「しつけ」をしている最中に、横からエサを放り投げられたら激怒するのも当然です。韓国の銀行や企業に対して米国が制裁を発動する日も近いのではないでしょうか。これは、その前触れなのではないかと思います。

私は、米国との調整がうまく行かなかったので、焦った文大統領は、代替の他の給油地を探したのでしょうが、その時にチェコが浮かんだのではないかと思います。
他ならぬチェコに行けば、北朝鮮の大使である金平一大使がいるので、何やらそれに関係した動きととられ、まさか米国の制裁にひっかかったとは思われないだろうと、世間体を考えて姑息な皮算用をしたのではないかと思います。そうだとしたら、最悪というか醜悪です。

朝鮮日報の記事も本当は、これを言いたかったのではないでしょうか。ただし、韓国は言論の自由があるようで、ないというのが実情ですから、言えなかったのでしょう。
やはり、米国は意図的に文大統領を米国内に入れなかったのだと思います。北朝鮮制裁を厳格に適用し、いずれこのような制裁が続く可能性を示唆したのだと思います。そうして、このやり方はなかなか良い方法だと思います。日本も、慰安婦問題や徴用工問題で、韓国に対してまずはこのような方式で、韓国に接するべきだと思います。その後徐々に圧力を強めていくという方式が良いと思います。
いずれにしても、文大統領のチェコ訪問の「ナゾ」は、朝鮮半島の政情が動いていく中で次第に解けていくことでしょう。

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