2016年7月7日木曜日

中国の膨張路線は止まらないが国際社会から強い逆風 南シナ海のハーグ裁定―【私の論評】通常戦力で勝ち目のない中国は、南シナ海に戦術核を配備する(゚д゚)!

中国の膨張路線は止まらないが国際社会から強い逆風 南シナ海のハーグ裁定

オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所(PCA) 
 南シナ海の領有権問題をめぐり、フィリピンが中国を相手に申し立てていた仲裁手続きについて、オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所(PCA)は7月12日に裁定を下す予定だ。

 中国に対して厳しい内容になるとの見方もあるが、必ずしもフィリピンに有利な判断が示されるとはかぎらない。そして中国は、どういう裁定であっても受け入れないと主張している。

 常設仲裁裁判所は、国際紛争を解決するために国家間に設けられた裁判所だ。1899年の第1回ハーグ平和会議で採択された国際紛争平和的処理条約に基づき、1901年にハーグに設立された。同じくハーグにある国連の機関、国際司法裁判所(ICJ)としばしば混同されるが、別組織である。

 本件は、各国が領有権を争う南シナ海の島々をめぐり、フィリピンが仲裁を求めたことが発端だ。フィリピンと中国はともに国連海洋法条約を批准しており、フィリピンは同条約に基づいて南シナ海問題を処理することを主張した。一方、中国は、南シナ海の島々の主権に関わる問題であり、同裁判所の管轄ではないと強調している。

 これを受けて、同裁判所は、南シナ海問題は同条約の解釈と適用に関する両国間の係争であり、管轄権を有すると判断していた。同裁判所が管轄権を認めたのは、中国が埋め立てた岩礁を「領海」の起点とすることの合法性やフィリピン漁民への妨害行為などである。

 中国は、フィリピン側が提出した南シナ海の仲裁案を受け入れないとして、「決定は無効で中国に対して何の拘束力も持たない」としてきた。

 常設仲裁裁判所の下す裁定は、南シナ海の領有権紛争に国際法を適用することで、国際社会がこの問題をどう見ているかを示すことになる。

中国によるスプラトリー諸島にあるファイアリー・
クロス礁の完成した飛行場(昨年9月20日撮影)
 外交では、「法と正義の原則」という用語がよく用いられる。これは、日本の北方四島に対するロシアの不法占拠を非難するときにも使われていることからもわかるように、国際法を無視した、力による変更を認めないというものだ。

 常設仲裁裁判所が裁定を下すということは、南シナ海問題の存在を国際社会が認めることになる。これは、中国を国際法の舞台に載せることであり、国際社会の動向を考えると、中国はそう簡単に武力を行使できなくなるだろう。

 常設仲裁裁判所の裁定だけで、中国の南シナ海での拡張路線を食い止めることはできない。ただ、中国にとっては南シナ海への米海軍の艦艇派遣とともに、国際社会からの大きな逆風になることは間違いない。

 常設仲裁裁判所による審理は非公開であったが、マレーシア、インドネシア、ベトナム、タイ、日本は傍聴してきた。それらの国に加え、日米豪印の4カ国で共同して中国の南シナ海進出の野望をくじく必要がある。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】通常戦力で勝ち目のない中国は、南シナ海に戦術核を配備する(゚д゚)!

上の記事では、日米豪印の4カ国で共同して中国の南シナ海の野望をくじく必要があるとしています。私もそう思います。ただし、その理由は単なる中国の南シナ海の拡張路線を食い止めるだけに及びません。

その最大の理由は、上の記事では言及されていませんが、結論からいうと、中国の南シナ海のへの核兵器の配備を阻むことです。

中国は、明らかにこの地域への核兵器の配備を企図しています。それに関しては、以前から指摘されていました。 それに関する記事のURLを以下に掲載します。
【なぜ南シナ海に進出するのか?】南シナ海 対米核戦略の内幕 - 能勢伸之(フジテレビ解説委員)
この記事は、今年の6月16日にBLOGOSに掲載されたものです。詳細は、この記事をご覧いいただくものとして、以下に一部分を抜粋、要約して掲載させていただきます。
 G2として、米国と並びたとうとする中国は、経済面だけではなく、軍事面、特に核抑止の強化が急務となるはずだ。 
 核戦略のために南シナ海をおさえこもうとしているのなら、むしろ、そのように捉えた方が、中国の南シナ海での行動に一貫した戦略を見出すことができる。

 それはいかなる戦略なのか? 現代の核抑止理論をベースに考えてみることにしよう。 
 その理論は歴史的には米ソ核戦争の想定によって鍛えられてきた。第二次世界大戦後、全面核戦争をしうる国は、米ソ以外には考えられなかったからだ。
 
米ロ中の戦略核兵器
 米ソ核戦争において、勝敗を分けると考えられ、核抑止の要とされたのは、互いの敵国本土の都市や核ミサイル基地などの標的を破壊する「戦略核兵器」である。戦略核は、①大陸間弾道ミサイル(ICBM=射程5500㎞以上の地上発射弾道ミサイル)、②潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)、③重爆撃機の三種類の遠距離核打撃システムから構成されている。これを核の三本柱=トライアドと呼ぶ。

 米国とソ連の核兵器を継承したロシアは、依然として戦略核を大量に保有しているが、トライアドを構成する兵器と搭載される核弾頭の数量などについては、米ロ間で繰り返し条約で規定し、現在は新START条約(新戦略兵器削減条約)の下、両国とも2018年までに核弾頭を1550個まで、ICBM、SLBM、重爆撃機の合計を700までに削減することになっている。

 では、中国の戦略核兵器を見てみよう。中国はICBMとSLBMを保有しているが、米国本土を打撃できる重爆撃機は持っていない。

 中国のICBM(DF‐31A、CSS‐4別名DF‐5、DF‐5AはDF‐5の発達型)は、米国に届く(次頁図1参照)。しかし、その数は米国の7分の1以下である(次頁図2参照)。また、中国のSLBMであるJL‐1の射程は2000㎞台で、米国本土には届かない。同JL‐2の射程は7400㎞以上で、中国沿岸からだと、アラスカやグアムには届くものの、その他には到達しない。
図1 中国の戦略核兵器の射程(米国防総省によるMilitary and Security Developments Involving the People's Republic of China 2015, p.88を基に作成)*出典にはDF-4、DF-5Aの射程は図示されていない。
図2 米国・ロシア・中国の戦略核兵器(the Military Balance 2016による)の三本柱*ICBMは発射装置の数。中国はH-6K爆撃機を約50機保有している。米B-1B爆撃機は、核任務から外れているため、表には入れていない。
核戦争の勝敗を決するSLBM 
 一般にICBMの発射装置は、2種類ある。一つは竪穴にミサイルを収め、蓋をする固定式サイロ。もう一つは車両や列車にミサイルを搭載し、発射地点を変えて行く移動式。これは元々は発射地点を敵国に捕捉されないようにするための工夫だった。しかし、今では偵察衛星や偵察機の技術が相当に進歩したので、移動式の場合も特定されないとは言えない。

 したがって、平時から場所を割り出される可能性の高いICBM発射機(基)は、まず敵国の戦略核兵器の標的となる。

 このことを踏まえると、戦略核兵器の標的は、主に敵国のICBM発射機(基)や軍事中枢となる。重爆撃機はミサイルや爆弾の投下前に迎撃すればよい。敵国の都市を狙うとすれば、敵国の国力の破壊と戦意喪失のためであり、ICBMの発射機(基)や軍事中枢を狙うのは、反撃を防ぐためである。むろん核戦争が実際に起これば、自国の都市やICBM発射機(基)、軍事中枢も相当に破壊されるだろうが、核戦争における敗北は、反撃が不可能になった時点で訪れる。逆に言えば、核戦争は、反撃が可能なうちは、物理的に続行しうる。

 このような想定の下で、非常に重要な役割を担うのが、SLBMである。SLBMを搭載して、海深く潜航するミサイル原子力潜水艦は、場所を特定されにくいため、敵国による先制攻撃を免れやすく、SLBMによる反撃に転じられるからだ。

 このことは、敵国にすれば、戦略核戦力によって、ICBM発射機(基)を壊滅させても、反撃される可能性が残ることを意味する。そうなれば、戦略核兵器による先制攻撃を思いとどまるかもしれない。SLBMが核抑止にとって、非常に重要な役割を担うのは、このためである。

 このことを正確に認識していたのは、冷戦期のソ連である。

 ソ連はSLBMによる反撃可能性を保つためにオホーツク海を「ミサイル原潜の聖域」にしようとした。具体的に言えば、ソ連はオホーツク海に米軍の航空機や艦船が入ることを困難にし、そこに潜ったミサイル原潜が捕捉されたり、攻撃されたりしないようにしていた。

 オホーツク海は水深が2000m以上の水域が多く、偵察衛星でミサイル原潜を捕捉することは難しい。また、北も東も西もソ連領土に囲まれている。つまり、聖域化しやすい地理的条件を備えていた。聖域化ができれば、オホーツク海に潜ったミサイル原潜は、千島列島の間を抜けて太平洋に進出することもできた。

 さて、いよいよ米中の核戦争を想定してみよう。戦略核兵器の比較をすると、中国の戦略核兵器は米国に比べてかなり劣るため、頼みの綱は、やはりSLBMだが、中国にはソ連におけるオホーツク海のような「聖域」はあるだろうか。ミサイル原潜が米軍に捕捉されることなく、米国本土を狙うSLBMを隠せる海を持っているだろうか。

 中国が面する海は大きく分けて、黄海、東シナ海、南シナ海の三つである。そして、SLBMを搭載した中国の晋級ミサイル原潜の基地は、知られている限り、2カ所にある。それは、大連の小平島海軍基地と海南島南端にある玉林(三亜)である。

 小平島海軍基地が面している黄海の平均水深は、50m弱で、そこにつながる東シナ海のほとんどの水深は、200m未満と浅い。この水深だと、ミサイル原潜は偵察衛星や哨戒機に捕捉されてしまう。その上、より深い太平洋に出ようとしても、その入口には日本の薩南諸島と琉球諸島が関所のように控え、米海軍最新の潜水艦ハンター、P‐8Aポセイドン哨戒機が沖縄嘉手納基地から展開し、常に目を光らせている。つまり、黄海、東シナ海は中国にとってのオホーツク海にはなりえない。
南シナ海は「聖域」たりうるか? 
 では、玉林がある南シナ海はどうだろうか。

 南シナ海には水深2000〜4000mとオホーツク海並みの海域が広がる。また、南シナ海周辺には、P‐8A哨戒機のような強力な潜水艦ハンターを配備している国や米海軍哨戒機を常備する基地はない。中国にとって南シナ海は、SLBMによる反撃可能性を保つ「聖域」にしうる地理的条件を備えていることになる。

 しかし、聖域化にはいくつか越えなければならないハードルがある。

 一つ目は中国のSLBMの射程である。先ほども述べたが、中国が保有するSLBMは2種類で、JL‐1は射程2000㎞台で、米国本土には到底届かず、JL‐2は射程7400㎞で、グアムやアラスカにしか届かない。つまり、南シナ海から太平洋に進出しないと、その射程内に米国本土を収められない。そのためか、米国防総省が2016年5月に発表したリポートによれば、中国はJL‐2に代わるJL‐3を開発中である。

 もう一つは、南シナ海とオホーツク海でもっとも異なる地理的条件に関わっている。それはオホーツク海が北、東、西と三方をソ連に囲まれていたのに対して、南シナ海は東はフィリピン、西はベトナム、南はマレーシア、ブルネイと中国以外の国に囲まれていることだ。

 これでは、中国は玉林から南シナ海にミサイル原潜を密かに潜航させ、太平洋に進出させようとしても、中国以外の国、特に米国にその動きを察知されかねない。それを防ぎ、SLBMによる反撃可能性を保つためには、南シナ海に民間船舶や民間機はともかくとして、海中の潜水艦を捕捉、追尾する能力を持つ他国の水上艦、潜水艦、哨戒機が平時から入れないようにしなければならない。

 中国がここ数年、南シナ海で行っていることは、そのためだと考えると平仄が合う。つまり、中国は「南シナ海の聖域化」のために領域内の島嶼や埋立てで造った人工島に滑走路やレーダー、港湾施設を建設していると考えられるのだ。

 すでに米国国防総省は、2015年5月、晋級ミサイル原潜と海南島南端の玉林について、次のような評価を下している。

「中国は、晋級弾道ミサイル原潜の建造を継続しており、4隻を就役、1隻を建造中である。晋級は推定射程7400㎞のCSS‐NX‐14(JL‐2)SLBMを搭載することになる。この組み合わせは中国人民解放軍海軍に初めて信頼できる長距離海洋発射核保有能力をもたらすことになるだろう。南シナ海の海南島を拠点とする複数の晋級弾道ミサイル原潜は核抑止の哨戒行動を可能とするだろう。恐らく、それは、2015年中に実施されうるだろう」(*1)

 ここで「核抑止の哨戒行動」と記されているものこそ、SLBMによる反撃可能性にほかならない。

 南シナ海における晋級ミサイル原潜の存在に懸念を隠さない米国は、南シナ海で、中国が建設した人工島周囲の「領海」(国際法で領海は陸地から12カイリまでと定められているが、人工島の領海は認められていない)の内側に2015年10月にはイージス駆逐艦ラッセン、2016年1月にはイージス駆逐艦カーティス・ウィルバー、2016年5月にはイージス駆逐艦ウィリアム・P・ローレンスを派遣した。これこそが人工島周辺に中国の領海を認めないという「航行の自由作戦」である。

 米軍の行動は、これだけに留まらない。それらを列挙してみよう。

 2015年11月、揚陸艦エセックス(LHD‐2)、ラッシュモア(LSD‐47)などからなる米揚陸艦部隊が、南シナ海入りし、マレーシア海軍と共同演習を実施。 
 2015年11月8日夜から9日にかけて、「通常任務」(米国防総省)として、南沙諸島付近をB‐52H大型爆撃機2機が飛行。 
 2015年11月11日、イージス駆逐艦フィッツジェラルドが南シナ海を航行。 
 2015年11月14日、原潜支援艦エモリー・S・ランド(AS39)が、マレーシアのセパンガー港で、巡航ミサイル原潜オハイオに補給(岡部いさく氏の取材による)。 
 オハイオは大型原潜で、射程1500㎞のトマホーク・ブロックⅣ巡航ミサイルを最大154発搭載し、100発以上連射できる。

 岡部氏はオハイオが「通常任務」で南シナ海の海中に長期間、展開していた可能性を指摘する。それが正しければ、その期間中、中国海軍の原潜基地にある海南島だけでなく、中国本土南部の広範囲がトマホークの射程内だったことになる。

 このように米国は南シナ海において、「航行の自由作戦」だけでなく、軍事的抑止としてより実効性の高い「通常任務」を展開していたと考えられる。

 日本の安全保障という観点から南シナ海問題を考えると、晋級ミサイル原潜に搭載されるJL‐2は、南シナ海から日本が射程内だ。

 日本にとっても軽視できない事態となるかもしれない。
さて、この記事から読み取れるのは、中国が南シナ海を戦略型原潜の基地にする可能性です。確かにこれに成功することができれば、中国はここから西太平洋に進出さらに米国の近くまで潜行させることによって、米国を核攻撃できます。

これを交代で定期的に巡回させれば、常時戦略型原潜をアメリカ本土への核攻撃に使用することができます。

私として、もっと恐ろしいシナリオを想定しています。

それは、南シナ海のいずれかの環礁埋立地に、中国が戦術核を配置することです。なぜそのようなことを言うかといえば、中国は海軍の通常兵器では、米軍はおろか、日本にも勝つことができないからです。

日米豪印の4カ国で共同で中国海軍と対峙されると、中国海軍には全く勝ち目がありません。そうなると、中国による南シナ海の戦略型原潜の基地化はかなり望み薄です。

しかし、対抗できる力がひとつだけあります。それは、戦術核です。これは、比較的小型で、射程が短くても十分に役に立ちます。

南シナ海のいずれかの中国の埋め立て地に、配備できれば、かなりの抑止力となり、中国の戦略型原潜の基地化にはもってこいです。

戦術核を配備することにより、南シナ海の実効支配はより強固なものとなり、中国の戦略型原潜は南シナ海を基地として、常時米国をSLBMの射程距離内に収めることが可能になります。

私は、それを中国が企図していると思います。その根拠として、以前このブログに掲載した、浮体原子力発電所の開発とその南シナ海への設置計画があります。それに関しては、このブログでも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【緊迫・南シナ海】中国が「海上原発」建設を計画 人工島に電力を安定供給―【私の論評】核戦争瀬戸際までいったキューバ危機の再来になる可能性も十分にあり(゚д゚)! 
4月22日、中国共産党機関紙・人民日報傘下の有力国際情報紙、環球時報は、南シナ海で行う
活動に電力を供給するため、中国が海上浮動式の原子力発電所を建設する計画だと報じた。写真は
衛星から撮影した南沙諸島のミスチーフ礁。1月8日撮影
 中国共産党機関紙、人民日報傘下の国際情報紙、環球時報は22日、中国が周辺諸国と領有権を争っている南シナ海の人工島などに電力を供給するため、海上浮動式の原子力発電所の建設を計画していると伝えた。海上原発の設計・建設を担当する造船大手の幹部が同紙に計画を明らかにした。 
 海上原発は南シナ海の人工島や軍事転用可能な施設に電力を安定供給することが期待される。中国の専門家は同紙に、「長期的な南シナ海戦略に重要な役割を持つ」と指摘。「防衛のための軍備」にも電力を提供できるとしている。2019年の実用開始を目指し最終的に20基が建設されるとの情報もあるという。 
 一方、中国外務省の華春瑩報道官は22日の定例記者会見で「そうした報道に関する情報は持ち合わせていない」と確認を避けた。
さて、この記事では、2019年の実用化を目指しているらしい、とのことが掲載されていますが、その後の記事では、このブログにも掲載しましたが、やはり2019年を目指していることが中国の環球時報で報道されています。その記事を以下に引用します。
不安だらけの中国製原発が新設されるのは自国領土内ばかりではない。『環球時報』によると、国有企業の中国核工業集団は、南シナ海の洋上に、小型原子炉をはしけで浮かべる浮体原子力発電所を20基敷設する計画を進行させている。目的は、海底に眠る原油の掘削に必要な電力を賄うことだという。設置費用は1基あたり30億元(約500億円)で、19年までの運転開始を目指す。
ロシアの浮体原子力発電所概念図
 上のロシアの浮体原子力発電所の概念図でもわかるように、これは動力のないヘリポートも備えた船のようなものに、原発を搭載しているイメージです。

このくらいの規模のものになると、当然南シナ海の環礁の埋立地などでは、建造できるとは思えません。

おそらく、中国本土のいずれかの造船所などで製造して、核燃料なども搭載の上、南シナ海のいずれかの環礁埋立地のそばまで、タグボートなどで曳航してくるのだと思います。

私としては、この時に戦術核も持ち込むのではないかと思います。この浮体原子力発電所に戦術核を搭載すれば、それこそ、臨検をして調べなければ、戦術核なのか原子力発電所用の核物質を運んでいるのか、あるい両方を運んでいるのか検知不能だと思います。

そもそも、未だ世界で稼働事例もない浮体原子力発電所を、その経験もない中国が拙速に2019年から稼働させるというのは、非常に不自然です。

しかし、これを許してしまえば、中国の南シナ海の実効支配はかなり強固なものとなり、これを翻させることはかなり困難になることが予想できます。それどころか、南シナ海は中国の戦略型原潜の基地となり、アメリカは常時中国の戦略型原潜の脅威にさらされることになります。そうして、中国の妄想、世界支配のための米中二国間関係が成立することになりかねません。

そうなれば、中国は尖閣諸島や沖縄まで触手を伸ばしてくるかもしれません。それこそ、南シナ海で味をしめてしまえば、尖閣や、南シナ海の海洋調査用のリグに戦術核を配備するかもしれません。そうして、中国の大々的な西太平洋への進出が始まることでしょう。

当然そのようなことは、アメリカは許容できないでしょう。かつて、ソ連がキューバに核兵器を持ち込もうとしたときに、生じたキューバ危機に似たような状況になることも想定できます。核戦争も辞さない姿勢で、中国に本気で軍事的に挑むことになります。

その前に、中国の南シナ海進出の野望をくじく必要があります。

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2016年7月6日水曜日

韓国で日本との通貨スワップ再開論 協定終了のいきさつを棚上げ?―【私の論評】リフレ派皆無の韓国を通貨スワップで助けても全く無意味(゚д゚)!

韓国で日本との通貨スワップ再開論 協定終了のいきさつを棚上げ?

歴史を修正して反日姿勢を崩さない朴槿恵大統領

韓国政府から、日本と緊急時に通貨を融通し合う「通貨交換(スワップ)協定」の再開を望む声が強まっている。英国の欧州連合(EU)離脱決定や中国経済失速などの要因でウォン暴落や外貨流出の懸念があるためだ。ただ、朴槿恵(パク・クネ)政権の反日姿勢で協定が終了した経緯もあり、その身勝手さにあきれる声も聞かれる。

今月1日に駐日大使に就任した李俊揆(イ・ジュンギュ)氏は2日付の日本経済新聞のインタビューで、日本との通貨スワップ再開について「危機はいつ誰に訪れるかわからず、通貨スワップは危機対応として互いに役立つ」として望ましいとの姿勢を示したという。

韓国は中国と最大の通貨スワップ協定を結んでいるが、調達できるのは人民元だ。一方、2001年に締結した日韓通貨スワップは、韓国はウォンを日本に渡し、米ドルと日本円を受け取ることができるものだった。

11年には700億ドル(約7兆1960億円)の規模に拡大したが、反日姿勢を強めた朴政権側から「協定延長は不要」との声が出て、昨年2月に打ち切られた。

その後も韓国で経済不安が発生するたびに、韓国側の政財界やメディアからスワップ再開話が浮上していた。今年6月には英国民投票で離脱派が勝利したことでウォンや人民元など新興国の通貨が軒並み売られたことから、崔相穆(チェ・サンモク)企画財政部次官が日本や米国との通貨スワップ再開に言及した。

韓国内では、外貨準備高が今年5月末時点で3709億ドル(約38兆880億円)にのぼるため、通貨安や資本流出にも対応可能との論調もある。また、円高とウォン安が進むことは、日本と競合する韓国の輸出産業にとっては有利だ。

ただ、ウォンの対ドルや対円レートは英国民投票直後の急変からいったん落ち着いたが、韓国への影響が大きい中国の人民元も下落が続いているうえ、今後の米国の追加利上げ観測もあることから先行きは予断を許さない。

週刊東洋経済元編集長の勝又壽良氏は、「米国に為替操作国と認定される恐れがあるため、韓国は介入に頼れなくなり、通貨スワップ再開の動きが出てきている。ただ、日本にとっては韓国とのスワップを再開するメリットは小さく、事実上は韓国救済になることを韓国政府はわきまえるべきだろう」と指摘している。

【私の論評】リフレ派皆無の韓国を通貨スワップで助けても全く無意味(゚д゚)!

韓国経済は、このままだと低迷しいずれ過去日本のように「失われた20年」に突入するのは必定です。そのような国を通貨スワップで救済しても無意味です。

現在、韓国では、過去の1990年代後半からの20年に及ぶ経済停滞( 失われた20年)を警戒する論調が盛んになっています。そうして、韓国の政策当事者や経済学者、エコノミストたち主流派の意見は、韓国経済低迷の主因を「構造的要因」に求めているのが一般的です。

日本の小泉純一郎政権発足間もない頃に標語になっていた「構造改革なくして景気回復なし」と同じ議論です。しかし、小泉政権のときもそうでしたが、韓国経済の低迷もまた、「構造問題説」でとらえるのは間違いです。

日本では90年代から経済成長率が低迷し、失業率が高止まりし、低インフレからデフレへの長期継続といった現象が観測されていました。この原因は、消費や投資など総需要不足であることは全く疑いがありませんでした。ところが、当時の政府はもとより、マスコミや経済学者まで経済の無駄をなくせというばかりで、やるべきであった金融緩和など一切せず、何かといえば構造改革一本槍ということが続けられました。

小泉内閣時代の自民党のポスター
この状況を解消するべく方向転換をしたのが、第2次安倍晋三政権のアベノミクスでした。その中でも、異次元の金融緩和とも呼ばれた、大規模な金融緩和が功を奏しました。しかし、本来積極財政を行うべき、財務省が緊縮財政の手法である消費税増税に拘りつづけ、8%増税が実施され、GDPは伸びませんでした。

しかし、雇用のほうは改善し、それこそ数十年ぶりの回復をみました。そうして、今年は消費税10%への増税はまた、延期されました。

日本はなぜ、20年近くにも及ぶほど正しい経済政策を取れなかったのでしょうか。簡単にいうと、それは財務省は積極財政をすべきときに緊縮財政を行い続け、日本銀行は、金融緩和をすべきときに、金融引き締めを行いつづけたからです。

日銀は、金融政策の間違いを、財務省は財政政策の間違いを頑として認めず、あろうことか、それを政治家やマスコミ、多くの経済学者までもがそれを許容してきたからです。

すでに2014年あたりから、韓国の経済指標は日本の失われた20年の時代と同じような兆候

同じようなことが今の韓国経済にもあてはまります。問題の本質は、総需要不足であり、構造改革は問題解決になり得ないどころか、解決を遅らせるだけで、「害」をもたらす政策以外の何ものでもありません。

韓国銀行(日本の日銀にあたる韓国の中央銀行)は度重なる金利低下を実施しています。しかし、韓国銀行は金融緩和をせずにこれを実施しているので、為替レート市場では一貫してウォン高が進行しています。これが韓国の代表的な企業の国際競争力を著しく低下させていることには疑いの余地はありません。

では、なぜ韓国は大胆な金融緩和政策を採用できないのでしょうか。田中秀臣氏などのリフレ派かみると、韓国政府や韓国銀行は、大胆な金融緩和を行えば、一挙にウォン安が加速し、ウォン建て資産の魅力は急減することを恐れているとみなしているようです。

そうなると、海外の投資家たちは韓国市場から投資を引き揚げ、株価なども大幅に下落してしまうことを恐れているというのです。しかし、私はそれだけが原因では無いと思います。

元々、韓国の個人消費は、GDPの50%程度しかなく、これはかなり低い水準です。日本などの先進国では、これが60%台であるのが普通です。米国では、これが70%にも及びます。日本は失われた20年でデフレ・スパイラルどん底に沈んでいるときですら、60%近くを維持していました。

極端なグローバル化で歪な韓国経済
どうしてそのような構造になったのかといえば、極端なグローバル化を進めた結果です。しかし、韓国政府は低い個人消費を伸ばそうという意識はないようです。だからこそ、金融緩和などには、無関心なのでしょう。

しかし、現状をそのまま放置しておけば、過去の日本の失われた20年のように、韓国経済は長期停滞に埋没していくのは必定です。これを打開するためには、個人消費を伸ばす政策を採用すべきです。それを実行するには、金融緩和は不可欠です。

そうして、構造改革をするというのなら、何をさておいても、内需を拡大することを優先すべきです。そのためには、金融緩和、積極財政は欠かせません。

日本には、韓国が大胆な金融緩和を行えないのは、日韓スワップ協定などで潤沢なドル資金を韓国に融通する枠組みに欠けているからだ、と指摘する人もいます。確かに、その側面はあるかもしれません。しかし、これよりよりもはるかに深刻なのは、朴政権と韓国銀行に蔓延している間違った構造改革政策です。

このようなニュースがまた、報道されるかもしれない。日韓スワップ協定は、
事実上の韓国への支援、ただし支援しても何の効果も期待できない
日韓スワップ協定による、潤沢なドル資金がなかったにしても、ウォンは韓国の貨幣なのですから、韓国銀行はウォンを増刷することができます。であれば、韓国内で金融緩和はできるはずです。それを実行すれば、日韓スワップ協定を再開しなくても、韓国は自力でも何とか困難を回避できるはずです。

しかし、これを実行せずに、昔の日本のように「構造改革ありき」などとしていれば、韓国も「失われた20年」に見舞われるのは確実です。そうして、これは日韓スワップ協定を再開したとしても、そもそも政策が間違っているのですから、改善されることはあり得まず、無意味です。

それにしても、韓国はどうして日本が「失われた20年」を招いてしまったのか、理解できないのでしょうか。虚心坦懐に日本での出来事をみていれば、理解できるはずです。

しかし、彼らは「反日」で目が曇っています。だから、日本の状況を正しく判断する事ができないのだと思います。日本のリフレ派の識者がこれを、韓国に対して説明しても彼らは聞く耳を持たないでしょう。であれば、全く効果が期待できないので、支援しないのが一番です。支援しても、何も効果がでないので、さらに日本に対して面妖な要求をつきつけるようになるだけです。そんなことは、私達は過去の例で嫌というほど、見せつけられています。

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2016年7月5日火曜日

親日国でも日本人は“異教徒” テロ危険な「ホテル」「空港」「リゾート地」―【私の論評】誰もが巻き込まれるかもしれないテロでの生存策はこれだ(゚д゚)!

親日国でも日本人は“異教徒” テロ危険な「ホテル」「空港」「リゾート地」

テロ発生のレストランの隣家より撮影した、テロ針圧部隊の様子
罪なき人々を無慈悲に殺害する。非道なテロに世界中が怒りに震えている。日本人7人が死亡したバングラデシュの首都ダッカで起きた飲食店襲撃テロ。イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)は3日までに「イタリア人を含む十字軍22人を殺害した」とする正式な犯行声明を出した。欧州、中東ではなく南アジア、それも親日国で起きた惨劇に衝撃は広がる。イスラム事情に詳しい専門家は「ISのテロは流行期に入っている。いつどこで同じような事態が起きてもおかしくない」と警告する。

「アラー・アクバル(神は偉大なり)」

武装グループはそう叫び、銃を乱射。なたのような刃物を振り下ろしたという。

1日夜(日本時間2日未明)、ダッカの人気カフェ「ホーリー・アルチザン・ベーカリー」で起きたテロでは、日本人7人のほか、妊婦や幼い娘を持つ母親らイタリア人9人、米国人1人を含む人質20人が殺害された。

ロイター通信によると、犯行声明を出したISは「十字軍諸国の市民は、彼らの航空機がイスラム教徒を殺す限り、安全ではない」と警告。ISに対する空爆の報復として、外国人を狙ったなどとしている。

バングラデシュ治安当局は、射殺した実行犯6人と拘束した1人は全員バングラデシュ人で、うち5人はイスラム過激派として捜査対象になっていたと明かした。いずれも25歳以下で裕福な家庭の出身、現地の有名私大に通うなど数人が高等教育を受けていたという。

南アジアの親日国でISのテロが起き、多くの犠牲者が出たことに関係者の衝撃は計り知れない。

国際テロリズムや危機管理が専門の大泉光一青森中央学院大教授は、「バングラデシュには昔からJICA(国際協力機構)が日本人を派遣し、安全対策にも力を入れているはずだが、大きなテロはあまり起きておらず、神経質になっていなかった可能性がある。JICA関連事業は相手国の経済発展を目的としているが、援助を嫌うグループもおり『好感を持たれて当たり前』というわけではない。日本人は服装も含め、目立ちやすい。『日本人もターゲットになっている』という認識を持つことが必要だ」と指摘する。

現地メディアは、関係者の話として、武装グループが人質のバングラデシュ人に「われわれが殺すのは外国人だけだ」と語り、人質にイスラム教の聖典「コーラン」の暗唱を求め、できなければ「刃物で痛めつけた」(人質の1人)。日本人の男性が「私は日本人です。撃たないで」と命ごいをしたが、聞き入れられなかったなど生々しい状況を伝えている。

『イスラムのテロリスト』(講談社プラスアルファ新書)の著者で軍事アナリストの黒井文太郎氏は、「ISにとって、日本人は『異教徒』でしかない。『日本人です』と訴えても意味を持たない」と指摘。万が一、このような事件に巻き込まれた場合は、「ただ、ひたすら目立たないようにおとなしくするしか手はない」と話す。

6月28日には、トルコのアタチュルク国際空港がターゲットにされ、44人が死亡、200人以上がけがをした。このところ、ISやISとつながりのあるグループの犯行が相次いでいる。

黒井氏は「ISシンパによるテロは完全に流行期に入っている。シンパは世界中にいて自分たちも『ジハード』(聖戦)を起こそうと思っている。『俺がやる』『いや、俺がだ』とみなが手を挙げている状態だ」と解説する。

仕事や休暇で各国に渡航する日本人は少なくない。夏休みシーズンも間近に控える。

「ISに感化された人間が今回のように数人単位で行動を起こすことが考えられ、フランス、ベルギー、ドイツなど移民を受け入れている国では、こうした人間が入り込み、テロが起きる危険が高い」(黒井氏)

脅威は移民を受け入れる国に限らず、「(観光地のチュニジアを含む)北アフリカや(バリ島が人気の)インドネシア、タイ、マレーシアなどイスラム教徒が多い地域にはISの関係者がいる恐れがあり、注意した方がいい」と黒井氏。

ISが敵視する白人が集まりそうなホテルや空港、リゾート地。海外に出かける際はどこも危ないと考えるべきだ。

【私の論評】誰もが巻き込まれるかもしれないテロでの生存策はこれだ(゚д゚)!

サイトを閲覧すると、今回で殺害された人質の現場写真や、殺害されたテロリストがレスラン付近の芝生の上に並べられている写真などが掲載されています。最初この写真を掲載しようとも考えましたが、あまりにも酷すぎるし、衝撃的すぎるので取りやめて、現場の写真はブログ冒頭のものにしました。

上の記事でも、『日本人もターゲットになっている』という認識を持つことが必要だ」と指摘されています。これについては、他の専門家も同じようなことを言っています。

たとえば、日本のアラブ研究者、東京大学先端科学技術研究センター准教授の池内恵氏は、自身のフエイスブックの記事で以下のように述べています。


"
ダッカテロ 〜 日本人が知らないジハードの論理
(時事通信)実行犯、20~28歳学生か=標的は「外国人と異教徒」-バングラ
http://www.jiji.com/jc/article?k=2016070300088&g=isk
 ジハードの論理からいって、このような論理は基本。
また、実行犯は人質になったバングラデシュ人の男性店員に対し、ベンガル語で「心配するな。われわれは外国人と非イスラム教徒を殺しに来ただけだ」と話していた。一人ひとりにイスラム教の聖典コーランの一節を暗唱させ、できなければ殺害したという。
穏健なイスラーム教徒がこれを回避するには、例えばバングラデシュと日本という国同士が和平を結んでいるから、その国民を殺してはいけない、などと反論できますが、その和平が、多神教徒でイスラームを受け入れない国とのものだから無効、と唱えると、少なくとも平行線になり「見解の相違」になってしまいます。

なお、イスラーム教徒もジハードの一環として攻撃の対象に場合がありますが(今回は治安部隊の要員が複数亡くなっている)、敵と同盟したことを理由に正当化する思想が強くあります。あるいはなんらかの理由でムスリムではなくなった(背教した=不信仰者・カーフィルになった)ととらえてジハードの対象にすることを「タクフィール」と呼び、今現在のイスラーム過激派の問題の中心の問題です。

それについて日本の多くの人が知らないのはやむをえないですが、知らないからといって存在しないなどと言い張ってはいけません。
"

結局、外国人と異教徒を狙った犯行ということですから、日本人は余程の例外を除いて、異教徒ですし、外国人であることははっきりしているので、残念ながら捕まってしまえば、元々助かる見込みはなかったということです。本当に恐ろしいことです。

ところで、日本で海外へ進出する民間企業向けに作成された危機管理マニュアルには、一般的で当たり前のことやネットで調べればわかるような机上の理論しか記載が無く、アメリカのHomeland Security(国土安全保障省)が作成した企業向けのRUN.HIDE.FIGHT(無差別乱射事件から生き残るには)という現場視点のマニュアルや教育動画などは、ほとんど無いようです。

また、日本人は日本が平和なので、他の国もそうであると思い込んでいる人も多いです。以下のツイートなどご覧いただければ、一目瞭然です。


このツイート左は、SEALDsの若者がISに向けて発したものですが、その答えが右です。この若者は、イスラム教徒がアルコールを飲まないことも知らないようです。

これは、問題外としても、確かに多くの日本人は、日本が海外と比較すれば、平和であるだけに、自分や家族が実際にテロにあったらどうするかなどの腹積もりはない人が多いと思います。

いずれにしても、どのような形でテロなどに遭遇しても、予防策、対応策、事後処理策、メディア対応策などは、企業や個人でも基本的な安全対策として備えておくべきでしょう。

世界最大のハウトゥ・マニュアルを構築するウィキ ベースのコラボレーションサイト「wikiHow」で話題を呼んでいる投稿「How to Survive an Abduction or Hostage Situation:拉致されたり人質になったりした場合の生き延び方」があります。これの日本語訳を以下に掲載しておきます。

"

拘束中の判断が生死を分ける

仕事に向かうため、自分の車に乗り込んだ1分後にいきなり拘束されて口をおさえられ、スピードを上げて走るバンの後部座席に乗せられる。誘拐または人質となった人の多くにとって、これは恐ろしい経験である。そして、非常に早いスピードで事が進んでいく。

 時に、そのスピードが速すぎて、誘拐犯から逃れようとすることさえできない。しかし、幸運なことに、比較的早い段階で、誘拐された被害者が負傷することなく解放されるケースは多い。

しかし、ここで間違いを犯してはならない。これらの誘拐犯は、あなたを殺害するかもしれない。そして、被害者が生き残れるかどうかは、拘束中にどのような判断をするかにかかっている。


■手順1

拉致を阻止するよう試みる。もし、拉致された初期の段階で逃げられるようであれば、あなたの試練はこの段階で終了する。しかし、この人質となったり、拉致されたりする最初の数分間が一番危険で、ここで反抗すれば、さらに危険な状況になる。多くのケースで、すぐに逃げられる可能性が抵抗する危険性を上回ることがある一方で、逃げ出すことが現実的でなく(例えば、複数の武装した犯人がいるなど)、リスクを犯す価値がない場合もある。このような状況では、理性的に考え、犯人に協力的に行動すること。

自分がいる場所によっては、周りに人がいると思われるので、最初の数分間が抵抗するのに一番適したタイミングであることが多い。もし、そのようなケースで、周りに人がいる場合、抵抗するには一番良いタイミングで、周りの人の注意をひいたり、助けを得られるかもしれない。犯人らが意図する場所にあなたを押しこめてしまえば(車の中など)、あなたが助けを求めても、だれにも気づいてもらえないことが多い。

■手順2
落ち着きを取り戻す。アドレナリンが放出され、心臓が激しく鼓動し、恐怖に襲われるであろうが、落ち着くことが重要だ。落ち着きを取り戻すのが早ければ早い程、長い目で見れば早い段階で、状況を改善できる。
■手順3
 観察すること。最初の段階から、できるだけ犯人らの様子を観察する。逃亡計画を立てる際に役立つし、犯人の次の動きも予測できるようになる。また、警察に情報を提供する時や、救助の手助けとなり、誘拐犯の逮捕、有罪判決とするためにも役立つ。目隠しをされることもあるので、視覚は使えない場合もあるが、それでも聴覚や触覚、嗅覚を使って情報収集はできる。
<誘拐犯について観察する点>
・何人いるか
・武装しているか。そうであれば、どんな武器を持っているか
・健康状態は良いか
・どんな容姿か、どのような声をしているか
・どのくらいの年齢か
・周到な計画を練っているかどうか
・感情面はどのような状態か
・自分の周囲には何があるか
・どこに連れて行かれているのか(誘拐犯が通ったルート を視覚化する。曲がったり停まったりした場所、車のスピードの変化について注意しておく。ポイント間での時間はどのくらいかを覚えておく。例えば128で左、12で右というように、道を曲がるまでの間に数を数えておくそのエリアをよく知っているならば、役立つ情報となりうる)
・どこに監禁されているか、周囲の情報をできるだけ集める(出口はどこか。カメラが設置されているか。ドアにはロックまたはその他のセキュリティ対策がされているか。大きなカウチなどの障害物はあるか。後に逃走すると決心した際に役立つかもしれないので、自分がいる場所を特定し、情報を集めること)
・自分自身の状態を観察する(負傷しているか、どのように拘束され、動けなくされているか。どのくらい自由に動くことができるか)
生き延びようというポジティブな気持ちを持つ
■手順4

自分が拉致された理由を解明してみる。拉致にはさまざまな動機がある。性的暴行のため、身代金要求のため、政治的影響力のためなど、様々だ。誘拐犯とどのように接するか、そして逃亡のリスクを冒すかどうかは、犯人の動機によって違ってくる。

もし、囚人の解放を求める交渉材料や人質として犯人があなたを拉致しているのならば、犯人にとっては、殺すよりも生かしておくことが大切になってくる。しかし、シリアルキラーや性犯罪者である場合、もしくは何らかの政治的、軍事的行動の報復としてあなたを拉致している場合は、犯人があなたを殺す確率は高い。この情報を元にして、逃亡を試みるかどうか、そして、それはどのタイミングなのかを決定しなくてはならない。
■手順5

生き延びようとする気持ちは持ち続けポジティブであること。頭に入れておかねばらならない事は、誘拐の被害者の多くは生き延びていることであり、その可能性は、あなたにもあるのだ。とは言え、長期間拘束される覚悟、準備はしておかねばならない。中には、数年人質生活を送った人達もいる。常にポジティブな態度を保ち、状況に応じて賢く動き、その結果として自由を得ることができた人達もいるのだ。1日、1日を頑張って過ごしていくこと。
■手順6
犯人を安心させること。落ち着いて、犯人に協力的になること(妥当な範囲で)。脅したり暴力的にならないこと。そして、時が来るまで、逃亡を試みないこと。

■手順7
威厳を保つこと。通常、心理学的には、監禁されている者が「人間」であると犯人の目に映っている間は、殺したり、レイプしたり、その他の方法で傷つけることは難しい。卑屈な態度をとったり、懇願したり、ヒステリックにはならないこと。また、泣かないようにすること。犯人に挑戦的になってはいけないが、自分が尊重される価値があると、犯人に思わせること。

■手順8

犯人との良い関係を築くよう試みる。もし、犯人と何らかのつながりを構築できれば、通常、あなたを傷つけることをためらうようになる。

もし、犯人が妄想性精神病を患っている場合は、脅すような態度には出ないほうが賢明だ。しかし同時に、犯人があなたに操られていると思わせるようなことは一切しないこと(犯人と友達になろうとするなど)。偏執的妄想をする人は、あなたが何かを企んでいると思う傾向にあるからだ。このような犯人が、あなたをコントロールできなくなってきたと感じたら、突発的に暴力をふるう恐れがある。

犯人が思っていることはただの妄想だと、犯人を説得しようとしないこと。犯人が激怒することがあるし、あなたを信じなくなるおそれがある(犯人の立場からすれば、彼らの妄想は、全うで現実的なのだ)。

犯人に対し、上から目線にはならず共感する

■手順9

犯人を侮辱したり、デリケートなテーマになりうることを話したりしない。あなたは、犯人が哀れで最低な人物だと思うかもしれない。映画の中では、囚われた人は時に、侮辱するようなことを口にして、その場を切り抜けることもあるが、実際は、そのような思いを口にしてはいけない。また、知らない人と会話する際は、政治の話題は避けたほうが良い。特に、犯人が、テロリストや政治的な理由で人質を拘束している場合はそうだ。
■手順10

聞き上手になること。犯人が言うことに関心を持つこと。犯人に対し、上から目線にはならず共感すること。こうすることで、犯人があなたのそばにいると心が安らぎ、好意的になってくる。聞き上手になることで、解放された後で警察が犯人逮捕する際、または、あなたが逃走する際に役立つ情報を収集することもできる。

犯人の家族の心情をアピールする。もし、あなたも犯人も子供がいるならば、それだけで、強力な繋がりになる。おそらく犯人は「あなたの立場になり」「拉致や殺傷された人の家族の気持ち」を推し量ることができるはずだ。あなたが家族の写真を持っているならば、そのような話題になった時に犯人に写真を数枚見せても良いだろう。
■手順11


 他に拘束された人達とコミュニケーションを取ってみること。他にも拘束された人がいる場合は、安全な範囲で、できるだけ話かけてみる。もしお互いの存在を見つけることができ、話ができるならば、拘束されている状況も少しは楽になるはずだ。また、一緒に逃走する計画を立てることもできる。おかれている状況によっては、コミュニケーションの取り方を変える必要もあるかもしれない。長期間、拘束されている場合は、暗号や信号などを作ることもできるだろう。

■手順12

時間の経過を追い、パターンを認識するように心がける。時間の経過を追うことで、ルーチンを決めるのに役立ち、自らの威厳と正気を保つことができる。また、犯人が出入りする時間や、どのくらいの時間不在なのか、パターンを把握することができれば、逃走の計画、実行の助けにもなる。時計が無い場合は、時間の経過を把握できるよう努力する必要がある。日が射すのが見えれば、比較的、時間を把握するのも楽になるが、そうでなければ外の活動の変化を聞き、犯人の意識レベルの違いを記録し、異なる食べ物のにおいや見た目などから、推測していく。
■手順13
精神的に常にアクティブでいること。家に戻ったら、何をするかを考え、頭の中で、友人や愛する人と交わす会話を考える。これらのことを意識的におこなうことで、気がおかしくなるのを防ぐことができ、正気でいることができる。拘束されると、非常に退屈で、感情がマヒしてしまいそうになる。大事なことは、自らの心に挑戦し、正気でいること。それと同時に、理性的に逃走を考えることだ。計算問題を解いてみたり、パズルを考えたり、知っている詩を暗唱したり、歌の歌詞を思い出してみたり等、常に何かを考え、精神的にしっかりした状態になるようにする。
■手順14
身体的にもアクティブでいること。拘束中、特に縛られている場合は、体を鍛えるのは難しいかもしれないが、可能であれば体を鍛えるのは重要である。身体的に良い状態でいることが、逃走時にも役立ち、拘束中も気持ちをしっかり持つこともできるようになる。運動する方法を見つけること。ジャンピング・ジャック、腕立て伏せ、手のひらを合わせて押すだけでも、ストレッチでも良い。






目立たず、トラブルメーカーにならない

■手順15
ちょっとしたお願いを犯人にしてみること。長期間にわたる拘束状態であれば、少しずつ、ちょっとした備品をリクエストする。例えば、厚手のブランケットや新聞などだ。あくまでも、小さいリクエストにしておき、最初の段階では、リクエストは、頻繁にはしないこと。これにより、拘束生活を少しでも快適にでき、あなたが人間だということを、犯人に再認識させることができる。

■手順16
目立たないこと。他にも拘束されている人がいる場合は、その中で目立たないこと。特にトラブルメーカーとして認知されないこと。

■手順17
警告サインを見逃さない事。犯人が、あなたを殺害すると決めたなら、逃走を計画できるよう、そのことをできるだけ早く知る必要がある。突然、食事を与えなくなった場合、荒々しく扱われるようになった場合(人間として扱われなくなる)、突然、犯人が絶望したり怯えていたりする場合、他の人質が解放されても、あなたを解放するつもりはないと見て取れた場合は、賢く動くこと。マスクを付けて自分の顔を隠していた犯人が、突然、それをやめたりするのは、あなたを殺すつもりだという大きなサインなので、できるだけ早く逃走すること。

■手順18
時を見計らってから逃走を試みる。どういう時が逃走に良いのだろうか。解放、救助されるのを待つのが、一番安全な場合もある。しかし、逃走するのに最良の状況があるならば(もし、あなたに周到な計画があり、逃走に成功すると確信できるならば)、そのチャンスに実行すべきだ。また、犯人があなたを殺害すると分かっている場合は、リスクがあったとしても逃走を試みるべきだ。

■手順19

救助の動きがあれば、余計なことはしないこと。「とうとう救助隊がやってきた!」と興奮しすぎる前に、拉致された時の最初の数分間だけでなく、救助時が最も人質にとっては危険な時だということを頭にいれておかなければならない。犯人は、絶望的になって、あなたを盾として使おうとするかもしれないし、殺害を決めるかもしれない。
たとえ犯人が捕まえられたとしても、建物に突入する際に警察や軍が火薬や爆発物を使うことで、あなた自身が命を落とすこともある。救助の動きがあった場合、可能であれば犯人に見つからないように隠れること。低い姿勢で、両手で頭を保護し、防護バリアとなりうる物を探す(テーブルや机の下、バスタブ内など)。救助隊が突入した際に、急に動いたりしない。
■手順20
 救助員の指示に注意深く従うこと。救助員は、かなりの緊張状態にいて、何かあれば銃を撃ちかねないし、質問するのは後回しだ。救助員のすべての命令に従うこと。床に伏せる、または両手を頭に回すよう指示されたら、その通りにすること。救助者は、誰が人質で誰が誘拐犯か見極める間、あなたをジップ・タイ(電気製品の配線などをまとめる時に使うプラスチック製の細長いひも状のもの)や手錠で拘束することもあるかもしれない。落ち着いて救助隊の迷惑にならないようにすること。
"
以上です。このマニュアル、いわゆるテロリスト以外にも、誘拐などのときにでも役に立ちそうです。一度、ゆっくり読んで、頭に内容を入れておくと、自分では忘れたと思っていても、窮地のときには、それを思い出したり、はっきりは思い出したりしなかったにしても、無意識にそのような行動をとることが期待できます。

私達も、いつなんどきテロに巻き込まれるかわかりません。身の回りに、良いマニュアルのある方は、それを参考にしていただくとは良いと思いますが、それにしても日本のマニュアルの場合は、あまり良いものがないので、上記のマニュアル、あまり長いものでもないので、全文掲載させていたたぎました。

イスラエルには「カッツォンレテバ」という格言があります。これは「おとなしくして羊のようには殺されるな」という意味です。イスラエル人なら誰もが知っている合言葉です。いろいろな苦難のときに乗り越えるために継承されたきた言葉です。エンテベ空港奇襲作戦でもこの精神がいかんなく発揮されたといわれています。

最終的には、このような精神がものを言うと思います。最後の最後には、相手に一撃を加えてから成仏するくらいの覚悟を決めておかなければ、生き残れる場合でも生き残れなくなります。こんなときに、平和主義など役に立ちません。

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イスラーム国の衝撃 (文春新書)


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2016年7月4日月曜日

「お子さんが戦争に行かされる」という法治無視の署名運動―【私の論評】新左翼老人は老害をさらすな(゚д゚)!

「お子さんが戦争に行かされる」という法治無視の署名運動

署名運動は、選挙期間中に及ばず、年中行われている
参議院選挙が実質的にスタートしていた6月中旬。真夏のような日差しが照りつける中、東京・山手線のある駅の駅前ロータリーで、市民団体が署名運動を行っていた。

「戦争法には絶対反対! 戦争法廃止のために署名をお願いしま~す」

数人いた運動員は多くが高齢者であり、見たところ、若者はいなかった。

〈NO WAR 戦争法の廃止を求める2000万人統一署名にご協力を!〉と書かれた幟を掲げる人もいれば、マイクで通行人に呼びかける人もいる。

冒頭で紹介した署名活動の現場では「安倍内閣退陣」のポスターが掲示されるとともに、参院選でどの政党に投票するか、シールを特大ボードに貼るアンケートも実施していた。ちなみに「野党」に貼られたシールは与党の2倍ほどもあり、現実にそうなったら安倍内閣退陣間違いなしだが、このシールの数には“何らかの深い理由”があったのだろう。

 署名運動は全国的な規模で行われている
いずれにしても「戦争法反対」の署名運動は、7月10日の参院選を明らかに意識した形で、全国で繰り広げられている。5月には「2000万人統一署名提出集会」が衆議院第1議員会館で開かれ、民進党の岡田克也代表や共産党の志位和夫委員長らが参加した。

「戦争法」と勝手にネーミングして、思考停止することは簡単だ。しかし現実には、中国の軍艦が何度も日本の領海と接続水域に侵入し、挑発を繰り返している。中国の脅威にどう対処すべきか。その議論を進めることは、参院選があろうとなかろうと喫緊の課題である。

法律の内容を知ろうともしないで「戦争に行かされる!」というとんちんかんな主張を展開したり「爆弾が落ちてきたら嫌だ」と感情論に踊らされたりしている(ましてや政治家もそれに乗っている)のは、中国にとっては大チャンスと映ることだろう。我々は、現実を直視して実効性のある策を考えなければならないのだ。

目の前で、署名用紙を載せたボードを持った運動員が小学生の女の子を連れたファミリーに近づく。

「お子さんが戦争に行くかもしれないんですよ!」

女の子が両親の後ろにすっと隠れると、運動員は踵を返して高校生か大学生と思しき2人組の若い女性のほうに向かう。

「君たちが戦争に行かされるかもしれないんだよ。それでもいいの?」

そう言って署名用紙を差し出したのだ。女性たちは運動員の横をすり抜け、足早に駅に向かった。

安全保障関連法には、「徴兵制」は定められていない。自衛隊員でもない人が「戦争に行かされる」というのは、法治を無視したぶっ飛んだ論理である。だが、最高気温33度の炎天下、運動員たちの表情は真剣そのものだった。

市民団体だけではない。この6月には、東京・足立区で昨年、路上で署名活動をしていた共産党運動員が小学生たちに次のように声をかけて、安保関連法案反対の署名を求めていたことが報じられた(産経新聞6月10日付)。

「爆弾が落ちてきたら嫌でしょ」「(戦争になれば)お父さんやお母さんが死ぬ」「お父さんやお母さんが戦争で死んだら困るでしょう」

声をかけられた小学生の中には、帰宅後に恐怖で涙を流した子供もいた。保護者や学校の教員が現場に駆けつけ抗議したところ、運動員は謝罪したという。

【私の論評】新左翼老人は老害をさらすな(゚д゚)!

このような動きは、全国で行われています。そうして上の記事でも"数人いた運動員は多くが高齢者であり、見たところ、若者はいなかった"と掲載されていたように、老人の動きが目立ちます。

自民党の安倍晋三首相(61)が3日、応援演説で「帰れ」コールを浴びせる一団に反撃に出ました。これまで安倍首相の演説会場には反安倍のプラカードを持つ集団が現れ、やじを飛ばすことがあり、首相周辺は気をもんでいました。しかし、この日の安倍首相は「妨害ばかりなんて恥ずかしくないのか」と、反撃しました。

炎天下の渋谷・ハチ公前は人でごった返していました。日曜の夕方というだけが理由ではありません。安倍首相目当てにたくさんの人が集まったのです。「安倍首相が来るってよ」と政治に関心のなさそうな若者までもが足を止めました。

一方で懸念材料もありました。選挙戦が始まる前の6月19日、東京・吉祥寺で安倍首相の演説が行われた際、「帰れ」コールが起きたのです。安倍首相は「こういうことはやめましょうね」と引きつった笑顔で反応したといいます。与党関係者は「首相が帰れコールを浴びるなんて、絶対に避けないといけないこと。やじを避けるために一部の演説を回避したとささやかれたりもしましたが、とにかくマイナスイメージにしかならない」と嘆いたそうです。

少し遅れて来た安倍首相は「観光も日本の成長の柱となった。もっとお金を落としてもらうために規制緩和をした。これで社会保障の財源を確保していく」と演説を始めました。こう話す当人に向かって「戦争反対!」と叫ぶ集団がどこからともなく現れました。


年配の男女からなる20~30人の集団で、「アベ政治を許さない」と書かれた特製のうちわを掲げていました。安倍首相の正面に陣取ると「帰れコール」などのやじを始めました。

これに対して、安倍首相は、「批判ばっかりしている人たちがいますが、たまには自分で主張してほしい。妨害ばかりは恥ずかしい。この演説を邪魔ばかりしている。こういう人たちに負けるわけにはいかない!」 と反撃しました。集まった聴衆も拍手で援護し、批判の声はかき消されました。

安倍総理の吉祥寺演説て「帰れコール」が止まらない!20日の北海道演説は謎の中止!

昨日は、このブログに「アベノセイダーズ」に関して、掲載しました。上記の署名活動をしたり、安倍総理の演説に「安倍帰れ」などと罵声を浴びせかけるような人たち、アベノセイダーズと同じ穴のムジナなのでしょう。詳細はこの記事をご覧いただくものとして、この記事でこのアベノセイダーズについて、その背景を掲載しました。

その背景の一つとして、私は"「アベノセイダーズ」は、「火炎瓶やゲバ棒を暴言に持ち替えた新左翼」もしくはそれに近いシンパであることが理解できます"と掲載しました。

そうして、この「新左翼」は、1960年代以降に欧米などの先進国と同様に、日本でも従来の日本共産党や日本社会党などを「既成左翼」と呼んで批判し、より急進的な革命や暴力革命を掲げて、直接行動や実力闘争を重視した運動を展開した諸勢力が、特に大学生などを中心に台頭していました。

特に安保闘争やベトナム反戦運動などに大きな影響を与えたましたが、70年安保以降は内部の凄惨な内ゲバ殺人や爆弾闘争などのテロリズムもあり、大衆の支持を失い影響力は低下しました。


新左翼が、大衆の支持を失ったのは、結局何でも壊すことしかできず、新しく創造することが何もできなかったのと、テロなどの暴力を行使したからです。

そうして、新左翼は1960年代の学生が中核となって結成された運動です。この頃、学生だった人は現在70歳前後の老人です。

アベノセイダーズの多くは、この頃新左翼運動に参加した学生や、そのシンパです。そうして、上記の署名運動や選挙妨害をする人たちは、昔新左翼運動に参加した学生や、そのシンパなのです。

だからこそ、老人が多く、手段を選ばないような、署名活動をしてみたり、選挙演説を暴言で直接妨害したりするのでしょう。

そうして、彼らは、ものごとを創造することができないので、もっぱら「戦争法案」や「徴兵」などという法治を無視したぶっ飛んだ論理でしか、自分たちの主張を表現することができないのです。これでは、多くの人から支持をえることはできません。

本来であれば、批判するなら対案を出すべきです。しかし、ものごとを壊すことしかできず、創造することのできない彼らはそれができずに、暴力のかわりに暴言をはいたり、奇妙奇天烈な論理で、結局のところ老害を晒しているだけなのです。

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2016年7月3日日曜日

英EU離脱、金融パニックでも安倍叩き!「アベノセイダーズ」の正体 田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)―【私の論評】左右双方に存在する正統保守主義を理解できない愚か者どもの戯言(゚д゚)!

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5月5日、ロンドンで英国のキャメロン首相(左)と会談した安倍晋三首相

EU離脱か否かを問う国民投票がイギリスで行われ、賛成派がわずかに上回ったことで、同国のEUからの離脱が決定的になった。これから数年かけてイギリスはEUから離脱する手続きを進めていくことになるだろう。英紙『エコノミスト』を中心にして、様々な経済研究機関はイギリスのEU離脱は同国の経済成長率を押し下げ、しかもそれが長期間に及ぶと予測している。(総合オピニオンサイト iRONNA

筆者が見たところでも、2016年の直近で公表された経済成長予測ではマイナス成長は当たり前で、深刻なケースではマイナス5%以上にもなるとの試算がある。この数字はリーマンショック時をはるかに上回る。また出ていくイギリスだけではなく、EUにとっても経済的衝撃は深刻だろう。エコノミストの安達誠司氏は、むしろイギリスよりもEU側の損失の方が大きいだろうと指摘している(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48985)。

あるイギリスのジャーナリストは、「もう連合王国とはいえない」とTwitterに書いていた。これはイギリスでの投票結果をみると、EU残留はスコットランド、北アイルランドが圧倒的で、またEU離脱はイングランド、ウェールズに圧倒的(ただしロンドン市のシティなどは抜かす)であることを示唆している。実際にスコットランド、北アイルランドともに連合王国からの離脱が、今後加速化していくことは避けられない情勢だろう。

この「イギリスの終焉のはじまり」とでもいうべき状況は、つい先日までのEU残留の可能性の高まりをうけて、株価が上昇傾向にあった各国市場を直撃した。もっとも深刻だったのが、開票の時間帯にオープンしていた東京株式市場であり、日経平均株価は1286円33銭安の1万4952円2銭に下落した。下落幅、下落率ともに史上最大級に属するものだった。また為替レートの変動幅は7円以上をしめし、その乱高下幅はかってない大きいものであった。一時は1ドル99円台をつける円高になったが、現在でも円高域の中で不安定な動きを続けている。今後、米国やヨーロッパ市場にも同様の経済不安定化の波が押し寄せていくだろう。

EU離脱が経済に深刻なリスクをもたらす可能性を、安倍首相は伊勢志摩サミット前のイギリス訪問時に、キャメロン首相にその旨を伝えていた。また同様のEU離脱による深刻な経済リスクを(おそらく安倍首相の要求で)サミットの各国首脳宣言に明記することにもなった。だが、アベノミクスに批判的なマスコミや政党はこれを冷笑とともに受け取ったのは記憶に新しい。筆者はそのような「サミットやアベノミクスの失敗」を事実とは違う形で扇動する人たちを、本連載でも厳しく批判した。そのような政治的なスタンスに過度に立脚した扇動は、単純な事実や明瞭な論理を不透明にしてしまい、我々の経済や社会問題に対する判断を曇らせてしまうからだ。

例えば、なにか経済的問題や社会問題が発生すると、安倍首相の責任にする珍妙な現象を目にすることがある。通常は単なるネットでの奇怪な現象にしかすぎない。冗談もふくめて、そういうなんでもかんでも安倍政権のせいにする人たちのことを「アベノセイダーズ」と呼ぶ風潮もある。

写真・挿絵はブログ管理人が挿入 以下同じ
アベノセイダーズだけではなく、EU離脱問題を契機にしたアベノミクス批判は盛んである。安倍首相がイギリス訪問時に「キャメロン首相にEU残留を熱心に説いたのがイギリス国民の気質に逆らって、むしろEU離脱を促すことにもなりかねない」仮説を説いた著名経済学者もいた。安倍首相もイギリス世論を動かすほどの存在だとは驚きである。

また今回の株価の下落と円高によって、「アベノミクスの“化けの皮”がはがれた」などと非科学的な発言をいう人たちも多い。問題はイギリスのEU離脱という海外発の衝撃であり、アベノミクスがどうこうという問題ではないだろう。仮にアベノミクス以外の政策スタンスをとっていても今回の出来事は、株価下落や急激な円高をもたらしただろう。仮に安倍政権発足前の株価水準と為替レートの水準だったとしたら、日経平均は1万円台、ドル円は85円。株価は9千円台を割りかねず、また為替レートは1ドル70円台にまでになるだろう。「化けの皮」がはがれるどころか、日本経済の危機的状況はさらに深まったに違いない。


さて、不毛な議論に付き合うのはこれぐらいにして、今後の対策はどうすべきだろうか? まず日本だけに限って言えば、株価も為替レートもともに落ち着きを多少とも取り戻すと考えるのが無難だろう。もちろん今後、イギリスの経済情勢は不安定化し、また連合王国の分断が進んだり、他のEU諸国にも追随する動きがでればさらに世界経済の不安定化は増していく。そうなってくると今回のイギリスのEU離脱は、長期的な世界経済の押し下げ要因になっていくだろう。また中国、ロシアなどの新興国経済の低迷、米国経済の性急な利上げショックなど、世界経済の不確実性が急速に高まってしまう。

率直にいえば、日本は消費増税などにかかずらっている場合ではないのだ。政策的にできるベストの選択を行い、海外の経済リスクに備えるべきだ。例えば、消費増税は二年半の先送りではなく、事実上の「凍結」を目指すべきだ。またベストは5%への消費税減税である。

これに加えて、日本銀行は追加緩和を行うべきである。マイナス金利はマネーの量的な拡大とともになら明瞭な政策効果を発揮するだろう(マイナス金利だけの効果は限定的)。また最低賃金の引き上げを継続していき、労使ともにベアの引き上げを行うように政府も率先して調整することも必要だろう。もてる政策資源をフルに活用すべきだ。

もしアベノミクス以前(あるいは以下)の政策に戻ることを国民や政治家たちが選ぶとしたら、それは日本社会を分断していく深刻なショックをもたらすだろう。イギリスの問題は、日本の将来の問題にもなりかねない。

田中秀臣

【私の論評】"アベノセイダーズ"は正統保守主義を理解できない愚か者の所業(゚д゚)!

"アベノセイダーズ"とは、分野を問わずあらゆる出来事の責任を安倍晋三首相に求め「安倍のせいだ!」と叫ぶリベラル派等を揶揄する、ネットスラングです。

パリで同時多発テロが発生すると、「安倍のせいで次は日本がテロの標的になる」。北朝鮮が核実験を強行すると、「これは危機を煽って憲法改正を推し進めるための、安倍政権の陰謀だ!」と何でも安倍首相のせいになってしまいます。

2016年2月3日、元野球選手の清原和博容疑者が覚醒剤取締法違反容疑で逮捕されたのは、皆さんの記憶にも新しいと思います。このときは、同時期に持ち上がった甘利明経済再生相の辞任騒動と結び付けて「清原逮捕は、甘利辞任という政治的失点を覆い隠すための、安倍政権の陰謀だ!」との声がリベラル派から上がりました。もちろん、これがなんら根拠のない陰謀論にすぎないことはいうまでもありません。このように芸能ネタまで、安倍首相のせいになってしまいます。

何でも安倍首相のせいにしてしまうのは、簡単なことです。普段頭を使わない人が、何でも陰謀論や、安倍首相のせいにしてしまい、自分の頭で納得できないことを無理やり納得して、それですませるというのはありがちなことだと思います。アベノセイダーズもその類なのだと思います。

しかし、こうも頻繁にしかも何もかも「安倍のせい」とするリベラル派が多いのは、何か背景があるのだと思います。
その背景としては、安倍首相は現状の日本のいわゆる、リベラルや保守からみれば、保守なのかリベラルだかわかららず、ヌエ的のようにみえてしまうということではないかと思います。ただし、いわゆる保守層は"アベノセイダーズ"的な発言をあまりしないので、リベラルの"アベノセイダーズ的"な発言が著しく目立つようになっているのだと思います。

ちなみに、ここで私が使っているリベラルとか、保守という言葉は、言葉も本来の意味での「リベラル」や「保守」ではありません。現在の日本でいわれている「リベラル」や「保守」のことです。実はこの事自体が、「アベノセイダーズ」現象の背景にあるのではないかと思います。しかし、それは後で述べることにします。

「京都 鵺 大尾」(「木曽街道六十九次」の
内、歌川国芳画、嘉永5年(1852年)10月)
安倍政権の最大の特徴として、大胆な金融緩和を伴った「アベノミクス」が挙げられます。しかし、雇用が悪化したときに、大胆な金融政策をすべしと主張するのは西欧ではリベラルや左派です。

これは、このブログにも以前掲載したのですが、左派の経済学者の松尾匡さんは、「左派の立場こそ本来、金融緩和を重視するべき」と主張しています。松尾さんは朝日新聞のインタビュー記事において、以下のように述べていました。
欧米では左派は金融緩和に賛成という色分けが普通だ。金融緩和は雇用を拡大させる効果があり、それは左派が重視するものだからだ。一方、物価が上がってインフレになれば資産が目減りするから、お金持ちの階級が金融緩和に反対する。こういった人々の支援を受けた右派の政治家は普通、金融緩和については否定的だ。
朝日新聞デジタル 2015年2月16日
西欧の認識からすれば、安倍政権はなんと(欧米基準での)左派ということになってしまいます。そうして、安倍政権は、自らの支持層である保守派から反発を受けても、それに抗って政策を推し進めるという傾向があります。この傾向は、金融政策だけではありません。

2015年10月、日米をはじめとするアジア・太平洋地域の12ヶ国は、環太平洋経済連携協定(TPP)締結交渉で大筋合意に達しました。TPPに関しては、自民党の支持基盤のひとつである農業団体が「日本の農業が破壊される」として、これに反対してきました。安倍政権は、支持基盤からのそうした反対の声を押し切って、TPP批准にむけて進んでいます。

日韓関係においても同様のことが言えます。2015年12月、日本と韓国は「最終的かつ不可逆的に」慰安婦問題を解決することで合意しました。この合意に対し、日本の保守派からは「日本の名誉が傷ついた」として強い反発の声が上がっていました。

安倍首相の国家観にも注目する必要がありそうです。2015年に安保法制が成立した際、これに反対するリベラル派の間では、安倍首相をヒトラーになぞらえる言説が多く見られました。


しかし、評論家の古谷経衡さんは、安倍首相が意外にも多民族・多人種社会を肯定していることを指摘しています(『愛国ってなんだ 民族・郷土・戦争』 PHP新書)。安倍首相が著書『美しい国へ』のなかで、1998年サッカーW杯においてアルジェリア系のジダン選手はじめ移民の選手たちが活躍してフランスを優勝へと導き、フランス国家の英雄となったことを称賛しているからです。

安倍政権を積極的に支持している保守派も、こうした国家観を必ずしも肯定はしないでしょう。

このように、現状の日本のいわゆるリベラルや保守からすれば、安倍首相は憲法改正を推進する保守のようでありながら、リベラルでもありどっちつかずに見えるに違いありません。彼らからみれば、理解できない、きわめてヌエのような存在に見えるに違いありません。
安倍首相を既存の「保守」のカテゴリーに括ることができないからこそ、リベラル派や一部保守はこの得体のしれない安倍首相に、ほとんど生理的と言っていいほどの強い嫌悪と恐怖を抱いてしまうのではないでしょうか。ただし、保守層はアベノセイダーズ的な振る舞いはしないので、リベラル派の「アベノセイダーズ」がかなり目立ってしまうことになっているのだと思います。

宮崎哲弥氏は日本のリベラルを徹底的に批判している
おそらく現代日本において「リベラル派」とされてる人たちのことは本当は「新左翼」「ニューレフト」と呼ぶべきでしょう。従来の意味での新左翼は学生運動や成田闘争といったものに代表されるように、暴力的革命運動をする人々でした。ここに「言葉の暴力」という概念を持ち込むと、現代日本において「リベラル派」と呼ばれる人たちを新左翼と呼ぶのに値することに気づきます

彼らのネットの活動を見ていると「安倍のせい」どころか、「あべしね」というワードがちらほら出てきます。今の総理大臣安倍晋三氏に対して「死ね」という言葉を投げつけているわけです。暴言以外のなにものでもないでしょう。

「日本のリベラル」を「火炎瓶やゲバ棒を暴言に持ち替えた新左翼」と定義付けてしまえば、彼らはもはやリベラルではなくなります。スタンダードな意味での自由主義、中道左派を真のリベラルと呼ぶことができるでしょう。

いわゆる「アベノセイダーズ」は、「火炎瓶やゲバ棒を暴言に持ち替えた新左翼」もしくはそれに近いシンパであることが理解できます。

さて、私自身は安倍首相は保守的であると思います。それは、良くいわれる◯◯と、☓☓に賛成して、△△と□□に反対だから保守というような浅薄な見方による保守ということではありません。

言葉の本来の意味での保守ということです。それは、このブログにも以前掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。


金慶珠(キム・キョンジュ)東海大学教授
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事から真の保守について引用します。
保守派というと、自民党が保守で野党は革新などという人もいますが、ご存知のように、このような分類は今や無意味になりました。さらに、人によっては、このような主張をする人が保守で、あのような主張をする人が革新やリベラルなどという人もいます。 
しかし、このような考えは根本的に間違いだと思います。主義主張そのものは、保守であるかないかを明確に区分するものではありません。 
それよりも、世の中の仕組みをどうするかというときに、「ステップを踏むなんてもどかしい」と「ウルトラCに賭ける」のが急進派、革命派であり、「ウルトラCなんかない」から「ステップを踏んでいくしかない」と考えるのが(反動ではない正しい意味での)保守派であり、中庸派であるということです。
コマネチ、オリンピックで10点満点。機械のように、
正確に技をこなすところはある意味怖いくらいだった。
そうして、民主主義の根本理念はケント・ギルバート氏が語るように「是々非々」であることを忘れるべきではないのです。世の中の仕組みを変えるときに、極端に走らず「是々非々」の民主主義というステップを踏む中庸主義が、保守主義と言えるでしょう。 
そういうステップを踏まずに、「誰の主張か」で物事を判断して、事を進めようとする人はそもそも保守ではないのです。 
それは、結局のところ真の保守ではないのです。世の中には、本当は保守はではないにもかかわらず、あたかも保守であるように振る舞う偽装保守などといわれる人々もいますし、そうではないまでも、主義主張がいわゆる保守派といわれる人々に似ているので、自分を保守とする自称保守という人もいます。 
偽装保守、自称保守の見分け方は簡単です。一見保守のように振る舞いながらも、「誰の主張か」にもとづき物事を考え、変化や進歩に対応するのに、ステップを踏まずに一挙に「変革」を求めるようなことをする人です。特に、この変革に際しては、社会や現実をよく確かめもせずに「制度設計」等で性急に対応しようとします。 
私たちは、このようなことにならないように、頭を使うべきです。そうでないと、「安倍死ね」と語る人々と大差がなくなってしまいます。
いずれにしても、"アベノセイダーズ"的発言は、真のリベラルや真の保守からは起こらないのであり、これらを発言する人たちは、 「火炎瓶やゲバ棒を暴言に持ち替えた新左翼」と一部の「偽装保守」及びそれらのシンパということになると思います。

イデオロギーに固まった、これらの人たちから見れば、確かに安倍総理はヌエのような存在にしか見えないでしょう。しかし、安倍総理はマネジメントの大家ドラッカー氏のいうところの「改革の原理としての保守主義」を実践しているのだと思います。


これについて、ドラッカー氏は以下のように語っています。
保守主義とは、明日のために、すでに存在するものを基盤とし、すでに知られている方法を使い、自由で機能する社会をもつための必要条件に反しないかたちで具体的な問題を解決していくという原理である。これ以外の原理では、すべて目を覆う結果をもたらすこと必定である。 
ドラッカー名著集(10)『産業人の未来』
改革のためのドラッカーの方法論は、“保守主義”です。しかし、昔がよいとして昔を懐かしみ、昔に戻せという思想ではありません。

英語では、保守主義は、コンサーバティズムです。しかし、この英語にも、昔に戻せ、という保守反動的なニュアンスがあります。そこで、“活力ある保守主義”という言い方がされたりします。ドラッカーも、これには困り、あるときは“正統保守主義”と言い、あるときは米国と英国の“伝統としての保守主義”という言い方をします。

本当の意味での保守主義は、第1に、過去のためのものではありません。正統保守主義とは、「明日のため」のものです。あくまでも未来志向のものです。

正統保守主義とは、第2に、なんらかの青写真に沿って社会を形成しようとするものではありません。なんらかの万能薬を服さしめようとするものでもありません。

それは、ケース・バイ・ケースで問題を解いていこうとするものです。医学にしても、万能薬を求めているあいだは進歩しませんでした。風邪には風邪、腹痛には腹痛の治療を求めてから急速な進歩が見られくました。したがって、それは、「具体的な問題を解決していくものです」。

正統保守主義とは、第3に、手持ちの道具、役に立つことが実証ずみの道具を使って問題を解こうとするものです。理想的な道具を新たに発明しようとしても無理です。「それは、既に存在するものを基盤とし、既に知られているものを使うものです」。

かくしてドラッカーは、改革のための原理は、保守主義たるべしととし以下のように語っています。
第一に、過去は復活しえないことを認識することが必要である。第二に、青写真と万能薬をあきらめ、目前の問題に対する有効な解決策をみつけるという、控え目で地味な仕事に満足することを知ることが必要である。第三に、使えるものは既に手にしているものだけであることを知ることが必要である。 
『産業人の未来』
安倍総理はまさにドラッカーのいうところの、「改革の原理としての保守主義」を実践しているのです。たとえば、金融緩和策です。これは、ドラッカーのいうところの「既に手にしているもの」です。金融緩和策は新しいもてのではなく、昔からマクロ経済学でも教えられているように既に実証された使えるものです。

何のことはない、リベラルな正統保守主義者も成り立つということです。正統保守主義者によるリベラルな発言や行動も成り立つのです。そもそも、社会を本当に変革するのは、すでに手にしているものによってだけです。これは、イノベーションも同じです。唯一の例外は、まだ手にしていない技術などを開発しつつ進めた巨大ブロジェクトであるアポロ計画だけです。

このような正統保守主義を理解できない人たちが、"アベノセイダーズ"に堕落しているというのが真相なのです。

結局彼らは、過去のニューレフトと同じく、破壊することはできても、創造することはできないのです。


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