2016年9月9日金曜日

醜悪さ満載の杭州G20宣言 中国の問題を「世界的な課題」とはよく言うよ―【私の論評】世間知らずの馬鹿が馬鹿話をして、世界の笑いものに(゚д゚)!


G20首脳会合の閉幕後、記者の前で演説する習主席=5日、中国・杭州
写真はブログ管理人挿入 以下同じ
中国・杭州で20カ国・地域(G20)サミット(首脳会議)が開かれた。通常、サミット宣言というものは議長国(今回は中国)の官僚が中心になった作文の合作で、退屈きわまりない。杭州G20もそうだろうと思ったが違っていた。裏読みすれば、表現とはおよそかけ離れた醜悪な中身満載だ。

 サミットの出だしもそうだった。地元の中国共産党青年団が特別に作成したというソングで「(杭州の)最も魅力的な景色でさえ、あなたと出会う気持ちにはかなわない」と熱烈歓迎しながら、オバマ米大統領には出迎え用のタラップも用意しないなど前代未聞の非礼、という落差ぶりだ。

出迎用の赤絨毯のタラップが用意されていなかったため、専用機のタラップで降りるオバマ大統領
 くだんの宣言はどうか。

 まずは為替問題。「為替レートの過度の変動や無秩序な動き」を問題にしつつ「競争力のために為替レートを目標とはしない」とうたった。北京当局は人民元市場に介入しては、元売りを小刻みに低め誘導してきた。明らかに輸出てこ入れのためだが、頬かむりする。昨年8月に基準レートを大幅に切り下げた途端に巨額の資本逃避が起きた。北京は「無秩序な動き」を阻止するためには市場介入が必要だ、今のやり方が正しい、と言い張るのだろう。


 「IMF(国際通貨基金)の決定に従い“我々は”10月1日の人民元の特別引き出し権(SDR)構成通貨入りを歓迎する」とはよくぞ言った。人民元のSDR入りは、金融市場の自由化を条件にしているのだが、習近平政権のやることは逆だ。IMF加盟国から文句が出ないのは、欲に目のくらんだ西側金融資本を一本釣りして人民元決済や株式取引の権益を部分供与しているからだ。人民元が国際通貨になれば、戦略物資も軍事技術も北京が刷るカネで確保できる。南シナ海、尖閣諸島周辺など、武力を使って海洋進出を図る習主席はほくそ笑んでいるだろう。

 とりわけこっけいなのは、「不正な資金の流れの我々の経済への重大な悪影響を認識」「腐敗や不正な資金フローが経済成長などに及ぼす有害な影響を認識」「腐敗関係の捜査対象者及び財産回復に係る国際協力のための研究センターの中国における設立」。


 かのパナマ文書が暴露したように、習主席の親族を含め、中国の党幹部や企業こそ、タックスヘイブン(租税回避地)利用の大半を占める。習政権は汚職高官のリストを持って米国に逃亡した元党幹部の引き渡しをワシントンに求めているのだが、杭州合意を手にしてさらにワシントンに詰め寄るのだろう。ならば、せめて赤じゅうたんでオバマ大統領を歓迎すべきだった。研究センターをつくるなら、自身や周辺の党幹部一族の蓄財を調べて公開すればよい。

 「鉄鋼及びその他の産業における過剰生産能力が、共同の対応を必要とする世界的な課題であると認識」とは、よく言うよ。課題は世界ではなく中国にある。習政権は自身で解決できないなら、国際監視団の外圧のもとに5割を超える鉄鋼などの過剰設備を廃棄したらどうか。 (産経新聞特別記者・田村秀男)

【私の論評】世間知らずの馬鹿が馬鹿話をして、世界の笑いものに(゚д゚)!

中国をめぐる環境では本当に何も良いことはありません。それは、上の記事でも明らかですが、以下に若干これ以外に関して補足しておきます。

まずは、現在の世界経済をみると、一国の経済を伸ばすために、輸出を増やすことはもう有効ではなくなりました。

ちなみに、このあたりの数値を以下に掲載しておきます。これは2014年のものです。
●輸出依存度(GDP比)
韓国  :43.4%
ドイツ :33.6%
メキシコ:26.2%
中国  :24.5%
ロシア :24.4%

日本  :11.4%
アメリカ: 7.5%

●輸入依存度(GDP比)
韓国  :38.8%
ドイツ :28.0%
カナダ :24.6%

アメリカ:11.4%
日本  :10.8%

そうして、日本の対中依存度は下記の通り
対中輸出依存度(GDP比):2.79%
対中輸入依存度(GDP比):2.44%
中国の輸出依存度は、韓国程ではないですが、日本や米国と比較するとかなり高いほうです。そうして、これは経済を伸ばすとか、立て直すといった場合には障害になります。


なぜなら世界貿易総額は最近では伸びが少なく、2015年にはかなりのマイナスとなり、これからは急激に伸びることは考えられないからです。

日本貿易振興機構(ジェトロ)が先月9日発表した2016年版の世界貿易投資報告によると、2015年の世界貿易額(輸出ベース)は推計で前年比12・7%減の十六兆四千四百六十七億ドル(約千六百八十兆円)となり、6年ぶりに縮小に転じました。中国経済の不振が影響したほか、各国企業の現地生産進展も貿易が伸びにくくなったという背景があります。。

世界では、2015年以降に日本とオーストラリア、中国と韓国など十四件の自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)が発効したのですが、環太平洋連携協定(TPP)など大型のFTA発効が遅れていることも貿易停滞の一因となったようです。

国別では、中国は景気減速に加え、工業製品の内製化が進み輸入が18.4%減となりました。ジェトロの石毛博行理事長は「中国の供給力が上がっている」と指摘し、対中輸出が伸びない理由として中国の生産力増強を挙げました。

また日本の輸入は20・7%減、輸出は10・0%減でした。日米欧などの企業は需要がある海外現地での生産体制を既に築き上げており、自国からの輸出が増えにくい構図になっています。

分野別では、価格が下落した原油が45.5%減と大きく落ち込みました。ジェトロの担当者は「中国で製造業向けの生産用機械や部品の輸入が減っていることが大きい」と分析しました。

世界経済の約67%を占める主要22カ国・地域の16年一~3月期の輸出額は前年同期比8.4%減となり、低迷が続いています。

そうして、中国のような輸出の多い国は、輸出を大幅に伸ばすことはもう不可能なので、内需を拡大するのが経済政策の順当な手段であると考えられます。

さて、日本をはじめとする先進国の個人消費がGDPに占める割合は60%台です。アメリカは、この比率が他国と比較すると高くて、70%台です。これに比較すると、中国はなんと35%に過ぎません。韓国も低いですが、それでも50%台です。

ここに本来は中国の活路があるはずです。個人消費を50%台にでも高めれば、かなりの成長が期待できます。しかし、なぜか中国はこれに本気で取り組む姿勢にありません。

結局、個人消費を増すためには、個人にある程度収入や、資産がなければ不可能です。家局中国では、富裕層や高級官僚が金を握って離さないような仕組みになっているので、不可能なのです。

個人消費を増すためには、ある程度民主化、政治と経済の分離、法治国家化が必要不可欠なのですが、共産党一党独裁国家である中国においては、これが非常に困難なのです。

この体制が構築されないかぎり、中国においては日本をはじめとする、先進国に普通にみられる、中間層が活発な社会経済活動を行うこともできず、深みにはまるだけです。これに関しては、このブログでも何度か掲載してきたことですが、もう一つ中国の根本的な弱点があります。

アメリカの一番の強みは軍事力ではない
超大国といわれるアメリカの一番の強さは、軍事力でもなく、イノベーション力でもありません。それは、米国による世界の金融支配にあります。現在の世界の金融体制は、ブレトン・ウッズ体制に端を発しています。これは、第二次世界大戦末期の1944年にアメリカのブレトン・ウッズで連合国通貨金融会議が開かれ、国際通貨基金(IMF)や国際復興開発銀行(IBRD)の設立が決定されたものです。

当時、世界の金の80%近くがアメリカに集中しており、アメリカは膨大な金保有国でした。その金と交換できるドルを基軸通貨とし、他国の通貨価値をドルと連動させるという仕組みで、金・ドル本位制ともいわれます。

世界各国、特に先進国の中で、食料や資源を100%自給できている国は少ないです。中国の食料自給率は85%以下といわれており、アメリカから穀物を買えない事態になれば、13億の人民は飢餓に苦しむことになります。

だからこそ、中国はドル支配体制からの脱却を目指し、人民元の国際化を進めていました。IMFの特別引出権(SDR)の構成通貨入りも、そういった流れの中で推し進められたものです。人民元はSDR入りしましたが、ドル決済を禁じられてしまえば中国経済は破綻に追い込まれることになります。

資源を買うことができなければ、軍艦を出動させることもできなくなり、これまでの「中国は今後も発展していく」という幻想は根底から覆されることになります。そして、その段階においても対立が融和しない場合、アメリカは金融制裁をさらに強めることになるだけです。

いわゆるバブルマネーによって、中国経済は本来の実力以上に大きく見られきましたが、バブルが崩壊し、同時にアメリカが前述のような金融制裁を強めたら、どうなることでしょう。当然、一気にこれまでの体制が瓦解し、中国は奈落の底に落ちることになります。

アメリカの一番の強みは金融支配力
そうした構造をよくわかっているので、中国はアメリカのドル支配から抜け出そうとしてきたわけです。そうしてアジアインフラ投資銀行(AIIB)や新開発銀行(BRICS銀行)の創設を主導し、さまざまな二国間投資を推進することによって、アメリカに頼らない体制をつくりたがっています。

その動きを必死に否定しているのが日本やアメリカであり、同時にASEAN(東南アジア諸国連合)の各国も日米に連動するかたちで自国の権益を守ろうとしています。そうして、中国のこの動きは完璧に封鎖されたといっても良い状態にあります。日米が参加しなかったため、AIIBは頓挫状況です。

このようなことから、米中が軍事衝突したり中国がそれ以外でもとんでもない行動をしそれが米国が到底許容できないものであった場合には、米国はすぐさま金融制裁に打って出ることでょう。そうなれば、中国に軍配が上がる可能性は全くありません。米国にとっては中国のこうした動きなど、赤子の手をひねるように簡単に封殺できます。

軍事的には無論のこと、米国の金融制裁には中国は手も足も出ず、中国の現体制は崩壊することになります。

以上のようなことを知った上で、ブログ冒頭の記事を読み返すと、今回の中国杭G20サミットの共同宣言の中身は、 世間知らずの馬鹿が馬鹿話をして、世界の笑いものになったという代物であり、本当に醜悪な中身としか言いようがありません。どんなときでも、どんな内容でも、中国国内を優先するという態度は永遠に改まりそうにもありません。

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2016年9月8日木曜日

北方領土問題がプーチン来日で動く可能性は十分にある―【私の論評】ロシア経済の脆弱性は変わらず!今こそ交渉の進め時だ(゚д゚)!

北方領土問題がプーチン来日で動く可能性は十分にある

高橋洋一 [嘉悦大学教授]

G20の前にウラジオストクで行った日ロ首脳会談で、今年12月のプーチン大統領の来日が決まった
 北方領土問題の解決に
    決意を見せる安倍首相


あまり報道されていないが、安倍首相が北方領土問題の解決に向けて並々ならぬ決意を見せている。

ここ1週間の外交ウィークで、G20の前に、日ロ首脳会談を2日にウラジオストクで行った。大きな成果として、今年12月のプーチン大統領の来日が決まった。それは安倍首相の地元山口で、である。これは、G20での日中首脳会談の前に対中国戦略としてかなり有効だった。

もともと、安倍首相の悲願は、憲法改正と北方領土返還だ。ともに、祖父である岸信介以来の悲願である。大きな目標であり、国のあり方の基本を問うという政治家らしいものだ。

憲法改正については、衆参ともに憲法改正勢力は一応3分の2以上になった。もっとも、憲法のどこを改正するかは今後の話であり、それが決まらない以上、国民投票もありえない。まだ道半ばであるが、少しずつ前に進んでいる。

憲法改正事項では、維新が提示した地方分権、教育無償化、憲法裁判所が面白い。民進党の代表戦が今行われているが、その3人の候補はそれらの項目に政策としては前向きだ。それが憲法改正項目に直結するかどうかはわからないが、項目として提示されたとき、憲法改正マターでないというのは言いにくい。

憲法は国の基本を定める。政権が変わっても行われるべき政策を定めるものであり、政府に義務を課すものだ。例えば、教育無償化を憲法で定めたならば、たとえ財政事情が苦しくとも教育無償化を無視することはできなくなる。要するに、教育無償化を最優先させるような制度的な裏付けが憲法なのだ。

 60年間ほとんど進展してない北方領土問題
    ロシアと続いていた「異常な状態」


一方、北方領土はここ60年間、ほとんど進展してない。北方領土は、戦後のどさくさから、ソ連に違法占拠されたままだ。今から60年前の1956年日ソ共同宣言で法的な戦争状態を一応終結したが、まだ平和条約は締結できていない。これは、誰が考えても「異常な状態」だ。

その異常な状態は、北方領土問題があるからだ。領土問題は、いつでも解決困難であり、極論すれば戦争でしか解決しないのが世界の常識だ。その意味で、沖縄返還は世界史から見ても画期的な話だった。そのほかの例としては、戦争以外というと、英国による99年間の香港租借後の中国への返還、アメリカによるロシアからのアラスカ購入が有名な例だ。

北方領土も平和的な解決は困難な問題であるが、それを避けようとしないのは安倍首相の政治家としての信念であろう。現時点で、安倍首相以外にこうしたスケールが大きくタイムスパンが長い政治課題を掲げる政治家はいない。この点、自民党総裁の任期延長問題が今議論されているが、長期的な日本の課題を扱う政治家が安倍首相以外に存在しないことは、安倍首相の任期延長に有利に働くだろう。

 日本側が示した8項目の「協力プラン」に
 対応したロシア


今回の日ロ首脳会談の成果をまとめておこう。外務省のホームページを見れば詳細が掲載されている。こうした情報は、新聞などの2次情報ではなく公式な1次情報を見るようにしたい。

簡単にいえば、ソチでの首脳会談において提示した8項目の「協力プラン」を具体的に日本から示したということだ。8項目とは、(1)健康寿命の伸長,(2)快適・清潔で住みやすく,活動しやすい都市作り,(3)中小企業交流・協力の抜本的拡大,(4)エネルギー,(5)ロシアの産業多様化・生産性向上,(6)極東の産業振興・輸出基地化,(7)先端技術協力,(8)人的交流の抜本的拡大 である。

ロシア側としては、日本に投げたタマが返されたわけなので、話に乗っていかざるを得なくなったのだ。

この日本側の動きは、外務省ではなく、経産省主導になっている。過去、貿易摩擦が華やかだったころは、外交について、外務省と経産省で主導権争いをしていた。最近ではそうした動きはなくなり、第三者から見ると外務省主導で派手な立ち回りがなくつまらなかったが、国内で外務省と経産省が競うと、結果として国益にかなう結果が多くなるように感じる。筆者はいい意味で競争した方がいいと思っており、その観点から、今回の日ロ首脳会談は経産省が主導しているのは問題ない。

今回、「協力プラン」の責任者として、経産大臣でもある世耕氏が、ロシア経済分野協力担当大臣を兼任し、同大臣の下に全ての関係省庁を総理官邸が直轄する体制としたことも、経産主導を体制としてもはっきりさせている。

これに対してロシアがどう出てくるかは、今の段階では未知数である。外交交渉とはそういうものであるので、今後の交渉次第ともいえる。そこで、北方領土が返ってくるかといえば、60年間も進展のないものがそう簡単に動き出すはずはない。しかし、何とか一歩でも進めたいというのが安倍首相の信念である。

 ロシアの国内事情からいえば
    北方領土と経済協力はまったく別物

日本固有の領土である、国後、択捉、色丹、歯舞群島
図、写真はブログ管理人挿入、以下同じ。
 ロシアの国内事情からいえば、北方領土と経済協力はまったく別物だ。8項目の協力プランは、日本の優れた技術を各分野で提供しており中身はいいが、ロシアは北方領土と切り離して考えている。

あるロシア問題専門家によれば、ロシアにとって領土問題は解決済みであり、プーチン大統領は話し合う余地はあると匂わせているが、日本からの経済協力が欲しいので、日本を引っ張っているだけという。最終的には、北方領土を返さずに平和条約を締結して、経済協力だけを引き出すのがロシアの戦略という。なにしろ、ロシア国民の8割が北方領土返還に反対している。

領土問題は、過去の経緯が複雑でそれを丹念にたどると膨大な紙数を要する。それを省き、現状を簡単にいえば、以下の通りだ。

(1)日本は、4島一括返還が先で、その後平和条約を締結する。
(2)ロシアは、平和条約締結を先行させて、その後2島返還で決着させる。

ただし、日本側は1998年の橋本=エリツィンの川奈会談で、四島を日本領土と確定させれば、ロシアの施政権を認めるという譲歩もしている。

一方、ロシアは北方領土を実効支配し、現在1万8000人のロシア人が住んでいる。さらに、北方領土の軍事化も進めている。実効支配が長引けば長引くほど、領土返還は難しくなる。返還すれば、住民に対する莫大な補償問題にもなるという。つまり、年々、領土返還のハードルは高くなっているのだ。

 12月はアメリカ外交の空白時期
    北方領土問題が動く可能性は?


これらの状況から、北方領土返還は実際問題として難しいのは事実だが、プーチン大統領の訪日を12月に設定できたのは、今回の日ロ首脳会談の成果である。というのは、12月は次期アメリカ大統領の始動前で、アメリカ外交の空白時期でもあるのだ。このあたりはプーチン大統領も計算済みであり、あえて安倍首相の提案に乗ってきたわけだ。

この観点から、北方領土問題が今年12月に動く可能性は十分にある。ただし、ここで一気に解決というのではなく、日本は次の時代に向けた布石を打てるかどうかである。

領土問題は基本的には戦争でしか解決しない。ただし、各国とも政変の可能性は常にあり、そうした混乱時に戦争でなくても解決するかもしれない。

筆者は、かつてソ連崩壊時に北方領土解決のチャンスであると言ったことがある。そのとき、中国はロシアとの国境問題解決に動き出し、2004年に中露国境協定を結び領土問題を解決している。1998年の日本からの川奈提案もそうした動きに沿ったものだった。

12月のプーチン大統領の訪日で、解決(これは日本にとって完全解決ではなく一部解決)の可能性があるという根拠は、これまでプーチン大統領が中国、カザフスタン、アゼルバイジャンので領土問題を解決してきた実績があることだ。

ロシアは17ヵ国と国境を持っているので、領土問題の宝庫でもある。そのロシアのプーチン大統領の領土問題解決法は、「引き分け」である。プーチン大統領は柔道家でもあるので、「引き分け」と日本語でも言う。

 2島返還ならば可能性がある?
 プーチン大統領が狙う「引き分け」

確かに、プーチン大統領は、1956年日ソ共同宣言を踏襲するというので、2島返還に応じる可能性はある。

であれば、

(3)日ロ間で平和条約締結し2島返還+α(日ロ両国で満足するもの)

という「引き分け」はありえるところだ。

ただし、この「引き分け」はロシアの主張に近い。ロシアとしては、+αで経済協力があれば十分だろうが、日本としては+αで、ロシアからのエネルギー確保の他に、ロシアの体制や経済混乱などの場合に領土交渉できるような、将来への布石がないとまずいはずだ。

かつて、2001年イルクーツク首脳会談で、当時の森首相がプーチン大統領に2島先行返還で後の2島は継続協議という案を示したことがある。今回は、日本としてはエネルギー確保という長期メリットも加わっており、森提案でも、日本の国益はプラスというリアルな判断もあるのではないだろうか。何もせずに問題が固定化すると、将来の解決がますます困難になるので、少しでも前進させるというのは現実的な解決策だ。どう安倍首相が交渉するのか見物である。

【私の論評】ロシア経済の脆弱性は相変わらず!今こそ交渉の進め時だ(゚д゚)!

上の高橋洋一氏の記事では、珍しくロシア経済に関する論評がほとんどないので以下に、掲載することにします。

7月14日、IMF(国際通貨基金)はロシアの経済見通しを発表しました。

2016年のGDP(国内総生産)成長率は貸出条件の厳格化と実質所得の減少、さらに国内投資の低迷を背景にマイナス1.2%と依然マイナス成長ですが、前回見通しのマイナス1.5%からは上方修正されています。

さらに2017年については、金融緩和と国内需要の緩やかの回復を背景にプラス1.0%の成長を見込んでいます(図表1)。

しかも、この予測の前提となる原油価格(年平均)は2016年が42.2ドル、2017年が48.8ドルです。足許の原油価格の推移を見ると原油価格はこれらの予測値を上回って推移しており、GDP成長率もさらに上方修正される可能性もあります。

実際、7月初にロシア連邦統計局が発表した2016年第1四半期のGDP成長率は前年同期比マイナス1.2%と市場予想よりも下落率は小幅にとどまりました。


ロシア経済が「底打ち」した理由はまず第1に原油価格の反発です。

ブルームバーグによれば、ロシア産石油の今年の輸出量は過去最高となる勢いです。イランが欧州向け供給を増やす中、欧州市場をめぐる競争が激化しています。

ロシアエネルギー省のデータによると、1-6月の輸出量は前年同期比4.9%増の日量555万バレルとなりまし。6月単月では前年同月比1.14%増え日量1084万3000万バレル。2014年7月以来、毎月増加を続けています。

BMIリサーチの石油・ガス担当責任者、クリストファー・ヘインズ氏は、「生産が堅調に推移すれば、通年の輸出量は過去最高となる公算が大きい」とし、「これは競争が厳しくなることを意味します。とりわけイランが南欧諸国への石油輸出を増やしている」と説明しました。

石油輸出国機構(OPEC)はイランの参加が見込めないことなどを理由に、供給過剰の緩和に向けた措置を講じることができませんでした。これを受けてロシアは、4月に生産と供給の引き上げを示唆しました。1月の経済制裁解除後、イランは増産に素早く動き、欧州で顧客を再獲得しました。核開発問題でイランが2012年に欧州での原油販売を禁止された後、主に恩恵を受けたのはイラン産と性質が似るウラル原油を産出するロシアでした。

ノバク・エネルギー相は最近の見通しで、今年の石油輸出量が2億5200万トン(日量換算で505万バレル)になると見込んだのですが、現状はこれを超えるペースです。テクスレル第1次官は4月に最大2億5500万トンと予想しました。エネルギー省によると、これまでの最高は2007年に記録した2億5390万トン。さらにもう1つの理由を挙げるとすれば経済構造がルーブル安に適合し始めたことです。つまりルーブル安を有利に使い始めたことです。すなわち「輸入代替」の進展であり、この輸入代替の動きは農業と軽工業に顕著に見られます。

さらにロシア経済持ち直しまもう1つの理由を挙げるとすれば経済構造がルーブル安に適合し始めたことです。つまりルーブル安を有利に使い始めたことです。すなわち「輸入代替」の進展であり、この輸入代替の動きは農業と軽工業に顕著に見られます。

欧米による経済制裁の継続、ルーブル安、原油価格の下落を受けた非資源産業の育成ニーズを背景に、ロシア政府による工業分野での輸入代替政策が進展しています。公共調達分野における輸入と外国企業による役務・サービス提供を一部制限するとともに、「特別投資契約」という新たな投資促進措置を導入し、製造業の育成と生産振興に力を入れています。

これについては、詳細は、通商弘報をご覧になって下さい。

結局のところ、ロシア経済の持ち直しは、原油価格の反発と、「輸入代替」という名の輸入制限です。特定の物品の輸入を制限して、その代替のロシア製の物品を製造する企業などに投資をして、ロシア産品に変えるということです。

この「輸入代替」という手法は、我が国をはじめとする、自由主義経済圏の先進国では、やりたくてもなかなかできないことです。これは、政府のよる統制経済の一手法です。やはり、ロシアのような体制の国だからできることです。

しかし、このロシアの経済回復の中身をみてみると、決してまともな構造改革によるものではなく、一時しのぎに過ぎないことが良く理解できます。

もう一度、原油高に転ずれば、すべては帳消しになります。そうして、現在中国の経済がかなり低迷しかつ長期に続きそうなことから、当然のことながら、石油の需要量は減ります。やはり、このロシア経済の弱点は本来であれば、ロシアが何か国内で、別の産業を振興し、それを育成しなければ、いつまでも、いつ何時脅かされるかもしれない脆弱なものであることには変わりありません。

G20でのプーチン大統領
このような状況にあるにもかかわらず、プーチン大統領はG20で強気の発言をしています。

プーチン大統領は、中国・杭州での20カ国・地域(G20)首脳会議で、「ロシア経済は安定した」と述べ、また「財政赤字の削減に注力する」と表明しました。

また、石油・ガス輸出に対する依存の低減に取り組むと述べました。このほか、今後もロシアでの事業環境の改善を目指す方針を示しました。

原油価格の急落やウクライナをめぐる国際制裁を背景に、2015年のロシア国内総生産(GDP)は3.7%減となりました。

ロシア中央銀行のアナリストらは、第3・四半期と第4・四半期の経済成長率が前期比で低い伸びになるとの見通しを示している。

ロシア経済は、マイナス成長が予測され、金融政策も、現在のインフレ率(6.6%)
であることを考えると、金融緩和にも限界があり、あまり大規模な追加緩和をすると、ハイパーインフレになる可能性すらあります。

こんな時に、財政赤字の削減をするとはどういうことでしょうか。本来ならば、そもそも財政赤字などGDPの数%しかないのですから、本来ならもっと借金をしてでも、積極財政を実行して、経済を建てなおすべきです。

ロシアの経済の脆弱性はまだあります。それは、国家基金が底をつく危険です。それについては、このブログでも以前掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載います。
露の国家基金「2019年初めに底つく」 資源頼み、欧米制裁…プーチン政権さらに窮地―【私の論評】小国ロシアの底が見え始めた最近のプーチンが、軍事的存在感の増加に注力するわけ?

詳細はこの記事をご覧いただくものとして、以下に一部抜粋して掲載します。
2008年のリーマン・ショック時にロシア経済を下支えた、石油や天然ガスの税収を基盤とする露政府の基金が19年にも枯渇する見通しであることが明らかになった。財政赤字を補填(ほてん)するための基金からの支出に歯止めがかからないことが原因だが、資源収入頼みの経済政策の行き詰まりが背景にある。欧米の制裁で基金に要請が急増している企業支援も困難になる可能性があり、プーチン政権にも痛手となりそうだ。 
露政府は石油・ガスの採掘・輸出税収が潤沢な際にその一部を積み立てており、赤字補填に使う「予備基金」と、景気刺激策に利用する「国民福祉基金」の2つの国家基金を抱えている。ロシアはリーマン・ショックの直撃で09年には経済成長率がマイナス7.9%に落ち込んだが、その後政府が実施した巨額の景気対策の原資となったのが、これらの基金だ。 
しかし露中央銀行がこのほど発表したリポートによると、政府は15年1~10月に赤字の埋め合わせに予備基金から1兆5600億ルーブル(約2兆4400億円)を使い、16年にはさらに2兆1370億ルーブルを使うと予測。このペースで支出を続ければ、17年には国民福祉基金も赤字補填が必要となり、「19年初めには両者が底をつく」と指摘した。
無論この予測は、昨年のような経済状況がこれからも続けば、国家基金が19年で底をつくということなのでしょうが、それにしてもこれからも、原油安がまたぶり返せば、同じことで、やはりロシア経済は外的要因に左右される脆弱なものであり、今回たまたま息を吹かえしかけているというだけであり脆弱な基盤の上に立っていることは間違いありません。

この脆弱な基盤を抜本的に改めるには、やはりソチでの首脳会談において日本が提示した8項目の「協力プラン」のうち、"(5)ロシアの産業多様化・生産性向上"は、喫緊のが課題でしょう。やはり、ロシアは、資源一辺倒の産業構造から、日本などのように産業の多様化を目指さなければなりません。しかし、これは、長期的な課題です。短期的には、日本からのエネルギーの大量購入や、経済支援が重要な意味を持ちます。

ご存知のように、ロシアは米英から経済制裁を受けています。日本は、制裁をしているとはいいながら、G7の中では最も甘い制裁しかしていません。ロシアの経済援助に対応できるとすれば、現在は日本と中国くらないなものでしょうが、ロシアと中国は表面上とは異なり、実は犬猿の中です。

ロシアは、世界で一番中国と長く国境を接している国です。さらに、最近では国境を越境してロシア領内で商売をしたり、居住する中国人が増え、国境溶解などとも呼ばれいます。

今や、中国のほうがロシアよりも圧倒的にGDPは大きいですし、人口はロシアが一億四千万人(日本よ若干多い程度)、中国は13億人以上です。今のところ、軍事力においてロシアがかなり優っていますから、国境紛争などが起こったにしても、ロシアが圧倒的に強いですが、これからはどうなるかはわかりません。

ロシアにとって、中国は潜在的にも顕在的にも脅威なのです。しかし、日本がロシアにとって、脅威になるということは考えにくいです。それに、中国は現在では景気が低迷し、当面復活する見込みはありません。

7月26日夜、エネルギッシュな音楽とともに、10人ほどのロシア人美女たちが集まり、
南京でビキニパレードを行った。このパフォーマンスで水遊びで暑気払いをしていた
市民たちの気分を大いに盛り上げた。中国新聞網が伝えた。
そうなると、プーチンとしては、日本の経済援助などに頼りたくなるのも無理からぬ話です。というより、日本のGDPはロシアなどと比較すれば、桁違いに大きいですし、先日も示したように、日本の財政再建は今年中で終わりそうです。プーチンにとっては日本の援助は垂涎の的のはずです。このあたりを日本側は、良く理解すべきです。現在のロシアは、現状を維持できるか、あるいは一昔前のソ連のように経済が疲弊して、国民に途端の苦しみを強いて何とかやりすごすことしかできなくなるかのいずれかを選択するしか道はありません。

日本が、直近でロシアに短期的には経済援助や、エネルギーの輸入などをして、さらに長期的にロシア経済の構造転換に力貸すことを約束すれば、ロシア経済が立ち直る可能性は高まります。米国やEUは経済制裁を実施している最中なのでそのようなことはできません。

そうなると、日本がロシアの頼みの綱ということになるわけです。これを背景として、ロシアと北方領土の交渉をすれば、かなり有利にできます。

まさに、今が交渉の時です。安倍政権には、四島一括変換か、少なくとも将来に四島変換に含みを持たせた、2島変換に成功していただきたいものです。

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2016年9月7日水曜日

NY地下鉄に川重応札へ 安値攻勢の中国大手車両メーカーも関心 “日中対決”か―【私の論評】本当に世界中で失敗続きの中国の車両が検討されるのか?

NY地下鉄に川重応札へ 安値攻勢の中国大手車両メーカーも関心 “日中対決”か

川崎重工米国現地法人カワサキモータース・マニュファクチャリング・
コープUSA社の車両工場(ネブラスカ州リンカーン市)
川崎重工業が、米ニューヨークの地下鉄が導入する新型車両の製造を目指し、発注先を決める入札に参加する方針を固めたことが7日、明らかになった。安値で攻勢を強める中国の大手鉄道車両メーカーも応札に関心を示しており、日中対決となる可能性がある。

発注は最大1545両で、早ければ来年半ばにも受注メーカーが決まる見込み。川重によると、同社はニューヨーク地下鉄の保有車両のメーカーでシェア最大。技術力を武器にさらなる受注を目指す。

ニューヨークの地下鉄は朝夕のラッシュ時の遅れが深刻で、ニューヨーク市交通局は乗降しやすいように客室の扉を広くした新型車両「R211」を入れ、老朽車両と置き換える。

車内では利用者が自分のスマートフォンでインターネットを楽しめるようにWi-Fi(ワイファイ)を提供し、充電もできるようにするなど快適性も高める。川重以外にも、中国の中国中車、カナダのボンバルディアなどが応札に関心を示している。

【私の論評】本当に世界中で失敗続きの中国の車両が検討されるのか?

ブログ冒頭の記事を読んだとき、最初に頭に浮かんだのにが、中国の鉄道事業が世界中で大失敗しているという事実です。それについては、このブログにも掲載したことがあります。その記事の、リンクを以下に掲載します。
【ビジネス解読】中国製車両が海外で初の大規模リコール シンガポール都市鉄道が故障だらけ 鉄道受注合戦さらに暗雲―【私の論評】中国高速鉄道には元々安全性に問題!導入すれば大惨事を招くだけ(゚д゚)!
廃墟のようになったベネズエラ・サラサの高速鉄道関連工場
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、とにかく中国の高速鉄道の導入は、世界中で失敗しています。

具体的には、インドネシア、ベネズエラ、タイ、米国で失敗しています。このうち、インドネシア以外は、中国の高速鉄道の導入は事実上白紙状態になっています。インドネシアも、今後の展開ではどうなるのかわかりません。

高速鉄道がこの有様ですから、私には、地下鉄も中国には無理ではないかと考えてしまいます。

そもそも、中国には鉄道に関する高い技術はありません。ただし、高速鉄道ということになれば、ほとんどの国に導入経験がないので、線路から駅から、車両から安全システムから何もかも、既存の鉄道とは異なるので、導入するには莫大な経費と時間がかかります。

しかし、今回の地下鉄の場合は、地下鉄システムを全部導入するというわけではなく、新型車両の発注だけです。これなら、何とか中国もできるのかもしれません。

それにしても、中国は高速鉄道を含めて鉄道の事故がかなり多いです。地下鉄の事故もかなりです。

2010年7月浙江省で起きた高速鉄道の大事故
2010年7月に浙江省で起きた高速鉄道の大事故については記憶にとどめている方も多いかもしれません。それからたった2ヶ月後の9月27日は上海の地下鉄で大規模な衝突事故が起きました。この事故では、死者こそ報告されていませんでしたが、日本人2人を含む270以上の乗客が負傷しました。

当時この事故後、ろくすっぽ原因の調査もせず、まともな安全確認も行わないまま、わずか4時間後に運転再開したというのですから、浙江省の高速鉄道のときと同じく、鉄道当局はこの種の事故にいかに鈍感かを示した形になりました。

これには中国人自身も怒っていました。中国版SNS微博には、上海の鉄道当局の無神経振りを非難する書き込みが氾濫していました。

浙江省の高速鉄道事故の基本的な原因は信号システムの不備にあったのと同様、この上海の地下鉄事故もやはり信号システムの不備が原因していたようです。もし、信号システムが機能しない状態では、列車が衝突するのは当たり前といえば当たり前でした。

事故のあった上海の地下鉄10号線は2010年4月に開業しました。その時点ではまだ、信号システムが完成していなかった可能性があったそうです。この地下鉄は、未完成な信号システムで1年以上も運行していたのです。いつ事故が起きてもおかしくなかったということでした。というより、これまで事故が起きなかったことのほうが不思議だったということでした。

上海地下鉄事故直後の駅周辺の様子
日本でも、地下鉄事故はあったこともありましたが、それにしても、中国のような杜撰なやり方で発生したわけではありません。また、事故後の対応も中国のような杜撰なことはしていません。

以上のようなことを考えると、いずれの国にせよ、中国の地下鉄を導入するなど安全性の面からいってかなり問題があります。中国の車両など導入すれば、結局のところ安物買いの銭失いということになるのではないでしょうか。

中国では、地下鉄や高速鉄道などの人身事故がおこっても、賠償は日本や他の先進国と比較すれば、雀の涙であり、安全性がないがしろにされるのも無理もありません。しかし、米国などでは、一度事故がおこってしまったら、大変なことになります。特に、人身事故の場合は、会社の存続さえ危ぶまれるような事態になりかねません。

もともと、このようなことに対する意識の低い中国では、製造物責任もあいまいです。もし、車両に問題があったにしても、日本のような先進国による対応とは雲泥の差であると思います。

川重には是非受注していただきたいものです。そうして、川重には実績があります。たとえば、同社が2005年から06年にかけて受注したニューヨーク・ニュージャージー港湾局ハドソン横断公社向け地下鉄電車「PA-5」、メトロノース鉄道向け通勤電車「M-8」の同時製造に加え、米国で見込まれている高速鉄道プロジェクト、既存車両の置き換えや輸送力増強に関するプロジェクトなどの鉄道車両の需要増に対応するために、2011年には、製造能力を増強のために、米国現地法人カワサキモータース・マニュファクチャリング・コープUSA社の車両工場(ネブラスカ州リンカーン市)で拡張工事をしました。

いずれにしても、いずれの国であろうと、中国の車両など導入するべきではないです。もし、ニューヨークが中国の地下鉄車両を導入すれば、恐ろしくて、ニューヨークに行っても不便です。

こんなことをいうと、神経質なことをという人もいるかもしれませんが、そのような人には大連の事例をあげておきたいです。

交通状況が年々悪化する中国大連で待望の地下鉄が昨年5月22日から試営業を開始してから1か月が経過していました。中国は、毎年のように、各地で地下鉄が開業しており、遼寧省では瀋陽に次ぐ2番目の開通となりました。中国では、都市の規模や人口によって地下鉄建設が認可されるため、どこにでも地下鉄を作れるわけではありません。いわば、中国の地下鉄は選ばれた大都市の証とも言える存在なのです。

大連地鉄(大連地下鉄)は、2010年3月から建設が始まり、幾度も開通延期を繰り返しながらようやく開通へこぎつけたので、さぞかし、賑わっているかと思えば、地上を走るバスがすし詰め状態の通勤時間でも、立っている人がちらほら見かける程度と蟻の這い出る隙もないバスと比べるとガラガラと言える状態が続いていました。

開業二日目の大連の地下鉄車両内部
それは、なぜかと聞いてみると、大連市内の米系IT企業へ勤務する20代の中国人女性「地下鉄を怖がって私も含めて同僚も誰も乗っていません」と答えてくれました。

そう、中国人は地下鉄を怖いと感じているようなのです。さらに聞いてみると、「自国の技術をあまり信用していないこともありますし、大連の地盤はもろく地下鉄にも不向きだと言われていますから、私も1年くらいは事故がないことを確認してから乗ります」

では地下そのものが怖いのかと思えば、地下が怖いわけでないようです。たとえば、大連最大のショッピングゾーンは、大連駅前にある勝利広場という元防空壕を再利用した地下3階まで広がる巨大エリアがあり、年中活気があるくらいなので、地下だから怖がっているといわけではないようです。

ただ、私も何度か建設中の地下鉄落盤事故のニュースを耳にしています。それらの事故の否定的なイメージが頭から離れないのかもしれないです。

当の自国民ですら、危険視する中国の地下鉄です。このような国の地下鉄車両を導入の検討をするなどということは考えられません。まあ、応札した場合、無下にもできないでしょうから、一応は検討するものの、最初から本気で導入するつもりなどないでしょう。

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2016年9月6日火曜日

40、50万人との推定もある二重国籍の実態 「偽装日本人」に深刻リスク―【私の論評】蓮舫の二重国籍問題を契機に、これを放置するのはやめるべき(゚д゚)!

40、50万人との推定もある二重国籍の実態 「偽装日本人」に深刻リスク


実際の二重国籍者の2つのパスポート。ただし、この2つの
所持者はまだ未成年であるため、日本・韓国ともに合法である。
日本国民の要件を定めた「国籍法」が、ないがしろにされている。「二重国籍者」や「偽装日本人」が増えており、国家や社会、組織を静かにむしばみかねないのだ。民進党代表選で蓮舫代表代行(48)の「国籍」問題が注目されているが、二重国籍者は40万~50万人はいるという推定もある。国益をめぐり他国と激しい競争が続くなか、このような状況を放置していいのか。国籍業務や入管業務に精通する、さくら共同法律事務所の山脇康嗣(こうじ)弁護士が激白した。

「日本の国籍法は二重国籍を認めていない。二重国籍になった場合は、一定期間内にどちらかの国籍を選択しなければならない。また、自ら志望して外国籍を取得した場合は、日本国籍を喪失する。にもかかわらず、二重国籍の人々は年々増加の一途をたどっている。国籍法の形骸化は由々しき問題だ」

山脇弁護士はこう言い切った。東京入国管理局長承認入国在留審査関係申請取次行政書士を経て、弁護士登録した。『入管法判例分析』(日本加除出版)などの著書もある、国籍・入管業務のスペシャリストだ。

そもそも、「二重国籍」とは、どのようにして生まれるのか。

出生による国籍取得の考え方には、どこで生まれたかを基準にする「出生地主義」と、誰の子かを基準にする「血統主義」の2通りがある。前者の代表は米国やカナダで、後者の代表は日本やドイツだ。

「日本人夫婦に米国内で子供が誕生した場合、その子供には米国籍も与えられる。また、日本人とドイツ人の男女に子供が生まれたら、子供は両国の国籍を持つことになる。さらに、イランやアフガニスタン、サウジアラビアの男性と日本人女性が結婚すると、男性の国籍を自動的に与えられる」

日本の国籍法では、二重国籍になった場合、一定期間内にどちらかの国籍を選ばなければならない。期限までに国籍を選択しない場合は、法相が書面による催告をしてから1カ月以内に日本国籍を選択しなければ「日本国籍を剥奪できる」と規定している。

ところが、この規定が守られていないという。つまり、いつまでも国籍を選択しない者が多いにもかかわらず、法相による催告・国籍剥奪は、一度たりとも行使されたことがない。

山脇弁護士は「二重国籍者は推定で40万~50万人いるとみられる。しかも、年々増加傾向にある。当然だが、出生などにより人が二重国籍となったこと自体は何ら責められるべきものではない。しかし、国家の制度として二重国籍を容認することには問題がある」と語る。

では、二重国籍を認めることの何が問題なのか。

まず、複数のパスポートを持てるため、犯罪や脱税などに悪用することも可能だ。日本と、日本と利害が対立する国で選挙権を持つ二重国籍者の場合、日本の利益ではなく、もう1つの国の利益のために日本で投票をすることが可能になる。本来、選挙権は、日本と運命をともにする者にのみ与えられるべきものだ。
「二重国籍者が海外でテロに巻き込まれた場合、日本と、もう1つの国のどちらも『自国民』という扱いになるため、どちらが救出するのかという、外交上の問題になりかねない」

意図的に二重国籍を装う、「偽装日本人」の問題も深刻だ。

山脇弁護士によると、偽装日本人とは、自ら志望して外国籍を取得し、すでに日本国籍を失っているのに、それをあえて届け出ていない“元日本人”のことである。正式な統計はないが、相当数存在すると推測されるという。

「日本人が志望して他国に帰化したり市民権を取得した場合、自動的に日本国籍を喪失する。戸籍法に基づき『喪失届』を提出しなければならないが、意図的に黙っているケースがある。他国の大半は『日本人の誰々が、わが国に帰化した』と日本に報告しないためだ。日本国籍がないのに、あるように見せかけている“偽装日本人”を把握するのは、かなり難しい」

偽装日本人によって、国益が損なわれることも考えられる。

「外国籍を取得した場合、日本名とは別の名前を持つことになる。別の名前で租税回避地に口座を作ってマネーロンダリングを行うことができる。複数のパスポートを持つことで、スパイ活動なども容易になる。考えたくないが、悪意を持って他国に帰化したテロリストが日本でテロを起こす恐れも否定しきれない」

国籍法とは、日本人が日本人であるための要件を規定した、国家の根幹をなす法律だ。そのルールを故意に破るような人間が増えれば、国家や社会、組織に不正・腐敗が広がりかねない。放置されていいわけがない。

【私の論評】蓮舫の二重国籍問題を契機に、これを放置するのはやめるべき(゚д゚)!


民進党の蓮舫代表代行は本日、高松市での記者会見で、日本国籍と台湾籍のいわゆる「二重国籍」疑惑について、「いまなお確認が取れない」と述べ、本日台湾当局に対し、現在も台湾籍があるか確認手続きを取り、同時に台湾籍を放棄する書類を提出したことを明らかにしました。台湾籍が残っていた可能性は完全に否定しきれなくなり、出馬した党代表選(15日投開票)にも大きな影響を与えそうです。 

蓮舫氏は会見で「昭和60年1月21日に日本国籍を取得し、合わせて台湾籍を放棄を宣言した」と説明しました。手続きは、台湾の大使館的な役割を担う台北駐日経済文化代表処(東京都港区)で台湾人の父と行ったといいます。ただ、「(台湾当局者と)台湾語でやりとりが行われ、どういう作業が行われたのかまったく覚えていない」としています。 

蓮舫氏は当時17歳。台湾の「国籍法」11条によれば、自己の意志で国籍を喪失できる条件を「満20歳」と規定しており、この時点では台湾籍を除籍できなかった可能性があります。

蓮舫氏の関係者は本日、台北駐日経済文化代表処を訪れ、台湾籍が残っているか確認を求めました。同日に除籍を申請したのは、今でも台湾籍が残っているか確証が持てないための措置とみられます。

蓮舫氏は、意図してかどうかまではわかりませんが、事実上偽装日本人だった可能性が濃厚になってきました。

偽装日本人は、日本に不法滞在する外国人でありながら、日本の主権者であると偽って、日本の選挙にも不正投票しています。そのほかスパイ活動も容易です。もちろん、これらは旅券法違反・入管法違反などの重罪です。しかし、ほとんどまったく摘発されていません。

偽装日本人が増えれば、最終的に日本人の名誉が傷つけられることにもなりかねない
もっとも、捜査機関がまったく見抜けないわけではありません。偽装日本人は、日本の出入国審査において、出入国の履歴に連続性のない日本パスポート(旅券)を使用していることが通常です。

すなわち偽装日本人は、日本の入国審査においては、日本人であると装うために日本パスポートを使用します。しかし、その直前の外国の空港からの出国の際には、外国パスポートを使用しています。そのため、日本のパスポートには出国印が押されていません。したがって、偽装日本人が所持するパスポートは、出国印と入国印が連続していません。

そのような者について、出入国履歴や在留履歴、海外にある日本国大使館が把握する情報を精査すれば、パスポート使用形態の変遷などから、法令違反の端緒を発見することもできるはずです。

パスート・リーダー。これにICパスポートを置くと、一瞬で
ICチップの内容を読み取り、端末の画面で解析判定をする

平成18年から、パスホーとにはICチップが埋め込まれていて、入国審査官の手元に有る画面端末にはホストコンピューターが接続されており 本人の撮影画面からICチップの顔写真と画像一致解析判定もしますし、個人情報から過去のオバーステーや入出国記録情報の照会をします。

現在パスポートの読み取りではパスポート番号などは重要ではありません。生年月日、氏名スペリング、国籍から過去の入国者との名寄せ照合をしますので古いパスポートから改名し無い限り名寄せで一発で過去記録がすべて引き出されます。解明したとしても、苗字、名前ともに変えなければ、同一人物とみなされます。

このようなシステムを海外にある日本国大使館が把握する情報とも有機的かつ体系的に結びつけて使えば、比較的容易に二重国籍者の探索も可能であると考えられます。

このようなことを前から実施していていれば、今回の蓮舫氏の疑惑など生じなかったかもしれません。ところで、蓮舫氏が台湾籍を放棄していない時期に、国会議員となっていたとしたら、これは大問題になります。

衆議院議員の条件は、日本国民で満25歳以上であること、参議院議員は、やはり日本国民で満30歳以上であることです。

基本的に、この条件を満たせば、国会議員になることのできる権利「被選挙権」を手にできます。その他、供託金を払わないと立候補ができないということはあります。この供託金とは、法務局に一時的に預けるお金で、選挙で一定の得票数を得られなかった場合、没収されます。

供託金は選挙の種類によって異なり、衆議院小選挙区選出議員、参議院選挙区選出議員では、それぞれ300万円、衆議院比例代表、参議院比例代表ではそれぞれ600万円になります。

なお、衆議院小選挙区と衆議院比例代表に重複立候補する場合は、供託金は小選挙区で300万円と比例代表で300万円になります。

供託金を払う財力もしくは、借りる力があれば、日本人であれば、誰でも立候補できるわけです。

しかし、日本人であるとは、どういう意味なのでしょうか、日本国籍を有する者のことでしょうか。もしそうだとすれば、蓮舫氏がたとえ台湾籍を有していた時期に国会議員になっていたとしても問題はなさそうにもみえます。

しかし、二重国籍は重大な法律違反です。このようなことを、意図して行ったとしても、意図せず不注意でそうなってしまったにしても、由々しい大問題です。蓮舫氏の場合、たとえ、蓮舫氏の記憶違いなどで、実際には国会議員になった頃には、台湾籍が破棄されていたとしても、そもそも記憶自体が曖昧で、証明書など証拠物件をすぐに提出するなどのことができない事自体が、我が国の国会議員として、国籍法を蔑ろにしているということで大問題だと思います。

一応本人は否定をしていますが、言っていることが矛盾だらけで信頼がおけず、かつ証拠も提示していません。それにもかかわらず民進党としても、また蓮舫議員としてもこの問題に関してはっきりとした説明をせずにうやむやにしてこのまま代表選になし崩し的に突入しようとしています。

民進党の中では保守派の議員として知られる長島昭久氏も「日本国籍取得したんだから、二重国籍に目くじらたてなくても別にいいじゃないか」というようなことを言っています。しかし、この理屈が通るなら中国政府が13億人超の人口のうち数千万人を中国籍を残したまま日本に帰化させて日本をいとも簡単に乗っ取ることができことになります。長島氏の発言はとても民主党随一の安全保障の専門家の言う言葉とは信じられません。

それに蓮舫氏が台湾籍から離脱して日本国籍に一本化することは、100%自らの意思と責任でできることなのですから、仮に蓮舫氏が未だ二重国籍だとしたら、100%本人の責任・選択によるものです。庇うにも庇いようがないはずです。蓮舫氏が一国民であれば、重大法令違反ではあっても、後からでも改めれば、それですむかもしれません。しかし、最大野党の代表という日本の首相になることもありえる立場を目指すのですから、日本国籍に一本化するのは当然のことです。

なにしろ、我が国国民のほとんどは日本国籍しか持っていないません。我が国は移民の国でもなければEUのような文化的共同体に所属しているわけではない島国なのです。二重国籍を明確に否定する法令のある国です。この問題は国籍差別とか女性差別等とは全く異次元の問題であって、国民の代表を目指すなら日本国民と同じ土俵に立てというだけのことです。

世界的には二重国籍を容認する潮流であるともいわれます。国籍の異なる両親から生まれた子が2つの国籍を持つことは、2つの言語、歴史、文化、生活習慣の中で成長する彼らにとって当然の帰結なのだから、二重国籍を容認すべきという意見は根強いです。

しかし、だからといって我が国の根幹法規というべき国籍法が形骸化し、偽装日本人による日本パスポートの不正取得、不法入国、不正投票などが蔓延している状況や、今回の蓮舫氏の二重国籍疑惑を放置して良いわけがありません。

国籍のあり方についての国民的議論、そしてそれを踏まえた国会での検討が早急にすべきです。蓮舫氏以外の議員にもこの問題がないかどうか至急調査すべきですし、問題のある議員が出てきた場合、そうして蓮舫議員にも問題があればこれも含めて厳正な措置をとるべきです。

特定秘密保護法で公務員の身辺調査をするのですから、政治家の身辺調査も当然のことながら実施すべきです。配偶者、親族に外国人がいる、いないの調査を実施すべきです。政治家本人の帰化の有無。政治家の親族に外国人、または帰化者がいないかの公表もすべきです。政治家等の帰化基準が反日勢力に甘すぎるから、蓮舫氏の二重国籍問題が起こるのです。

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2016年9月5日月曜日

実質賃金6カ月連続プラス 7月、2.0%増 ―【私の論評】「実質賃金が〜」と喚いた輩は雇用に無頓着な愚か者(゚д゚)!



 厚生労働省が5日発表した7月の毎月勤労統計調査(速報値、従業員5人以上)によると、物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月比2.0%増加した。伸び率は6月の確報値と同じで、6カ月連続で前年を上回った。ボーナスの増加などで名目賃金が増えたほか、消費者物価指数(CPI)の下落傾向が実質賃金を押し上げている。

 名目にあたる従業員1人当たりの現金給与総額は37万3808円と、前年同月比1.4%増加した。名目の給与総額のうち、基本給にあたる所定内給与は0.4%増の24万1518円。ボーナスや通勤費にあたる「特別に支払われた給与」は4.2%増の11万3150円だった。

 実質賃金の増加は給与の伸びが物価の伸びを上回っていることを示す。7月のCPI(持ち家の帰属家賃を除く総合)は前年同月比0.5%下落し、実質賃金の伸び幅が名目より大きくなった。実質賃金は6年ぶりに2カ月連続で2%台となった。ただ所定内給与の伸びは依然小幅で、物価下落の影響も大きいことから、所得環境の改善が続くかどうかは見通せない状況だ。

【私の論評】「実質賃金が〜」と喚いた輩は雇用に無頓着な愚か者(゚д゚)!

ここしばらく、「実質賃金が~」と叫ぶ人があまりいないと思ったら、7月は、年間は前年同月比で2%増であり、しかも過去6ヶ月韓連続のプラスということで、これでは「実質賃金が〜」と叫びようもないわけで、だから最近あまり聞かれなくなったのだと合点がいきました。

これも完璧に、金融緩和の成果であるということです。そういわれてみれば、民進党も「実質賃金が〜」と表だって声を上げることもなくなりました。

民主党政権時代と比較してほとんどの経済指標がよくなっているが、唯一と言っていい例外が実質賃金でした。そもそもデフレ脱却過程では実質賃金が下がるのは当然だし、消費増税があったからなおさらのことなのですが、民進党にはそれが全く理解できないようです。
半年前までは、実質賃金の低下が民進党の心のよりどころだったのだが・・・・・?

いずれにしても、現在でも実質賃金が上昇したとはいいながら、まだ弱含みで、今後また下がるようなことがあれば、民進党は「実質賃金が〜」と金切り声を上げることでしょう。しかし、過去において実質賃金が下がっていたのにはそれなりの理由があります。

まず実質賃金と、名目賃金の違いについて掲載しておきます。

「名目賃金」は、私たちが手にする賃金のナマの金額を現した数値でとても私たちの実感に近い賃金に関する数値です。

次に、「実質賃金指数」は先ほどの「名目賃金」から物価の上がり下がりを計算して影響した分を取り除いた数値になります。

物価が上がるとその影響分が「名目賃金」から差し引かれますので、実質賃金は下がる傾向に、また物価が下がっているときは賃金指数に低下分の影響が上乗せされますので上がる傾向になります。もう、これだけで、過去においては「実質賃金」が下がっていた理由はおわかりになると思います。

他にも実質賃金が下がる合理的な理由はあるのですが、結果として半年前くらいまでは実質賃金の数値が民主党政権時代より全般に低くかったことはは間違いありません。この数値だけが民主党政権時と比較して低下していました。そのためでしょうか、彼らはいつまでもこれにすがるしかなかったのですが、それすらもここ半年は、良くなっているので、民進党もこれにすがり続けるわけにはいかなくなりました。

そのせいでしょうか、民進党の代表戦では「実質賃金」などの雇用を政策論争にあげる候補は一人もいませんでした。そうして、全員増税賛成ということで、まるで財務省のスポークスマンのような有様です。

下のグラフは昨年11月の国会で民主党が使ったパネルです。いまだにツイッターのタイムラインにこれが表れてくることがあります。


変化を強調したグラフになっているからでしょうか、これを見た有権者の中には「民主党政権は実質賃金の面では頑張っていた」などと勘違いをする人が結構いました。だから、岡田代表はつい最近まで「実質賃金が〜」と喚いていました。

デフレ脱却とはインフレになることだから、物価が上がり、その分だけ実質賃金が下がります。所費税を上げればその分だけ一気に下がります。それは当たり前のことですが、人によっては、なぜ実質賃金を下げる結果になるインフレにわざわざする必要があるのか疑問に思うことでしょう。

さらに、安倍政権になって実質賃金を下げる要因になった物価以外の大きな要因が雇用者数の増加です。景気回復に伴いパートやアルバイトが増え定年退職者の再就職が増え、賃金の平均値を引き下げたのです。

実際、安倍政権下では一般労働者、パートタイム労働者ともに名目賃金は増えているのに、それを加重平均した全体では減少していました。


一般労働者の詳細な内訳データがあれば、賃金の高い人が退職して新人やパート・アルバイトが増えたことによる影響などもわかるはずです。しかし、このような分析は政策に反映するには有効かもしれないが、誤解している有権者に説明するのは困難だったかもしれません。

やはり、安倍総理が国会などで繰り返し説明していたように、「景気回復で雇用者数は増えている」「その結果、雇用者全体の賃金の総額である『雇用者報酬』は増えている」と言う方が分かりやすいです。それをグラフにしたのが下です。




経済無策の民主党政権がアベノミクスの安倍政権に代わってから雇用者数が増え、その結果、国民の雇用者所得は名目でも実質でも増加しました。これを考えれば、パートや定年後の再就職などが増えて平均値である実質賃金が下がったことは理解しやすいです。

これは、何も国単位で考えなくても、ある程度大きな企業のことを考えればおのずと理解できます。

皆さんが、ある程度大きな企業に勤めていると想像してみてください。そうして、景気が良くなって、会社が業容拡大のために、新人やパート・アルバイトを大量に雇ったとします。そうなると、平均賃金はどうなるでしょう。業績が拡大した場合、個々の従業員の賃金も上げるということも考えられますが、そこまでいかず、賃金の低いパート・アルバイトの数が増えた場合どうなるでしょう。そうして、さらに物価が上昇しているとしたら、当然のことながら実質賃金の平均は下がることになります。

逆に景気が悪くなって、会社の業容が縮小している場合はどうなるでしょうか。まずは、パート・アルバイトの新規採用は避けます。新人もあまり雇用しないようにします。業績があまりにも悪化すれば、社員の賃金を全体的に下げることになるので、一概にはいえませんが、業績がそこまで悪化せず、賃金水準はそのままで、賃金の低い新人や、パート・アルバイトが減れば、当然のことながら、平均賃金は上がります。さらに、景気低迷で物価が下がれは、実質賃金の平均は上昇します。

こんなことを考えれば、半年前くらいまでは、実質賃金が低下していたことの説明は十分につきます。

さて、ここ半年は、確かに実質賃金は上昇気味なのですが、それにしてもあまり上昇せず、弱含みです。どうして、そうなるかといえば、やはりまだ金融緩和の余地があるということです。

実際、日銀の黒田東彦総裁は本日、9月の金融政策決定会合で実施する「総括的な検証」について都内で講演した。検証は「あくまで2%の『物価安定の目標』の早期実現のため」と強調し、「市場の一部で言われているような緩和の縮小という方向の議論ではない」と述べています。政策の中核とする予想物価上昇率を押し上げるため「2%目標をできるだけ早期に実現するというコミットメントを堅持していくことが重要」と述べました。
本日都内で講演した日銀黒田総裁
金融政策の限界論に対しては「マイナス金利の深掘りも、『量』の拡大もまだ十分可能」など否定的な考えを改めて示し、「量」・「質」・「金利」の3次元でいずれも拡大が可能としました。また「それ以外のアイデアも議論の俎上(そじょう)からはずすべきではない」と述べました。

私自身は、黒田総裁の金融緩和は「量」・「質」・「金利」の3次元でいずれも拡大が可能としているのですが、特に「量」的緩和は、必ず実施すべきものと思います。

それは、以前もこのブログで述べたように、我が国の構造的失業率は2.7%程度であるにもかかわらず、最新の統計では未だ完全失業率が3.0%であり、これは、まだ「量」的緩和が不十分であり、少なくとも、完全失業率が2.7%になるまでは、必要だと考えられるからです。

これを是正して、さらに実質賃金をさらに上昇させるためにも、「量的緩和」は必須です。黒田総裁と、日銀政策決定委員会の英断を望みます。

そうして、民進党のように単純に「実質賃金が〜」と喚き、雇用に関するまともな認識のない人たちの声に振り向く必要は全くありません。なぜなら、彼らは雇用というおおよそ、国民にとって最も重要なことに関してあまりにも無頓着だからす。

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2016年9月4日日曜日

民進代表選候補者3人 野党連携は理念や政策の一致前提に―【私の論評】財務省の使い捨て政党民進党とその代表に明日はない(゚д゚)!

民進代表選候補者3人 野党連携は理念や政策の一致前提に

民進党代表選候補者三人 左より玉木氏、前原氏、蓮舫氏
NHKの日曜討論で、民進党の代表選挙に立候補した蓮舫代表代行、前原元外務大臣、玉木国会対策副委員長は、次の衆議院選挙に向けた共産党などとの野党連携について、いずれも理念や政策の一致が前提となるという認識を示しました。

この中で、次の衆議院選挙に向けた共産党などとの野党連携について、蓮舫代表代行は「野党対与党のシンプルな構図が、いちばんよいと誰もが思っている。反省すべき点を挙げるとすれば、民進党の姿が見えず、自分たちの軸がないと思われたところだ。まずは民進党を再建し、人に投資をする姿勢を明確にすべきだ」と述べました。

前原元外務大臣は「野党協力ありきという岡田路線は、いったんリセットすべきだ。大事なことは政策で、天皇制、自衛隊、日米安保、あるいは消費税で考え方を同じくできるかどうかが、連立が組める大きなポイントだ」と述べました。

玉木国会対策副委員長は「理念の異なる政党と一線を画するのは大原則だが、一人でも多くの仲間を当選させるために、あらゆる努力をするのも代表の姿だ。理念が一致すれば、あらゆる政党と協力していく」と述べました。

また、消費税率の10%への引き上げについて、蓮舫氏は「必ず必要だ。問題は、国民に返ってきているという印象がないことで、社会保障の充実と借金の返済の割合も含めて考えるべきだ」と述べました。

前原氏は「1000兆円以上の借金があるわけだから、先延ばしすればいいという政治とは決別する。増収分の使いみちについては、白地から議論して、新たな構想を打ち出すべきだ」と述べました。

玉木氏は「逃げずにしっかりと社会保障に充てるべきだ。2%の増収分の使いみちは見直し、全額、主に高齢者向けの年金医療介護の充実に充てるべきだ」と述べました。

一方、蓮舫氏は代表になった場合の衆議院選挙への立候補について、「もちろん考えている。適切な時期に、きちんと判断する」と述べました。

【私の論評】財務省の使い捨て政党民進党とその代表に明日はない(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事をみてもわかるように、この候補者増税には賛成ということで、完璧に経済オンチであり、発言している内容が、財務省のパンフレット以下の内容で、お粗末という以外にありません。彼らには、8%増税の悪影響や、国債金利の低さなど目に見えないのでしょうか。おそらく、全く眼中にないのでしょう。

この三人の誰が民進党代表になったとしても、民進党の経済政策や雇用政策など今までと何も変わらず、相変わらず、頓珍漢、奇妙奇天烈、摩訶不思議なことばかり言って、安倍政権にすっかりお株を奪われていることにも気付かじまいでしょう。本当に情けない限りです。

蓮舫氏と、前原氏が完璧な経済オンチであることは、以前もこのブログに掲載しました。その記事のリンクをご覧になって下さい。
蓮舫氏が語る経済政策 実行されたなら景気低迷で雇用改善はブチ壊し―【私の論評】財政再建はすでに終わっていることを知らない民進党に先はない(゚д゚)!
蓮舫代表代行
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、すでに財政再建は今年中には確実に終わるか、すでに終わっている段階であり、財政再建が完了したか、完了間近の現在増税を是とする、蓮舫氏や前原氏は完璧に経済オンチであり、もう民進党には先がないであろうことを解説しました。

ブログ冒頭の記事を見ても、玉木氏は元々財務官僚であり、例外なく経済オンチです。民主党代表選三候補はすべて経済オンチであり、経済について語っていることは、財務省のパンフレット以下であり、これでは、誰が代表になったにしても、新代表の経済対策を実行に移すと、景気低迷で雇用改善はブチ壊しなってしまいます。

民進党の議員のほとんどは、経済オンチです。幹部も、財務省の増税キャンペーンのパンフレットか、もしくはそれ以下ことしか発言できません。これは、財務官僚の洗脳の成果なのでしょうか、 本当に不思議です。

財務省としては、財務省のパンフレットに従った、経済政策を是とする政党や総理大臣ができれば、扱いやすくて良いのでしょう。そうして、事あるごとに「ご説明資料」等で徹底的に洗脳しているのでしょう。

民主党政権代表戦の候補者の三人が三人とも、経済政策について、財務省のパンフレット並、もしくはそれ以下のことしか語らないのですから、本当に民進党は財務省にとって都合の良い政党です。

民進党としても、財務省が安倍総理と対峙していることは認識しているのでしょうから、その面では互いに歩み寄り、協力できるところがあると考えているのかもしれません。

だから、もともと経済オンチの彼らは、財務省のいうなりの経済対策しか語れないのかもしれません。

民主党政権時代の事業仕分けなども、ほとんどが財務官僚のシナリオに基づき実施されたものです。

そうして、彼らの始末の悪いところは、雇用施策音痴でもあることです。このブログでは2012年12月の衆院選の際、安倍晋三総裁率いる自民党と、民主党の野田佳彦政権の決定的な差異は、金融政策を含むマクロ経済政策であるとし、雇用確保で差が出ると指摘しましたが、その後の失業率などのデータをみると、その通りになりまし。民進党は、世界の左派政党からもっと勉強すべきです。

世界的な潮流からすれば、左派政権こそ、雇用状況を良くするために、金融政策を含むマクロ経済政策をしっかりやるが普通です。安倍総理は、「働き方改革」によって、さらに雇用の改善をはかり、さらに民進党のお株を奪うような政策を実施しようとさえしています。

民進党代表選には、これ以外にも問題があります。それは、いわずと知れた、蓮舫氏の国籍問題です。

民進党の蓮舫代表代行は3日午前の読売テレビ番組で、司会者から台湾と日本との「二重国籍」を疑う指摘があることを問われ、「台湾籍を抜いている」と述べ否定しました。

蓮舫氏は「私は生まれたときから日本人だ」と説明。「高校3年で、18歳で日本人を選んだ」と述べました。また、「今、そういううわさが流布されるのは正直悲しい」とも語りました。

蓮舫氏は、テレビ番組で辛坊氏から国籍問題について質問を受けた
蓮舫氏が、台湾国籍を離脱していないなら、租税回避問題と類似しているし、表裏一体の部分もあります。 国際的な法制度の違いと国際間の法の穴の悪用 であり、処罰する法律がないことにも問題がありそうです。

蓮舫氏は、18歳で台湾籍脱離としていますが、それだけでは信用できません。中華民国国籍法では、20歳で国籍を選べようになっています。それまでは、たとえ他国の国籍を取得していたとしても、台湾籍を喪失することはできないようになっています。

だから、20歳になってはじめて、台湾国籍を抜くための書類「廃止台湾戶籍と喪失國籍」を作成して、帰化したい国の名称も記入してそれを提出し政府に認められれば、台湾籍を抜くことができます。そうして、その証明書として台湾政府からを得ることができます。

廃止台湾戶籍と喪失國籍」について説明した台湾政府の文書

いずれにせよ、蓮舫氏がいうように、18歳では台湾の戸籍を抜くことはできないのです。廃蓮舫氏が疑惑を晴らしたいのなら、これら証明書を少なくとも民進党執行部には提出するべきです。喪失したというのなら、台湾政府に再発行してもらうべきです。民進党もこのような手続きを欠くようなことをしていたとすれば、問題外です。

このまま曖昧にすべきではありません。蓮舫氏には立証籍にがあります。

民進党はこのような状況ですから、財務省としても当然、利用できるうちは利用するのでしょう。しかし、民進党が財務省の省益に反するような行動をしたり、その他大きな問題行動をして、財務省が害が及ぶようなことにでもなれば、すぐに見限ることになるでしょう。

そういう意味では、民進党は、財務省の使い捨て政党ということです。考えてみると、民主党が壊滅しないのは、財務省の強力な後ろ盾があるからかもしれません。でなければ、民進党は一昔前の社会党のようになっていたのかもしれません。財務省に見限られたら、民進党は破滅です。

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