2016年9月5日月曜日

実質賃金6カ月連続プラス 7月、2.0%増 ―【私の論評】「実質賃金が〜」と喚いた輩は雇用に無頓着な愚か者(゚д゚)!



 厚生労働省が5日発表した7月の毎月勤労統計調査(速報値、従業員5人以上)によると、物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月比2.0%増加した。伸び率は6月の確報値と同じで、6カ月連続で前年を上回った。ボーナスの増加などで名目賃金が増えたほか、消費者物価指数(CPI)の下落傾向が実質賃金を押し上げている。

 名目にあたる従業員1人当たりの現金給与総額は37万3808円と、前年同月比1.4%増加した。名目の給与総額のうち、基本給にあたる所定内給与は0.4%増の24万1518円。ボーナスや通勤費にあたる「特別に支払われた給与」は4.2%増の11万3150円だった。

 実質賃金の増加は給与の伸びが物価の伸びを上回っていることを示す。7月のCPI(持ち家の帰属家賃を除く総合)は前年同月比0.5%下落し、実質賃金の伸び幅が名目より大きくなった。実質賃金は6年ぶりに2カ月連続で2%台となった。ただ所定内給与の伸びは依然小幅で、物価下落の影響も大きいことから、所得環境の改善が続くかどうかは見通せない状況だ。

【私の論評】「実質賃金が〜」と喚いた輩は雇用に無頓着な愚か者(゚д゚)!

ここしばらく、「実質賃金が~」と叫ぶ人があまりいないと思ったら、7月は、年間は前年同月比で2%増であり、しかも過去6ヶ月韓連続のプラスということで、これでは「実質賃金が〜」と叫びようもないわけで、だから最近あまり聞かれなくなったのだと合点がいきました。

これも完璧に、金融緩和の成果であるということです。そういわれてみれば、民進党も「実質賃金が〜」と表だって声を上げることもなくなりました。

民主党政権時代と比較してほとんどの経済指標がよくなっているが、唯一と言っていい例外が実質賃金でした。そもそもデフレ脱却過程では実質賃金が下がるのは当然だし、消費増税があったからなおさらのことなのですが、民進党にはそれが全く理解できないようです。
半年前までは、実質賃金の低下が民進党の心のよりどころだったのだが・・・・・?

いずれにしても、現在でも実質賃金が上昇したとはいいながら、まだ弱含みで、今後また下がるようなことがあれば、民進党は「実質賃金が〜」と金切り声を上げることでしょう。しかし、過去において実質賃金が下がっていたのにはそれなりの理由があります。

まず実質賃金と、名目賃金の違いについて掲載しておきます。

「名目賃金」は、私たちが手にする賃金のナマの金額を現した数値でとても私たちの実感に近い賃金に関する数値です。

次に、「実質賃金指数」は先ほどの「名目賃金」から物価の上がり下がりを計算して影響した分を取り除いた数値になります。

物価が上がるとその影響分が「名目賃金」から差し引かれますので、実質賃金は下がる傾向に、また物価が下がっているときは賃金指数に低下分の影響が上乗せされますので上がる傾向になります。もう、これだけで、過去においては「実質賃金」が下がっていた理由はおわかりになると思います。

他にも実質賃金が下がる合理的な理由はあるのですが、結果として半年前くらいまでは実質賃金の数値が民主党政権時代より全般に低くかったことはは間違いありません。この数値だけが民主党政権時と比較して低下していました。そのためでしょうか、彼らはいつまでもこれにすがるしかなかったのですが、それすらもここ半年は、良くなっているので、民進党もこれにすがり続けるわけにはいかなくなりました。

そのせいでしょうか、民進党の代表戦では「実質賃金」などの雇用を政策論争にあげる候補は一人もいませんでした。そうして、全員増税賛成ということで、まるで財務省のスポークスマンのような有様です。

下のグラフは昨年11月の国会で民主党が使ったパネルです。いまだにツイッターのタイムラインにこれが表れてくることがあります。


変化を強調したグラフになっているからでしょうか、これを見た有権者の中には「民主党政権は実質賃金の面では頑張っていた」などと勘違いをする人が結構いました。だから、岡田代表はつい最近まで「実質賃金が〜」と喚いていました。

デフレ脱却とはインフレになることだから、物価が上がり、その分だけ実質賃金が下がります。所費税を上げればその分だけ一気に下がります。それは当たり前のことですが、人によっては、なぜ実質賃金を下げる結果になるインフレにわざわざする必要があるのか疑問に思うことでしょう。

さらに、安倍政権になって実質賃金を下げる要因になった物価以外の大きな要因が雇用者数の増加です。景気回復に伴いパートやアルバイトが増え定年退職者の再就職が増え、賃金の平均値を引き下げたのです。

実際、安倍政権下では一般労働者、パートタイム労働者ともに名目賃金は増えているのに、それを加重平均した全体では減少していました。


一般労働者の詳細な内訳データがあれば、賃金の高い人が退職して新人やパート・アルバイトが増えたことによる影響などもわかるはずです。しかし、このような分析は政策に反映するには有効かもしれないが、誤解している有権者に説明するのは困難だったかもしれません。

やはり、安倍総理が国会などで繰り返し説明していたように、「景気回復で雇用者数は増えている」「その結果、雇用者全体の賃金の総額である『雇用者報酬』は増えている」と言う方が分かりやすいです。それをグラフにしたのが下です。




経済無策の民主党政権がアベノミクスの安倍政権に代わってから雇用者数が増え、その結果、国民の雇用者所得は名目でも実質でも増加しました。これを考えれば、パートや定年後の再就職などが増えて平均値である実質賃金が下がったことは理解しやすいです。

これは、何も国単位で考えなくても、ある程度大きな企業のことを考えればおのずと理解できます。

皆さんが、ある程度大きな企業に勤めていると想像してみてください。そうして、景気が良くなって、会社が業容拡大のために、新人やパート・アルバイトを大量に雇ったとします。そうなると、平均賃金はどうなるでしょう。業績が拡大した場合、個々の従業員の賃金も上げるということも考えられますが、そこまでいかず、賃金の低いパート・アルバイトの数が増えた場合どうなるでしょう。そうして、さらに物価が上昇しているとしたら、当然のことながら実質賃金の平均は下がることになります。

逆に景気が悪くなって、会社の業容が縮小している場合はどうなるでしょうか。まずは、パート・アルバイトの新規採用は避けます。新人もあまり雇用しないようにします。業績があまりにも悪化すれば、社員の賃金を全体的に下げることになるので、一概にはいえませんが、業績がそこまで悪化せず、賃金水準はそのままで、賃金の低い新人や、パート・アルバイトが減れば、当然のことながら、平均賃金は上がります。さらに、景気低迷で物価が下がれは、実質賃金の平均は上昇します。

こんなことを考えれば、半年前くらいまでは、実質賃金が低下していたことの説明は十分につきます。

さて、ここ半年は、確かに実質賃金は上昇気味なのですが、それにしてもあまり上昇せず、弱含みです。どうして、そうなるかといえば、やはりまだ金融緩和の余地があるということです。

実際、日銀の黒田東彦総裁は本日、9月の金融政策決定会合で実施する「総括的な検証」について都内で講演した。検証は「あくまで2%の『物価安定の目標』の早期実現のため」と強調し、「市場の一部で言われているような緩和の縮小という方向の議論ではない」と述べています。政策の中核とする予想物価上昇率を押し上げるため「2%目標をできるだけ早期に実現するというコミットメントを堅持していくことが重要」と述べました。
本日都内で講演した日銀黒田総裁
金融政策の限界論に対しては「マイナス金利の深掘りも、『量』の拡大もまだ十分可能」など否定的な考えを改めて示し、「量」・「質」・「金利」の3次元でいずれも拡大が可能としました。また「それ以外のアイデアも議論の俎上(そじょう)からはずすべきではない」と述べました。

私自身は、黒田総裁の金融緩和は「量」・「質」・「金利」の3次元でいずれも拡大が可能としているのですが、特に「量」的緩和は、必ず実施すべきものと思います。

それは、以前もこのブログで述べたように、我が国の構造的失業率は2.7%程度であるにもかかわらず、最新の統計では未だ完全失業率が3.0%であり、これは、まだ「量」的緩和が不十分であり、少なくとも、完全失業率が2.7%になるまでは、必要だと考えられるからです。

これを是正して、さらに実質賃金をさらに上昇させるためにも、「量的緩和」は必須です。黒田総裁と、日銀政策決定委員会の英断を望みます。

そうして、民進党のように単純に「実質賃金が〜」と喚き、雇用に関するまともな認識のない人たちの声に振り向く必要は全くありません。なぜなら、彼らは雇用というおおよそ、国民にとって最も重要なことに関してあまりにも無頓着だからす。

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