2016年9月18日日曜日

結婚と出産・子育てへの最も高いハードル、いずれもやはり「経済的理由」だったと判明―【私の論評】少子化と経済は、自殺者の増減と同じく大いに関係あり!まずは、経済を良くせよ(゚д゚)!


少子化の大きな原因はやはり経済的理由でした。詳細は以下から。

昨日から話題になっている厚生労働省の出生動向基本調査。これは国立社会保障・人口問題研究所がおおよそ5年ごとに行っている調査で、独身者と夫婦に対して異性との交際や結婚、出産や子育てなどについての実態や意識を調べるもの。

その中で、結婚意思のある未婚者に、1年以内に結婚するとしたら何か障害となることがあるかをたずねたところ、男女とも最も多かったのが「結婚資金」(男性 43.3%、女性 41.9%)となりました。水準はどちらも5年前の前回調査とほぼ同じです。また、2000年以降の調査ではハードルとして「職業や仕事上の問題」を障害に挙げる人が増えています。


図表Ⅰ-1-9 調査別にみた、各「結婚の障害」を選択した未婚者の割合

図表はブログ管理人挿入 以下同じ

また、夫婦が実際に持つつもりの子供の数が理想的な子供の数を下回っている現状に対し、夫婦が理想の子ども数を持たない理由についても「子育てや教育にお金がかかりすぎる」という経済的な理由が56.3%と過半数に達しトップの回答となっています。この傾向は妻の年齢が35歳未満の若い層では8割前後に達しています。

ここから読み取れるのは、結婚の意思のある若者にとって経済的な理由がハードルとなっていると共に、結婚した夫婦にとっても子育てや教育がお金の掛かりすぎるものであるということ。「若者の結婚離れ」や「若者の出産離れ」の背景には「お金の若者離れ」という現実が重くのしかかります。

逆に言えば、若者にお金がしっかりと回るようになれば、意志のある若者にとって結婚や出産・子育てへのハードルは低くなるということ。育児休暇や保育制度の充実はもちろん、そこに至るまでの段階の若者への経済面でのバックアップが少子化対策として有効であると言えそうです。

また、この調査では独身の男女のうち、「異性の交際相手がいない」と答えた男性が69.8%(前回61.4%)、女性で59.1%(同49.5%)と大幅増加しているというショッキングな数字が出ています。性体験のない独身男女も男性42%、女性の44.2%とどちらも前回調査より増加しています。

異性との交際には最低でもデートの時間と多少のお金が必要になるもの。ブラック企業で低賃金で長時間労働をしている場合はどちらも満足に捻出できない可能性が少なからず存在しています。この5年間で男女ともに10ポイント前後も交際相手がいない人が増えているということを考えると、何らかの相関関係は疑ってみてもよいのかも知れません。

2015年の調査で恋愛結婚が87.7%にも上ることを考えれば、恋愛→結婚→出産・子育てという流れはやはり王道と言えるもの。独身の若者が恋愛のできるような時間とお金を持ち、結婚を考えるだけの資金を貯められ、育児や教育に掛かる多大な費用や諸コストを保障する制度があればこそ、少子化に歯止めを掛けることができるのではないでしょうか?

(pdf)第 15 回出生動向基本調査 結果の概要

「交際相手いない」男性7割、女性6割 過去最高を更新 :日本経済新聞

独身男性7割「交際相手いない」「性経験なし」も増加 – 産経ニュース

【私の論評】少子化と経済は、自殺者の増減と同じく大いに関係あり!まずは、経済を良くせよ(゚д゚)!

上の調査は、多くの人々にとってショッキングであると思います。それにしても、上のブログの記事、結論は「独身の若者が恋愛のできるような時間とお金を持ち、結婚を考えるだけの資金を貯められ、育児や教育に掛かる多大な費用や諸コストを保障する制度があればこそ、少子化に歯止めを掛けることができるのではないでしょうか?」です。

結婚する若者に対してそのための、資金を貯められ、費用やコストを保障する制度があれば、少子化に本当に歯止めがかけられるのでしょうか。

制度とはなんでしょうか。政府がこの若者たちを対象に補助金制度などをもうけるということでしょうか。あるいは、学費や子育てにお金がかからないようにするということでしょうか。

残念ながら、私はこれも必要でしょうが、これだけでは少子化には歯止めがかからないと思います。

なぜこのようなことになってしまったのかといえば、やはりあまりにも長い間デフレが放置されたからでしょう。さらに、平成14年4月から導入された8%増税も影を落としていると思います。

せっかく、平成13年4月から、日銀が、金融緩和政策をとってその効果が数字上に明らかに出ていたのに、平成14年に増税してから、金融緩和の効果が相殺されて、経済はほとんど伸びませんでした。ただし、金融緩和は継続していたので、雇用はかなり改善されました。

高卒、大卒の就職率は数十年ぶりに良くなりました。金融緩和と雇用とは密接に結びついている、当たり前のことが実証された形になりました。

私は、少子高齢化に関しても、やはり金融政策と関係があるものと思います。過去の日本のように、20年近くも、デフレでは、やはり上記のように、経済が結婚と出産・子育てへの最も高いハードルになってしまい、少子高齢化につながるものと思います。

私は、以前少子高齢化とデフレには当然密接な関係があるものと考え、人口減などのグラフと、デフレとの関係を示すものがあるに違いないと思い、いろいろと調べてみましたが、これに関してはいろいろ複雑なことがからみ合っていて、単純な相関関係はありませんでした。

考えれば、生まれたばかりの子どもが、大人になってから、子どもを生むようになるまでには、20年後の時を経てからです。単純に相関関係がはっきりわかるような客観的データはなかなか見つかるものではなかったので、そのようなものは現在もみあたりません。

しかし、自殺者とデフレの関係は完璧に相関関係があります。日本がデフレに入った直後から、それまでは二万人台であった年間の自殺者数が、三万人台に増えました。ところが、デフレの深刻さが減衰した頃からは、また二万人台に戻っています。無論、これには政府の自殺対策による効果もあったとは思われますが、一番は、デフレが深刻さが低減したことによるのが最も大きかったと思います。

自殺者数に関しては、このブログでも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【正論】「欲ない、夢ない、やる気ない」……現代日本の最大の危機はこの「3Y」にある 作家・堺屋太一―【私の論評】団塊の世代以上の世代には想像もつかない現代の若者の窮状(゚д゚)!
堺屋太一氏
詳細はこの記事をご覧いただくものとして、この記事では「団塊の世代」という言葉の生みの親でもある堺屋太一氏が、現代の若者が、「欲ない、夢ない、やる気ない」のいわゆる「3Y」に陥っており、現代日本の最大の危機はこの「3Y」にあるという発言について、現在の若者が3Yになる原因を追求してみました。

その大きな原因の一つが、デフレであると結論づけました。その論拠の一つして、自殺者数の推移をあげました。以下にこの記事から、一部を引用いします。
ところで、自殺者数と景気は相関が高いことが知られていますが、この数年間の経済状況の改善と、さらに自殺対策にここ数年経費を増加させていく方針を採用していることもあり最近は自殺者数が減っています。類似の事例はホームレス対策にもいえ、ホームレス数は景気要因に関わらず対策費の増加に合わせて減少しています。 
自殺者数の減少については、マクロ(景気)とミクロ(自殺対策関連予算の増加スタンス)の両方が功を奏していると考えられます。 
自殺対策関連予算の推移はまとまったデータがないので拾い集めてみると
平成19年 247億円 平成20年 144億円 平成21年 136億 平成22年 140億 平成23年 150億 平成24年 326億 平成25年 340億 平成26年 361億 となってます。


そうして、この記事では以下の書籍を紹介しました。

経済政策で人は死ぬか?: 公衆衛生学から見た不況対策

この書籍に関して説明し部分をこの記事から引用します。
この書籍には、経済政策と死者数と間の相関を調べた内容が記載されています。

さて、日本では、現在アベノミクスの是非が話題になっています。世界中どこでも、不況に陥ると経済政策をどのようにするべきか、議論されます。しかし、結局のところ、どのような政策がいいのでしょう。そして、その決断を、イデオロギーや経済理論だけを頼りに行って、本当に良いのでしょうか。 
世界規模の不況に陥ったとき、国ごとに経済政策は異なり、それによって国民の運命も異なる方向に動かされてきました。公衆衛生学者と疫学者である本書の著者は、そのことを利用して政策の優劣を比較しました。つまり、過去の各国の政策選択とその結果のデータを、世界恐慌からソ連崩壊後の不況、アジア通貨危機、そしてサブプライム危機後の大不況まで調査し、比較したのです。 
比較の指標は、国民の生死です。政策の違いによって、国の死者数は増えたのか減ったのか、健康状態や平均寿命などがどう変化したかを比較しました。経済政策は、国の借金返済や構造改革、景気刺激など、さまざまな目的で行われますが、そもそも国民に死を強いるようでは元も子もありません。結果はどうだったのでしょうか。 
著者らの研究によれば、不況下で危険な「緊縮政策」を選択した影響で増加する死亡数は、まさに驚くべきものです。最も悲惨なのは、ソ連崩壊後のロシアで、1990年代に経済政策の失敗により数百万人の男性が死んだ(主に自殺とアルコール関連の死亡)と考えられるといいます。
このロシアの例をみてもわかるように、経済政策が悪ければ、自殺者は増えます。反対に、経済政策が良ければ、自殺者は減ります。やはり、自殺するしないに経済的理由は大いに関係があるのです。

日本でも、深刻なデフレに突入した途端に自殺者が三万人台に増えたということで、これは、ロシアだけでなく、日本にも当てはまっているのははっきりしています。

当然のことながら、少子化も国の経済政策に大きく左右されると思います。ただし、国の経済対策が悪くなったからといって、すぐに人口減になるわけではありません。子どもが生まれて、その子どもが大人になり結婚して子どもをもうけるようになるには、少なくとも20年前後の時を経てからです。しかも、高齢化という問題もあります。他の事象ともからまって、少子化と経済の関係が単純にはっきりわかるようなデータはありません。

しかし、ブログ冒頭の記事でもわかるように、結婚と出産・子育てへの最も高いハードルは、経済的な問題であることから、やはり政府の経済対策なども大きくからんでいると考えるのが妥当です。

特に、デフレがあまり長期にわたって続くと、若い世代は将来に希望を持てなくなります。逆に、ハイパーインフレはもちろん駄目ですが、緩やかなインフレで、緩やかに経済成長していれば、若者は希望が持てます。

考えてみてください、デフレの時代は希望がありませんが、緩やかなインフレで、緩やかに経済毎年数%ずつ経済成長しているとしたら、物価は上がるものの、給料も物価スライド分よりも少しだけは、あがるとしたらどうなりますか。

1年2年では、物価や給料が上がったにしても、ほんの数%ですから、実際の生活者の視点からすれば、誤差に過ぎませんが。20年たつと、給料は二倍くらいになります。物価スライド分を考慮しても、1.5倍くらいにはなるのです。

これは、今の日本では夢のような話ですが、数十年前の日本では当たり前のことでした。誰もが、自分の給料は少しずつながらあがっていくだろうと思っていました。

そうして、それは、同じ会社で同じ職位に20年間とどまっていてもそうなるのです。少し頑張って、職位が上になったり、給料の高いところに転職したりすれば、2倍、3倍、4倍というのも決して夢ではありません。さらに、努力する人にはもっと給料があがる場合だってあり得るのです。こういう状況なら若者も希望が持てます。

このように将来に希望が持てれば、今貧乏であっても、子どもが大きくなるにしたがって、給料が上がることが見込めるので、結婚しようとか、子育てしようという機運が高まるのは当然のことです。

しかし、これがデフレでは、同じ会社に同じ職位に20年間とどまっていたとしたら、給料があがることは絶対にあり得ません。それどころか、ほんの少しずつですが、給料が下がります。20年も、同じ職位にとどまっていたら、下手をすると給料は半分になっているかもしれません。給料をあげるなら、努力に努力を重ねて激烈な競争に勝ち抜いて、なるべく上の職位につくしかありません。それどころか、いつリストラされないとも限りません。こんな状況では、若者は結婚しようとか、子育てしようという気になれないのは当然のことです。これが、少子化に長期的に結びつくのは明らかです。

なお、少子化の問題というと、すぐにフランスの例がだされたりします。以下にフランスが実施している出産・子育て支援の内容を掲載します。

1. 妊娠・出産手当(妊娠5ヶ月~出産)・・・すべての費用について保険適用 
2. 乳幼児手当(妊娠5ヶ月~生後3歳)・・・子ども1人あたり約23,000円/月 
3. 家族手当・・・子ども2人で約16,000円/月。1人増す毎に約20600円/月追加(20歳までの支給) 
4. 家族手当補足・・・子ども3人以上の1人ごとに約15,000円/月 
5. 新学期手当(小学生~)・・・約29,000円/年 
6. 産後の母親の運動療法・・・保険全額支給 
7. 双子もしくは子ども3人以上など・・・家事代行格安派遣(1~2度/週) 
8. 片親手当・・・子ども1人で約76,000円、1人増えるごとに約19,000円/月
これは、確かに良い政策だとは思います。しかし、日本で現在この制度を導入したからといって、フランスのようにすぐに少子化が改善されるとは思えません。フランスがこのような制度を導入して成功した頃には、無論フランス経済はデフレではありませんでした。日本とは異なり、緩やかに成長していました。

この制度があったにしても、今の結婚適齢期の男女はすっかりデフレ脳になっていて、将来に希望をもてません。将来に希望の持てない、若者たちに対して、このような手厚い支援をしたとしても、すぐに効果がでるどころか、ほんの少し良くはなるかもしれませんが、すぐにもとに戻ってしまいます。

なぜなら、日本は、まだデフレから完璧に脱却しきっていないからです。デフレから脱却して、緩やかなインフレになり、多くの人々が緩やかなインフレはこれからもしばらく続くだろうと、認識するようにならないと、少子化の傾向は継続することになります。

そうして、上記の制度を導入することを条件に、増税ということにでもなれば、若者はますます将来に希望が持てなくなり、この制度が導入されたとしても、少子化は緩和されるどころかさらに促進されることになります。

日銀は未だ物価目標を達成していません。まずは、この物価目標を達成した上で、その状態がしばらく続くと多くの人が認識するようになるまで緩和を続けなければなりません。

それと同時に、フランスの例のような手厚い支援をするようにすれば、それでも5年、10年してからようやっと少子高齢化が緩和され、人口が増えるようになることでしょう。

無論、経済がまともになったして、支援策を充実したとしても、個々の様々な問題は存在し続けるとは思います。しかし、マクロ的にみれば、そのような事例は少数で確実に少子化傾向に歯止めがかかります。個々の問題は、経済の問題ではなく、その他のカウンセリングなどの対策によって救済されるべきものです。

いずれにせよ、経済が緩やかにでも成長するようになっていなければ、少子高齢化問題は、解消しません。

黒田総裁は会談後「次回(9月20、21日)の金融政策決定会合で(金融政策の)総括的な検証をするとしていますが、物価目標も達成できない現在、マイナス金利などの質的緩和の深掘りなどではなく、追加金融緩和を実施すべきです。そうでなければ、直接その影響が見えないかもしれませんが、少子化問題にも少なからず悪影響を及ばすことになります。

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