2016年9月3日土曜日

利上げ巡り気迷い 米雇用統計、割れた市場反応―【私の論評】金融政策と雇用が相関関係にあるという観念がないのは、世界で日本と韓国だけ(゚д゚)!

利上げ巡り気迷い 米雇用統計、割れた市場反応

日経新聞

米連邦準備理事会(FRB)による9月利上げの是非を巡り、最大の注目材料とされていた8月の米雇用統計。事前予想を下回った結果に、市場の反応は割れた。「9月」の観測はやや後退する一方で「年内」への意識が強まったことが背景にありそうだが、市場の見方は固まっていない。20~21日の米連邦公開市場委員会(FOMC)まで、市場関係者の悩ましい日々が続きそうだ。

9月利上げの観測はやや後退する一方、「年内」への意識が強まったが、
市場の見方は固まっていない(ニューヨーク証券取引所)
2日午前8時半。雇用者数の増加が15万1000人と市場予想(18万人程度)を割り込んだ8月の米雇用統計の結果を見て、各市場の反応は割れた。緩和長期化と踏んだ株式相場は上昇した半面、債券市場と外国為替市場では利上げを意識する形で米長期金利が上昇(債券価格が下落)し、円安・ドル高が進んだ。

直後の反応はわかりやすいものだった。ダウ工業株30種平均の寄り付き前、同先物に上昇圧力がかかり、一時、発表前に比べ約60ドル高い水準となった。長期金利は急速に低下。外為市場では円買い・ドル売りが先行し、一時一ドル=102円台後半をつけた。どれも「9月利上げは遠のいた」との判断からだった。

問題はその後。ダウ平均は高く始まり、上昇幅は一時120ドルを超えるなど株高が持続。これに対し、長期金利には上昇圧力がかかり、米10年物国債利回りは1.5%台前半から1.6%台まで急速に上昇。これをみて円相場は一気に下げに転じ、一時104円台前半と約1カ月ぶりの円安・ドル高水準をつけた。

利上げ観測を巡る株式市場と債券・外為市場の「ねじれ」。強引に理屈をつけるとすれば、雇用統計が市場予想を下回ったことで「9月利上げの決め手にはならなかった」一方、雇用の改善自体は続いていることがはっきりしたため「年内の利上げは一段と無視できない線になった」という市場の微妙な受け止めを映したといえる。つまり前者が強く出たのが株式市場、後者が債券・外為市場と解釈すれば、一応の整合性はとれる。

シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループが米金利先物市場での織り込み度合いから計算した「利上げの確率」をみると、9月利上げの確率は21%程度とわずかに前日から低下。逆に、年内の利上げは約54%とわずかに上昇した。

FRBのイエレン議長やフィッシャー副議長が8月下旬にワイオミング州で開いたジャクソンホール会議で利上げに前向きな発言をして以降、とくに株式市場では目先の「9月の有無」が焦点となり、上値が重くなっていた。9月利上げの可能性が低くなったとの受け止めは株高要因となる。

債券市場はやや複雑だ。同じ米国債でも、2年債利回りは発表後の上昇の勢いは鈍く、発表前後でほぼ同じ水準にとどまった。9月の利上げ観測の後退を強く反映した形だ。より長い期間の取引となる10年債利回りは、発表前よりも高い水準まで上昇。年内利上げを覚悟する見方が強く反映したとみることもできる。

10年債については、債券需給面の動きが強く出たとの声も多い。社債の大量発行を控え、米国市場の連休前(5日=月曜日=はレーバーデーで祝日)に持ち高を整理しようという動きがあったという。日米金利差拡大の観測を背景にした円安・ドル高の流れは、米長期債の一時的な需給要因にひきずられたという側面も無視はできない。

いずれにせよ、すっきりしない市場反応は、利上げを巡る気迷いの証左でもある。米ゴールドマン・サックスのチーフエコノミスト、ヤン・ハチウス氏は9月利上げの確率を40%から55%に引き上げた。FRBの利上げに向けた積極姿勢を踏まえてのことだ。来週以降のFRB高官らの発言内容によっては、9月の利上げを巡り市場が大きく揺れる可能性もある。

【私の論評】金融政策と雇用が相関関係にあるという観念がないのは、世界で日本と韓国だけ(゚д゚)!

ブログ冒頭のような日経新聞等の記事を読むと、私はいつも驚嘆します。なぜなら、日経新聞でも、雇用と金融とは密接な関係があることをうかがわせる内容が掲載されているからです。

これは、米国のニュースをそのまま引用しているのかもしれませんが、上の記事には「雇用者数の増加が15万1000人と市場予想(18万人程度)を割り込んだ8月の米雇用統計の結果を見て、各市場の反応は割れた。緩和長期化と踏んだ株式相場は上昇した半面、債券市場と外国為替市場では利上げを意識する形で米長期金利が上昇(債券価格が下落)し、円安・ドル高が進んだ」とあります。

5月、デンバーで開催された就職フェア
米国では、日銀が現在行っているような金融緩和策は一巡して景気は回復し、雇用状況も良くなっています。しかし、いつまでも緩和気味にしておくと、今度はインフレなどが問題になるので、時期を見計らって、利上げをしようとしているのです。

そうして、利上げの指標として、労働統計を指標としているのです。労働統計で、雇用がある程度以上の水準(今回は雇用増が18万人程度)であれば、FRB(アメリカ連邦準備制度理事会:日本の日銀にあたる)は、利上げをしても良いと判断して利上げをする予定なのです。

しかし、今回は雇用増が予想を下回ったのですが、雇用は増え続けているので判断の難しいところです。利上げはないかもしれないと予想する市場関係者もあれば、やはり利上げは近いと予想する市場関係者もいるわけです。

上記のように、米国では金融政策は雇用に密接に関わりがあることが、一般社会常識になっています。そうして、これは米国に限らず、世界中のほとんどの国々で常識とされています。

しかし、日本では、まだこれが一般社会常識にはなっていないようです。そもそも、日銀が発表する資料などでは、物価目標などは掲げられていますが、雇用の目標はありません。

雇用と金融政策の相関関係はフィリップス曲線を見れば一目瞭然
そうして、日銀に限らず、日本では大手新聞のほとんどは、雇用と金融政策とを関連付けて報道するところはまずありません。日本では、日銀や新聞だけでなく、大方の政治家や始末に悪いことに、経済学者の多くや、民間経済アナリスも、雇用と金融政策を関連付けて語る人がいません。

しかし、米国では金融政策と雇用が密接に関わりがあるのに、日本だけは関係がないということは絶対にあり得ません。これは理論上もそうですし、日本の実体経済をみてもそれを理解できます。

特に、昨年のはじめころまでは、日銀の金融緩和策によって、日本の雇用状況は著しく改善され続け、まさに典型的であり、それこそ経済学の教科書に掲載しても良いような状況でした。

実際、昨年は、三大都市圏の平均時給が2006年の調査開始以来最高になったと、リクルートジョブズから発表がありました。

これは、2015年6月の「アルバイト・パート」募集の求人情報を抽出し、募集時平均時給を集計したものです。それによれば、6月の平均時給は967円で、前年同月比10円増(+1・0%)となっていました。職種別では「専門職系」で37円増(+3・4%)となったのをはじめ、すべての職種で前年同月比プラスとなっていました。

首都圏の平均時給は1003円で、同10円増(+1・0%)。東海の平均時給は908円で同10円増(+1・1%)。関西の平均時給は934円で同12円増(+1・3%)でした。三大都市圏とも似たような状況で、アルバイト・パート時給の上昇が見られていいました。

このブロクでは、金融政策が雇用政策であることを強調してきました。金融政策はすべての業種に薄く効果があるため、業者ごとでは認識できない場合もあります。しかし、雇用をすべての業種で足し合わせて見れば、その効果は歴然です。

金融緩和すると、第一段階として、少しタイムラグ(時間のずれ)があって、まず就業者数が増加する。初期段階では、それまで職のなかった人が非正規やアルバイト・パートという形で雇用増加に貢献することになります。

新たに就業者に加わった非正規やアルバイト・パートの賃金は、既に雇用されている人より低いため、それまでの就業者を合わせた全体の平均賃金を押し下げることになります。

この点だけをとらえ、就業者数が増えたことを無視して「賃金が下がっている」とあげつらい、金融緩和を否定する人もいるのですが、経済の波及メカニズムをまったく理解していないだけで、反論にもなっていません。

第二段階として、就業者数が増えてくると、失業率が下がり出し、もうこれ以上就業者数が増えないような完全雇用の状態に近くなります。

そこで賃金が伸び始めます。特に、アルバイト・パートの時給や残業代などが上がります。そうなると、下がっていた賃金も反転し上がり出します。雇用形態も徐々に非正規やアルバイト・パートの割合が減り、正規雇用が多くなってきます。

昨年、アルバイト・パートの時給が上昇してきたということは、いよいよ金融政策の効果が第二段階に入ってきたことを意味しました。

民主党政権と安倍晋三政権の雇用政策の差が歴然と出ました。民主党は白川(方明総裁)日銀の路線だったのですが、安倍政権は黒田(東彦総裁)日銀でやってきました。そうして、これほど雇用政策と金融政策の密接な関係をはっきり示したケースはめったにありません。教科書に載せてもいい具体例でした。

しかし、今年は平成14年度からの8%増税の悪影響と、本来日銀はさらなる追加金融緩和をすれば良いにもかかわらず、結局追加金融緩和を行わなかったため、未だ実質賃金が上昇はするようにはなっていますが、弱含みです。これでは、また下がる可能性もあります。これをもって、アベノミクスは限界に達したとする人々もいますが、これは大きな間違いです。

これについては、以前このブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
日銀 大規模な金融緩和策 維持を決定―【私の論評】日銀は批判を恐れずなるべくはやく追加金融緩和を実行せよ(゚д゚)!


この記事は、今年6月16日のものです。この記事のタイトルはあまり良くないです。このタイトルは、「日銀 大規模な金融緩和策 維持を決定」とあります。これは、今までの金融緩和策を維持するというだけで、追加金融緩和は見送ったということです。

そのため、市場が失望して、失望売りにつながり、急速な円高株安になりました。

そうして、この記事では、黒田総裁がなぜ追加金融緩和を実行しなかったかについて、失業率の見方の誤りによるものであると掲載しました。

その部分を以下に掲載します。
日銀は、構造失業率が3%台前半で、直近の完全失業率(4月時点で3・2%)から下がらないので、これ以上金融緩和の必要がないという考えが主流のようです。
過去の失業率をみてみると、以下のような状況です。


過去20年近くは、デフレなどの影響があったので、あまり参考にならないと思ういます。それより前の過去の失業率をみると、最低では2%程度のときもありました。過去の日本では、3%を超えると失業率が高くなったとみられていました。

このことを考えると、日本の構造失業率は3%を切る2.7%程度ではないかと考えられます。
であるとすれば、現在の完全失業率3.2%ですから、まだ失業率は下げられると考えます。だとすれば、さらに金融緩和をすべきでした。
日銀黒田総裁

しかし、日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁は、すでに実際の失業率が構造失業率に近い水準まで下がっているのに、なぜ賃金が上昇しないのか、疑問を持っていたようです。にもかかわらず、今回は追加金融緩和を見送ってしまいました。 
2014年10月の日銀の追加緩和は、安倍晋三政権による消費税率10%への再増税を後押しするためだったといわれており、このときの黒田相殺は、中央銀行総裁というよりは、元財務省出身者の立場が良く現れていたと思います。

しかしながら、マイナス金利の導入は、中央銀行総裁としての面目躍如というところで、見事に中央銀行総裁の立場を示したものといえました。 
しかし、安倍政権は再び再増税を延期し、今回もまた増税を見送ったというか、以前のこのブロクにも述べたように、これはほんど凍結に近いものです。財務省の落胆はかなり、大きかったでしょう。この心情を理解した黒田総裁は、今回も金融緩和する気になれなかったのでしょう。まさに、今回は、中銀行総裁というよりは、旧財務省出身者の立場が貫かれているようです。

しかし、本来は金融緩和を行うべきでした。そうして今回行うべきは、「マイナス金利」の拡大ではなく、量的緩和による国債買い入れ額の拡大とすべきでした。
結局、日銀黒田総裁は、3%が日本の構造的失業率であると見て、追加金融緩和を行わなかったのですが、本当はやはり2.7%であり、追加金緩和を行えば、失業率が2.7%にまで下がり、そうして実質賃金が強含みで上がることなったと思います。

現状は、上記の金融緩和の二段階の二段階目のあたりで足踏み状態をしているということです。この二段階目が終了すると、完全失業に近い状況になり、今度は実質賃金が上昇することになります。このまま、追加金融緩和をしなければ、実質賃金があまり上昇しないですし、物価目標も達成できないことになります。

しかし、多くの新聞、政治家、識者など金融緩和と雇用と結びつけて考える習慣が全くないので、このような分析ができませんし、最初からするつもりもありません。

そうして、アベノミクスは限界などととして、意味不明な理由をあげてそれを根拠としています。

先に述べたように、米国では金融政策と雇用は不可分に結びついているという一般常識が社会に根付いており、FRB (準備制度委員会)には雇用に対する責任があるとされ、金融政策の一手法である利上げをするにしても、社会からの批判を避けるため、雇用統計を参照しながら、雇用状況が悪化しないように、慎重に利上げをしよとしているのです。

利上げの時期を見誤り、利上げのタイミング遅くなれば、インフレを招いてしまうことになります。利上げのタイミングが早ければ、雇用状況が悪くなってしまいます。このようなことを避けるために、FRBはより慎重のそのタイミングを見計らっているのです。

しかし、日本では上で述べたように、雇用と金融政策が不可分に結びついているという認識はあまりないので、日銀も実質賃金があまり上がらなくても批判されることは全くありません。

本来ならば、日銀がもっとはやく追加金融緩和を実施していれば、実質賃金もさらに目立って上がりはじめ、さらには物価目標も達成できたかもしれません。

そうして、もし8%増税など最初から実施せず、緩和を続けていれば、今度はいずれはインフレを招いてしまうことになるので、金融緩和をやめ、FRBと同じように利上げを検討する時期が来たかもしれません。

日本では金融政策と雇用との相関関係など知ら
なくても一般常識の試験にパスすることができる
とにかく、この日本では、マスコミ、多くの経済学者、官僚、政治家などが、雇用と金融政策の関係を全く理解していないので、結局のところ、過去においてはいつも金融緩和が見送られ、結局のところ、金融引き締めばかりして、20年もの間デフレが続いてしまったのです。

だからこそ、この記事の冒頭に書いたように、私は日経新聞が、アメリカの雇用統計と利上げを関連付けた記事を掲載しているのを見ると、驚嘆してしまうのです。

それにしても、金融政策と雇用が無関係などという馬鹿げた観念は、いい加減もう捨て去るべき時に来ていると思います。

とにかく、何をさておいても、日本でも雇用が一番という観念を植え付け、一般社会常識とすべきです。本来、雇用ほど重要なものはないはでず。雇用が良ければ、他は多少悪くても目をつぶるべきですし、雇用が悪ければ、他良くても不十分で、早急に雇用を改善すべきであるとの観念を定着させるべきです。

世界を見回してみると、雇用と金融政策の関係が、ほとんど認識されていない国は、韓国くらいなものです。韓国では、若者雇用が劇的に悪化して、若者間でその状況を現した言葉「ヘル朝鮮」が流行っても、マスコミは無論のこと、経済学者も政府も金融政策などは全くのスルーで構造改革論ばかりしています。これは、まるで少し前の日本のようです。

実際、韓国の大手新聞である中央日報は、デフレ礼賛記事を掲載しています。常識はずれにも程があります。その記事のリンクと最近の韓国の消費者物価指数の推移を以下に掲載します。


デフレの韓国では今年に入ってからもじりじりと物価が下がっている
日本の新聞も雇用と金融政策の関係を理解していないようですが、さすがにデフレ礼賛の記事は掲載していなかったと思います。ただし、デフレ克服のため、構造改革をすべき等のような馬鹿げた論評はしていました。

マスコミがデフレを礼賛するようでは、日本のマスコミより始末に悪く、韓国は雇用状況が最悪で、景気も低迷しているのに、金融緩和をするなど覚束ないことでしょう。この様子では、韓国はこのまま景気と雇用が悪化し続け、いずれ再び通貨危機に見舞われることになるでしょう。

日本の、通貨スワップなどの実質的な韓国経済援助策によっても、韓国経済が立ち直ることはないでしょう。

それにしても、韓国と同じように、日本でも大多数が、金融政策と雇用の相関関係をほとんど理解していないにもかかわらず、安倍総理はそうではなかったし黒田総裁も最初はそうではなかったようなのでので、雇用がかなりの水準まで回復しました。しかし、今のまま日銀が追加金融緩和をしなければ、来年あたりからまた悪くなることでしょう。

今後も安倍政権には、これを理解しない愚かな勢力に負けず、日本の雇用をさらに上向かせ、安定させていただきたいものです。韓国のようになるのだけは、願い下げです。

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