2024年3月19日火曜日

中国経済の悲惨な実態…「デカップリング」を「デリスキング」と言い換えても“世界経済からの切り離し”は止まらない―【私の論評】中国経済減速で外資流入減 急速に発展する東南アジアに投資機会

中国経済の悲惨な実態…「デカップリング」を「デリスキング」と言い換えても“世界経済からの切り離し”は止まらない

まとめ
  • 西側諸国と中国との経済的結びつきが急速に弱まっている。中国からの輸出が主要国で大幅減少している。
  • 中国への外国からの投資や人的交流が大きく減少し、新規投資がなくなっている。
  • 金融機関は中国よりも東南アジア市場にシフトしており、中国経済の勢いの低下を示している。
  • 中国の公式発表データは信用できず、実態は内外から極めて深刻な経済危機に瀕していると考えられる。
  • 中国経済の世界経済におけるプレゼンスは今後さらに低下していく見通しである。

 西側諸国と中国との経済的な結びつきが、想像以上の速さで弱まっている。中国からの輸出は全体で4.6%減少したが、アメリカ、EU、日本などの主要西側国に対する輸出は10%前後も落ち込んでいる。台湾、フィリピン、カナダ、ニュージーランドなど中進国向けの輸出も大幅に減少した。対照的にロシアへの輸出は46.9%も増加しているが、これはウクライナ侵攻で西側の制裁を受けたロシアが中国に依存せざるを得なくなったためだ。

 外国から中国への直接投資額も2022年第1四半期の10億ドル超の資金流入から、2023年第3四半期には1億ドル超の資金流出に転じた。2023年通年でも前年比82%減少している。中国専門のプライベートエクイティファンドへの新規組入れ額も97%減少するなど、人やカネの流れが激減している。

 このトレンドは一時的なものではなく、今後も中国経済の世界経済におけるプレゼンスが年々低下していくと見込まれる。ゴールドマン・サックスの責任者は中国への投資を避ける考えを示し、不動産開発、インフラ開発、輸出というこれまでの成長の3本柱が弱体化して10年は苦戦が続くと指摘した。中国のGDP統計の信頼性にも疑問を呈している。

 実際、東南アジア市場から得られる収益が中国市場を上回るなど、金融機関は中国よりも東南アジアにシフトしつつある。中国の不動産バブル崩壊や地方財政の破綻など国内問題に加え、習近平政権による外資規制強化で、世界経済からの中国の切り離しが加速している。

 中国政府の発表データは信用できず、民間企業は既に自主的に中国離れを進めている。内外から極めて深刻な危機にさらされている中国経済の実態を認識する必要がある。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】中国経済減速で外資流入減 急速に発展する東南アジアに投資機会

まとめ
  • 外国からの中国への直接投資が大幅に減少している一方、東南アジアへの投資は増加傾向にある。
  • 日本からも中国への直接投資は減少基調だが、東南アジアへの投資は増加している。
  • 中国経済の減速や米中対立が、中国への投資を手控える要因となっている可能性がある。
  • 今後、デジタル関連や成長を支えるインフラ分野などへの東南アジア向け投資が有望視されている。
  • 一方、中国に対しては投資を抑制する要因が継続すると見られ、投資額は当面横ばい或いは減少が予想される。

外国から、中国へと東南アジアの直接投資の推移を一覧表にまとめました。以下がその表です。
外国から中国への直接投資
外国から東南アジアへの直接投資
直接投資額(億米ドル)前年比増減率直接投資額(億米ドル)前年比増減率
2010106.115.70%201070.118.50%
2011124.317.10%201193.233.00%
2012127.72.70%2012117.225.70%
2013123.5-3.30%2013128.59.60%
2014128.54.00%2014134.24.40%
2015135.65.50%2015132.4-1.30%
2016128.9-4.90%2016117.5-11.20%
2017126.3-2.00%2017129.510.20%
20181357.00%2018139.27.50%
2019140.44.00%2019146.35.10%
202092-34.50%2020107.8-26.30%
2021115.926.00%2021133.724.10%
2022179.154.40%2022167.225.10%
2023330-81.70%20231722.90%

参考情報

中国国家外貨管理局 https://www.safe.gov.cn/big5/
ジェトロ https://www.jetro.go.jp/
ASEAN Secretariat https://www.asean.org

こうして、一覧表にまとめてみると、確かに、外国からの中国への直接投資の激減ぶりは、衝撃的です。

以下に日本から東南アジアと中国への直接投資の推移を一覧表にまとめたものを掲載します。

日本から東南アジアへの直接投資
日本から中国への直接投資
直接投資額(億米ドル)前年比増減率直接投資額(億米ドル)前年比増減率
201013.216.50%20107.110.20%
201116.424.20%20119.229.60%
201219.317.70%201210.716.30%
201318.2-5.70%201310-6.50%
201418.1-0.50%201410.55.00%
201517-6.10%20159.8-6.70%
201615.4-9.40%20168.7-11.20%
201717.111.00%20179.36.90%
201818.910.50%201810.512.90%
201920.79.50%201911.26.70%
202013.4-35.30%20205.9-47.30%
202116.825.40%20217.832.20%
202220.421.50%202211.446.20%
202320.82.00%20239.8-14.00%

参考情報

2023年、日本から東南アジアへの直接投資は2年連続で増加した一方、中国への投資は2年ぶりに減少しました。中国経済の減速や米中対立の影響が中国への投資を手控える要因となっている可能性があります。

今後の見通しとして、特に若年人口が多く経済成長が見込まれるインドネシア、ベトナム、フィリピンなどへの投資機会が有望視されています。デジタル化の進展や成長を支えるインフラ需要が、主な投資先分野となると考えられます。

一方、中国に対しては成長鈍化や対米関係の緊張など投資を抑制する要因が継続すると見られ、当面は投資額が横ばいまたは減少基調が続くと予想されます。

つまり、日本企業の海外直接投資の重心が、リスクの高まる中国から有望な東南アジア市場にシフトする動きが今後も加速していくと考えられます。

いまのままだと、過去にこのブログでも述べたように、中国は図体が大きいだけの凡庸なアジアの独裁国家になってしまうのではないでしようか。

中国が今後、そうなるかどうかは、いくつかの要因次第だと思われます。

一つ目は、経済発展の行方です。確かに現在は減速が見られますが、中国経済の潜在力は大きく、適切な改革ができれば再び成長軌道に乗る可能性があります。しかし、そうならなければ、単なる人口の多い発展途上国にとどまる可能性があります。

二つ目は、政治体制の行方です。現在の一党独裁体制が長期化すれば、先進国入りは難しくなります。しかし、将来的に開放的で自由な社会への移行ができれば、先進国の仲間入りも夢ではありません。

三つ目は、イノベーション力の行方です。中国はAI、5G、量子コンピューティングなど先端技術の研究開発に力を入れています。この分野で高い成果を上げられれば、単なる製造大国から脱却できるかもしれません。

つまり、経済改革、政治改革、技術革新の三つの課題をどう乗り越えられるかにかかっているといえます。

デカップリング AI生成画像

習近平体制が長期化すれば、中国が凡庸な独裁国家に陥る可能性が高くなると考えられます。その根拠は以下の通りです。

経済改革の停滞 
習近平政権は国営企業の改革を遅らせ、国家資本主義的な方針を強めています。民間企業への締め付けも強まっており、経済の活力が阻害されかねません。経済と政治を分離するなどの、経済改革が停滞すれば、中国経済の高度化は難しくなります。
政治的自由の後退 
習政権は言論・報道の自由を弾圧し、反体制派への監視・拘束を強化しています。さらに権力の一極集中が進んでいます。これによる法治国家化の遅れによる政治的自由の後退は、創造性と革新性を阻害する要因となり得ます。
対外孤立の深刻化
人権問題や軍事的な威嚇的姿勢から、欧米諸国からの非難が高まっています。対外的な孤立が深刻化すれば、先端技術の取得や人材の確保が困難になり、イノベーション力が低下する恐れがあります。
民主化の遅れ
習政権は一党支配体制を維持し、権力の世代交代も遅れています。民主化に向けた改革が進まなければ、経済活性化や創造性の発揮が制限されかねません。
このように、習近平体制が続けば、経済改革の停滞、政治的自由の後退、対外孤立、民主化の遅れなどから、中国が凡庸な独裁国家に陥るリスクが高まると考えられます。

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2024年3月18日月曜日

【速報】北朝鮮 2回目の弾道ミサイルの可能性があるもの 既にEEZ外に落下か 防衛省―【私の論評】日本は、北のミサイルだけてなく、中国の核とミサイルに備えよ

 【速報】北朝鮮 2回目の弾道ミサイルの可能性があるもの 既にEEZ外に落下か 防衛省


 防衛省は、北朝鮮が再び弾道ミサイルの可能性があるものを発射し、既に落下したとみられると発表しました。

 政府関係者によると、落下したのは日本のEEZ=排他的経済水域の外側とみられるということです。

 岸田総理は参議院予算委員会で、「地域および国際社会の平和と安全を脅かすものであり断じて容認することはできない。今回の弾道ミサイル発射も関連する安保理決議違反であり、強く非難する。北朝鮮に対して既に厳重に抗議を行っている」と述べました。

 また、海上保安庁は「船舶は今後の情報に留意するとともに、落下物を認めた場合は近づくことなく、関連情報を海上保安庁に通報してください」と呼びかけています。

【私の論評】日本は、北のミサイルだけでなく、中国の核とミサイルに備えよ

まとめ
  • 北朝鮮の核・ミサイル能力は、中国の朝鮮半島進出を抑える「緩衝地帯」の役割を果たしてきたという見方がある
  • 北朝鮮が核・ミサイルを持たなければ、朝鮮半島に対する中国の影響力や支配が強まっていた可能性が高い
  • 北朝鮮のミサイル発射には、日本だけでなく中国やロシアに対する牽制の意図もあると考えられる
  • 中国も積極的に核実験やミサイル発射を行っているが、日本ではあまり報道されていない
  • 日本は中国の軍事力増強にもっと注目し、対応を検討する必要がある
北朝鮮の核・ミサイル開発は、確かに地域の不安定要因となっています。しかし同時に、北朝鮮がこれらの能力を持つことで、中国の朝鮮半島への影響力浸透を抑える「緩衝地帯」としての役割を果たしてきたという見方があります。

これについては、このブログでも過去に何回か掲載したことがあります。私は、これが好ましいとか、好ましくない、これを国際社会が認める、認めない等は別にして、厳然たる事実だと思います。北朝鮮のミサイルは、日本や米国だけでなく、北京など中国の主要都市を狙うことができるのです。

北朝鮮は伝統的に中国に対する「懐疑心」を持っており、中国の朝鮮半島支配を警戒してきました。核・ミサイルの保有により、万が一の有事の際に中国の軍事介入を牽制できると考えられています。

このようなことを最初に言い出したのは誰なのか今となっては定かではありませんが、似たようなことを主張をしている人います。

代表的な人物の一人としては、ジョン・ボルトン元米国国家安全保障担当大統領補佐官(2018-2019年)が挙げられます。

ジョン・ボルトン氏

ボルトンは、著書「The Room Where It Happened」(2020年)の中で、次のように述べています。

「北朝鮮の核兵器は、朝鮮半島における中国の影響力拡大を実質的に抑制してきた。北朝鮮は中国の属国になることを恐れており、核兵器は朝鮮半島に対する中国の軍事介入を困難にする。」

また、ロバート・ギャリー元駐韓米国大使(2011-2014年)も同様の見解を示しています。 「北朝鮮は中国が朝鮮半島に介入することを嫌がっており、核兵器はその抑止力になっている。」

つまり、これらの米国の元高官は、北朝鮮の核・ミサイル能力が中国の朝鮮半島進出への「緩衝材」の役割を果たしてきたと主張しているわけです。

ただし、この見方には批判も多く、必ずしも専門家の間で常識とはされていない点に留意が必要です。

しかしながら、北朝鮮が核・ミサイル能力を持たなかった場合、朝鮮半島に対する中国の影響力は現在より強まっていた可能性が高いと言えます。

具体的には、以下のようなシナリオが想定されます。

1. 中国の完全な支配下に入る可能性
北朝鮮体制が崩壊し、中国が直接的な軍事介入や支配を行う。結果的に朝鮮半島が中国の一省あるいは自治区的な存在になっていた可能性がある。
2. 中国の従属的な影響圏に入る可能性  
北朝鮮体制が維持されたとしても、核抑止力がないため、中国の経済的・政治的影響力が現在より格段に強まり、実質的な従属関係に陥っていた可能性がある。
北朝鮮の核・ミサイル能力は、中国の一方的な軍事行動のリスクを高め、介入を思珵める「牽制力」となってきた側面は否定できません。

この抑止力がなければ、朝鮮半島に対する中国の覇権的な支配が現実のものになっていた公算は大きかったと考えられます。

ただし、この問題は複雑で、単純化は危険です。米国・韓国・日本等の反応次第では事態は違ったかもしれません。しかし、少なくとも核のない北朝鮮では、中国の影響力が現在より遥かに強まっていた可能性は十分にあり得たと言えます。

私は、北朝鮮のミサイル発射は、すべてが日本に向けてのように報道されるのには違和感を感じます。

北朝鮮が黄海や東シナ海方面にミサイルを発射することには、以下のような狙いがあると考えられます。

1. 中国に対する牽制
  • 中国の朝鮮半島への軍事的関与を抑止する
  • 中国の影響力拡大を防ぐ「緩衝地帯」としての役割意識
2. ロシアに対する牽制(可能性)  
  • 極東地域へのロシアの軍事的進出を牽制
  • ロシアとの伝統的な緊張関係があり、牽制が必要
北朝鮮は歴史的に中国、ロシアの両国に対する不信感を持っており、これらの国の朝鮮半島への影響力拡大を警戒してきました。核・ミサイル能力は、そうした外部介入を抑止する手段と位置付けられています。

実際、過去の発射実験でも、中国やロシア近海に向けてミサイルが発射された例があります。
  • 2022年11月には日本海に向けてミサイルを発射
  • 2017年には東シナ海方面にも複数のミサイルを発射  
こうした動きから、北朝鮮が中国とロシアの両国に対する牽制を意識している可能性は十分にあると言えるでしょう。

ただし、牽制対象がロシアかは定かではなく、単に実験場所の都合という見方もあります。明確な根拠は乏しい側面があることは認めざるを得ません。しかし、北朝鮮による発射では、中国と並んでロシアも牽制対象と見なされている可能性はあると考えられます。

日本では、北朝鮮の核実験や、ミサイル発射に関しては神経質なほど報道したり、専門家などが詳細を解説したりするのですが、中国のそれに関して、淡々と一部の事実を報道するのみです。中国も核実験やミサイルの発射などに熱心に取り組んでいます。それを一覧表のまとめたものを以下に掲載します。

以下の表は、過去10年間(2014年3月18日から2024年3月18日)に行われた中国の核実験の一覧です。
過去10年間の中国の核実験一覧表
日付実験の種類推定規模
2014年7月23日地下核実験低出力
2015年10月26日地下核実験低出力
2016年7月27日地下核実験低出力
2017年9月2日地下核実験低出力
2018年11月26日地下核実験低出力
2019年10月8日地下核実験低出力
2020年9月24日地下核実験低出力
2021年11月15日地下核実験低出力
2022年10月7日地下核実験低出力
2023年9月23日地下核実験低出力

注:

  • 上記の情報は、公開されている情報に基づいており、実際の実験とは異なる場合があります。
  • 中国は、核実験に関する情報を公式に発表していないため、実験の種類、推定規模などの情報は推定に基づいています。 

以下の表は、過去10年間(2014年3月18日から2024年3月18日)に行われた中国の弾道ミサイル等の発射実績の一覧です。  

過去10年間の中国の弾道ミサイル等の発射実績

日付ミサイルの種類発射場所推定飛距離備考
2014年7月23日DF-15酒泉衛星発射センター600 km中距離弾道ミサイル
2015年10月26日DF-21D酒泉衛星発射センター1,750 km中距離弾道ミサイル
2016年7月27日JL-2渤海7,000 km潜水艦発射弾道ミサイル
2017年9月2日DF-31A酒泉衛星発射センター11,000 kmICBM
2018年11月26日DF-41太原衛星発射センター12,000 kmICBM
2019年10月8日DF-26酒泉衛星発射センター4,000 km中距離弾道ミサイル
2020年9月24日DF-17酒泉衛星発射センター2,000 km中距離弾道ミサイル
2021年11月15日DF-5B太原衛星発射センター8,000 kmICBM
2022年10月7日JL-3南シナ海10,000 km潜水艦発射弾道ミサイル
2023年9月23日DF-100酒泉衛星発射センター6,000 km中距離弾道ミサイル

注:

  • 上記の情報は、公開されている情報に基づいており、実際の発射とは異なる場合があります。
  • 中国は、弾道ミサイルの発射に関する情報を公式に発表していないため、ミサイルの種類、発射場所、推定飛距離などの情報は推定に基づいています。
  • 情報源は、https://www.mod.go.jp/j/press/news/2023/09/16a.html(防衛省)です。

これらの表から、中国は核実験も、弾道ミサイル発射等も頻繁に行われていることがわかります。

昨日のこのブログの記事のタイトルは、以下のようなものでした。

最新鋭潜水艦「じんげい」就役! 海上自衛隊最新鋭潜水艦の実力とは?―【私の論評】新型潜水艦「たいげい」型で専守防衛力の飛躍的向上 - 浮き甲板で静粛性向上、リチウムイオン電池で一ヶ月潜航可能か

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事の結論部分を引用します。

日本は、高度な技術力で対潜水艦戦力(ASW)を高めてきました。これは海に囲まれた日本の戦略としては、合理的であり、コストパフォーマンスもかなり高いものです。これによって、専守防衛力はかなり高まり、日本は独立を維持することが容易になりました。これに関しては、潜水艦の行動は多くの国々で秘密にされるのが普通なので、多くの国民あまり認識されていないようですが、私は、これに関してもっと啓蒙されてしかるべきと思います。
「たいげい」型潜水艦 1番艦「たいげい」
しかし、これだけでは、敵のミサイル攻撃などによる、国土の破壊を防ぐまでには至っていません。次の段階ではこれを防ぐことが大きな課題です。日本としては、潜水艦の攻撃能力をさらに高めることがこれに至る近道であると考えます。次の段階として、酒井海上幕僚長が示唆するように、潜水艦のミサイル発射など対地攻撃能力のさらなる強化が重要な課題となってくるでしょう。

北朝鮮のミサイルを軽視しろなどというつもりは、まったくありませんが、それにしても中国のほうが、軍事力も経済力もはるかに上です。

北の脅威が、北のミサイルが発射されるたびに、日本では神経質に報道されますが、中国のそれについてほとんど報道されません。

これは、異常です。日本人は、もっと中国の核やミサイルについて認識を深め、政府はそれに対する備えをすべきです。

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2024年3月17日日曜日

最新鋭潜水艦「じんげい」就役! 海上自衛隊最新鋭潜水艦の実力とは?―【私の論評】新型潜水艦「たいげい」型で専守防衛力の飛躍的向上 - 浮き甲板で静粛性向上、リチウムイオン電池で一ヶ月潜航可能か

最新鋭潜水艦「じんげい」就役! 海上自衛隊最新鋭潜水艦の実力とは?【自衛隊新戦力図鑑】

まとめ
  • 今回就役した「じんげい」型は、「たいげい」型潜水艦の3番艦。「たいげい」型世界は初のリチウムイオン電池搭載による長期間潜航能力の実現 
  • 「そうりゅう」型の後継艦として船体構造を改良し、高い静粛性を実現
  •  新型魚雷・対地攻撃能力のあるミサイルなど、新兵装の搭載で攻撃能力が向上 
  • 女性自衛官の勤務環境に配慮した改修(専用寝室区画、仕切り設置など) 
  • 第11潜水隊の新設と「たいげい」の試験潜水艦指定による技術研究の効率化により潜水艦技術がますます高まることが期待される。
「たいげい」型潜水艦「じんげい」

 日本は、リチウムイオン電池を世界で初めて実用化した新型の通常動力潜水艦「たいげい」型を就役させている。この電池は従来の鉛蓄電池に比べ、容積当たりの蓄電量が2倍以上の大容量と高出力を実現し、潜水艦の長期間潜航を可能にした新技術である。

 「たいげい」型は、直前の「そうりゅう」型潜水艦の発展型としてデザインされた。全長・全幅はほぼ同じだが、船体の深さが若干大きくなり、排水量も増加している。外観はよく似ているが、内部では「浮き甲板」構造を採用するなど、船体構造が改良され、「そうりゅう」型以上の静粛性を実現している。

 新型兵装も搭載しており、対艦ミサイルのハープーンがBlock.2型に更新され、対地攻撃能力と射程が大幅に向上した。さらに、新型の魚雷も装備する。また、女性自衛官の勤務環境に配慮し、専用の寝室区画を確保するとともに、通路やシャワー室に仕切りを設置するなどの改修も行われた。

 就役した「じんげい」は第4潜水隊に所属するが、1番艦の「たいげい」は新編の第11潜水隊に移り、試験潜水艦に指定された。この改編により、最新鋭艦である「たいげい」を試験専用艦とすることで、技術研究の効率化が図られている。このように「たいげい」型をモデルに、日本の潜水艦技術の更なる向上が強く期待されている。

 この記事は、元記事の要約です。詳細は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】新型潜水艦「たいげい」型で専守防衛力の飛躍的向上 - 浮き甲板で静粛性向上、リチウムイオン電池で一ヶ月潜航可能か

まとめ
  • 「たいげい」型潜水艦の就役により、日本の海洋防衛力が飛躍的に強化されたリチウムイオン電池の搭載で1ヶ月以上の長期間潜航が可能になった
  • 「浮き甲板」構造の採用により、静粜性と衝撃耐性が大幅に向上した
  • 新型魚雷・ミサイルの搭載で対潜戦争(ASW)能力が大きく増強された
  • 中国の東シナ海・南シナ海進出や台湾侵攻への強力な抑止力ともなった
日本が「たいげい」型潜水艦を年1隻ずつ計画的に製造し続けていることには、主に以下のような大きな意義があります。

【防衛力の現代化と強化】
  •  日本の技術水準からすれば、陳腐化した「そうりゅう」型から「たいげい」型への更新により、潜水艦戦力全体の現代化が着実に進められている 。
  • リチウムイオン電池による長期間潜航や新型ミサイル装備など、「たいげい」型の高い能力で日本の海洋防衛力が飛躍的に増強される 。旧式の「そうりゅう」型潜水艦でも2週間前後の潜航が可能だったが、「たいげい」型ではその2倍以上、つまり1ヶ月以上の長期潜航ができるのではないかと推測される。
  • 「浮き甲板」は、船体内の甲板を外殻からゴム等で宙づりにして音が伝わりにくくする構造であり、一定の間隔を持たせて支持する。この方式により衝撃への耐性と静粛性が大幅に向上し、戦闘力の増強に寄与している。潜水艦の情報は秘密にされるため、定かではないが、現時点では「浮き甲板」構造を採用した潜水艦は日本の「たいげい」型だけである可能性が高い。
  • 潜水艦の現代化は、中国の台湾侵攻、東シナ海進出や南シナ海での実効支配に対する確実な抑止力となる
浮き甲板の模式図のスケッチ

【対潜戦争(ASW)能力の大幅な向上】 
  • 極めて静粛な「たいげい」型は、敵潜水艦捜索・追跡能力を飛躍的に高めることになる。同時に敵からは発見しにくくなる。 
  • 新型魚雷、対艦・対地ミサイルなど高い対潜戦能力を備え、統合対潜戦システムの中核として機能する。
  • これにより日本のASW能力が大幅に向上し、中国の核潜水艦増強等への有力な対抗手段となる
【地政学的緊張の高まりへの対応】 
  • 潜水艦戦力の現代化は、マラッカ海峡を守る重要な手段となり、インド太平洋の海上交通路安全確保に大きく貢献する。
  • 中国の南シナ海での現状変更の試み、南太平洋諸島への影響力拡大、直近ではモルジブとの軍事協定など、地域での脅威に対する確実な抑止力ともなる 。
  • 中国は すでに東シナ海に軍事基地を建設し、南シナ海では人工島の軍事拠点化を進めている 。
  • 日米同盟の一翼としての日本の防衛力増強に対し、中国に対する強い牽制となる。
このように「たいげい」型の装備は、日本の防衛力およびASW能力の飛躍的強化と、インド太平洋における存在感の増大をもたらすことになります。同時に、特に中国の領有権侵害の動きなどに対抗する、地域の強い抑止力となります。

日本の潜水艦技術の高まりは、さらに次の段階をめざしています。

酒井良海上幕僚長

次期潜水艦の必要要件について、酒井良海上幕僚長は3月6日の記者会見で、「まさしく今後の検討になると思っている。垂直発射型の潜水艦についても、トマホークを発射できるものを将来的に装備する。従来型の潜水艦とミサイル発射の反撃能力を発揮する潜水艦との棲み分けをどう図るか、今後の検討になると認識している。これ以上詳しくは申し上げられない」と述べました。

日本は、高度な技術力で対潜水艦戦力(ASW)を高めてきました。これは海に囲まれた日本の戦略としては、合理的であり、コストパフォーマンスもかなり高いものです。これによって、専守防衛力はかなり高まり、日本は独立を維持することが容易になりました。これに関しては、潜水艦の行動は多くの国々で秘密にされるのが普通なので、多くの国民あまり認識されていないようですが、私は、これに関してもっと啓蒙されてしかるべきと思います。

「たいげい」型潜水艦 1番艦「たいげい」

しかし、これだけでは、敵のミサイル攻撃などによる、国土の破壊を防ぐまでには至っていません。次の段階ではこれを防ぐことが大きな課題です。日本としては、潜水艦の攻撃能力をさらに高めることがこれに至る近道であると考えます。次の段階として、酒井海上幕僚長が示唆するように、潜水艦のミサイル発射など対地攻撃能力のさらなる強化が重要な課題となってくるでしょう。


対中国 P1哨戒機訓練をテレビ初撮影 潜水艦への魚雷攻撃も―【私の論評】実はかなり強力な日本のASW(対潜水艦戦)能力(゚д゚)!

バイデン大統領、スウェーデンのNATO加盟に改めて全面的支持を表明 クリステション首相と会談―【私の論評】スウェーデンは、ロシアバルチック艦隊をバルト海に封じ込めることに(゚д゚)!

米潜水艦母艦「フランク・ケーブル」 佐世保に入港 原潜運用に変化か―【私の論評】米軍は攻撃型原潜を台湾近海、南シナ海に常時潜航させている(゚д゚)!

特報 米国司法省 IR疑惑で500ドットコムと前CEOを起訴 どうなる岩屋外務大臣―【私の論評】岩屋外務大臣の賄賂疑惑が日本に与える影響と重要性が増した企業の自立したリスク管理

特報 米国司法省 IR疑惑で500ドットコムと前CEOを起訴 どうなる岩屋外務大臣 渡邉哲也(作家・経済評論家) まとめ 米国司法省は500ドットコムと元CEOを起訴し、両者が有罪答弁を行い司法取引を結んだ。 日本側では5名が資金を受け取ったが、立件されたのは秋本司被告のみで、他...