2010年10月30日土曜日

もてなしの心 ~ トイレットペーパー折紙「ハート」―【私の論評】この現象は何かのメルクマール(目印)になるかもしれない?

もてなしの心 ~ トイレットペーパー折紙「ハート」


世界に誇る日本のトイレと、日本の文化である折り紙が融合しました。

トイレットペーパー折紙のオフィシャルサイト

http://toiletorigami.com/

林製紙株式会社

なんと、このハートの折り方をプリントしてあるトイレットペーパーも、販売されているとは!!驚きです。

【私の論評】この現象は何かのメルクマールになるかもしれない?
この折り紙、これ自体は非常に日本人らしいですね。この感性、欧米にもないでしょうし、中国でも無理でしょう。良い悪いは別にして、日本独特のものだと思います。消耗品のトイレットペーパーにまで、こうして自らおもてなしのために、工夫するなんて日本人の独壇場だと思います。

このトイレットペーパー折り紙については、いわゆるあの例の「三角折」から発展したものだと思います。この「三角折」の起源は、どうやら、元々ホテルなどで清掃員の人が「清掃済」の印に行うもので、ロールを新しいものに替えたときにするものです。それから、いわゆるスナックなどの飲食店にも広まっていったものです。

だから、良く少し前までは、どこかのうちで、「三角折」などしていると、そこの家の人が、スナック関係の人なのかなとはやとちりする人もいたようです。

この「三角折」に関しては、前から、賛否両論でした。いまでも、サイトをいろいろみてみると、反対派の意見が掲載されているのを散見します。

その代表的な意見を下に掲載します。これは、女性のコメントです。

よく考えれば判りますが、普通、手を洗ってから改めてペーパーを折ったりはしませんよね? モノを拭いたその手で折ると思います。これって、実は物凄くばっちいことなんですね(当然、清掃の人はモノを拭いた手で折るわけではありません)。
よその家でトイレを借りたときなど、「ちょっとした気遣い」のつもりで三角折りをすると、時に非常に嫌がられます。曰く、「汚いからやめてくれ」「次に使う気が失せる」「そんなに、トイレに自分が入った痕跡を残したいのか」……酷い言われようですけど、三角に折ること自体に意味がないので反論のしようがないのは仕方ないです。っていうか大山のぶ代さん(ドラえもんの声優)も「マナーのつもりでやってるなら、三角折りは止めなさい」と力説していらっしゃいましたし(笑)
とはいえ、これを本気でマナーと考えてしまっている人も結構いらっしゃるようなので、自分が入ったときにペーパーが三角折りされていたときは……自分もしといた方がいいかも知れませんね。上とは逆に「マナーがなってない」って思われるやも知れませんから (^^;)
ちなみに、「次の人が取りやすいよう」にしたい場合、ロールをほんの少しだけ手前に回せばそれで OK でしょう(前の方にペーパーがたれてくる)。

しかし、いつの間にかこの三角折が独自の発展をしていて、トイレットペーパー折り紙にまで発展していたということです。

この折り紙、やはり、日本人特有のものです。海外では一切みたこともないし、聴いたこともないです。日本人は、昔から折り紙が好きです。災害や病気のお見舞いにも、千羽鶴が送られたりします。先日のチリ鉱山の落盤事故のときにも、日本全国から大量の千羽鶴が送られたそうです。

それに、これにちなんで、折り方が印刷されているものまで、現実に販売されているということは驚きです。

これは、今後どうなっていくのでしょうか?独自の発展を遂げて、普及していくのでしょうか?あるいは、一時のただのブームのようなことで終わってしまうのでしょうか?はたまた、ごく一部の趣味人のような人たちのなかだけで継承されていくのでしょうか?

これに関しては、昨日掲載した、二種類のソースを一度でかけることができる、ディスペンサーパックとは異なり、まだまだ、世の中に普及しているわけでもなく、ましてや、社会的イノベーションに発展しているものではありません。

しかし、これがこれから、かなり普及していくとすれば、何らかのドラッカーのいうところの、イノベーションの機会であることの「認識の変化」につながっていることには違いないと思います。

トートーのウォシュレットも今では、日本に完全定着してしまって、海外に行くとこれがないで嫌がるひともいるほどになってしまいました。一昔まえなら、全く考えられないことです。昔の日本人の認識では、トイレと不浄なところという認識が一般的で、トイレを清潔にすることは無論のことですが、今日のようなハイテクトイレが誕生するなど誰も思いつきもしないものだったと思います。


これは、さらに発展して、今日のハイテクトイレにまでなっていて、これは、外国人から見ると上の動画のようにかなり奇異なことにも感じられているようです。

いずれにせよ、まだ、どうなるかわからないこの「トイレットペーパー折り紙」今後どうなっていくかで、認識の変化を見定めることができるかもしれません。その意味では、メルクマール(目印)になるかもしれません。このブログで、今後これも追跡して、何か変化があれば、また掲載したいと思います。

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「日本人は凄い!」「この容器は神だ」 お馴染みの「パック」を世界が絶賛―【私の論評】イノベーションは社会を変える?

今日は何があった日かご存知ですか?(カップヌードルが生まれた日、9月18日に関する記事です)



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2010年10月29日金曜日

「日本人は凄い!」「この容器は神だ」 お馴染みの「パック」を世界が絶賛―【私の論評】イノベーションは社会を変える?

「日本人は凄い!」「この容器は神だ」 お馴染みの「パック」を世界が絶賛


   コンビニでアメリカンドッグを買ったり、飲食店でサラダなどを頼んだりしたときにケチャップやドレッシングなどが入ったパックが付いてくる。片手で2つ折りにすれば中身を出すことが出来て、手が汚れない便利な容器だが、実は、ケチャップやマスタードなど2種類の内容物を同時に出せるものは、日本独自の技術であり、日本でしか手に入らないのだという。

   現在、投稿動画サイト「ユーチューブ(YouTube)」で、この容器を使ってフランクフルトにケチャップとマスタードを掛ける13秒ほどの動画がアップされていて、驚いた世界の人々が英語で「この容器は神だ」「日本人は器用で優れている」など絶賛の書き込みがコメント欄に出ている。
ユーチューブで話題、閲覧数8万を超える

   「ユーチューブ」で話題になっている動画のタイトルは「7 Eleven Japan Hot Dog Japan with no mess...」。投稿者はアメリカ人で、画面には「セブンイレブン」で買ったと思われるフランクフルトが大写しされる。そして日本ではお馴染みのケチャップとマスタードが別々に入った容器が出てくる。容器には日本語で「トマト&あらびきマスタード」と書かれている。それを片手で二つ折りにすると、容器からケチャップとマスタードが紐のようになり落ちてきてフランクフルトに掛かった。

  私達にとっては見慣れた事なのだが、「ユーチューブ」のコメント欄には

「このパケットは神だ」「凄い技術だ」「こんな素晴らしいパッケージを持っていたら誰かに嫉妬される」「これを見ると日本人は優れているのが分かる。彼らは世界を治めるだろう」

などと絶賛された。閲覧数は8万を超えた。

   この容器は「ディスペンパック」と呼ばれていて、もともとは1983年にアメリカの企業が特許を取った。そして86年に三菱商事が日本での独占実施権を取得し、キユーピーと、三菱商事、三菱商事パッケージングの3社が合弁しディスペンパックジャパンを設立してから日本で広まることになる。今ではコンビニのテイクアウトに欠かせないものになり、飲食店や学校給食でも使われている。
ソースを2つ同時に出せる技術は日本だけ

   この容器、初めは1種類のソースしか出すことが出来なかったが、ソースなどを入れるフィルムの開発や、ソースの出口を工夫することにより2種類のソースを同時に出したり、2種類のソースを出口で混ぜ合わせて出したり出来るようになった。キューピーの広報によれば、この「ディスペンパック」が作られている国は、日本以外でオーストラリアと韓国があるが、2種類のソースを出すことができるのは日本だけだという。日本では当たり前に使われているが世界では珍しい容器であり、キューピー広報は「ユーチューブ」で話題になっていることについて、

「これをきっかけに世界の各国に日本の技術で作られたディスペンパックが広がっていけばうれしい」

と話している。

【私の論評】イノベーションは社会を変える?
イノベーションというと、多くの人は壮大なイメージを描くようですが、これだって立派なイノベーションですね。私は、いわゆるIT関係のイノベーションもすごいと思いますが、こういうイノベーションも大好きです。

私は、この動画のようにセブンイレブンで、アメリカンドックは買ったことがないので、これ自体は使ったことはないのですが、近所のスーパーで、ホットケーキ用の、蜂蜜とバターが入った、ディスペンサーをつかつたことはあります。何と、これは、いくつかバックになって売られており、パンなどにかけ食べるのには本当に楽です。特に朝急いでいるときなど、本当に便利です。

これって、かなりの社会変革をしています。たとえば、これがなかったとしたら、昔のようにコンビニに、大きなディスペンサーを二本設置しておき、お客が自分でかけるか、あるいはコンビニの従業員がかけることになると思います。通常は、店の中で食べることはないので、持って帰ると、水分が飛んでしまうとか、容器にへばりついてしまうとか、いろいろ考えられます。しかし、このディスペンサーなら、いつも新鮮ですし、それに、コンビニサイドで考えれば、日々の詰め替え作業とか、洗う作業が削減されます。

学校の給食などでは、これを導入することにより、給食をつくる人たちが、ディスペンサーでかけるとか、あるいは生徒がデイスペンサーをもちまわりでかけるなどという手間が省けます。それに、常識的な量がいれられてるので、節約にもなると思います。こちらも、生徒や給食をつくる人たちの手間が大幅にセーブできます。これから、レストランなども用いられるようになるかもしません。

ドラッカー氏は、その著作「イノベーションと起業家精神」の中で、イノベーションの機会を以下の八つに集約していす。
1.予期せぬ成功と失敗を利用する
2.ギャップを探す
3.ニーズを見つける
4.産業構造の変化を知る
5.人口構造の変化に着目する
6.認識の変化をとらえる
7.新しい知識を活用する
8.アイディアによるイノベーション
このイノベーションに関しては、3.のニーズを見つけることから、実現されたものと思います。この機会については詳しいことはドラッカーの書籍にあたっていただくものとして、「何がニーズであるか明確に理解されている、イノベーションに必要な知識が手に入る、問題の解決策が使う者の価値観に一致している」としています。

「何がニーズであるか」については、やはり、上記で記載したような面倒や、いわゆる汚さ、それに、コンビ二などでは、コスト節減ということがあったと思います。

「イノベーションに必要な知識」については、まずは、アメリカの会社の特許があったということです。しかし、さすが日本の企業です、そこから発展させて、二つのソースを一度に入れ込むことに成功したとうことです。

「問題の解決策が使う者の価値観に一致」に関しては、やはり、使う人自体には便利さ、それに、これは大きなことですが、コンビ二にしろ、学校給食にせよ、かなりのコストの削減になることがあげられます。

これに近いこと、私の会社でも、あります。それは、ピザの辛いペッパーソースを一昔前は、手で小瓶に入れていましたが、これがなかなか大変な作業でした。何しろ、辛い液体ですから、何本もやってると、どうしても指についてしまい、指先も痛くなったり、目がしみることがありましたし、時間もかかって大変でした。

これをあるときから、ビニールのバック詰めにしたのです。こうすることにより、大幅にコスト削減されたと思います。現在、あのプラスチックの小瓶はどこでもみかけなくなりましたね。今は、醤油もなんでもパック詰めです。これで、どれだけの手間が省かれたのか考えると、すごいことですね。まさに、社会を変革しています。

上記のような二つソースを入れられるディスペンサーを用いたら、何か新しい味覚を発見できるかもしれませんね。それも、食べる直前にかけられるので、良いと思います。

それから、前に、イノベーションの例として、リアルフアッションについて掲載したことがあります。これについては、上のどのイノベーションの機会を利用したものなのか、掲載しませんでしたが、これは、「ギャップを探す」の事例だと思います。

ギャップを探すとは、ドラッカーの言葉をまとめると、「あるべきレベルと現実の乖離・不一致、定性的、内部に存在、内部の人間は見逃しやすい」としています。

「あるべきレベルと現実の乖離・不一致」については、20年前からデフレ基調の世の中にもかかわらず、プレタボルテなど、いわゆるファッション性の高い服はとてつもなく高かったということが挙げられます。それから、現在では、フアッションの移り変わりが激しいというのに、既存のフアッションは十分にそれに応えていませんでした。デザイナーがデザインを考えてから、市場に実際に出回るまでに、1年以上もかかっていました。

「定性的」に関しては、まさしくフアッションセンスなど、定性的なものであり、定量化などできません。

「内部に存在」に関しては、まさくは、リアルフアッションに関するものは、リアル・フアッションを起こした人たちの内部にあったものです。フアッションセンスと、工夫でできたものです。いや、それどころか、既存のファッション業界でも、やろうと思えばできたと思います。ただ、やらなかったというだけです。というより、「内部の人間は見逃しやすい」ということかもしれません。

そうです。フアッション業界、それも正統派業界にいた人ならば、リアルフアッションが世の中に認められる時代がくることは、本来ならば、気がついても良かったと思いますが、どっぷり既存の世界につかっていたので、気づかなかったという事だと思います。


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2010年10月28日木曜日

Googleが日本でもショッピングサーチを開始―eコマースの本質はやはり広告か?!

Googleが日本でもショッピングサーチを開始


Googleが日本でもやっとショッピングサーチのGoogleショッピングを開始したようだ。Googleショッピングはデータのクローリングも行われるが、店舗側が自由に自社の商品と価格のデータをアップロードできるという特徴を持つ。すでにデータとして相当数が集められているようだ。興味深いのは国内の大手ショッピングモールとしては、現時点ではヤフーショッピングの店舗データは掲載されているようだが、楽天の店舗データが掲載されていないところかもしれない。

国内では商品の価格検索では価格.comやconeco.netなどがあるが、これらは商品レビューサイトの要素も強いので必ずしも直接の競合とはならないだろう。通販検索アラジン・サーチやビカムといった商品検索サイトとの競合が考えられる。

【私の論評】eコマースの本質はやはり広告か?
私は、最近シャープのアクオスを購入しましたので、試しに、Google Shoppingで検索してみました。私が購入したのは、LC-32E7-Bという型です。amazon.jpで購入しました。購入価格は、49,800円でした。これは、現在Amazonでも、価格が上昇して、5万円台になっています。


さて、調べてみたところ、何と最安値で、45,900円で販売していました。そこで、がっかりしたのですが、良く見てみると、何とこの最安値のところは、売り切れになっていました。そこで、さらに調べてみると、現在売っている中では、最安値であったことがわかり、ほっとしました。


Google Shoppingは、いろいろな店が検索できるので、良いと思います。上の、記事では、価格.comや、coneco.netなどが、商品レビューサイトの性格が強いので、必ずしも直接の競合とはならないだろうということを述べていますが、私はそうではないと思います。


レビューを見て、結局は、Google Shoppingで買い物をする人も増えてくるのではないかと思います。それに、今のところは、レビューを掲載していませんが、そのうち、Google Shoppingでもレビューを含め他の機能も掲載するかもしれません。そうなれば、Google Shoppingの独壇場になる可能性もあります。


それにしても、やはり、Googleは広告ですね。Googleはいろいろな分野に手を出していますが、その収益のほとんどがいまでも広告によります。


以前、ネット関連企業のビジネスモデルは、煎じ詰めれば、広告のビジネスモデルだということを掲載しました。まさに、その通りで、現在既存の広告会社の業績が悪いとか、新聞・テレビの具合が悪いというのもうなづけます。なぜなら、いろいろ形を変えているので、はっきりとは認識されていませんが、Googleはもとより、楽天も、Amazonもビジネスの互いにやり方は異なるものの、すべて広告ビジネスをしているからです。


楽天だって、巨大バーチャル・ショッピングモールを出していますが、結局は本質は広告です。ショッピング・モールそのものが大きな広告塔です。アマゾンだって、直営でやっているだけで、その本質は結局はサイトという広告です。


いまのところ、eコマースについては、この広告というビシネスモデル以外には成功しているものはないと思います。これは、いままの普遍的な事実であって、おそらく、eコマースを企画する人は、この広告が本質ということを忘れてはならないと思います。どんな形であれ、何らかの広告の形式をとらないと成功はしないということです。


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2010年10月27日水曜日

「無知」が選挙争点になっているアメリカ ティーパーティーに誰が金を払っているのか―日本も似たり寄ったり?(アメリカのシンクタンクのリスト掲載)

「無知」が選挙争点になっているアメリカ 誰がティーパーティーに金を払っているのか



今年、中間選挙を控える米国で、反オバマ運動が拡大している。同政権の医療保険改革や金融機関救済策などに反対する草の根運動が、昨年から全米の各地で発生。その多くが「ティーパーティー」(茶会)を名乗っています。

命名の由来は、米国独立の契機を作ったボストン茶会事件(Boston Tea Party)です。1773年に港湾都市のボストンで、英国議会の植民地政策(茶への課税や東インド会社に対する税の免除)に反対した急進派が停泊中だった東インド会社の船を襲い、積荷の紅茶を海に投げ入れた事件でした。この事件が英国の植民地政策をさらに強め、最終的には米国の独立運動につながりました。

反オバマ運動を展開する人々は、おそらく現在の政権を当時の英国と重ね合わせて見ています。オバマ政権が大規模な財政出動を行い「増税」を志向する姿が、当時の英国の姿に重なったのです。政治による過剰な介入を嫌う感覚は、米国の底流に流れる文化とも言えます。

Gooには、ニュースな英語というコラムがあります。今週は、この茶会運動に関して、『「無知」が選挙争点になっているアメリカ 誰が金を払っているのか』というタイトルで掲載されています。その要約を以下に掲載します。本文は以下のURLをご覧になってください。

http://news.goo.ne.jp/article/newsengm/world/newsengm-20101022-01.html
茶会運動や共和党の候補たちの全てが政教分離について無知なわけではありません。けれどもほぼ全員が等しく(世界の多数意見に抵抗して)否定している、科学知見があります。人為的な地球温暖化です。
『ニューヨーク・タイムズ』紙は社説で、今年の共和党候補たちはほとんどが、地球温暖化は人為的なものだという科学的知見を否定していると批判。「かつてディック・チェイニーが10年前に完成させた戦法を、繰り返しているのだ」と。たとえばネバダ州で民主党のハリー・リード上院院内総務と戦い、すさまじい中傷戦を展開しているシャロン・アングル候補は「温暖化が人為的だというのは、左翼のスローガンに過ぎない」と公言。カリフォルニア州から上院に出馬したヒューレット・パッカード元CEOのカーリー・フィオリーナ候補も「はっきりどちらとも言えない」と発言していると。
同紙社説は「共和党は今でもディック・チェイニーの物まねをしている」と批判しています。ピュリツァー賞受賞の『ワシントン・ポスト』紙連載をもとにした『策謀家チェイニー』によると、チェイニー前副大統領はブッシュ政権のエネルギー政策を掌握し、経済活動の効率化を最優先に掲げ、地球温暖化は人為的なものだという科学知見に懐疑の目を向け、排出規制を次々と緩和・撤廃していった中心人物とされています。
チェイニー氏自身は決して、政治と信仰をごちゃまぜにするような人ではありません。しかし、議員や有権者がごちゃまぜにするのを止めさせようとはしない。有権者が勝手に聖書を論拠に温暖化を否定するなら、それに反論もしない。他人の信仰や誤解や無知蒙昧を、自ら掲げる政策実現のために利用するのが、チェイニー流です。
チェイニー的な温暖化否定はあくまでも経済活動を最優先させてのものです。しかし茶会運動では、それがキリスト教原理主義と結びつき、私たち日本人には(というか世界のほとんどには)分かりにくいことになっている。たとえばインディアナ州で茶会運動グループを主催する男性は、『ニューヨーク・タイムズ』紙にこう答えています。
「(人為的な温暖化は)まったくの嘘っぱちだ。自分は聖書を読んでるから分かる。神様は、私たち人間が活用するためにこの世を作ったんだ」
確かに、6日間かけて世界を作って7日目にお休みになった神様と、その神様が作った世界ならそうかもしれませんが……。
○アメリカのアンチ知性
最後に。無知を善しとするこの一部のアメリカ保守派の価値観はどこから来るのだろうとずっと考えています。たとえば、彼らが強烈に信仰する、アメリカ的キリスト教の影響ではないだろうかと。アメリカに渡ったキリスト教は、欧州の大神学校や修道院と切り離されて、西部開拓と組み合わさり、独自の発展をしました。大雑把に言うと、聖書さえ読めばいい、あとは個人の霊験を重視するという新興宗派が多いと言えます。そういうキリスト教宗派では、学問や思索を軽視する風潮がセットになっている気がしてなりません。キリスト教を離れても、アメリカでは学問や思索で得る知識や洞察ではなく、体験的な直感をなにより重視する風潮が(主にキリスト教右派の間に)ある。1964年にピュリツァー賞を得た『Anti-intellectualism in American Life(アメリカの反知性主義)』の論考は、いまだに有効なのだと思います。
【私の論評】日本も似たり寄ったりか?
さて、アメリカの無知の系譜、象徴的なのは、ペイリンさんでしょう。ベイリンさんは、アメリカ合衆国アイダホ州生まれの保守派の政治家です。共和党所属。アラスカ州知事(第11代)、2008年アメリカ合衆国大統領選挙における共和党の副大統領候補です。最近はティーパーティー運動でも活躍しています。
アフリカを国だと思っていたベイリンさん
さて、彼女の無知ぶりを示す査証として、私がはっきり覚えていることとしては、以下のようなものがあります。

米FOXテレビは2008年11月6日、米大統領選で敗れた共和党マケイン上院議員の陣営関係者の話として、副大統領候補だったアラスカ州知事のサラ・ペイリン氏がアフリカを大陸ではなく国名だと思っていたと伝えていしまた。

マケイン陣営は「副大統領に不可欠な知識」の欠落に驚き、ペイリン氏の能力に強い懸念を抱いていました。

実は、ブッシュ元大統領も、アフリカという国という失言をしています。また、ペイリンは、北米自由貿易協定(NAFTA)の加盟3カ国(米国、カナダ、メキシコ)を知らなかったというが、ブッシュもソーシャル・セキュリティ(アメリカの公的年金)を知りせんでした。二人はよく似たところがあります。

まあ、元大統領や、大統領候補がこの有様ですから、ティーパーテーイーのメンバーがどの程度のものかさっしがつくというものです。

アメリカ、それも地方に行かれたかた、ご存じの方も多いと思いますが、本当に彼地の、住民は自分のまわりのことしか関心がなく、無知な人が多いです。それに、都市部でも、無知な人はかなり多いです。以前このブログでも紹介しましたが、「アメリカ人の半分はニューヨークを知らない」などというセンセーショナルなタイトルの書籍もあるくらいです。

上の、コラムの要約では、要約の都合でカットしてしまった部分もありますが、タイトルにでているように誰が金を払っているかが問題です。こうした、大衆の無知につけこんで、世論を形成し、自分たちの都合の良いように政治を動かそうとしているのです。無知なブッシュや、ペイリンも自分でもきがつかないうちにこうして動かされているということです。

私は、以前このブログで欧米諸国の国民の政治的成熟について語りました。しかし、こういう事例をみていると、混迷ぶりがうかがわれます。しかし、こうしたアメリカですら、日本のように頻繁にいわゆる国家元首(アメリカでは大統領、日本では総理大臣)が頻繁に変わるということはありません。

こう考えると、日本もやはり、似たり寄ったりのところがあるのかもしれません。

ただし、日本に比較すると、アメリカにはいわゆる政治に関する安全装置のようなものがあるのだと思います。これは、大きくいって二つあると思います。

まず、一つは二大政党制です。この二大政党制によって、政治の継続性が保たれるということがあります。アメリカでは、政権交代をしたからといって、日本のように政治の内容ががらりとかわるということはありません。6割~7割くらいは、共和党だろうと、民主党だと変わりはありません。その時々で違いますが、残りの4割から3割が変わるということです。国の根幹をなすようなことは、どちらの政党になっても変わりません。日本の場合は、そのような土壌が形成されていません。

それと、もう一つは有能なシンクタンクがあります。多くのシンクタンクが、アメリカの長期ビジョンを持って、政策提言を行っています。それも、多くのタイプがあります。それこそ、政党に属するもの、国の機関、あるいはNPOもあります。これらが、国政にかなり大きな影響を及ぼしています。アメリカの政治も日本と同じように、政府はそのときどきの思惑で、政策転換などに流されやすいということがあります。日本にも、自民党、民主党のシンクタンクがありますが、これらはシンポジュウムや、パネルディスカッションを行うだけで、実効的な活動はしていませんし、出来ないのだと思います。

日本でこのような本来の意味でシンクタンク的な役割をしていたのは、官僚だと思います。しかし、この官僚のシンクタンクでは、もう用をなさなくなっているのが実体なのだと思います。特に、現在はいろいろな意味で大変革の必要なときです。あまり変化のない時代であれば、官僚シンクタンクでもなんとかなったのでしょうが、やはり、今の時代にはあいません。官僚は、立場上官僚を中心にものを考えるのであって、日本国や、国民のことはあまり考えているわけではありません。

アメリカでも、日本でも、一般国民は目先のことや、自分の感覚だけでものを考え、選挙をしているのだと思います。だからこそ、小泉さんの郵政民営化選挙で、自民党が大勝したり、今度は、民主党の政権交代で民主党が圧勝してしまったり、極端から、極端に動くのだと思います。それは、ある意味仕方のない事だと思います。多くの人は、まずは、自分が自立できるように努力すること、企業であれば、まずは、企業が成り立つように努力することが、つとめだからです。それは、日米とも変わりがないと思います。

しかしながら、日本は、日本なりの日本の風土にあった安全装置を設置する必要があると思います。有権者は、自分の身の回りのことから選挙をするしかないし、政治家は有権者の意向に左右されるのはある程度しかたのないことです。だからこ、私はは、特に、民間のシンクタンクの役割はかなり大きいと思います。残念ながら、日本では、政策提言をできるような民間のシンクタンクはありません。日本でも、こうした政策提言のできる複数のNPOのシンクタンクを育てていく必要があると思います。

そうでないと、政治の混迷はこれからも続いていくと思います。まずは、日本の政治とはどうあるべきか、これを明らかにする必要があります。それに、長期ビジョンもとづき、現在は何に優先順位をつけるのかもはっきりさせる必要があります。私は、このブログでも掲載したように、日本の政治の緊急の課題はデフレの克服だとしてきました。しかし、これだって、私の知見が及ぶ限りの範囲内で語っいるだけて、まともなシンクタンクがいろいろ調査すれば、もっと重要なことがあるかもしれません。

そうして、最後に多くの皆様に、いや世界中の皆さんに言っておきたいことがあります。それは、世界のどんな政党が政権の座をいとめようとも、その国のすべての国民にとって大満足ということはあり得ないということです。それは、たとえば、家庭において、父親や母親が理想の父や母であってもらいたいのはやまやまですが、だからといって彼らだって普通の人間です。そんなことは、最初から不可能です。しかし、だからといって、父親や母親の役割をまっとうしなければなりません。それにも段階があります。でも、これだけはやらなければという線もあります。

父親や、母親などそうした葛藤の中で努力しているということです。そうして、それを理解できるようになったら、そのとき始めて大人ということです。政治だって同じことです。

だからといって、外してはいけない線もあります。民主党は、日本国解体を推進しようとしていますが、これは、完全ある一定線を超えています。これだけは、やめていただきたいです。世界広しといえども、国民国家の解体を進める国は少し前までは存在しましたが、いまでは、全部失敗して消滅してしまいました。まあ、中国などは例外中の例外かもしれません。

以下にアメリカのシンクタンクのリストを掲載しておきます。なお、以下のリスト、中国問題を調べるときにピックアップしました。だから、中国の記述がありますが、特に他意はありません。ただし、これらのシンクタンクの出す中国関係の資料は役立つものが多いです。

アメリカのシンクタンク

A

B

  • 1916年にロバート・S・ブルッキングスによって政府活動研究所として創立した。その後経済研究所や公共政策研究所を統合して1927年に現在の体制となった。米 国では最大の影響力を持つシンクタンクと言われている。2005年4月、中国研究プロジェクトが設立され、中国研究の実力はかなりある。

C

  • カーネギー国際平和基金は国際相互理解と世界平和の推進を目的に,1910年 アンドリュー・カーネギーによって設立されたアメリカの事業財団で、米 国屈指のシンクタンクである。2003年、全米のシンクタンクの中で最大規模の“中国研究プロジェクト” が設立され、中国の内政や外交、発展についての概観および米中関係などの研究に力を発揮している。米 国シンクタンク初の中国語のウェブサイトを公開し、ネット上で中国語の月刊誌を発行している。
  • カーターセンターは、1982年に前アメリカ大統領カーターによって創立された、人類が健康かつ平和な生活を送ることができる世界の実現を目指す非営利、非 政府の組織である。エモリー大学(Emory University)と特に密接な関係にある。カーターセンターのプログラムはエモリー大学教員らによって運営されている。1998年に中国プログラムが設立された。
  • CATO研究所は1977年に設立されたワシントンD.C.に本部を置く非営利の公共政策研究機構で、アメリカ保守系シンクタンクである。
  • 海軍分析センターは米国の軍事安全問題を研究する専門のシンクタンクである。中国研究は主に戦略研究センターとアジアプロジェクト部で行っている。
  • 戦略国際問題研究所、かつてはジョージタウン大学に属した、米共和党に大きな影響をもつシンクタンクの一つである。中台関係や米日台関係の研究の拠点である。
  • アトランタ中国研究センターは2001年に設立され、非営利組織である。当センターと提携している大学は、アグネススコット、ドルトン州立、エモリー、ジ ョージア州立、ジョージア工科大学、Kennesaw州立、マーサー、オグルソープとジョージア大学などを含む。また、「China Currents」というジャーナルを出版している。
  • 米外交問題評議会は1921年にウォール・ストリートの財界人とニューヨークの弁護士が中心になって組織された非営利の外交シンクタンクで、米 市民の会員制組織である。中国との関係を一貫して重視し、かつて20世紀70年代には米中関係の雪解けに重要な役割を果たした。

E

F

  • ハーバード大学フェアバンク東アジア研究センターは1955年に設立され、米国での東アジア研究、近代中国研究の先駆であり、歴史を中心とした総合研究機構である。
  • フォード財団はヘンリー・フォードの一族とフォード社の関係者により1936年に設立され、当初はフォード社と深いかかわりをもっていた。1976年にヘンリー・フ ォード2世が責任者を辞任してからは、フォード社およびその一族とのかかわりはほとんどなくなったと言われている。1988年に北京事務所を開設した。
  • 外交政策研究所は1955年に創立され、当時はペンシルベニア大学に属していた。1971年大学から離れて独立した。しかし現在も大学と密接な関係を保っている。中 国の研究では国勢および歴史、伝統についての研究を中心としている。

H

  • ヘンリー・L.・スティムソンセンターは米国の無党派だが、国会や政府に密着したシンクタンクである。軍事背景の研究を中心としているのが特徴である。近年、東 アジア、特に中台問題の研究の人材を強化している。米国のシンクタンクの中ではわりに影響力を持つ若い機関の一つである。
  • ヘリテージ財団 は1973年に設立されたアメリカ合衆国ワシントンD.C.に本部を置く保守系シンクタンクで、米国政府、特 に共和党の政策決定に大きな影響力を持つ。中国については1982年より主としてアジア研究センターで研究している。
  • フーバー研究所はスタンフォード大学フーバー戦争および革命、平和研究所の略称であり、共産主義および共産主義国家の研究に独自のスタイルで取り組んでいる。

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  • ランド研究所はアメリカ軍からの調査分析を請け負うことを目的として設立された総合シンクタンクである。アメリカ国内では、カリフォルニア州サンタモニカ(本部)の ほか、ワシントンD.C.(現在はヴァージニア州アーリントンにある)、ペンシルバニア州ピッツバーグ(カーネギーメロン大学の隣)に支部がある。ヨーロッパでは、オランダのライデン、ドイツのベルリン、イ ギリスのケンブリッジに支部がある。2003年、ドーハに RAND本部政策研究所をオープンした。

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