2014年9月28日日曜日

「孔子学院」にノー 米シカゴ大、契約打ち切り―【私の論評】中国の思想侵略にノーをつきつけたシカゴ大!学問の独立を守るということはこういうことだ。日本の大学も見習え(゚д゚)!

「孔子学院」にノー 米シカゴ大、契約打ち切り

シカゴ大学キャンパス

米シカゴ大学は27日までに、学内の中国語教育機関「孔子学院」との契約更改交渉を打ち切ったと発表した。中国政府の方針に基づく運営が「学問や言論の自由を脅かす」として、多数の教授が連帯し、学院の閉鎖を求める運動が起きていた。名門シカゴ大の決定は、孔子学院を抱える他の大学にも影響を与えそうだ。

大学の担当者によると、孔子学院との契約は9月末で切れるため、既に予算が拠出された講座や研究計画の終了後、閉鎖される公算が大きい。

孔子学院は中国の「ソフトパワー」拡大の拠点として中国政府が全面的に出資し、世界各国の大学に開講されている。一方で運営をめぐるトラブルも相次ぎ、米大学教授協会は「中国政府の一機関」と批判、各大学に契約の打ち切りを促す声明を出している。

【私の論評】中国の思想侵略にノーをつきつけたシカゴ大!学問の独立を守るということはこういうことだ。日本の大学も見習え(゚д゚)!

孔子学院に関して、このブログも取り上げたことがあります。その記事のURLを以下に掲載します。
【自治体が危ない】福岡県太宰府市が外国人に住民投票権付与を検討 制定全国で進む―【私の論評】韓国のプロパガンダは国際問題だけではない、日本国内でも密かに進行しているということを忘れるな(゚д゚)!
毎年太宰府天満宮で開催される曲水の宴
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事で、孔子学院に関する部分のみを以下に掲載させていただきます。
欧米などの第三国に対しては「政府よりも学者、有識者、記者による発信」を積極的に利用、欧米主要メディアに「中国の発信に影響を受けた報道がある」という。さらに、国営中国中央テレビ(CCTV)の多言語チャンネルや、世界120カ国で1086校に及ぶ中国語・文化教育拠点「孔子学院・課堂」が「独自の主張を重層的に発信している」と記した。中国は2020年までに孔子学院・課堂を全世界に配置する構えだ。
ちなみに、あの石平氏はこの出来事について、以下のようなコメントをしています。
wikipediaには以下のよう概要が掲載されています。これは概要なので、詳細を知りたい方は、wikipediaをご覧になって下さい。
孔子学院(こうしがくいん)は中華人民共和国が海外の大学などの教育機関と提携し、中国語や中国文化の教育及び宣伝、中国との友好関係醸成を目的に設立した公的機関。
教育部が管轄する国家漢語国際推広領導小組弁公室が管轄し北京市に本部を設置し、国外の学院はその下部機構となる。
孔子の名を冠しているがあくまでも語学教育機関であって、儒学教育機関ではない。
 なお、孔子77代目の嫡孫である孔徳成が1949年に移住して以降、孔子直系の系譜は中華民国に居住しており(2009年9月以降は孔子79代目の嫡孫、孔垂長が世襲職大成至聖先師奉祀官となっている)、孔徳成が重慶で主宰した孔学会と孔子学院とは歴史的な繋がりは存在しない。
カナダにある孔子学院

さて、この孔子学院、表向きは単なる語学研修機関のようでもありまずか、いろいろと問題があります。

孔子学院は、全世界の各国で中国語や中国文化の教育を広めることを目論見として、ほとんどは大学内部に設置され、資金や教員は中国持ちです。世界で1000校以上、日本でも立命館大や早大、桜美林大など10数大学にあります。

こちら札幌でも、私立札幌学院大学に、孔子学院が設置されています。下は、その入口の写真です。

札幌大学孔子學院 香港教育学院一行与札幌大学孔子学院师生的合影
教師は原則として、現地採用ではなく中国国内から派遣され、教科書も全て中国当局の作成したものを 使用しています。

政府主導で自国の言葉や文化を広める組織としては中国の孔子学院だけではなく、英国のブリティッシュ・カウンシルや、フランスのアリアンス・ フランセーズなどがあります。しかし、ほとんどは独立した語学学校という形を取っていますし、あくまでも語学学校です。

しかし、孔子学院は各国の大学と提携し、その大学の中で授業を行っています。教師の給料などの費用も中国政府が支給し、 採算を完全に度外視していることが最大の特徴です。

中国の教育関係者は「大学の中に設置されていると、学生たちは、孔子学院の授業はその国の公的教育の 一環と理解しがちだ。また、その方が中国の価値観と文化を浸透させやすい」と話しているそです。

孔子学院に詳しい中国共産党関係者によると、同学院がつくられた背景には、1989年の民主化を弾圧した 天安門事件があるといいます。

事件後、海外に亡命した多くの知識人は各地で中国語教室を開きました。 言葉を教えると同時に中国共産党の一党独裁体制をも批判しました。「このままでは世界中で反中分子が増える」 と焦った中国当局が、その対策として孔子学院の設置に取りかかったとされています。

かつて中国教育省の高官は講演で、「わが国の外交と対外宣伝工作の重要な一部だ」と強調したように、孔子学院は、中国政府の政治宣伝の一翼を担っているのは周知の事実です。中国当局の価値観を現地の学生に押しつけるなど、これまでも各国で批判されてきましたし、米国のニューヨーク大では大学への強い圧力で中国の人権活動家を追放したことなどが大問題となりました。何かと大学に影響力を行使しようとす姿勢が「学問の自由」との兼ね合いで問題となっているのです。

こうした孔子学院に対しては、2012年には米国で、同学院の講師の査証(ビザ)更新が一時認められなかったこともありました。今年の5月には、シカゴ大学の教授100人以上が、同大学に設置された孔子学院の今年9月の契約更新反対の署名活動を行ったというニュースが流れていました。

請願書には、「中国政府の意向で大学職員や講義内容が決定するのは『学問の自由』に反する」と批判し、昨年7月に閉鎖されたカナダの大学でも、派遣された中国語教師たちが天安門事件や台湾問題などに触れぬよう指示されていた、と指摘していました。

中国政府から中国語教師と中国語教材が無償で提供されるため、経営にゆとりのない大学にとっては魅力のある教育機関かもしれません。しかし、「工作機関」という側面を忘れてはいけません。日本の大学はそこらあたりをどう考えているのか。おそらく何も考えていないのが実態でしょう。

アメリカの孔子学院大学の女子学生
それにしても、シカゴ大学の今回の判断は正しかったと思います。シカゴ大学は名門といわれる大学です。私も実際にシカゴ大学の講義をオンラインで受講したことがあります。素晴らしい内容でした。

アメリカの思想を押し付けるなどということはなく、純粋に学問的でありながら、かなり実用的な内容のものでした。明らかに日本の大学のものとは異なると思いました。


このような名門大学が下した決断、他の大学にも影響を及ぼすものと思います。

日本の大学なども、こうした中国による思想侵略に対しては、断固としてノーをつきつけるべきです。

シカゴ大の女子学生
確かに、日本の地方大学など、予算も厳しいですが、それと学生が教育を受ける権利とは別次元の問題です。特定の、それも明らかに間違っている思想などを学生に押し付けるべきではありません。それが、学問の独立を守るということです。

シカゴ大学が、名門であるのは、単に伝統があるとか、卒業生が各方面で働いているとか、それだけが所以ではないと思います。学問の独立を守るために、今回のように毅然とした態度で具体的な行動で対処してきたことによるものと思います。

日本の大学もこのような行動をせずに、ただただ中国の思想侵略を受け入れるのであれば、いずれのに日にか、朝日新聞やNHKのようになってしまい、国民の信頼を失い社会から離反され、存続さえ危ぶまれるようになってしまうと思います。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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2014年9月27日土曜日

【日本人の座標軸(9)】利己欲、大衆迎合、ゆとり教育、欲望の肥大化…「日本の自殺」から学ぶ4つの教訓―【私の論評】日本は自殺しつつあるのか? 本当に自殺しつつあるのは中国ではないか?『中国の自殺』が相応しいタイトルではないか!!

【日本人の座標軸(9)】利己欲、大衆迎合、ゆとり教育、欲望の肥大化…「日本の自殺」から学ぶ4つの教訓

画像はブログ管理人挿入 以下同じ


神戸に単身赴任していた昭和50年頃のことである。帰宅途中にふらっと立ち寄った書店で、「グループ1984年」という匿名グループが執筆している「日本の自殺」と題した論文が掲載された『文藝春秋』に出会う幸せに恵まれた。以下はその要点である。

過去6千年間における21の文明について、栄枯盛衰の歴史のドラマを比較研究した。諸文明の没落の原因を探り求めて、われわれの到達した結論は、あらゆる文明が外からの攻撃によってではなく、内部からの社会的崩壊によって破滅するという基本的命題であった。

トインビーによれば、諸文明の没落は宿命的、決定論的なものでもなければ、天災や外敵の侵入などの災害によるものでもない。それは根本的には「魂の分裂」と「社会の崩壊」による「自己決定能力の喪失」こそにある。

第1の教訓は、国民が狭い利己的な欲の追求に没頭して、自らのエゴを自制することを忘れるとき、経済社会は自壊していく以外にないということである。

第2の教訓は、国際的にせよ、国内的にせよ、国民が自らのことは自らの力で解決するという自立の精神と気概を失うとき、その国家社会は滅亡するほかないということである。

福祉の代償の恐ろしさはまさにこの点にある。エリートが精神の貴族主義を失って大衆迎合主義に走るとき、その国は滅ぶということである。

およそ指導者は指導者たることの誇りと責任とをもって言うべきことは言い、なすべきことはなさねばならない。

第3の教訓は、年上の世代はいたずらに年下の世代にこびへつらってはならないということである。若い世代は、古い世代との厳しいたたかいと切磋琢磨のなかに初めて成長していくものである。

古い世代がやたらに物わかりよくなり過ぎ、若者にその厚い胸を貸し、鍛えてやることを忘れるとき、若者はひ弱な精神的「もやしっ子」になるほかない。

第4の教訓は、人間の幸福や不幸というものが、決して賃金の額や、年金の多少や、物質の豊富さなどによって計れるものではないという極当たり前のことである。

欲望は際限なく広がり、とどまる所を知らないものである。欲望の肥大化のサイクルから解放されて自由にならない限り、人間は常に不平不満の塊りとなり、欲求不満にさいなまされ続け、心の安らぎを得ることはないであろう。

足立勝美(あだち・かつみ)兵庫県立高校教諭、県立「但馬文教府」の長、豊岡高校長などを務め、平成10年に退職。24年、瑞宝小綬章受章。『教育の座標軸』など著書多数。個人通信「座標」をホームページで発信。養父市八鹿町在住。鳥取大農学部卒。76歳。

この記事は、要約記事です。詳細はこちらから。

【私の論評】日本は自殺しつつあるのか? 本当に自殺しつつあるのは中国ではないか?『中国の自殺』が相応しいタイトルではないか!!

この記事を書かれた、足立勝美氏の元記事では、「日本の自殺」に関して、要点と感想も書かれています。上の要約記事では、足立氏の感想はカットさせていただきました。

この「グループ1984年」という匿名グループが執筆している「日本の自殺」と題した論文が掲載された『文藝春秋』ですが、今は手に入りませんが、この論文そのものは、書籍かされていて、現在でも手に入るようです。

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Amazonで調べて見ましたが、やはり手に入るようですが、現在は品切れ状態のようです。ただし、また入荷するようです。

足立氏による元記事は、日本のことを事例として、たとえば数年前にミイラ化された死体が見つかり、親の死後も年金をもらい続けていた話、民主党政権の話などを事例として感想を述べています。

この書籍の内容は、読んではいないので、書籍そのものに関する論評はしませんが、足立氏の記事に関する論評をしようと思います。

この記事の元になっている論文では、21の文明を検証したとしています。その中には当然中華文明も含まれていることでしょう。

1970年代といえば、日本は上記で示すような様々な矛盾が出ている時代でした。しかし、中国では鄧小平のよる改革・開放路線が始まったばかりで、経済的にも軍事的にもとるにとらない存在でした。

しかし、後でわかったことですが、中国では2010年くらいまでは、毎年平均で暴動が他2万件ほど発生していました。だから、この当時も暴動がかなり発生していたのだと思います。

そうして、経済発展したことを除けば、今と変わらぬ日本などからは理解も及ばない、異質な世界であったと思います。

ただし、当時はインターネットもないですから、人々の伝聞による不確な情報しか得られず、中国の筆舌に尽くし型ほどの異質性はほとんど理解されていなかったのだと思います。

だから、この論文にも、その当時の中国の記載などもあまりなく、日本のことが中心になったのだと思います。

現代中国を念頭におきながら、『日本の自殺』の内容をみてみると、まさに、これは日本というより、現代中国により多く当てはまっているようです。

まず、第1の教訓については本当に現代中国に当てはまっています。

国民が狭い利己的な欲の追求に没頭して、自らのエゴを自制することを忘れるとき、経済社会は自壊していく以外にない。

これは、不動産バブルが崩壊した、現代中国そのものです。とにかく、現代中国人は自らのエゴを自制することもできず、経済社会が自壊しつつあります。これなど、裸官の話一つとっても明らかです。

中国の裸官を揶揄した漫画
中央政府や、地方政府の官僚がこの有り様ですから、一般人民も似たようなものです。とにかく、金になれば何でも良いということで、地溝油なる酷いものを人に平気で売りつけたり、安全でない食品を儲けのためなら平気で売るし、他商品のコピーなども平気で日常茶飯事のことです。


中国の地溝油の業者

日本でも似たようなこともありましたが、それにしても、中国のこれらの危険な食品の間口の広さと、奥行きの深さには、驚かされ、唖然として、怒りを通り越して絶望的になります。私は、今なら中国に行っても、中国のレストランの食事はしないと思います。

第2の教訓も良く当てはまっています。国民が自らのことは自らの力で解決するという自立の精神と気概を失うとき、その国家社会は滅亡するほかないのですが、中国では建国以来いわゆる選挙というものが一回も実施されたことがありません。

それも、国単位でもありませんし、地方レベルでもありません。

国民が自らのことは自らの力で解決しようにも、そもそも選挙権がないということでは、自分たちに関わる大きなことなど、ほとんど何もできません。

厳密な意味において、中国には政治家は一人も存在しません。なにしろ、選挙がないのですから、中国に存在するのは、官僚のみです。この第2の教訓も、ドンピシャで現代中国にあてはまります。

第3の教訓は、年上の世代はいたずらに年下の世代にこびへつらってはならないということですが、現代中国はご存知のように、一人っ子政策を実施してから随分たちますし、現在でも実施中です。

そのため、多くの子どもがかなり甘やかされて育ち、自己主張が強くなっています。そのため、子どものことを小皇帝と呼ぶ有り様です。子どもの頃から甘やかされて育った子どもどうなるのか、想像にあまりあります。

子どもの頃から甘やかされて育った小皇帝

軍事評論家の、井上和彦氏は、「戦争になったら一人っ子の兵士は我先に後方へ逃げていく」としています。これに関しては、以下の動画をご覧になって下さい。



第4の教訓は、人間の幸福や不幸というものが、決して賃金の額や、年金の多少や、物質の豊富さなどによって計れるものではないというものですが、現代中国は、1907年代から始まった鄧小平主導による改革により、すっかり金銭的な尺度のみが定着し横行してしまいました。

鄧小平の改革のスローガンは、「富めるものから富め」というものですが、確かに富裕層ができたものの、貧困層も増える一方で、今の中国はとんでもない状況になっています。

現状では、「富めるものから富め」というスローガンがそのまま生き残り、富の偏在化がさらに拡大されているだけです。

こうみてくると、1970年代に発表された「日本の自殺」は、「現代中国の自殺」を言い当てているのではないかと思えてくるほどです。

足立氏は、民主党政権を例に出して、「鳩山、菅、野田と続いた民主党政権はこのとおりであった。いま振り返ってみると全く、ひどかった。何も決めないし、決められなかった。この様子を、かつての野田首相からとって“のだる”という流行語が若者の間で流行したものだ」としています。

私自身としては、あのトンデモない民主党政権を誕生させてしまいながらも、日本が内乱状態にもならず、日本という国体も崩さず、結局崩壊してしまったということを評価しています。

日本は、民主党政権という愚かな政権が政権の座についても、何とか統治された、まともな国だということです。

それが、間違いか正しいかは別にして、現中国で政権交代など絶対に起こりえません。体制が崩壊して、新しい体制になることは、あっても現体制の中で、民主的な手続きによって、それまでとは全く異なる政権が新しい体制を創りだすなどということはありません。

こうしたことを考えると、日本は素晴らしい国だと思います。

そうして、私達としては、確かに「日本の自殺」による教訓は、現代では日本よりは、「中国」のほうが当てはまるのですが、これを他山の石として、日本のことを考えていくべきと思います。

その意味では、『日本の自殺』は多いに参考になる論文であり、今なお読まれ続けているのだと思います。

私は、そう思います。皆さんはどう思われますか?

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2014年9月26日金曜日

コラム:さらなる円安が景気回復を後押しする訳=村上尚己―【私の論評】長い間デフレ風呂に浸かった、ゆでガエルたちは、お湯が多少ぬるくなったことは良いことなのに、危険と騒ぎたてる始末で正しく認識できない(゚д゚)!


村上尚己 アライアンス・バーンスタイン マーケット・ストラテジスト

「ドル高円安」は、日米の金融政策の違いを踏まえれば予想されたことであり、「急激な円安」にみえるのは、これまでファンダメンタルズがドル円の価格形成に必ずしも影響せず、かつ、この3カ月余り、歴史的な低ボラティリティでのこう着状況が続いたからだろう。

米経済が年初に一時的に減速したことに加えて、ユーロ圏でのデフレリスクが大きなテーマとなり、ドル円はこう着状態に陥った。ただ、上述の要因は永続しないので、年初110円前後へのドル高円安のコンセンサスがようやく実現しつつあるだけだ。

にもかかわらず、最近では「これ以上の円安は日本経済にとってあまり良くない」という説も増えてきた。ガソリンなど身の回りのモノの価格上昇という、「ミクロ視点」でしか経済現象を考えられない結果だろう。

ガソリン価格などの上昇は「相対価格の変化」であり、一般物価の上昇つまり「インフレ」とは異なる経済現象であることを理解していないためと考えられる。

ガソリン価格などだけが上昇する相対価格の変化が起きても、名目所得が変わらなければ、それ以外の財サービスへの需要が減る。このため、ガソリン価格などが上がっても、経済全体つまり一般物価の上昇は必ずしも起きない。そして、金融緩和強化の目的は、一般物価を押し上げることである。

アベノミクスで景気回復が実現していた2013年も、同様の誤解に基づく批判をよく耳にした。ガソリンや原材料価格が大きく動くのは、「相対価格の変化」で説明できる事象だが、為替市場がドル高円安方向へ動くたびに同じ議論がまた繰り返されているのだろう。

<日本はいまだ脱デフレの途上>

結論を言えば、1ドル110円前後の円安が、日本経済全体に悪影響を及ぼすとは到底考えられない。円安が進み、価格転嫁が難しい一部企業において原材料高の負担が強まる面はあるにしても、通常、川中・川下まで価格転嫁が及ぶには時間がかかる。

2000年代半ばに、円安に加えて国際商品市況が大きく上昇した。この時も、企業の価格転嫁に時間がかかる中で、「交易条件悪化で企業利益が停滞し景気後退が起きる」との懸念が高まった。しかし、実際には輸出や個人消費などが堅調に推移し、景気回復は続いた。

2014年度については、性急な消費増税によって個人消費が失速していることが懸念されるが、輸出、設備投資が増えており景気回復は何とか保たれている。また足元で、交易条件は、商品価格が落ち着いているのでほぼ横ばいで推移している。さらに円安が進んでも、それをきっかけに景気が腰折れするわけはなく、現在も2000年代半ばと同様に、緩慢ながらも景気回復は続いているとみられる。

現在多くの企業が抱えている価格転嫁が難しい、あるいは時間がかかることの本質的な原因は、経済全体では需給ギャップが依然残っているからである。現状では未だ、日銀が掲げる物価安定目標の2%を実現できていない状況、つまりいまだに脱デフレの途上にあり、「(デフレへ舞い戻るリスクを抱えた)脆弱な状況」にあるからだ。

現在の日本経済は未だにデフレでデフレ・ギャップが存在している

今後、総需要が一段と増えて、インフレ期待がプラス2%で安定するようになると、多くの企業が原材料上昇を、販売製品に価格転嫁できるようになる。それがまだ十分起きていない現在の状況であれば、日本における望ましい政策対応は、金融・財政政策をフル活用して総需要を刺激することだ。現状では、2014年4月からは大型増税による緊縮財政政策のブレーキで、日銀による金融緩和頼みの状況である。

こうした中で、金融緩和が続き自国通貨安になることは、日本経済全体にとってはプラスの効果が大きい。さらに円安が進むことによって、企業の利益が増え、株高・外貨建て資産が増えて民間部門のバランスシートが強固になり、そして設備投資や雇用拡大をもたらすメカニズムが一段と強まる。

「これ以上の円安は日本人にとって望ましくない」という的外れな議論は、日本経済がいまだに物価安定の目標である2%を実現できていないことを忘れているか、世界標準である2%の物価目標を日本だけ実現できないと勘違いしているかのどちらかだろう。あるいは、インフレ率はまだ低すぎるのに「インフレ加速」を心配していた2012年以前の日銀と同じ思考体系にはまっているのかもしれない。

*村上尚己氏は、米大手運用会社アライアンス・バーンスタインのマーケット・ストラテジスト。1994年第一生命保険入社、BNPパリバ、ゴールドマン・サックス、マネックス証券などを経て、2014年5月より現職。

この記事は要約記事です、詳細はこちらから(゚д゚)!

【私の論評】長い間デフレ風呂に浸かった、ゆでガエルたちは、お湯が多少ぬるくなったことは良いことなのに、危険と騒ぎたてる始末で正しく認識できない(゚д゚)!

昨年まで、「円高で大変だ」の大合唱のはずだったのに、今度は「円安で大変だ」と叫ぶ人たちが増えています。本当に困ったものです。

私自身は、村上氏の主張に概ね大賛成であり、何ら議論の余地はないものと思っています。

だから、上の村上氏の主張を論評するのではなく、なぜこのような的外れな議論がおこるのかを分析してみようと思います。

これは、いわゆる茹でガエル現象で十分に説明がつきます。

茹でガエル現象とは、『2匹のカエルを用意し、一方は熱湯に入れ、もう一方は緩やかに昇温する冷水に入れる。すると、前者は直ちに飛び跳ね脱出・生存するのに対し、後者は水温の上昇を知覚できずに死亡する』というものです。

この現象から、およそ人間は環境適応能力を持つがゆえに、暫時的な変化は万一それが致命的なものであっても、受け入れてしまう傾向が見られることのたとえに使われます。

例えば業績悪化が危機的レベルに迫りつつあるにもかかわらず、低すぎる営業目標達成を祝す経営幹部や、敗色濃厚にもかかわらず、なお好戦的な軍上層部などです。

経済政策に関する茹でガエル現象については、以前にもこのブログで掲載したことなので、その記事のURLを掲載します。
重要なのはアベノミクスの第1の矢だ:JBpress (日本ビジネスプレス)―【私の論評】第三の矢などずっと後回しで良い!そんなことよりも、デフレ脱却が最優先課題であり、そのために一番重要なのは金融緩和である!似非ケインジアンにだまされるな(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事ではデフレからの脱却には、金融緩和政策は効き目がないとか、それだけでは足りず、成長戦略や構造改革が必要だとする人々がなぜこのようになってしまうのかを解説しました。以下にその部分のみを掲載します。
このにような愚かな主張をする人々は、日本があまりにも長い間デフレスパイラルの泥沼に落ち込んでいるため、デフレが通常の状態だと思い込み、特に金融政策などまだ十分に効果をあげないうちから、あるいは金融緩和だけでは不十分として、成長戦略や構造改革が必須であると信じ込んでしまうのだと思います。この考えは全くの間違いです。デフレは経済の癌です。しかもインフレよりも始末が悪いです。インフレの場合は、とんでもないインフレで年率100%とか、とんでもないハイパーインフレになり、すぐに生活に大きな支障がでるため、誰もが度を超したインフレは大問題だといことがわかります。 
しかし、デフレは最大でも年率2%くらいのものにしかならず、ハイパー・デフレなどありません。2%くらいだと、1年くらいでは誰もその弊害に気づきませんが、3年、5年、10年となるとじわじわと雇用や消費に悪影響を及ぼします。そもそも、デフレは異常な経済であり、通常の経済循環の景気が良い、悪いという状況を逸脱したものです。これは、何をさておいても、デフレから脱却して、すくなくとも景気が悪いという状況にもどするのが王道中の王道です。特に変動相場制の国では、金融緩和が効き目が強いということもすでに、わかっていることです。 
しかも、その悪くなり方が少しずつのためであるため、まるで多くの人々が茹で蛙のようになり、悪化していること気づきません。現在の日本はまさに、その状況にあります。GDPデフレーターはここ20年右肩下がりに下がりっぱなしです。そうして、この状況を脱却するには、一番重要なのは、金融緩和です。アベノミクスの、三つの矢のうち、もっとも効果があるのは、金融緩和であり、その次は、財政政策であり、一番効果が薄いのは、成長戦略です。
デフレはゆでガエルを醸成する?
現在の日本では、デフレを脱却するだけで、かなりの経済成長が期待できます。
上の記事では、この当たり前の事実をもってわわって、グタグタと書いていますが、これは、マクロ経済学上の常識であり、当たり前のど真ん中です。
以上は、金融緩和策に関する、茹でガエル現象について説明したものですが、「円安が危険だー」と叫ぶ人たちも、この茹でガエル現象で十分説明がつきます。

こういう人たちは、あまりにも長い間デフレ風呂という風呂に浸かっていて、それがあたり前になった人たちなのだと思います。

デフレ風呂とは、お湯が緩慢にほんのすこしずつお湯が上がるようになっていて、お風呂にかなり長い開いた入っているので、温度もかなり上がっているにもかかわらず、このお風呂に入っている人は気付きません。本当は、すぐにでもお湯から上がったほうが良いのに、気持ちが良くてあがろうとはしません。

お風呂のお湯の温度が50度になっても、ゆっくりあがれば気づかない

ところが、この家の他の人が、お湯の温度があまりに高すぎなので、少し温度を低めに設定しようと、お湯の温度の変更をしました。設定変更をすると、当然お風呂場にもアラームが流れます。

「円安が大変だー」と叫ぶ人は、そのアラームを聴いただけで、お風呂場のバネルも見もせず、家の他の人がお湯を低めにしようとしていることも考慮にいれず、大騒ぎしているようなものです。

デフレ風呂に浸かった人は、本当は温度が高いのですぐにでもあがったほうが良いのにそうとは思わない。

結局自分が熱いお湯の中にいることも体感できずに、お湯の温度を下げるという本当は自分にとって良いことでも、アラームが鳴って危機を感じているのとほんど変わりありません。

結局、金融緩和策により、相対的には良い方向に向かている途上であるにもかかわらず、あまりにも長い間デフレで、円高・物価安に慣れきってしまい、一時的な円安や、相対価格の変化何も考えずに過敏に反応してしまうということなのだと思います。

過去20年近くも、日銀が金融引締め策を実施してきて、昨年ようやっと金融緩和に転じたわけです。今までとは、全く状況が違います。金融緩和による経済対策は、即効性はありません、そのためその途上ではいろいろなことが起こるのがあたり前です。

それに最近は、増税をしてしまったがために、金融緩和の効果が削がれ、良い方向への変化がかなり緩慢になっているため、ゆでガエルたちが、さらに勘違いをしやすい環境になっているのだと思います。

短期的な視点だけからみれば、金融緩和の途上で一見良くないことも発生します。しかし、だからといって、金融緩和をやめてしまえば、またデフレに戻るだけです。

熱すぎるデフレ風呂からは、はやくあがって、バス
ローブにでも着替えたほうが良いに決まっている

これは、企業に置き換えるとさらに良く理解できるかもしれません。

たとえば、ある大企業がいろいろな理由があって、業績がかなりおちたときに、本格的な変革に踏み切ったとします。本格的変革に踏み切った途端に会社がよくなるわけもありません。最低でも、三年から五年かかるのが普通でしょう。

変革の途上では、役員や社員の給料を下げたり、あるいは、当面雇用を打ち切ったり、それこそ、リストラをすることもあるかもしれません。それをしなければ、会社が倒産してしまうかもしれません。その一方で、様々な改革で、業績をあげられるように努力して、少しずつ業績があがりつつあったとします。

こうした改革の途中であるにもかかわらず、社員が目先のことばかりに注目して、やれ給料が下がったとか、人手が足りないとか騒いだとします。このような人を会社の他の人達はどのようにみることでしょうか。

まともな社員であれば、そういう人たちを「先も見えず、現状もわきまえない馬鹿な奴」と思うことでしょう。会社の上層部からみれば、そんな社員こそリストラ対象にするかもしれません。

まさに、今の日本で、「円安がー」と叫ぶ輩は、このように、このような会社の中で自己中心的に「給料が下がったとか、人手が足りない」と叫ぶ社員のようなものです。

いずれにしても、大局観がなく、目の前のほんの一時のことに左右されていることに変わりはありません。

このような連中に耳を傾ける必要はありません。まともに受ければ、幻惑されるだけです。

私達は、大局観を持って経済の問題を考えていくべきであって、短期の指標などで一喜一憂すべきではありません。ましてや、短期的な指標だけに惑わされている馬鹿どもの意見に振り回される必要などもうとうありません。

私は、そう思います。皆さんは、どう思わまれますか?

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2014年9月25日木曜日

首相、増税の影響点検を前倒し 11月初旬に初会合― 【私の論評】増税論議で理解できる!残念ながら、日本は未だ政局やファンタジスタ抜きで、まともな経済対策を遂行できる国にはなっていないということを・・・・・・(゚д゚)!


訪米中の安倍晋三首相は23日夜(日本時間24日午前)、来年10月からの消費税率10%への引き上げの影響を点検する有識者らの会合を11月早々にも始める意向を表明した。景気回復の足取りがもたつく中、11月末から予定していた作業を前倒しし、増税の影響を慎重に見極める狙いだ。増税を決断する場合をにらみ、今年度補正予算案をセットで検討して景気に配慮する狙いもある。

消費増税判断に向けた 今後の政治・経済日程
9月29日臨時国会召集
下旬自民党税制調査会、与党税制協議会が税制改正論議に着手
10月1日日銀短観(9月調査)
16~
17日
アジア欧州会議(イタリア)
11月初旬消費増税に向けた点検会合が始動
10~
11日
APEC首脳会議(中国)
12~
13日
東アジア首脳会議など(ミャンマー)
15~
16日
G20首脳会議(豪州)
17日7~9月期GDP速報値
30日臨時国会会期末
12月8日7~9月期GDP確報値
首相が消費増税の是非 

有識者との点検会合は今年4月の消費税率の8%への引き上げを判断する際にも開いた。約60人のエコノミストや企業経営者、地方自治体首長らから約1週間かけて増税の影響などを聞いた。今回は「前回よりもじっくり聞くことになる」(政府高官)としており、有識者の人数や聴取期間が前回より増える可能性がある。

【私の論評】増税論議で理解できる!残念ながら、日本は未だ政局やファンタジスタ抜きで、まともな経済対策を遂行できる国にはなっていないということを・・・・・・(゚д゚)!

本日も増税関連のニュースをとりあげます。上記の記事にあるように、有識者らの会合をはやめに開催することが決まりました。

しかしながら、未だ日本経済はデフレから脱却しておらず、何を実施すべきか、それ自体は別に有識者の意見を聴かなくても、誰の目から見ても明らかです。

それは当然のことながら、増税見送りです。

増税を見送るということは、緊縮財政をやめて、積極財政をするということです。

増税以外の積極財政を具体的にどのようにするかという話を有識者から聴くというのならわかりますが、実際に増税して、これもともと最初からわかっていることでしたが、失敗したことが明らかになりつつある現在、増税を見送るべきか否かを専門家に聴く必要はないです。

このブログにも度々掲載する高橋洋一氏は、現状では増税を見送るどころか減税すべきことを提唱しています。これは、昨日のこのブログにも掲載したように、ノーベル経済学賞を受賞した経済学者であるポール・クルーグマン氏も提唱しています。

この高橋氏の記事のURLを以下に掲載します。
究極の景気対策は「消費減税」10%を見送り8%を5%に戻す
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に高橋氏の提唱の要旨を掲載します。
 4月の消費増税後、経済指標の悪化が著しくなっている。消費増税をやらない方がよかったのは明らかである。政治的な実現可能性を抜きにして、純粋に経済政策として考えてみよう。 
 消費増税が経済低迷の原因であるのは、消費動向をみればすぐわかる。所得階層別にみれば、消費増税で影響をうけると思われるところで消費低迷が起きている。 
 となれば、それに対する経済対策は4月の5%から8%への消費増税をなかったものにするだけだ。つまり、来年10月の消費税率10%への再引き上げを見送るのは当然として、現状の8%からただちに5%へ減税するのだ。あるいは、すべての品目に軽減税率を導入して5%にするのもいい。 
 消費減税ではなく、それに近い政策として所得税減税と給付金を組み合わせるというのもある。この場合でも、もちろん10%への再増税を見送るのは当然であるが、消費増税3%分に相当する所得減税・給付金を行う。 
 1997年の5%への消費増税の際、景気の落ち込みを考慮して先行して所得税が減税され、レベニューニュートラル(増減税同額)としたことがあるが、今度は事後的な所得税減税を行うというわけだ。 
 消費増税を相殺するのだから、減税政策が良い手になるが、次善、三善の策として、増税分をカバーする財政支出も考えられる。ただ、公共工事などは供給制約があり、有効需要を作りにくい。 
 それでは金融政策をさらに緩和するというのはどうだろうか。金融政策の効果は、タイムラグ(時間のずれ)が大きく財政政策ほどに即効性はない。このため、短期的な景気変動の対応策としては財政政策に比べて力不足になってしまう。金融政策だけでは無理だが、財政政策との併用は当然ながら望ましい。 
高橋氏は、1997年当時の5%増税の時について、景気の落ち込みを考慮して先行して所得税が減税されていたことを指摘しています。この当時は、残念ながら日銀が金融引締めを行っていたため、このような努力もむなしく、日本は1998年から本格的なデフレに陥ってしまいました。

しかし、今回は日銀は、金融緩和に転じていますから、もしこれを実現すれば、景気は上向き、いずれデフレからの脱却も可能になります。

いずれにしても、増税は問題外のわけです。

ただし、もう一つ方法もないではないです。

10%増税をしても、5%から8%にした3%、8%から10%にした2%、この合計の5%増税分を所得税減税、給付金によってカパーして骨抜きにしてしまうことです。

これに、さらなる金融緩和をすれば完璧です。

しかし、こんなことを考えるなんて、私もどうかしています。

こんなことをやって、一体誰が特をするというのでしようか。そうです。増税して、減税して、給付金も出すという作業は一体誰がやるのでしょうか。結局それは、役人です。

こんなことをすれば、役人にわざわざ、しなくても良い仕事を与えて、金と時間を無駄にするだけです。

そもそも10%増税など最初からしないで、何らかの減税、給付金対策を速やかにすことが、最も良いということになります。

これが、高橋氏のいう、政治的な実現可能性を抜きにして、純粋に経済政策というものです。

これが、本来すべき経済対策であり、これを妨げているのが政治ということです。

これに関しては、以前にも高橋氏の記事を紹介したブログ記事がありますので、その記事のURLを以下に掲載します。
消費増税スキップしても実体経済に影響なし!リスクは「増税利権に群がる人々」のみ―【私の論評】まともな企業なら日々直面するトレードオフという考え方ができない官僚の単細胞頭が国民を苦しめる(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、高橋氏による元記事は、以下のように締めくくられています。
こう考えてみると、増税をスキップするリスクは、実体経済の話ではなく、増税利権に群がる人々を激怒させるという政治的なものだけになる。さあ、安倍政権はどうするのか。
高橋氏の言わんとするところは、増税利権に群がる人々が激怒すから、増税を見送ることができないということです。

安部総理が増税見送りを決めた場合、自民党内にも大勢いる増税利権に群がる政治家が激怒することになります。そうなると、どうなるのか。激怒した自民党政治家はいっせいに、増税利権を確かなものにしてくれる、人間を総裁にしようということで、安倍総裁おろしに走るわけです。

そうして、ここではっきり言っておきますが、安倍総理とその側近は自民党内では圧倒的に小数派です。前回の総裁選は、石原伸晃氏に圧倒的に有利であり、何もなければ、石原氏になっていた可能性がかなり高いです。

しかし、あの見事なまでのファンタジスタ的発言で、番狂わせが生じて、自民党内の派閥の均衡により、ようやっと安倍総裁が誕生したのです。

安部総理には、このような強力な助っ人であるファンタジスタが二人が味方しています。

これについては、以前のこのブログにも掲載したことがあるので、その記事のURLを以下に掲載します。
民主が社会保障「3党協議」離脱へ―【私の論評】安倍総理には、自分では意図せずに、協力にサポートする二人のファンタジスタがついている!これで鬼に金棒だぁ-(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、もう一人のファンタジスタは海江田民主党代表なのですが、民主党も議員の中にはまともな経済対策を主張する人もいるのですが、そういう議員は一部で、海江田氏をはじめ民主党の幹部はまともな経済対策を立案できる人間はいません。

こういうことが幸いして、安部総裁・総理が誕生して、日銀の金融政策を根本的に変更し、金融緩和に踏みきれたのですが、その後がよろしくなかったです。

やはり、自民党の増税利権に群がる議員たちが、増税見送りということにでもなれば、怒りだし、安倍おろしの嵐が吹き荒れることが予測されたので、安部総理は4月から増税に踏み切ったわけです。

そうして、次の10%増税も、増税利権に群がる議員たちにより、踏み切られてしまう可能性が大です。

しかし、そんなことになれば、経済が低迷し、日本はさらにデフレ・スパイラルの底に沈むことになります。そうなると、またぞろ、前の安倍政権の時のように、安倍おろしの嵐が吹き荒れることになります。

それにしても、一度このどうどう巡りはどこかで断ち切らなけれはなりません。

デフレからの脱却と、長期政権の樹立は本当に難しいです。

やはり、これを両立させるためには、10%増税を実施しつつ、これを大規模な所得税減税と、給付金対策で骨抜きにするしか道はないのでしょうか。

石原氏や、海江田氏を凌ぐファンタジスタはでてくるのか・・・・

こうなると、石原伸晃さんや、海江田さんを凌ぐような、素晴らしいファンタジスタが出てきて、政局を塗り替えような華麗なプレーをして、また安倍政権を強力にサポートしていただきたいと思います。

本当は、政局もファンタジスタなしでも、まともな経済対策ができる国にならなければならないと思います。

このようなことは、以前もありました。そうです、大東亜戦争です。その中でも、特に米国との戦争です。米国との戦争など、日米戦争の10年前までは、誰も予想しなかったものであり、全く必然性のないものでした。それは、米国側から見ても同じであり、全く必然性がありません。

それがいつのまにやら、日米両国で、日米開戦の空気が醸成されて、本当に戦争に突入してしまいました。これに関しては、ここで詳細は説明しませんが、倉山満氏の最近の書籍など読んでいただければご理解いただけるものと思います。下の、関連図書のところに、その書籍を掲載しておきます。

増税に関しても、するべきではないことは明らかなのに、財務省や増税利権に群がる人たちによって、増税すべきであるかのような空気がいつの間にやらできてしまい、このままでは、増税してしまいそうです。

これについて、少なくとも今のアメリカの経済対策に関してはそうではないようです。本日もそのようなことを示すニュースが入っています。
米FRB、利上げに非常に辛抱強くあるべき=シカゴ連銀総裁
米シカゴ地区連銀のエバンズ総裁

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、今週は、ハト寄りのメンバーのコメントが続いています。標準的な経済学の知見をもったメンバーが金融政策に携わっていることが、米国経済の強さを支えているようです。

ちなみに、アメリカはここしばらく、デフレに陥ったことはありません。というより、これだけデフレが続いているのは、日本だけです。未だデフレから脱却しきっていないの日本とは真逆です。

これは、増税論議とは直接関係はないのですが、まともな経済学的知見を持った人々が、論議をして経済対策を決定しているという意味で日本とは対照的であるので掲載させていただきました。

それにしても、経済対策といえば、安全保障にも関係が深く、かなり重要な国策なのですが、これが未だに政局に左右されるというのは本当に問題です。もう、15年も日本はデフレに苦しんでいるというのに、これをいつまでも放置し続けるような政治システムはどこか狂っています。

はやく、日本でも標準的な経済学の知見を持ったメンバーによる、政局やファンタジスタ抜きでもまともな国策を遂行できる国になってもらいたいものです。

いろいろな人が、くだらないことで、日本が駄目、日本人が駄目などという批判をしていますが、私は日本が最も駄目な部分は、上で示したような部分だと思います。これが、改善されれば、日本は世界に範を示すことのできる超一流国になることができると思います。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか(゚д゚)!

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消費税再増税には海外からも懸念が示されることが増えている―【私の論評】増税DQNも、従軍慰安婦問題と同じ!初めに増税ありきで、あらかじめ準備したストーリーに合わせて事実をねじ伏せるような歪んだ記事を書いたり発言し続け、いずれ事実に復讐される(゚д゚)!


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2014年9月24日水曜日

消費税再増税には海外からも懸念が示されることが増えている―【私の論評】増税DQNも、従軍慰安婦問題と同じ!初めに増税ありきで、あらかじめ準備したストーリーに合わせて事実をねじ伏せるような歪んだ記事を書いたり発言し続け、いずれ事実に復讐される(゚д゚)!

消費税再増税には海外からも懸念が示されることが増えている

消費税再増税の判断時期が12月に迫っており、消費税増税積極派は消費税の増税は「国際公約」でありこれを実行しなければ国際的な信頼が失われるという決まり文句がよく使われる。

ポール・クルーグマン氏

しかし、消費税増税後の日本経済の実態が明らかになるにつれ、海外からも消費税の再引き上げに懸念を示す意見が増えてきた。

例えば、アベノミクスを支持してきた米国のノーベル賞経済学者クルーグマン氏は「日本経済は消費税10%で完全に終わる」とし、逆に消費税は5%に戻して国民の期待インフレ率を引き上げるべきと述べている。

また、米国のルー財務長官は消費税率を4月に引き上げて以降、個人消費と投資が落ち込んでおり「経済活動の縮小による困難に直面している」と懸念を示し、日本に対して内需拡大を維持するための政策を要請した。

世界的には日本の財政再建の信頼性に対する関心よりも、消費税増税後に勢いを失っている日本経済がさらに増税によって景気が後退し、世界経済の足を引っ張る懸念のほうが即影響が出ることもあり関心が高いのではないか。《YU》

【私の論評】増税DQNも、従軍慰安婦問題と同じ!初めに増税ありきで、あらかじめ準備したストーリーに合わせて事実をねじ伏せるような歪んだ記事を書いたり発言し続け、いずれ事実に復讐される(゚д゚)!

上と似たような記事、昨日も掲載したばかりです。昨日は、米国ルー財務長官に関する記事を掲載しました。

米国ルー財務長官

最近では、増税関係の記事を掲載しても、あまり反応は良くなく、ブログへのアクセス数を増すためには、掲載しないほうが良いくらいなのですが、そんなことにはお構いなく、これは本当に重要なニユースですから、本日も取り上げることにしました。

上の記事で、クルーグマン氏は、「日本経済は消費税10%で完全に終わる」とし、逆に消費税は5%に戻して国民の期待インフレ率を引き上げるべき」と述べていることが掲載されています。

これは、当然のことであり、あたり前のど真ん中です。

デフレからなるべくはやく脱却するためには、"日銀の金融政策(無論金融緩和策)+政府による積極財政(減税、給付金、公共工事など)"が必要不可欠です。

デフレであった、昭和恐慌(日本国内で世界恐慌の呼称)も高橋是清はこれと同じ手段の経済対策を行い、世界で一番はやく世界恐慌から脱却しています。

このあたり前のど真ん中のデフレ脱却策をとることなく、今年4月からは8%増税がなされ、明らかに景気が落ち込んでいます。

一部には以下のような全くミスリーディングな報道もあります。
個人消費の格差鮮明 都市復調、地方は低迷  
 消費増税後の個人消費を巡って、復調する都市と低迷する地方の格差が鮮明になってきた。22日発表の食品スーパーの8月の販売統計では、首都圏を含む関東が4%超伸びた一方、中四国や近畿は減少が続いた。大都市部では高額品も売れ始めた。ボーナス増などが消費増につながっている都市部と、ガソリン高が家計を圧迫する地方の違いが、消費の二極化を引き起こしている。
詳細は、この日経新聞の記事をご覧いただくものとして、この記事は明らかにミスリーディングです。こんなことは、最初からわかっていることなのに、この記事では消費増税の逆進性が大きく影響してるのに記事ではそのことに関する説明が全くありません。

消費税の逆進性とは、消費税率が上がると低所得者ほど収入に対する食料品などの生活必需品購入費の割合が高くなり、高所得者よりも税負担率が大きくなるということです。

都市部では、統計上も明らかなことですが、地方よりも所得が高く、消費税増税をすれば、こうなることははっきりしています。

それから、以下の記事は上の記事よりは、まともなのですが、都市部の消費の復活を外国人の消費ということだけで説明しており、そういう側面は否めはしないものの、逆進性については全く触れてないということでは、ミスリーディングです。百貨店の売上向上は、消費税の逆進性によってかなり説明できると思います。
大都市では消費増税後初の前年同月比プラス・・・8月の百貨店売り上げデータをどう読むべきか?
上の2つは、ミス・リーディンクということですが、もっと酷いのもあります。
公明代表、消費税10%「引き上げなければアベノミクス失敗の烙印」
もうこうなると、完璧に意味不明です。増税DQNのレベルです。公明代表は、支持者に創価学会など多くの貧困層を抱えているはずです。本来であれば、消費税の逆進性に着目して、増税反対の立場をとるのがあたり前たと思うのですが、そうはならないのが本当に不思議です。

一方増税に関するまともな記事は、ここ最近では以下くらいのものです。
巻頭特集 第2部 日本経済に大異変!景気急降下、再びデフレへ ブレーンが決意の告白!本田悦郎・内閣官房参与「総理と刺し違えても、『消費税10%』は阻止します」
本田悦朗氏にはどこまでも頑張っていただきたいものです。

とにかく、増税に関しては、一部の例外をのぞいて、テレビも、新聞もDQN報道があまりにも大好きです。

阿比留瑠比氏

ところで、従軍慰安婦に関するDQN報道を続けてきた、朝日ですが、結局は間違いを認めざるをえなくなりました。それに関する、阿比留瑠比氏のFBのコメントがあります。それを以下に掲載させていただきます。


増税DQN報道、発言もこれと同じことです。

もう、経済政策の次元ではありません。経済理論でもありません。初めに増税結論ありきで、あらかじめ準備したストーリーに合わせて事実をねじ伏せるような歪んだ記事を書いたり、発言し続け、いずれ、事実に復讐されることになるのです。

阿比留氏は、いかのようなコメントもしています。


私も、この記事の初めのほうに掲載したように、最近では増税関連の記事を掲載しても、反応が少なく、徒労感を覚えることもあります。

それにしても、日本がデフレに陥ってから15年以上もたちます。朝日新聞の慰安婦DQN報道のように、30年も経ってから、ようやっと消費税増税DQNの報道や、発言が間違いであったという事実が明らかにされるということにでもなれば、あと15年もたたないと日本経済はまともにならないということにもなりかねません。

それだけは、避けたいものです。そうして、阿比留氏が語っているように、ネットにより状況は変わりつつあります。単なる、新聞などの部数などを超えて、事実は伝播し、影響は広がっていきます。時代は、変わったのです。私はそう思います。

皆さんは、どう思われますか?

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