2018年1月2日火曜日

「穏やかで心豊かな年に」 皇居で新年一般参賀 陛下がごあいさつ―【私の論評】天皇彌榮 天皇皇后両陛下 万歳! 万歳! 万歳!

「穏やかで心豊かな年に」 皇居で新年一般参賀 陛下がごあいさつ



新年恒例の一般参賀が2日、皇居で行われ、天皇、皇后両陛下や皇太子ご夫妻をはじめとする成年皇族方が宮殿「長和殿」のベランダに立ち、手を振って応えられた。

 午前10時10分からの1回目の一般参賀では、天皇陛下がマイクを通じて「新年おめでとう。皆さんとともに新年を祝うことを誠に喜ばしく思います。本年が少しでも多くの人にとり、穏やかで心豊かな年となるよう願っております。年のはじめにあたり、わが国と世界の人々の幸せを祈ります」とあいさつをされた。

 新年一般参賀は1回目に続いて、午前11時ごろ▽同11時50分ごろ▽午後1時半ごろ▽同2時20分ごろ-の計5回行われる。宮内庁によると、1回目は開門前に2万609人と昨年(1万1554人)の倍近くの人が集まったため、当初、午前9時30分だった開門予定を15分早めて対応した。

 天皇陛下の譲位日が平成31年4月30日と決まってから初めての新年一般参賀。秋篠宮ご夫妻の長女、眞子さまは今年11月に結婚されるため、最後の一般参賀となる。英国留学中の次女、佳子さまは参列されなかった。

【私の論評】天皇彌榮 天皇皇后両陛下 万歳! 万歳! 万歳!

新年の一般参賀に訪れた人たちに手を振られる天皇、皇后両陛下と皇族方=2日、皇居・宮殿
天皇家のお正月といえばブログ冒頭の記事のように、一般参賀が有名ですが、それ以外にも私たちが普段目にすることのない祭祀・儀式が目白押しです。日本一忙しいお正月を過ごされているといっても過言ではありません。
「黄櫨染御袍」(こうろぜんのごほう)という装束をお召しになった天皇陛下
早朝5時30分。薄暗く、凍てつく寒さのなか、「黄櫨染御袍」(こうろぜんのごほう)という装束をお召しになった天皇陛下が、御所から約400m離れた宮中三殿の西側にある神嘉殿の前庭にお出ましになられます。

かがり火に照らされた地面に畳を敷き、屏風に囲まれた場所で、南西に向かって伊勢神宮を遥拝し、次いで東南西北の順に四方の神々に拝礼される。天皇陛下のお正月は、この「四方拝」という祭祀から始まります
これは平安時代初期から続けられ、五穀豊穣や国民国家の安寧を祈願されています。現在は天皇陛下のご負担軽減のため簡略化されることもありますが、元日はその後もさまざまな儀式が分刻みのスケジュールで行われるためご負担は大きいです。天皇家のお正月は、のんびりと過ごす一般人の正月とはまったく異なるようです。

以下に、今年の元旦の行事一覧を掲載させていただきます。

四方拝の後、天皇陛下は、宮中三殿の賢所(かしこどころ)、皇霊殿、神殿にそれぞれ祀られている天照大神や歴代天皇・皇后・皇族の御霊、八百万の神々を拝礼する「歳旦祭」(さいたんさい)に臨まれます(2012年から、宮中祭祀を担当する掌典(しょうてん)次長による代拝)。
そして3日には、成人以上のすべての皇族がたが参列して「元始祭」が行われます。いずれも天皇陛下が中心となり、正座と起立を繰り返して祈りをささげる「両段再拝」や、賢所に設置されている鈴を掌典職が91回鳴らす「御鈴の儀」などが行われます。これらは新年最初のお参りといえるかもしれないですが、ここで祈られるのは、国家国民の安寧です。

一般人のように家族の健康や合格祈願など、私的なことを祈るのとは中身が違いますから、初詣とは少し意味合いが異なるようです。歳旦祭の後も、行事が目白押しです。
9時45分から始まる『新年祝賀の儀』は、両陛下がお揃いで皇族や元皇族、内閣総理大臣、閣僚、最高裁判所長官、宮内庁職員などから新年の挨拶をお受けになる儀式です。

「新年祝賀の儀」で、お言葉を述べる天皇皇后両陛下=1日午前11時8分、皇居・宮殿「松の間」
宮殿の松の間、竹の間、鳳凰の間など、参列者が待機している部屋を次々に回られます。数時間もの間、両陛下は立ちっぱなしです。
新年祝賀の儀は午後まで続き、各国の駐在大使公使夫妻と挨拶を交わす。元日だけでお祝いを受ける人数は計686名に及びます(2013年)。
朝は4時半には起きられてこれだけのスケジュールをこなされるのですから、お体へのご負担はかなりのものだと思われます。

以下に天皇陛下の、2015年の主な活動を掲載させていただきます。


陛下の年齢を考えると、これだけの激務をこれからもなさるということはなかなか難しいことです。陛下がご譲位されるのはこうした激務の中でも、特に絶やしてはならない宮中祭祀などをこれからもつつがなく実施されることをお望みなのだと考えます。

宮内庁の西村泰彦次長は先月25日の定例会見で、天皇陛下の譲位後の人員体制について、上皇、上皇后となられる天皇、皇后両陛下を支える新設の「上皇職」職員を60人台で発足させたいとする意向を明らかにしました。新天皇になられる皇太子さまのご一家を担当する「侍従職」は70人台とする方針です。

現在、両陛下をお支えする侍従職は約80人。陛下は譲位後、すべての公務を皇太子さまに譲る意向ですが、私的な活動を増やされる可能性もあり、国事行為に使う国(こく)璽(じ)などの管理を行う職員らを減らす一方、60人台半ばを維持します。

陛下の譲位後の侍従職は、ご高齢の両陛下を考慮して配置されている侍医など医療体制が縮小され、微減の70人台規模とします。秋篠宮ご一家をお支えする新設の「皇嗣職」は、皇太子ご一家を担当する東宮職と同規模の約50人規模とする見込みで、現在、秋篠宮家のお世話をする職員(約20人)から30人程度増えるとみられます。

新体制となるのは皇太子さまが即位される平成31年5月1日からの見通しです。宮内庁全体では計約40人程度の増員が必要で、西村次長は今後、関係省庁と調整を続けるとしています。
いずれにせよ、宮内庁は、ご譲位の体制をしっかり整えて、これからも宮中祭祀などがつつがなく行われるようにしていただきたいものです。
天皇彌榮
 天皇皇后両陛下 万歳! 万歳! 万歳!
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2018年1月1日月曜日

ウーマンラッシュアワーの村本大輔氏、テレ朝の「朝生」に出演 「侵略されたら降参する」 「沖縄はもともと中国から取ったんでしょ」―【私の論評】保守は村本氏のような人物こそ仲間に引き入れよ(゚д゚)!

ウーマンラッシュアワーの村本大輔氏、テレ朝の「朝生」に出演 「侵略されたら降参する」 「沖縄はもともと中国から取ったんでしょ」


お笑いコンビ「ウーマンラッシュアワー」の村本大輔氏(37)がテレビ朝日系討論番組「朝まで生テレビ元旦スペシャル」(1日午前1時から同5時50分)に出演した。

村本氏は、尖閣諸島問題に議論が及んだ際、「非武装中立論」を説き、「(尖閣が)侵略されたらどうするの」との問いに「白旗をあげて降参する」と主張。「なぜ中国や北朝鮮が日本を侵略するのか、意味が分からない」などと述べた。 また「尖閣諸島は人を殺して国を守るなら、(尖閣を)取られてもいい」と答えた。龍谷大の李相哲教授が「沖縄をくださいと言ったら、あげるわけですか」と問いかけると「もともと(沖縄は)中国から取ったんでしょ」と答えた。


尖閣諸島の部分の主な討論内容は以下の通り

井上達夫・東京大大学院教授「村本さん、非武装中立が多くの人は何を意味するか理解しないでいっているわけね。じゃあ、攻撃されたらどうしますか」

村本氏「なぜ攻撃されるんですか」

井上氏「侵略されないに越したことはない。じゃあ、もし侵略されたらどうするの。白旗を挙げて降参するの」

村本氏「僕はそっちかなと思います」

井上氏「そしたら侵略者に対して、侵略者に侵略のインセンティブを与えちゃうよね」

村本氏「なぜ、侵略されるのか、意味が分からないです。なぜ、中国や北朝鮮が日本を侵略するという発想になるのか、私、分からない」

井上氏「それは君が問題を避けているの。君の良いところは問題を逃げないことだと思ったけど、今までの非武装中立論は皆、そうやって…」

村本氏「手を挙げて言います。白旗を挙げて…」

司会の田原総一朗氏「例えば具体的に言うと、もしも日本が、米軍と自衛隊がいなかったら、尖閣は、中国は取るよ」

村本氏「分かりました。じゃあ、僕は逃げずに答えますけども、僕は…僕の意見は…」

田原氏「取られても良いわけね」

村本氏「僕は取られても良いです。僕は明け渡します。僕はですよ」

田原氏「何で」

村本氏「だって、だって…、もし皆さんの身内に自衛隊とか軍隊がいて、その身内が人を殺して国を守ることって…」

井上氏「じゃあ、自分の身内が殺されるってときに、敵を殺さないで自分が殺される状況に置かれたらどうする? 」

村本氏「じゃあ、殺されます」

井上氏「何で」

村本氏「だって、誰かを殺すわけでしょ」

井上氏「そういうこと、言う人は多いの」

村本氏「分かりました」

李相哲・龍谷大教授「尖閣諸島をよこせと言ったら大丈夫だと言ったけど、じゃあ、沖縄を下さいと言ったらあげるんですか」

村本氏「もともと中国から取ったんでしょ」(WEB編集チーム)

【私の論評】保守は村本氏のような人物こそ仲間に引き入れよ(゚д゚)!

ウーマンラッシュアワー
村本氏というと以前から物議をかもしていました。つい最近も、12月17日放送の『THE MANZAI』(フジテレビ系)でウーマンラッシュアワーが演じた漫才が大反響を巻き起こしていました。彼らが披露したのは、社会問題をテーマにした漫才。村本大輔が早口でまくし立てるようにしゃべりまくり、中川パラダイスが合いの手を入れていく。取り上げる話題は、原発問題、沖縄の米軍基地問題など、多岐にわたっていました。

芸人が社会問題や時事ネタを漫才で扱うこと自体は、それほど珍しいことではありません。爆笑問題やナイツもそういうネタをやっています。ただ、この時のウーマンラッシュアワーの漫才がそれらと違うのは、ネタの端々にメッセージ性が感じられたことです。単に漫才の素材として社会問題を取り上げているだけではなく、それについて自分たちがどう考えているのか、受け手にどう感じてほしいのか、ということがはっきり伝わってくる内容でした。

ウーマンラッシュアワーでネタ作りを担当している村本は、かつて『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)に出演したときにも、自身のレギュラー番組『ウーマンラッシュアワー村本大輔の土曜The NIGHT』(AbemaTV)でも、社会問題について自由に意見を発信してきました。この漫才もそんな彼の活動の延長線上にあったようです。

ただ、ここで注目すべきは、彼らがメッセージ性の強い漫才を演じて、観客から拍手混じりの大きな笑いを取った、ということです。安易な政治風刺ネタは、感心されることはあっても、笑いにつながることはないです。日本人の国民性には馴染まないような政治色の強いネタで、若い世代の観客をきちんと満足させたのが何よりも評価すべきことだったかもしれません。

中でも圧巻だったのは、漫才の結末部分。被災地の復興問題、沖縄の基地問題、北朝鮮のミサイル問題など、大事な問題はたくさんあるのに、ニュースで取り上げられるのは芸能人の不倫ネタばかり。本当に危機感を持つべきなのは「国民の意識の低さ」である、とビシッと言い切りました。そして、村本は「お前たちのことだ!」と捨て台詞を残して舞台を去っていきました。このオチの部分からは、村本が常日頃から人々に対して抱いている苛立ちのようなものがダイレクトに伝わってきました。



村本は、漫才や漫談において、自分の言いたいことを言って笑いを取ることを信条としています。自分の頭で考え、自分の体で感じたことでなければ、他人の心を動かすことはできないからです。

ところが、そのような芸風を続けていると、業界内では反感を買うことも多いです。同業者から「アイツはトガっている」「大人げない」などと陰口を叩かれたり、テレビ制作者からは「扱いづらい」「めんどくさい」などと思われたりします。村本はそんな現状への不満を募らせているようです。

また、このような芸人はともすると左翼系からも利用されてしまいがちです。実際「反安倍」を掲げる左翼が同氏を利用しようと躍起になっているようですが、当の本人はこういった動きに応じる様子もなく、むしろ批判的な考えも持っているようで以下のようなツイートをしています。


社会問題について、タレントがテレビで何らかの主義主張を口にしたりすることは、基本的にタブー視されています。ただ、それは明らかにメディア側の自主規制です。余分なトラブルが起こることを避けたいだけなのです。

村本が仕事で沖縄を訪れた際に、基地問題をネタにした漫才を披露したところ、大いに盛り上がった上に、ネタが終わった後で観客からの拍手が鳴り止まなくなったといいます。この経験から村本が学んだのは、社会的な問題の当事者こそが、それをネタにして笑い飛ばしてくれることを誰よりも望んでいる、ということでした。

村本大輔氏
それは、なぜアメリカではコメディアンが政治風刺ネタをやるのか、ということにも関係しています。多くのアメリカ人にとっては、政治、人種、宗教が身近で切実な問題なのです。だから、それを笑いのネタにすることが求められているのです。

しかし、日本人の多くは、人前で政治的な主張をしたり、議論を交わしたりすることを好まないです。政治風刺ネタにニーズがないので、ほとんどの芸人はそれに取り組もうとしません。

しかし、村本はあえてそこに切り込んだのです。ニーズがないなら、作ればいい。笑いという武器を使って、自分の言いたいことを全力で言う、というのが彼の本当の狙いのようです。いわば、観客のレベルに合わせるのではなく、観客を自分の求めるレベルまで高めようとしているのです。こんなにも壮大な野望を抱えて漫才をやっている芸人はほかにいないかもしれません。

ウーマンラッシュアワーの漫才は、単に題材として社会問題を扱っているだけの「社会派漫才」でありません。それは、事なかれ主義の日本人の意識を根底から変えようとする、前代未聞の「啓蒙漫才」のようです。

番組終了後、村本さんが自らのツイッターで、
2018年になりましたが、いま2018年の一年分くらいネットで叩かれてると思います。。
とつぶやいたように、ネット上では番組の一部分を切り出した動画が拡散するなどして、かなりの賛否両論が巻き起こっている。しかし本人は、
あとおれが前から自分は無知だ、と言ってて、今回の朝生のオファーあった時に、小学生以下のバカ丸出しの質問して話し止めるけどそれでいいなら出るってのが条件だったから、おれ的にはなんでも質問できて、最高に楽しかった。元旦から何見せられてんだって方、クレームは田原さんと朝生へ。 
テレビで無知晒してバカ晒してまわりにブチ切れられて誰かが学べばいいんじゃない?自ら賢いなんか一言も言ってないおれを呼ぶってのはそういう番組だってこと。その理由に終わりで田原さんが最高だった、ってわざわざ声かけて来てくれた。
と胸を張っています。ただ「中国から......」の部分だけは、琉球王国と中国王朝が冊封関係にあったことを「拡大解釈」してしまったと反省を口にしていたようです。

1月1日の「朝ナマ」に出演中の村本氏
確かに今回の非武装中立に関して、村本大輔氏の考えはいただないものでした。この点は、私もそう思います。批判が多いこともある程度仕方ないとは思います。

しかし、ここで私が一ついいたいのは、未だに「非武装中立論」が絶対善であると信じている人たちも少なからず存在するという事実を思い起こしていただきたいです。

これらの間違いを指摘したとしても、これらの人たちを変えることはできないでしょう。今回は、村本氏自身が「非武装中立」の立場から語ったため、大きな批判をうけているといことですが、もし村本氏が「非武装中立」の非合理性に気づいたとしたら、彼は、彼なりのパフォーマンスで、芸人としてその非合理性を訴えるようになると思います。

村本氏は、「権力を振りかざすやつもすごく苦手だが反権力を高らかに叫び自分と同じものは大歓迎、違うものは許さないという自分の中の独裁者に気付いてないやつも同じくらい苦手」としています。

いわゆる右翼系やいわゆる保守系の人々の中にも、「自分と同じものは大歓迎、違うものは許さない」という人も多いです。

私自身は、完璧に言葉の意味どおりの「保守」(本来の保守の意味は「中庸」に近い)であり、常日頃から「敵を増やすよりも、仲間をふやそう」という主義です。だから、自分と違うものでも許せます。

無論、私は譲ることができない部分もありますが、何から何まで自分の思うのと同じでないと駄目というような考え方はしません。たとえば村本氏であれば、何か一つでも自分と同じような考え方をしていれば、それを多くの人に広めていただければ、それはそれで良いことではないかと思います。

だから、村本氏のような人物を単に批判するだけではなく、できら仲間にしたいと考えてしまいます。

私は、常日頃から、マクロ経済や金融政策と雇用の密接な関して理解をしていない人が多いことに憤りを感じたり、安全保障の面でもお花畑のような人たちに憤りを感じていたりしますが、村本氏のような芸をもっていたら、あっと言う間に大勢の人にそれらの真の意味を伝えられるのではないかと思います。


金融政策の波及経路

しかし批判するだけでは、何も変わりません。村本氏のような人物こそ、仲間に引き入れるべきではないのかと思います。

「テレビで無知晒してバカ晒してまわりにブチ切れられて誰かが学べばいいんじゃない?」という村本氏は語っています。自分は知識が豊富で、優秀で、自分の考えていることは、何から何まで絶対善だと思い込むような全体主義者と比べれば、村本氏のほうが余程まともです。

世の中いわゆるインテリを自称する人、あるいは自称しないまでも自認する人は、少数派です。世の中を動かそうと思えば、普通の人たちを動かさなければならなのです。

本年は、真性保守として、このような人物を一人でも多く仲間にひきいれる努力をしていきたいもです。これを今年の抱負にしようと思います。

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2017年12月31日日曜日

【お金は知っている】国連の対北制裁強化で追い込まれる習主席 「抜け穴」封じなければ米から制裁の恐れ―【私の論評】中国が米国の要求を飲むのは時間の問題(゚д゚)!



 国連安全保障理事会は先週末、11月末に大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射した北朝鮮に対する新たな制裁を決議した。石油精製製品の対北輸出上限を年間50万バレルに引き下げることが主な内容だ。

 本欄は国連安保理が8月に決めた上限枠200万バレルは中国の2016年の対北供給量に匹敵することから制裁効果に疑問を呈してきたが、トランプ政権も同じ見方を持っていたのだろう。今後の問題は、中国の習近平政権がきちんと履行するかどうかだ。

 米政府は中国などの対北石油製品輸出は年間450万バレルと推定し、今回の決議でその9割が削減されるという。50万バレルまで削減するためには、ロシアや中東など中国以外からの石油製品の対北積み出しルートを全面封鎖するのに加えて、中国も16年比で4分の1以下まで出荷量を抑えるしかなくなる。

 北朝鮮と国境を挟んで陸ルートで結ばれている中国からは闇取引で石油製品が高い価格で供給されてきたが、これからは習政権がそうした裏ルートを厳しく取り締まらない限り、米国から対中制裁を受ける恐れがある。

 中国は核実験やミサイル発射を繰り返す北に対し、今年春までは貿易を拡大してきた。国連制裁そのものが「大甘」だったからだ。グラフは中国の対北石油製品輸出と、北の最大の外貨獲得源である石炭の対北輸入の推移である。一目瞭然、オバマ米政権までは北京の対応はまさに馬耳東風といったところだった。

対中強硬策をちらつかせるトランプ政権になって、ようやく中国が重い腰を上げ、米国が示す厳しい対北制裁決議案に難色を示しながらも、緩い内容の制裁案にすることで妥協してきた。8月には北の石炭と鉄鉱石・鉄鋼製品輸出禁止に同意し、9月には米国案を骨抜きにしたうえで原油と石油製品の対北輸出規制に応じた。

 グラフは中国側が発表する税関統計が基本になっており、闇ルートは含まれないが、正式ルート上は中国の対北石油製品輸出、石炭輸入とも、3月頃から急減傾向にある。米フロリダでの米中首脳会談を機に、中国側の対北政策が徐々に変化したことをうかがわせる。

 トランプ大統領は習氏に対し、大統領選で公約していた対中高関税の適用を棚上げする見返りに対北朝鮮政策での対米協力を強く求める一方で、国連制裁破りの中国企業や地方金融機関に対し、制裁を科してきた。口先だけで、ほとんど対中制裁しなかったオバマ前政権と違って、トランプ政権は強硬策を辞さない態度を鮮明にしている。

 年明けの焦点は中朝国境の緊迫化だ。北がさらに核実験・ミサイル発射を繰り返すようだと、トランプ氏は石油製品に続き原油の対北供給禁輸を習氏に強く迫るだろう。習氏がそれに応じない場合や、制裁の抜け穴封じをしないときは、トランプ氏は中国の国有大手商業銀行への金融制裁カードを切るだろう。追い込まれるのは金正恩(キム・ジョンウン)労働党総書記ばかりではない。習氏もそうだ。(産経新聞特別記者・田村秀男)

【私の論評】習近平が米国の要求を飲むのは時間の問題(゚д゚)!

中国は、米国のトランプ大統領の言うことを最後には絶対に受け入れることになります。それには、主に2つの理由があります。まず一つは、中国は米国と絶対に戦争できなということがあります。二つ目は、米国が実質的に世界の金融を支配しているということです。

一つ目の中国は米国と絶対に戦争ができない理由は明らかです。軍事力では、中国は米国の足元にも及ばないということがあります。

米国のあらゆる軍事情報からも、中国が米国と戦争する能力を持っていないことは明白です。

米海軍は、中国が南沙諸島付近で軍事的な挑発行動を行った場合、米海軍のイージス艦から発射するクルージングミサイル1発で人工島を木っ端みじんにするでしょう。

米海軍イージス艦
中国が本土の海南島にある海軍基地から潜水艦を送り込もうとすれば、米国がフィリピン海溝に展開しているロサンゼルス型原子力攻撃潜水艦の餌食になるだけです。

中国は、「空軍部隊を南沙諸島に進出させる」と言っています。しかし、グアム島と沖縄に配備された米空軍のステルス性戦闘爆撃機F22数機が管制機E3Cの制御のもと迎撃を行えば、中国空軍の航空機が数十機、束になってかかっても撃ち落とされます。

中国は、「尖閣諸島は自国の領土である」と主張し、東シナ海に防空識別圏と称する不法な空域をもうけて外国の航空機の進入を阻止すると主張しました。しかし、米軍はほぼ毎日、B2爆撃機と新型B52をグアム島から発進させ、防空識別圏の上空をこともなげに往復していました。

中国が、米国の空母を西太平洋から追い出すために開発した「空母キラー」と称するクルージングミサイルDF21も速度が遅く、米国のイージス艦が容易に撃墜できることが判明しました。

DF21
DF21はマッハ10で米軍は撃ち落とせないなどと喧伝されていましたが、実際には大気圏突入後の着弾場所の最終調整として最終段階で減速する必要があり、米艦隊側の迎撃が困難となるマッハ10での空母突入等を行えるわけではありません。最終段階で減速するというのであれば、マッハ10のミサイルなど日米ともに開発可能です。

ロシアから買い入れて改造し、鳴り物入りで登場させた空母「遼寧」は、南シナ海で試運転を一回しただけで、エンジン主軸が壊れて使い物にならなくなりました。その後何とか改修したようですが、未だに中国の工業力では、空母を動かす二十数万馬力のエンジンを製造できないのです。

日本では、最近護衛艦「いずも」を空母化する話もでていますが、中国は「いずも」のような護衛艦をつくる能力もないのです。

護衛艦「いずも」
中国が、米国と戦争すると騒ぎたてても単なる宣伝に過ぎません。米国のマスコミ同様、日本のメディアも中国政府の誇大な発表を鵜呑みにして、そのまま伝える悪習を早くやめるべきです。

次に、米国が実質的に世界の金融を支配していることも、中国にとってはかなりの脅威です。

超大国といわれるアメリカの一番の強さは、軍事力でもなく、イノベーション力でもありません。それは、米国による世界の金融支配にあります。現在の世界の金融体制は、ブレトン・ウッズ体制に端を発しています。これは、第二次世界大戦末期の1944年にアメリカのブレトン・ウッズで連合国通貨金融会議が開かれ、国際通貨基金(IMF)や国際復興開発銀行(IBRD)の設立が決定されたものです。

当時、世界の金の80%近くがアメリカに集中しており、アメリカは膨大な金保有国でした。その金と交換できるドルを基軸通貨とし、他国の通貨価値をドルと連動させるという仕組みで、金・ドル本位制ともいわれます。

米国の金融街 ウォール・ストリート
米国に金融制裁を実施されたら、最近は輸入も多くなっている中国の食料事情は逼迫するでしょうし、食料以外にも様々な物資の供給に支障をきたすことになります。

だからこそ、中国はドル支配体制からの脱却を目指し、人民元の国際化を進めていました。IMFの特別引出権(SDR)の構成通貨入りも、そういった流れの中で推し進められたものです。人民元はSDR入りしましたが、ドル決済を禁じられてしまえば中国経済は破綻に追い込まれることになります。

米国に本格的に金融制裁をされると、中国は資源を購入することもできず、戦闘機や軍艦を出動させることもできなくなります。これでは、最初から勝ち目はありません。

それに、中国の米国債保有は6月に5カ月連続で増加し、外国勢で首位の座を取り戻したようです。米財務省が15日発表した6月の対米証券投資動向によると、中国の米国債保有額は1兆1500億ドル(約127兆円)で、前月比で443億ドル増加。日本は1兆900億ドルで、5月に比べて205億ドル減少しました。日本は昨年10月に外国勢の米国債保有で中国を抜いて首位となっていました。

これは米国の脅威になるなどドヤ顔で吹聴する人もいますが、これも中国の大きな弱みとなります。米国がこれを凍結すれば、一気に中国は127兆円を失うことになります。

そもそも、元に信用があれば、中国は米ドルを大量に保有したり、米国債を保有する必要などもありません。逆のほうからみれば、中国元は中国が米ドルや米国債を大量に保有しているからこそ、一定の信用が保たれているのです。

その原則が崩れれば、元の信用は一気に崩れ、中国の金融は崩壊します。

以上の2点からいって、中国は米国の要求をいずれ聴くしかなくなります。

今年も今日を残すのみとなりました。本年中はお世話になりました。良いお年をお迎え下さい。

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2017年12月30日土曜日

八角理事長の高砂一門でも「貴乃花シンパ」が増加中か―【私の論評】今回の事件の構造は学校のイジメの構造と同じ(゚д゚)!


八角理事長
日馬富士暴行事件の責任を取って給与3か月分(約434万円)を返上した八角理事長(元横綱・北勝海)。この3か月分とは「理事長の残り任期(2018年3月まで)」という意味だ。

 「2018年初場所後に控える理事選と、その後の理事長選(理事の互選)で再選して禊ぎを済ませ、暴行事件に区切りを付けるというのが理事長の考え。率先して自らを律すれば、聴取になかなか応じようとしなかった(反執行部派の)貴乃花親方との違いを際立たせられるという狙いもありそうです」(協会関係者)

 だが、現在の角界の混乱の中では、その狙い通りに進むかどうかさえ不透明だ。所属する高砂一門は親方12人の小所帯のため、理事選でも理事1人分を確保する票数しかない。

 「一門内には、朝青龍が暴行事件で引退した際(2010年)に監督不行き届きで理事から降格処分を受けた高砂親方(元大関・朝潮)がいる。もともと面倒見が良く人望があるだけに、“朝青龍問題は過去の話。一門の統帥の名跡でもある高砂親方を理事に復帰させてやりたい”という声もある」(高砂一門関係者)

 八角理事長と貴乃花親方との対立が深まる中、一門内に「貴乃花シンパ」が増えているという指摘もある。前出の関係者が語る。

 「一門の次世代の理事候補といわれる九重親方(元大関・千代大海)は、年齢の近い貴乃花親方の考えに共感しているところがあるようです。また、尊敬する先代の九重親方(元横綱・千代の富士。2016年7月に死去)が八角親方と関係が悪かったこともあり、同じ一門でありながら決して親しい関係ではない」

 さらに、八角部屋の部屋付きである陣幕親方(元前頭・富士乃真)さえも貴乃花親方に近づいている。

 「2018年夏に陣幕親方の長女と貴乃花親方の長男(靴職人の花田優一氏)が結婚したことは、角界を騒然とさせました。八角部屋と貴乃花部屋という相容れない敵対関係ながら、縁戚関係になったことで、理事選の票読みがさらに複雑になっている」(同前)

 親方31人を擁する最大勢力・出羽海一門など、他の一門との太いパイプを持つ八角理事長とはいえ、「まさかの理事長落選さえあり得る」--そんな不安の声が八角親方周辺で囁かれているのだ。角界関係者は、そうした構図が詳細に記された『週刊ポスト』(1月1日・5日号)掲載の「角界100人相関図」を回し読みしているという。それほどまでに疑心暗鬼が渦巻いているのだ。

【私の論評】今回の事件の構造は学校のイジメの構造と同じ(゚д゚)!

アラブ研究者の竹内恵氏が最近の相撲界について以下のようなツイートをしていました。そうして、私はこのツイートにリプライしました。その内容が以下のものです。
今回の問題の構造は、本当に学校でのイメジの構造に良く似ていると思います。そうして、イジメのほとんどは犯罪です。

以下にイジメに関して、私が子供たちなどに対して話している内容を掲載します。これは、過去に話をするために子供たちと対話するたびに、サイトなどを参照したりした内容を私なりにまとめたものです。

イジメのほとんどは犯罪である

イジメのほとんどは犯罪であることを理解できていない人も多い
殴ったり、叩いたり、モノを投げつけたりするなど、暴力を振るえば、暴行罪(ぼうこうざい)です。相手に当たっていなくても、触れていなくても、暴行罪は成り立ちます。暴力をふるった結果、怪我をすれば、傷害罪です。 
暴力を振るっていなくても傷害罪が成り立つこともあります。相手が精神的にまいってしまうことがわかっているのに、わざと嫌がらせをして、病気になれば、傷害罪です。 
「あいつは~~だ」「あいつは~~なことをした」などと、あること・ないことを言いふらしたり、ネット上に書いたりして、からかうのは、名誉毀損罪(めいよきそんざい)です。その内容が本当かどうかは関係ありません。 
「馬鹿」「デブ」「ブス」「きもい」などと馬鹿にするのは,侮辱罪です。「殺す」「死ね」などと怖がらせるのは、脅迫罪です。 
パシリなど、やりたくないことを無理やりさせるのは、強要罪です。カツアゲや、奢らせるなど、お金を無理やり出させるのは恐喝罪、お金をむりやり奪うのは強盗罪です。モノを盗むのは、窃盗罪です。 
ノートや教科書にいたずら書きをしたり,上履きや体操服をぼろぼろにしたりするのは、器物損壊罪です。モノを隠すのは、器物損壊罪です。裸にさせたり、性的に恥ずかしいことをさせるのは、強制わいせつ罪です。 
普通の社会でこれだけ犯罪となることが、「子どもだから」「学校だから」という理由で許されてよいはずがありません。 
イジメられる側にも問題があるという考え方は100%間違い 

そのため、深刻ないじめのときには、警察に犯罪として捜査をしてもらうことも必要です。そうして私は、いじめがどんな犯罪にあたるかなどということよりも、法律からみて、もっと大事なことを皆さんに伝えたいと思います。それは「いじめられる側にも問題がある」という考えは、100%間違いだ、ということです。 
そして、いじめは、相手のことを大切な存在として尊重せず、相手から安心した毎日のくらしを奪い、時には、相手の人生・命そのものを奪ってしまうこともあるから、法律で許されないことなのだということです。
「いじめは確かに悪いこと。しかし、いじめられる側にも問題がある」、そんなふうに思いますかと聞くと、そうすると多くの人が「いじめられる側にも問題がある」、「問題があることが多い」と答えます。 
男子なのにナヨナヨしているとか、太っているなど他の人とちがったところがある。場の空気を読まないとか、他の人に迷惑をかけている、そんなことが、いじめられる側の「問題」だ、と指摘します。しかし、それは全く間違った考え方です。 
自分自身をふり返ってみてください。周りの人と違っているところや足りないところが、全くない、と言えるでしょうか。周りに全く迷惑をかけないで、生きて来られたでしょうか。そんなことはないはずです。 
「いじめられる側にも問題がある」。その考えは、あなたの、他の人と違っている部分や、足りない部分、人に迷惑をかけていることなどをとらえて、「あなたに対するいじめがあってもしかたがない」、ということにもなってしまうのです。 
「いじめられる側にも問題がある」というのは、結局どんな人に対してもこじつけて言うことができてしまう、後づけの言い訳に過ぎません。 
殴られれば体は痛いし、お金を取られれば損をします。それでも、自分がまるで物や人形,奴隷のようにあつかわれたり、シカトや「死ね」などの言葉で、ここにいること自体が認められなかったりすることは、体の痛みやお金の損とはくらべものにならないほど,心が深く傷つきます。 
そんな場所に毎朝登校するときの、重たい気持ち。安心した毎日を送ることができず、やがて、そのような学校に行くことができなくなってしまいます。その子の、学校に通うという人生の大事な時期を、いじめは奪うのです。 
一つひとつのいじめそのものは、ナイフで刺すようにすぐに人の命を落とすものではないかもしれません。でも、コップに水が一滴一滴とたまっていき、やがて最後の一滴でコップから水があふれてしまうように、心の痛みは、積み重なっていけば、やがてその人を自殺にまで追い込みます。 
その子の、幸せな人生そのものを、いじめは奪うのです。学校は、これからの人生を幸せに送ることができるようにするために、いろいろなことを学ぶ場所です。そのはずの学校で、人生そのものが奪われてしまうことは、絶対にあってはならないのです。 
 社会が成り立つためには、「お互いを認め合う」ことが必要

大人から見ると、学校は、本当に変わった場所です。同じ年の人だけで集まり、みんな同じ服を着て、みんな同じ日課を過ごし、勉強や部活動の成績など、みんな同じような目標に向かっています。 
だから、他の人のちょっとした「違い」が、すごく目立つように感じます。でも、一歩学校を出たあとの実際の社会では、一人ひとりが、本当にバラバラです。年も、生まれ育った環境も、外見も、ものの感じ方・考え方も、一人ひとりが違っていてあたりまえです。 
そして、その違いをお互いに認めあい、大切にしながら、社会は成り立っています。むしろ、違った性格・性質・能力持っている人が、新しいことを始めたり、社会を良い方向に変える力があると認められたりしています。 
どのような人であっても、大切な存在、大切な人間として扱われ、尊重されること。人は、誰かの所有物でも、誰かの人形でも、誰かの奴隷でもありません。 
大切な存在,大切な人間として扱われること。そして、誰もが、安心した毎日を過ごすことができ、幸せな人生を送ることができること。それが,法律が何よりもいちばん大事に守っている基本です。いじめは、法律が一番大事にしているそのことを奪うから、許されないのです。 
法律は,この社会がうまくまわるために作られているルールです。法律は、国会という場所で、多数決で作られます。多数決は,「数が多ければ何を決めてもかまわない」、ということではありません。 
「一人ひとりが大切な存在だ」ということを認め合っているからこそ、そして「すべての人が安心・安全な毎日を送り、幸せな人生を送ることができるためにどうすればよいだろうか」と考えながらルールを作るからこそ、その多数決にすべての人が納得し、従うことができるものになるのです。 
この社会が成り立つためには、「お互いを認め合う」、「お互いを傷つけない」、ということが、絶対に必要なのです。 
 結論
私たちは、いじめでつらい思いをしている子を守るために、そして、「お互いを大切にし合う」というこの社会を守るために、いじめをなくさなければいけないのです。 
学校は、一般社会と比較すれば、同じような子どもたちが集まっています。だからこそ、一人ひとりの少しずつの「ちがい」から、お互いに認め合うことを学んでいくことができる場所です。 
しかし、大人たちは、子どもたちにそのメッセージをきちんと伝えていません。むしろ、「まとまりから外れないように」と、大人が子どもにプレッシャーを与えています。それが子どもたちにストレスになって、いじめにつながっているのだと、私は思っています。 
自分自身がまわりからきちんと大切にされていなければ、「他の人を大切にする」ということの本当の意味を理解するのは、難しいことです。だから私たち大人は、いじめをしてしまう子どもにも、「あなたも大切な存在なんだよ」というメッセージが、その心に届くようにしなければならないと思います。 
大人の社会の中でも、他の人の違っている部分や弱い部分を受けいれることができず、攻撃する人がいるのは、残念なことです。私たち大人も、きちんと反省しなければならないと思っています。 
今学校に通っている皆さんに、「お互いを認め合い、傷つけることなく、それぞれが安心した毎日・幸せな人生を送ることができる」そういう社会の、きちんとしたメンバーの一人になってほしい、と私は心から願っています。
今回の事件も、加害者も被害者もはっきりとわかっている犯罪です。『貴乃花親方=親、相撲協会=学校、貴ノ岩=いじめの被害者』と置換すると、この事件は相撲協会だけに任せるべき問題ではなく、警察にゆだねるべきであるという考え方は当然です。 

そもそも暴行沙汰があった事を相撲協会や横綱審議委員会が裁く必要があるのでしょうか。このような暴力沙汰は、警察や司法の扱うべきものです。相撲協会としては、警察や司法の判断を待って、降格、減給などの具体的処分を決めるべきです。

それ以前に、暴力沙汰がおこる根本原因をつきとめるために、調査を行う体制を整え、それをもとにその根本原因を排除するための方策を追求すべきです。そうして、今の段階では、その経過報告などをすべきと思います。日本相撲協会は現時点では、 暴力行為の再発防止へ委員会設置をすることだけは、表明しています。しかし、本来ならば、こちらのほうを優先すべきです。

にもかかわらず、相撲協会は、被害者側である貴乃花親方の処分を早々と決めました。このようなことでは、 竹内恵氏が上記のような主張をするのも当然のことです。

日馬富士の引退で、相撲協会が教訓としなければならないのは、相撲界に根強くはびこる「教育」という名の暴力を一掃することがいかに難しいか、ということです。

くしくも、日馬富士引退会見がそれを浮き彫りにしていたと思います。日馬富士は貴ノ岩への暴行後の10月26日に「彼が謝りに来て」と明かし、続けて「その時に、こうやって叱ってくれるお兄さんがいることに感謝しろよ。気をつけて頑張れよと言って、握手して別れたわけですから。まさか、事がこんなに大きくなるとは」と語っています。問題は、暴力を伴った指導が少しも悪いことではないと、その時点で彼自身が確信していたことです。

暴力による「教え」は、いくら「本人のため」という気持ちがあったとしても、許されるものではありません。学校のイジメと同じように、立場の弱い者にすれば、それはただの暴力でしかありません。

相撲協会は今回の問題が、その暴力的な体質を改めるための最後の機会であると、肝に銘じるべきです。しかし、そうではないようです。そんなことよりも、ブログ冒頭の記事にあるように、理事選の票読みに関心があるようです。

そのようなことでは、やはり竹内恵氏が主張するような、荒療治が必要なのかもしれません。

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2017年12月29日金曜日

【日本の解き方】安倍政権5年で何が変わったのか 雇用大幅改善、積極的外交で高まる発言権…課題は迫る半島危機―【私の論評】戦後レジームからの脱却は安倍首相にしかできない(゚д゚)!

【日本の解き方】安倍政権5年で何が変わったのか 雇用大幅改善、積極的外交で高まる発言権…課題は迫る半島危機


第2次安倍晋三政権誕生から5年が経過した。この間、経済や外交、安全保障面で何が変わったのか。まだやり残していることは何か。

経済面での成績について筆者は、雇用60点、所得40点の合計100点を満点として評価している。

雇用は失業率の下限となる「構造失業率」の水準である2%台半ばを満点の60点とするので、現状は55点だ。

所得では国内総生産(GDP)の動向を見る。2014年の消費増税の前までは良かったが、その後は消費が伸び悩んだので40点満点の15点だ。

合計70点なので、まあまあの合格点だ。何より雇用の確保に成功したことで最低ラインの経済政策は達成できたといえる。

安倍政権では雇用環境を劇的に改善できたので、影響をもろに受ける若者にとっては朗報になっている。就職難に苦しみ、ブラック企業を跋扈(ばっこ)させた民主党政権時代と今は全く違う状況となった。この結果、若者の安倍政権への支持率は高く、政権の躍進に大きく寄与している。

失業率が構造失業率の水準まで低下する(これは同時にインフレ率を目標の2%にすることにもなる)には、あと有効需要をGDPの2%程度、10兆円程度押し上げる必要がある。これを金融緩和と財政出動で行うことが今後の課題だ。それができれば、賃金は伸び、消費への好循環にもつながり、経済はほぼ満足できる結果になる。

外交面では、安倍首相の外遊回数が際立っている。戦後最多の外遊は、小泉純一郎元首相の51回だった。安倍首相は2006年からの第1次安倍政権で8回、第2次~第4次政権では、今年11月までに59回である。訪問国・地域は70、延べにすると129と、これも戦後最多である。国会日程で縛られる日本の首相としては、過去にない外交を展開しているといえるだろう。

こうした外交経験が、国際社会で安倍首相の存在感を高めている。先進7カ国(G7)サミットでは、ドイツのメルケル首相に次ぐ常連で、日本の発言権も大きくなった。この経験が、トランプ米大統領との信頼関係を増すのに大いに役立っている。トランプ大統領は安倍首相を信頼していると公言しており、訪米した日本の首相の中では、安倍首相はこれまでにない待遇を受けたほどだ。

安全保障面では、安保関連法を成立させたのがポイントだ。集団的自衛権について、憲法上認められるとはいうものの、実際にはその発動に法的な安定性がなかった。その根拠を作ったという意味で、やっと実効的なものとなった。集団的自衛権については、戦争に巻き込まれると一部の反対もあったが、過去の戦争のデータ分析では、戦争の確率を減少させることが実証されている。その意味では国際常識に日本も一歩近づいた。

今後の課題は、目の前に迫っている朝鮮半島危機である。北朝鮮の核・ミサイル開発や国連決議の進捗(しんちょく)をみると、春までに軍事オプション行使か北朝鮮の降伏があっても不思議ではない。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】戦後レジームからの脱却は安倍首相にしかできない(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事の内容、妥当なものだと思います。

以下に、歴代首相在職ランキングを掲載しておきます。


安倍首相は、連続では小泉氏に迫る勢いです。通算では、吉田茂氏に迫る勢いで、小泉氏を追い越しています。

独裁国家の大統領などが20年、30年在位するのはともかくとして、民主主義国でも米国の大統領は大体2期8年務めています。ドイツのアンゲラ・メルケル首相に至っては12年を過ぎ、16年も視野に入っています。

ドイツのアンゲラ・メルケル首相
民主主義国ではないですが、一応選挙を実施しているロシアのウラジーミル・プーチン大統領は通算12年の任期を来年迎えますが、その後も対抗馬がいないと言われています。

中国も大体2期10年を踏襲してきたし、習近平政権は2期目どころか3期目の22年以降の続投も噂されています。

一方、日本の首相の在任期間は、昭和以降の48人の首相を見ると、平均2年弱です。そうした中で、安倍氏は在位約6年10か月で外国首脳と漸く互角の在位期間になりつつあります。

第1期安倍政権も含めた6代の首相がほぼ1年ごとに代わり、日本人的感覚からは2期目の安倍政権は長いように感じられます。しかし、国益を阻害してきた1年ごとの政権に対比した時、2期目の安倍政権は、日本の国柄と安全に資するために必要な法案を多く成立させてきました。

1期目で教育基本法の改正、憲法改正の是非を問う国民投票法の制定、防衛庁の省への昇格、そして限定的な集団的自衛権行使の研究など、長期的な将来を見据えた施策を残したが、キャッチフレーズであった「戦後レジームからの脱却」の表看板とも言うべき靖国参拝は果たせませんでした。

参議院議員選挙の惨敗、閣僚の不祥事に加え本人の体調悪化もありましたが、慰安婦問題や南京事件などの歴史認識に対する米中韓の非難などから国民の支持率も低下し、「東京裁判史観の見直し」もできずじまいでした。

安倍首相は、1期目の反省から2期目は世界を俯瞰する外交を展開し、世界のリーダーと誼を深め、臨機応変に会話できる人間関係の構築に尽力してきました。

世界を俯瞰した外交を国内外に印象づけた伊勢志摩サミット

そうした努力の結果、ドナルド・トランプ米国大統領とも、プーチン露大統領とも軽易に電話できるまでの関係を築き、G7サミットではトランプとメルケルの仲をとりもつ場面さえあったといわれています。

いまや、安倍首相はG7を牽引する存在であり、日本の歴代首相のなかでも希有な存在です。俯瞰外交で稼いだこの貴重な資源を活用して、当面する北朝鮮の核・ミサイル対処と拉致被害者の奪還、長期的には対中関係を改善して靖国参拝を果し、東京裁判史観から脱却する先鞭をつけてもらいたいものです。


米国の保守主義運動は、フランクリン・ルーズヴェルト民主党政権によって構築された『ニューディール連合』に対抗する目的で始まったと指摘したのは、保守系シンクタンクであるヘリテージ財団のリー・エドワース博士です。

ルーズヴェルトは大統領に就任すると直ちにソ連と国交を樹立し、反共を唱えるドイツや日本に対して敵対的な外交政策をとるようになりました。

「強い日本はアジアの脅威であるばかりでなく、アメリカの権益を損なう存在」とみて、「弱い日本」政策を推進する。博士によると、現代米国の保守主義者にとってルーズヴェルトこそ最大の敵であったといいます。

他方で、「大陸国家(ロシアや中国)の膨張政策の防波堤として日本を活用すべきだ」とする「強い日本」政策を進めようとしたのが保守派の人たちです。

ミスター共和党と呼ばれたロバート・タフト上院議員たちは「弱く、敗北した日本ではなく、強い日本を維持することがアメリカの利益となる」と主張しました。

また、「勝者による敗者の裁判は、どれほど司法的な体裁を整えてみても、決して公正なものではあり得ない」し、「日本に対してはドイツと異なり、復讐という名目が立ちにくい」と、東京裁判を批判してきました。

タフト上院議員が「ヤルタ協定」批判を行い広範囲の支持を得たきっかけは、元ソ連のスパイで「タイム・マガジン」誌編集者あったH・チェンバースが1948年に「ルーズヴェルト大統領の側近としてヤルタ会談に参加した国務省高官のアルジャー・ヒルはソ連のスパイだった」との告発でした。

1950年以降、ジョセフ・マッカーシー上院議員の赤狩りで自殺者が多く出るようになると、ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストなど代表的なリベラル派マスコミが「魔女狩りだ」と批判を強めていきました。

戦前戦後を通じて米国にはこうした「草の根保守」が存在してきました。その数は1200万人とも言われ、真珠湾攻撃をめぐる「ルーズヴェルトの陰謀説」を支持してきました。

米の草の根保守の重鎮故フィリス・シュラフリー女史
しかし、新聞・テレビはリベラル派に牛耳られて「草の根保守」の意見はほとんど報じられないため、両国の総合理解を妨げてきたと言われています。

1995年以降、米政府が第2次世界大戦中のソ連諜報機関の交信を米陸軍秘密情報部が傍受・解読した機密のヴェノナ文書を公開し始めました。これにより、チェンバースの告発が正しかったことが論証され、保守派の勢いが盛り返してきたとされます。



ブッシュ大統領(当時)が2005年5月7日、バルト3国の一国、ラトビアの首都リガで行った演説はその延長線上にありました。

ブッシュ元大統領は「安定のため小国の自由を犠牲にした試みは、反対に欧州を分断し不安定化をもたらす結果を招いた」と述べ、「史上最大の過ちの1つだ」とヤルタ会談を強く非難しました。

第2次世界大戦の連合国であったルーズヴェルト米大統領、ウィンストン・チャーチル英首相、ヨシフ・スターリンソ連首相は1945年2月クリミヤ半島のヤルタで会談しました。

この際、国際連合構想にソ連が同意する見返りとして、ポーランドやバルト3国などをソ連の勢力圏と認め、対日参戦と引き換えに満州の権益や南樺太・北方領土をソ連に与える「秘密協定」を当事国である東欧諸国や日本の同意を得ずに結びました。

中国国共内戦の激化と共産党政権の樹立、朝鮮半島の分割、満州と北方領土の占領などは、その協定がもたらした結果です。

ヤルタ会談が行われた時点では米国に原爆が完成しておらず、日本本土上陸作戦では50万人の兵士が犠牲になると予測され、大統領はソ連の参戦が必要とみていたとされます。また、大統領は病気で覇気を失っており、スターリンがルーズヴェルトの弱みにつけ込んだとの見方もあります。

米国の保守派がヤルタ協定を批判するのは、ロシアの参戦は必要なかったとみているからであり、参戦が共産主義帝国構築への道を開き、朝鮮戦争をもたらし、また今日の北朝鮮における金一族の独裁体制へつながったという認識をもっているからです。

ヤルタ会談

なお、「産経新聞」(平成29年1月8日、2月23日付)によると、アイゼンハワー米大統領(当時)は1953年2月、「共産主義による民衆の奴隷化を招く秘密協定はすべて破棄する方針」を打ち出しました。

これを受けて、チャーチル首相は「ヤルタで起きたことは詳らかにすべきだ」との書簡をイーデン英国外相に送り、また領土拡大を禁止した大西洋憲章等に違反するとの議論が連合国内で起きることを危惧してか、秘密協定の蚊帳の外に置かれていたことを白状しています。

ヤルタ協定非難の根拠を明確にしたのは先述のヴェノナ文書です。文書からは米政府に200人超の共産党スパイがいて、ルーズヴェルト政権を唆し、日本と開戦するように仕向け、戦後は東京裁判を行って日本罪悪史観を植えつけるようにしたことが読み取れます。

今日に至る共産党の暴威をもたらすヤルタ密約であったことが分かりますが、これに鉄槌を下したのがブッシュのリガ演説であったのです。

米国では保守派の一部から「ジョージ・ブッシュ大統領 ありがとう。フランクリン・ルーズヴェルト大統領の悲劇的な間違いの1つを指摘し、よくぞ謝罪の意を表明してくれた」との声も上がったとされます。


この1年余後の2006年9月、第1次安倍内閣が発足しました。リガ演説が安倍氏を勇気づけ、「東京裁判史観の見直し」と「日米同盟の堅持」に向かわせたことは言うまでもないでしょう。

東京裁判史観を日本に押しつけてきた米国で保守派が声を大にしてルーズヴェルト大統領の政策を「間違いであった」と難詰し始めたわけで、千載一遇のチャンスと見た首相が「戦後レジームからの脱却」を掲げたことは当然すぎるほど当然でした。

安倍氏は「日本のために命をささげた人を祀る靖国を参拝するのは当然で、どこの国でも行っている慰霊の行為だ」と自民党幹事長代理時代にも語っています。

中国と韓国を除く世界のほとんどが靖国神社こそがわが国の戦没者追悼の中心的施設と見做して参拝してきた経緯もあります。

時期は前後しますが、元首クラスの靖国参拝者はエリツイン・ロシア大統領、アルゼンチンの大統領、トンガ国王、チベットのダライ・ラマ14世、リトアニアの首相夫妻、タイのプミポン国王の代理などである。

また、首相・閣僚クラスでは中華民国(台湾)、ミャンマー、トンガ王国、アゼルバイジャン、トルコ、イタリア、チリ、ベトナム、インドネシア、パラオなどが参拝しています。

わが国に訪れる外国要人の数から考えれば決して多いとは言えないですが、これは要人の日程を作成する外務省が、靖国神社参拝に対して消極的反対の立場をとっているからであす。実際、アイゼンハワー大統領が参拝して日本の戦没者に敬意を表したいと要望したときも外務省の難色で潰れたということがありました。

また、中国共産党は、首相の靖国神社参拝に怒っているかというと、必ずしもそうではないと私は思います。中国はこれに怒った素振りを見せれば、他の分野で対日譲歩を獲得できると考えているのでしょう。

1989年の天安門事件がきっかけで、経済発展に必要な資金が入って来なくなり、また海外に亡命した学生たちが欧米のメディアと連携して中国共産党批判の活動を開始しました。

中国共産党政府は対策を迫られ、ソ連の脅威がなくなった後の日本の位置づけを再検討し、「アジアにおける中国の覇権を確立するためには、日本の政治大国化を阻む必要があり、そのためには過去の謝罪問題を取り上げるべきだ」という結論になったといわれています。

首相の靖国参拝批判はこうした共産党指導部の政策から出てきたものであり、一般の中国人の中にある認識ではありません。この問題では、7000〜8000万人の共産党員を見るのではなく、13億余の中国人の方を見るべきです。

外務省には、外国の草の根意識をしっかり把握し、歴史問題などの真髄に迫る努力が欠落していました。外務省には、大使たちの個人的栄華を優先し、国益を毀損する体質が根づいてきたために「害務省」と揶揄され続けることになりました。


拉致問題に関しても、外務省の努力が足りなかったことはしばしば聞かれたことです。「地球よりも重い」とする人命を守り、また取り返せない現実には、省庁間の連携や国会の機能低下にも問題があります。

「拉致問題の解決なくして私の任務は終わらない」との文言は、安倍首相の極まり文句です。安倍氏は最初から関わってきたばかりでなく、日本人を思う政治家としての責任感の表明でもあるのでしょう。

相手は日本の領土に不法侵入して拉致していったもので、しかも個人の犯罪ではなく、国家絡みで計画的に行った犯罪です。

これほど明確かつ悪辣な犯罪を、米国であれば決して許さないでしょう。そして話し合いが決裂すれば、間違いなく武力や武器の使用も含めたあらゆる手段を駆使して奪還することでしょう。

日本人の誰もが自分の子供が拉致されたと想定した場合、しかも交渉に交渉を重ねても解決しない場合、政府には武力を含むありとあらゆる方法で取り返してほしいと思うに違いないです。1人の例外もなく各家族がそう思うならば、その集積は国民的総意ではないでしょうか。

そうした総意を受けた政府と国会は、あらゆる手段をテーブルに乗せ、解決の方策を探求するのが普通です。解決しないで過ぎた数十年は悔やんでも悔やみきれないですが、いまこそ日本国民一丸となって解決しなければならないです。それが出来るのは安倍首相をおいてほかにないのでしょうか。

日本は国際的な枠組みや制裁などを善意に解釈し、辛抱強く交渉を重ねてきました。また合意はきちんと守ってきました。しかし、何ら解決していません。これほど理不尽なことはないです。

政府が世界に向けて拉致の不条理を訴え、奪還の「構え」をとっても非難される筋合いはないでしょう。それこそが外務省がいま注力すべき最大事です。

他方で、外交交渉に必要とされる防衛力が日本には決定的に不足しています。現在の法体制を熟知していると思われる相手国は、日本が武力行使をできない現実を知り尽くしているともいわれています。

従って、拉致問題の解決とは第一に交渉であるが、同時に憲法改正の問題でもあります。憲法を改正して、関連する法整備を行い、圧力と対話の圧力を加えることです。

世界の軍事費の趨勢からは対GDP(国内総生産)比2%までを限度として、国民に防衛費増大の必要性を問いかける必要があります。

少子高齢化で教育の質的向上を図り、社会保障に予算が必要であることは分かります。そのために、防衛費の2%枠は3年、長くても5年限定のように背水の陣を引くことが必要でしょう。

性善説に立つ日本はすっかりなめられてきました。以心伝心で相通ずる国民同士では性善説が相応しいですが、国益第一の国際社会相手では性悪説に立つ対処も必要になります。

ましてや自国の犯罪を認めながら拉致被害者を帰す意志さえ見せない外国相手では、対話はゼスチャ—だけで、本心は時間稼ぎや金銭目当てなどではないかと疑わざるを得ません。そこに必要なものは更なる圧力であり、そのために必要は法体制の整備です。


安倍首相
冷戦期を乗り切ったロナルド・レーガン米大統領は8年間、マーガレット・サッチャー首相は12年間在位したし、フランスのジャック・シラク大統領も12年間の在位でした。

現在の世界の首脳たちも同様な在位であり、安倍首相の在位が長すぎるということはないです。安倍首相には、世界の首脳たちと胸襟を開いて話せるよしみを生かして、日本着せられた犯罪国家という汚名の払拭と地位の向上に尽力してもらいたいです。

7年8か月在位した佐藤栄作氏は沖縄返還を成し遂げたましたし、在位7年2か月の吉田茂氏はサンフランシスコ平和条約を締結し、また日米同盟の基礎を固めました。国家の健全化は短期間ではなし得ません。

「戦後レジームからの脱却」という用語はタブー視されているようですが、戦後の総決算をして中韓が仕かける歴史戦に勝利しなければ日本の未来はありません。

その意識と能力を持ち続けているのは現在の日本では、安倍氏をおいてほかにありません。

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2017年12月28日木曜日

【日韓合意検証発表】交渉過程の一方的公表を韓国メディアも批判「国際社会の信頼低下」―【私の論評】北だけでなく朝鮮半島全体に新レジームが樹立されるかもしれない(゚д゚)!


韓国の尹炳世前外相
 慰安婦問題をめぐる日韓合意について、韓国外相直属の作業部会が交渉過程を一方的に公表したことに、韓国メディアからも批判が上がった。北朝鮮問題で日本との緊密な協力が求めれる中、日韓関係の冷え込みを懸念する声も強い。

 「複雑で難しい交渉過程を外交慣例を無視して一方的に公開したことは、韓国外交への国際社会の信頼を今後、低下させるだろう」

 尹炳世前外相は27日の検証結果発表後、記者団へのメールで危惧を表明した。尹氏は2015年12月に合意を発表した当事者だ。

 検証報告書は、韓国政府が非公開の合意で、日本側の要望に対して譲歩していたことを問題視した。しかし、保守系紙、中央日報は28日、社説で「われわれの希望を成し遂げるには相手の要求も聞き入れなければならない。一定部分は公開できないこともある」と非公開合意に理解を示した。

 さらに「大きな問題は、経緯調査という名目で外交上越えてはならない一線が守られなかった事実だ」と指摘。韓国で外交文書は原則、30年間非公開とされるが、わずか2年での交渉過程の公表を批判した。

 安倍晋三政権が14年に慰安婦問題をめぐる1993年の河野洋平官房長官談話の検証結果を公表した際、韓国政府は「信頼を傷つけた」と非難していた。同紙は「日本はいうまでもなく、どの国が韓国政府を信じて秘密の取引ができるだろうか」と疑問を呈した。

 検証結果を受け、元慰安婦の支援団体などが「合意の無効化」を主張する中、朝鮮日報は社説で、合意を破棄し、再交渉を求めれば、「韓日関係は破綻するだろう」と警告。「北朝鮮が核武装の完成を宣言した状況で、いつまでも過去にとらわれているわけにはいかない」とも強調した。

【私の論評】北だけでなく韓国を含めた半島全体に新レジームが樹立されるかもしれない(゚д゚)!
いま韓国は国が理性を失いつつあると感じる。(略)政治家は扇動し、大衆は集団狂気を噴出させている。理性が行方をくらまし、憤怒と感情、アブノーマルがのさばる国になった。すべてが滅びようとしているかのようだ。
短絡的かつ他人の話を聞けない方々が、「ヘイトスピーチだー」とわめき出す前に言っておきますが、これは朝鮮日報(日本語版)の今年の2月に掲載された<韓国はみんな狂っている、まともではない>というコラム記事を引用したものです。つまり韓国のメディアが、自国の現状を自虐的に嘆いて見せたのです。

確かに当時から、韓国は苦境にありました。経済は長く低迷し、政治はパク・クネ大統領がスキャンダルによって機能停止。米国と中国を二股かけたがゆえに、どちらからもキツい当たりを受けていました。そして何よりも、今まで韓国が前言撤回しようと、約束を破ろうと、国際法違反しようと、とてつもない侮辱を浴びせようと、されるがままで、あげく最後は謝ってきた日本に、手厳しい反撃を浴びるようなりました。

言うまでもなく韓国内の日本大使館や領事館前に建てられた「慰安婦像」を巡り、日本政府が取った対抗措置のことでした。なかでも10日ほどで戻されるはずと韓国も高をくくっていた駐韓大使の一時帰国が、官邸首脳によって引き延ばされたことの衝撃は大きなものでした。

さすがの韓国(メディア)も深く反省して自虐記事を記した、ということなのでしょうか。

日本の反撃にショックは受けたようですが、相手国を慮るのではなく、すべては自国中心目線に帰結させるのが韓国の本質です。韓国はいつもの反省なき韓国でした。ゆえに冷め切った日韓関係も、融和の糸口が見つからない状況にあります。

「慰安婦問題を大きくしているのは日本」

などと、河野洋平・元衆院議長は語っていましたが、慰安婦問題の捏造に大きく貢献した河野氏の言うことを、真剣に聞く人はいないでしょう。いま日本人は、日韓関係をどうしたいと思っているのでしょうか。今年の1月28、29日両日実施したFNN・産経合同世論調査によると、
<韓国を外交や経済活動の相手国として信頼できない> →77.9%
<(慰安婦問題を最終解決した)日韓合意を韓国が守らないことを懸念する> →86.4%
前述の駐韓大使一時帰国など、自民党政府の対抗措置も8割超の賛成を受けていました。政党別に見ても、すべての主要政党支持者の間で政府支持が圧倒的に上回りました。これは、当時の民進党支持者であっても、共産党支持者であってもです。

現在では、駐韓大使は、韓国に戻りましたが、それも北の脅威が高まったので、いざというときの邦人救出のためなどのための一時的な措置であると考えられます。

つまり日本国民は、当時からほぼ韓国を信用していないのです。経済的にも、日韓通貨スワップなど必要としていないとしています。間違いなく、日韓は距離を置いた方が良いのです。

そうして、現状の韓国は、文在寅が大統領になりましたが、朴槿恵時代よりも酷いことになっており、とうとうブログ冒頭にある日韓合意検証発表なることをしでかしたのです。

ただし、韓国の崩壊を最も喜ぶのは北朝鮮であり、中国共産党でもあります。そうなると、日本にとっても危険が増大することになります。韓国にはもう少しだけ理性的になってもらいたいものですが、それは無理というものでしょう。

この韓国の異常ぶりは、日米中露も十分に理解しています。このブログではそれについては何度か掲載しました。その代表的な記事を以下に掲載します。
米WSJ紙、文大統領を激烈批判「信頼できる友人ではない」 韓国メディアは狂乱状態―【私の論評】「北朝鮮版ヤルタ会談」から締め出された韓国(゚д゚)!

韓国文在寅大統領(右)との会談を終え、記者会見するトランプ米大統領
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、トランプ大統領訪韓時に韓国がおかした最大失敗について掲載しました。その部分を以下に掲載します。
 最大の失敗は、もう韓国は北朝鮮有事の後の新たな東アジアの秩序づくり、いわば「北朝鮮版ヤルタ会談」には実質的に参加できないということです。
韓国が「北朝鮮版ヤルタ会談」から締め出されたのは、日米中露ともに、韓国の異常ぶりに気づいていて、韓国をこの会談に入れれば、話が複雑化するだけであると理解しているともいえると思います。
韓国では、北崩壊後には以下のような分割統治になると予想する内容がテレビで報道されているそうです。

しかし、私自身は、これに日本や他国も加わる可能性も十分にあると思います。もしかすると、北朝鮮版ヤルタ会談から実質的に外された韓国は、北の分割統治には加われない可能性すらあると思います。

さらに私としては、「北朝鮮版ヤルタ会談」の中にはひよっとすると、韓国の将来を決めることも盛り込まれていたのではないかとも考えています。
現在の文在寅政権は、かなり親北的です。これは、日米からみると、北が米国の圧力に屈したり、武力攻撃で崩壊したしたにしても、韓国にその勢力が残存することになり、実質半島全体が北朝鮮になってしまうかもしれません。これはかなりやっかいなことになります
中露からすれば、北朝鮮が一方的になくなれば、いずれ韓国が北の領域も併合することになるかもしれないという危機感があります。そうなると、今までは日米との間に北という緩衝地帯があったにもかかわず、それがなくなることを意味します。
これは、日米中露にとっては良いことではありません。であれば、朝鮮半島全域を日米中露と他国をも含めた国連軍などで統治した後に、ここに日米寄りでも、中露寄りでもない中立的な新国家を設立するというのが最も望ましいかもしれません。
こうすることにより、半島問題はすっきりかたがつきます。現在までの「北朝鮮版ヤルタ会談」では、北の崩壊直後の話し合いはされているかもしれませんが、韓国の扱いまではされていないかもしれません。
しかし、北の後には、韓国を何とかしなければならないという機運は、日米中露の間で高まるのは間違いないものと思います。ただし、これはすぐにということではなく、北朝鮮崩壊後数年から10年後ということになるでしょう。まずは、北崩壊後の真空地帯をそのまま放置すれば無政府状態になりとんでもないことになります。
まずは、この真空地帯を埋めることになるでしょう。そのためには、ここをいくつかの国で分割統治することになると考えられます。
海外に覇権された自衛隊
ただし、日本が北崩壊後に多少の犠牲が出るのを承知で、北に自衛隊駐屯させることを拒めば、日本は米国の信頼を失い、中露からは見下されることになるでしょう。そのような場合には、日本は韓国並に扱われることになるでしょう。自国を含む、アジアの新秩序に全く関与できなくなり、それを一方的に米中露に決められることになるのです。
これによって、第二次世界大戦による「戦後レジーム」はなくなりますが、その後も新たなレジームの中になすすべもなく組み込まれることになります。
ただし、日本が北に自衛隊を駐屯させれば、米国日本に対する信頼はますます大きなものとなり、中露は日本を見直すようになり、新たなアジアの新秩序に積極的に関与できるようになり、いわゆる「戦後レジーム」から完璧に脱却できるようになるでしょう。
いずれにせよ、北対応はこれからの日本にとって正念場になるのは間違いないです。
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2017年12月27日水曜日

やはり「中国と対決」の道を選んだトランプ政権―【私の論評】背景には米国内での歴史の見直しが(゚д゚)!


米中融和路線を否定した国家安全保障戦略

米国のドナルド・トランプ大統領(左)と中国の習近平国家主席(2017年11月9日)
中国は、米国が主導する国際秩序への最大の挑戦者である──。米国のトランプ大統領が12月18日に発表した「国家安全保障戦略」は、対中政策の前提として中国をこう位置づけ、長期的には中国の膨張を抑える対決の道を選ぶという姿勢を明確にした。

日本の一部では、トランプ政権が中国とやがて手を結ぶという「対中取引外交」説が語られていたが、その説を否定する形となった。

アジアで他国の主権を脅かしている中国

今回トランプ大統領が発表した国家安全保障戦略は、中国とロシアが軍事力や経済力政治力を拡大して、米国が主導する現在の国際秩序を壊し、米側の利益や価値観に反する新たな世界を作ろうとしているとして、その試みを防ぐことが不可欠であると強調していた。

特に、米国にとって今後長期にわたり最大の脅威となる相手と位置づけていたのが中国である。同戦略は中国の特徴を以下のように定義づけていた。

・中国はインド・太平洋地域で米国に取って代わることを意図して、自国の国家主導型経済モデルを国際的に拡大し、地域全体の秩序を作り変えようとしようとしている。中国は自国の野望を、他の諸国にも利益をもたらすと宣伝して進めているが、現実にはその動きはインド・太平洋地域の多くの国の主権を圧迫し、中国の覇権を広めることになる。

・ここ数十年にわたり米国の対中政策は、中国の成長と国際秩序への参加を支援すれば中国を自由化できるという考え方に基礎を置いてきた。だが、米国の期待とは正反対に、中国は他の諸国の主権を侵害するという方法で自国のパワーを拡大してきた。中国は標的とする国の情報をかつてない規模で取得し、悪用し、汚職や国民監視などを含む独裁支配システムの要素を国際的に拡散してきた。

・中国は世界の中で米国に次ぐ強力で大規模な軍隊を築いている。その核戦力は拡張し、多様化している。中国の軍事力の近代化と経済拡張は、大きな部分が米国の軍事や経済からの収奪の結果である。中国の急速な軍事力増強の大きな目的の1つは、米国のアジア地域へのアクセスを制限し、自国の行動の自由を拡大することである。

・中国は自国の政治や安全保障の政策に他国を従わせるために、経済面での“飴と鞭”の使いわけのほか、水面下で影響力を行使する工作、軍事的な威嚇を手段としている。インフラ投資や貿易戦略は、地政学的な野望の手段となっている。また、南シナ海における中国の拠点の建造とその軍事化は、他国の自由航行と主権を脅かし、地域の安定を侵害する。

そして同戦略は、インド・太平洋地域の諸国は、中国に対する集団防衛態勢を米国が主導して継続することを強く求めていると強調していた。

明確に否定された「米中融和」の推測

このように同戦略は、中国は他の諸国の主権や独立を侵害しようとする危険な存在であり、アジア・太平洋地域全体にとっての脅威となっているため、米国が中国の脅威を受ける諸国を集めて、対中防衛、対中抑止の態勢を共同で保たねばならない、と唱える。

つまりトランプ政権は、長期的にみて中国が米国にとっての最大の対抗相手、潜在敵であるとみなしているのだ。

その一方、トランプ大統領は就任からこの11カ月ほどの間に、北朝鮮の核兵器開発を防ぐための協力を求めるなど対中融和と受け取れる言動もあった。そのため日本では一部の識者たちの間で、「トランプ大統領は、結局は中国との協調姿勢をとることになる」「米中はやがて水面下で手を結び絆を強め、日本を疎外するようになる」という観測が述べられてきた。トランプ大統領の実業家としての経歴を重視して「トランプ氏は中国との間でビジネス的な取引を進め、対立を避けるだろう」と予測する向きも少なくなかった。

しかし、今回、打ち出された国家安全保障戦略は、中国を米国にとっての最大の脅威と位置づけており、「米中融和」や「米中蜜月」という推測を明確に否定したといえよう。

【私の論評】背景には米国内での歴史の見直しが(゚д゚)!

中国・ロシアは米国が主導する国際秩序への挑戦者であることは間違いありません。かつては、ソ連が最大の挑戦者だったのですが、ソ連が崩壊してからロシアは国力をかなり減退させています。

現在のロシアのGDPは、日本の30%にも満たないくらいです。人口は、1億4千万人程度と、あの広い領土にもかかわらず、日本の1億2千万により、わずかに多いくらいです。

これでは、経済力でも人口でも中国に比較するとかなり劣っています。ただし、中国のGDPの統計はかなり出鱈目で、本当はドイツ以下である可能性もあることを指摘する学者もいます。それが本当だったとしても、中国のGDPは、ロシアよりもかなり大きいことだけは確かなようで、今後ロシアが米国への挑戦者として返り咲くことはないでしょう。

中国とロシアは、米国が主導する国際秩序への挑戦者であることはこのブログにも以前掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
支那とロシアが崩壊させる自由主義の世界秩序―【私の論評】世界は戦後レジームの崩壊に向かって動いている(゚д゚)!
ロバート・ケーガン氏
この記事から一部を引用します。
 世界に国際秩序の崩壊と地域戦争の勃発という2つの重大な危機が迫っている。 
 米国は、第2次大戦後の70余年で最大と言えるこれらの危機を招いた責任と指導力を問われている。米国民がドナルド・トランプ氏という異端の人物を大統領に選んだ背景には、こうした世界の危機への認識があった──。 
 このような危機感に満ちた国際情勢の分析を米国の戦略専門家が発表し、ワシントンの政策担当者や研究者の間で論議の波紋を広げている。 
 この警告を発したのは、ワシントンの民主党系の大手研究機関「ブルッキングス研究所」上級研究員のロバート・ケーガン氏である。
ご存知のように、オバマ大統領は国際秩序の崩壊と地域戦争の勃発という重大な危機を招いた張本人でもありました。ロバート・ケーガン氏はこのことの反省に立脚しつつ、このような警告をしているのでしょう。

ケーガン氏は今年1月24日に「自由主義的世界秩序の衰退」と題する同論文を発表し、世界に重大な危機が迫っていることを警告しています。この論文の要旨を以下に引用します。
・世界は第2次世界大戦の終結から現在まで、基本的には「自由主義的世界秩序」に支えられてきた。この秩序は民主主義、自由、人権、法の統治、自由経済などを基盤とし、米国の主導で構築され運営されてきた。 
・しかしこの世界秩序は、ソ連崩壊から25年経った今、支那とロシアという二大強国の挑戦により崩壊の危機を迎えるにいたった。 
・支那は南シナ海、東シナ海へと膨張し、東アジア全体に覇権を確立して、同地域の他の諸国を隷属化しようしている。ロシアはクリミア併合に象徴されるように旧ソ連時代の版図の復活に向かっている。両国はその目的のために軍事力の行使を選択肢に入れている。 
・支那とロシアの軍事的な脅威や攻撃を防いできたのは、米国と同盟諸国が一体化した強大な軍事力による抑止だった。 
・だが、近年は米国の抑止力が弱くなってきた。とくにオバマ政権は対外的な力を行使しないと宣言し、国防費の大幅削減で米軍の規模や能力はすっかり縮小してしまった。 
・その結果、いまの世界は支那やロシアが軍事力を行使する危険性がかつてなく高まってきた。武力行使による膨張や現状破壊を止めるには、軍事的対応で抑止することを事前に宣言するしかない。
そうして、ロバート・ケーガンは、中国ロシアの軍事力行使の危険性があることを前提に、自由主義的な世界秩序の崩壊を防ぐために、米国はリーダーシップを取り戻すべきと主張しています。

このような声は、今年も共和党・民主党を問わず、各方面から聞こえていました。米国のトランプ大統領が今回発表した「国家安全保障戦略」はこのような声に応えるものであるともいえます。

アメリカで沸き起こるこのような声には以下動画のような背景がありました。



この動画では、米国では多様な歴史の見方があることを語っています。たとえば、日本のパールハーバー攻撃を卑怯なだまし討とみるのではない見方もあることを語っています。

1941年12月7日(現地時間)、日本軍が真珠湾攻撃をした当時、アメリカのルーズヴェルト民主党政権は「卑怯な騙し討ち」と非難しました。日米両国が懸命な戦争を避けるための外交交渉をしていたのに、日本がいきなり真珠湾を攻撃してきたという見方です。

しかし、日米交渉の経緯について知られるようになるにつれ、日米交渉を潰したのは、ルーズヴェルト民主党政権側であったことが知られるようになっていきました。

先の戦争は決して日本の侵略戦争などではなかったにもかかわらず、アメリカのトルーマン民主党政権は東京裁判を行い、日本の指導者を侵略者として処刑しました。このことは、公正と正義を重んじたアメリカ建国の祖、ワシントンやリンカーンの精神を裏切る行為です。

これまで戦争責任といえば、必ず日本の戦争責任を追及することでした。過去の問題で批判されるのは常に日本であって、過去の日本の行動を非難することがあたかも正義であるかのような観念に大半の日本人が支配されてしまっています。しかし、どうして戦争責任を追及されるのは常に日本側なのでしょうか。

敗戦後の日本人が、「戦争に負けたのだから」と連合国側による裁きを甘受したのは仕方のないことだったかもしれません。しかし、歴史の真実は勝者の言い分にのみ存するのではないはずです。

上の動画をみてもわかるように、米国では真珠湾攻撃は日米両国がそれぞれの国益を追求した結果起こったものであるとして、日本を「侵略国」であると決めつけた「日本悪玉史観」は事実上、見直されているのです。

ベノナ文書
その動きは今後益々進んでいくことになるでしょう。というのも、ベノナ文書が公開されたり、ソ連崩壊後にソ連の内部文書が公開されたりしたため、それを分析・研究をはじめたアメリカの保守派の間では近年、「真珠湾攻撃背後にソ連のスターリンの工作があった」とする「スターリン工作説」が唱えられるようになってきているからです。

"Stalin’s Secret Agents: The Subversion of Roosevelt’s Government"の表紙
例えば、保守派のオピニオン・リーダーであるM・スタントン・エヴァンズと、安全保障の専門家のハーバート・ロマースタインが共著で『Stalin’s Secret Agents: The Subversion of Roosevelt’s Government (スターリンの秘密工作員:ルーズヴェルト政権の破壊活動)』(Threshold Editions, 2012, 未邦訳)を刊行し、ソ連のスターリンが日米を開戦に追い込むために、日本、アメリカ、中国(蒋介石政権)の三方面で同時並行的に三つの大掛かりな工作を行ったと指摘しています。
①ソ連の工作員であるドイツ人ジャーナリスト、リヒャルト・ゾルゲが、朝日新聞記者だった尾崎秀実らを使って、日本が英米両国と戦争をするよう誘導した。 
②ソ連の工作員であるアメリカの財務次官補ハリー・デクスター・ホワイトが、ルーズヴェルト政権内部に働きかけて、日米の和平交渉を妨害した。 
③ソ連の工作員であるルーズヴェルト大統領補佐官ラフリン・カリーが、中国国民党政府の蒋介石の顧問であったオーウェン・ラティモアと連携して、日米の和平交渉を妨害した。
こうした歴史見直しを進めるアメリカの保守派は、ドナルド・トランプ大統領の支持母体でもあるのです。アメリカ内部で始まった歴史見直しの動向には大いに注目しておきたいです。

そうして、この歴史の見直しは、当然のことながら安倍総理も提唱している「戦後レジームからの脱却」にも大きな影響を与えることになるのは必定です。トランプのいう「リメンバー・パール・ハーバー」は、こうした歴史の見直しを象徴するものであり、米国はもとより、日本などの先進国はかつてのように本当の敵を見失うことなく、中国とロシアに対峙しなけばならないこと、特に台頭する邪悪な中国に思い通りにさせてはいけないことを意味するものです。

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