2015年12月10日木曜日

高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ  消費増税は延期すべきだ 新聞の「手のひら返し」ありうる―【私の論評】軽減税率に頭を悩ますな!五つの観点から、10% 増税はあり得ない(゚д゚)!

高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ  消費増税は延期すべきだ 新聞の「手のひら返し」ありうる

前回の本コラムで書いた軽減税率の自公間協議がようやく終わろうとしている。争点となっていたのは軽減税率をどこまで対象とするかであり、その必要財源について「政治的には4000億円に増額調整が加えられて、自公間では決着するだろう」と書いたが、1兆円規模というから、内容としては公明党の要求の丸呑みである。公明党の後ろにいる官邸が自民党・財務省を押し切った。

軽減税率が論じられているが、これに頭を悩ます必要はないかも?


4000億円なら食品のうち生鮮食品のみ、1兆円ならそれに加工食品まで含めるということだ。政治家同士の話なので、軽減税率の対象に「梅干しやノリ、豆腐、納豆が含まれないのはおかしい」という、朝食の定番メニューを例にして加工食品を適用すべしとのやりとりがあったようだ。

新聞への軽減税率の適用は絶望的

ところで、新聞への軽減税率の適用は絶望的である。かつては、「米、味噌、醤油、新聞」とやはり朝の食卓風景の一角で、新聞を軽減税率対象にするとのスローガンがあったが、今回の話は「米、味噌、醤油」までだ。

これで、これまで軽減税率を受けたいがために、消費増税に賛成していた新聞の論調がどうなるのかが見ものである。

軽減税率については、低所得者以外も恩恵が及び、消費税税収が減るなどの問題点がいわれている。その批判はもっともであるが、日本では確定申告者数が少なく、税務申告時に給付・還付を行いにくいという事情もあるので、軽減税率でもやむを得ない面もある。公明党は、そうした批判を承知しつつ、納税者の分かりやすさや手間を考慮して、選挙で軽減税率を訴えてきた。

また、軽減税率の問題を指摘する人の多くが、2017年4月からの消費再増税に前のめりなのは気になるところだ。

ただ、軽減税率にかかわる懸念は、その消費再増税がないなら、杞憂となる。筆者の見立てでは、その方向になりつつある。


選挙対策上からも「延期」やりやすい

一つには、民主党の枝野幹事長が、軽減税率の導入について「明確に民主、自民、公明の3党合意が破棄されたと言わざるを得ない」と述べ、消費増税に反対する意向なのだ。

3党合意をよく読めば、軽減税率の導入がそれに反しているとはいえない。政治合意文章は、融通無碍に書いてあるからだ。にもかかわらず、枝野幹事長がそういう主張をするのは、消費増税で先手を打ちたいからだ。軽減税率での自公間協議の中、消費増税延期で来16年7月に衆参ダブル選挙という噂が流れた。昨14年の総選挙で、民主党の海江田代表(当時)は当初消費増税賛成といったが、慌てて取り消して、ぶれまくり、結局惨敗したトラウマがあるのだろう。

GDP統計の改定で、2期連続マイナス成長は免れたものの、消費低迷によってGDPがさえないのは事実だ。しかも、補正予算は3兆円余で力不足だ。こうした状態だと、これまで消費増税を主張していた新聞も今後ゆっくりと意見を変えていくだろう。

そう考えると、今回の軽減税率の政治決着は絶妙だ。まず新聞を対象としないので、新聞が、消費増税延期に世論を向けやすい。またかなりの減収になるので、財政当局から見ても「消費増税延期でもやむなし」になりやすい。さらに、野党からの消費増税延期発言を引き出し、選挙対策上からも消費増税延期をやりやすい。

こうした点を踏まえると、今回の軽減税率の政治決着から、2017年4月からの消費増税はかなり可能性がなくなったことが見えてくる。


【私の論評】軽減税率に頭を悩ますな!五つの観点から、10% 増税はあり得ない(゚д゚)!

上の高橋洋一氏の論評に賛成です。かなりの確率で、2017年4月からの消費税増税はないでしょう。私としては、100%なしと言い切りたいくらいです。なぜそう思うのか、本日はそれを掲載しようと思います。

第一には、新聞の軽減税率の適用が完璧に除外されたことは高橋洋一氏が指摘するように、大きいです。新聞への軽減税率の適用については、このブログでも以前何度か掲載したことがあります。ここでは、一番古いものを掲載します。この記事は2011年のものです。
「米国債はデフォルト危機」と大騒ぎする日本の新聞は「財政破綻」「増税」は好きだが、自分たちだけ「軽減税率」求める浅ましさ ―【私の論評】消費税率アップが、新聞業界と財務省の共通の利益だが、アメリカの利益にはならない!!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、新聞に対する軽減税率の適用に関する部分のみ下にコピペします。
その一方で、新聞協会は7月12日、経済産業省が募集していた来年度の税制改正要望に対して、要望書を提出し、消費税については軽減税率の適用を求めている。新聞業界は、消費税軽減のために海外調査を行う等なりふりかまわぬスタンスだ。つまり消費税率アップが、新聞業界と財務省の共通の利益なのだ。 
新聞は消費税アップによっても新聞代の引き上げを避けられる。一方財務省にも利権が発生する。というのは、消費税率がアップすると、必ず軽減税率やゼロ税率の話が出てくる。新聞業界もそのひとつだ。社会的使命を主張しながら、消費税の軽減税率を財務省に働きかけている。これはもちろん新聞では報道されないが事実だ。どの業界に軽減税率を適用するかどうかは財務省の胸先三寸である。 
財務省の事務次官であった丹呉泰健氏が読売新聞に天下りしたことは昨年11月22日の本コラムで述べている。消費税率引き上 げと新聞業界の軽減税率・ゼロ税率の願望とは無縁とはいえない。 
新聞業界と財務省は既に蜜月関係にあると見ていいだろう。だから、新聞が行う世論調査で、増税が必要かというものはあてにならないことを留意する必要がある。そんなものは質問の仕方によってかなり変わるからだ。
新聞業界と財務省はその後も、つい最近まで蜜月関係が続いていて、新聞は財務省の資料などに基づき、増税の正当性を報道してきました。財務省としては、新聞にそのような対応をしてもらうことを引き換えに、新聞に軽減税率を適用することをちらつかせ、自分たちに都合の良い報道をするように圧力をかけてきたのです。

しかし、いつの間にか、新聞への軽減税率の適用は完璧に立ち消えになってしまいした。これは、最近の報道をご覧いただければ、おわかりになると思います。生鮮食品、加工食品、外食、酒類に関しては、軽減税率の論議が行わていますが、新聞に関してはなしのつぶです。

新聞は、過去に本当に増税に関しては、積極的に推進すべきという報道を繰り返してきました。特に、2013年はそのピークに達した感がありました。すべての新聞が、安倍総理が増税すると発表する前から、「安倍総理増税決断」と何度も連呼していました。この状況は全く異常としか言いようがありません。

おそらく、財務省が周到に根回しをして、識者、新聞などに増税の連呼をさせた結果であると思われます。

これに関しては、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【衆院選】首相はなぜ解散を決断したのか 幻となった4月総選挙 決断を早めたのは…―【私の論評】産経新聞ですらのってしまった昨年の総理増税決断の虚偽報道!今年は破壊的革命集団財務省が、安倍総理の解散時期をはやめた、その意味するところは?
昨年10%増税を見送り、解散総選挙を表明する安倍総理

この記事は、昨年11月20日のものです。この記事から、新聞の平成13年の増税報道の異常ぶりを示す部分を以下にコピペします。
まず、主要メディアの報道をざっと振り返っておきます。実際には、これ以外も、多くの報道がありましたが、代表的なもののみにとどめます。報道に間違いがなければ、安倍首相は11日から20日にかけて、少なくとも4度(11日、12 日、18日、20日)にわたり「決断」を繰り返したことになります。
"安倍首相は11日、消費税率を来年4月に現行の5%から8%に予定通り引き上げる意向を固めた。出典:読売新聞9月12日付朝刊1面「消費税 来年4月8% 首相、意向固める 経済対策に5兆円」
安倍晋三首相が、来年4月に消費税率を5%から8%へ予定通り引き上げる方針を固めたことが12日分かった。出典:共同通信9月12日「消費増税 来年4月8%に 首相、10月1日表明へ」
安倍晋三首相は12日、現行5%の消費税率を、消費増税関連法に沿って2014年4月に8%に引き上げる意向を固めた。出典:時事通信9月12日「消費税、来年4月に8%=経済対策5兆円で下支え=安倍首相、来月1日にも表明」
安倍晋三首相は、現行5%の消費税率を、来年4月に8%へ予定通り引き上げる方針を固めた。出典:毎日新聞9月12日付夕刊1面「消費増税 来年4月8% 安倍首相『環境整う』判断 経済対策、5兆円規模検討」
安倍晋三首相は18日、現在5%の消費税率について、来年4月に8%に引き上げることを決断した。出典:産経新聞9月19日付朝刊1面「消費税来春8%、首相決断 法人減税の具体策検討指示」
安倍晋三首相は来年4月に消費税率を8%に引き上げる方針を固めた。(…)複数の政府関係者が19日、明らかにした。出典:日本経済新聞9月19日付夕刊1面「消費税来春8% 首相決断 法人減税が決着、復興税廃止前倒し 来月1日表明」
安倍晋三首相は20日、来年4月に消費税率を現在の5%から8%に予定通り引き上げることを決断した。出典:朝日新聞9月21日付朝刊1面「首相、消費税引き上げを決断 来年4月から8%に」
安倍首相は10月1日の発表の前までは、自らの肉声で「決断」の意思を表示したわけではありません。仮に会見等の場で表明していれば「~を表明した」と報じられるし、一部の関係者に伝達していれば「決断したことを~に伝えた」と報じられるのが普通です。しかし、昨年はどのメディアも「表明」「伝達」いずれの事実も報じておらず、「意向を固めた」「決断した」といった表現で報じていました。
「意向」とか「決断」とかいう内面的事実を、メディアは一体どのように確認したというのでしょうか。さまざまな周辺情報(増税に備えた経済政策の検討を指示した等)から「決断している可能性が高い」と推測できるからといって、「決断した」と断定していいはずはなかったはずです。 
もし、「決断」の裏付けを取れたなら、その根拠となる事実関係や、ソース(情報源)を読者に示してしかるべきでした。ところが、各紙の「決断」報道は、日経新聞だけが「複数の政府関係者によると」と書いたほかは、全くソースについて触れていませんでした。
これは、本当に異常で異様なことでした。最近の大手新聞は、発行部数がかなり減っており、そもそも8%増税のときも、できるなら軽減税率を適用して欲しいというのが本音でした。ご存知のように、それは単に間に合わないという理由で、見送りされました。

10%増税では、何がなんでも軽減税率適用をと考えていた大手新聞にとっては、これは財務省の裏切り以外の何ものでもありません。

浅ましいといえば、浅ましいのですが、それにしても、財務省のために増税すべきと報道してきたのに、 肝心要の新聞への軽減税率の約束は反故にされたわけですから、恨み骨髄というところだと思います。

こんことから、もう、新聞がかつてのように狂ったように、増税の連呼をするということはないでしょう。それどころか、もう財務省の手にのらず、手のひらをかえしたように、まともな報道をして、今度は減税すべきなどと報道し始めるかもしれません。

第二には、そもそも増税する必要性は全くないということがあります。それに関しても、このブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
税収上ぶれで国庫収支改善 「国の借金」1054兆円だが資産も653兆円―【私の論評】日本国借金まみれ説は、財務省と追従者が築く馬鹿の壁(゚д゚)!
 

この記事では、あらゆる方向性から、増税する必要性など全くないことを掲載しました。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事の結論部分を掲載します。
以上のような考え方をすれば、日本政府は決して他国に比較して、借金まみれではないことが良く理解できると思います。

日本国借金まみれ説は、奇妙奇天烈、摩訶不思議な論理であり、とても受け入れることはできない戯れ言に過ぎないことがわかります。そうして、これを理解すれば、8%増税は必要なかったし、10%増税などとんでもないという結論になります。

それにししても、財務省はこのような戯れ言で、本当に日本借金まみれ説をすべての人に信じこませることができると思ったのでしょうか。私のように経済に疎い人間でも、上記のようにこのような戯れ言は受け入れらないのですから、まともな経済学者などはこのようなことは、すぐに見破るどころか、最初からわかりきったことだと思います。

日本国借金まみれ説は、財務省およびこれに追従する識者が築く馬鹿の壁に過ぎないのだと思います。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?
財務省の官僚はこのようなことは、良く知っていると思います。しかし、そのようなことは、おくびに出さず、新聞や識者、政治家などの増税の正当性を主張してきたし、これからもそうすることでしょう。何のためかといえば、財務省益のためであり、国民や政府がどうなろうと、自分たちによる税金の配賦権を強化し、権力を掌握しつづけるためです。結局政治だ何だといっても、予算がすべてで、政治家も他省の官僚も予算がなけば何もできません。

第三には、経済成長なくして財政再建なしという事実があります。日本のGDPの60%は個人消費によるものです、増税すれば、個人消費が冷え込み、経済成長ができなくなり、結局のところ税収も減ります。増税すれば、増税したばかりの年などは、一時的に税収が増えることもありますが、次の年あたりから消費がかなり減り、税収はもかなり減ります。

これについても、このブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【日本の解き方】経済成長なくして財政再建なし 歳出カットのみ主張なら財務省の術中―【私の論評】財務省・内閣府の嘘吐き官僚には、徹底した報復人事を行い、政治主導を達成せよ(゚д゚)!
各国の名目GDP成長率 (1997-2012)
出所:IMF WEO Apr 2013 縦軸:パーセント
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、増税などしなくとも、金融緩和だけしていれば、税収弾性値とGDPデフレーターの計算をまともにするだけで、2020年から23年度ぐらいには財政再建はできてしまうという見込みは十分になりたつことを掲載しています。

第四には、大勢の識者が8%増税の影響は軽微としていたにもかかわらず、実際に蓋を開けてみれば、甚大な影響がありました。これからもどうなるかは、わかりません、結局のところ2015年は全体でマイナス成長ということも十分ありえます。

そんなときに、10%増税をししまえば、さらに消費は冷え込むことは、はっきりしています。考えてみてください、10%増税といえば、非常に計算しやすいです。1000円の10%は、100円、10000円のそれは、1000円、10万円のそれは1万円です。これは消費者の心理にかなり大きな影響を及ぼし。経済は致命的な打撃を受けます。

そうなれば、増税時の政権が安倍政権であれ、他の政権であっても、政権が崩壊するのは必至です。そんな冒険を侵す必要性などありません。

それに、上で述べていた選挙対策という第五の観点もあります。

以上五つの観点から、10%増税は見送られる可能性がかなり高いどころか、私自身は100%そうだと踏んでいます。これだの観点から見て、増税はすべきではないのに、実施してしまえば、本当に愚かしいことだと思います。

それにしても、大手新聞は、財務省から裏切られても、増税すべきという愚かな報道を続けるのでしょうか。そうして、来年の選挙が衆参同時選挙となり、自民党の公約の一つに増税見送りがなったとしたら、またぞろ「大義なき解散」などと馬鹿げた報道をするのでしょうか。そうだとすれば、本当にジャーナリズムとしての、プライドも能力もなく、愚かとしか言いようがありません。

私はそう思います。皆さんは、どう思われますか?

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